特許第5726345号(P5726345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5726345
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】軸シール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/32 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   F16J15/32 311Z
   F16J15/32 301C
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-59920(P2014-59920)
(22)【出願日】2014年3月24日
【審査請求日】2014年11月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 伸和
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−099329(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/061575(WO,A1)
【文献】 特開平02−008565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターケース(1)の内鍔壁部(2)と、インナーケース(3)の内鍔壁部(4)に挟着されるシールエレメント(5)の外周縁(6)の肉厚寸法(T0 )を、シールエレメント(5)の残部(7)の肉厚寸法(T1 )よりも大きく設定して、上記シールエレメント(5)の上記外周縁(6)に肉厚部(E)を形成し、
かつ、上記シールエレメント(5)の未組立状態に於ける上記肉厚部(E)のラジアル方向幅(W0 )を、上記インナーケース(3)の内鍔壁部(4)が上記シールエレメント(5)を圧接する部位のラジアル方向幅寸法(W4 )に対して、W0 <W4 となるように設定し、
さらに、上記インナーケース(3)の円筒壁部(9)と内鍔壁部(4)の角部は弯曲状角部(10)に形成して、組立状態に於て、上記シールエレメント(5)の肉厚部(E)の最外周端部が未圧縮状態であるように構成したことを特徴とする軸シール。
【請求項2】
上記外周縁(6)に円環状凹溝(8)を形成した請求項1記載の軸シール。
【請求項3】
上記インナーケース(3)の円筒壁部(9)と上記内鍔壁部(4)の弯曲状角部(10)に、凹部(11)又は凸部(12)を周方向に散点状に設けた請求項1又は2記載の軸シール。
【請求項4】
上記シールエレメント(5)は、上記アウターケース(1)の内鍔壁部(2)と、上記インナーケース(3)の内鍔壁部(4)に、直接に圧接して上記挟着されている請求項1,2又は3記載の軸シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸又は往復動用軸の密封に用いられる軸シールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軸シールとして、アウターケースとインナーケースの間に、シールエレメントとガスケットを挟着したものが広く知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、ガスケットを備えることにより、部品点数が増えて、組立作業にも時間が掛り、製品単価が高価になるという欠点があった。また、ガスケットを省略すると、シールエレメントが(回転動用の場合)共回りしたり、(往復動用の場合)抜け出す虞れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−69909号公報
【特許文献2】特開2009−103264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、部品の組立作業能率が低く、部品点数も多く、かつ、製品単価が高価になる点である。また、ガスケットを省略すると、シールエレメントが共回りしたり、抜け出す虞れがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る軸シールは、アウターケースの内鍔壁部と、インナーケースの内鍔壁部に挟着されるシールエレメントの外周縁の肉厚寸法を、シールエレメントの残部の肉厚寸法よりも大きく設定して、上記シールエレメントの上記外周縁に肉厚部を形成し、かつ、上記シールエレメントの未組立状態に於ける上記肉厚部のラジアル方向幅W0 を、上記インナーケースの内鍔壁部が上記シールエレメントを圧接する部位のラジアル方向幅寸法W4 に対して、W0 <W4 となるように設定し、さらに、上記インナーケースの円筒壁部と内鍔壁部の角部は弯曲状角部に形成して、組立状態に於て、上記シールエレメントの肉厚部の最外周端部が未圧縮状態であるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軸シールによれば、部品点数を最少とできて、組立作業も容易・迅速となり、低コストで製作することができる。また、シールエレメントが共回りしたり、抜け出すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施の形態の使用状態を示す断面図である。
図2】自由状態を示す要部拡大断面図である。
図3】シールエレメントの要部拡大断面図である。
図4】第2の実施の形態のシールエレメントの要部拡大断面図である。
図5】第3の実施の形態のインナーケースの要部の一部破断斜視図である。
図6】第4の実施の形態のインナーケースの要部の一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1図3は、本発明の第1の実施の形態を示す。この軸シールは、例えば、EGR−V、真空ポンプ、コンプレッサ、(油圧又は空圧用)往復動シリンダ等(図示省略)に用いられる。そして、回転動用、往復動用のいずれにも用いることができる。
【0010】
この軸シールは、(図1に示すように、)ハウジング15の円形孔部15Aと、軸16との間の円筒状空間部に装着され、軸16に摺接する樹脂製シールエレメント5を備えている。金属製アウターケース1の内鍔壁部2と、金属製インナーケース3の内鍔壁部4に挟着されるPTFE等の樹脂製シールエレメント5の外周縁6の肉厚寸法T0 が、図3に示した未使用状態のシールエレメント5の残部7の肉厚寸法T1 よりも、大きく設定される。シールエレメント5の外周縁6が、図1図2の組立状態では、アウターケース1の一端のカシメ片部13(のカシメ加工)によって強く挟着されて、上記外周縁6は、圧縮され、シールエレメント5の共回り防止(回転動用の場合)、及び、抜止め(往復動用の場合)をすることができる。
【0011】
具体的に説明すると、図3に示すように、未使用状態で、外周縁6にはラジアル方向幅W0 の肉厚部Eが段付14をもって形成され、そして、インナーケース3の内鍔壁部4が実際にシールエレメント5を圧接(挟着)する部位のラジアル方向幅寸法をW4 とすれば、W0 <W4 のように設定する。特に0.3 ・W4 <W0 <0.7 ・W4 が好ましい。即ち、アウターケース1のカシメ片部13によるカシメ力F13図3参照)が従来と同一であるとすれば、図2に示した組立状態での圧縮面圧力(挟着面圧力)は、本発明では、著しく増大する。この面圧力の増大によって、摩擦力による回転阻止力(又はラジアル方向の引抜阻止力)が増加して、共回り防止、抜止め防止を行い得る。
【0012】
さらに、インナーケース3の円筒壁部9と内鍔壁部4の角部は弯曲状角部10としてアール状に形成されているので、組立状態(図1図2)では、アウターケース1の内隅部との間隔寸法がラジアル外端で増加し、シールエレメント5の肉厚部Eの最外周端部が未圧縮状態(元の肉厚寸法T0 のまま)である。従って、(ラジアル内方向への)引抜力が作用した際には、いわばクサビ作用によって、引抜阻止力が一層強く発生する。
【0013】
図4は、第2の実施の形態を示す。シールエレメント5の外周縁6(肉厚部E)に円環状凹溝8が形成される。つまり、インナーケース3の内鍔壁部4との対応面に、円環状凹溝8が形成される。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0014】
図5は、第3の実施の形態を示す。インナーケース3の円筒壁部9と内鍔壁部4の弯曲状角部10に、回転阻止用の凹部11が設けられる。その他の構成は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様である。
【0015】
図6は、第4の実施の形態を示す。インナーケース3の円筒壁部9と内鍔壁部4の弯曲状角部10に、回転阻止用の凸部12が設けられる。その他の構成は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様である。
【0016】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、凹部11又は凸部12の個数は、1個又は複数のいずれでも良い。
【0017】
以上のように、本発明は、アウターケース1の内鍔壁部2と、インナーケース3の内鍔壁部4に挟着されるシールエレメント5の外周縁6の肉厚寸法T0 を、シールエレメント5の残部7の肉厚寸法T1 よりも、大きく設定したので、ガスケットを省略することができ、低コストで製作することができる。また、シールエレメント5が共回りしたり、抜け出すことを防止することができる。
【0018】
また、上記外周縁6に円環状凹溝8を形成したので、面圧が向上して、密封流体の漏れを確実に防止することができる。
また、上記インナーケース3の円筒壁部9と上記内鍔壁部4の弯曲状角部10に、凹部11又は凸部12を設けたので、確実に回り止めをすることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 アウターケース
2 内鍔壁部
3 インナーケース
4 内鍔壁部
5 シールエレメント
6 外周縁
7 残部
8 円環状凹溝
9 円筒壁部
10 弯曲状角部
11 凹部
12 凸部
0 肉厚寸法
1 肉厚寸法
【要約】      (修正有)
【課題】部品の組立作業能率が低く、部品点数も多く、かつ、製品単価が高価になる点、また、ガスケットを省略すると、シールエレメントが共回りしたり、抜け出す虞れがある点を解決する、低コストで製作することができる軸シールを提供する。
【解決手段】アウターケース1の内鍔壁部2と、インナーケース3の内鍔壁部4に挟着されるシールエレメント5の外周縁6の肉厚寸法を、シールエレメント5の残部7の肉厚寸法よりも、大きく設定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6