(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記PM捕集層を構成する前記微粒子、及び前記隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した前記微粒子の平均粒子径が、前記隔壁基材の平均細孔径よりも小である請求項1に記載の触媒担持フィルタ。
前記PM捕集層を構成する前記微粒子、及び前記隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した前記微粒子の平均粒子径が、0.1〜50μmである請求項1又は2に記載の触媒担持フィルタ。
前記隔壁基材の前記流出セル側表面及び前記流出セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔の内部のうちの少なくとも一方には、アンモニアスリップ防止触媒が担持されたアンモニアスリップ防止触媒層が更に形成されてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒担持フィルタ。
前記PM捕集層、及び前記隔壁基材の前記微粒子が細孔の内部に付着して固着した領域における平均細孔径が、1〜30μmである請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒担持フィルタ。
前記PM捕集層を構成する前記微粒子、及び前記隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した前記微粒子が、前記隔壁基材を構成する材料と同じ材料によって構成されている請求項1〜11のいずれか一項に記載の触媒担持フィルタ。
前記隔壁基材と、前記PM捕集層を構成する前記微粒子、及び前記隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した前記微粒子とが、一体焼結された焼結相を有している請求項12に記載の触媒担持フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の触媒担持フィルタ、及び排ガス浄化システムを実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える触媒担持フィルタ、及び排ガス浄化システムを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0042】
[1]本発明の触媒担持フィルタ:
ここで、
図1は、本発明の触媒担持フィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す触媒担持フィルタの一方の端面を示す平面図であり、
図3は、
図1に示す触媒担持フィルタの断面を模式的に示す断面図である。また、
図4は、
図3における触媒担持フィルタの隔壁の一部(Pで示す部分)を拡大して示す断面図である。なお、
図3は、触媒担持フィルタの中心軸(即ち、セルの貫通方向)に沿う方向の断面図であり、また、
図3及び
図4において、G
1及びG
2にて示す矢印は、排ガスが触媒担持フィルタを通過する際の、排ガスの移動方向を示している。
【0043】
本発明の触媒担持フィルタ1は、
図1〜
図4に示すように、多数の細孔5を有する多孔質の隔壁4を有し、この隔壁4によって排ガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体2と、複数のセル3の排ガス流入側の開口端部3Xと排ガス流出側の開口端部3Yとを互い違いに目封止する目封止部13と、を備えた触媒担持フィルタ1である。
【0044】
そして、本実施形態の触媒担持フィルタ1は、複数のセル3が、流入側の開口端部3Xが開口した流入セル3aと、流出側の開口端部3Yが開口した流出セル3bとから構成され、隔壁4は、多数の細孔5を有する多孔質の隔壁基材4aと、流入セル3aを区画形成する側の隔壁基材4aの流入セル側表面に堆積して固着した微粒子20からなるPM捕集層20a、及び/又は流入セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔5a(即ち、隔壁基材4aの流入セル側に形成された細孔5a)の内部に付着して固着した微粒子21と、から構成され、PM捕集層20aの平均細孔径、及び隔壁基材4aの細孔5aの内部に上記微粒子21が付着して固着した領域21xにおける平均細孔径が、隔壁基材4aの平均細孔径(即ち、上記微粒子21が付着していない領域における平均細孔径)よりも小であり、且つ、流出セル3bを区画形成する側の隔壁基材4aの流出セル側表面及びその流出セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔5b(即ち、隔壁基材4aの流出セル側に形成された細孔5b)の内部のうちの少なくとも一方には、少なくともNO
xを浄化する触媒22が担持されたガス浄化触媒層23が形成されてなる触媒担持フィルタ1である。
【0045】
なお、
図4においては、隔壁基材4aの流入セル側表面にPM捕集層20aが形成されてなるとともに、隔壁基材4aの細孔5aの内部に微粒子21が付着した場合の例を示している。
【0046】
このように構成することによって、排ガス中のパティキュレートの捕集、及び排ガス中の有害成分(特に、NO
x)の浄化を良好に行うことができるとともに、圧損の過度の上昇を有効に抑制することができ、再生制御性に優れ、且つコンパクトな構成とすることができる。
【0047】
より具体的には、
図5Aに示すように、流入セル3aを区画形成する側の隔壁基材4aの流入セル側表面に、PM捕集層20aが形成されている場合には、隔壁基材4aの細孔5内部へのPM30の侵入を、PM捕集層20aによって防止することができ、PM堆積前後の圧損上昇の抑制効果を得ることができる。即ち、PM捕集層20aの平均細孔径は、隔壁基材4aの平均細孔径より小さいものであるため、排ガスに含まれるPMの大半は、PM捕集層20a上にケーキ層状に堆積し、隔壁基材4aの細孔5内部への侵入を著しく抑制することができる。
【0048】
また、
図5Bに示すように、隔壁基材4aの流入セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔5aの内部に、微粒子21が付着して固着した場合であっても、微粒子21が付着して固着した領域21x以降の細孔(例えば、隔壁基材4aの流出セル側に形成された細孔5b)内部へのPM30の侵入を、上述した領域21xによって防止することができ、PM堆積前後の圧損上昇の抑制効果を得ることができる。即ち、隔壁基材4aの微粒子21が付着して固着した領域21xにおける平均細孔径は、隔壁基材4aの平均細孔径より小さいものであるため、排ガスに含まれるPMの大半は、隔壁基材4a上にケーキ層状に堆積し、隔壁基材4aの細孔5への侵入、特に、隔壁基材4aの微粒子21が付着して固着した領域21x以降の部分への侵入を著しく抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態の触媒担持フィルタ1は、隔壁4が、PM捕集層20aを有しているか、或いは、細孔5aの内部に微粒子21が付着して固着しているかの少なくとも一方の構成であればよく、例えば、PM捕集層20aを有しているとともに、細孔5aの内部に微粒子21が付着して固着したものであってもよい。
【0050】
ここで、
図5A及び
図5Bは、本発明の触媒担持フィルタにPMが捕集される状態を模式的に示す説明図であり、
図5A、及び
図5Bにおいては、ともに隔壁の断面を示す図である。
【0051】
なお、例えば、上述したPM捕集層が隔壁基材上に形成されてない場合には、
図6Aに示すように、その平均細孔径がPM捕集層に比して大きな隔壁204の細孔205内にPM210が侵入してしまう。隔壁に形成された細孔は、排ガスが隔壁を透過する際の流路となるため、この隔壁が、スート(黒鉛)やアッシュ(灰)等によって塞がれてしまうと、ハニカム構造体(より具体的には、触媒担持フィルタ)の圧損が急激に増加してしまう。このため、PM捕集層を有していないハニカム構造体のみのフィルタにおいては、PMを捕集する初期段階において、隔壁上にPMが堆積することによる圧損上昇に加え、隔壁の細孔がPMによって塞がれることにより圧損が上昇し、フィルタの圧損上昇が極めて大きくなってしまう(以下、このような圧損の上昇を「初期圧損上昇」ということがある)。特に、隔壁上にPMが堆積することによる圧損上昇と比較して、隔壁の細孔がPMによって塞がれることよる圧損の上昇幅は大きいため、触媒担持フィルタの圧損上昇に多大な影響を与えるものである。
【0052】
また、隔壁(隔壁基材)の細孔内部に触媒を担持すると、隔壁の細孔容積が担持量に応じて減少するため、実質的に低気孔率の多孔質の隔壁となる。また、隔壁の表面に触媒を担持して多孔質の触媒層を形成すると、実質的に隔壁の厚みが増すことになる。このように、触媒の担持により、隔壁の気孔率が低下したり、隔壁の厚みが増したりすることにより、PM又はアッシュ(灰)の隔壁の細孔内堆積による圧損上昇が著しく大きくなる。一般的に、酸化触媒による触媒層としては25g/L程度、NO
xを浄化する触媒としては、150g/L程度の担持が好ましいが、DPFの隔壁にこれら両方の触媒を担持した場合、圧損は著しく上昇することになる。なお、本明細書における、触媒の担持量(g/L)は、ハニカム構造体単位容積(L)当たりに担持される触媒の量(g)を示す。
【0053】
本実施形態の触媒担持フィルタを構成するハニカム構造体の隔壁は、多数の細孔を有する多孔質の隔壁基材と、流入セルを区画形成する側の隔壁基材の流入セル側表面に堆積して固着した微粒子からなるPM捕集層、及び/又は流入セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔の内部に付着して固着した微粒子と、から構成されているため、隔壁の細孔内部へのPMの侵入を、PM捕集層、或いは上記微粒子が付着して固着した領域によって防止することができ、PM堆積前後の圧損上昇の抑制効果を得ることができる。また、圧損ヒステリシスも抑制できる。
【0054】
更に、流出セルを区画形成する側の隔壁基材の流出セル側表面及び流出セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔の内部のうちの少なくとも一方には、少なくともNO
xを浄化する触媒(以下、「NO
x触媒」ということがある)が担持されたガス浄化触媒層が形成されている。排ガス中のPMは、PM捕集層、或いは上記微粒子が付着して固着した領域に捕集・除去され、PM含有の少ないガスがこのガス浄化触媒層を通過することになる。このため、PM堆積によるガスと触媒の接触阻害が起こり難い上、排ガス中のPMがNO
x触媒が担持されたガス浄化触媒層に堆積し、著しい圧損上昇を引き起こす心配もない。例えば、
図6Bに示すように、ハニカム構造体201のセル203の内部にアッシュ211が堆積すると、隔壁204表面がアッシュ211によって覆われてしまうため、ガスと触媒(例えば、上記NO
x触媒)との接触が阻害されて、触媒による浄化性能が著しく低下してしまう。なお、
図6Bにおける符号220にて示す領域が、アッシュ211が堆積した場合に、触媒が活用されない領域となる。
【0055】
ここで、
図6Aは、従来のハニカムフィルタにPMが捕集される状態を模式的に示す説明図(隔壁の断面図)であり、
図6Bは、従来のハニカムフィルタのセルにアッシュが堆積し、セルを閉塞した状態を模式的に示す説明図(隔壁の断面図)である。
【0056】
本実施形態の触媒担持フィルタは、流入セルを区画形成する側にNO
xを浄化する触媒を担持した場合に比べ、使用中のアッシュ(灰)堆積によるセル閉塞や、ガスと触媒の接触阻害も起こり難く、触媒の性能劣化を有効に抑制することができる。即ち、排ガス中のアッシュ(灰)や硫黄成分等のNO
x触媒を劣化させる成分は、PM捕集層、或いは上記微粒子が付着して固着した領域によって捕集されるため、ガス浄化触媒層を構成する触媒の劣化が有効に防止される。なお、以下、PM捕集層と上記微粒子が付着して固着した領域とを含めて、「PM捕集層等」ということがある。
【0057】
また、ハニカム構造体全体に上記NO
xを浄化する触媒を担持した場合と比較して、ガスが有効に流れない部分に触媒を担持する必要はなく、触媒の担持量を少なくすることができ、その分更に、圧損の上昇も抑制することができる。
【0058】
また、隔壁基材に直接PM捕集層を形成することにより、ガス浄化触媒層にクラックが発生する場合においても、優れたPM捕集性能を有する。特に、PM個数規制(6×10
11個/kmレベル)が導入される場合においても、長期に亘って、捕集性能を維持し、規制をクリアすることができる。
【0059】
また、一つの触媒担持フィルタ内にて、PMの捕集と、NO
xの浄化を行うことができるため、複数のフィルタを直列して配置した従来の排ガス浄化システムと比較して、極めてコンパクトな構成とすることができる。
【0060】
なお、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、PM捕集層を構成する微粒子、及び隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した微粒子の平均粒子径が、隔壁基材の平均細孔径よりも小であることが好ましい。このように構成することによって、PM捕集層の平均細孔径、及び隔壁基材の細孔の内部に前記微粒子が付着して固着した領域における平均細孔径を、隔壁基材の平均細孔径よりも小さくすることができ、PM捕集層、或いは隔壁基材の細孔の内部に微粒子が付着して固着した領域にて、PMを良好に捕集することができる。
【0061】
PM捕集層を構成する「微粒子」は、隔壁基材の流入セル側表面に堆積して固着することによって、多数の細孔を有する多孔質のPM捕集層を構成するものであり、例えば、セラミック、ガラス等の微細な粒子を挙げることができる。また、隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した「微粒子」についても同様に、隔壁基材の細孔の内部に付着して固着することによって、隔壁基材の細孔の径を狭窄するものであり、上記PM捕集層を構成する「微粒子」と同様の微粒子を挙げることができる。なお、本発明においては、微粒子とは、その粒子径が50μm以下、又は、隔壁基材を構成する粒子の1/3以下の粒子のことをいう。
【0062】
また、本実施形態の触媒担持フィルタは、隔壁基材の表面及び隔壁基材の細孔の内部のうちの少なくとも一方に、酸化触媒を更に担持することによって、ケーキ層状に堆積したPMのうちの、スート等の可燃性物質を燃焼し除去することができる。これにより、隔壁へのPMの侵入を防止して上記初期圧損上昇を抑制しつつ、スート等のPMについては、酸化触媒によって連続的或いは断続的に燃焼し除去することによって、フィルタを再生することが可能となる。なお、隔壁基材の細孔の内部に酸化触媒を担持する際には、少なくとも微粒子が付着して固着した領域に、上記酸化触媒を担持することが好ましい。また、隔壁基材の細孔内部の少なくとも一部に酸化触媒を担持することによって、PM捕集層や微粒子が付着して固着した領域を通過してしまったPMを、隔壁基材にて燃焼除去することもできる。
【0063】
また、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、PM捕集層の表面及びPM捕集層の細孔の内部のうちの少なくとも一方に、酸化触媒が担持されていてもよい。このように構成することによって、PM捕集層上に堆積したスート等のPMについて、より良好に燃焼し除去することができる。なお、このような酸化触媒は、隔壁基材とPM捕集層との両方に担持してもよい。
図4においては、隔壁基材4aとPM捕集層20aとの両方に酸化触媒25が担持された場合の例を示している。
【0064】
更に、本実施形態の触媒担持フィルタは、隔壁基材の流出セル側表面及び流出セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔の内部のうちの少なくとも一方に、アンモニアスリップ防止触媒が担持されたアンモニアスリップ防止触媒層が更に形成されてなるものであってもよい。本実施形態の触媒担持フィルタは、隔壁基材の流出セル側にて、NO
x触媒によって排ガスの浄化を行うものである。このようなNO
x触媒の一種として選択還元型NO
x触媒が挙げられるが、この選択還元型NO
x触媒は、NO
xを分解するための還元剤としてアンモニアが必要となることがある。この場合には、触媒担持フィルタを設置した排気系の更に上流側にて、アンモニア水溶液や、加水分解によってアンモニアを生じる尿素水溶液を供給し、アンモニアを還元剤として排ガスの浄化を行う。この際、排ガスに加えられるアンモニアの量が過剰であると、触媒担持フィルタの流出端面側から未反応のアンモニアが排出されてしまうこととなり、このアンモニアを別途処理する装置が必要となるが、上述したようにアンモニアスリップ防止触媒層を更に有する構成とすることによって、触媒担持フィルタ内において、アンモニアの処理までを可能とすることができる。
【0065】
なお、アンモニアスリップ防止触媒が、流出セル側表面から隔壁基材の細孔の内部に担持されている場合には、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの1/2未満の厚さ範囲において担持されていることが好ましい。
【0066】
また、アンモニアスリップ防止触媒層は、ハニカム構造体の流出端面側の領域に部分的に形成されていることが好ましい。このように構成することによって、触媒担持フィルタに過剰なアンモニアが導入された場合に、流出端面側にてアンモニアを分解処理することができ、触媒担持フィルタの流出端面側からのアンモニアの排出を有効に防止することができる。
【0067】
同様に、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、ガス浄化触媒層の表面の少なくとも一部に、酸化触媒が担持された酸化触媒層を更に有するものであってもよい。このように構成することによって、PMが燃焼した時に発生する一酸化炭素(CO)等を浄化することが可能となる。特に、PM捕集層等に酸化触媒を担持しない場合において、PM燃焼時のCOの発生が多くなることがあるため、後段に別の酸化触媒を設置する必要性が生じる場合があるが、上述したように酸化触媒層を追加して設けることによって、触媒担持フィルタ内において、COの処理までを可能とすることができる。なお、浄化機能が満足できれば、このような酸化触媒は、上述したアンモニアスリップ防止触媒と同じ成分のものを用いてもよい。
【0068】
以下、本実施形態の触媒担持フィルタの各構成要素について、更に具体的に説明する。
【0069】
[1−1]ハニカム構造体、及び目封止部:
本実施形態の触媒担持フィルタを構成するハニカム構造体は、
図1〜
図3に示すように、多数の細孔5を有する多孔質の隔壁4を有し、この隔壁4によって排ガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたものである。このハニカム構造体2は、複数のセル3の流入側の開口端部3Xと流出側の開口端部3Yとを互い違いに目封止部13によって目封止されており、流入側の開口端部3Xが開口した流入セル3aと、流出側の開口端部3Yが開口した流出セル3bとが、隔壁4を挟んで交互に配置されている。
【0070】
ハニカム構造体の全体形状については特に制限はなく、例えば、
図1及び
図2に示されるような円筒状の他、楕円形状、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0071】
また、ハニカム構造体に形成されたセルの形状(セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、例えば、
図1に示されるような四角形セルの他、六角形セル、八角セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。但し、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。
【0072】
また、本実施形態の触媒担持フィルタに用いられるハニカム構造体においては、異なるセル形状を組み合わせることもできる。隣接するセルの片側のセルを八角形とし、もう片側を四角形にすることで、片側セル(即ち、八角形セル)をもう片側セル(即ち、四角形セル)に比べ大きくすることができる。特に、アッシュの発生量が多いエンジンに用いられる場合には、ガス流入側のセル(流入セル)を大きくすることで、アッシュ堆積時の圧損上昇を抑制することができる。また、ガス流出側のセル(流出セル)を大きくすることで、より多くのNO
x触媒を担持することも可能となる。特に200g/L以上のNO
x触媒を担持する場合、流出セルが細く(狭く)なり過ぎて、圧損上昇が大きくなる可能性があるが、流出セルを予め大きく形成することによって、圧損上昇を抑制することが可能となる。
【0073】
ハニカム構造体のセル密度も特に制限はないが、本実施形態のような触媒担持フィルタとして用いる場合には、0.9〜233セル/cm
2(6〜1500セル/平方インチ)の範囲であることが好ましく、15.5〜62.0セル/cm
2(100〜400セル/平方インチ)が、流入セルにPM又はアッシュを溜める領域を確保でき、流出セルにNO
x触媒を担持しても圧損上昇を抑制できる点で更に好ましく、23.3〜45.0セル/cm
2(150〜290セル/平方インチ)が、PM又はアッシュの堆積とNO
x触媒担持量とのバランスから特に好ましい。
【0074】
ハニカム構造体は、隔壁を構成する基材として、多数の細孔を有する多孔質の隔壁基材を有している。この隔壁基材の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましく、強度と圧損のバランスから、100〜635μmの範囲であることが更に好ましく、強度と圧損のバランスに加え、NO
x触媒を良好に担持することができることから、200〜500μmの範囲であることが特に好ましい。NO
x触媒を担持するには、より多くの細孔が必要であるが、細孔が多いと強度が低くなるため、隔壁基材の厚さを200μm以上とすることが特に好ましい。また、NO
x触媒を隔壁基材の表面に担持しても、圧損上昇を抑制できることから、隔壁基材の厚さを500μm以下とすることが特に好ましい。
【0075】
ハニカム構造体の材質については特に制限はないが、セラミックを好適に用いることができ、強度、耐熱性、耐食性等の観点から、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、アルミニウムチタネート、及び窒化珪素のうちのいずれかであることが好ましい。
【0076】
セルの開口部を目封止するように配置された目封止部は、公知のハニカムフィルタにおいて用いられる目封止部と同様に構成されたものを用いることができる。
【0077】
なお、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、セルを目封止する目封止部の内側に、目封止を行った際の収縮によるヒケを利用して、窪みを形成してもよい。NO
x触媒を担持した際、その触媒量の多さからセルの奥で触媒だまりができ、セルを閉塞することがあるが、目封止部の内側に窪みが形成されていると、その窪みに触媒だまりが吸収され、セルの閉塞を抑制することができる。特に100g/L以上の触媒を担持する場合には、目封止部の内側の窪みが有効となる。窪みの深さは、隔壁基材の壁の厚さ以上であることが好ましい。
【0078】
隔壁基材の平均細孔径としては、隔壁基材の平均細孔径が大きいと、PM捕集層の形成が難しく、一方、平均細孔径が小さいと触媒担持が困難となるため、0.3〜150μmであることが好ましく、NO
x触媒を60g/L以上担持し、捕集効率を90%以上確保するためには、1〜60μmであることが更に好ましく、特に、PM個数規制に対応できるように、均一なPM捕集層を形成するためには、3〜30μmであることが特に好ましい。
【0079】
また、隔壁基材の気孔率は、30〜70%であることが好ましく、35〜60%であることが更に好ましい。隔壁基材の気孔率が30%未満であると、圧力損失が大きくなるという問題が生じるおそれがある。また、気孔率が70%を超えると、ガス浄化触媒層を含む隔壁の強度が不足するために、例えば、隔壁基材の表面からPM捕集層が剥離してしまうという問題が生じるおそれがあるため好ましくない。なお、上記気孔率の範囲内では、隔壁基材の気孔率が大きい程、圧損上昇を抑制した状態で触媒を細孔内に多く担持でき、好ましい。上記隔壁基材の気孔率は、微粒子が付着される前で、且つ触媒が担持される前の隔壁基材本来の気孔率を示す。
【0080】
このような隔壁基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。なお、上述した骨材粒子は、PM捕集層等を構成する微粒子よりも平均粒子径が大きな粒子を用いることが好ましい。
【0081】
隔壁基材からなるハニカム構造体(即ち、微粒子の付着前のハニカム構造体)の作製方法としては、例えば、
図12に示されるような、ハニカム構造体2Aが、複数本のハニカムセグメント62からなるハニカムセグメント接合体63によって構成され、ハニカムセグメント62同士が接合材64で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、以下のような作製方法を一例として挙げることができる。但し、ハニカム構造体の作製方法は、以下の作製方法に限定されることはなく、例えば、公知のハニカム構造体の作製方法を用いることもできる。ここで、
図12は、本発明の触媒担持フィルタの他の実施形態に適用されるハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。なお、
図12における符号66は、外周コート層を示す。
【0082】
まず、ハニカムセグメントの原料として、例えば、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練することによって、可塑性の坏土を得る。次に、得られた坏土を、所定の金型を用いて押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形する。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させる。
【0083】
次に、所定のセルの開口部を、目封止部を形成するためのスラリーによって目封止して目封止部を形成する。その後、目封止部を形成したハニカムセグメント成形体を焼成(仮焼き)する。
【0084】
上記した仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、例えば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0085】
更に、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、約1400℃〜1500℃前後程度であるが、これに限られるものではない。
【0086】
以上のようにして、ハニカム構造体を作製することができる。なお、上記作製方法においては、セルの開口部を目封止する目封止部を形成した後に、仮焼き、及び本焼成を行ってハニカム構造体を作製する例について説明しているが、目封止部は、ハニカムセグメント成形体の焼成を行った後に、別途形成してもよい。なお、目封止部の形成方法については、所定のセルの一方の開口部にマスクを配設し、残余のセルの開口部に目封止スラリーを充填する方法を挙げることができる。なお、このような目封止部の形成方法は、例えば、公知のハニカムフィルタにおける目封止部の作製方法に準じて行うことができる。
【0087】
なお、目封止部としては、上述したハニカムセグメント原料と同様な材料を用いると、ハニカムセグメントとの焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0088】
また、上記作製方法においては、ハニカム構造体が、複数本のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント接合体によって作製された場合の例について説明しているが、例えば、ハニカム構造体を一体的に押出成形(一体成形)することによって形成してもよい。このようにハニカム構造体を一体成形する場合には、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。
【0089】
また、上記作製方法においては、ハニカムセグメントの原料として、SiC粉末及び金属Si粉末を用いた場合の例について説明しているが、例えば、ハニカム構造体をコージェライトによって作製する場合には、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を加えて混練して坏土を調製することができる。コージェライト原料を用いた坏土を押出成形した成形体を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましく、3〜10時間程度焼成することが好ましい。
【0090】
[1−2]PM捕集層、及び細孔の内部に付着して固着した微粒子:
本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、
図4に示すように、ハニカム構造体を構成する隔壁4は、多数の細孔5を有する多孔質の隔壁基材4aと、流入セル3aを区画形成する側の隔壁基材4aの流入セル側表面に堆積して固着した微粒子20からなるPM捕集層20a、及び/又は流入セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔5aの内部に付着して固着した微粒子21と、から構成され、PM捕集層20aの平均細孔径、及び隔壁基材4aの細孔5aの内部に上記微粒子21が付着して固着した領域21xにおける平均細孔径が、隔壁基材4aの平均細孔径よりも小となるように構成されている。このため、上記PM捕集層等で排ガスのスート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(PM)を捕集し、隔壁の細孔内部へのPMの進入を阻止する役割を果たさせている。換言すれば、隔壁の細孔にスートが侵入する前に、PM捕集層等によってPMを捕集し、触媒担持フィルタの圧損の上昇を良好に抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、排ガス中のPMはPM捕集層及び/又は隔壁基材の細孔の内部に微粒子が付着して固着した領域に捕集・除去され、PM含有の少ないガスがガス浄化触媒層を通過することになる。このため、PM堆積によるガスと触媒との接触阻害が起こり難く、更に、PMがNO
x触媒が担持されたガス浄化触媒層に堆積し、著しい圧損上昇を引き起こす心配もない。また、隔壁の流入セルを区画形成する側にNO
xを浄化する触媒を担持した場合に比べ、使用中のアッシュ(灰)堆積によるセル閉塞や、排ガスと触媒との接触阻害も起こり難く、触媒の性能劣化を有効に抑制することができる。また、流入セルへのアッシュ堆積が進むことにより、流入セル後端からアッシュがセル内を閉塞し、例えば、流入セルにNO
x触媒が担持されていると、その機能が著しく低下してしまうが、本実施形態においては、流出セルにNO
x触媒を担持しているため、NO
x触媒の機能劣化を有効に防止することができる。
【0092】
本発明においては、上述したように、流入セルと流出セルとを区画する隔壁基材を、その厚さ方向(透過方向)に対して構成を異ならせることによって、「流入側」にPM捕集層及び/又は隔壁基材の細孔の内部に微粒子が付着して固着した領域を形成し、且つ「流出側」にガス浄化触媒層を形成している。
【0093】
なお、PM捕集層を構成する微粒子、及び隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した微粒子の平均粒子径は、隔壁基材の平均細孔径よりも小である限り特に制限はないが、それぞれの微粒子の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることが更に好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。なお、微粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、PM捕集層等の細孔が小さくなり過ぎて、触媒担持フィルタの圧損が上昇してしまう。一方、微粒子の平均粒子径が50μmを超えると、PM捕集層等の細孔が大きくなり過ぎて、排ガス中のPMがPM捕集層等を通過する割合が多くなってしまう。
【0094】
微粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、PM捕集層等の細孔が小さくなり過ぎて、PM捕集層に酸化触媒等を担持した場合、フィルタの圧損が上昇してしまう。一方、微粒子の平均粒子径が30μmを超えると、触媒担持がない場合にPM捕集層等の細孔が大きくなり過ぎて、排ガス中のPMがPM捕集層等を通過する割合が多くなってしまう。触媒を担持しても圧損上昇が少なく、PMがPM捕集層を通過する割合を抑える観点から、上述したように1〜10μmであることが特に好ましい。
【0095】
また、PM捕集層は複層(即ち、二層以上のPM捕集層が積層された層)としてもよい。また、PM捕集層の細孔径又は粒子径は傾斜していてもよい。その場合、細孔径又は粒子径は、その表面に近い程、小さい方が、隔壁基材の細孔内へのPM堆積を防止することができる上、圧損上昇も少なくすることができることから好ましい。
【0096】
なお、本発明において、「平均細孔径」、「気孔率」というときには、水銀圧入法により測定した平均細孔径、気孔率を意味するものとする。但し、後述するように、SEM(走査型電子顕微鏡)により撮影した画像を2値化処理して測定評価することを適宜加えることにより行う。
【0097】
なお、「隔壁基材の平均細孔径」というときは、細孔の内部に微粒子が付着していない状態における、隔壁基材単体の平均細孔径のことをいい、一方、「隔壁基材の細孔の内部に微粒子が付着して固着した領域における平均細孔径」というときは、上記微粒子が付着して固着した領域のみの平均細孔径(即ち、隔壁基材の流出セル側に微粒子が付着していない場合には、その部分を除く領域における平均細孔径)のことをいう。
【0098】
また、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、PM捕集層、及び隔壁基材の微粒子が細孔の内部に付着して固着した領域における平均細孔径は、0.1〜30μmであることが好ましく、0.1〜15μmであることがより好ましく、0.9〜11μmであることが更により好ましく、1.5〜6μmであることが特に好ましい。このように構成することによって、PM捕集層、或いは隔壁基材の細孔の内部に微粒子が付着して固着した領域による圧損の上昇を有効に抑制しつつ、PM捕集層等の表面上にてPMを良好に捕集(即ち、ケーキ層状に捕集)することができる。
【0099】
なお、平均細孔径が0.1μm未満であるとガス透過性が小さくなり細孔の透過抵抗が急上昇しやすくなるため好ましくなく、15μmより大きいと捕集性能が低下し、PMエミッションが欧州規制のユーロ5規制値をオーバーし易くなり好ましくない。
【0100】
なお、平均細孔径を0.9μm以上とすることにより、触媒を担持した時の圧損の上昇も抑制でき、また、平均細孔径を11μmよりも小さくすることによりPMエミッションが欧州規制のユーロ5規制値の1/5以下とすることができる。特に、平均細孔径を1.5μm以上とすると、触媒を10g/L以上担持しても圧損上昇を抑制でき、6μmよりも小さくすることにより隔壁基材へのPMの進入がほとんどなくなるため、圧損ヒステリシスが皆無となる。
【0101】
なお、PM捕集層の平均細孔径は、PM捕集層が形成された隔壁を、水銀圧入法により測定し、得られた細孔分布が二つの山を有する場合は、細孔径が小さい方の細孔分布のピークトップを、そのPM捕集層の平均細孔径とする。一方、得られた細孔分布が一つの山を有して、PM捕集層の細孔分布が特定できない場合は、隔壁の軸方向に対して垂直な断面の所望領域を樹脂埋め研磨し、倍率100倍〜1000倍の視野にてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、得られた画像を二値化処理し、微粒子間の隙間に内接する円の直径を5ヶ所以上計り、得られた値を平均化することによって、PM捕集層の平均細孔径とすることができる。
【0102】
また、PM捕集層等を形成する微粒子の平均粒子径を測定する際には、隔壁基材の軸方向に対して垂直な断面の所望領域を樹脂埋め研磨した断面、又は、破断面を、倍率100倍〜1000倍の視野にてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、PM捕集層を形成する微粒子の粒子径を測定する。一視野内にて測定された全粒子径の平均を平均粒子径とする。
【0103】
また、隔壁基材の流入セル側表面にPM捕集層が形成されている場合には、PM捕集層の厚さが、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの3/500〜1/2であることが好ましく、NO
x触媒を60g/L以上担持し、捕集効率を90%以上確保するためには、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの1/150〜1/5であることが更に好ましく、NO
x触媒を100g/L以上担持し、PM個数規制に対応できるように、均一なPM捕集層を形成するためには、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの1/100〜1/10であることが特に好ましい。なお、PM捕集層の厚さが、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの3/500未満であると、PM捕集層の厚さが薄すぎて、PMの捕集を十分に行うことができず、PM捕集層をPMの一部が容易に通過してしまうことがある。また、PM捕集層の厚さが、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの1/2を超えると、PM捕集層による圧損上昇の影響が大きくなり、触媒担持フィルタの初期の圧損を増大させてしまうことがある。
【0104】
なお、本発明において、「PM捕集層の厚さ」とは、PM捕集層を構成する微粒子の少なくとも5ヶの頂部の位置の平均と、隔壁基材側に食い込む微粒子の少なくとも5ヶの頂部の位置の平均との間の距離(即ち、一方の5ヶの頂部の平均によって描かれる線分と、他方の5ヶの頂部の平均によって描かれる線分との距離)のことをいう。このようなPM捕集層の厚さは、例えば、セル断面を電子顕微鏡又は光学顕微鏡により拡大して測定することができる。例えば、
図7は、PM捕集層20aを構成する微粒子20の5ヶの頂部n1〜n5と、隔壁基材4a側に食い込む微粒子20の5ヶの頂部n6〜n10と、のそれぞれの平均位置を求め、この平均位置の線分間を距離によって、PM捕集層の厚さTを求める場合の例を示している。ここで、
図7は、PM捕集層の厚さを求める方法を模式的に示す断面図である。
【0105】
また、隔壁基材の細孔の内部に微粒子が付着している場合には、微粒子が付着している隔壁厚さ(即ち、微粒子が付着している領域の壁の厚さ)が、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの3/500〜1/2であることが好ましく、1/125〜1/5であることが更に好ましく、1/100〜1/10であることが特に好ましい。例えば、微粒子が付着している隔壁厚さが、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの3/500未満であると、微粒子が付着している領域が狭すぎて(薄すぎて)PMを捕集することが困難になることがあり、1/2を超えると、微粒子が付着している領域が広すぎて(厚すぎて)圧損が上昇することがある。
【0106】
なお、微粒子が付着している隔壁厚さが、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの1/125未満であると、局所的な欠陥(ピンホール)の発生する可能性があり、一方、1/5を超えると、NO
x触媒を担持する量を100g/L以下に抑えないと圧損上昇が大きくなることがある。また、局所的な欠陥をなくし、触媒担持量が多くても圧損上昇を抑えるためには、上述したように1/100〜1/10であることが特に好ましい。
【0107】
PM捕集層を構成する微粒子、及び隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した微粒子の材質については特に制限はないが、例えば、セラミック材料によって構成された微粒子であることが好ましい。具体的には、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、アルミニウムチタネート、又は窒化珪素のうちのいずれかであることが好ましい。
【0108】
また、これらの微粒子は、隔壁基材を構成する材料と同じ材料によって構成されていることが更に好ましい。例えば、隔壁基材がセラミック材料によって構成されている場合には、この隔壁基材と同様のセラミック材料によって微粒子が構成されていることが好ましい。このように構成することによって、隔壁基材と微粒子との熱膨張率が同じとなり、触媒担持フィルタの強制再生時における温度変化によって破損等を生じ難くすることができる。
【0109】
図4においては、隔壁4が、隔壁基材4aと、PM捕集層20aと、細孔5aの内部に付着して固着した微粒子21と、から構成された場合の例を示しているが、本発明の触媒担持フィルタは、例えば、
図8に示すように、隔壁4が、隔壁基材4aと、流入セル3aを区画形成する側の隔壁基材4aの流入セル側表面に堆積して固着した微粒子20からなるPM捕集層20aと、から構成されていてもよいし、また、例えば、隔壁4が、隔壁基材4aと、流入セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔5aの内部に付着して固着した微粒子21と、から構成されていてもよい。
【0110】
ここで、
図8及び
図9は、本発明の触媒担持フィルタの他の実施形態の隔壁の一部を拡大して示す断面図である。なお、拡大部分は、
図3における触媒担持フィルタの隔壁のPで示す部分と同様の部分である。
図8及び
図9に示す触媒担持フィルタ1A,1Bにおいて、
図3に示す触媒担持フィルタ1の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
また、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、
図10に示すように、PM捕集層20aは、網目構造を有していることが好ましい。このように構成することによって、PM捕集層のガス透過抵抗を抑制することができる。PM捕集層の構造を隔壁基材と同じにする場合(即ち、網目構造ではない構造とする場合)、細孔径が小さくなる分、ガスの透過抵抗が大きくなるが、網目構造とすることにより、隔壁基材よりもガス透過抵抗を小さくできるため、実質のガス透過抵抗がほとんど見られない。また、PM捕集層に触媒を担持した時の圧損上昇も抑制できる上、触媒表面積が増え、PM燃焼を助ける効果がある。なお、「網目構造」とは、粒子自体が中空のリング状であったり、針状粒子や板状粒子が成長又は結合し、窪み又は空洞を形成している構造のことをいう。
【0112】
ここで、
図10は、本発明の触媒担持フィルタの更に他の実施形態の隔壁の一部を拡大して示す断面図である。なお、拡大部分は、
図3における触媒担持フィルタの隔壁のPで示す部分と同様の部分である。
図10に示す触媒担持フィルタ1Cにおいて、
図3に示す触媒担持フィルタ1の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
また、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、隔壁基材と、PM捕集層を構成する微粒子、及び隔壁基材の細孔の内部に付着して固着した微粒子とが、一体焼結された焼結相を有しているものであってもよい。このように構成することによって、隔壁基材とPM捕集層等を構成する微粒子が強固に結合されるため、強制再生時の温度変化にも耐えることができる。また、添加される尿素やアンモニア、シアヌル酸、ビウレット等に対する耐食性を有し、結晶化による体積膨張にも耐えることができる。
【0114】
なお、上述した焼結相は、PM捕集層等を形成するためのセラミック原料(微粒子)を隔壁基材の表面或いは隔壁基材の細孔内部に配置し、配置したセラミック原料を焼結してPM捕集層を形成する際に、その隔壁基材の一部と上記セラミック原料とが焼結して形成される相のことである。このような焼結相は、隔壁の断面を、例えば、電子顕微鏡によって観察し、粒子同士が一体化し、粒界がなくなっていることにより、確認することができる。なお、一部の成分がガラス相を形成し、一体化している場合も含む。異なる成分の場合は、例えば、EDS(EDX)による成分分析により、界面付近にお互いの少なくとも一部の成分が拡散していることで確認することができる。なお、EDS及びEDXは、Energy Dispersive X−ray Spectroscopy(エネルギー分散型X線分光分析)の略である。
【0115】
なお、上記したように、PM捕集層を網目構造とする場合には、PM捕集層を形成する微粒子として、線状粒子、板状粒子、針状粒子、或いはこれらの混合粒子を用いることや、使用する微粒子に有機成分を混入させて、微粒子を凝集させることにより行うことができる。これにより、PM捕集層の内部又は微粒子の相互間に、その微粒子の大きさよりも大きな空間を確保した状態で層(PM捕集層)が形成され、その構造を網目構造とすることができる。
【0116】
PM捕集層は、PMをその表面にて捕集し、隔壁基材の細孔への大量のPMの侵入を防止するものであり、また、細孔の内部に微粒子が付着して固着した領域についても、この領域によって大量のPMの侵入を防止するものであることから、PM捕集層及び上記領域は、隔壁基材の平均細孔径より小さい平均細孔径の細孔を有するものであることが好ましい。このため、PM捕集層等の平均細孔径は、隔壁基材の平均細孔径の1/1000〜9/10倍であることが好ましく、隔壁基材の平均細孔径の1/100〜1/2倍であることが更に好ましく、1/20〜1/5倍であることが特に好ましい。PM捕集層等の平均細孔径が、隔壁基材の平均細孔径の1/1000倍未満であると、PM捕集層等の細孔が小さすぎて触媒担持フィルタの圧損が大きくなることがある。一方、PM捕集層等の平均細孔径が、隔壁基材の平均細孔径の9/10倍を超えると、PM捕集層等の細孔が大きすぎて、隔壁基材の細孔との実質的な差異が無くなり、PM捕集層等の細孔内にPMが侵入し、圧損が増大してしまうことがある。即ち、上述した初期圧損上昇と同じ状態が生じてしまう可能性がある。
【0117】
なお、仮に、PM捕集層等の平均細孔径が、隔壁基材の平均細孔径の1/20倍以下の場合であっても、それぞれの微粒子が最密充填とならない網目構造を形成することにより、PM捕集層等の平均細孔径が小さすぎても、触媒担持フィルタの圧損上昇を抑制する効果が大きくなり、好ましいものとなる。また、PM捕集層等の平均細孔径が、隔壁基材の平均細孔径の1/5倍以上の場合であっても、PM捕集性能を高めるための付加機能を設けることにより、PM捕集層等の平均細孔径が大きすぎても、PMが隔壁基材の内部に侵入する確率を低減でき、触媒担持フィルタの圧損上昇を抑制する効果が大きくなり、好ましい。PM捕集性能を高めるための付加機能の具体例としては、例えば、電気絶縁性の高い材料を一部用いることにより表面に静電気を蓄え、静電吸着によりPMを捕集させることや、PMに含まれる水分や油分を吸着しやすいように、親水基又は親油基を持たせることを挙げることができる。
【0118】
また、PM捕集層の気孔率は40〜90%あることが好ましく、50〜80%であることが更に好ましい。PM捕集層の気孔率が、40%未満であると、圧力損失が大きくなるという問題が生じるおそれがあり、90%を超えると、PM捕集層の強度が不足するために、隔壁基材の表面からPM捕集層が剥離してしまうという問題が生じるおそれがあるため好ましくない。更に、PM捕集層の気孔率が、上記範囲未満であると堆積するパティキュレートの量が多いため、フィルタの再生作業が困難となるという問題があり、上記範囲を超えると、触媒担持フィルタの強度が低下し、キャニングが困難となるという問題があるため好ましくない。
【0119】
なお、PM捕集層の気孔率は、隔壁基材の気孔率よりも5%以上大きく形成すると、PM捕集層における圧力損失(透過圧損)を小さくすることができるという利点があるため、好ましい。
【0120】
なお、PM捕集層の気孔率は、隔壁の軸方向に対して垂直な断面の所望領域を樹脂埋め研磨し、倍率100倍〜1000倍の視野にてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、得られた画像を二値化処理し、一視野内の空隙と粒子の面積比により測定することができる。
【0121】
このようなPM捕集層は、例えば、炭化珪素粉末等のセラミック原料を含有するスラリーを準備し、そのスラリー中に、ハニカム構造体を浸漬した後に焼成(PM捕集層を形成するための焼成工程)して形成することができる。なお、ハニカム構造体を浸漬する祭には、流入セルの内部のみにPM捕集層が形成されるように(即ち、流出セルの内部にはPM捕集層が形成されないように)、流入セルを区画形成する隔壁基材のみが上記スラリーと接触するようにする。例えば、ハニカム構造体の所定のセルの開口部を予め目封止した状態として上記スラリーに浸漬する方法や、所定のセルの開口部にマスクをした状態で上記スラリーに浸漬する方法等によって、流入セルを区画形成する隔壁基材のみにPM捕集層を形成することができる。なお、隔壁基材の細孔の内部に、上述したスラリーを侵入させることによって、隔壁基材の細孔の内部に微粒子を付着させることができる。例えば、スラリーの量を調整することによって、PM捕集層を形成しつつ、隔壁基材の細孔の内部に微粒子を付着させることもできるし、また、隔壁基材の表面にはPM捕集層を形成せずに、隔壁基材の細孔の内部のみに微粒子を付着させることもできる。
【0122】
このPM捕集層を形成するためのスラリーに含有させるセラミック原料の粒子の大きさは、ハニカム構造体を形成するための原料の粒子(即ち、隔壁基材を形成するための粒子)の大きさよりも小さいものとすることが好ましい。例えば、PM捕集層を形成するためのスラリーに含有させる炭化珪素粉末は、平均粒径が0.3〜5μmの粒子を用いることが好ましい。また、このような炭化珪素粉末を、有機高分子材料等からなる分散媒中に分散させて、その粘度を50,000cP程度に調整したものを好適に用いることができる。また、PM捕集層を焼成する際の焼成温度は約1400〜1500℃前後程度であることが好ましい。このように構成することによって、隔壁基材の平均細孔径より小さい平均細孔径の細孔を有する多孔質のPM捕集層を形成することができる。
【0123】
また、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、PM捕集層等は、これまでに説明した隔壁基材の細孔内へのPMの侵入を防止し、PMを事前に捕集する役割(機能)だけでなく、PM捕集層等に、捕集したPMを酸化処理する役割(機能)が付与されていてもよい。
【0124】
即ち、PM捕集層は、PM捕集層の表面及びPM捕集層の細孔内部の少なくとも一方に、酸化触媒が担持されてなるものであ
る。このように構成することによって、PMを捕集するPM捕集層としての機能と、PMを酸化処理する機能とが相俟って、隔壁の流入側層で確実にPMを捕集するとともにPMを酸化処理する。その結果、後述のガス浄化触媒層と相乗的に、触媒担持フィルタとしての再生効率を著しく向上させることができるのである。即ち、PM捕集層に堆積しているPMの再生処理(酸化処理)によって、局所的なO
2濃度を下げることができ、これにより、流出セル側のガス浄化触媒層によって、NO
x浄化効率を上昇させることができる。
【0125】
このような酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及び銀(Ag)等の貴金属が好適に用いられる。
【0126】
なお、本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、上記酸化触媒以外にも、他の触媒や浄化材が、更に担持されていてもよい。例えば、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒が担持されていてもよい。
【0127】
なお、このような酸化触媒は、隔壁基材の細孔内部の少なくとも一部に更に担持してもよい。このように構成することによって、仮に、排ガス中のPMの一部が、PM捕集層によって捕集されず、PM捕集層を透過して隔壁基材の細孔内に侵入した場合であっても、そのPMを酸化触媒によって燃焼除去することができる。
【0128】
なお、このような酸化触媒の担持量について
は、1〜34g/Lであ
り、5〜30g/Lであること
が好ましい。例えば、酸化触媒の担持量が1g/L未満であると、PM燃焼性能が足りなくなることがあり、一方、34g/Lを超えると、PM捕集層の細孔を塞ぎ、ススが堆積しない状態でも圧力損失が著しく高くなることがある。PMはPM捕集層の部分にほとんど堆積するため、隔壁細孔内部への担持が不要となるため、従来の担持量よりも減らすことができる。
【0129】
[1−3]ガス浄化触媒層:
本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、流出セルを区画形成する隔壁基材上及び隔壁基材の細孔内部の少なくとも一方に、少なくともNO
xを浄化する触媒が担持されたガス浄化触媒層が形成されている。
【0130】
NO
xを浄化する触媒としては、例えば、選択還元型NO
x触媒、NO
x吸蔵触媒、三元触媒、四元触媒、及び四元以上の多元触媒からなる群より選択される少なくとも一種の触媒を挙げることができる。更に、これ以外の触媒や、浄化材が、更に担持されてもよい。
【0131】
なお、「選択還元型NO
x触媒」とは、リーン雰囲気において、NO
xを還元成分と選択的に反応させて浄化する触媒をいう。例えば、銅、コバルト、ニッケル、鉄、ガリウム、ランタン、セリウム、亜鉛、チタン、カルシウム、バリウム及び銀からなる群より選択される少なくとも一種の貴金属を、ゼオライト又はアルミナを含有するコート材に担持させて得ることができる。本実施形態の触媒担持フィルタにおいては、上記選択還元型NO
x触媒として、尿素選択還元型NO
x触媒を好適に用いることができる。
【0132】
また、「NO
x吸蔵還元触媒」とは、空燃比がリーン状態のときにNO
xを吸蔵し、一定間隔でリッチスパイクを行った時に(排ガスを燃料リッチにした時に)、吸蔵したNO
xをN
2に還元する触媒をいう。例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニアのような金属酸化物のコート材に白金、パラジウム、ロジウムのような貴金属と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも一種の金属とを担持させて得ることができる。
【0133】
また、「三元触媒」とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO
x)を浄化する触媒のことをいう。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができ、これら触媒により、炭化水素は水と二酸化炭素に、一酸化炭素は二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素に、それぞれ酸化或いは還元によって浄化される。
【0134】
更に、四元触媒としては、三元触媒による浄化機能とススの浄化機能を有する触媒(例えば、PM酸化触媒)を挙げることができ、また、四元以上の多元触媒としては、例えば、上記三元触媒又はNO
x吸蔵還元触媒にPM酸化触媒を組み合わせた成分の触媒を挙げることができる。
【0135】
NO
xを浄化する触媒(NO
x触媒)の担持量は、35g/L以上であ
り、35〜500g/Lであること
が好ましく、35〜300g/Lであることが更により好ましく、100〜200g/Lであることが特に好ましい。NO
x触媒の量が35g/L未満であると、浄化性能が足りなくなることがある。なお、NO
xを浄化する触媒の担持量が500g/Lを超えると、セルを塞ぎ、ススが堆積しない状態でも圧力損失が著しく高くなることがある。
【0136】
NO
x触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁基材に対して、上記触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造体の隔壁基材の流出セル側に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状のガス浄化触媒層を形成することができる。この際、ガス浄化触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コートした層(膜)の厚さはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0137】
また、本実施形態の触媒担持フィルタは、例えば、
図11に示すように、隔壁基材の流出セル側表面及び流出セル側表面から所定の隔壁厚さ範囲の細孔の内部のうちの少なくとも一方に、アンモニアスリップ防止触媒が担持されたアンモニアスリップ防止触媒層24が更に形成されてなるものであってもよい。このようなアンモニアスリップ防止触媒層24により、アンモニアを還元剤としてNO
xの浄化を行った場合に、仮に、過剰にアンモニアが供給された場合であっても、触媒担持フィルタの下流側からのアンモニアの流出を有効に抑制することができる。また、アンモニアスリップ防止触媒等を、触媒担持フィルタの下流側に別途配設する浄化システムと比較して、装置をコンパクトにすることが可能となる。
【0138】
ここで、
図11は、本発明の触媒担持フィルタの他の実施形態の隔壁の一部を拡大して示す断面図である。なお、拡大部分は、
図3における触媒担持フィルタの隔壁のPで示す部分と同様の部分である。
図11に示す触媒担持フィルタ1Dにおいて、
図3に示す触媒担持フィルタ1の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0139】
このような構成においては、アンモニアスリップ防止触媒が、流出セル側表面から隔壁基材の細孔の内部に担持されている場合には、隔壁基材のセルを区画する部位の厚さの1/2未満の厚さ範囲において担持されていることが好ましい。
【0140】
また、アンモニアスリップ防止触媒層は、ハニカム構造体の流出端面側の領域に部分的に形成(ゾーン形成)されていることが好ましい。このように構成することによって、触媒担持フィルタに過剰なアンモニアが導入された場合に、流出端面側にてアンモニアを分解処理することができ、触媒担持フィルタの流出端面側からのアンモニアの排出を有効に防止することができる。
【0141】
なお、「ハニカム構造体の流出端面側の領域に部分的に形成」とは、ハニカム構造体の長手方向(即ち、セルの貫通方向)全域に形成されるのではなく、ハニカム構造体の長手方向における中央部分よりも流出側の端面側の領域に「部分的」に形成されていることを意味する。なお、このように特定に領域に部分的に形成されることを「ゾーン形成」ということがある。アンモニアスリップ防止触媒層は、ハニカム構造体の流出側の端面から、その長手方向の60%の範囲に形成されていることが更に好ましく、30%の範囲に形成されていることが特に好ましい。触媒担持領域が限定されることにより、触媒担持による圧損上昇を抑制できることに加え、流出端面側の隔壁を流れるガスは、NO
x触媒又はアンモニアスリップ防止触媒との接触機会がない流入セル内を通ってくるが、流出側端部側に限定されることにより、流出端面側の隔壁を流れるガス量が抑制され、この触媒との接触機会を増やすことができる。
【0142】
なお、アンモニアスリップ防止触媒としては、NO
x触媒の下流側に配置され、NO
x触媒を通過した過剰のアンモニアを除去するために使用される従来公知のアンモニアスリップ防止触媒を用いることができる。例えば、特開2008−279334号公報、特開2004−270565号公報、特許第3051142号公報、特開昭63−100919号公報、特開平1−135541号公報等に記載されたアンモニアスリップ防止触媒を用いることができる。
【0143】
具体的には、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銅(Cu)等を、アルミナ等の母材に担持したものを挙げることができる。なお、上記した母材としては、アルミナ以外に、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化タングステン、ゼオライト、遷移金属酸化物、希土類酸化物、又はこれらの複合酸化物等であってもよい。
【0144】
また、アンモニアスリップ防止触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも一種の金属でイオン交換されたゼオライトからなる触媒を用いることもできる。
【0145】
上述した白金(Pt)等を母材に担持した触媒は、例えば、アルミナ等の無機母材と、塩化白金(IV)酸、亜硝酸ジアンミン白金(II)、水酸化白金酸アミン溶液、塩化白金酸、ジニトロジアンミンパラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)等の金属塩の水溶液とを混合して乾燥、焼成を行う等、適宜公知の方法により作製することができる。
【0146】
なお、このようなアンモニアスリップ防止触媒の担持量については特に制限はないが、0.5〜50g/Lであることが好ましく、1〜30g/Lであることが更に好ましい。例えば、酸化触媒の担持量が0.5g/L未満であると、アンモニアスリップ防止性能が足りなくなることがあり、一方、50g/Lを超えると、PM捕集層の細孔を塞ぎ、ススが堆積しない状態でも圧力損失が著しく高くなることがある。PMはPM捕集層の部分にほとんど堆積するため、隔壁細孔内部への担持が不要となるため、従来の担持量よりも減らすことができる。なお、ゾーンコートの場合は、コートされた領域の体積当りの量を示す。
【0147】
[2]排ガス浄化システム:
次に、本発明の排ガス浄化システムの一の実施形態について具体的に説明する。本実施形態の排ガス浄化システムは、これまでに説明した本発明の触媒担持フィルタ1を備えた排ガス浄化システム50である。即ち、
図13に示すように、ディーゼルエンジンから排出される排ガスが流通する排ガス流路51内に配設された本発明の触媒担持フィルタ1と、この触媒担持フィルタ1よりも上流側の排ガス流路51内に配設された、尿素水溶液又はアンモニア水溶液を排ガス中に噴射して供給する還元剤供給部52と、を備えた排ガス浄化システム50である。ここで、
図13は、本発明の排ガス浄化システムの一の実施形態を模式的に示す説明図であり、排ガス浄化システムの一部切り欠き断面図である。
【0148】
本実施形態の排ガス浄化システムは、これまでに説明した本発明の触媒担持フィルタを備えたものであり、排ガス中のパティキュレートの捕集、及び排ガス中の有害成分(特に、NO
x)の浄化を良好に行うことができるとともに、圧損の過度の上昇を有効に抑制することができ、再生制御性に優れ、且つコンパクトな構成とすることができる。
【0149】
なお、
図13に示す排ガス浄化システム50においては、ディーゼル酸化触媒(DOC)53を、還元剤供給部52の上流側に更に備えた例を示している。また、触媒担持フィルタ1及びディーゼル酸化触媒(DOC)53は、例えば、保持材としてセラミック製非熱膨張性のマット55によって保持され、金属性(例えば、ステンレス製)のキャニング用缶体54によってキャニングされている。
【0150】
なお、還元剤供給部は、アンモニア水溶液を排ガス中に噴射して供給する、或いは、尿素水溶液を排ガス中に噴射して、尿素の加水分解によってアンモニアを発生させる供給部であり、従来公知のSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒装置に用いられる還元剤供給部と同様に構成されたものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0151】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0152】
[1]PM付圧損(kPa):
触媒担持フィルタに、PMを3g/L堆積させた状態における圧損を測定した。なお、PMを堆積させる際の排ガスの流量は、7m
3/minとし、排ガスの温度は200℃とした。なお、圧損の測定には、ディーゼルエンジンを用いた。
【0153】
[2]圧損ヒステリシス(%):
触媒担持フィルタに、PMが堆積していない状態から、PMを3g/L堆積させた状態における圧損を連続的に測定し、横軸をPM堆積量(g/L)、縦軸を圧損(kPa)とした、
図14示すようなグラフを作成する。その後、1g/L堆積時の圧損(kPa)と3g/L堆積時の圧損(kPa)とを結ぶ直線と同じ傾きの直線を、PMが堆積していない状態(PM堆積量が0g/Lの圧損)を通るようにスライドさせた際の、3g/L堆積時の圧損(kPa)の変化率を圧損ヒステリシス(%)として、下記式(2)に従い測定した。この変化率(圧損ヒステリシス)は、実測値における3g/L堆積時の圧損(kPa)を100%とした減少率である。
圧損ヒステリシス(%)=〔3g/L堆積時の圧損(実測)−スライド時の圧損〕/(3g/L堆積時の圧損(実測))×100 ・・・ (2)
【0154】
ここで、
図14は、上述した圧損ヒステリシスの算出に用いる、PM堆積量(g/L)と圧損(kPa)との関係を示すグラフである。
【0155】
[3]NO
x浄化触媒の劣化評価:
触媒担持フィルタに、50g/Lのアッシュ(灰)を堆積させた状態における、選択還元型NO
x触媒の触媒性能(劣化の有無)を評価した。なお、この劣化評価には、6Lディーゼルエンジンを用いて、排ガス中のNO
x量が、P−NLT規制(Post New Long Term:ポスト新長期規制(JP09規制ともいう))の基準をクリア可能であるかを評価した。上記基準をクリア可能の場合を「良」とし、上記基準をクリアできない場合を「不可」とした。
【0156】
[4]コンパクト性(全長):
触媒担持フィルタを含む排ガス浄化システムの長さを測定した。なお、「排ガス浄化システムの長さ」とは、酸化触媒を担持したフィルタ(CSF)、選択型触媒還元(SCF)、アンモニアスリップ防止触媒(ASC)の機能部分の総長とし、各部が分離した装置からなる浄化システムの場合には、それぞれの長さの総和を全長とし、各機能が一体化した装置の場合には、その長さを全長とした。なお、この全長には、各装置を接続する配管類の長さは含まないものとする。
【0157】
[5]PM堆積限界量(g/L):
触媒担持フィルタに、PM(煤)を堆積させ、フィルタの再生時における温度が、1100℃に達する際のPMの堆積量(g/L)を、そのフィルタのPM堆積限界量(g/L)とした。なお、測定においては、6Lディーゼルエンジンを用い、フィルタの再生方式は、ポストインジェクションとし、再生条件は、600℃再生からアイドル回転に落としていくものとした。
【0158】
[6]耐久性:
触媒担持フィルタに、フィルタの再生時における温度が、900℃に達するPMの堆積量(g/L)をあらかじめ測定し、その量のPM(スス)を堆積させ、強制再生を行なった。なお、測定においては、6Lディーゼルエンジンを用い、フィルタの再生方式は、ポストインジェクションとし、再生条件は、600℃再生からアイドル回転を落としていくものとした。上述したススの堆積と再生とを100回繰り返した後、断面観察により、PMモレの有無を確認した。PMモレとは、PMが触媒担持フィルタを通過して、流出側の端面から排出されてしまうことをいい、PM個数規制(6×10
11個/kmレベル)に準拠した個数のPMのモレの有無によって判定を行った。上記PM個数規制をクリアできる場合は「良」とし、クリアできない場合や著しく欠陥等のクラックがある場合は「不可」とした。
【0159】
(
参考例1)
まず、触媒担持フィルタのハニカム構造体(具体的には、隔壁基材)を作製する原料として、タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化カルシウム、及びシリカのうちから複数を組み合わせて、その化学組成が、SiO
2(シリカ)42〜56質量%、Al
2O
3(アルミナ)30〜45質量%、及びMgO(マグネシア)12〜16質量%となるように所定の割合で調合されたコージェライト化原料を用いた。このコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材としてグラファイトを12〜25質量部、及び合成樹脂を5〜15質量部を添加した。更に、メチルセルロース類、及び界面活性剤をそれぞれ適当量添加した後、水を加えて混練することにより坏土を調製した。調製した坏土を真空脱気した後、押出成形することによりハニカム成形体を得た。次に、ハニカム成形体を焼成することによってハニカム焼成体(多孔質の隔壁基材)を得た。焼成条件は、1400〜1430℃、10時間とした。
【0160】
次に、得られたハニカム焼成体に目封止を施した。得られたハニカム焼成体の一方の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部をセラミック原料としてコージェライト材を含有する目封止スラリーに浸漬し、市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。更に、他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成した。
【0161】
次に、PM捕集層を形成するために、PM捕集層を形成するためのコージェライト微粒子とシリカ微粒子、及び水と有機バインダを含む物質を調製し、これをハニカム焼成体のセル内に充填して、圧力をかけた。コージェライト微粒子とシリカ微粒子は、ハニカム焼結体によってろ過され、焼結体(隔壁基材)を覆うように表面上に堆積した。このように堆積したコート層によってPM捕集層を形成した。この後、エアーブロー後、120℃、24時間熱風乾燥させた。なお、このPM捕集層を形成するための微粒子(コージェライト微粒子とシリカ微粒子)の平均粒子径は、2μmである。
【0162】
そして、乾燥させたPM捕集層付ハニカム焼成体(PM捕集層は未焼成)を、1430℃、3時間の条件で焼成し、直径266.7mm、全長304.8mmの円筒形のハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体における、隔壁基材のセル密度は46.5セル/cm
2(300cpsi)、隔壁の厚さは、304.8μm(12mil)であった。隔壁基材の平均細孔径は16μm、気孔率は52%であった。PM捕集層は、厚さ20μm、気孔率70%、平均細孔径3μmであった。PM捕集層の厚さは、切断観察により測定した値であり、気孔率、平均細孔径は市販の水銀ポロシメーターで測定した値である。PM捕集層の測定試験片にはPM捕集層側を除き樹脂埋めを施し、基材の測定試験片には、PM捕集層側を樹脂埋めした。ここで、
図16は、
参考例1のPM捕集層の断面の顕微鏡写真である。
【0163】
ハニカム構造体の、隔壁基材の流出セル側には、選択還元型NO
x触媒を100g/Lで担持してガス浄化触媒層を形成した。
【0164】
参考例1の触媒担持フィルタの構成を表1に示し、上記したPM付圧損、圧損ヒステリシス、NO
x浄化触媒の劣化評価、コンパクト性(全長)、PM堆積限界量、及び耐久性の評価結果を表2に示す。なお、
参考例1においては、アンモニアスリップ防止触媒(ASC)担体を、触媒担持フィルタの後段に別途配置した。表1の「排ガス浄化システムの構成」において、「触媒担持フィルタ+ASC担体」と示す。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
(
参考例2)
酸化触媒を、PM捕集層に担持し、隔壁基材の流出セル側には、NO
x吸蔵触媒を80g/Lで担持してガス浄化触媒層を形成したこと以外は、参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。なお、酸化触媒は、γ−アルミナを含む酸化触媒スラリーを調製し、吸引法によって担持を行った。
【0168】
(
参考例3)
隔壁基材の流出セル側には、選択還元型NO
x触媒を80g/Lで担持してガス浄化触媒層を形成した後、同じく隔壁基材の流出セル側に、アンモニアスリップ防止触媒として、白金(Pt)とパラジウム(Pd)でイオン交換されたゼオライトを担持してアンモニアスリップ防止触媒層を形成したこと以外は、
参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。
【0169】
(
参考例4)
ハニカム構造体の流出側端部における隔壁基材の流出セル側表面近傍に、アンモニアスリップ防止触媒として、白金(Pt)とパラジウム(Pd)でイオン交換されたゼオライトを担持してアンモニアスリップ防止触媒層を形成したこと以外は、
参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。なお、アンモニアスリップ防止触媒層は、ハニカム構造体の流出側端部から100mmの範囲にゾーン形成(部分的に形成)した。
【0170】
(
参考例5)
PM捕集層を気孔率80%、基材の気孔率を65%とした以外は、
参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。
【0171】
(
参考例6)
参考例1に用いた、PM捕集層を形成するためのコージェライト微粒子とシリカ微粒子を、ハニカム焼成体(隔壁基材)の細孔の内部に付着させて固着させることによって、触媒担持フィルタを作製した。即ち、
参考例6の触媒担持フィルタは、隔壁基材上にはPM捕集層が形成されておらず、細孔の内部に上記微粒子を付着させて固着させた。
参考例1と同様に隔壁基材の流出セル側には、選択還元型NO
x触媒を100g/Lで担持してガス浄化触媒層を形成した。なお、微粒子が付着した領域における、隔壁基材の平均細孔径は3μmであった。なお、この微粒子を付着させた領域における平均細孔径については、表1において、PM捕集層の平均細孔径の欄に、カッコ書きでその数値を示す。
【0172】
(
参考例7)
参考例1に用いた、PM捕集層を形成するためのコージェライト微粒子とシリカ微粒子を、ハニカム焼成体(隔壁基材)の細孔の内部と隔壁表面の両方に付着させて固着させることによって、触媒担持フィルタを作製した。即ち、
参考例7の触媒担持フィルタは、隔壁基材上にPM捕集層が形成され、更に、細孔の内部にも上記微粒子を付着させて固着させている。
参考例1と同様に隔壁基材の流出セル側には、選択還元型NO
x触媒を100g/Lで担持してガス浄化触媒層を形成した。なお、PM捕集層の平均細孔径、及び微粒子が付着した領域における、隔壁基材の平均細孔径は3μmであった。
【0173】
(
参考例8)
PM捕集層を形成するための微粒子(コージェライト微粒子とシリカ微粒子)として、平均粒子径が0.5μmの微粒子を用いた以外は、
参考例1と同様にして触媒担持フィルタを作製した。
【0174】
(
参考例9)
PM捕集層を形成するための微粒子(コージェライト微粒子とシリカ微粒子)として、平均粒子径が7μmの微粒子を用いた以外は、
参考例1と同様にして触媒担持フィルタを作製した。
【0175】
(比較例1)
参考例1に用いたハニカム構造体(PM捕集層の形成されていない隔壁基材)に、目封止部を施してハニカムフィルタを製造した。このハニカムフィルタには、酸化触媒及び選択還元型NO
x触媒は担持していない。
【0176】
このハニカムフィルタとは別に、ハニカム構造体を作製したものと同様に構成された原料を用いて、直径266.7mm、全長304.8mmの円柱状で、隔壁厚さ150μm(6mil)、セル密度62セル/cm
2(400セル/平方インチ)のSCR触媒担持用の基材を作製し、このSCR触媒担持用の基材に、選択還元型NO
x触媒を150g/Lで担持した。
【0177】
上記ハニカムフィルタに下流側に、選択還元型NO
x触媒を担持した基材を別途配設し、比較例1の排ガス浄化システムとした。なお、表1の「排ガス浄化システムの構成」において、「ハニカムフィルタ+SCR担体」と示す。
【0178】
(比較例2)
参考例1の触媒担持フィルタにおけるPM捕集層を形成せずに、ハニカム構造体に選択還元型NO
x触媒のみを担持したこと以外は、
参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。
【0179】
(比較例3)
参考例1の触媒担持フィルタにおける、隔壁基材の流出側への選択還元型NO
x触媒の担持をしないこと以外は、
参考例1と同様に構成されたハニカムフィルタを作製した。即ち、このハニカムフィルタは、NO
x浄化性能を有していない。そして、比較例1における選択還元型NO
x触媒を担持した基材と同様に構成された基材を作製し、上記ハニカムフィルタに下流側に、選択還元型NO
x触媒を担持した基材を配設し、比較例1の排ガス浄化システムとした。
【0180】
上述し
た参考例
2〜9、及び比較例1〜3においても、上記したPM付圧損、圧損ヒステリシス、NO
x浄化触媒の劣化評価、コンパクト性(全長)、PM堆積限界量、及び耐久性の評価結果を表2に示す。なお、比較例1〜3については、一部の評価を行っていないものがある。
【0181】
(比較例4)
参考例1の触媒担持フィルタにおいて、隔壁基材の流出セル側に担持した選択還元型NO
x触媒を、PM捕集層と隔壁基材の流入セル側に担持したこと以外は、
参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。即ち、比較例4においては、排ガス浄化触媒層が、PM捕集層側に形成されている。
【0182】
(比較例5)
参考例1の触媒担持フィルタにおいて、隔壁基材の流出セル側に担持した選択還元型NO
x触媒を、PM捕集層と隔壁基材の流入セル側の、隔壁基材(即ち、ハニカム構造体)の流出側端部に担持したこと以外は、
参考例1と同様に構成された触媒担持フィルタを作製した。即ち、比較例5においては、排ガス浄化触媒層は、PM捕集層側の、隔壁基材の流出側端部に部分的に形成されている。上述した比較例4及び5において、上記したPM付圧損、圧損ヒステリシス、及びNO
x浄化触媒の劣化評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0183】
(結果)
参考例1
〜9の触媒担持フィルタは、圧損上昇が抑制されており、圧損ヒステリシスも極めて低いものであった。一方、比較例1〜3については
、参考例と比較して圧損の上昇が大きく、また、比較例1、2、4及び5においては、圧損ヒステリシスが極めて大きなものであった。ここで、圧損ヒステリシスの評価事例を、
図15A及び
図15Bを用いてより具体的に説明する。
図15Aは、参考例1と同様の構成の触媒担持フィルタの圧損ヒステリシスの評価結果の一例を示すグラフであり、
図15Bは、比較例2と同様の構成の触媒担持フィルタの圧損ヒステリシスの評価結果の一例を示すグラフである。なお、
図15A及び
図15Bにおいては、横軸がPM堆積量(g/L)を示し、縦軸が圧損の変化量ΔP(kPa)を示す。
【0184】
図15A及び
図15Bにおいては、圧損ヒステリシスの評価を行うために、ディーゼルエンジンによる、再生時間を変えた時のPM堆積量に伴う圧損上昇度合い(変化量ΔP)
を測定した結果である。測定は、初期(再生前)、3分再生、5分再生、及び10分再生の4種類のデータを比較している。
参考例1の触媒担持フィルタの測定結果を示す
図15Aにおいては、部分再生(3分、5分、10分再生)を発生した場合でも、PM堆積量(2g/L以上)と圧損の関係が同じである。一方、比較例に相当する触媒担持フィルタの測定結果を示す
図15Bにおいては、各再生において、PM堆積量(2g/L以上)と圧損の関係が異なっていた。
【0185】
また、
参考例1
〜9の触媒担持フィルタは、アッシュを大量に含む排ガスが流入したとしても、PM捕集層によって捕捉され、ガス浄化触媒層までは到達しないため、NO
x浄化触媒の劣化が抑制され、JP09規制を満たすものであった。一方、比較例4及び5においては、NO
x浄化触媒とアッシュとが接触してしまう構成であるため、NO
x浄化触媒の劣化が進行し、JP09規制を満たすことができなかった。
【0186】
また、
参考例1
〜9の触媒担持フィルタは、PMの捕集と、NO
xの浄化とを、一つのフィルタによって行うことができるため、極めてコンパクトなものであった。比較例1及び3においては、PMの捕集用のフィルタと、NO
xの浄化を行う担体とが別々のものであり、排ガス浄化システムの全長が
、参考例と比較して2倍程度の大きさとなってしまった。
【0187】
更に、
参考例1
〜9の触媒担持フィルタは、比較例1及び3と比較して、PM堆積限界量が多く、フィルタの再生を行うまでの間隔を長くすることができるということが判明した。これは、参考例1〜9の触媒担持フィルタが、比較例1及び3と比較して、基材に対して多量の触媒が担持されているため、熱容量がその分増加し、再生時における温度上昇を抑制したものと考えられる。