【実施例1】
【0204】
実施例1 抗EGFR抗体のクローニング
免疫化
雌のBALB/c、株A、またはC57B16マウス(8〜10週齢)を、EGFR過剰発現細胞を加えた異なる精製タンパク質の注入による免疫化に使用した。
【0205】
市販のEGFRタンパク質(R&D systemsカタログ番号1095−ERまたはSigma番号E3641)を、いくつかの免疫化に使用した。他の免疫化では、EGFRのECDまたはEGFRvIIIおよびヒト成長ホルモン(hGH)よりなり、また、実施例10bに記載のHis−タグに加えてタバコEtchウイルス(TEV)−切断部位を含む融合タンパク質として産生される組み換えヒトEGFRおよびEGFRvIIIを使用した。いくつかの場合、EGFRのECDを、TEV−プロテアーゼ切断および後のニッケルカラムによる精製によって単離した。
【0206】
約10
7の受容体/細胞を発現するヒト頭頚部癌細胞系統、HN5(Easty DM, Easty GC, Carter RL, Monaghan P, Butler LJ. Br J Cancer. 1981 Jun;43(6):772-85. Ten human carcinoma cell lines derived from squamous carcinomas of the head and neck.)を、細胞に基づく免疫化に使用した。細胞を、10%FBS(ウシ胎児血清)、3mMグリセロール、5mMピルビン酸ナトリウムおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンを補充したDMEM培地において培養した。各免疫化の前に、細胞を、PBS中で洗浄し、TrypLEでトリプシン処理し、次いで増殖培地に再懸濁した。その後、細胞懸濁液を、250×g、5分間の遠心分離、取り出し、そして15mlの滅菌PBS中の再懸濁により、PBS中で2回洗浄した。
【0207】
細胞または抗原を、PBS中に希釈し、次いで、フロイントのアジュバントと1:1で混合した。アジュバントを使用して、免疫応答を増強および調節した。一次免疫化のために、完全フロイントアジュバント(CFA)を使用する一方で、不完全フロイントアジュバント(IFA)を以後の免疫化に使用した。IFAは、鉱油からなる水中油型エマルジョンであり、CFAは、熱処理で死滅させ、乾燥したマイコバクテリウム(Mycobacterium)種が添加されるIFAである。両方のアジュバントともデポー効果を有する。CFAは、免疫応答の長期間の持続を生じ、そして免疫応答を高めるための一次免疫化に使用され、そしてIFAは、以後の免疫化に使用される。水の入ったガラスの表面上に滴下することによりエマルジョンを試験した。水滴が1滴として保持される場合、エマルジョンは安定であり、注入を実施することができる。安定なエマルジョンのみをマウスに投与した。
【0208】
スケジュール(表2を参照のこと)に従って、25〜100μgの抗原または10
7個の細胞を、各注入に使用した。合計で、マウスに4回の注入を行った。すべてのマウスに、300μlまたは200μlのいずれかのエマルジョンを注入した。スケジュールに従って、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)または静脈内(i.v.)に注入を実施した。
【0209】
終了時、頚椎脱臼によりマウスを屠殺し、脾臓を取り出し、次いで74μmのセルストレーナー(Corning番号136350−3479)に移した。細胞を、フィルターを介して液体に浸し、10%FBSを伴う冷RPMI 1640に再懸濁し、そして300×gで5分間、遠心分離した。細胞ペレットを、1%FBSを含有するRPMI 1640に再懸濁し、50μmシリンジフィルター(BD番号340603)を介してろ過し、遠心分離により回収した。細胞ペレットを、10%DMSOを伴うFCSへの再懸濁後、冷凍保存し、そして凍結した細胞を、FACS選別まで−80℃で保存した。
【0210】
マウス形質細胞のFACS選別
凍結した脾細胞をバイアルを37℃で融解し、なお存在する氷と共に15mlチューブに移した。10mlの氷冷RPMI、10%FBS(ウシ胎児血清)を、旋回させながらチューブに滴下した。10mlのFACS PBSにおいて1回洗浄後、50μmのFilconを介して細胞をろ過する前に、5mlのFCS PBSを添加する。次いで、細胞をペレット化し、そして2%FBSを含有する1mlのPBS(最終容積)に再懸濁し、次いで約5μg/mlの最終濃度までの特定の希釈に従って、抗−CD43−FITCおよび抗−CD138−PEで染色した。細胞を、4℃で、20分間、暗所でインキュベートした。続いて、細胞を、2mlのFACS緩衝液で2回洗浄した。15mlまでFACS PBSを添加した。ヨウ化プロピジウム(PI)を、1:100(1部のPI対100部のFACS PBS緩衝液)で添加し、続いて、細胞を、PCR反応緩衝液を含有する96ウェルのPCR−プレートで選別し(下記を参照のこと)、次いでプレートを−80℃で凍結する前に、2分間、400×gでスピンした。
図1に示すように、形質細胞をCD43−ポジティブ/CD−138ポジティブとしてゲートした。
【0211】
同族V
HおよびV
Lペアの連結
V
HおよびV
Lコーディング配列の連結を、形質細胞としてゲートした単一細胞に対して実施し、V
HおよびV
Lコーディング配列の同族ペア形成を容易にした。手順は、1工程の多重重複−伸長RT−PCR、続いて、ネステッドPCRに基づく2工程PCR手順を利用した。本実施例で使用したプライマー混合物のみが、κ軽鎖を増幅した。しかし、λ軽鎖を増幅することが可能なプライマーは、所望であれば、多重プライマー混合物およびネステッドPCRプライマーに添加し得る。λプライマーを添加する場合、選別手順は、λポジティブ細胞が排除されないように適応されるべきである。同族V
HおよびV
L配列の連結の原理を
図2に示す。
【0212】
生成された96ウェルPCRプレートを融解し、選別した細胞は、多重重複−伸長RT−PCRのテンプレートとしての役割を果たした。単一細胞選別前に各ウェルに添加した選別用緩衝液は、反応緩衝液(OneStep RT-PCR Buffer;Qiagen)、RT−PCRのためのプライマー(表3を参照のこと)およびRNaseインヒビター(RNasin、Promega)を含有した。これに、OneStep RT-PCR Enzyme Mix(25×希釈;Qiagen)およびdNTP混合物(各200μM)を補充して、20μl反応容積において所定の最終濃度を得た。プレートを、30分間、55℃でインキュベートして、各細胞由来のRNAの逆転写を可能にした。RT後、プレートを、次のPCRサイクルに供した:94℃で10分間、35×(94℃で40秒間、60℃で40秒間、72℃で5分間)、72℃で10分間。
【0213】
PCR反応を、24枚の96−ウェルプレート(ABgene)についてPeel Seal Basket搭載のH20BIT Thermal cyclerにおいて実施してハイ−スループットを容易にした。サイクリング後、PCRプレートを−20℃で保存した。
【0214】
ネステッドPCR工程では、96−ウェルPCRプレートを、各ウェルの次の混合物(20μl反応液)で調製して、所定の最終濃度を得た:1×FastStart buffer(Roche)、dNTP混合物(各200μM)、ネステッドプライマー混合物(表4を参照のこと)、Phusion DNA Polymerase(0.08U;Finnzymes)およびFastStart High Fidelity Enzyme Blend(0.8U;Roche)。ネステッドPCRのテンプレートとして、1μlを、多重重複−伸長PCR反応から移した。ネステッドPCRプレートを、次のサーモサイクリング(thermocyling)に供した:35×(95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で90秒間)、72℃で10分間。
【0215】
無作為に選択された反応物を、1%アガロースゲル上で分析して、約890塩基対(bp)の重複−伸長フラグメントの存在について確かめた。
【0216】
PCRフラグメントのさらなるプロセシングまで、プレートを−20℃で保存した。
【0217】
ネステッドPCRからの連結されたV
HおよびV
Lをコードするペアのレパートリーを、異なるドナー由来のペアを混合せずにプールし、調製用1%アガロースゲル電気泳動によって精製した。ヒトκ定常軽鎖をコードする配列を、連結されたV
HおよびV
LをコードするペアのプールされたPCR産物のV
Lコーディング領域に対する重複伸長によってスプライスした(
図3)。ヒトκ定常軽鎖をコードする配列を、κ軽鎖を伴うヒト抗体のコーディング配列を含有するプラスミドから、次のものを含有する反応物において、増幅させた:50μlの全容積中Phusion Enzyme(2U;Finnzymes)、1×Phusion buffer、dNTP混合物(各200μM)、hKCforw−v2プライマーおよびκ3’プライマー(表5)、ならびにプラスミドテンプレートpLL138(10ng/μl)。反応物を、次のサーモサイクリングに供した:25×(95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で45秒間)、72℃で10分間。得られたPCRフラグメントを、調製用1%アガロースゲル電気泳動によって精製した。
【0218】
各レパートリーのプールした精製PCRフラグメントを、以下のものを含有する重複伸長PCR(50μlの全容積)による後のスプライシングによってスプライスして、ヒトκ定常部をコードする領域の増幅および精製されたPCRフラグメント(付録2)とした:ヒトκ定常部をコードする領域フラグメント(1.4ng/μl)、プールした精製PCRフラグメント(1.4ng/μl)、Phusion DNA Polymerase(0.5U;Finnzymes)およびFastStart High Fidelity Enzyme Blend(0.2U;Roche)、1×FastStart buffer(Roche)、dNTP混合物(各200μM)、mhKCrevプライマーおよびmJHセットプライマー(表5を参照のこと)。反応物を、次のサーモサイクリングに供した:95℃で2分間、25×(95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間)、72℃で10分間。得られたPCRフラグメント(約1070bp)を、調製用1%アガロースゲル電気泳動によって精製した。
【0219】
同族V
HおよびV
Lをコードするペアのスクリーニングベクターへの挿入
EGFRに対する結合特異性を伴う抗体を同定するために、得られたV
HおよびV
Lコーディング配列を、全長抗体として発現させた。これは、V
HおよびV
Lをコードするペアのレパートリーの発現ベクターへの挿入および宿主細胞へのトランスフェクションに関与した。
【0220】
2段階のクローニング手順を、連結されたV
HおよびV
Lをコードするペアを含有する発現ベクターのレパートリーの作製に用いた。統計学的に、発現ベクターのレパートリーが、スクリーニングレパートリーの作製に使用された同族のペア形成したV
HおよびV
LPCR産物の数の10倍の数の組み換えプラスミドを含有する場合、すべての独特な遺伝子ペアが示される可能性は99%である。それ故、400個の重複−伸長V−遺伝子フラグメントを得た場合、少なくとも4000個のクローンのレパートリーをスクリーニングのために作製した。
【0221】
簡単に説明すると、連結V
HおよびV
Lをコードするペアのレパートリーの精製PCR産物を、ヒトκ定常コーディング領域にスプライスし、PCR産物の末端に導入された認識部位において、XhoIおよびNotI DNAエンドヌクレアーゼによって切断した。切断および精製されたフラグメントを、標準的な連結手順によって、XhoI/NotIで消化した哺乳動物IgG発現ベクター、OO−VP−002に連結した(
図4)。連結混合物を、大腸菌(E.coli)にエレクトロポレートし、次いで適切な抗生物質を含有する2×YTプレートに添加し、次いで37℃で1晩、インキュベートした。ベクターの増幅されたレパートリーを、標準的なDNA精製方法(Qiagen)を使用して、プレートから回収した細胞から精製した。プラスミドを、AscIおよびNheIエンドヌクレアーゼによる切断によって、プロモーター−リーダーフラグメントのために調製した。これらの酵素のための制限部位は、V
HおよびV
Lコーディング遺伝子ペア間に局在した。ベクターの精製後、AscI−NheIで消化した両方向性哺乳動物プロモーター−リーダーフラグメントを、標準的な連結手順によって、AscIおよびNheI制限部位に挿入した。連結されたベクターを、大腸菌(E.coli)において増幅させ、次いで標準的な方法を使用して、プラスミドを精製した。スクリーニングベクターの作製されたレパートリーを、従来の手順によって大腸菌(E.coli)に形質転換した。得られたコロニーを384−ウェルマスタープレートに集約し、貯蔵した。整列されたコロニーの数は、インプットPCR(input PCR)産物の数の少なくとも3倍を超え、それ故、得られたすべての独特なV−遺伝子ペアの存在に対して95%パーセントの可能性を示した。
【0222】
EGFR細胞外ドメインへの結合のためのスクリーニング
一般に、スクリーニングを2段階の手順として作製した。抗体−ライブラリーを、ELISAにおける組み換えEGFRタンパク質に対する反応性についてスクリーニングし、その後、FMAT(FLISA)を、細胞表面に発現されたEGFRに結合するEGFR−抗体の検出のために、NR6wtEGFR細胞系統による細胞に基づくアプローチとして使用した。101および108/109ライブラリー(表2)について、EGFRの細胞外ドメインを示す組み換えEGFRを用いてELISAを実施した。
【0223】
簡単に説明すると、ELISAでは、Nunc maxisorb plate(カタログ番号464718)を、1μg/mlタンパク質(施設内で生成した)で被覆し、PBSで4℃で1晩希釈した。50μlの2%−ミルク−PBS−Tにおけるブロッキング前に、プレートを、PBS+0.05%Tween 20(PBS−T)で1回洗浄した。プレートを、PBS−T、20μlの2%−ミルク−PBS−Tで1回洗浄し、次いでFreeStyle CHO-Sトランスフェクタント由来の5μl上清(下記を参照のこと)を添加し、続いてR.Tで1時間半インキュベートし、その後、プレートをPBS−T(1ウェルあたり20μl)で1回洗浄した。2%ミルク−PBS−Tにおいて1:10000で希釈した第2の抗体(HRP−ヤギ−抗ヒトIgG、Jackson、カタログ番号109−035−097)を添加して、ウェルに結合した抗体を検出し、次いで、室温で1時間インキュベートした。5分間インキュベートした25μl基質(Kem-en-tec Diagnostics、カタログ番号4390)の添加前に、PBS−Tにおいて、プレートを1回洗浄した。インキュベーション後、25μlの1M硫酸を添加して反応を停止させた。450nmにおけるELISAリーダーで特定のシグナルを検出した。
【0224】
抗EGFR抗体の細胞に基づくFMAT検出では、上記のように、SKBR-3(ATCC番号HTB−30)またはNR6wtEGFR(Welsh et al, 1991, J Cell Biol, 114, 3, 533-543)細胞を増殖培地で維持した。細胞を計数し、次いで1:40,000に希釈したAlexa-647抱合ヤギ−抗ヒトIgG(H−L)抗体(Molecular probes No. A21445、ロット番号34686A)で125,000個の細胞/mlに希釈した。合計で20μlの上清を、384ウェルの透明底Nuncプレートに移した。続いて、10μlトランスフェクション上清を細胞に添加した。反応物由来のFMATシグナルを6〜10時間のインキュベーション後に測定した。
【0225】
スクリーニングからのデータは、全クローンのうち221個(4.8%)がELISAにおいてポジティブであったことを示す。また、それらのクローンのうち93個(2.0%)がFMATにおいてポジティブであった。全体で、クローンのうち220個(4.8%)がFMATでポジティブであり、そしてそれらのうち127個(220−93)が、細胞表面抗原についてのみポジティブであった。111のライブラリーを類似の様式でスクリーニングしたが、免疫化手順を行って、欠失変異EGFR受容体EGFRvIIIに特異的な抗体を作製したため、ELISAスクリーニングに、野生型EGFRおよびEGFRvIIIの両方を検出するためのアッセイを含めた。ELISAでは、7個のクローンがEGFRvIIIに特異的であると同定され、興味深いことに、それらのクローンは、FMATにおいてwtEGFRを発現する細胞の染色についてネガティブであった。13個のコロニーが、FMATおよびELISAにおいてwtEGFRについてポジティブであると同定されたが、EGFRvIIIについてはポジティブでなく、これは、101および108/109のライブラリーと比較して、このライブラリーに独特であった。すべてのELISAポジティブクローンをさらなる分析のために選択した。
【0226】
配列分析およびクローン選択
ELISAにおいてEGFR特異的として同定されたクローンを、本来のマスタープレート(384ウェル形式)から回収し、次いで新たなプレートに固化した。DNAをクローンから単離し、次いでV−遺伝子のDNA配列決定のために提出した。配列を整列し、すべての独特なクローンを選択した。得られた配列の複数のアラインメントは、各特定のクローンの独自性を表し、続いて独特の抗体の同定を可能にした。220個のクローンの配列分析後、70個の一般的に別々の抗体配列クラスターを同定した。関連する配列の各クラスターは、おそらく、共通の前駆体クローンの体細胞超変異を介して誘導された。全体的に、配列および特異性の検証のために、各クラスターから1〜2個のクローンを選択した。選択された抗体可変配列の配列を、付録1に示す。ヌクレオチド配列は、両方の末端に制限部位を含む。結果的に、対応する翻訳されたアミノ酸配列(DNA配列の第3のリーディングフレームを使用する)は、N末端において、IMGT定義に従ってVHおよびVL配列の部分を形成しない2つのアミノ酸を含む(Lefranc et al (2003) IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains. Dev. Comp Immunol 27, 55-77)。示されたVL配列は、すべて、アミノ酸−TVAAP−で開始し、次いでC末端−NRGECで終了する同じヒトκ定常領域を含む。本発明の目的のために、VL配列という用語は、特定の抗体をいう場合、κ定常領域および2つのN−末端アミノ酸(LA−)を含まない。VH配列という用語は、特定の抗体を指す場合、2つのN−末端アミノ酸(RA−)を含まない。
【0227】
配列および特異性の検証
抗体をコードするクローンを検証するために、DNAプラスミドを調製し、次いで2mlスケールのFreeStyle CHO-S細胞(Invitrogen)のトランスフェクションを、発現のために実施した。上清を、トランスフェクションの96時間後に回収した。発現レベルを、標準的な抗IgG ELISAで評価し、特異性を、EGFR−およびEGFRvIII−特異的ELISAによって決定した。クローンの85%が正確な特異性および配列を有することが示された。
【0228】
抗増殖効果のスクリーニング
細胞損傷は、必然的に、代謝細胞機能および増殖のためのエネルギーを維持および提供する細胞の能力の喪失を生じる。代謝活動アッセイは、この前提に基づく。通常、それらは、ミトコンドリア活性を測定する。Cell Proliferation Reagent WST-1(Rocheカタログ番号11644807001)は、生細胞の代謝活動を測定する即使用可能な(ready−to−use)基質である。次いで、代謝活動は、生細胞の数に相関すると想定される。本実施例では、WST-1アッセイを使用して、異なる抗EGFR抗体を含有する細胞培養上清による処置後の代謝活性細胞の数を測定した。
【0229】
WST-1アッセイを実施する前に、異なる容積の2ml上清(0、10、25、50および150μl)を96ウェルプレートの適切なウェルに移した。
【0230】
次いで、HN5細胞を、1×PBSで洗浄し、次いで3mlトリプシン溶液によるトリプシン処理により剥離した。次いで、17mlの完全培地を添加し、細胞を、300×g(1200rcf)で5分間、スピンした。上清を取り出し、細胞を、DMEM+0.5%FBSに再懸濁した。細胞を計数し、次いでそれらの濃度を調整し、各ウェルが合計で200μlの培地を含有するように、1500個の細胞を添加した。プレートを、4日間、加湿インキュベーターにおいて37℃でインキュベートした。次いで、20μlのWST−1試薬を、1ウェルあたり(pr. well)に添加し、そしてプレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、オービタルプレートシェーカーに移し、さらに1時間放置した。吸光度を、450および620nm(対照波長)において、ELISAリーダー上で測定した。代謝活性細胞(MAC)のレベルの差異を、以下のようにコントロール上清のパーセントとして計算した:
【表2】
次いで、これらの値を、フリーソフトウェアClusterおよびTreeViewを使用して実施される管理下の(ELISAにおける反応性に基づいてクラスター化される)階層的クラスター分析の基礎として使用した。
【0231】
抗体選択プロセスの初期の段階において機能的抗体についてスクリーニングすることが可能であることが好適である。83個の2mlトランスフェクションからの培養上清を、0.5%FBS中のHN5細胞を用いて行った増殖アッセイにおける増殖阻害機能についてスクリーニングするのに用いた。結果を、簡単な階層的クラスター分析によって可視化した。クラスター分析(
図5)において認められ得るように、多くの上清では、濃度依存的様式で代謝活性HN5細胞(暗灰色)の数が減少することが見出された(クラスター2)。同様に、いくつかの上清では、濃度依存的様式で代謝活性細胞HN5細胞(明灰色)の数が増加した(クラスター1、3および4)。代謝活性HN5細胞の数が減少した上清は反応性2(黒色矢印)を示したが、一方、代謝活性HN5細胞の数が増加した上清が反応性1(灰色矢印)を示したことは、興味深い観察である。反応性2を示す上清は、wtEGFRおよびEGFRvIIIの両方のELISAにおいてポジティブであった一方、反応性1を示す上清は、wtEGFRに対する反応性のみを示した。それ故、そのようなアッセイは、ELISAにおける抗体反応性と細胞アッセイにおける機能性間の関連性を提供し得る。
【0232】
クローン修復
多重PCRアプローチを使用する場合、プライマー縮重および高程度の相同性のため、一定程度のV−遺伝子ファミリー内およびV−遺伝子ファミリー間のクロスプライミングが予想される。クロスプライミングは、いくつかの潜在的結果、例えば、構造変化および免疫原性の増加を伴う、免疫グロブリンフレームワークに自然に存在しないアミノ酸を導入し、そのすべてが治療活性の減少を生じる。
【0233】
これらの欠点を排除し、選択されたクローンが自然の体液性免疫応答を反映することを確実にするために、かかるクロスプライミング変異は、クローン修復と呼ばれるプロセスで補正された。
【0234】
クローン修復手順の第1の工程では、V
H配列を、目的のクローンの起源であるV
H−遺伝子に対応する配列を含有するプライマーセットでPCR増幅し、それによって、クロスプライミングによって誘導された変異を補正した。PCRフラグメントをXhoIおよびAscIで消化し、従来のライゲーション手法を使用して、XhoI/AscIで消化した哺乳動物発現ベクターに連結して戻した(
図4)。連結されたベクターを、大腸菌で増幅し、標準的な方法によりプラスミドを精製した。V
H配列を、配列決定して、補正を確かめ、ベクターをNheI/NotIで消化して、軽鎖の挿入用に調製した。
【0235】
クローン修復手順の第2の工程では、完全な軽鎖を、目的のクローンの起源であるV
L−遺伝子に対応する配列を含有するプライマーセットでPCR増幅し、それによって、クロスプライミングによって誘導される変異を補正した。PCRフラグメントをNheI/NotIで消化し、次いで上記で調製したベクターを含有するV
Hに連結した。連結した産物を、大腸菌で増幅し、標準的な方法によりプラスミドを精製した。続いて軽鎖を配列決定して補正を確かめた。
【0236】
選択されたクローンのκ定常領域が遺伝子の増幅中に導入された変異を含有する場合、それは、変異していない定常領域によって置き換えられる。これは、(定常領域なしで増幅した)修復されたV
L−遺伝子を(別々のPCRで得られた)正確な配列を有する定常領域に融合した重複PCRにおいて行われる。配列全体を増幅し、上記のベクターを含有するV
Hにクローニングし、次いで修復された軽鎖を配列決定して補正を確かめる。
【0237】
表2 抗EGFRクローニングの出発物質を作製するのに用いた免疫化スケジュール
【表3】
【表4】
【0238】
表3 RT−PCR多重重複−伸長プライマー混合物
【表5】
W=A/T, R=A/G, S=G/C, Y=C/T, K=G/T, M=A/C, H=ACT, B=GCT; 濃度―最終濃度.
【0239】
表4 ネステッドプライマーセット
【表6】
K=G/T, M=A/C,D=AGT; 濃度−最終濃度.
【0240】
表5 κ定常スプライシングプライマーセット
【表7】
【0241】
実施例2 哺乳動物抗EGFR抗体の産生
FreeStyle MAX CHO発現系(Invitrogen)を抗EGFR抗体の一過性発現に使用した。抗体を200〜2000ml体積で発現させた。
【0242】
トランスフェクションの約24時間前に、CHO−S細胞を継代培養して0.5×10
6個の細胞/mlの細胞濃度に到達させた。プラスミド(1ml細胞培養培地あたり1.25μg)を、OptiPro無血清培地に希釈し、次いで製造業者によって推奨されるようにFreeStyle MAXトランスフェクション試薬の溶液と混合した。トランスフェクション試薬を細胞培養に移し、上清を6日後に回収した。
【0243】
IgG1分子の精製のためのProtein A-Sepharoseカラム(MabSelect Sure, GE Health Care)を用いるアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、培養上清から発現した抗体を精製した。0.1Mグリシン、2.7を使用して、カラムから抗体を溶出させた。280nmにおける吸光測定値によって決定された抗体を含有する画分をプールし、次いで5mM酢酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH5に対して透析した。精製した抗体サンプルを、LALアッセイによってエンドトキシン(endototoxin)の存在について試験した。
【0244】
実施例3 エピトープ特異性の決定
対照抗体との競合ELISA
(J.R. Cochran et. al., JIM 2004: 287; 147-158)で公開されるように、EGFRの既知のドメインに結合する対照抗体を使用することにより、抗EGFR抗体のヒトFc領域に特異的であり、マウスまたはラットIgG Fcに対して交差反応性を示さない第2の試薬とのインキュベーションにより抗EGFR抗体の結合性エピトープ間を識別し得る競合ELISAを開発した。このELISAを、Ditzel et al, 1995, The Journal of Immunology, Vol 154, Issue 2 893-906に記載された説明から採用した。
【0245】
エピトープを遮断するELISAを、全長EGFR受容体抗原をPBSで0.5μg/mlに希釈し;50μl/ELISAウェルを4℃で1晩被覆することにより実施した。翌朝、ウェルをPBS−Tで2回洗浄し、次いでPBS−T−1%BSAで室温にて1時間ブロックし、続いてPBS−Tで2回洗浄した。次に、25μlのマウスまたはラット対照mAbを、先の実験から公知の希釈で独立したELISAウェルに添加して200倍の最大抗原結合性を得た。15分間後、25μlの抗EGFR抗体を、対照抗体と共にプレインキュベートしたウェルまたは25μlのPBSを含有するウェルに2μg/mlの濃度で添加した。これにより、混合後、1μg/mlの抗EGFR抗体の最終濃度および対照抗体の100倍の最大抗原結合性を得た。抗体を室温で45分間インキュベートし、その後、ウェルをPBS−Tで4回洗浄した。第2のヤギ−抗ヒトIgG HRP抱合体を1:3000に希釈し、次いで50μlを各ウェルに添加し、続いて室温で30分間のインキュベーションを行った。最終的に、ウェルをPBS−Tで4回洗浄し、次いでプレートに50μl/ウェルのTMBを添加することにより発色させ、続いて5〜15〜30分ごとに620nmで読み取った。阻害の程度を、次の式から計算した:阻害%=(1−(OD競合/OD競合なし(PBS)))×100。
【0246】
ELISA試薬:
1)コーティング緩衝液:1×PBS;Gibcoカタログ番号20012−019
2)抗原:A431細胞から精製された野生型全長EGFR;Sigma E3641
3)ELISAプレート:NUNC Maxisorp;カタログ番号442404
4)ブロッキング/希釈緩衝液:PBS−T中1%BSA(PBS−T−1%BSA)
5)洗浄緩衝液:1×PBS/0.05%Tween 20(PBS−T)
6)ポジティブコントロール:Erbitux(Merck KGaA, 64271 Darmstadt, Germany、カタログ番号018964;セツキシマブ)、Vectibix(Amgen Inc, One Amgen Center Drive, Thousand Oaks CA 91320-1799, USA、カタログ番号3241400;パニツムマブ)
7)対照抗体:
・ICR10(ラット)、Abcam、Ab231
・199.12(マウス)、Lab Vision Ab−11、MS−396−PABX
・EGFR.1(マウス)、Lab Vision Ab−3、MS−311−PABX
・H11(マウス)、Lab Vision Ab−5、MS−316−PABX
・B1D8(マウス)、Lab Vision Ab−16、MS−666−PABX
・111.6(マウス)、Lab Vision Ab−10、MS−378−PABX
・225(マウス)、Lab Vision Ab−2、MS−269−PABX
・528(マウス)、Lab Vision Ab−1、MS−268−PABX
8)ヤギ−抗ヒトIgG HRP抱合;Serotec, Star 106P
9)TMB Plus;KemEnTec、カタログ番号4390L
10)1MのH
2SO
4
【0247】
競合ELISAの結果を
図6に示す。ELISA競合アッセイを用いて、EGFR細胞外ドメインに対して惹起された使用した対照抗体のドメイン特異性に従って、抗EGFR抗体上清を格付けした。50〜100%の阻害値を、重複エピトープまたは抗原における近傍のエピトープに結合する抗体ペア間の有意な競合の指標とみなした一方、50%未満の阻害値は、抗体ペアによって認識されたエピトープが近傍には存在せず、立体障害の減少を生じたことを示した。抗EGFR抗体は、ドメインI、IIおよびIIIを含むEGFR ECD上の多様なエピトープに結合することを見出した。いくつかの抗体では、この分析は、特定のmAbがドメインIまたはドメインIIのいずれに対して指向されたかを区別することはできなかった。そのような特異性をドメインI/IIと標識した。さらに、いくつかの抗体は、用いた競合ELISAにおいてさらに推定することができなかった独特なエピトープに結合するようであった(例えば、クローン1229および1320、
図6)。これらの抗体のいくつかは、本発明者らがなんら対照抗体の反応性を認めていないドメインIVに対して指向されている可能性がある。興味深いことに、ドメインIII抗体は、さらに、このドメインに対する試験されたマウス対照抗体によって得られた異なる競合パターンに基づき4つのサブグループに分けることができた。グループIは、対照抗体Ab1およびAb2との結合に競合することが見出されたmAb992のみからなった。グループIIは、両方ともが同じIgリアレンジメントから誘導され、結果的に、DNAおよびアミノ酸レベルにおいて極めて緊密な配列相同性を示したmAb1024および1042からなった。これらの2つの抗体は、Ab2との結合のみに競合することを見出した。グループIIIは、対照抗体Ab1、Ab5およびAb10との結合について競合したmAb1030、1208および1277からなった。最後に、グループIVは、使用したすべてのドメインIII対照抗体Ab1、Ab2、Ab5およびAb10との結合について競合したmAb1254よりなった。
【0248】
表面プラズモン共鳴技術を使用する対照または同一種の抗体との別々のエピトープの競合分析
SPR分析を、4つのフローセルを含有するBiacore 3000機器において実施した。製造業者の説明書に従って、CM5 Biacoreチップを、10,000 Resonanceユニット(Ru)ポリクローナル抗His抗体と共に、フローセル1〜4に抱合した。5μl/分の流速を使用して、20μg/mlの濃度の6×His EGFR ECDの15μlを注入し、次いで抗Hisポリクローナル抗体を抱合させた4つのすべてのフローセル上で捕捉した。抗原注入の直後、競合を伴わない抗EGFRmAbの最大結合性を、対照の実行中に各フローセルで確立させた。簡単に説明すると、40μg/mlの濃度の5μl抗体を、EGFRを捕捉したすべてのフローセルに注入し、続いて、低pH酸性洗浄(10mMグリシン−HCl、pH2との10秒間の接触時間)による抗体/抗原複合体のストリッピングを行った。各フローセルに対する抗EGFR抗体最大結合性の決定後、同じBiacoreサイクル中に、競合の実行を実施した。フローセルを、最初にEGFR ECD抗原で飽和し、続いて、上記で概説した同じ抗原飽和条件を使用して、異なる対照抗体または抗EGFR抗体の別々のフローセルへの注入を行った。この工程の直後に、EGFR抗原および競合抗体で飽和したフローセルへの抗EGFR抗体の第2の注入を行い、抗原または遮断抗体のどちらかの解離を最小限にした。次いで、抗体/抗原複合体を、低pH酸性洗浄(10mMグリシン−HCl、pH2との10秒間の接触時間)でストリッピングし、対照の実行で開始した全サイクルを、新たな抗EGFR抗体で繰り返した。試験した抗EGFR抗体の阻害の程度を、各サンプルの注入の2秒前および2秒後の記録された報告ポイントを導入することによって、競合の前および後の個々の抗EGFR抗体のRu最大値を比較することによって、決定した。1つのBiacoreサイクルの例を
図7に示す。
【0249】
試薬:
1.CM5チップ;Biacore、カタログ番号BR−1000−14
2.NHS;Biacore BR-1000-50
3.EDC;Biacore BR-1000-50
4.10mM酢酸緩衝液pH4,5;Biacore、カタログ番号BR−1003−50
5.Tetra-His抗体(BSAを含有しない);Qiagen、カタログ番号34670
6.エタノールアミン、1.0M pH8.5;Biacore BR-1000-50
7.10×HBS-EPランニング緩衝液:0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%v/vのSurfactant P20
8.抗原:施設内で産生された6×Hisを伴う組み換えヒトEGFR細胞外ドメイン
9.10mMグリシンHCl pH2.0
10.対照抗体:
・ICR10(ラット)、Abcam、Ab231
・199.12(マウス)、Lab Vision Ab-11、MS-396-PABX
・EGFR.1(マウス)、Lab Vision Ab-3、MS-311-PABX
・H11(マウス)、Lab Vision Ab-5、MS-316-PABX
・B1D8(マウス)、Lab Vision Ab-16、MS-666-PABX
・111.6(マウス)、Lab Vision Ab-10、MS-378-PABX
・225(マウス)、Lab Vision Ab-2、MS-269-PABX
・528(マウス)、Lab Vision Ab-1、MS-268-PABX
【0250】
競合ELISAにおいて得られたエピトープ分析を確認し、同一種の抗EGFR抗体ペア間の競合によるさらなるエピトープ分析を実施するために、表面プラズモン共鳴によるリアルタイムで測定される抗体結合性に基づく競合アッセイを確立した。対照抗体のパネルに対して試験した抗EGFRクローンの得られたエピトープマップを、以下の
図8に示す。50〜100%の阻害値を、重複エピトープまたは抗原における近傍のエピトープに結合する抗体対間の有意な競合の指標とみなした一方、50%未満の阻害値は、抗体対によって認識されたエピトープが、近傍には存在せず、立体障害の減少を生じたことを示した。25%未満の阻害値は有意でない阻害を表すと判断されたため、それらは、重複エピトープの分析には含めなかった。1320を除く試験したすべての抗体は、用いた対照抗体の1つもしくはそれ以上と競合することを見出したが、1320は、本発明者らが未だ対照抗体反応性を認めていない未知のエピトープに対して指向されたことを示す。完全なヒトまたはヒト化抗体VectibixおよびErbituxを分析に含め、次いで重複エピトープに結合することを見出した。競合ELISAおよび競合SPR分析の両方から得られるデータは、一般的に、抗EGFR抗体の確立されたドメイン特異性に関して良好に相関する。しかし、おそらく、ELISA競合アッセイが完全長のEGFR受容体抗原を用いた一方、SPR競合アッセイは組み換え細胞外ドメインEGFRを使用したという事実のため、時々、2つのアッセイにおいて個々の対照抗体間の競合パターンにわずかな相違が観察された。
【0251】
抗EGFR抗体のエピトープマッピングを異なる2つの競合アッセイにおいて確認した後、抗EGFR抗体ペアの同一種の組み合わせの競合分析について調べて、どの抗体ペアが別々のエピトープを認識していたか、および重複エピトープを認識する抗体ペアがエピトープクラスターにさらに分けられ得るかどうかについて解明した。この分析の結果を
図9に示す。さらに、この分析において、50〜100%の阻害値を、重複エピトープに結合する抗体ペア間の有意な競合の指標とみなした。それら自体に対して試験し、次いで結果的に完全な重複エピトープを認識する抗体は、
図9に示されるように、70%〜100%阻害の間の値を生じたため、この基準は有効と思われた。さらに、この観察は、分析の時間枠内の抗原または抗体対のいずれの解離も、試験した抗体の実験の結果に影響を及ぼさなかったようであることを示した。先のセクションで調べて推定されたEGFR ECDドメイン特異性に従って抗体をグループに分類することによって、ドメインI、またはドメインIもしくはII(I/II)のいずれかに排他的に結合する抗体は、主に、同じ特異性を伴う抗体メンバーとクラスター化し、ドメインIIIを認識する抗体メンバーとはクラスター化しないことを見出した。同様に、ドメインIII抗体は、結合性についてドメインIIIを認識する抗体メンバーとのみ競合し、EGFRドメインIまたはI/IIを認識する抗体とは競合しないことを見出した。同じIgリアレンジメントから誘導される2つのドメインIII抗体1024および1042は、重複エピトープを認識することを見出した一方、1024または1042のいずれかと、992または1030のいずれかとのペア単位の組み合わせは、重要なことに、有意な競合を生じないことを見出した。結果的に、抗体992、1030および1024/1042は、EGFR ECDのドメインIII上の3つの非重複エピトープを認識していたことが結論付けられた。最後に、mAb1320は、結合性について、両方ともがドメインIIIに対して指向されたmAb1024および1449と競合し、試験した他のドメインIII抗体とは競合しないことを見出した(1320と1042との競合については決定されていない)。結果的に、mAb1320は、EGFRの細胞外ドメイン上のドメインIIIの周辺で結合していたことが想定された。エピトープ特異性の概観は、
図10で見られ、EGFR ECDドメインI、I/IIまたはIIIに対して指向される抗体のエピトープマップを示す。
【0252】
992、1030および1024/1042のペア単位の組み合わせが、SPRによって決定されるように、有意な抗体競合を生じなかったことを見出した後、新たなBiacore実験を設計して、どれだけ多くの抗体が受容体抗原に同時に結合し得るについて調べた。最初に、3つの抗体992、1024および1030によるドメインIIIの飽和が、ドメインIIIではない他のEGFR特異性に対して指向された抗体の結合に対してどのような影響を及ぼしたかについて調べた。この分析からの結果を
図11Aに示す。単一の抗体か、または各Biacoreサイクル中に余った1つの抗体を逐次的に追加するとによって作製される3つまでの抗体の抗体混合物のいずれかとの組み合わせでそれらを試験することによって、単一抗体の阻害を確立した。認識されたエピトープの完全な遮断を評価するために、40μg/mlの個々の濃度で抗体を試験した。
図11Aに示されるように、3つのドメインIII抗体992、1024および1030は、結合の阻害を何ら伴うことなく、受容体に結合することを見出した。添加した各抗体について増加している観察されたネガティブ阻害値は、さらに、追加された次の抗体の結合における相乗効果を示唆した。重要なことに、一旦、ドメインIIIを3つの抗体と共にインキュベートすると、ドメインI/II(mAb1261)、ドメインI(1347)または未知の特異性(1361)に対する非重複エピトープに対して指向された他の抗体は、3つのmAb混合物からのエピトープ遮断を伴わずに結合するようである。さらに、これらの試験した抗体は、小さなネガティブの阻害値を有し、それらが、3つのmAb混合物による受容体飽和後により良好に結合していたことを示す。結果的に、この実験は、6つの試験した抗体がEGFRのECDに同時に結合し得たことを示唆した。この観察された現象をさらに試験するために、試験したすべての抗体(1261、1347、992、1024、1030および1361)よりなる抗体混合物を作製し、次いで混合物中の各それぞれのサンプル抗体の阻害について試験した。また、試験するサンプル抗体が含まれていない抗体を試験することによりポジティブコントロールを供した。
図11B/Cで示されるように、試験したすべての6つの抗体は、抗体のすべての混合物と共にインキュベートしたEGF受容体への結合について試験した場合、80〜116%が阻害されることを見出した。しかし、この混合物から個々のサンプル抗体を取り出した場合、特定のサンプル抗体の有意な阻害は認められず、これは、混合物中の抗体が、それ自体のEGF受容体への結合についてのみ遮断されたことを示す。この実験は、非重複エピトープを認識する少なくとも6つの抗体が同時にEGFRに結合することができることを明確に示した。最後の実験として、ドメインI(1284)、I/II(1257)または未知の特異性クラスター(1183、1255)に対して指向された他の抗体が、6抗体混合物に含まれた場合、EGFRに結合し得るかどうかについて調べた。
図11Dに示すように、試験した抗体のいずれもが、6抗体混合物との事前のインキュベーション時にEGFRに有意に結合することができなかった。これは、抗体のコレクションが、6つの結合抗体によって占領されている部位のいずれに対する抗体も含まないためであり得る。あるいは、実際には、試験されたドメイン上のすべての部位が抗体によって遮断された可能性もある。
【0253】
表6 EGFR細胞外ドメインに対する特異性が立証された市販の抗体
【表8】
【0254】
実施例4 EGFR活性化阻害
競合ELISAによるEGFR受容体に結合するEGFリガンドの抗体仲介遮断の決定
試験した抗EGFR抗体がEGFR受容体に結合し、同時にビオチン化EGFリガンドの結合を遮断したことを検証するために、ELISAウェルを、PBS中0.5μg/mlの濃度にて80μl/ウェルの全長EGFRで4℃において一晩被覆した。翌朝、ウェルをPBS−Tで2回洗浄し、150μlのPBS−T−1%BSAにより室温で1時間ブロックし、続いてPBS−Tで2回洗浄した。次に、80μlの系列希釈した抗EGFR抗体およびコントロール抗体をウェルに添加し、室温で30分間インキュベートした。抗体インキュベーション後、0.5μg/mlの濃度の20μLのビオチン化EGFリガンドを、抗EGFR抗体希釈液を含有するすべてのウェルまたはPBS−T1%BSAのみを含有するウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。続いて、ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、次いでブロッキング緩衝液中1:1000に希釈した100μl/ウェルのストレプトアビジン−HRP第2試薬とのインキュベーションおよび室温で30分間のインキュベーションを行った。最後に、ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、次いでプレートを100μL/ウェルのTMB基質を添加することにより発色させ、続いて60分間インキュベートした。インキュベーション後、1MのH
2SO
4、100μl/ウェルの添加によって、反応を停止し、プレートをOD450nmで読み取った。
【0255】
ELISA試薬:
1)コーティング緩衝液:1×PBS;Gibcoカタログ番号:20012−019
2)抗原:A431細胞から精製された野生型全長EGFR;Sigma E2645
3)ELISAプレート:NUNC Maxisorp;カタログ番号:442404
4)ブロッキング/希釈緩衝液:PBS−T中1%BSA(PBS−T−1%BSA)
5)洗浄緩衝液:1×PBS/0.05%Tween 20(PBS−T)
6)ポジティブコントロール:Erbitux、Vectibix
7)ネガティブコントロール:Synagis(Medimmune Inc、パリビズマブ、カタログ番号NDC60574−4111−1)
8)ビオチン化EGFリガンド;Invitrogen、カタログ番号E3477
9)ストレプトアビジン−HRP、超高感度:Sigma S 2438
10)TMB Plus;KemEnTec、カタログ番号4390L
11)1MのH
2SO
4
【0256】
ELISA競合アッセイを用いて、抗EGFR抗体が、ビオチン化EGFリガンドのELISAウェルに被覆した完全長EGFR受容体への結合を阻害する能力を格付けした。
図12に示すように、ErbituxおよびVectibixの両方とも、EGFリガンド結合を極めて強力に遮断するようである一方、EGFRに対して指向されていないネガティブコントロール抗体Synagisは、EGFリガンド結合を阻害しなかった。
図12Aに示すように、ドメインIIIに対して指向され、非重複エピトープを認識する3つの抗体992、1030および1042を、単独または等モル混合物で、EGFリガンド結合を阻害するそれらの能力について試験した。試験した3つの抗体のうち、mAb1030のみは、ErbituxおよびVectibixと比較した場合、中程度のEGFリガンド阻害活性を示した。mAb992、1030および1042の等モル混合物は、単独で試験した単一の抗体より、EGFリガンド結合の阻害においてより効果的であるようである。1μg/mlの全IgG濃度において、等モル混合物は、mAb1030より約2倍の効率で、および単独で試験したmAb992および1042より4倍の効率で、EGFリガンド結合を阻害することが見出され、これは、非重複エピトープを認識する3つのドメインIII抗体を混合することの相乗効果を示す。
図12Bに示すように、抗EGFRクローン1208、1260、1277および1320についてもまた、このアッセイで試験した。これらの4つのクローンは、Erbituxコントロールと比較した場合、クローン992、1030および1042について観察されるより効果的であった用量依存的様式で、EGFリガンド結合を阻害することが可能であった。0.33μg/mlを超える濃度では、抗EGFRクローン1208、1260、1277および1320は、同じ濃度で試験したErbituxと同じような効率でEGFリガンド結合を遮断するようである。
【0257】
HN5細胞におけるEGF誘導性EGFRリン酸化を阻害する能力
抗EGFR抗体を、in cell western分析において、EGFRリン酸化に対する反応性について試験した。in cell western手順は、同じサンプル由来のEGFRおよびリン酸化EGFR(pEGFR)の検出を可能にし、これは、次いで、各抗体処置およびデータセットについて、EGFR対pEGFR発現の比を比較することを可能にする。HN5細胞を、ATCCにより供された説明書に従って、10%FCSおよびpen/strepを補充したDMEMにおいて培養した。43,000個のHN5細胞を、飢餓24時間前に、Nunc(カタログ番号167008)製の96ウェルプレートに播種した。細胞を、抗体の添加16時間前に、DMEMで飢餓状態にした。抗体を200μlのDMEM中10μg/mlの最終濃度で添加し、混合物を少なくとも5回ピペッティングして混合した。抗体処置30分後、EGFを、50μg/mlの濃度で適切なウェルに添加し、7.5分間放置した。in cell westernを、基本的に、in-cell western kit(Odyssey、LI-COR biosciences)の製造者によって提供された説明書のとおりに実施した。
【0258】
EGF刺激後、細胞を3.7%ホルムアルデヒド(Sigma F-8775、ロット番号71K500、約1%メタノールを含有する)で20分間固定した。LI-CORブロッキング緩衝液(927−40000)によるブロッキング前に細胞膜を透明にするため、5回のPBS−Triton X-100(0.1%)での5分間の洗浄を使用した。第1の抗体を、提供された説明書に対応する濃度で添加し、RTにおいて2.5時間、穏やかな振盪しながらインキュベートした(全EGFRマウス、1:500希釈、biosource international、カタログ番号AHR5062およびPhospho-EGFR Tyr1173、ウサギ1:100希釈、biosource、カタログ番号44−794G)。
【0259】
第1の抗体とのインキュベーション後、細胞をPBS−T(0.1%tween-20)で5分間、5回洗浄し、その後、第2の抗体を添加し(ヤギ−抗ウサギ、IRDye 680、1:200希釈、LI-CORカタログ番号926−32221およびヤギ−抗マウス、IRDye 800CW、1:800希釈;LI-CORカタログ番号926−32210)、アルミホイルにおいて被覆したプレートを穏やかに振盪しながらRTで1時間インキュベートした。
【0260】
Tecan蛍光リーダーにおける測定前に、プレートをPBS−Tで5回、5分間洗浄した。プレートの開口部を下に向け、勢いよく振って洗浄溶液を飛ばし、続いてペーパータオル上でプレートを叩くことによって、すべての洗浄を終結させた。(ELISAプレートの処置と全く同様に、重要なことは、この処置の間、細胞がプレート上に保持されること、および細胞単層の完全性を破壊する吸引ではなく、むしろこの手順によって洗浄液を取り出すことができることに留意することである)。最後の洗浄で残った任意の残留洗浄溶液を、マルチチャンネルピペットによりウェルの側面から穏やかに吸引することによって取り出す。蛍光シグナルを、680nmチャンネル(励起675nmおよび蛍光705nm、両方とも10nmのバンド幅)および800nmチャンネル(励起762nmおよび蛍光798nm、両方とも10nmのバンド幅)で測定した。
【0261】
in-cell Western分析を使用して、3つの抗体が、HN5細胞のpEGFR状態に有意に(p<0.05)影響を及ぼしていることが明らかとなる;1208、1277および1320抗体(
図13)。
【0262】
抗EGFR抗体の抗EGFR混合物(992、1030および1042)およびその中の個々の抗体を、EGF誘導性EGFRリン酸化の阻害のin cell western分析における影響について試験した。
図14に見られるように、992および1030ならびに抗EGFR抗体混合物は、EGF誘導性EGFRリン酸化を有意に阻害した(p<0.05)。
【0263】
実施例5 A431NS細胞におけるEGF受容体の内在化
A431NS細胞(ATCC番号CRL−2592)を、TrypLEを使用して、80〜90%コンフルエントのT175培養フラスコからトリプシン処理した。剥離された細胞を、PBSで洗浄し、血清なしのDMEMで再懸濁した。細胞を1〜2mlの部分に分け、試験する抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。抗体濃度は10μg/mlであった。細胞をDMEM(250g、4分間、4℃)で3回洗浄し、次いで1.8mlのDMEMで再懸濁した。各部分を、各300μl細胞懸濁液を含有する6本のFACSチューブに分けた。各部分の3本のチューブを、37℃の水浴に正確に40分間配置し、他方の3本をすぐに氷上に置く。インキュベーション後、細胞を(250g、4分間、4℃)で2回洗浄し、ペレットをDMEM中100μlのウサギ抗ヒトIgG FcγF(ab’)2−FITCに再溶解する。4℃のDMEMで3回洗浄し、FACSCalibur上で分析する前に、細胞を4℃で30分間インキュベートする。
【0264】
結果を
図15に示す。ErbituxおよびVectibixとのインキュベーションは、約30%の等レベルの受容体の内在化を示し、70%の初期表面染色を残した。992単独でのインキュベーションは、約45%の受容体における下方調節を導く。非重複エピトープを伴うさらなる2つの抗体を含有する抗体混合物とのインキュベーションは、受容体下方調節における増加を導く:992+1024、74%;992+1024+1030、83%。
【0265】
さらなる抗体の添加は、受容体内在化のさらなる増加をもたらさなかった。それ故、少なくとも3つの抗体は、A431細胞における最大レベルの内在化を達成する必要があるようである。
【0266】
実施例6−増殖アッセイ
細胞損傷は、必然的に、代謝細胞機能および増殖のためのエネルギーを維持および提供するための細胞の能力の消失を生じる。代謝活動アッセイはこの前提に基づく。通常、それらは、ミトコンドリア活性を測定する。Cell Proliferation Reagent WST-1(Rocheカタログ番号11644807001)は、生細胞の代謝活動を測定する即使用可能な(ready−to−use)基質である。次いで、代謝活動は、生細胞の数に相関すると想定される。本実施例では、WST-1アッセイを使用して、異なる濃度の異なる抗体による処置後の代謝活性細胞の数を測定した。
【0267】
WST-1アッセイを実施する前に、適切な抗体および抗体混合物を、0.5%のFBSおよび1%P/Sを補充したDMEM中20μg/mlの最終全抗体濃度に希釈し、最も高い抗体濃度のウェルにおいて10μg/mlの最終抗体濃度を得た。次いで、これらの溶液の150μlを、96−ウェルプレートのカラム2のウェルに添加し、各ウェルが100μlの抗体溶液を含有するように、3倍系列希釈をカラム9まで漸減させながら作製した。100μlの培地をカラム11に添加した。実験ウェルにおける培地蒸発を減少させる効果のため、200μlの培地を列1および8ならびにカラム1および12に添加した。
【0268】
次いで、A431−NS細胞を1×PBSで洗浄し、3mlトリプシン溶液によるトリプシン処理によって剥離する。次いで、17mlの完全培地を添加し、細胞を300×g(1200rcf)で5分間スピンする。上清を取り出し、細胞をDMEM+0.5%FBSに再懸濁する。細胞を計数し、それらの濃度を15,000個の細胞/mlに調整する。次いで、100μlの細胞懸濁液(1500個の細胞/ウェル)をカラム2〜11の実験ウェルに添加する。プレートを、加湿インキュベーターにおいて37℃で4日間インキュベートする。次いで、1ウェルあたり(pr. well)20μlのWST-1試薬を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートする。次いで、プレートをオービタルプレートシェーカーに移し、さらに1時間放置する。吸光度を450および620nm(対照波長)にてELISAリーダー上で測定する。代謝活性細胞(MAC)の量を、以下のように、非処置コントロールのパーセントとして計算する:
【表9】
【0269】
EGF滴定研究では、リガンドをDMEM+0.5%FBS中20nM/mlの濃度に希釈し、最も高いEGF濃度のウェルで10nM/mlの最終濃度を得た。次いで、この溶液の150μlを、96−ウェルプレートのカラム2のウェルに添加し、各ウェルが100μlの抗体溶液を含有するように、3倍系列希釈をカラム9まで漸減させながら作製した。100μlの培地をカラム11に添加した。実験用ウェル培地の蒸発の減少効果のため、200μlの培地を列1および8ならびにカラム1および12に添加した。適切な抗体および抗体混合物を、0.5%のFBSおよび1%P/Sを補充したDMEM中40μg/mlの最終全抗体濃度に希釈し、ウェルにおいて10μg/mlの最終抗体濃度を得た。次いで、50μlのこれらの溶液を、96−ウェルプレートのカラム2〜9のウェルに添加した。
【0270】
次いで、A431−NS細胞を、1×PBSで洗浄し、3mlトリプシン溶液によるトリプシン処理によって、剥離する。次いで、17mlの完全培地を添加し、細胞を300×g(1200rcf)で5分間スピンする。上清を取り出し、細胞をDMEM+0.5%FBSに再懸濁する。細胞を計数し、それらの濃度を40,000個の細胞/mlに調整する。次いで、50μlの細胞懸濁液(2000個の細胞/ウェル)をカラム2〜11の実験ウェルに添加する。プレートを、加湿インキュベーターにおいて37℃で4日間インキュベートする。次いで、1ウェルあたり(pr. well)20μlのWST−1試薬を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートする。次いで、プレートを、オービタルプレートシェーカーに移し、さらに1時間放置する。吸光度を、450および620nm(対照波長)にてELISAリーダー上で測定する。450nmにおける吸光度から620nmの対照波長における吸光度を差し引くことによって、代謝活性細胞の量を示す。
【0271】
代謝活性細胞(MAC)の量を、以下のように、非処置コントロールのパーセントとして計算する:
【表10】
【0272】
結果
ドメインIII内に非重複エピトープを伴う3つの抗EGFR抗体の混合物が抗体単独よりも優れていることを示すために、A431−NS増殖の阻害について調べる実験を実施した。
図16Aで認めることができるように、抗体は、単独ではA431−NS増殖の不良なインヒビターであるが、組み合わせた場合、431−NS増殖に対する相乗的な阻害効果が得られる。992と1042または1030のいずれかとの混合物もまた、極めて強力であるが、3つ全ての混合物は全ての抗体濃度範囲にわたってこれらより優れている。
【0273】
様々な濃度のEGFで刺激したA431−NS細胞の増殖に対する個々の抗体および抗体混合物の効果について調べ、その結果を
図17に示す。
図17で認められうるように、抗体の非存在下における0.1nMを超えるEGF濃度は、細胞に対して毒性である。しかし、EGFRのドメインIII内の非重複エピトープを伴う3つの抗体(992、1030および1042)の混合物は、少なくとも0.3nMまでのEGFを試験した場合、相乗的に作用して、EGFの存在下でA431−NS細胞の増殖を阻害し、混合物はすべてのモノクローナル抗体より優れていることが明白である。
【0274】
次に、本発明者らは、EGFRのドメインIIIにおいて非重複エピトープを伴う2つの抗体とEGFRのドメインIまたはII内のいずれかにエピトープを伴う抗体とを組み合わせることによっても、A431−NS増殖に対する相乗的阻害効果を得ることができることを実証する。
図18において認められ得るように、両方ともEGFRのドメインIIIである抗体992および1024と、EGFRのドメインI(1284)またはドメインI/II(1434)のいずれかと反応性である抗体との組み合わせは、EGFRのドメインIII内の非重複エピトープと反応する3つの抗体(992+1024+1030)と同程度に強力である。加えて、抗体のこれらの混合物は、A431−NSの増殖の阻害において、治療用抗EGFR抗体ErbituxおよびVectibixより強力である。
【0275】
他の2つの癌細胞系統DU145(ATCC番号HTB−81)およびMDA−MB−468(ATCC番号HTB−132)を使用して、同様のアッセイを実施した。これらの増殖アッセイからの結果を、
図16Bおよび16Cに示す。両方の場合とも、3つの抗体(992、1030および1042)の混合物は、2つの抗体の混合物および単一の抗体より優れていた。DU145細胞では、3つの抗体の混合物は、すべての濃度において、MDA−MB−468では、高濃度において、Vectibixより優れていた。
【0276】
上記の方法と類似の方法を使用して、本発明者らは、異なる濃度の3つの抗EGFR抗体を試験した。
【0277】
結果
異なる濃度の3つの抗体の効果を、A431NS細胞系統において調べた。これらのうち最も強力な20の増殖阻害活性を
図37に示す。全ての組み合わせは、A431NS細胞系統の増殖を、非処置コントロールと比較して60%より大きく阻害した。別の興味深い観察は、組み合わせ(992+1024+1254および992+1024+1320および992+1277+1320)以外の組み合わせが非重複エピトープを伴う抗体を含有することである。これは、別々のエピトープに結合する3つの抗体のいくつかの組み合わせを設計することが可能であることを示す。
【0278】
実施例7−アポトーシス
アポトーシスは、細胞死を引き起こす生物学的機構である。この機構は、Erbituxのような抗EGFR抗体を用いることにより以前に報告されている(Baselga J. The EGFR as a target for anticancer therapy - focus on cetuximab. Eur J Cancer. 2001 Sep:37, Suppl 4:S16-22)。従って、個々の抗EGFR抗体992、1042、および1030ならびに(992+1042+1030)がどの程度アポトーシスを誘導することが可能であるかについて調べた。
【0279】
1×10
4個のA431NS細胞を、0.01μg/ml〜10μg/mlの範囲の濃度のEGFR混合物(等量の992、1030、1042)、992、1030、1042、ErbituxまたはVectibixの存在下、96ウェル培養プレート中、3回反復測定で、0.5%のFBSおよび抗生物質を補充したDMEMにてインキュベートした。細胞および抗体を22時間インキュベートした。次いで、上清を回収し、次いでRoche、カタログ番号11774425001(Basel、Switzerland)製ELISA−キットでヒストン−DNA複合体の存在について測定した。
【0280】
混合物の効果を、A431NS細胞を使用して、モノクローナル抗体単独のそれぞれならびに対照抗体VectibixおよびErbituxと比較した(
図19の結果)。抗体を、10倍希釈で試験した。混合物は、1μg/mlおよび10μg/mlの濃度で試験した場合、個々のモノクローナル抗体ならびにVectibixと比較して、有意に(P<0.05)より効率的である。混合物は、1μg/mlのErbituxと比較して、統計的に有意(p<0.05)にアポトーシスを増加した。
【0281】
実施例 7b
実施例7に加えて、992+1024の混合物ならびに992+1024+1030の混合物を、実施例7に記載のような同じ方法に従ってアポトーシス活性について調べた(
図35)。アポトーシスの実際のレベルを、最大ポジティブコントロールに関連付けた。2つの混合物の両方を、A431NS細胞を使用して、1μg/mlにおいてErbituxおよび個々のモノクローナル抗体992、1024および1030ならびにコントロール抗体と比較した。992+1024の混合物は、Erbituxおよび個々のモノクローナル抗体より有意に良好であった(すべてP<0.05)。
【0282】
実施例8 インビボでの効果
抗体992、1030および1042よりなる抗EGFR混合物を、A431NSを使用して、ヌードマウス異種移植モデルにおけるインビボでの効果について調べた。これは、抗EGFR抗体を含むモノクローナル抗癌抗体の有効性を調べるために広範に使用されるモデルである。ヌードマウスは、免疫不全であり、T細胞を欠く。これは、マウスにおけるヒト細胞の増殖を可能にする。
【0283】
6〜8週齢のヌードマウスの2つのグループに、1×10
6個のA431NS細胞を皮下に注入した。平均腫瘍サイズが100mm
3に到達した場合、処置を開始した。マウスに、1mgの抗体の腹腔内への5回の注入を2〜3日間隔で行った。腫瘍サイズを、デジタルカリパスを使用して、2つの直径について測定し、次の式を使用して容積を計算した:腫瘍容積(mm
3)=L×W
2×0.5、ここで、Lは最も長い直径であり、Wは最も短い直径である(Teicher BA, Tumor Models in Cancer Research. Humana Press, NJ, USA 2002, p596)。実験の終了時までに腫瘍を摘出し、秤量した。
【0284】
Synagisをコントロール抗体として使用した。この実験にはまた、抗EGFR混合物(抗体992、1030、および1024)の場合と同じスケジュールを使用するErbituxおよびVectibixによる処置を含めた。
【0285】
図20に見られるように、992、1030および1042の混合物は、A431NSの腫瘍増殖を有意に阻害した(P<0.05)。平均重量を
図21に示す。結果は、測定した腫瘍サイズに相関した。処置グループとコントロールグループとの間に有意差が存在する。
【0286】
実施例8b インビボでの効力
実施例8の上記のインビボ実験に加えて、992+1024および992+1024+1030の混合物を、上記のA431NS異種移植モデルにおいて調べた(
図36)。6〜8週齢のそれぞれ9匹のヌードマウスの4つのグループに、1×10
6個のA431NS細胞を皮下で注入した。平均腫瘍サイズが100mm
3に到達したら、マウスに第1回の抗体注入を行った。3つのグループに、992+1024、992+1024+1030の混合物、Erbituxまたはコントロール抗体、Synagisのいずれかを投与した。全てにおいて、マウスに、1週間に4回、0.5mgの17回の注入を行った。最初の注入を8日目に行い、最後の注入を34日目に行った。腫瘍サイズを、56日間測定した。抗体処置の終結後、Erbituxを投与したマウスの腫瘍は、サイズが拡大し始めたが、一方、992+1024または992+1024+1030のいずれかの混合物を投与した2つのグループのマウスでは、腫瘍のサイズが減少し続けた。91日目(処置の終結の57日後)の992+1024グループでは、腫瘍サイズの拡大は観察されなかった。56日目では、992+1024の組み合わせの平均腫瘍サイズは、Erbituxを投与したマウスの平均腫瘍サイズより有意に小さかった(P<0.01)。
【0287】
実験でのマウスの生存についてもモニターした。腫瘍が許可される最大サイズに到達した場合に死亡とマウスを評価した。以下の表は、腫瘍細胞の播種56日後に生存したマウスの数を示す。Erbituxと比較して、組み合わせの両方について生存数の改善が認められる。
【0288】
【表11】
【0289】
さらなる実験
実施例8に記載の異種移植実験からの腫瘍溶解物に関する予備データは、992+1042+1030の組み合わせが、A431NSによるVEGF産生の強力な下方調節を誘導し、前者が血管新生の重要なメディエーターであることを示す。血管の形成の増加は、多くの固形腫瘍に認められる現象であって、この現象は、栄養物などの持続した供給に参加し、それによって、生存条件に影響を及ぼす機構である。
【0290】
さらに加えて、他の予備データは、992+1042+1030の抗体の組み合わせのレベルの増加が、ErbituxおよびVectibixと比較した場合、実施例8に記載の異種移植実験由来の腫瘍融解物で観察することができることを示す。
【0291】
実施例8c.インビボでの腫瘍細胞分化の増強
細胞の最終分化は、多段階プロセスでそれらの増殖能の不可逆的な喪失を導く細胞型特異的遺伝子発現プログラムの活性化を含む複雑なプロセスである。悪性疾患では、癌細胞は、しばしば、増殖速度の増加によって特徴付けられる脱分化状態にあり、癌細胞の最終分化を誘導することが可能な薬物は、悪性細胞を排除し、正常細胞の恒常性を回復することが可能であることが示唆されている(Pierce GB, Speers WC: Tumors as caricatures of the process of tissue renewal: prospects for therapy by directing differentiation. Cancer Res 48:1996-2004, 1988)。一定の実験条件下において、抗EGFRモノクローナル抗体は、免疫不全マウスにおける異種移植腫瘍として増殖するヒト扁平癌細胞の最終分化の速度を増加させることができることが以前に報告されている(Milas L, Mason K, Hunter N, Petersen S, Yamakawa M, Ang K, Mendelsohn J, Fan Z: In vivo enhancement of tumor radioresponse by C225 antiepidermal growth factor receptor antibody. Clin Cancer Res 6:701-8, 2000;Modjtahedi H, Eccles S, Sandle J, Box G, Titley J, Dean C: Differentiation or immune destruction: two pathways for therapy of squamous cell carcinomas with antibodies to the epidermal growth factor receptor. Cancer Res 54:1695-701, 1994)。
【0292】
本発明者らは、マウスにおいて異種移植片として増殖する抗EGFRで処置したA431NS細胞の最終分化の程度を組織学的に調べた。組織学的研究には、実施例8に記載の実験由来の4つの実験グループのそれぞれから無作為に選択した3つのマウス異種移植腫瘍を含めた。
【0293】
組織を切開し、急速に凍結し、次いで凍結ミクロトーム(Leitz、モデル1720)上のTissue-Tekで包埋し、5μm切片に切断し、superfrost plus slides上にサンプル調製し、次いでヘマトキシリン/エオシン染色のために処理した。次いで、2つの独立した観察者が盲検様式ですべての組織切片の顕微鏡検査を行い、最終分化(terminal differention)の程度の測定として角化領域(「癌真珠」)を評価した(Modjtahedi et al., 1994)。表7は得られた結果を列挙する。3つの抗EGFR抗体の混合物(992+1024+1030、グループ1)で処置したマウスは、対照抗体ErbituxおよびVectibix(それぞれグループ2および3)で処置したマウスと比較して、顕著により大きなかつより多数の最終分化した癌細胞の病巣を有した。抗体の代わりにPBSを投与したコントロールグループ(グループ4)では、最終分化は検出されなかった。
【0294】
デジタルカメラを搭載した顕微鏡を使用して代表的な顕微鏡画像を得た(
図26を参照のこと)。
【0295】
結論として、ドメインIII内に非重複エピトープを伴う3つの抗EGFR抗体(クローン992、1030および1042)の組み合わせは、ErbituxおよびVectibixモノクローナル抗体と比較して、インビボで腫瘍細胞に対して予想外の増強された分化誘導効果を示した。最終分化において観察された効果は、本発明の抗体組成物が、レチノイン酸、4−フェニルブチレートのような薬剤を含むその他の分化を伴う組み合わせの療法で使用することができるといる結論を導く。
【0296】
表7
【表12】
【0297】
実施例8d.本発明の抗体組成物の増殖阻害効果の維持
実施例8および8bに示した腫瘍異種移植実験の反復を実施して、992+1024抗体混合物のインビボでの効力について調べた。簡単に説明すると、BALB/c nu/nuマウスの脇腹に、10
6個のA431NS細胞を皮下注入した。腫瘍異種移植片を100mm
3の平均腫瘍サイズまで増殖させ(7日目)、この時点で、マウスを9匹の動物よりなる5つのグループに無作為に分け、抗体処置を開始した。5つのグループに、高(2mg/週)もしくは低(1mg/週)用量の992+1024混合物または対照抗体Erbitux、あるいは高用量(2mg/週)のコントロール抗体Synagisのいずれかを投与した。すべてのマウスに、0.5または1mgの抗体の合計で9回の注入(1週間に2回の注入を7日目に開始して、33日目に終了する)を行った。
【0298】
高用量(2mg/週)の992+1024混合物は、Erbituxと比較すると、初期の腫瘍増殖を制御し、長期の腫瘍退行を誘導するのに極めて効率的である(P=0.0002、
図38)。2mg/週の992+1024混合物を投与した動物のうち、研究期間(研究の開始後118日間、
図38および39)中に死亡した動物はなく、60日目に9匹の動物のうち1匹のみが生存した高用量のErbituxの2mg/週グループより有意に良好な結果が認められた(P=0.0008、
図39)。これは、長期間の生存に対する992+1024処置の持続効果を示す。高用量のものより低い効率であるが、低用量の992+1024混合物(1mg/週)もまた、腫瘍増殖を制御することができ、腫瘍抑制(P=0.0135、
図38)および生存率(P=0.0087、
図39)の両方を見た場合、高用量の2mg/週のErbituxと比較して有意に良好であった。これらの結果は、低用量であったとしても、Erbituxと比較して、992+1024の組み合わせがより優れた効力を有することを示す。結果はまた、承認されたモノクローナル抗体と比較した、992+1024の組み合わせによって生じる増殖阻害の持続性を示す。
【0299】
実施例9 スフェロイド増殖
スフェロイド研究では、丸底96−ウェルプレートに35μlの120mg/mlのポリ−HEMA溶液を添加し、フローフードで一晩放置して蒸発させた。ポリ−HEMAは細胞接着を防止する。A431−NS細胞を上記のように処理し、計数し、次いでそれらの濃度を100,000細胞/mlに調整する。次いで、50μlの細胞懸濁液(5,000個の細胞/ウェル)を、50μlの5%matrigel溶液と共に、カラム2〜11の実験ウェルに添加する。実験用ウェルの培地蒸発の減少効果のため、200μlの培地を、列1および8ならびにカラム1および12に添加した。プレートを300×gで5分間遠心分離し、次いで加湿インキュベーターにて37℃で一晩放置した。翌日、適切な抗体および抗体混合物を、空の96−ウェルプレートにおいて20μg/mlの最終全抗体濃度に希釈した。これを、0.5%のFBSおよび1%のP/Sを補充したDMEMで行い、最も高い抗体濃度のウェルで10μg/mlの最終抗体濃度を得る。次いで、150μlのこれらの溶液を、96−ウェルプレートのカラム2のウェルに添加し、各ウェルが100μlの抗体溶液を含有するように、3倍系列希釈をカラム9まで漸減させながら作製した。100μlの培地をカラム11に添加した。次いで、これらの溶液の100μlを、スフェロイドを含有するプレートに移し、7日間インキュベートした。次いで、20μlのWST-1試薬を、1ウェルあたり(pr. well)に添加し、次いでプレートを、37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、オービタルプレートシェーカーに移し、さらに1時間放置した。吸光度を450および620nm(対照波長)においてELISAリーダー上で測定する。代謝活性細胞(MAC)の量を、以下のように非処置コントロールのパーセントとして計算する:
【表13】
【0300】
ドメインIII内の非重複エピトープを伴う3つの抗体の混合物(992+1030+1042)は、A431−NSスフェロイドの増殖を効果的に阻害し、モノクローナル治療用抗EGFR抗体ErbituxおよびVectibixよりさらに強力である(
図22)。
【0301】
実施例10. カニクイザルEGFR ECDへの結合
カニクイザルEGFR細胞外ドメインのクローニング
シグナルペプチドを含まないカニクイザルEGFRの細胞外ドメインを、ネステッドPCR、および全長ヒトEGFRの公開された配列(GENBANK X00588, Ullrich,A. et. al. Nature 309(5967),418-425 (1984))に由来する配列特異的プライマーを使用することによって表皮から単離したカニクイザルcDNAからクローニングした。
【0302】
PCR試薬:
正常な皮膚表皮から単離されたカニクイザルcDNA:
CytoMol Unimed、カタログ番号:ccy34218、ロット番号:A711054。
Phusion反応緩衝液(5×):Finnzymes、カタログ番号:F−518、ロット番号:11。
Phusion酵素:Finnzymes、F−530S(2U/μL)。
dNTP 25mM:Bioline、カタログ番号:BIO−39029、ロット番号:DM−103F。
部分的シグナル配列および膜貫通ドメインを含むカニクイザルEGFR ECDの増幅のためのプライマー:
5’ATGプライマー:5’−TCTTCGGGAAGCAGCTATGC−3’(配列番号135)
3’Tm2プライマー:5’−TTCTCCACTGGGCGTAAGAG−3’(配列番号136)
カニクイザルEGFR ECD Bp1〜1863を増幅し、膜貫通ドメインの前にXbaI、MIuI制限部位および終止コドンを組み入れるネステッドPCRのためのプライマー:
5’EGFR XbaI:5’−ATCTGCATTCTAGACTGGAGGAAAAGAAAGTTTGCCAAGGC−3’(配列番号137)
3’EGFR MIuI:5’−TACTCGATGACGCGTTTAGGATGGGATCTTAGGCCCGTTCC−3’(配列番号138)
【0303】
PCR条件:
30サイクル:98℃/30秒間の融解、55℃/30秒間のアニーリング、72℃/60秒間の伸長。30サイクル後、PCR産物をさらに5分間伸長させた。
【0304】
PCR反応を、0.2mMのdNTP、0.5μMプライマーを含有する50μLの合計容積の反応緩衝液中の1μlテンプレートおよび2単位のPhusion酵素によって実施した。
【0305】
見かけの長さが約1800〜1900Bpの最終PCRバンドを入手し、発現ベクターにクローニングした。クローニングしたカニクイザルEGFRの細胞外ドメインのDNAおよびタンパク質配列を
図23に示し、ヒトEGFR ECDに対して整列させたカニクイザルEGFR ECDのタンパク質配列を
図24に示す。ヒトEGFR ECDおよびカニクイザルEGFR ECD DNA配列のアラインメントは97.6%の配列同一性を示した一方、対応するタンパク質配列のアラインメントは98.6%の配列同一性を示した。
【0306】
ELISAにおけるヒトおよびカニクイザルEGFRの細胞外ドメイン間の抗体交差反応性の実証
試験した抗EGFR抗体が、ヒトおよびカニクイザルEGFR ECDの両方に良好に等しく結合したことを確かめ、それによりカニクイザルにおける毒物学研究を保障するため、1μg/mlから開始した抗体の4倍系列希釈を、ELISAによって、組み換えヒトおよびカニクイザルEGFR ECDタンパク質への結合について試験した。このアッセイにおいて同一結合プロファイルを示す抗体を、良好な種のEGFR交差反応性の指標とみなした。ELISAウェルを、PBS中1μg/mlの濃度において50μl/ウェルの全長EGFRにおいて4℃で一晩被覆した。翌朝、ウェルを、PBS−Tで2回洗浄し、次いで100μlのPBS−T−1%BSAにより、室温で1時間ブロックし、続いて、PBS−Tにおいて2回洗浄した。次に、50μlの系列希釈した抗EGFR抗体およびコントロール抗体をウェルに添加し、次いで室温で1時間インキュベートした。抗体インキュベーション後、ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、続いてブロッキング緩衝液中1:3000に希釈した50μl/ウェルのストレプトアビジン−HRP二次試薬とのインキュベーションおよび室温で30分間のインキュベーションを行った。最後に、ウェルを、PBS−Tで5回洗浄し、プレートを、50μL/ウェルのTMB基質を添加することによって発色させ、室温でインキュベートした。インキュベーション後、1MのH
2SO
4、100μl/ウェルの添加によって反応を停止し、プレートをOD450nmで読み取った。
【0307】
ELISA試薬:
1.ELISAプレート;NUNC Maxisorp;カタログ番号:442404
2.抗原:ヒトrEGFR ECD;カニクイザルrEGFR ECD
3.コーティング緩衝液:1×PBS;Gibcoカタログ番号:20012−019
4.洗浄緩衝液:1×PBS/0.05%Tween 20(PBS−T)
5.ブロッキング/希釈緩衝液:PBS−T中1%BSA
6.ヤギ−抗ヒトIgG HRP抱合:Serotec、Star 106P
7.TMB Plus(KemEnTecカタログ番号4390L)
8.(1MのH
2SO
4)
【0308】
図25に示すように、記載のELISAアッセイは、交差反応性ヒトおよびカニクイザル抗EGFR ECD抗体(
図25A)と、マウス免疫化に使用したヒトEGFRECDのみを認識する種特異的抗体(
図25B)との間を識別することができた。
【0309】
実施例11.運動性の阻害
ほとんどの癌による死は、腫瘍細胞の転移および遠位局在におけるその後の増殖から生じる。隣接する正常組織の局所侵入は、恒常性機能を損なわず、腫瘍の外科的または放射線的切除を妨害する。最近の研究では、誘導された運動性がこのような広がりを促進するのに中心的な役割を果たすことが注目されている。EGFRは、細胞運動性および拡大を容易にすることが公知であり、従ってEGFR仲介運動性の阻害はEGFRを標的にする薬物の重要な機構である。
【0310】
頭頚部癌腫細胞系統の運動性に対する2つの抗体992および1024の混合物の効果について調べた。10,000個の細胞からなるスフェロイドを、実施例9に記載のように、一晩調製した。次いで、スフェロイドを、NUNC T25細胞培養フラスコに移し、一晩接着させた。次いで、10μg/mlの抗体混合物992+1024またはネガティブコントロール抗体を添加し、スフェロイドをさらに24時間インキュベートした。次いで、40×の倍率で画像を撮影し、software Image Jを使用して、細胞で覆われた表面積を測定した。
【0311】
結果:
図27Aに認められ得るように、EGFR特異的抗体992および1024の添加は、腫瘍細胞で覆われた表面積の顕著な減少をもたらす。運動性を
図27Bにおいて定量し、これは、をネガティブコントロール抗体と比較して、運動性が約60%減少することを示す。この運動性の減少は極めて有意p<0.01である。
【0312】
それ故、抗体992および1024の組み合わせは、潜在的にEGFR仲介腫瘍細胞運動性を阻害し、これは、抗EGFR抗体の組み合わせが転移した疾患の治療に使用され得ることを示す。
【0313】
実施例12.Sym004抗体組成物によるインボルクリンの上方調節
インボルクリンは、早期の扁平細胞分化のマーカーであって、角化膜の形成に関与するタンパク質である。従って、インボルクリンレベルは、分化した腫瘍細胞の数を測定するのに使用することができる。インボルクリンのレベルは、市販のインボルクリンELISAキット(Biomedical Technologies)を使用して、Erbitux、Vectibixもしくは抗体992+1030+1042の混合物で処置しなかったまたは処置したいずれかのA431NS異種移植腫瘍由来のタンパク質溶解物中で推定した。Qiagen製TissueLyzerを使用して、1mlのRIPA緩衝液中30〜40mgの腫瘍組織を均質化することにより腫瘍溶解物を調製した。各澄明化された溶解物中のタンパク質濃度を、Pierce製BCAタンパク質アッセイキットを使用して調べ、各サンプル由来の0.4μgのタンパク質においてELISAアッセイを使用してインボルクリンレベルを推定した。
【0314】
結果:
図27で認められ得るように、インボルクリンは、ネガティブコントロールおよびErbituxまたはVectibix処置グループと比較して、992+1030+1042処置グループにおいて有意に高いレベルで認められる。それ故、抗体992、1030および1042の組み合わせは、A431NS異種移植腫瘍におけるインボルクリンのレベルを増加させ、従って、おそらく、より高い程度のA431NS分化を誘導する。多量の癌真珠と良好に相関する結果は、この特定の処置グループで見出される(実施例8を参照のこと)。
【0315】
実施例13.Sym004抗体組成物によるEGFRの内在化
いくつかの抗体は、それらの表面標的の内在化を誘導することによって機能する。EGFのようなリガンドによって活性化される場合、EGFRは、内在化を経験することが公知である。
【0316】
2つの抗体992および1024の混合物がEGFR内在化を誘導する能力を、共焦点顕微鏡を使用して調べた。A431NSおよびHN5細胞を、LabTek由来の8ウェルチャンバスライドに播種し、0.5%FBSを含有するDMEMにおいて一晩インキュベートした。次いで、細胞に、10μg/mlの992+1024のAlexa-488標識抗体混合物またはコントロール抗体Erbituxを添加し、次いで、異なる期間インキュベートした。次いで、大ピンホールまたは小ピンホールのいずれかを伴うBiorad共焦点顕微鏡を使用して、60×倍率で画像を撮影した。
【0317】
結果:
図29Aに示すように、Alexa-488標識EGFR特異的抗体992および1024の2時間の添加は、A431NSおよびHN5細胞系統の両方の細胞内小胞における抗体の蓄積を引き起こす。対照的に、Erbituxは、主に細胞表面に見出される。
図29Bは、より薄い細胞切片の画像を生じる小さい方のピンホールを使用するA431NS細胞の画像を示す。これらの画像から、抗体992+1024は細胞内に局在するが、一方、Erbituxは主に細胞表面で見出されることが明らかである。
図30は、992+1024仲介の内在化の時間枠を示し、抗体の添加後の30分間の短い時間で、それらが、細胞内小胞において見出され得ることを示す。4時間後、ほぼすべての抗体992+1024が、低いまたは極めて弱い表面染色で、細胞内に見出される。対照的に、Erbituxは細胞表面に残存する。992+1024によって誘導される内在化が細胞内のEGFRの持続的な分解および除去を引き起こすことを示す証拠もまた、得られている。
【0318】
それ故、抗体992および1024の組み合わせは、迅速かつ強力にEGFR内在化を誘導するが、一方でErbituxは誘導しない。
【0319】
実施例14 表面プラズモン共鳴による抗体アフィニティーの測定
組み換え可溶性EGFR ECDに対するSym004 IgG抗体の一価のアフィニティーの測定
【0320】
可溶性抗原に対するIgG分子全体の一価のアフィニティーの測定を可能にする(Canziani, Klakamp, et al. 2004, Anal. Biochem, 325:301-307)に記載のアッセイを用いて、本発明の全長IgG抗体の速度論的分析を、BIAcore 2000上で実施した。簡単に説明すると、約10,000Ruのポリクローナル抗ヒトIgG Fc抗体を、製造業者の説明書に従ってCM5チップ表面に抱合し、続いて、抗Fcチップ表面上での25μgの本発明の個々の抗EGFR抗体またはSynagisネガティブコントロールの捕捉を行った。アッセイにおいて用いた最も高い抗原濃度の結合が25Ruを超えないように、各クローンについて、捕捉されたIgGの密度を最適化した。次に、ゲル排除クロマトグラフィーによって一価のタンパク質のみを含有することが予め示された250μLの可溶性ヒトEGFR ECDを、25μL/分の流速、HBS−EP緩衝液での2倍希釈系列で注入して、応答曲線を作成した。捕捉された抗体/抗原複合体を、100mMのH
3PO
4の10秒間注入でストリッピングすることによって、サイクル間で、チップ表面を再生した。まず、ネガティブコントロール抗体Synagisを含有するフローセルの応答を差し引き、続いて、HBS−EP緩衝液のみの注入によって作成された応答を差し引く(「二重参照法」)ことによって、速度論的分析を実施した。解離速度定数(ka)および解離定数(kd)を、製造業者によって提供されたBIA evaluation software 4.1により作成されたセンサーグラムから総合的に評価した。
【0321】
試薬:
1.CM5チップ:Biacore、カタログ番号BR−1000−14
2.NHS:Biacore BR-1000-50
3.EDC:Biacore BR-1000-50
4.10mM酢酸緩衝液pH4.5:Biacore、カタログ番号BR−1003−50
5.ヤギ抗ヒトIgG Fc:Caltag、カタログ番号H10500
6.エタノールアミン、1.0M pH8.5:Biacore BR-1000-50
7.10×HBS−EPランニング緩衝液:0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%v/vのSurfactant P20
8.抗原:6×Hisを伴うヒトEGFR細胞外ドメイン
9.100mMのH
3PO
4
【0322】
可溶性ヒトEGFRECDに対する本発明の全長IgGの計算された一価のアフィニティーを、以下の表8に示す。
【0323】
【表14】
表8.可溶性受容体に対する抗EGFRIgG抗体の測定されたアフィニティー。抗体測定を、製造者によって提供された評価ソフトウェアを用いるBIAcore 2000における表面プラズモン共鳴によって実施した。
*992のアフィニティーを、Scatchard分析によって決定した。NA.適用しなかった。
【0324】
それぞれ4.2nM、0.4nM、および4.6nMのより高いアフィニティーを有した1260、1277、および1284を除いて、試験したほとんどのSym004抗体は、10〜20nMの範囲のアフィニティーで可溶性ヒトEGFR ECDを認識した。最終的に、992が試験した他の抗体よりかなり低いアフィニティーで可溶性EGFR ECDに結合することを見出した。結果的に、この抗体の速度論的分析は、Scatchard分析によって決定すべきであり、これにより、可溶性ヒトEGFR ECDに対して170nMのアフィニティーが示された。
【0325】
固定化された組み換えEGFR ECDに対するSym004 Fab抗体のアフィニティーの測定
【0326】
可溶性および固定化形態で示されるEGFR ECD間の抗原提示における可能な差異を調べるために、ヒトIgG Fcに融合されたヒトEGFR ECDよりなるEGFR-Fc(R&D Systems、344-ER)と呼ばれる固定化されたキメラEGFR受容体抗原に対する新たなアフィニティー測定を実施した。この目的のために、IgG抗体992、1024および1030のFabフラグメントを作製して、一価のアフィニティーの測定を可能にした。
【0327】
Fab生成:
992、1024および1030のFabフラグメントを、Pierce製Fab preparation Kitを使用し、製造業者の説明書に従ってパパイン消化によって生成した。簡単に説明すると、2mgの各IgG抗体を、製造業者の説明書に従い、20mMシステイン−HCl、pH7.0を含有する新たに調製した消化緩衝液を伴うNAP-5カラム(Amersham Biosciences)上で緩衝液交換を行った。次いで、ビーズをスピンし、上清を捨てる前に、パパインビーズの350μlスラリーを、同じ消化緩衝液で2回洗浄した。1mlの緩衝液を交換したIgG抗体をビーズに添加し、次いで1000rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートすることにより抗体を消化した。翌朝、HiTrap Protein Aカラム(Ge Healthcare)上での全長IgGの枯渇によって、粗Fabから未消化のIgGを分離した。生成されたFabを、PBSに対して一晩十分に透析し、還元および非還元条件下のSDS−PAGEで分析した。非還元条件下の約50kDaのタンパク質のバンドを、成功したFab生成の指標とみなした。
【0328】
試薬:
1.ImmunoPure Fab preparation Kit;Pierce;カタログ番号44885
2.NAP5脱塩カラム;Amersham、カタログ番号17−0853−02
3.PBS pH7.2;Gibco;番号20012−019
4.HiTrap Protein A HP、1mlカラム;GE Healthcare;番号17−0402−01
5.NuPAGE 4-12% Novex Bis-Tris Gel;Invitrogen;番号NP0322BOX
6.分子量マーカー;Seeblue Plus 2、;Invitrogen;番号LC5925
7.抗EGFR抗体−それぞれ2.0mg
【0329】
本発明のFab抗体の速度論的分析を、物質輸送における制限を回避するために極めて低い密度でセンサー表面上に固定化された組み換え抗原を使用し、Biacore 2000上で実施した。簡単に説明すると、合計で285Ruの組み換えEGFR ECD−Fcキメラ(R&D Systems、カタログ番号344−ER)を、製造業者の説明書に従って、CM5チップ表面に抱合した。次いで、固定化されたEGFRを伴うチップ上で試験した場合、25を超えるRu最大値を生じなかった最適化された濃度で開始する2倍系列希釈で、本発明の抗体に由来するFabフラグメントを試験した。まず、HBS−EP緩衝液のみの注入によって作成された応答を差し引くことによって、速度論的分析を実施した。解離速度定数(ka)および解離定数(kd)を、製造業者によって提供されたBIA evaluation software 4.1により作成されたセンサーグラムから総合的に評価した。
【0330】
固定化されたヒトEGFRECDに対する本発明の試験したFabフラグメントの計算されたアフィニティーを、以下の表9に示す。
【0331】
【表15】
表9:固定化された受容体に対する抗EGFR Fab抗体の測定されたアフィニティー抗体測定を、製造業者によって提供された評価ソフトウェアを用いるBIAcore 2000における表面プラズモン共鳴によって実施した。
*992のアフィニティーをScatchard分析によって決定した。NA.適用しなかった。
【0332】
上記の表9に示すように、992および1024のFabフラグメントは、左記の実施例に示すアフィニティーと一致して、それぞれ、150nMおよび26nMのアフィニティーを有することが見出され、これは、これらの2つの抗体について、可溶なおよび固定化されたEGFRに対する抗体認識における軽微な差異を示した。しかし、抗体1030は、可溶性受容体と比較して、固定化された抗原に対して2.3nMの10倍高いアフィニティーを示し、結果的に、固定化された抗原上に暴露されたエピトープを好適に認識した。
【0333】
実施例15:EGFR抗原提示の調査およびA431−NS細胞に対する機能的アフィニティーの格付け。
A431−NS細胞における抗原提示および精製された全長EGFR受容体間の比較。
【0334】
速度論的分析は、抗体992が、150〜170nMの間のアフィニティーで組み換えEGFR ECDを認識したことを示したため、このような弱いアフィニティーが認められるのは、mAb992が、組み換えEGFR ECDまたはA431細胞から精製された完全長EGFRにおいて示されるコンホメーションとは対照的に、A431−NS細胞上に発現されるEGFRの元々のコンホメーションに好適に結合した事実によるかどうかについて調べた。EGF受容体抗原提示における差異を調べるために、本発明の抗体のサブ集団の同時ELISA結合研究をFabフラグメントで実施し、試験したA431−NS細胞、および同じ細胞から精製した全長EGFRに対するアビディティの効果を回避した。
【0335】
Fab生成:Fabフラグメントの生成を、実施例14に記載のとおりに実施した。
【0336】
間接ELISA:間接ELISAでは、全長EGFR(Sigma E2645)を、炭酸緩衝液(50μl/ウェル)中1μg/mlにおいて4℃で一晩被覆した。翌朝、ウェルをPBS−Tで2回洗浄し、次いで1%BSAを含有するPBS−Tにより、室温で1時間ブロッキングし、続いて、PBS−Tにおいて2回洗浄した。次に、1%BSAを含有するDMEMにおけるFab抗体の50μl系列希釈を、独立したELISAウェルに添加し、次いで室温で1時間インキュベートし、その後、ウェルをPBS−Tで4回洗浄した。次に、1%BSAを含有するDMEMにおいて1:5000に希釈した50μlの第2のヤギ−抗ヒト(Fab特異的)HRP抱合を添加し、氷上で30分間インキュベートした。最終的に、ウェルをPBS−Tで4回洗浄し、次いで50μl/ウェルのTMB基質を添加することによりプレートを発色させ、続いて5〜15〜30分ごとに620nmで読み取った。基質とのインキュベーション後、1MのH
2SO
4の添加により反応を停止し、吸光度を450nmで読み取った。
【0337】
試薬、間接ELISA:
1)コーティング緩衝液:50mM炭酸緩衝液、pH9.8
2)抗原:A431細胞から精製した野生型全長EGFR;Sigma E2645
3)ELISAプレート:NUNC Maxisorp;カタログ番号:442404
4)洗浄緩衝液:1×PBS/0.05%Tween 20(PBS−T)
5)ブロッキング/希釈緩衝液:PBS−T中1%BSA(PBS−T−1%BSA)
6)抗体希釈緩衝液:1%BSAを含有するDMEM
7)ヤギ−抗Human(Fab特異的)HRP抱合:Jackson、カタログ番号109−035−097
8)TMB Plus基質:KemEnTec、カタログ番号4390L
9)1MのH
2SO
4
【0338】
細胞ELISA:最大半量OD(ED50)を生じるモル濃度として定義される相対的結合アフィニティーを、A431−NS細胞に対する抗体滴定によって決定した。簡単に説明すると、10,000個のA431−NS細胞を、0.5%FCSおよび1%P/Sを添加したDMEMを含有する96ウェルELISAプレートにおいて、37℃、5%CO
2で一晩増殖させた。翌朝、コンフルエント細胞(約20,000個/ウェル)を、PBSで2回洗浄し、室温での1%パラホルムアルデヒド溶液との15分間のインキュベーションにより固定し、続いて、PBSにより4回洗浄を行った。次に、試験するEGFR抗体およびネガティブコントロール抗体Synagisを、1%BSAを含有するDMEMにおいて系列希釈し、50μlの各希釈をウェルに添加し、次いで室温で1時間インキュベートし、その後、ウェルをPBSで4回洗浄した。次いで、1%BSAを含有するDMEMにおいて1:5000に希釈した50μlの二次ヤギ−抗ヒト(Fab特異的)HRP抱合を添加し、次いで氷上で30分間インキュベートした。最終的に、ウェルをPBSで4回洗浄し、50μl/ウェルのTMB Plus基質を添加することによって、プレートを発色させ、次いで5〜15〜30分ごとに620nmで読み取った。基質とのインキュベーション後、1MのH
2SO
4の添加により反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。二次試薬とのみ結合する平均のバックグランドを差し引き、続いて、試験した各抗体に対して最大結合%をプロットすることにより結合曲線を標準化することによって、ED50値として表される機能的アフィニティーを計算した。
【0339】
試薬、細胞ELISA:
1)DMEM培地:Gibco、カタログ番号41966−029
2)FCS:Gibco、カタログ番号10099−141
3)Pen strep (P/S):Gibco、カタログ番号15140−122
4)ELISAプレート:Costar、カタログ番号3595
5)洗浄緩衝液(PBS):Gibcoカタログ番号20012−019
6)抗体希釈緩衝液:1%BSAを含有するDMEM
7)細胞固定化溶液:BD Biosciences、カタログ番号340181
8)ヤギ−抗ヒト(Fab特異的)HRP抱合:Jackson、カタログ番号109−035−097
9)TMB Plus基質:KemEnTec、カタログ番号4390L
10)1MのH
2SO
4
【0340】
A431−NS細胞に対して発現されたEGF受容体および同じ細胞から精製された受容体に対する抗原提示における差異を、同じ二次抗体試薬およびインキュベーション時間を用いる同時ELISA結合研究で決定した。結果を
図31に示す。実験は、同じ濃度のFab1030の結合と比較した場合、Fab抗体992および1024がELISAウェルに対して被覆された精製された全長EGFRに弱く結合したことを明らかに示した。しかし、3つのすべてのFabが強い結合活性を示したA431−NS細胞に対して、抗体を試験した場合、992および1024のこの弱い結合活性が回復した。異なる2つのELISAの比較は、ELISAウェルにおいて精製された抗原に対して示されるコンホメーションとは対照的に、細胞表面において発現される元々のEGFRコンホメーションへの結合に対するFab992および1024の選好性が明確に示した。結果はまた、組み換え可溶性および固定化EGFR ECDに対する表面プラズモン共鳴によって測定される992の見かけ上弱いアフィニティーが、試験した系における992抗体エピトープの不都合な提示によるものであることを示唆した。
【0341】
A431−NS細胞に対する機能的アフィニティーの格付け。
上記のように実施した細胞ELISAを使用して、ED50値として表される最大半量OD値の計算によって、992、1024、1030、VectibixならびにErbituxのIgGおよびFabフラグメントの機能的アフィニティーを格付けた。この分析の結果を
図32に示し、そして計算したED50値を以下の表10に示す。
【0342】
【表16】
表10:IgGのアビディティー効果またはFabの一価のアフィニティーに基づくED50値として表される機能的アフィニティーの格付け。ED50値を、A431−NS細胞に対する系列抗体滴定によって決定した。SD:適合曲線の標準偏差。
【0343】
実験は、アビディティー効果を考慮した場合、IgG992および1024はErbituxおよびVectibixの両方より高いアビディティーでA431−NS細胞に結合するようであった一方、IgG1030が試験したIgG抗体のうち最も低いアフィニティーを有したことを明確に示す。しかし、細胞に対する一価のアフィニティーを、Fabフラグメントを使用して決定した場合、992は、約10nMの最も低いアフィニティーを有した。それにもかかわらず、この一価の機能的アフィニティーはなお、BIAcoreで試験したものより少なくとも15倍低かった。
【0344】
実施例16:抗体により誘導される結合性増強の試験。
本発明の抗体ペアに対して実施したBIAcore競合実験は、これらの抗体を両方の方向で相互に試験した場合、992および1024の結合は、それぞれ約55%および58%増強される(
図9A)ことを示した。この現象についてさらに調べるために、非固定細胞を使用する細胞ELISAを設計して、非重複エピトープに結合する抗体のFabフラグメントによる先の受容体飽和時の1つの抗体クローンのIgG結合性の効果について調べた。
【0345】
細胞ELISA:ELISAを、変更を伴った基本的に実施例15に記載のとおりに実施した。細胞を非固定のままとし、抗体添加後も高次構造EGFRの可撓性を可能にした。簡単に説明すると、10,000個のA431−NS細胞を、0.5%FCSおよび1%P/Sを添加したDMEMを含有する96ウェルELISAプレートにおいて、37℃、5%CO
2で一晩増殖させた。翌朝、コンフルエント細胞(約20,000/ウェル)をPBSで2回洗浄し、次いで抗体により誘導される結合性増強について調べるためのウェルを、992、1024もしくは1030のいずれかの40nMの単一のFabフラグメントの25μl、または80nMの各単一のFabの12.5μlと共に、飽和された結合を付与することが先に示された二重の組み合わせでプレインキュベーションした。1%BSAを含有する25μlのDMEMを、Fabフラグメントの添加を伴わないIgG抗体の試験に使用されるウェルに添加した。Fabおよび培地添加後、ELISAウェルを、30分間、室温でインキュベートし、その後、25μlの360nMの濃度から開始する本発明のIgGまたはSynagisネガティブコントロールの3倍系列希釈をウェルに添加し、氷上で1時間インキュベートした。次に、ウェルをPBSで4回洗浄し、1%BSAを含有するDMEMにおいて1:5000に希釈した50μlの二次モノクローナルマウス−抗ヒト(Fc特異的)HRP抱合を添加し、氷上で30分間インキュベートした。最終的に、ウェルをPBSで4回洗浄し、50μl/ウェルのTMB基質を添加することによりプレートを発色させ、5〜15〜30分ごとに620nmで読み取った。基質とのインキュベーション後、1MのH
2SO
4の添加によって、反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。二次試薬とのみ結合する平均のバックグランドを差し引き、続いて、試験した各抗体に対して最大結合%をプロットすることにより結合曲線を標準化することによって、ED50値として表される機能的親和性を計算した。
【0346】
試薬、細胞ELISA:
1)DMEM培地:Gibco、カタログ番号41966−029
2)FCS:Gibco、カタログ番号10099−141
3)Pen strep (P/S):Gibco、カタログ番号15140−122
4)ELISAプレート:Costar、カタログ番号3595
5)洗浄緩衝液(PBS):Gibcoカタログ番号20012−019
6)抗体希釈緩衝液:1%BSAを含有するDMEM
7)マウス−抗ヒト(Fc特異的)HRP抱合:Ab-direct、カタログ番号MCA647P
8)TMB Plus基質:KemEnTec、カタログ番号4390L
9)1MのH
2SO
4
【0347】
抗体により誘導される結合性増強の検査を、同じ第2の抗体試薬およびインキュベーション時間を用いる同時ELISA結合研究によって、決定した。この研究の結果を
図33に示し、そして計算したED50値を以下の表11に示す。
【0348】
【表17】
表11:列挙したFabフラグメントによる先の受容体飽和を伴うまたは伴わないIgGのアビディティー効果に基づくED50値として表される機能的アフィニティーの格付け。ED50値を、A431−NS細胞に対する系列抗体IgG滴定によって決定した。SD:適合曲線の標準偏差。
【0349】
図33および上記の表11に示すように、IgG992は、1030と共に、1024または1030または1024のいずれかのFabフラグメントによる先の受容体飽和時の結合の明らかな増強を示した。Fabフラグメントとのインキュベーションは、IgG992を単独で試験した場合、0.6nMと比較して、それぞれ、0.5;0.4および0.5nMのED50値の減少を生じた。同様に、IgG1024および1030もまた、Fab992および1024のみで細胞を最初に飽和した場合、IgGの前にFab992および1030の両方を細胞に添加した場合、結合性の増加を示した。この結果は、同じ標的受容体上の非重複エピトープに対して1を超える抗体を有する有益性を明確に示した。
【0350】
実施例2と比較して、この実験では僅かに低い機能的アフィニティーを調べた。この結果は、おそらく、異なる第2の試薬を本実施例において使用したため、および試験したIgGを非固定細胞と共にインキュベートして内在化を回避したためである。
【0351】
実施例16B.全長カニクイザルEGFRのクローニング。
シグナルペプチドを含む全長カニクイザルEGFRを、ネステッドPCR、および全長ヒトEGFRの公開された配列(GENBANK X00588, Ullrich,A. et. al. Nature 309(5967),418-425 (1984))に由来する配列特異的プライマーを使用することによって表皮から単離したカニクイザルcDNAからクローニングした。
【0352】
PCR試薬:
正常な皮膚表皮から単離されたカニクイザルcDNA:
CytoMol Unimed、カタログ番号:ccy34218、ロット番号:A711054。
FastStart反応緩衝液(10×):Roche、カタログ番号:03553361001
FastStart酵素:Roche、Roche、カタログ番号:03553361001
Phusion酵素:Finnzymes、F−530S(2U/μL)。
dNTP 25mM:Bioline、カタログ番号:BIO−39029
シグナル配列を含む全長カニクイザルEGFRの増幅のためのプライマー:
5’ATGプライマー:5’−TCTTCGGGAAGCAGCTATGC−3’(配列番号135)
3’STOPプライマー:5’−TCATGCTCCAATAAATTCACTG−3’(配列番号139)
【0353】
PCR条件:
95℃/2分間、40サイクル:95℃/30秒間、55℃/30秒間、72℃/3分間、72℃で5分間の最終インキュベーションを伴う30秒間。
【0354】
全長カニクイザルEGFRを増幅し、そしてNotおよびXho制限部位を組み入れるネステッドPCRのためのプライマー:
E579 Cyn Not5’ 5’−GGAGTCGGCGGCCGCACCATGCGACCCTCCGGGACGG−3(配列番号140)
E580 Cyn Xho5’ 5’−GCATGTGACTCGAGTCATGCTCCAATAAATTCACTGC−3(配列番号141)
【0355】
PCR条件:
95℃/2分間、次いで、30サイクル:95℃/30秒間の融解、55℃/30秒間のアニーリング、72℃/3分間の伸長。30サイクル後、PCR産物をさらに10分間伸長させた。
【0356】
PCR反応を、最終濃度で1×FastStart緩衝液、0.2mMのdNTPおよび0.2μMの各プライマーを伴う合計容積で50μLの反応緩衝液中0.5μlテンプレートおよび0.1μlのPhusion酵素、0.4μlのFastStart酵素で実施した。
【0357】
約4000bpの見かけの長さを伴うPCRフラグメントを入手し、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、パート番号4506−41)を使用してクローニングし、配列決定した。クローニングしたカニクイザルEGFRのDNAおよびタンパク質配列を
図34に示す。ヒトEGFRおよびカニクイザルEGFRタンパク質配列のアラインメントは、99.2%の配列同一性を示した。
【0358】
FACS分析による全長ヒトおよびカニクイザルEGFR間の抗体交差反応性の決定
【0359】
全長ヒトおよびカニクイザルEGFRを、安定なトランスフェクションによってCHO細胞の表面上に発現させ、そしてFACS分析によって、系列希釈したEGFR抗体のパネルへの結合について、細胞を試験した。すべての抗体希釈系列における一定数の細胞の細胞表面上において発現されたEGFR抗原分子の数より少なくとも5倍多いモル過剰量の抗体を保持することによって、KD依存的条件下で、決定を行った。この設定は、試験したすべての抗体濃度について、完全な受容体飽和における抗体結合性のFACS分析を可能にした。
【0360】
簡単に説明すると、定量的FACS分析を、BD FACSアレイBioanalyzer System上で実施して、ヒトまたはカニクイザル全長EGFRのいずれかでトランスフェクトしたCHO細胞の表面上に発現されたEGFR分子の数を決定した。細胞上のPE標識ErbituxIgGを滴定し、次いで既知のPE密度を伴うRainbow calibration particlesから作成した標準曲線との比較によって、等価なPEの分子数を決定することによって、分析を実施した。定量分析は、EGFRでトランスフェクトしたCHO細胞が、各細胞の表面上に約350,000分子を示すことを表した。次に、10,000個のEGFRトランスフェクトしたCHO細胞と共に、漸増体積においてインキュベートし、各決定において、表面に示されるEGFR抗原を超える少なくとも5倍モル過剰の抗体を可能にすることによって、5nMから開始する本発明の抗体の5倍系列希釈を比較した。抗体を、シェーカー上で細胞と共に14時間インキュベートして、試験したすべての抗体濃度において、完全な抗原飽和を促進する一方、FACS緩衝液に0.02%NaN
3を添加し、次いで温度を4℃に保持して受容体内在化を防止した。インキュベーション後、細胞を、4℃で5分間の1200RPMでペレット化して、次いで200μlのFACS緩衝液に再懸濁した。次に、細胞を、1:500に希釈した二次ヤギF(ab’)
2抗ヒトIgG Fcγ PEで染色し、シェーカー上において4℃で30分間インキュベートした。最終的に、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、次いで均質な前方/側方散乱特性を示すEGFR発現CHO細胞に対するゲーティングを伴うBD FACSアレイBioanalyzer System上で分析した。
【0361】
FACS試薬:
Rainbow calibration particles: BD、カタログ番号:559123
FACS緩衝液:1×PBS+2%FCS+0.02%NaN3
ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG Fcγ PE: Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109−116−170
【0362】
記載のFACS結合アッセイを、EGFR抗体IgG992および1024の交差反応性の決定に使用し、カニクイザルEGFRと交差反応しなかったコントロール抗体IgG1320と比較した。以下の
図40に示すように、記載のFACSアッセイは、ヒトおよびカニクイザル全長EGFRの間に良好な交差反応性を示す抗体(
図40A、IgG992および
図40B、IgG1024)、および全長ヒトEGFRのみを認識する種特異的抗体(
図40C、IgG1320)を識別するのにきわめて良好であった。この分析は、IgG992および1024の両方ともが、安定にトランスフェクトされたCHO細胞の表面上に発現されるヒトおよびカニクイザル全長EGFRの両方に対して極めて優れた交差反応性を示したことを結論付けた。カニクイザルおよびヒトEGFRの間の結合性の差異は、高い程度の配列類似性から考慮して驚くべきことであり、前臨床毒物学研究に使用される動物において正確な標的配列に結合するために試験する抗体の重要性を強調する。
【0363】
実施例17.992、1024および1030に相同なクローン
免疫吸着アッセイ(ELISAおよび細胞に基づくアッセイ)に基づくEGFR−結合性抗体−クローンのスクリーニングは、先の実施例に記載のように、クローン992、1024、1030の同定をもたらした。992、1024、1030に相同なEGFR特異的クローンもまた同定された(表12)。
【0364】
同じクラスターに属するクローンは、同じ結合特異性を有することが予想されるが、異なるアフィニティーで結合し得る。従って、クラスター内のクローンは、クローンの結合アフィニティーにそれほど大きな違いがなければ、本発明の抗体組成物において相互に置き換えることができる。
【表18】
【表19】
【0365】
実施例18:抗体922および1024のヒト化
すべての抗体は、ヒト抗抗体応答を誘発する能力を含有する。応答は、用いられる治療用抗体の「ヒトらしさ」の程度とある程度まで相関する。免疫原性、それによるヒト抗抗体を予測することは不可能であるが、臨床用途のために、高い程度のヒトらしさを伴う抗体を選好する傾向が存在する。本発明に記載の抗体のヒトらしさは、ヒト化プロセスによって、増加させることができる[Reichert JM. Monoclonal antibodies in the clinic. Nature Biotechnol, 2001;19:819-822;Reichert JM, Rosensweig CJ, Faden LB and Dewitz MC. Monoclonal antibody successes in the clinic. Nature Biotechnol, 2005;23:1073-1078]。
【0366】
マウスmAbのヒト化は、原則として、一般にCDRグラフティングと称される手順によって、緊密に関連する配列を伴うIGHVおよびIGKVドメインのヒトフレームワーク領域(FR)上に相補性決定領域(CDR)をグラフト化することによって、達成される(Jones PT, Dear PH, Foote J, Neuberger MS and Winter G. Replacing the complementarity-determining regions in a human antibody with those from a mouse. Nature, 1986;321:522-525)。しかし、超可変領域のみの単純なCDRグラフティングは、いくつかのフレームワークアミノ酸または領域が抗原への接触に必須になるか、または抗原結合性CDRループのコンホメーションを支持するため、アフィニティーの減少を生じ得る[Queen C, Schneider WP, Selick HE, Payne PW, Landolfi NF, Duncan JF, Avdalovic NM, Levitt M, Junghans RP and Waldmann TA. A humanized antibody that binds to the interleukin 2 receptor. Proc Natl Acad Sci U S A, 1989;86:10029-10033;Al-Lazikani B, Lesk AM and Chothia C. Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins. J Mol Biol, 1997;273:927-948]。結果的に、抗体のヒト化は、マウス由来可変領域のCDRループを、密接に相同なヒトフレームワーク上へグラフト化すること、また同時に、抗原結合活性に対する立証された影響を伴う重要なマウスフレームワーク残基を保持することの両方に関与すべきである(Winter, G. and W. J. Harris. "Humanized antibodies." Immunol.Today 14.6 (1993): 243-46)。いくつかの方法が開発され、抗体アフィニティーと機能を保持しつつのヒト化への応用を達成することに成功している(Almagro, J. C. and J. Fransson. "Humanization of antibodies." Front Biosci. 13 (2008): 1619-33においてレビューされた)。ヒト化は、合理的な方法、例えば、CDRグラフティング、リサーフェイシング(resurfacing)、超ヒト化、ヒトのストリング・コンテント(string content)最適化により達成することができ、これらは全て、少数のヒト化抗体候補の構築によるものである。候補のアミノ酸配列は、抗体構造の洞察および予測、ならびに直接的および間接的の両方で抗原相互作用領域の全体的構造を安定化することを介する抗原結合性への個々のアミノ酸の寄与に基づく。各抗体はいくつかの予想されない個々の制限を有するため、通常、候補は精査されなければならず、いくつかのアミノ酸は元々のマウス残基に復帰変異される。方法に共通することは、いくらかの連続する回数の設計、試験および再設計が、アフィニティーおよび機能を保持するのに必要であり得ることである。代替的には、より経験的な方法であって、ここで、大きなコンビナトリアルライブラリーが作製され、所望の特徴を伴う抗体が、酵母もしくはファージディスプレイのような方法、または代替的スクリーニング方法による選択によって、変種のプールから富化されることである。
【0367】
本発明に記載の抗EGFR抗体は、ヒトV領域へのCDRグラフティングによって、ヒト化してもよい。好適なシナリオでは、ヒトV領域は、元々のマウスV領域に対する相同性に基づいて選択される。低免疫原性のような他の所望の特徴を伴うヒトV遺伝子領域もまた、使用され得る。本実施例は、992および1024抗EGFRキメラ抗体のヒト化に使用される方法について説明する。
図41Aに示されるヒト化配列は、IMGTにより定義されたCDR領域を、992IGHVからIGHV1−46/IGHJ4へ、および992IGKVからIGKV1−27/IGKJ1−01へグラフト化することによって、作製されている。
図41Bに示されるアミノ酸配列は、IMGTにより定義されたCDR領域を、1024IGHVからIGHV1−2
*02/IGHJ6
*02へ、および1024IGKVからIGKV2−28
*01/IGKJ2
*01へグラフト化することによって、作製されている。特定されたヒト化抗体をコードする人工遺伝子を合成し、そして哺乳動物発現ベクターに挿入する。実施例3に記載のように、抗体を発現させ、精製し、活性について試験する。初期の試験後、ヒト化抗体の結合反応速度を、実施例14に記載のように、表面プラズモン共鳴によって決定してもよい。同様に、細胞の表面上に発現されるhEGFRへの結合を、実施例15に記載のように決定することができる。
【0368】
ヒト化アミノ酸の結合活性が、元々の抗体について観察される活性より著しく低い場合、連続的な復帰変異スキームが、アフィニティーの再生に用いられ、Vernierゾーンに局在するヒト化フレームワーク残基、またはCDR領域である場合に構造を支持することが提唱される残基から開始される(Foote, J. and G. Winter. "Antibody framework residues affecting the conformation of the hypervariable loops." J Mol.Biol. 224.2 (1992): 487-99;Padlan, E. A. "Anatomy of the antibody molecule." Mol.Immunol 31.3 (1994): 169-217.)。これらの残基は、IMGT番号付けでは、992IGHVアミノ酸番号13、45、および80;992IGKVアミノ酸25、1024IGHVアミノ酸13、45、80および82;1024IGKLアミノ酸78である。これらの変異は、一般的な分子生物学的な方法を用いるPCR介在の部位特異的変異誘発を使用することにより構築することができる。構築された変異は、上記のように試験される。これらの候補セットは、保持された抗原結合特性を伴うヒト化抗体を生じることが予想される。しかし、部位特異的変異誘発によってCDR領域へアミノ酸置換を導入することによるさらなる復帰変異またはアフィニティー変異を排除することはできない。
【0369】
実施例19 二重可変ドメイン抗体
二重可変ドメイン(DVD)抗体タンパク質を、6アミノ酸リンカー(ASTKGP)によってタンデムで992および1024のIGHVドメインを、ならびに5アミノ酸リンカー(TVAAP)によって992および1024のIGKVドメインを融合することにより改変する[Wu C, Ying H, Grinnell C, Bryant S, Miller R, Clabbers A, Bose S, McCarthy D, Zhu RR, Santora L, vis-Taber R, Kunes Y, Fung E, Schwartz A, Sakorafas P, Gu J, Tarcsa E, Murtaza A and Ghayur T. Simultaneous targeting of multiple disease mediators by a dual-variable-domain immunoglobulin. Nature Biotechnol, 2007;25:1290-1297]。二重のIGHVおよびIGKVドメイン融合物は、後に、それぞれ、IGHCおよびIGKCドメインが続く。1つの完全長DVD抗体(992L1024)では、992IGHVおよびIGKVはN末端であり、後に、リンカーならびにそれぞれ、1024IGHVおよびIGKVが続く。第2の完全長DVD抗体(1024L992)では、1024IGHVおよびIGKVはN末端であり、後に、リンカー、ならびにそれぞれ992IGHVおよびIGKVが続く。992および1024抗体をコードするプラスミドDNAを、DVDをコードする遺伝子の2工程のPCR仲介構築のためのテンプレートとして使用する。IGHVおよびIGKVの2つの可変ドメインをコードする領域を、リンカーをコードする領域(テンプレートおよびプライマーの組み合わせのため、表13および表14を参照のこと)の位置において重複伸長領域を含有するように、最初にそれらを別々に増幅する。ヒト軽鎖定常ドメインをコードする遺伝子(IGKC)がコーディング配列に含まれるように、C末端近くの可変ドメインをコードするIGKV遺伝子を増幅する。二重可変ドメイン抗体のサブユニットのコーディング配列およびアミノ酸配列を付録3に示す。
【0370】
第1のPCRを、各チューブ(50μl反応)中で以下の混合物で調製し、所定の最終濃度を得る:1×FastStart緩衝液(Roche)、dNTP混合物(各200μM)、プライマー(各10pmol)(表14を参照のこと)、FastStart High Fidelity Enzyme Blend(2.2U;Roche)および100ngプラスミドテンプレート(表14を参照のこと)。PCRを、次のサーモサイクルに供する:95℃で2分間、20×(95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間)、72℃で10分間。第1のPCR反応からの正確なサイズを伴って得られたPCR産物(表14を参照のこと)を、調製用アガロースゲル電気泳動によって精製し、次いで2つの可変ドメインが、重複伸長PCRによってスプライスされる第2の工程において使用する。第2のPCRは、重複伸長PCRによりDNAフラグメントのスプライシングし、各チューブ(50μl反応)中の以下の混合物によって調製して、所定の最終濃度を得る:1×FastStart緩衝液(Roche)、dNTP混合物(各200μM)、プライマー(各10pmol、表15を参照のこと)、FastStart High Fidelity Enzyme Blend(2.2U;Roche)およびテンプレート(100ngPCRフラグメント、表15を参照のこと)。PCRを、上記で定めたサーモサイクルに供する。第2のPCR工程から得られた産物を、調製用アガロースゲル電気泳動によって精製し、制限酵素、二重IGHVに対しAscIおよびXhoI、ならびに(IGKCが含まれる)二重IGKVに対しNheIおよびNotIで処理する。フラグメントを、一般的な制限酵素消化およびライゲーション手順により、連続して哺乳動物IgG発現ベクター00−VP−002に連結する(
図4)。得られた発現プラスミドベクターを大腸菌(E.coli)中で増幅し、次いでプラスミド調製物を一般的な方法によって精製する。DVD抗体を、実施例2におけるように、発現させ、精製し、次いで実施例3−13におけるように、活性について特徴付けを行う。
【0371】
得られた抗体が標的hEGFrに対する結合が減少する、または全く認められない場合、他のリンカーを試験することができる。
【0372】
表13 992および1024からDVD抗体を構築するためのプライマー
【表20】
【0373】
表14 992および1024由来のDVDをコードする遺伝子を構築するための第1の
PCR工程のためのプライマーおよびテンプレートの組み合わせ
【表21】
*増幅されたコーディング配列は、IGKC−遺伝子を含む。
【0374】
表15 992および1024由来のDVDをコードする遺伝子を構築するための第2のPCR工程、重複伸長によるスプライシングのためのプライマーおよびテンプレートの組み合わせ
【表22】
【0375】
実施例20:カニクイザルにおけるErbituxとの組み合わせにおける6週間の静脈内投与毒性研究
研究の目的:研究の目的は、1週間に1回、6週間のカニクイザルへの静脈内投与後の試験物品、992+1024の毒性を決定することであった。
【0376】
毒性は、ErbituxおよびVectibixのようなEGFRインヒビターによる臨床実施において用量を制限する因子であるため、臨床関連用量における992+1024の忍容性を評価することが、早期段階において重要であると思われた。これは、992+1024が、他のEGFR標的産物とは異なる機構によって作用すると思われるという事実によって、強調される。これは、潜在的に、新たな有害作用、または他のEGFRインヒビターで認められる効果の悪化をもたらし得る。
【0377】
これらの雌性カニクイザルのグループを、1週間に1度、IV用量の4/2.7および12/8mg/kgの992+1024、ならびに12/8mg/kgのErbituxで6週間処置した。負荷量である第1の用量の4および12mg/kg、ならびに維持用量である2.7および8mg/kgを5回投与した。12/8mg/kgの用量は、臨床実施において投与されるErbituxのヒト臨床用量と同等である。
【0378】
実験設計
【表23】
♯第1の用量レベルは負荷量であり、第2の用量レベルは、8日目以降の投与である。
【0379】
研究中、以下のパラメータを追跡した:死亡率、臨床徴候、体重、食物摂取、血液学、臨床化学、臓器の重量、顕微鏡所見。
【0380】
結果
死亡率:研究経過中、予定されていない死亡は存在しなかった。
【0381】
臨床徴候:有害な臨床的観察に関連する処置はなかった。
【0382】
体重:体重における992+1024またはErbituxのいずれかによる処置の効果は存在しなかった。
【0383】
食物摂取:食物摂取における明確な効果は存在しなかった。
【0384】
血液学:992+1024またはErbituxのいずれかの処置の効果を示唆するような血液学的パラメータの変化は存在しなかった。
【0385】
臨床化学:いずれかの試験物品による処置の効果を示唆する臨床化学的パラメータの変化は存在しなかった。
【0386】
4週目、4.2/2.7mg/kgの992+1024/日を投与した1匹の動物は、処置前の値と比較して、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼレベルの増加を示した。これらのレベルは、6週目までに正常な範囲に回復した。他の処置動物においては同様の効果が認められなかったため、肝臓酵素におけるこの増加の毒性学的有意性は不明である。
【0387】
臓器の重量:処置およびコントロール動物間の臓器の重量において、毒性学的有意差は認められなかった。
【0388】
顕微鏡所見:992+1024またはErbituxの効果を示唆するような剖検で特筆されるべき一致する観察は存在しなかった。
【0389】
予備的結論:予備データは、992+1024が、試験した用量で良好に忍容性であり、治療に関連する有害作用が観察されなかったことを示す。
【0390】
実施例21.肺細胞癌系統の増殖阻害
肺癌細胞系統は、チロシンキナーゼドメインの変異を伴うEGFRを発現することが公知である(Steiner et al. Clin Cancer Res 13.5 (2007): 1540-51)。実施例6において使用した方法と同様な方法により、2つの抗体992および1024の組み合わせが異なるEGFR変異を有する肺癌細胞系統HCC827およびH1975を阻害する能力について調べた。
【0391】
結果
表16および表17に認められ得るように、992および1024の組み合わせは、両方の細胞系統の増殖を阻害することができる。組み合わせは、モノクローナル抗体992および1024ならびにVectibixより優れている。
【0392】
表16 HCC827細胞系統に対する表示抗体のIC50値および最大増殖阻害
【表24】
【0393】
表17 H1975細胞系統に対する表示抗体のIC50値および最大増殖阻害
【表25】
【0394】
【表26】
【0395】
【表27】
【0396】
【表28】
【0397】
【表29】
【0398】
【表30】
【0399】
【表31】
【0400】
【表32】
【0401】
【表33】
【0402】
【表34】
【0403】
【表35】
【0404】
【表36】
【0405】
【表37】