【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、この目的は請求の範囲記載の主題によって達成される。
【0005】
本発明によると、腫瘍に関連して発現する抗原およびそれをコードする核酸の同定および提供のための戦略が追求された。この戦略は臓器特異的に発現する特定の遺伝子、例えば結腸、肺または腎臓組織にてもっぱら発現する遺伝子は、それぞれの臓器の腫瘍細胞において、そしてさらにその他の組織の腫瘍細胞において異所的に禁じられた態様で再活性化されるという事実に基づく。まず、データマイニングによりできるだけ完全にすべての既知の臓器特異的遺伝子をとりだす。これらは次いで様々な腫瘍におけるその異常な活性化について特異的RT-PCRによる発現分析によって評価される。データマイニングは腫瘍関連遺伝子の同定のための公知の方法である。しかしこの常套方法において、正常組織ライブラリーのトランスクリプトームがコンピュータにより腫瘍組織ライブラリーから通常差し引かれ、残った遺伝子が腫瘍特異的であると予想される(Schmitt et al.、Nucleic AcidsRes. 27:4251-60、1999; Vasmatzis et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:300-4、1998; Scheurle et al.、Cancer Res. 60:4037-43、2000)。
【0006】
しかしより有効であることが判明した本発明の概念は、すべての臓器特異的遺伝子をコンピュータにより抽出するためにデータマイニングを利用することおよび該遺伝子の腫瘍における発現を評価することに基づく。
【0007】
本発明はしたがって一つの態様において、腫瘍において示差的に発現する組織特異的遺伝子を同定する戦略に関する。該戦略は、公共の配列ライブラリーのデータマイニング(「インシリコ」)とそれに続く実験室での(「ウェットベンチ」)研究の評価を組み合わせるものである。
【0008】
本発明によると、2種類のバイオインフォマティックスクリプト(bioinformatic scripts)に基づく組み合わせ戦略により、新規腫瘍遺伝子の同定が可能となった。これらは以前に純粋に臓器特異的であると分類されたものである。これら遺伝子が腫瘍細胞において異常に活性化しているという知見により、それら遺伝子に実質的に新規の機能予測をともなう性質が割り当てられるようになる。本発明によると、これら腫瘍関連遺伝子およびそれらによってコードされる遺伝子産物は、免疫原性作用とは独立に同定及び提供された。
【0009】
本発明によって同定された腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する:
(a)配列番号1-8、41-44、51-59、84、117および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸にハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の 核酸と相補的な核酸。
【0010】
好適な態様において、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は配列番号1-8、41-44、51-59、84、117および119からなる群から選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する。さらに好適な態様において、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は配列番号9-19、45-48、60-66、85、90-97、100-102、105、106、111-116、118、120、123、124および135-137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0011】
本発明は一般に、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分または誘導体、それをコードする核酸または該コード核酸に対する核酸、あるいは本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分または誘導体に対する抗体の、治療および診断のための使用に関する。この利用は診断、治療および進行管理における個々のものに関するだけでなく、2以上のかかる抗原、機能的断片、核酸、抗体などの組み合わせ、そして一つの態様においてその他の腫瘍関連遺伝子および抗原との組み合わせにも関する。
【0012】
治療および/または診断に好適な疾患は1または複数の本発明によって同定される腫瘍関連抗原が選択的に発現または異常に発現している疾患である。
【0013】
本発明はまた、腫瘍細胞に関連して発現する核酸および遺伝子産物にも関する。
【0014】
さらに、本発明は既知の遺伝子の選択的スプライシング(スプライスバリアント)または選択的オープンリーディングフレームを用いる変化した翻訳によって産生される遺伝子産物、即ち核酸およびタンパク質またはペプチドに関する。この態様において、本発明は配列表の配列番号3-5による配列からなる群から選択される核酸配列を含む核酸に関する。さらに、この態様において、本発明は配列表の配列番号10および12-14による配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはペプチドに関する。本発明のスプライスバリアントは腫瘍疾患の診断および治療のための標的として本発明にしたがって利用できる。
【0015】
特に、本発明は配列表の配列番号10によるアミノ酸配列に関し、これは本発明により同定される選択的オープンリーディングフレームによりコードされ、以前に記載されたタンパク質配列(配列番号9)と、タンパク質のN末端におけるさらなる85アミノ酸において異なる。
【0016】
全く異なる機構によりスプライスバリアントが産生され、例えば、以下が挙げられる
-異なる転写開始部位の利用
-さらなるエキソンの利用
-1または2あるいはそれ以上のエキソンの完全または不完全なスプライシング、
-スプライス制御配列の突然変異による変化(欠失または新たな供与/受容配列の作成)、
-イントロン配列の不完全な除去。
【0017】
遺伝子の選択的スプライシングにより異なる転写産物配列(スプライスバリアント)が生じる。その変化した配列の領域におけるスプライスバリアントの翻訳の結果、元のタンパク質とは構造および機能において顕著に異なる変化したタンパク質が生じる。腫瘍関連スプライスバリアントにより腫瘍関連転写産物および腫瘍関連タンパク質/抗原が生じうる。これらは腫瘍細胞の検出および腫瘍の治療標的化のための分子マーカーとして利用できる。腫瘍細胞の、例えば、血液、血清、骨髄、痰、気管支洗浄液、分泌液および組織診における検出は、本発明にしたがって行うことが出来、例えば、スプライスバリアント特異的オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅による核酸の抽出後に行うことが出来る。特に、プライマー対はオリゴヌクレオチドとして好適であり、その少なくとも一方はストリンジェントな条件下で腫瘍関連スプライスバリアント領域に結合する。本発明によると、実施例においてこの目的で記載されるオリゴヌクレオチドが好適であり、特に、配列表の配列番号34-36、39、40、および107-110から選択される配列を有するまたは含むオリゴヌクレオチドが好適である。本発明によると、すべての配列依存的検出系が検出に好適である。それらは、PCRは別として、例えば、遺伝子チップ/マイクロアレイ系、ノザンブロット、RNAse保護アッセイ(RDA)その他が挙げられる。すべての検出系は共通して、検出は少なくとも1つのスプライスバリアント特異的核酸配列との特異的ハイブリダイゼーションに基づく。しかし、腫瘍細胞はスプライスバリアントによってコードされる特異的エピトープを認識する抗体によって、本発明にしたがって検出されうる。該抗体は該スプライスバリアントに特異的な免疫化ペプチドを用いて調製できる。この態様において、本発明は特に、配列表の配列番号17-19、111-115、120、および137から選択される配列を有するまたは含むペプチドおよびそれに特異的な抗体に関する。免疫化に好適なのは特にそのエピトープが健康細胞において好適に産生される遺伝子産物のバリアントと顕著に異なるアミノ酸である。抗体による腫瘍細胞の検出は患者から単離したサンプルに対して行うことが出来、あるいは静脈内投与した抗体の撮像として行うことが出来る。診断用途に加えて、新しいまたは異なるエピトープを有するスプライスバリアントは免疫療法の魅力的な標的である。本発明のエピトープは治療的に活性なモノクローナル抗体またはTリンパ球の標的化に用いることが出来る。受動免疫療法において、スプライスバリアント特異的エピトープを認識する抗体またはTリンパ球が養子免疫伝達される。その他の抗原の場合のように、抗体をかかるエピトープを含むポリペプチドの利用により標準技術によって作成することが出来る(動物の免疫化、組換え抗体単離のパニング戦略)。あるいは該エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドをコードする核酸を免疫化に用いることも出来る。エピトープ特異的Tリンパ球の作成のためのインビトロまたはインビボでの多くの技術が知られており詳細に記載されており(例えば、Kessler JH、et al. 2001、Sahin et al.、1997)、おそらくスプライスバリアント特異的エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドまたは該オリゴまたはポリペプチドをコードする核酸の使用に基づく。スプライスバリアント特異的エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は医薬上活性な物質として能動免疫療法(ワクチン化、ワクチン療法)にも用いることが出来る。
【0018】
本発明はまた、正常及び腫瘍組織において二次修飾の性質および程度が異なるタンパク質も記載する(例えば、Durand & Seta、2000; Clin. Chem. 46: 795-805; Hakomori、1996; Cancer Res.56: 5309-18)。
【0019】
タンパク質修飾の分析はウェスタンブロットにて行うことが出来る。特に、原則として数kDaのサイズを有するグリコシル化の結果標的タンパク質の全質量が増加し、これはSDS-PAGEで分離することが出来る。特異的 O-およびN-グリコシド結合の検出のために、タンパク質溶解液をSDSを用いた変性の前にO-またはN-グリコシラーゼとインキュベートする(それぞれ製造業者の指示にしたがう。例えば、PNgase、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)。その後、ウェスタンブロットを行う。標的タンパク質のサイズが低下している場合は特異的グリコシル化がグリコシダーゼとのインキュベーション後に検出することが出来、したがって修飾の腫瘍特異性が分析できる。腫瘍細胞および健康細胞において示差的にグリコシル化されたタンパク質領域が特に興味深い。かかるグリコシル化の差はしかしこれまでにいくつかの細胞表面タンパク質について記載されているに過ぎない(例えば、Muc1)。
【0020】
本発明によると、腫瘍におけるクローディン18についての示差的グリコシル化を検出することが出来た。胃腸癌、膵臓癌、食道腫瘍、前立腺腫瘍および肺腫瘍は低レベルにてグリコシル化された形態のクローディン18を有する。健康組織におけるグリコシル化はクローディン18のタンパク質エピトープをマスクし、このエピトープはグリコシル化の欠失によって腫瘍細胞上では被覆されない。これに対応して本発明によるとこれらドメインに結合するリガンドおよび抗体を選択することが出来る。本発明によるかかるリガンドおよび抗体は健康細胞上のクローディン18には結合しない。というのは健康細胞上ではエピトープがグリコシル化によって被覆されているからである。
【0021】
腫瘍関連スプライスバリアント由来のタンパク質エピトープについて上記したように、示差的グリコシル化を用いて診断および治療目的で正常細胞と腫瘍細胞を識別することが出来る。
【0022】
一つの態様において、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原を認識し、本発明によって同定される腫瘍関連抗原発現または異常発現を有する細胞に好ましくは選択的な剤を含む医薬組成物に関する。特定の態様において、該剤は細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜の障害またはサイトカインの分泌をもたらし得、好ましくは腫瘍阻害活性を有する。一つの態様において、剤は腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に補体活性化または毒素結合抗体であって腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる態様において、剤はそれぞれ選択的に、その少なくとも1つが本発明によって同定される腫瘍関連抗原である異なる腫瘍関連抗原を認識する2以上の剤を含む。認識には直接に抗原の活性または発現の阻害を伴う必要はない。本発明のこの態様において、腫瘍に選択的に限定される抗原は好ましくはエフェクター機構のこの特異的位置への動員のための標的として役立つ。好適な態様において、剤はHLA分子上の抗原を認識し、こうして標識された細胞を溶解する細胞障害性Tリンパ球である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体でありしたがって自然または人工エフェクター機構を該細胞に動員する。さらなる態様において、剤はその他の細胞の該抗原を特異的に認識するエフェクター機能を増強するヘルパーTリンパ球である。
【0023】
一つの態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する剤を含む医薬組成物に関する。好適な態様において、剤は腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる態様において、剤は、少なくともその1つが本発明によって同定される腫瘍関連抗原である異なる腫瘍関連抗原の発現または活性をそれぞれ選択的に阻害する2以上の剤を含む。
【0024】
本発明はさらに投与された際にHLA分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとの複合体の量を選択的に増加させる剤を含む医薬組成物に関する。一つの態様において、剤は1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)該腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(iv)該腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとMHC分子との単離複合体。
【0025】
一つの態様において、剤はMHC分子とそれぞれ異なる腫瘍関連抗原のペプチドエピトープとの複合体の量を選択的に増加させる2以上の剤を含み、ここで腫瘍関連抗原の少なくとも1つは本発明によって同定される腫瘍関連抗原である。
【0026】
本発明はさらに1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む医薬組成物に関する:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、
(iv)本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(vi)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体。
【0027】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸は医薬組成物中において発現ベクター中にプロモーターに機能的に連結させて存在させてもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原またはその部分を分泌し、それを表面上に発現するものでもよいし、さらに該腫瘍関連抗原またはその該部分に結合するHLA分子を発現するものでもよい。一つの態様において、宿主細胞はHLA分子を内因的に発現する。さらなる態様において、宿主細胞はHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を組換えにより発現する。宿主細胞は好ましくは非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞であり、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0029】
本発明の医薬組成物に存在する抗体はモノクローナル抗体であるのがよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体、天然の抗体または合成の抗体の断片であってよく、これらすべてはコンビナトリー技術によって産生できる。抗体は治療上または診断上有用な薬剤と結合させてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物に存在するアンチセンス核酸は6-50の配列、特に10-30、15-30および20-30の、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の連続ヌクレオチドを含むものであってよい。
【0031】
さらなる態様において、直接または核酸の発現を介して本発明の医薬組成物によって提供される腫瘍関連抗原またはその部分は細胞表面のMHC分子に結合し、該結合は好ましくは細胞溶解性応答の誘発および/またはサイトカイン放出の誘導をもたらす。
【0032】
本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体および/またはアジュバントを含むものでもよい。アジュバントは、サポニン、GM-CSF、CpGヌクレオチド、RNA、サイトカインまたはケモカインから選択すればよい。本発明の医薬組成物は好ましくは腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療に用いられる。好適な態様において、疾患は癌である。
【0033】
本発明はさらに1または複数の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療または診断方法にも関する。一つの態様において、治療は本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0034】
一つの態様において、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の診断方法に関する。該方法は患者から単離した生物学的サンプルにおける、以下の検出を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の検出、および/または、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の検出、および/または
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に対する抗体の検出、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出。
【0035】
特定の態様において、検出は以下の工程を含む:
(i)生物学的サンプルを、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、該腫瘍関連抗原または該その部分、腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球に特異的に結合する剤と接触させる工程、および
(ii)剤と核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球との複合体の形成を検出する工程。
【0036】
一つの態様において、疾患は2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、検出は、該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の検出、2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分の検出、該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分に結合する2以上の抗体の検出または該2以上の異なる腫瘍関連抗原に特異的な2以上の細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出を含む。さらなる態様において、患者から単離した生物学的サンプルを対応する正常な生物学的サンプルと比較する。
【0037】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の退行、経過または発症を判定する方法に関し、該方法は、該疾患を有するか該疾患に罹患しやすい患者からのサンプルを、以下からなる群から選択される1または複数のパラメーターに関してモニタリングする工程を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の量、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体の量、および
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量。
【0038】
該方法は好ましくは第一のサンプルの第一の時点およびさらなるサンプルの第二の時点でのパラメーターを測定することを含み、ここで疾患の経過が2つのサンプルの比較によって判定される。特定の態様において、疾患は2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、モニタリングは以下のモニタリングを含む:
(i)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分をコードする2以上の核酸の量、および/または
(ii)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分の量、および/または
(iii)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分に結合する2以上の抗体の量、および/または
(iv)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分とMHC分子との複合体に特異的な2以上の細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量。
【0039】
本発明によると、核酸またはその部分の検出あるいは核酸またはその部分の量のモニタリングは該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて行うことが出来、あるいは該核酸または該その部分の選択的増幅によって行うことが出来る。一つの態様において、ポリヌクレオチドプローブは該核酸の連続するヌクレオチドの6-50、特に、10-30、15-30および20-30の配列を含む。
【0040】
特定の態様において、検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分は細胞内または細胞表面に存在する。本発明によると、腫瘍関連抗原またはその部分の検出または腫瘍関連抗原またはその部分の量のモニタリングは、該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的な抗体結合によって行いうる。
【0041】
さらなる態様において、検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分はMHC分子、特にHLA分子との複合体中に存在する。
【0042】
本発明によると、抗体の検出または抗体の量のモニタリングは該抗体に特異的なタンパク質またはペプチドの結合を用いて行いうる。
【0043】
本発明によると、抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の検出あるいは細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量のモニタリングは、該抗原または該その部分とMHC分子との複合体を提示する細胞を用いて行いうる。
【0044】
検出またはモニタリングに使用されるポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質またはペプチドあるいは細胞は好ましくは検出可能な様式で標識される。特定の態様において、検出可能なマーカーは放射性マーカーまたは酵素マーカーである。さらにTリンパ球は、その増殖、そのサイトカイン産生、およびそのMHCと腫瘍関連抗原またはその部分との複合体での特異的刺激によってトリガーされる細胞障害性活性を検出することにより検出できる。Tリンパ球はまた1または複数の腫瘍関連抗原の特定の免疫原性断片を搭載し、特異的T細胞受容体を接触させることにより特異的Tリンパ球を同定しうる組換えMHC分子あるいは2以上のMHC分子の複合体を介して検出しうる。
【0045】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療、診断またはモニタリング方法に関し、該方法は、該腫瘍関連抗原またはその部分に結合し、治療または診断薬と複合化された抗体を投与することを含む。抗体はモノクローナル抗体であってよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体あるいは天然の抗体の断片である。
【0046】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)該患者から免疫反応性細胞を含むサンプルを取り出す工程、
(ii)該サンプルと該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞を、該腫瘍関連抗原またはその部分に対する細胞溶解性T細胞の産生に好適な条件下で接触させる工程、および、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞を溶解するのに好適な量の細胞溶解性T細胞を患者に導入する工程。
【0047】
本発明はまた腫瘍関連抗原に対する細胞溶解性T細胞のT細胞受容体のクローニングにも関する。該受容体その他のT細胞に移入してもよく、それはそれによって所望の特異性を受け取り、そして(iii)のように、患者に導入してもよい。
【0048】
一つの態様において、宿主細胞はHLA分子を内因的に発現する。さらなる態様において、宿主細胞は組換えによりHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する。宿主細胞は好ましくは非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0049】
さらなる態様において、本発明は腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードし、該疾患に関連する細胞によって発現する核酸を同定する工程、
(ii)宿主細胞を該核酸またはその部分でトランスフェクトする工程、
(iii)該核酸を発現させるためにトランスフェクトした宿主細胞を培養する工程(高効率のトランスフェクションが達成された場合これは必須ではない)、および、
(iv)疾患に関連する患者の細胞に対する免疫応答を上昇させるのに好適な量にて患者に宿主細胞またはその抽出物を導入する工程。
【0050】
該方法はさらに腫瘍関連抗原またはその部分を提示するMHC分子を同定することも含み、ここで宿主細胞は同定されたMHC分子を発現し該腫瘍関連抗原またはその部分を提示する。免疫応答はB細胞応答またはT細胞応答のいずれでもよい。さらに、T細胞応答は腫瘍関連抗原またはその部分を提示する宿主細胞に特異的であるか、腫瘍関連抗原またはその部分を発現する患者の細胞に特異的である、細胞溶解性T細胞および/またはヘルパーT細胞の産生を含むものであり得る。
【0051】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法にも関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)異常な量の腫瘍関連抗原を発現する患者からの細胞を同定する工程、
(ii)該細胞のサンプルを単離する工程、
(iii)該細胞を培養する工程、および、
(iv)細胞に対する免疫応答をトリガーするのに好適な量の該細胞を患者に導入する工程。
【0052】
好ましくは本発明によって用いられる宿主細胞は非増殖性であるか非増殖性にされたものである。腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患は特に癌である。
【0053】
本発明はさらに以下からなる群から選択される核酸に関する:
(a)配列番号3-5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【0054】
本発明はさらに配列番号10および12-14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸、その一部または誘導体に関する。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸のプロモーター配列に関する。これら配列は好ましくは発現ベクターにおいて別の遺伝子に機能的に連結していてもよく、該遺伝子の適当な細胞での選択的発現を確保してもよい。
【0056】
さらなる態様において、本発明は本発明の核酸を含む組換え核酸分子、特に、DNAまたはRNA分子に関する。
【0057】
本発明はまた、本発明の核酸または本発明の核酸を含む組換え核酸分子を含む宿主細胞にも関する。
【0058】
宿主細胞はHLA分子をコードする核酸を含むものでもよい。一つの態様において、宿主細胞は内因的にHLA分子を発現する。さらなる態様において、宿主細胞は組換えによりHLA分子および/または本発明の核酸またはその部分を発現する。好ましくは、宿主細胞は非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、本発明により同定される核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブまたは「アンチセンス」分子として利用できるオリゴヌクレオチドに関する。本発明により同定される核酸またはその部分にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーまたはコンピテント(competent)サンプルの形態の核酸分子は、本発明により同定される核酸に相同的な核酸の発見に利用できる。PCR増幅、サザンおよびノザンハイブリダイゼーションを相同的核酸の発見に用いることが出来る。ハイブリダイゼーションは低いストリンジェンシーで行ってもよく、より好ましくは中程度のストリンジェンシー、もっとも好ましくは高いストリンジェンシーの条件で行う。本発明による「ストリンジェントな条件」という語は、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件をいう。
【0060】
さらなる態様において、本発明は以下からなる群から選択される核酸によってコードされるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに関する:
(a)配列番号3-5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の 核酸と相補的な核酸。
【0061】
好適な態様において、本発明は配列番号10および12-14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドまたはペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0062】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の免疫原性断片に関する。該断片は好ましくはヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する。本発明の断片は好ましくは、少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50のアミノ酸の配列を有する。
【0063】
この態様において、本発明は配列番号17-19、90-97、100-102、105、106、111-116、120、123、124、および135-137からなる群から選択される配列を有するか含むペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0064】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する剤に関する。好適な態様において、剤は抗体である。さらなる態様において、抗体はキメラ、ヒト化抗体またはコンビナトリー技術によって産生される抗体あるいは抗体の断片である。さらに、本発明は以下の(i)と(ii)の複合体に選択的に結合する抗体に関する:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分、および
(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原または該その部分が結合するMHC分子、
ここで該抗体は(i)のみあるいは(ii)のみには結合しない。
【0065】
本発明の抗体はモノクローナル抗体であってよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体あるいは天然の抗体の断片である。
【0066】
特に、本発明は、配列番号17-19、90-97、100-102、105、106、111-116、120、123、124、および135-137からなる群から選択される配列を有するかそれを含むペプチド、その一部または誘導体に特異的に結合するかかる剤、特に抗体に関する。
【0067】
本発明はさらに本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する本発明の剤または本発明の抗体と、治療または診断薬との結合体に関する。一つの態様において、治療または診断薬は毒素である。
【0068】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現の検出用キットに関し、該キットは以下の検出のための剤を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的なT細胞。
【0069】
一つの態様において、核酸またはその部分の検出用の剤は該核酸の選択的増幅のための核酸分子であって、特に該核酸の6-50、特に10-30、15-30および20-30の連続ヌクレオチド配列を含むものである。
【0070】
発明の詳細な説明
本発明によると、腫瘍細胞において選択的または異常に発現し、腫瘍関連抗原である遺伝子が記載される。
【0071】
本発明によると、これら遺伝子および/またはその遺伝子産物および/またはその誘導体および/または部分は治療アプローチのための好ましい標的構造である。概念的には、該治療アプローチは選択的に発現した腫瘍関連遺伝子産物の活性の阻害をねらうものである。これは、該異常なそれぞれの選択的発現が腫瘍病原性に機能的に重要である場合、そしてその連結に対応する細胞の選択的傷害が伴う場合に有用である。別の治療の考え方は腫瘍関連抗原を、腫瘍細胞に選択的に細胞傷害能を有するエフェクター機構を動員する標識として考えるものである。ここで、標的分子自体の機能および腫瘍発達におけるその役割は完全に無関係である。
【0072】
本発明による核酸の「誘導体」とは、1または複数のヌクレオチド置換、欠失および/または付加が該核酸に存在することを意味する。さらに「誘導体」の語はまたヌクレオチド塩基、糖またはリン酸における核酸の化学的誘導体化も含む。「誘導体」の語はまた天然にはないヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含む核酸も含む。
【0073】
本発明によると、核酸は好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。本発明による核酸はゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え産生および化学合成された分子を含む。本発明によると、核酸は一本鎖でも二本鎖として存在してもよく、直鎖状でもよいし共有結合により閉環した分子であってもよい。
【0074】
本発明により記載される核酸は好ましくは単離されたものである。「単離核酸」の語は、本発明によると、核酸が以下のものであることを意味する:
(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、増幅されたもの、
(ii)クローニングにより組換え産生されたもの、
(iii)例えば切断およびゲル電気泳動分画により精製されたもの、あるいは、
(iv)例えば化学合成により合成されたもの。
【0075】
単離核酸は組換えDNA技術による操作を行える核酸である。
【0076】
核酸は2つの配列がハイブリダイズでき、互いに安定な二本鎖を形成することが出来る場合、別の核酸と「相補的」であり、ここでハイブリダイゼーションは好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能とする条件(ストリンジェントな条件)下で行う。ストリンジェントな条件は、例えば、以下に記載されている:Molecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrook et al.、Editors、2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory press、Cold Spring Harbor、New York、1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelet al.、Editors、John Wiley & Sons、Inc.、New York。これらによると、例えば、ハイブリダイゼーションバッファー(3.5 x SSC、0.02% フィコール、0.02% ポリビニルピロリドン、0.02% ウシ血清アルブミン、2.5 mMNaH
2PO
4 (pH 7)、0.5% SDS、2 mM EDTA)中での65℃でのハイブリダイゼーションをいう。SSCは、0.15 M 塩化ナトリウム/0.15 M クエン酸ナトリウム、pH 7である。ハイブリダイゼーション後、DNAをトランスファーしたメンブレンを例えば以下の条件で洗浄する:2 × SSC中、室温、その後、0.1-0.5 × SSC/0.1 × SDS中、68℃までの温度。
【0077】
本発明によると、相補的な核酸は少なくとも40%、特に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、そして好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%あるいは少なくとも99%の、同一なヌクレオチドを有する。
【0078】
腫瘍関連抗原をコードする核酸は、本発明によると、単独でまたはその他の核酸、特に異種核酸と組み合わせて存在してもよい。好適な態様において、核酸は、該核酸と同種であっても異種であってもよい発現制御配列または調節配列と機能的に連結している。コード配列と調節配列は、該コード配列の発現または転写が該調節配列の制御あるいは影響下となるように互いに共有結合している場合、互いに「機能的に」連結している。コード配列が翻訳されて機能的タンパク質となり、ここで調節配列が該コード配列に機能的に連結している場合、該調節配列の誘導の結果、該コード配列の転写が起こり、コード配列におけるフレームシフトは起こらず、所望のタンパク質またはペプチドへと翻訳され得ないコード配列は生じない。
【0079】
「発現制御配列」または「調節配列」の語は、本発明によると、プロモーター、エンハンサーおよびその他の遺伝子発現を調節する制御要素を含む。本発明の特定の態様において、発現制御配列は制御されうる。調節配列の正確な構造は種または細胞型の関数として変化しうるが、一般にそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列等を含む。より具体的には、5’非転写調節配列は、機能的に連結した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列を含んでいてもよい。
【0080】
したがって一方で、本明細書に記載する腫瘍関連抗原はいずれの発現制御配列およびプロモーターと組み合わせてもよい。しかし他方で、本明細書に記載する腫瘍関連遺伝子産物のプロモーターは、本発明によるとその他の遺伝子と組み合わせてもよい。これによってこれらのプロモーターの選択的活性が利用される。
【0081】
本発明によると、核酸はさらに宿主細胞からの該核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチドの分泌を制御するポリペプチドをコードするその他の核酸と組み合わせて存在してもよい。本発明によると、核酸はコードされるタンパク質またはポリペプチドが宿主細胞の細胞膜にアンカーされるように、あるいは該細胞の特定のオルガネラに区画化されるようにするポリペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在してもよい。同様に、レポーター遺伝子またはいずれかの「タグ」を表すことが出来る核酸との組み合わせも可能である。
【0082】
好適な態様において、本発明による組換えDNA分子は核酸、例えば本発明の腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する適当なプロモーターとともにベクター中にあってもよい。もっとも一般的な意味において本明細書において用いる「ベクター」の語は、該核酸が、例えば、原核および/または真核細胞に導入され、適当な場合ゲノムに組み込まれるのを可能にする核酸のためのあらゆる中間媒体を含む。この種のベクターは細胞中で好ましくは複製および/または発現される。中間媒体は、例えば、エレクトロポーレーション、微粒子銃による衝撃、リポソーム投与、アグロバクテリウムによる移入またはDNAまたはRNAウイルスを介した挿入における使用に適用される。ベクターにはプラスミド、ファージミドまたはウイルスゲノムが含まれる。
【0083】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は宿主細胞のトランスフェクションに利用できる。ここで核酸は組換えDNAとRNAの両方を意味する。組換えRNAはDNAテンプレートのインビトロ転写により調製できる。さらに、使用前に安定化配列、キャップおよびポリアデニル化によって修飾してもよい。
【0084】
本発明によると、「宿主細胞」の語は外来核酸で形質転換またはトランスフェクトしうるあらゆる細胞を含む。本発明によると「宿主細胞」の語は原核(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562 細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。特に好ましいのは、哺乳類細胞、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類由来細胞である。細胞は様々な組織タイプ由来であってよく、一次細胞および細胞株を含む。具体的な例としてはケラチン生成細胞、末梢血白血球、骨髄幹細胞および胚幹細胞が含まれる。さらなる態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。核酸は宿主細胞中に単一コピーまたは2コピー以上の形態において存在し得、一つの態様において、宿主細胞中で発現される。
【0085】
本発明によると、「発現」の語はもっとも広い意味で用いられ、RNAの産生またはRNAとタンパク質の産生を含む。それはまた核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過的に行っても安定に行ってもよい。哺乳類細胞における好ましい発現系は、pcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含み、これらは選抜可能マーカー、例えば、G418に耐性を付与する遺伝子(したがって安定にトランスフェクトされた細胞株の選抜を可能にする)およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー-プロモーター配列を含む。
【0086】
本発明の、HLA分子が腫瘍関連抗原またはその部分を提示する場合において、発現ベクターはまた該HLA分子をコードする核酸配列を含んでいてもよい。HLA分子をコードする核酸配列は腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその部分と同一の発現ベクターに存在していてもよいし、あるいは両核酸は異なる発現ベクターに存在していてもよい。後者の場合、2つの発現ベクターを細胞に共トランスフェクトすればよい。宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分またはHLA分子のいずれも発現しない場合、それらをコードする両核酸を細胞に同一の発現ベクターにおいてあるいは異なる発現ベクターにおいてトランスフェクトする。細胞が既にHLA分子を発現している場合、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸配列のみを細胞にトランスフェクトすればよい。
【0087】
本発明はまた、腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅のためのキットも含む。かかるキットは、例えば、腫瘍関連抗原をコードする核酸にハイブリダイズする増幅プライマーの対を含む。プライマーは好ましくは核酸の6-50、特に、10-30、15-30および20-30の連続ヌクレオチドの配列を含み、プライマーダイマーが形成されないようにオーバーラップしないものである。プライマーの一方は腫瘍関連抗原をコードする核酸の一方の鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅を可能とする配置において相補的な鎖にハイブリダイズする。
【0088】
「アンチセンス」分子または「アンチセンス」核酸を用いて核酸の発現を制御、特に減少させることが出来る。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」の語は、本発明によると、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドであって、生理条件下で特定の遺伝子を含むDNAあるいは該遺伝子のmRNAにハイブリダイズするものをいい、それによって、該遺伝子の転写および/または該mRNAの翻訳が阻害される。本発明によると、「アンチセンス分子」はその通常のプロモーターに関して逆方向に核酸またはその部分を含むコンストラクトも含む。核酸またはその部分のアンチセンス転写産物は酵素を規定する天然のmRNAと二本鎖を形成することが出来、したがってmRNAの蓄積または活性な酵素への翻訳を阻害することが出来る。もう一つの可能性は核酸の不活化のためのリボザイムの使用である。本発明による好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは標的核酸の6-50、特に10-30、15-30および20-30の連続するヌクレオチドの配列を有し、好ましくは標的核酸またはその部分に完全に相補的である。
【0089】
好適な態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはN-末端または5’上流部位、例えば、翻訳開始部位、転写開始部位またはプロモーター部位にハイブリダイズする。さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは3’非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位にハイブリダイズする。
【0090】
一つの態様において、本発明のオリゴヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその組み合わせからなり、一つのヌクレオチドの5’末端ともう一つのヌクレオチドの3’末端が互いにホスホジエステル結合で連結している。これらオリゴヌクレオチドは常套方法によって合成してもよいし、組換え産生してもよい。
【0091】
好適な態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは「修飾」オリゴヌクレオチドである。ここで、オリゴヌクレオチドはその標的への結合能力を阻害しないで、様々に修飾して、例えば、その安定性または治療効力を上昇させてもよい。本発明によると、「修飾オリゴヌクレオチド」の語は以下のオリゴヌクレオチドを意味する:
(i) 少なくともそのヌクレオチドの2つが互いに合成インターヌクレオシド結合(即ち、ホスホジエステル結合ではないインターヌクレオシド結合)により連結されている、および/または
(ii)核酸において通常みられない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合している。
【0092】
好ましい合成インターヌクレオシド結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミダイト、カーバメート、カーボネート、ホスフェートトリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0093】
「修飾オリゴヌクレオチド」の語はまた、共有結合により修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを含む。「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、3’位のヒドロキシル基および5’位のホスフェート基以外の低分子量有機基に共有結合した糖残基を有するオリゴヌクレオチドである。修飾オリゴヌクレオチドは、例えば、2’-O-アルキル化リボース残基またはリボース以外のその他の糖、例えばアラビノースを含むものでもよい。
【0094】
好ましくは、本発明にしたがって記載されるタンパク質およびポリペプチドは単離されたものである。「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」の語は、タンパク質またはポリペプチドが自然環境から分離されていることを意味する。単離タンパク質またはポリペプチドは実質的に純粋な状態であり得る。「実質的に純粋な状態」という語は、タンパク質またはポリペプチドが、自然あるいはインビボでそれらが結合しているその他の物質を実質的に含まないということを意味する。
【0095】
かかるタンパク質およびポリペプチドは、例えば、抗体の産生および治療薬として免疫学的または診断アッセイにおいて利用できる。本発明にしたがって記載されるタンパク質およびポリペプチドは生物学的サンプル、例えば組織または細胞ホモジネートから単離したものでもよいし、様々な原核または真核発現系において組換え発現させたものでもよい。
【0096】
本発明の目的のために、タンパク質またはポリペプチドあるいはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。
【0097】
アミノ酸挿入バリアントはアミノ-および/またはカルボキシ-末端融合を含み、また、1または2以上のアミノ酸の特定のアミノ酸配列への挿入も含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1または複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されているが、結果的に得られる産物の適当なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。アミノ酸欠失バリアントは配列からの1または複数のアミノ酸の欠如によって特徴づけられる。アミノ酸置換バリアントは配列における少なくとも1残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることによって特徴づけられる。好ましくは修飾は相同的タンパク質またはポリペプチド間で保存されていないアミノ酸配列における位置のものである。好ましくは、アミノ酸を類似の特性、例えば、疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の大きさなどを有する別のアミノ酸で置換する(保存的置換)。保存的置換は、例えば、1つのアミノ酸の、置換すべきアミノ酸と同じ群に属する以下に挙げる別のアミノ酸による交換に関する:
1.小さい脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr (Pro、Gly)
2.負に荷電した残基およびそのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正に荷電した残基:His、Arg、Lys
4.大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val (Cys)
5.大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0098】
タンパク質構造のその特定の部分により、3つの残基を括弧内に示す。Glyは側鎖を有さない唯一の残基でありしたがって鎖に柔軟性を与える。Proは鎖を大幅に制限する珍しい構造を有する。Cysはジスルフィド結合を形成することが出来る。
【0099】
上記のアミノ酸バリアントは公知のペプチド合成技術、例えば、固相合成(Merrifield、1964)および類似の方法または組換えDNA操作によって容易に調製できる。あらかじめ決定した位置における置換突然変異の、配列既知のまたは部分的に既知のDNAへの導入技術は周知であり、例えばM13突然変異誘発が含まれる。置換、挿入または欠失を有するタンパク質の調製のためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al. (1989)に詳細に記載されている。
【0100】
本発明によると、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの「誘導体」は1または複数の酵素に関連する分子の置換、欠失および/または付加が含まれ、かかる分子としては、炭水化物、脂質および/またはタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが挙げられる。「誘導体」の語は、該タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのすべての機能的化学的同等体も含む。
【0101】
本発明によると、腫瘍関連抗原の部分または断片はそれが由来するポリペプチドの機能的特性を有する。かかる機能的特性には、抗体との相互作用、その他のポリペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性が挙げられる。特定の特性はHLAと複合体を形成する能力であり、適当な場合、免疫応答が導かれる。この免疫応答は細胞障害性またはヘルパーT細胞の刺激に基づきうる。本発明の腫瘍関連抗原の部分または断片は好ましくは腫瘍関連抗原の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の連続するアミノ酸の配列を含む。
【0102】
腫瘍関連抗原をコードする核酸の部分または断片は本発明によると上記のように少なくとも腫瘍関連抗原および/または該腫瘍関連抗原の部分または断片をコードする核酸の部分に関する。
【0103】
腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の単離と同定はまた、1または複数の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる疾患の診断を可能とする。これら方法は、腫瘍関連抗原をコードする1または複数の核酸を判定すること、および/またはコードされる腫瘍関連抗原および/またはそれに由来するペプチドを判定することを含む。核酸は常套方法によって判定でき、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応または標識化プローブによるハイブリダイゼーションを含む。腫瘍関連抗原またはそれに由来するペプチドは、抗原および/またはペプチドの認識について患者の抗血清をスクリーニングすることによって判定できる。それはまた、対応する腫瘍関連抗原に対する特異性について患者のT細胞をスクリーニングすることによっても判定できる。
【0104】
本発明はまた本明細書に記載する腫瘍関連抗原に結合するタンパク質の単離も可能にし、これには抗体および該腫瘍関連抗原の細胞結合パートナーが含まれる。
【0105】
本発明によると、特定の態様は腫瘍関連抗原由来の「ドミナントネガティブ」ポリペプチドを提供する。ドミナントネガティブポリペプチドは不活性タンパク質バリアントであり、細胞機構と相互作用することにより、その細胞機構との相互作用から活性のタンパク質ととってかわるか、あるいは活性のタンパク質と競合するものであり、それによって該活性のタンパク質の効果を低減させる。例えば、リガンドに結合するが、リガンドへの結合に応答してシグナルを生じないドミナントネガティブ受容体は該リガンドの生理効果を低減させうる。同様に、通常標的タンパク質と相互作用するが該標的タンパク質をリン酸化しないドミナントネガティブな触媒的に不活性なキナーゼは、細胞シグナルの応答としての該標的タンパク質のリン酸化を低減しうる。同様に、遺伝子の制御領域におけるプロモーター部位に結合するが該遺伝子の転写を上昇させないドミナントネガティブな転写因子は、転写を上昇させることなくプロモーター結合部位を占有することによって通常の転写因子の効果を低減しうる。
【0106】
細胞におけるドミナントネガティブなポリペプチドの発現の結果、活性なタンパク質の機能が低下する。当業者であればタンパク質のドミナントネガティブバリアントを、例えば、常套の突然変異誘発方法そしてバリアントポリペプチドのドミナントネガティブ効果の評価によって調製することができるであろう。
【0107】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に結合するポリペプチド等の物質も含む。かかる結合性物質は、例えば、腫瘍関連抗原および腫瘍関連抗原とその結合パートナーの複合体の検出のためのスクリーニングアッセイにおいて、および該腫瘍関連抗原ならびにその結合パートナーとの複合体の精製において利用することが出来る。かかる物質は例えばかかる抗原への結合によって、腫瘍関連抗原の活性の阻害にも用いることが出来る。
【0108】
本発明はそれゆえ腫瘍関連抗原に選択的に結合することが出来る結合性物質、例えば、抗体または抗体断片を含む。抗体はポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、これらは常套方法より産生される。
【0109】
かかる抗体はネイティブなおよび/または変性状態におけるタンパク質を認識することが出来る(Anderson et al.、J. Immunol.143: 1899-1904、1989; Gardsvoll、J. Immunol. Methods 234: 107-116、2000; Kayyem et al.、Eur. J. Biochem. 208: 1-8、1992; Spiller et al.、J. Immunol.Methods 224 : 51-60、1999)。
【0110】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は様々な標準的方法で調製することが出来る;例えば、“Monoclonal Antibody: A Practical Approach”,Philip Shepherd、Christopher Dean ISBN0-19-963722-9; “Antibofy: A Laboratory Manual” , Ed Harlow、David Lane、ISBN: 0879693142 および “Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO” , Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN 0879695447を参照されたい。したがってネイティブな形態において複雑な膜タンパク質を認識するアフィン(affine)および特異的抗体を作成することも可能である(Azorsa et al.、J. Immunol. Methods 229: 35-48、1999;Anderson et al.、J. Immunol.143: 1899-1904、1989; Gardsvoll、J. Immunol. Methods 234: 107-116、2000)。これは特に治療的に用いられるだけでなく多くの診断用途を有する抗体の調製に関する。これに関して、全タンパク質、細胞外部分配列、また生理的に折りたたまれた形態にて標的分子を発現する細胞によって免疫することが可能である。
【0111】
モノクローナル抗体は古典的にはハイブリドーマ技術を用いて調製される(技術的詳細については以下を参照されたい: “Monoclonal Antibody: A Practical Approach”, Philip Shepherd、Christopher Dean ISBN0-19-963722-9; “Antibody: A Laboratory Manual” ,Ed Harlow、David Lane ISBN: 0879693142; “Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO”, Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN: 0879695447)。
【0112】
抗体分子の小さい部分、即ち、抗原結合部位だけが、抗体のそのエピトープへの結合に関与していることが知られている(以下を参考:Clark、W.R.(1986)、The Experimental Foundations of Modern Immunology、Wiley & Sons、Inc.、New York; Roitt、I.(1991)、Essential Immunology、7thEdition、Blackwell Scientific Publications、Oxford)。pFc’およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与していない。F(ab’)
2 断片と称されるpFc’領域が酵素的に除かれた抗体またはpFc’領域を含まないように産生された抗体は、完全な抗体の両方の抗原結合部位を担持する。同様に、Fab 断片と称されるFc領域が酵素的に除かれた抗体またはFc領域を含まないように産生された抗体は、インタクトな抗体分子の一方の抗原結合部位を担持する。さらに、Fab断片は共有結合した抗体の軽鎖と該抗体のFdと称される重鎖の部分からなる。Fd断片は主な抗体特異性の決定部分であり(一つのFd断片は、抗体の特異性を変化させることなく10までの異なる軽鎖と結合できる)、Fd断片は単離されても、エピトープへの結合能を保持する。
【0113】
抗体の抗原結合部分のなかに抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)と抗原結合部位の三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)が位置する。IgG 免疫グロブリンの重鎖のFd 断片と軽鎖の両方は4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含み、これは3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分断されている。CDRおよび、特に、CDR3領域そして、さらに重鎖のCDR3領域が抗体特異性に非常に重要である。
【0114】
哺乳類抗体の非-CDR領域は、元の抗体のエピトープに対する特異性を維持したまま同じまたは異なる特異性の抗体の同様の領域によって置換され得ることが知られている。これによって「ヒト化」抗体の開発が可能となり、ここで非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域に共有結合して機能性の抗体が作られる。
【0115】
これはいわゆる「SLAM」技術に用いることが出来、ここで全血からB細胞が単離され、細胞が単クローン化される。次いで、単一のB細胞の上清がその抗体特異性に関して分析される。ハイブリドーマ技術と異なり、抗体遺伝子の可変領域が単細胞PCRを用いて増幅され、好適なベクターにクローニングされる。このようにして、モノクローナル抗体の供給が加速されている(de Wildt et al.、J.Immunol. Methods 207: 61-67、1997)。
【0116】
別の例として、WO92/04381はヒト化マウスRSV抗体の産生と使用を記載しており、ここで少なくともマウスFR 領域の一部がヒト起源のFR領域と置換された。この種の抗体、例えば、抗原結合能を有するインタクトな抗体の断片は「キメラ」抗体と称される。
【0117】
本発明はまた、抗体のF(ab’)
2、Fab、Fv、およびFd断片ならびにキメラ抗体、ここで、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖-CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列に置換されている、キメラF(ab’)
2-断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖-CDR3 領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、キメラFab-断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖-CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、そしてキメラFd-断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、を提供する。本発明はまた「一本鎖」抗体も含む。
【0118】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に特異的に結合するポリペプチドも含む。この種のポリペプチド結合性物質は、例えば、単に溶液中に固定化形態で調製されているかあるいはファージディスプレーライブラリーとして調製されるディジェネレートペプチドライブラリーにより提供され得る。1または複数のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリーを調製することも同様に可能である。ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリーも調製可能である。
【0119】
ファージディスプレーは本発明の結合性ペプチドの同定に特に有効である。これについえ、例えば、4から約80 アミノ酸残基長のインサートを表す(例えば、M13、fd またはラムダファージを使用して)ファージライブラリーを調製する。ファージを次いで腫瘍関連抗原に結合するインサートを担持するかについて選抜する。この工程は2サイクル以上繰り返してもよく、腫瘍関連抗原へ結合するファージを再選択する。繰り返すことによって、特定の配列を有するファージが濃縮される。DNA配列の分析を行って発現するポリペプチドの配列を同定してもよい。腫瘍関連抗原に結合する配列の最も小さい直線状の部分を決定するとよい。酵母の「ツーハイブリッドシステム」を用いて腫瘍関連抗原に結合するポリペプチドを同定してもよい。本発明による腫瘍関連抗原またはその断片はファージディスプレーライブラリーを含むペプチドライブラリーのスクリーニングに用いて、腫瘍関連抗原のペプチド結合性パートナーの同定および選択をすることができる。かかる分子は、腫瘍関連抗原の機能の妨害およびその他の当業者に知られた目的のために、例えば、スクリーニングアッセイ、精製プロトコールに用いることが出来る。
【0120】
上記の抗体およびその他の結合性分子を、例えば、腫瘍関連抗原を発現する組織の同定に用いることが出来る。抗体は腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を示すために特定の診断物質と結合させてもよい。これらは治療上有用な物質と結合させてもよい。診断物質としては、これらに限定されないが以下が含まれる:硫酸バリウム、イオセタミン酸(iocetamic acid)、イオパノ酸、イポダートカルシウム、ナトリウムジアトリゾエート、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、チロパノエートナトリウムおよび放射性診断薬、例えば、陽電子放射体、例えば、フッ素-18および炭素-11、ガンマ放出体、例えば、ヨウ素-123、テクネチウム-99m、ヨウ素-131およびインジウム-111、核磁気共鳴のための核種、例えば、フッ素およびガドリニウム。本発明によると、「治療上有用な物質」との語は所望により1または複数の腫瘍関連抗原を発現する細胞に選択的に導かれるあらゆる治療用分子をいい、例えば、抗癌薬、放射性ヨウ素標識化合物、毒素、細胞増殖抑制剤または細胞溶解剤などが挙げられる。抗癌薬としては、例えば、以下が含まれる:アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビジン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン-α、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、プロカルバジンHCl、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチン。その他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman、“The PharmacologicalBasis of Therapeutics”、8th Edition、1990、McGraw-Hill、Inc.、特に Chapter 52 (Antineoplastic Drugs (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner))に記載されている。毒素はタンパク質、例えば、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素またはシュードモナス外毒素であってもよい。毒素残基は、高エネルギー放射性核種、例えば、コバルト-60であってもよい。
【0121】
本発明によると「患者」の語は、ヒト、非ヒト霊長類またはその他の動物、特に哺乳類、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類、例えば、マウスおよびラットをいう。特に好ましい態様において、患者はヒトである。
【0122】
本発明によると、「疾患」の語は、腫瘍関連抗原が発現しているか異常に発現しているあらゆる病的状態をいう。「異常な発現」とは本発明によると、発現が健康な個体における状態と比べて変化、好ましくは上昇していることをいう。発現の上昇は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の上昇をいう。一つの態様において、腫瘍関連抗原は疾患個体の組織にのみ発現しており、健康な個体における発現は抑制されている。かかる疾患の一例は癌であり、ここで「癌」の語は本発明によると、白血病、精上皮腫、メラノーマ、奇形腫、神経膠腫、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、腸癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、胃腸癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。
【0123】
本発明によると、生物学的サンプルは組織サンプルおよび/または細胞サンプルであってよく、本明細書に記載する様々な方法における使用のため、以下のような常套手段によって得られるものであってよい:組織診、例えば、パンチ生検、および血液、気管支吸引液、痰、尿、便またはその他の体液の採取。
【0124】
本発明によると、「免疫反応性細胞」の語は、好適な刺激によって免疫細胞(例えば、B細胞、ヘルパーT細胞、または細胞溶解性T細胞)へと成熟しうる細胞を意味する。免疫反応性細胞は、CD34
+ 造血幹細胞、未熟および成熟T細胞ならびに未熟および成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性またはヘルパーT細胞の産生が望ましい場合は、免疫反応性細胞を細胞溶解性T細胞およびヘルパーT細胞の産生、分化および/または選択に好ましい条件下で腫瘍関連抗原を発現する細胞と接触させる。抗原に曝された際のT細胞前駆体の細胞溶解性T細胞の分化は、免疫系のクローン選択と類似である。
【0125】
いくつかの治療方法は患者の免疫系の反応に基づき、その結果、抗原提示細胞、例えば1または複数の腫瘍関連抗原を提示する癌細胞の溶解が導かれる。これに関して、例えば、腫瘍関連抗原とMHC分子との複合体に特異的な自己細胞障害性Tリンパ球が細胞異常を有する患者に投与される。かかる細胞障害性Tリンパ球のインビトロでの産生は知られている。T細胞の分化方法の例は、WO-A-9633265に記載されている。一般に、細胞、例えば血液細胞を含むサンプルを患者から採取し、細胞を、複合体を提示し、細胞障害性Tリンパ球(例えば、樹状細胞)の増殖を引き起こしうる細胞と接触させる。標的細胞はトランスフェクトされた細胞、例えばCOS細胞とすればよい。かかるトランスフェクトされた細胞はその表面に所望の複合体を提示し、細胞障害性Tリンパ球と接触すると、細胞障害性Tリンパ球の増殖を刺激する。クローン拡張された自己細胞障害性Tリンパ球は次いで患者に投与される。
【0126】
抗原特異的細胞障害性Tリンパ球の選択の別の方法において、MHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光発生テトラマーが、細胞障害性Tリンパ球の特異的クローンの検出に用いられる(Altman et al.、Science 274:94-96、1996; Dunbar et al.、Curr. Biol.8:413-416、1998)。可溶性MHCクラスI分子はβ
2ミクログロブリンおよび該クラスI分子に結合するペプチド抗原の存在下でインビトロで折りたたまれる。MHC/ペプチド複合体は精製され、次いでビオチン標識される。テトラマーがビオチン化ペプチド-MHC複合体と標識化アビジン(例えば、フィコエリトリン)の混合によりモル比4:1にて形成される。テトラマーは次いで細胞障害性Tリンパ球、例えば末梢血またはリンパ節と接触される。テトラマーはペプチド抗原/MHCクラスI複合体を認識する細胞障害性Tリンパ球に結合する。テトラマーに結合した細胞は蛍光制御細胞ソーティングによってソートされ、反応性細胞障害性Tリンパ球が単離される。単離された細胞障害性Tリンパ球はインビトロで増殖させればよい。
【0127】
養子免疫伝達と称される治療方法において(Greenberg、J. Immunol. 136(5):1917、1986; Riddel et al.、Science 257:238、1992; Lynch et al.、Eur. J. Immunol. 21:1403-1410、1991; Kast et al.、Cell59:603-614、1989)、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)は治療すべき患者の細胞障害性Tリンパ球と混合され、その結果、特異的細胞障害性Tリンパ球が増殖する。増殖した細胞障害性Tリンパ球は特異的複合体を提示する特定の異常細胞によって特徴づけられる細胞異常を有する患者に投与される。細胞障害性Tリンパ球は次いで異常細胞を溶解し、それによって所望の治療効果が達成される。
【0128】
しばしば患者のT細胞レパートリーのなかで、この種の特異的複合体に低親和性を有するT細胞のみが増殖できる。というのは、高親和性のものは寛容の発生のために失われてしまうためである。ここで取って代わるのはT細胞受容体自体の移入であろう。このためにも、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)が健康な個体またはその他の種(例えば、マウス)の細胞障害性Tリンパ球と混合される。この結果、Tリンパ球が特異的複合体と以前に接触していないドナー生物由来の場合、高親和性の特異的細胞障害性Tリンパ球の増殖が起こる。これら増殖した特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体がクローニングされる。高親和性T細胞受容体が他の種からクローニングされている場合、それらは様々な程度でヒト化すればよい。かかるT細胞受容体は次いで遺伝子移入、例えば、レトロウイルスベクターの使用によって所望により患者のT細胞に導入される。次いで養子移入をこれら遺伝的に変化したTリンパ球を用いて行う(Stanislawski et al.、Nat Immunol. 2:962-70、2001; Kessels et al.、Nat Immunol. 2:957-61、2001)。
【0129】
上記治療態様は、少なくともいくつかの患者の異常細胞が腫瘍関連抗原とHLA分子との複合体を提示するという事実から出発する。かかる細胞はそれ自体公知の方法によって同定できる。複合体を提示する細胞が同定されたら出来るだけ早く、それらを細胞障害性Tリンパ球を含む患者からのサンプルと混合する。細胞障害性Tリンパ球が複合体を提示する細胞を溶解すると、腫瘍関連抗原の存在が推定できる。
【0130】
養子免疫伝達は本発明によって適用できる唯一の治療形態ではない。細胞障害性Tリンパ球はそれ自体公知の方法でインビボでも作ることが出来る。一つの方法では複合体を発現する非増殖性細胞を用いる。ここで用いられる細胞は通常複合体を発現する細胞、例えば、照射された腫瘍細胞または複合体の提示に必要な一方または両方の遺伝子(即ち、抗原ペプチドとそれを提示するHLA分子)をトランスフェクトされた細胞であろう。様々な細胞型を利用できる。さらに、目的の遺伝子の一方または両方を担持するベクターを使用することも可能である。特に好ましくはウイルスまたは細菌ベクターである。例えば、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸を、特定の組織または細胞型において該腫瘍関連抗原またはその断片の発現を制御するプロモーターおよびエンハンサー配列と機能的に連結させるとよい。核酸は発現ベクターに組み込んでもよい。発現ベクターは非修飾染色体外核酸、プラスミドまたはウイルスゲノムであり得、それに外来核酸を挿入すればよい。腫瘍関連抗原をコードする核酸はレトロウイルスゲノムに導入してもよく、それによって、核酸の標的組織または標的細胞のゲノムへの組込みが可能となる。かかる系において、微生物、例えば、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルスが目的の遺伝子を担持し、事実上、宿主細胞に「感染」する。別の好適な形態は組換えRNAの形態における腫瘍関連抗原の導入であり、これは例えば、リポソーム移入またはエレクトロポーレーションによって細胞に導入するとよい。その結果得られた細胞は目的の複合体を提示し、自己細胞障害性Tリンパ球に認識され、自己細胞障害性Tリンパ球が増殖する。
【0131】
抗原提示細胞へのインビボでの取り込みを可能とするための同様の効果は腫瘍関連抗原またはその断片とアジュバントとを混合することにより達成できる。腫瘍関連抗原またはその断片は、タンパク質、(例えば、ベクター内で)DNAまたはRNAとして表されうる。腫瘍関連抗原はプロセシングされてHLA分子に対するペプチドパートナーが生ずるが、その断片はさらなるプロセシングの必要なく提示されうる。後者は特に、それらがHLA分子に結合しうる場合である。完全な抗原がインビボで樹状細胞によってプロセシングされる投与形態が好ましい。というのはこれによって有効な免疫応答に必要とされるヘルパーT細胞応答も産生されうるからである(Ossendorpet al.、Immunol Lett. 74:75-9、2000;Ossendorp et al.、J. Exp. Med.187:693-702、1998)。一般に、例えば皮内注射によって患者に有効量の腫瘍関連抗原を投与することが可能である。しかし、注射はリンパ節内に行うことも可能である(Maloy et al.、ProcNatl Acad Sci USA 98:3299-303、2001)。それは樹状細胞への取り込みを促進する試薬と組み合わせて行うことも出来る。好ましい腫瘍関連抗原は、多くの癌患者の同種癌抗血清またはT細胞と反応するものを含む。しかし特に興味深いのは、自発的免疫応答が前から存在しないものに対するものである。明らかに、腫瘍を溶解しうるこれら免疫応答を誘導することが可能である(Keogh et al.、J. Immunol.167:787-96、2001; Appella etal.、Biomed Pept Proteins NucleicAcids 1:177-84、1995; Wentworth et al.、Mol Immunol. 32:603-12、1995)。
【0132】
本発明による医薬組成物はまた免疫化のためのワクチンとして使用することもできる。本発明によると、「免疫化」または「ワクチン接種」の語は、抗原に対する免疫応答の上昇または活性化を意味する。腫瘍関連抗原またはそれをコードする核酸の使用により癌に対する免疫効果を試験するために動物モデルを使用することができる。例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を導き、腫瘍関連抗原をコードする1または複数の核酸を投与すればよい。癌細胞に対する効果(例えば、腫瘍サイズの減少)は、核酸による免疫化の有効性のための尺度として測定すればよい。
【0133】
免疫化用組成物の一部として、1または複数の腫瘍関連抗原またはその刺激性の断片を1または複数のアジュバントとともに投与して免疫応答を誘導し、あるいは免疫応答を上昇させる。アジュバントは抗原に組み込まれるか、抗原と共に投与される物質であって、免疫応答を増強させるものである。アジュバントは、抗原蓄積(reservoir)の提供(細胞外またはマクロファージ中)、マクロファージの活性化および/または特定のリンパ球の刺激によって免疫応答を増強しうる。アジュバントは公知であり、これらに限定されないが以下を含む:一リン酸化脂質A(MPL、SmithKline Beecham)、サポニン、例えば、QS21 (SmithKline Beecham)、DQS21 (SmithKlineBeecham; WO 96/33739)、QS7、QS17、QS18およびQS-L1 (So et al.、Mol. Cell 7:178-186、1997)、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreig et al.、Nature 374:546-9、1995参照)および生分解性油、例えば、スクアレンおよび/またはトコフェロールから調製される様々な油中水乳剤。好ましくは、ペプチドはDQS21/MPLとの混合物として投与する。DQS21とMPLの比は典型的には約1:10〜10:1であり、好ましくは 約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与用のワクチン製剤は典型的にはDQS21とMPLを約1μg〜約100μgの範囲で含む。
【0134】
患者の免疫応答を刺激するその他の物質を投与してもよい。例えば、リンパ球に対するその調節特性からサイトカインをワクチン接種に使用するのが可能である。かかるサイトカインには、例えばインターロイキン-12(IL-12)が含まれ、これは、ワクチンの保護作用を増強することが示されており(Science 268:1432-1434、1995参照)、またGM-CSFおよびIL-18も含まれる。
【0135】
免疫応答を増強し、それゆえワクチン接種に使用できる化合物が多数存在する。該化合物にはタンパク質または核酸の形態で提供される共刺激性分子が含まれる。かかる共刺激性分子の例はB7-1およびB7-2であり(それぞれCD80およびCD86)、樹状細胞(DC)上に発現されてT細胞上に発現するCD28分子と相互作用する。この相互作用は抗原/MHC/TCR-刺激(シグナル1)T細胞に対して共刺激(シグナル2)を提供し、それによって該T細胞の増殖およびエフェクター機能が増強される。B7はまたT細胞上のCTLA4(CD152)とも相互作用し、CTLA4 およびB7リガンドについての研究により、B7-CTLA4相互作用は抗腫瘍免疫およびCTL増殖を増強しうることが示された(Zheng、P. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA95(11):6284-6289 (1998))。
【0136】
B7は典型的には腫瘍細胞では発現せず、したがってT細胞に対する有効な抗原提示細胞(APC)はない。B7発現の誘導は、腫瘍細胞がより有効に細胞障害性Tリンパ球の増殖とエフェクター機能を刺激するのを可能にする。B7/IL-6/IL-12の組み合わせによる共刺激により、T細胞集団におけるIFN-ガンマおよびTh1-サイトカインプロフィールの誘導が明らかとなり、その結果さらにT細胞活性が増強される(Gajewskiet al.、J. Immunol.154:5637-5648 (1995))。
【0137】
細胞障害性Tリンパ球の完全な活性化および完全なエフェクター機能には、該ヘルパーT細胞上のCD40リガンドと樹状細胞によって発現されるCD40分子との相互作用を介するヘルパーT細胞の関与が必要である(Ridge et al.、Nature 393:474(1998)、Bennett et al.、Nature 393:478 (1998)、Schonberger et al.、Nature 393:480 (1998))。この共刺激シグナルのメカニズムはおそらくB7産生の上昇と関係があり、該樹状細胞(抗原提示細胞)によるIL-6/IL-12産生を伴う。したがってCD40-CD40L相互作用はシグナル1(抗原/MHC-TCR)とシグナル2(B7-CD28)の相互作用を補充する。
【0138】
樹状細胞の刺激のための抗-CD40抗体の使用は、腫瘍抗原に対する応答を直接増強すると考えられ、これは通常炎症応答の範囲外であるか、あるいは非専門抗原提示細胞(腫瘍細胞)によって提示されるものである。かかる状況において、ヘルパーTおよびB7共刺激シグナルは提供されない。このメカニズムは、抗原でパルスされた樹状細胞に基づく治療に関係して利用されうる。
【0139】
本発明はまた、核酸、ポリペプチドまたはペプチドの投与を提供する。ポリペプチドおよびペプチドはそれ自体公知の方法で投与すればよい。一つの態様において、核酸はエキソビボ方法で投与され、即ち、患者から細胞を取り出して、該細胞の遺伝子操作により腫瘍関連抗原を取り込ませ、変化した細胞を患者に再導入する。これは一般に患者の細胞への遺伝子の機能的コピーのインビトロでの導入および遺伝的に変化した細胞の患者への再導入を含む。遺伝子の機能的コピーは調節要素の機能的制御下にあり、それによって遺伝子が遺伝的に改変された細胞で発現する。トランスフェクションおよび形質導入方法は当業者に知られている。本発明はまた、ベクター、例えば、ウイルスおよび標的制御リポソームを用いることによるインビボでの核酸の投与も提供する。
【0140】
好適な態様において、腫瘍関連抗原をコードする核酸の投与用のウイルスベクターは以下からなる群から選択される:アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスおよび弱毒ポックスウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様粒子。特に好ましいのはアデノウイルスおよびレトロウイルスである。レトロウイルスは典型的には複製欠損のものである(即ち、それらは感染性粒子を産生できない)。
【0141】
本発明によるとインビトロまたはインビボで細胞に核酸を導入するための様々な方法を利用できる。この種の方法には以下が含まれる:核酸 CaPO
4沈殿のトランスフェクション、DEAEによる核酸トランスフェクション、目的の核酸を担持する上記ウイルスによるトランスフェクションまたは感染、リポソーム媒介トランスフェクションなど。特定の態様において、特定の細胞に核酸を送達するのが好ましい。かかる態様において、細胞への核酸の投与に用いられる担体(例えば、レトロウイルスまたはリポソーム)は結合標的制御分子を有していてもよい。例えば、分子、例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質または標的細胞上の受容体のリガンドに特異的な抗体を核酸担体に組み込むか結合すればよい。好ましい抗体は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームを介した核酸の投与が望ましい場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込んで、標的制御および/または取り込みを可能とすればよい。かかるタンパク質には、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはその断片、取り込まれるタンパク質に対する抗体、細胞内部位に案内するタンパク質等が含まれる。
【0142】
本発明の治療用組成物は医薬上許容される調製物中で投与すればよい。かかる調製物は通常、医薬上許容される濃度の塩、バッファー物質、保存料、担体、補助免疫増強物質、例えば、アジュバント、CpGおよびサイトカインならびに適切な場合、治療的に活性なその他の化合物を含む。
【0143】
本発明の治療的に活性な化合物はいずれの常套経路で投与してもよく、かかる経路には注射または注入によるものが含まれる。投与は例えば以下のように行えばよい:経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または経皮。好ましくは、抗体は肺噴霧剤により治療的に投与する。アンチセンス核酸は好ましくは、ゆっくりと静脈内から投与する。
【0144】
本発明の組成物は有効量にて投与される。「有効量」とは、単独でまたはさらなる用量とともに、所望の反応または所望の効果を達成する量をいう。1または複数の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる特定の疾患または特定の症状を治療する場合、所望の反応は疾患の経過の阻害である。これには疾患の進行の遅延が含まれ、特に、疾患の進行の妨害である。疾患または症状の治療における所望の反応は該疾患または症状の発症の遅延または発症の予防であってよい。
【0145】
本発明の組成物の有効量は治療すべき症状、疾患の重症度、患者の個々のパラメーター、例えば、年齢、生理状態、身長および体重、治療期間、併用療法の種類(存在する場合)、投与の特定の経路およびそういった因子に依存する。
【0146】
本発明の医薬組成物は好ましくは無菌であり、所望の反応または所望の効果を達成するために有効量の治療的に活性な物質を含む。
【0147】
本発明の組成物の投与用量は様々なパラメーター、例えば、投与タイプ、患者の症状、望ましい投与期間等に依存する。患者における反応が最初の用量で不十分な場合、より高い用量(あるいは別のより局所的な投与経路により達成される有効に高い用量)を用いればよい。
【0148】
一般に、1 ng〜1 mg、好ましくは10 ng〜100μgの用量の腫瘍関連抗原を製剤し、治療用または免疫応答の誘導または上昇のために投与する。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与が望ましい場合、1 ng〜0.1 mgの用量を製剤し、投与する。
【0149】
本発明の医薬組成物は、一般に医薬上許容される組成物中で医薬上許容される量を投与する。「医薬上許容される」の語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質をいう。この種の調製物は通常、塩、バッファー物質、保存料、担体および適当な場合はその他の治療的に活性な化合物を含む。医薬中に使用する場合、塩は医薬上許容されるものでなければならない。しかし、医薬上許容されない塩を用いて医薬上許容される塩を調製してもよく、これも本発明に含まれる。この種の薬理上および医薬上許容される塩としてはこれらに限定されないが、以下の酸から調製されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。医薬上許容される塩はアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製してもよい。
【0150】
本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体を含んでいてもよい。本発明によると、「医薬上許容される担体」の語は、1または複数のヒトへの投与に好適な適合性の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質をいう。「担体」の語は、適用を促進するためにその中に活性成分が混合される天然または合成の有機または無機成分をいう。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望の医薬効果を実質的に阻害する相互作用が起こらないようなものである。
【0151】
本発明の医薬組成物は好適なバッファー物質、例えば塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸を含んでいてもよい。
【0152】
医薬組成物は適当である場合、好適な保存料、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールを含んでいてもよい。
【0153】
医薬組成物は通常均一な剤形において提供され、それ自体公知の方法で調製できるものである。本発明の医薬組成物はカプセル、錠剤、トローチ剤、懸濁液、シロップ、エリキシルの形態または例えば乳濁液の形態であってよい。
【0154】
非経口投与に好適な組成物は通常、活性化合物の無菌の水性または非水性調製物を含み、それは好ましくはレシピエントの血液と等張である。許容される担体および溶媒の例は、リンゲル液および等張食塩水である。さらに、通常、無菌の不揮発性油が溶液または懸濁液の媒体として用いられる。
【0155】
本発明を以下の図面と実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは単に例示の目的であり、限定を意図するものではない。詳細な説明および実施例の記載により、本発明に含まれうるさらなる態様は当業者に明らかである。