(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マイコプラズマ・ニューモニエを超遠心法にて捕集し、エーテル抽出分画を除去した水相分画を免疫原として得られるマウスモノクローナル抗体であって、前記免疫原を2−メルカプトエタノール存在下、SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動するとき、分離される45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体を標識体固定化抗体とし、前記分画を免疫原として得られたマウスモノクローナル抗体であって、前記免疫原を2−メルカプトエタノール存在下SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動したとき、分離される75KD、55KD及び42KDの何れのバンドとも反応するモノクローナル抗体を不溶性メンブレン固定化抗体とすることを特徴とするサンドイッチイムノクロマト法による、マイコプラズマ・ニューモニエ抗原の検出方法。
マイコプラズマ・ニューモニエを超遠心法にて捕集し、エーテル抽出分画を除去した水相分画を免疫原として得られるマウスモノクローナル抗体であって、前記免疫原を2−メルカプトエタノール存在下、SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動するとき、分離される45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体を標識体固定化抗体とし、前記分画を免疫原として得られたマウスモノクローナル抗体であって、前記免疫原を2−メルカプトエタノール存在下SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動したとき、分離される75KD、55KD及び42KDの何れのバンドとも反応するモノクローナル抗体を不溶性メンブレン固定化抗体とする、マイコプラズマ・ニューモニエ検出用サンドイッチイムノクロマト測定試薬。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のサンドイッチイムノクロマト法に用いるモノクローナル抗体は、(1)マイコプラズマ・ニューモニエを超遠心にて捕集し、エーテル抽出分画を除去した水相分画中のタンパク質を抗原とするモノクローナル抗体であり、該抗原を免疫原として得られる。ここで、超遠心によるマイコプラズマ・ニューモニエの捕集は、例えばマイコプラズマ・ニューモニエ菌体を含有する培養液を10000〜30000g×30minの超遠心に付することにより行うことができる。捕集されたマイコプラズマ・ニューモニエ菌体を水に懸濁し、エーテル(ジエチルエーテル)抽出分画を除去した水相分画を得る。得られた水相分画からタンパク質を得るには、窒素ガスをバブリングし残留するエーテルを除去し、PBS(リン酸緩衝液)に透析する等を行えばよい。
【0013】
上記の方法により得られたマイコプラズマ・ニューモニエ由来のタンパク質を免疫原としてモノクローナル抗体を得るには、一般的には、KohlerとMilsteinの方法(Nature、第256巻495頁(1975年)参照)に準じ、上記抗原で免疫した動物の脾臓細胞と同種のミエローマ細胞(骨髄腫細胞)とを細胞融合して作製したハイブリドーマを利用するのが好ましい。
【0014】
(免疫)
動物の免疫は、一般的な手法に従って行うが、一例を挙げると、上記抗原をリン酸緩衝生理食塩水などの溶媒に溶解し、この溶液を動物の皮下、皮内、腹腔などに投与することにより容易に行うことができる。免疫に用いる動物としては哺乳動物が好ましく、例えばマウス、ラットが好適である。必要に応じて、前記の溶液に適宜のアジュバントを添加した後、エマルジョンとして免疫を行ってもよい。アジュバントとしては、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、水中油型乳剤、リポソーム、水酸化アルミニウムゲルなど、汎用されるアジュバントのほか、生体成分由来のタンパク質やムラミルジペプチドのようなペプチド性物質などを用いてもよい。例えば、フロイントの不完全アジュバント又はフロイントの完全アジュバントなどは好適である。投与経路、投与量、投与時期は特に限定されないが、抗原を免疫する動物において所望の免疫応答を増強できるように適宜選択することが望ましい。動物の皮下、皮内、腹腔などに投与して一次刺激後、必要に応じて同様の操作を繰り返し行う。抗原の投与量は投与経路、動物種に応じて適宣決定されるが、通常の投与量は1回当たり10μg〜1mg程度が好ましい。
【0015】
(細胞融合)
細胞融合に用いる免疫細胞は、最終免疫の3〜4日後に摘出した脾臓細胞が好適である。また、前記免疫細胞と融合させる骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)としては、既に確立されている公知の各種細胞株が好ましく、例えばマウスにおけるNS1(P3/NSI/I−Ag4−1)[Eur.J.Immunol.6:511−519(1976)]、SP2/O−Ag14[Nature 276:269(1978)]、P3−X63−Ag8.653[J.Immunol.123:1548(1979)]、P3−X63−Ag8U.1[Curr.Top.Microbiol.Immunol.81:1(1978)]等や、ラットにおけるY3−Ag1.2.3.[Nature 277:131−133(1979)]、YB2/O(YB2/3HL/P2.G11.16Ag.20)[Methods Enzymol.73B:1(1981)]等が挙げられる。
細胞融合には、通常用いられるポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等を使用することができる。細胞融合の手法は公知の方法を用いることができ、例えば上記の骨髄腫細胞と骨髄腫細胞に対して約1〜10倍の免疫細胞との混合ペレットに、平均分子量1000〜6000のポリエチレングリコールを30〜60%の濃度で滴下し混合することによって達成できる。
上記の方法によって得られた免疫細胞と骨髄腫細胞とのハイブリドーマは、通常の選択培地、例えばHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培地)にて増殖するかどうかによって選択される。目的ハイブリドーマは、前記の中から、抗マイコプラズマ・ニューモニエモノクローナル抗体を産生しているかどうかについてスクリーニングされた後、限界希釈法によりクローニングされて、樹立される。
【0016】
(目的抗体の産生細胞)
上記目的の抗マイコプラズマ・ニューモニエ抗体を産生しているかどうかをスクリーニングする方法としては、公知のELISA法、RIA法、Biacore法等により行うことができる。例えば、培養上清中のモノクローナル抗体を、固相化した上記抗原と反応させ、次に標識抗IgG抗体を反応させる抗原固相化ELISA法により、上記抗原と高い反応性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
本発明に用いられるモノクローナル抗体は、前記免疫原を2−メルカプトエタノール存在下でSDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動したとき、45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体としては、FERM AP−21944として寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(以下、FERM AP−21944抗体ということがある)が好ましい。また、他の本発明に用いられるモノクローナル抗体は、前記免疫原を2−メルカプトエタノール存在下でSDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動したとき、75KD、55KD及び42KDの何れのバンドとも反応するモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体としては、FERM AP−21945として寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(以下、FERM AP−21945抗体ということがある)が好ましい。具体的には、培養上清中のモノクローナル抗体を実施例に詳述したWestern Blotting法により選択できる
【0017】
(本発明で使用するモノクローナル抗体)
このようにして選別されたハイブリドーマを大量培養することにより、所望の特性を有するモノクローナル抗体を作製することができる。大量培養の方法は特に限定されないが、例えば、ハイブリドーマを適宜の培地中で培養してモノクローナル抗体を培地中に産生させる方法や、哺乳動物の腹腔内にハイブリドーマを注射して増殖させ、腹水中に抗体を産生させる方法などを挙げることができる。モノクローナル抗体の精製は、例えば陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組み合わせて行うことができる。
【0018】
本発明の検出方法及び測定試薬においては、FERM AP−21944抗体及びFERM AP−21945抗体だけでなく、これら2種類のモノクローナル抗体と同一の抗原決定基を認識する抗体であれば使用可能である。
本発明のFERM AP−21944抗体と同一の抗原決定基を認識する抗体及びFERM AP−21945抗体と同一の抗原決定基を認識する抗体とは、それぞれ、上記のELISA法、RIA法、Biacore法等による抗体スクリーニングテストにおいて、FERM AP−21944抗体またはFERM AP−21945抗体に対する競合反応性を有するか否かで判定できる。それぞれの抗体と同一の抗原決定基を有する場合には、上記のスクリーニングテストにおいて、被験抗体を添加することによって、濃度依存性に反応量の低下が起こることから容易に判定できる。例えば、ELISA法を用いる場合には、西洋ワサビペルオキシダ−ゼ(HRP)で標識したFERM AP−21944抗体またはFERM AP−21945抗体と被験抗体とを同時にマイコプラズマ・ニューモニエ抗原を固定化したプレートに添加し、該抗原に結合していない分子を洗浄後、HRPの酵素活性を測定する方法などを挙げることができる。
本発明では、FERM AP−21944抗体またはFERM AP−21945抗体及びこれらと同一の抗原決定基を有する抗体を用いる際、その分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体の機能性断片を使用することも可能であり、前記のように動物への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものや、キメラ抗体を用いることも可能である。抗体の機能性断片としては、例えば、F(ab’)
2、Fab’などが挙げられ、これらの機能性断片は前記の抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理することにより製造できる。
【0019】
本発明のサンドイッチイムノクロマト法によるマイコプラズマ・ニューモニエ抗原の検出方法には、(1)標識体固定化抗体及び不溶性メンブレン固定化抗体の両方に、前記の45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体を使用する方法[方法(1)];及び(2)標識体固定化抗体として前記の45KDバンドと反応するモノクローナル抗体を使用し、不溶性メンブレン固定化抗体として前記の75KD、55KD及び42KDのバンドと反応するモノクローナル抗体を使用する方法[方法(2)]がある。このうち、方法(1)のように、標識体固定化抗体及び不溶性メンブレン固定化抗体の両方に、前記の45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体を使用することによって、サンドイッチイムノクロマト測定系が成立することは、全く予想外であった。
【0020】
本発明のサンドイッチイムノクロマト測定試薬は、例えば基本的に
図7に示すように、サンプルパッド、標識体固定化抗体を含むコンシンゲートパット、及び抗体固相化メンブレンにより構成される。以下、サンドイッチイムノクロマト法について説明する。
【0021】
(サンプルパッド)
本発明において、「サンプルパッド」とは、測定試料を受け入れる部位であり、パッドに成型された状態で液体の測定試料を吸収し、液体と測定対象の成分とが通り抜けることができるどんな物質及び形態をも含む。サンプルパッドに適した材料の具体例として、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が含まれるが、これらに限定されない。好適には、グラスファイバー製パッドが用いられる。該サンプルパッドは、後述するコンジュゲートパッドの機能を併せ持たせることも出来る。また、サンプルパッドには、抗体固定化不溶性メンブレンにおける非特異的反応(吸着)を防止・抑制する目的で、通常使用されるブロッキング剤等を含ませることができる。該ブロッキング剤としては、例えばNEO PROTEIN SAVER(東洋紡績株式会社)、イムノブロック
TM(大日本製薬株式会社)、Applie Block(生化学バイオビジネス株式会社)、SEA BLOCK
TM/EIA/WB(East Coast Biologics社)、Blocking One(ナカライテスク社)、BSA、Blocking Peptide Fragment(東洋紡績株式会社)、Starting Block
TM(PBS)Blocking Buffer(Thermo Fisher Scientific社)、Smart Block
TM(CANDOR Bioscience 社)、HeteroBlock(OMEGA Biologicals社)、等から、反応系に影響のないものを適宜選択可能である。
【0022】
(標識体)
標識体としては、通常、イムノクロマト法における抗体の固定化担体として知られる公知の材料を用いることができる。例えば、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、カラーラテックス粒子、磁性粒子などが好ましく、特に金コロイド粒子が好ましい。
金コロイド粒子の粒径はイムノクロマト試薬の感度に大きく影響することが知られているが、本発明における金コロイド粒子の粒径としては20〜60nmが好ましく、特に40nmが好ましい。上記の金コロイドは一般に知られている方法、例えば、加熱したテトラクロロ金(III)酸水溶液にクエン酸三ナトリウム水溶液を滴下攪拌することによって製造することができる。
以下、金コロイド粒子を用いた場合について詳述する。
【0023】
(標識体への抗体の感作)
上記抗体の金コロイドへの固定化は、通常物理吸着によって行うが、この際、抗体濃度は1μg/mL〜5μg/mLに調製されるのが好ましく、緩衝液及びpHは、2mMリン酸緩衝液(pH6−7)又は2mMホウ酸緩衝液(pH8−9)が好ましく、さらに好ましくは2mMホウ酸緩衝液(pH9)である。また、金コロイド上の抗体が結合していない領域は、BSAなどを結合させブロッキングするのが好適である。本明細書では、上記のような標識体に抗マイコプラズマ・ニューモニエモノクローナル抗体あるいはコントロール用抗体が固定化されたものを「コンジュゲート」という。このようにして作製された金コロイド標識抗体は、変性を阻止するための保存試薬中に分散され保存される。この変性阻止剤としては、BSAなどの蛋白質、グリセリン、糖などが用いられる。
本発明においては、当該標識体固定化抗体として前記45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体が用いられる。
【0024】
(検出試薬)
本発明において「検出試薬」とは、具体的には少なくともコンジュゲートを含有する試薬である。具体的には前記45KDのバンドと反応する抗マイコプラズマ・ニューモニエモノクローナル抗体が固定化された標識体を含有させて製されるものである。
検出試薬はコンジュゲートを安定な状態に保ち、測定試料と混合されたときに、コンジュゲートに固定化された抗体が抗原と特異的に反応するのを促進あるいは迅速かつ効果的に溶解、流動化する目的で、例えば1種類以上の安定化剤、溶解補助剤等を含み得る。該安定化剤、溶解補助剤等としては、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、スクロース、カゼイン、アミノ酸類などをあげることができる。また、検出試薬は、検出感度の向上を目的とし、必要に応じて2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等の公知の増感剤を含み得る。
尚、本明細書において、「検出」又は「測定」という用語は、検出対象物の存在の証明及び/又は定量などを含めて最も広義に解釈する必要があり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0025】
(コンジュゲートパッド)
本発明において、「コンジュゲートパッド」とは、抗原と特異的に反応するコンジュゲートを内在し、測定試料が該コンジュゲートパッドを通過する際、コンジュゲートと試料中のマイコプラズマ・ニューモニエ抗原とが複合体(凝集体)を形成する機能を有する部位をいう。該コンジュゲートパッドは、それ単独で抗体固定化メンブレンに接するように配置されていてもよいし、あるいは、前記サンプルパッドと接触して配置され、毛細管流によってサンプルパッドを通過した測定試料を受入れ、引き続き該測定試料を毛細管流によって前記サンプルパッドとは異なる面で接触する別のパッド(後述する3rd Pad)へ移送するように配置してもよい。なお、サンプルパッド、コンジュゲートパッドの一種以上の部位の選択や、選択された部位を抗体固定化メンブレンにどのように配置するかは、適宜に変更可能である。
コンジュゲートパッドに適した材料としては、紙、セルロース混合物、ニトロセルロース、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマー、ガラス繊維又はレーヨンのような不織繊維が挙げられるが、これらに限定されない。好適には、グラスファイバー製パッドが用いられる。
後述の如く不溶性メンブレン担体に「コントロール捕捉試薬」を固定化する場合には、コンジュゲートパッドに、アッセイの信頼性を担保するための「コントロール試薬」、例えば、標識物質で標識された測定試料成分と反応しない抗体や標識物質で標識されたKLH(スカシ貝ヘモシアニン)などの高抗原性タンパク質などを含ませる。これらコントロール試薬は、測定試料中に存在する可能性が考えられない成分(物質)であり、後述する「コントロール捕捉試薬」と適切に対応するよう適宜に選択可能である。
【0026】
(3rd Pad)
3rd Padは、測定試料と検出試薬との反応成分のうち、マイコプラズマ・ニューモニエ抗原測定に不要な成分を除去し、必要な反応成分が抗体固定化不溶性メンブレンをスムーズに展開できるようにすることを目的として配置させることができる。例えば、全血又は全血を溶血させた試料を用いる場合には、血球や不溶性の血球破砕物などは、測定に不要な成分として除去することが望ましい。また、この3rd Padには、抗原抗体反応により生成する凝集体のうち、抗体固定化不溶性メンブレンに移動し、スムーズに展開できない位に大きくなった凝集体をあらかじめ除去するという付加的な効果を併せ持たせることも可能である。3rd Padとしては、液体と測定対象の成分とが通り抜けることができるどんな物質及び形態をも含む。具体例として、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が含まれるが、これらに限定されない。好適には血球分離膜やそれに類する膜が用いられる。
【0027】
(抗体の不溶性メンブレン担体への固定化)
本発明においては、不溶性メンブレン担体に固定化される抗体が、方法(1)においては前記45KDのバンドと反応するモノクローナル抗体であり、方法(2)においては前記75KD、55KD及び42KDの何れのバンドとも反応するモノクローナル抗体である。
本発明のイムノクロマト試薬における抗体の不溶性メンブレン担体への固定化は、一般に周知の方法で実施することができる。例えば、フロースルー式の場合は、上記の抗体を所定の濃度に調製し、その液を一定量、点あるいは+など特定のシンボル状に、不溶性メンブレン担体に塗布する。ラテラルフロー式の場合には、上記の抗体を所定の濃度に調製し、その液をノズルから一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置などを用いて、ライン状に不溶性メンブレン担体に塗布することにより行われる。この際、抗体の濃度は0.1mg/mL〜5mg/mLが好ましく、0.5mg/mL〜2mg/mLがさらに好適である。また、抗体の不溶性メンブレン担体への固定化量は、フロースルー式の場合には不溶性メンブレン担体に滴下する塗付量を調節することによって最適化でき、ラテラルフロー式の場合には上記の装置のノズルからの吐出速度を調節することによって最適化できる。特に、ラテラルフロー式の場合、0.5μL〜2μL/cmが好適である。なお、本発明において、「フロースルー式メンブレンアッセイ」という場合は、測定対象の試料液を不溶性メンブレン担体に対して垂直に通過するように展開する方式を指し、「ラテラルフロー式メンブレンアッセイ」という場合は、測定対象の試料液が不溶性メンブレン担体に対して平行方向に移動するように展開する方式を指す。
また、上記の抗体は、通常所定の緩衝液を用いて調製することができる。その緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液をあげることができる。緩衝液のpHは6.0〜9.5の範囲が好ましく、6.5〜8.5がより好ましく、7.0〜8.0がさらに好ましい。緩衝液には、さらにNaClなどの塩類、スクロースなどの安定剤や保存剤、プロクリンなどの防腐剤等を含んでもよい。塩類はNaClなどのようにイオン強度の調整のために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する工程で存在するようになるものも含まれる。
不溶性メンブレン担体に抗体を固定化した後、さらに、通常使用されるブロッキング剤を溶液あるいは蒸気状にして該担体の抗体固定化部位以外を被覆し、ブロッキングを行うこともできる。
本明細書では、上記のように抗体が固定化された不溶性メンブレン担体を「抗体固定化メンブレン」ということがある。
なお、不溶性メンブレン担体には、「コントロール捕捉試薬」を固定化することができる。該コントロール捕捉試薬は、アッセイの信頼性を担保するための試薬であって、コンジュゲートパッドに含ませた対応する「コントロール試薬」を捕捉するものである。例えば、コンジュゲートパッドに標識されたKLHをコントロール試薬として含む場合には、抗KLH抗体などがコントロール捕捉試薬に該当する。コントロール捕捉試薬をメンブレンに固定化する位置は、アッセイ系の設計に適合するよう適宜選択することができる。
【0028】
(不溶性メンブレン担体)
本発明において、不溶性メンブレン担体(以下、単にメンブレンと記載することがある)としては、任意の材質ものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類あるいはセラミックス等をメンブレン状にしたものが使用できる。具体的には、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社などより販売されているガラス繊維ろ紙やセルロースろ紙などをあげることができる。また、この不溶性メンブレン担体の孔径と構造を適宜選択することにより、コンジュゲートと検出対象物との免疫複合体が、該メンブレン担体中を流れる速度を制御することが可能である。メンブレン中を流れる速度の制御により、メンブレンに固定化された抗体(捕捉試薬)に結合するコンジュゲート量を調節することができるため、メンブレンの孔径と構造は、本発明のイムノクロマト試薬のほかの構成材料との組み合わせを考慮して最適化することが望ましい。本明細書において、「不溶性メンブレン担体」を「固相」、抗原や抗体を不溶性担体に物理的あるいは化学的に担持させることあるいは担持させた状態を「固定」、「固定化」、「固相化」、「感作」、「吸着」と表現することがある。
【0029】
(吸収パッド)
本発明において、吸収パッドとは、不溶性メンブレン担体部を移動・通過した測定試料を吸収することにより、測定試料の展開を制御する液体吸収性を有する部位である。ラテラルフロー式においては、ストリップ構成の最下流に設ければよく、フロースルー式においては、例えば捕捉試薬を固定化した膜の下部に設ければよい。該吸収体としては、例えば、ろ紙を用いることができるが、これに限定されない。
【0030】
(ストリップ)
本発明において、「ストリップ」とは、抗体固定化不溶性メンブレンに、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、吸収パッドの一以上が適宜に配置装着されたものをいう。該ストリップは、通常、プラスチック製粘着シートのような固相支持体上に配列させる。該固相支持体は、測定試料の毛管流を妨げない物質で構成されることはもとより、接着剤の成分が測定試料の毛管流を妨げない物質であることも同様である。なお、抗体固定化不溶性メンブレンの機械的強度を上げ且つアッセイ中の水分の蒸発(乾燥)を防ぐ目的でポリエステルフィルムなどをラミネートすることも可能である。該ストリップは、ストリップの大きさや、測定試料の添加方法・位置、捕捉試薬の固定化位置、シグナルの検出方法などを考慮した適当な容器(ハウジング)に格納・搭載して使用することができ、このように格納・搭載された状態を「デバイス」という。
また、本発明のマイコプラズマ・ニューモニエ測定用イムノクロマト試薬は、少なくとも、抗マイコプラズマ・ニューモニエ抗体固定化メンブレンおよび、抗マイコプラズマ・ニューモニエモノクローナル抗体が標識体に固定化されているコンジュゲートを含むものであればよく、測定条件、測定試料に応じて他の試薬や構成を含み得る。
【0031】
(測定試料)
本発明の方法における測定対象となる「試料」(「測定試料」とも言う)としては、主に生体(生物)由来の体液を挙げることができる。具体的には、血液、血清、血漿、唾液、喀痰などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の測定対象は、測定試料中のマイコプラズマ・ニューモニエ抗原である。本発明の方法又は測定試薬により、測定試料がマイコプラズマ・ニューモニエ抗原陽性であれば、当該測定試料を有する被験者がマイコプラズマ・ニューモニエに感染していると診断することができる。
【0032】
本発明のマイコプラズマ・ニューモニエ測定用イムノクロマト試薬の作製は実施例に記載の方法を適宜、修飾・改変して行うことができる。コンジュゲートに由来するシグナルを測定する方法としては、公知の方法に従って行えばよく、例えば、吸光度あるいは反射光の強度を測定すればよい。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
〔参考実験例1〕使用したマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原による市販抗マイコプラズマ抗体検査薬(PA法)の阻害試験
TRINA BIOREACTIVE AGより入手したマイコプラズマ抗体陽性血漿4検体に対して、本発明で使用した後述のマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原を各々20μg/mLを添加し10分間室温で反応させた。この混合液について、市販の抗マイコプラズマ抗体検査薬(セロディア−MYCO II、富士レビオ社製)にて反応性を評価した(表1)。
【0035】
その結果、本発明で使用したマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原は、陽性血漿中の抗マイコプラズマ抗体が市販の抗マイコプラズマ抗体検査薬の抗原と反応するのを完全に阻害し、該市販検査薬の抗原と同様の抗原性を有することが確認された。
【0036】
【表1】
【0037】
1.モノクローナル抗体の製造方法
1)免疫用抗原の調製方法
マイコプラズマ・ニューモニエ(以下、「M.P.」と略記することがある)抽出抗原(Fitzgerald社、#30−AM40、1mg/mL)をコンプリートフロインドアジュバント(Gibco社製)と1:1で混合後、連結シリンジを用いてエマルジョンを作製し、免疫用抗原とした。尚、該抽出抗原は、マイコプラズマ・ニューモニエ菌体を含有する培養液を10000〜30000g×30minの超遠心し、捕集されたマイコプラズマ・ニューモニエ菌体を水に懸濁し、エーテル(ジエチルエーテル)抽出分画を除去した水相分画中のタンパク質である。
【0038】
2)免疫及びハイブリドーマの作製方法
上記免疫用抗原を雄のBALB/cマウスの腹腔に注入した(1匹当たり50〜100μg)。この操作(免疫)を2週間毎に2回繰り返した。免疫開始5週間後、試験採血にて高い抗体価が確認されたマウスから脾臓を摘出し、50%−PEG1450(Sigma社製)を用いて常法により細胞融合を行った。ミエローマ細胞はSP2/Oを用いた。得られた融合細胞は、脾臓細胞として2.5×10
6個/mLになるようにHAT、15%ウシ胎児血清及び10%のBM−Condimed H1 Hybridoma Cloning Supplement(Roche社製)を含むRPMI1640培地に懸濁し、96穴培養プレートに0.2mLずつ分注した。これを5%CO
2インキュベーター中で37℃にて培養した。
【0039】
3)抗マイコプラズマ・ニューモニエに対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング、クローニング及びモノクローナル抗体採取
細胞融合7〜10日後に培養上清を用いて、後述する抗原固相化ELISA法を行い、抗原に対し高い反応性を示したwellを陽性wellとして選別した。陽性well中の細胞は、24穴プレートを用いて継代した。
上記のスクリーニングで選択したハイブリドーマを限界希釈法にてクローニングし、所望のハイブリドーマを得た。次いで該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取するため、2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた8週齢の雄BALB/cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.4〜1.3×10
6個の量で腹腔内に投与した。投与後1週間目から1日おきに腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3M NaCl、1.5M Glycine−NaOH緩衝液、pH8.5)と混和後、ろ過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAセファロースカラムに通し、ろ液中の抗体をカラムに吸着させた後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させた。該溶出液を、1M Tris−HCl緩衝液(pH9.0)で中和後、10mM PBS(pH7.2)(以下、単にPBSと表記する場合がある)で透析を行い、抗体を採取した。
また、クローニングされた各ハイブリドーマは10%DMSO−FCSに約0.5−1×10
7cells/vialになるように分注し、−80℃に保存された。
【0040】
4)ハイブリドーマのスクリーニング:抗原固相化ELISA
4)−1 抗原固相化ELISA用プレートの作製
PBS(pH7.2)で上記マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原を5μg/mLの濃度に調製し、50μL/wellずつ96穴プレートに固相化し、4℃で一晩静置した。
0.05%Tween(登録商標)20及び0.1%プロクリン300(SUPELCO社製)を含む10mM PBS(pH7.2)(以下、PBSTという)300μL/wellで3回洗浄後、ELISA ULTRABLOCK(コスモバイオ社製,No.BFU033C)を原液のまま上記の抗原固定化プレートの各ウェルに300μLずつ添加し、室温にて2時間静置した。次に、プレートを逆さまにしてブロッキング剤を廃棄した後、真空乾燥し、乾燥剤を入れヒートシーラーにてアルミ包装後冷蔵保存した。
【0041】
4)−2 抗原固相化ELISA
(i)抗原を固相化したELISA用プレートに、BSA−PBSTにより段階希釈した各マウス抗血清、あるいは融合細胞の培養上清を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(ii)PBSTで3回洗浄後、HRP−Goat anti−Mouse Ig(DAKO社製、No.P0447)をBSA−PBSTにて5000〜10000倍希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii)PBSTで3回洗浄後、TMB基質液を各wellに50μLずつ添加した。室温にて10〜30分静置した後、1N硫酸を各wellに50μLずつ添加しHRP酵素反応を停止した。続いてマイクロプレートリーダー(Bio-Rad社製)にて450nm/650nmの吸光度を測定した。
上記のスクリーニングの結果、抗原と反応性の高いクローンとして8株(#84206,#84207,#84208,#84209,#84210,#84211,#84212,#84213)を選択した。
【0042】
5)ハイブリドーマのスクリーニング:Western Blotting
マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原(5μg/lane)及び分子量マーカー(Bio−Rad社製、Precision Plus Protein Standard All Blue、5μL/lane)を定法に従って、1.3mM 2−メルカプトエタノール存在下、SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動後、ドライ式ブロッティング装置を用いてPVDF膜に転写した。
転写後のPVDF膜を1%BSA、PBSTに室温で30分〜1時間浸漬し撹拌した。このブロッキング済み抗原転写PVDF膜を抗マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原陽性8クローンの5倍希釈培養上清又は精製抗体(1μg/mL又は0.1μg/mL)に室温で30分〜1時間浸漬し撹拌した。
次に、PBSTにて3回洗浄し、20%Blocking One,PBSTにて5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgヤギポリクローナル抗体に室温で30分〜1時間浸漬し撹拌した。
次に、PBSTにて3回洗浄し、50mMTris−HCl(pH7.6)50mLにDABタブレット1個と5%過酸化水素水50μLを添加した基質液に浸漬し、バンドが確認できたところで過剰の精製水で洗浄した。
上記8クローンについて、Western Blottingでそれぞれの抗体が反応したバンドを(表2)にまとめた。各抗体の反応性から下記の5つのグループに分類した。
【0043】
【表2】
【0044】
尚、参考のため、マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原(5μg/lane)及びタンパク質分子量マーカー「第一」・II(第一化学薬品株式会社製、5μL/lane)を定法に従って、1.3mM 2−メルカプトエタノール存在下、SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−20%)電気泳動した際の泳動像を
図1に示した。マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原の各タンパクバンドの分子量(KD)は、常法に従い、前記分子量マーカーの各タンパクのバンドの移動度と分子量を基に算出した。尚、タンパク質分子量マーカー「第一」・IIは表3の6種のタンパク質より構成されたものである。
【0045】
【表3】
【0046】
6)ハイブリドーマ産生抗体のクラス及びサブクラス判定ELISA
上記4)−1で作製したマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原固定化プレートに上記5)で分類した5つのグループから代表的なクローン(#84206,#84207,#84209,#84212,#84213)の培養上清を希釈液(20%Blocking Oneを含むPBST)にて5倍希釈し、各ウェルに50μLずつ添加した。室温にて2時間静置した後、PBSTにてプレートウォッシャーを用いて3回洗浄した。
検体との反応後、マウスモノクローナル抗体Typing Kitの各抗体を20%Blocking Oneを含む PBSTにて1000倍に希釈し、各ウェルに50μLずつ添加した。室温にて2時間静置した後、PBSTにてプレートウォッシャーを用いて3回洗浄した。
HRP標識ストレプトアビジンを20%Blocking Oneを含むPBSTにて1000倍に希釈し、各ウェルに50μLずつ添加した。室温にて30分静置した後、PBSTにてプレートウォッシャーを用いて洗浄した。
TMB基質液を各wellに50μLずつ添加した。室温にて10〜30分静置した後、1N硫酸を各wellに50μLずつ添加しHRP酵素反応をストップした。続いてマイクロプレートリーダー(Bio−Rad社製)にて450nm/650nmの吸光度を測定した。
その結果、5クローンの抗体のクラス及びサブクラスはそれぞれ#84206:IgG1(κ),#84207:IgG1(κ),#84209:IgG1(κ),#84212:IgG2a(κ),#84213:IgG1(κ)であることが判明した。
【0047】
7)サンドイッチELISAの実施方法
7)−1 抗マイコプラズマ・ニューモニエモノクローナル抗体固定化プレートの作製
上記3)で得たProtein A精製抗体(#84206,#84207,#84209,#84212,#84213)をPBSにて10μg/mLになるように希釈し、50μLずつマイクロプレートの各ウェルに添加し、冷蔵にて一昼夜(約16時間)静置した。50% Blocking One(ナカライテスク社製、No.03953−95)を含むPBSを前記プレートの各ウェルに300μLずつ添加し室温にて2時間静置した。次に、プレートを逆さまにしてブロッキング剤を廃棄した後、真空乾燥し、乾燥剤を入れヒートシーラーにてアルミ包装後冷蔵保存した。
【0048】
7)−2 サンドイッチELISA
マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原を20%Blocking Oneを含むPBSTにて10μg/mLから5倍ずつ段階希釈して各ウェルに50μLずつ添加した。室温にて2時間静置した後、PBSTにてプレートウォッシャーを用いて3回洗浄した。
ビオチン標識抗M.P.抗原モノクローナル抗体(クローン#84206,#84207,#84209,#84212,#84213)を20%Blocking Oneを含むPBSTにて1μg/mLに希釈して各ウェルに50μLずつ添加した。室温にて2時間静置した後、PBSTにてプレートウォッシャーを用いて3回洗浄した。
HRP標識ストレプトアビジンを20%Blocking Oneを含むPBSTにて1000倍に希釈し、各ウェルに50μLずつ添加した。室温にて30分静置した後、PBSTにてプレートウォッシャーを用いて3回洗浄した。
TMB基質液を各wellに50μLずつ添加した。室温にて10〜30分静置した後、1N硫酸を各wellに50μLずつ添加しHRP酵素反応をストップした。続いてマイクロプレートリーダー(Bio−Rad社製)にて450nm/650nmの吸光度を測定した。
5クローン(#84206,#84207,#84209,#84212,#84213)の抗体を固定化したプレートを用い、5クローンのビオチン標識抗体とのサンドイッチELISA測定系が成立するかどうかを検討したところ、
図2〜
図6に示すように、#84209と#84213の組合せのみサンドイッチELISA測定系が成立した。
【0049】
8)サンドイッチイムノクロマト測定の実施方法
イムノクロマトデバイスの作製
i)金コロイド標識抗マイコプラズマ・ニューモニエ抗体(コンジュゲート)の作製
本発明の2種類のマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原に対するモノクローナル抗体(クローン#84209,#84213)をそれぞれ80μg/mL(pH9.0)に調製し、1OD/mLの金コロイド(粒径50nm)溶液20mLに対し、各1mL添加し室温で10分間撹拌した。この混合液に10%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を1.5mL添加し、さらに5分間撹拌後、10℃にて、10,000rpmで45分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た。得られたコンジュゲートに対し、Conjugate Dilution Buffer(Scripps社製)を1.2mL添加しコンジュゲートを懸濁させた。各コンジュゲートの吸光度を531nm(使用した金コロイドの最大吸収波長)で測定した(吸光度の測定は、以下の試験においても同様に行った)。
【0050】
ii)コンジュゲートパッドの作製
上記i)で調製したコンジュゲートを、15OD/mLとなるように、カゼインバッファーと混合してコンジュゲート溶液を作製し、一定体積のグラスファイバー製パッド(Millipore社製、GFCP203000)に該パッド体積の1.2倍容量含浸させた。ドライオーブン内で70℃、30分間加温することにより乾燥させ、コンジュゲートパッドとした。
【0051】
iii)抗マイコプラズマ・ニューモニエ抗体固定化メンブレンの作製
マイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原に対するモノクローナル抗体(クローン84209,84213)及び抗マウスIgG抗体を2.5%スクロースを含む10mMPBSにて1mg/mLに希釈し、XYZ3000(BIODOT)を用いてメンブレン(Sartorius社製、UniSart−CN140)に塗布した(1μL/cm)。塗布後、該メンブレンはドライオーブン内で70℃、45分乾燥し、抗体固定化メンブレンとした。
【0052】
iv)サンプルパッドの作製
24mM NaCl、0.5%スクロース及び30mMEDTAを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.2)を、一定体積に切断したグラスファイバー製パッド(Lydall社)に該パッド体積の1.15倍容量滲みこませた。ドライオーブン内で70℃、45分乾燥し、サンプルパッドとした。
【0053】
v)テストストリップの作製
プラスチック製粘着シート(a)に上記のマイコプラズマ・ニューモニエ(M.P.)抽出抗原に対するモノクローナル抗体を固定化したメンブレン(b)を貼り、該メンブレンの抗M.P.抗体(c)を塗布部の展開上流部側に配置し、次いで、上記ii)で作製したコンジュゲートパッド(d)を配置装着し、さらにこのコンジュゲートパッドに重なるようにサンプルパッド(e)(Millipore社製)を配置装着し、反対側の端には吸収パッド(f)(Lydall社製)を配置装着した。また、最後に抗体固定化メンブレン及び吸収パッドを被覆するように上面にポリエステルフィルム(g)を配置装着しラミネートした。このように各構成要素を重ね合わせた構造物を5mm幅に切断してテストストリップを作製した。
図7にテストストリップの模式構成図を示した。
【0054】
〔実施例1−2及び比較例1−2〕
10mM PBS(pH7.2)、及びPA法陰性血漿のそれぞれにマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原を10μg/mLになるように添加して調製した被験液、及び1%BSA−PBSにマイコプラズマ・ニューモニエ抽出抗原を0.01、0.1、1、および10μg/mLになるようにそれぞれ添加して調製した被験液、各135μLに、上記8)v)に示した作製方法に従い作製した下記表4の4種類のテストストリップを挿入し、10分後、0.25〜4.0の数値をつけた発色見本(カラーチャート)と比較して発色強度を判定した。陰性対照としては抗原非添加について試験した。
【0055】
【表4】
【0056】
その結果を表5に示す。表5に示すように、サンドイッチイムノクロマト測定法では、サンドイッチELISA法と比較して驚くべき結果が得られた。すなわち、サンドイッチELISA法では同一抗体の組合せでは測定が成立しなかったのに対して、サンドイッチイムノクロマト測定法では「#84209コンジュゲート−#84209メンブレン」の同一抗体の組合せで測定が成立した。また、「#84209−#84213の組合せ」では、サンドイッチELISA法ではコンジュゲート側とメンブレン側の抗体を入れ替えても測定が成立したのに対し、サンドイッチイムノクロマト測定法では「#84209コンジュゲート−#84213メンブレンの組合せ」でのみ測定が成立した。
#084209産生ハイブリドーマ及び#084213産生ハイブリドーマは、出願人によって独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託手続がされ、受託番号FERM AP−21944、FERM AP−21945が付与されている。#084209を特にFERM AP−21944抗体、#084213を特にFERM AP−21945抗体ということがある。
【0057】
【表5】