【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は次に述べるような問題をもつものであった。
(1)特許文献1の技術は、溶体化を連続焼鈍炉、熱風ファン、オイルバス、温湯浴槽等のいずれかの熱処理炉によって多数のアルミニウム合金製単体品の加熱をいっぺんに行うものである。一般的に、熱処理炉はJIS規格によれば、熱処理炉の9箇所(炉の大きさにもよるが10m×6m×8mの炉)の温度を計測して、その温度差が±7.5℃以内(クラス3)にあるいは±5℃以内(クラス2)となるように温度分布制御されればよいことになっている。そのため特許文献1の技術は以下に述べるような問題を有するものであった。
【0005】
[a]大量のアルミニウム合金製単体品を多数本纏めて熱処理炉(9箇所の温度分布±5℃以内)で加熱溶体化して、溶体化後その多数本の全部を纏めて同時に冷却槽に漬け込んで急冷するものである。
このような特許文献1の技術にあっては、製品単品毎に昇温速度にバラツキが生じる、製品単品毎に溶体化保持温度に対し±5℃のバラツキを生じる。±5℃はJIS規格ではクラス2であり温度管理に多大なコストがかかる。また製品の温度は測定できず製品と少しはなれた位置を測定し熱伝導、輻射熱を利用し製品単体の温度を均等にしている。しかし製品単体の温度を測定していないため実際はもっと大きなバラツキが生じている可能性は大きい。冷却槽に纏めていっぺんに製品単体群を漬け込み急冷するために製品単体ごとに冷却速度にバラツキが生じるなど、製品単体の個々の品質にバラツキが生じ、個々の製品の品質の均一化が図れない、ある程度の品質の不均一を前提としており中には不良品が含まれる可能性が大きいという問題点を有するものであった。
【0006】
[b]溶解温度にできる限り近い温度に加熱しての溶体化処理する場合にあっては、熱処理炉での加熱は±5℃の範囲で行うことになる。よって、溶解温度に至近した温度まで加熱しその温度を一定時間保持して溶体化を行うという場合にあっては、場所によってはそれよりも著しい低温箇所と溶解温度よりも高温箇所が生じて、高温箇所では材料が溶解してしまう危険があるものである。
例えば、±5℃の熱処理炉にあっては、溶解温度582℃のアルミニウム合金素材の溶体化目標温度を578℃に設定することは、高温の時では578℃+5℃=583℃となり溶解温度582℃を超えてアルミニウム合金素材の溶解するものが生じることを意味し、また、溶体化目標温度を575℃±5℃であるというように溶体化目標温度の管理最高温度を溶解温度582℃にとどかない580℃とした場合にあっても、溶解温度582℃を超える箇所が生じる危険が大きくその箇所では製品の溶解=不良品が生じる危険が大きいものである。よって、そのような不良品が生じないようにするために従来技術にあっては、溶体化目標温度をさらに下げた570℃±5℃あたりにせざるを得ない制約があるものであった。
以上の述べたことから明らかであるように、溶体化を熱処理炉で行う従来技術にあっては、溶解温度に至近した温度(溶解至近温度)での溶体化処理ができないという欠点を有するものであった。
【0007】
[c]また、熱処理炉は大量のファスナーを纏めて熱処理するものであるので、多品種少量生産には効率的に対応することができないという問題を有するものであった。
【0008】
[d]また、熱処理炉は例えば200KVAというような加熱効率の悪い大電力消費であり経済性と環境性に問題があるものである。
【0009】
(2)特許文献2において、溶液焼きなまし(おそらく溶体化?のことではないかと推察する)を「電磁誘導焼きなまし」とすることについての記載は、段落[00025]の「また、溶液焼きなまし工程の代わりにねじを電磁誘導により加熱することが好ましい。これにより、溶液焼きなまし工程に必要な時間を有利な方法で減少することができる。」だけである。よって、その条件が電磁誘導焼きなまし温度が460℃〜520℃であること以外は、全く記載も示唆も具体的な記述はなく皆目わからないものである。
【0010】
(3)特許文献3の技術は、復元時間は7〜120秒と極めて短く、復元時の熱処理方法もオイルバス等の浴槽型の熱処理炉に限定されてしまうものであり、また、たとえ製品サイズに見合ったオイルバスを用意できた場合でも、M10ボルト材などの厚肉材では昇温速度が遅く、復元時間は7〜120秒というような短時間で適正な復元処理を完全に行うことは、不可能であるという問題を有するものである。
【0011】
本発明は以上のような従来技術の欠点に鑑み、アルミニウム合金製品の個々の高品質での均一化を実現し、多品種少量生産を効率的に実現し、溶解至近温度での溶体化処理を可能する
高強度のアルミニウム合金製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は次に述べるような構成としている。
【0013】
<請求項1記載の発明>
2000系、6000系、7000系の展伸材用熱処理合金
のいずれか一種からなる
アルミニウム合金製の高強度材のボルト、
アルミニウム合金製の高強度材のタッピングネジ、
アルミニウム合金製の高強度材のナット、
アルミニウム合金製の高強度材のリベット、
アルミニウム合金製の高強度材の機械部品、
アルミニウム合金製の高強度材の自動車部品、
またはアルミニウム合金製の高強度材の航空機部品であるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる前記アルミニウム合金製単体素材に対応した形態の誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0014】
<請求項2記載の発明>
6000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材からアルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)焼きなまし状態にある前記アルミニウム合金製単体素材を圧造してボルトヘッドを有する半製品を形成する半製品形成工程と、
(b)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記半製品を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(c)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記半製品の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(d)この溶体化工程直後に前記半製品を急冷する急冷工程と、
(e)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
(f)前記半製品にねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
を備えることを特徴とする
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0015】
<請求項3記載の発明>
7000系あるいは2000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)ボルトヘッドおよびねじ形成シャフト部分を切削加工により形成して半製品を形成する半製品形成工程と、
(e)前記半製品のねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
(f)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0016】
<請求項4記載の発明>
溶体化目標温度が溶解温度より−6℃以内の溶解至近温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0017】
<請求項5記載の発明>
溶体化目標温度が±1℃の範囲で制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0018】
<請求項6記載の発明>
前記単体素材セット工程から時効処理工程におけるアルミニウム合金製単体素材に対する各処理が、全て自動的に所定の時間の流れに基づいて行われる工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法の製造方法である。
【0019】
<請求項7記載の発明>
溶体化工程が、
昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱を行い該溶体化目標温度に達したら高周波電源をOFFにする第1加熱段階と、
前記溶体化目標温度より−1℃となったら出力を落とした状態で高周波電源をONにして、該溶体化目標温度まで放熱に打ち勝つ出力でゆっくり昇温させてゆく第2加熱段階と、
前記第2加熱段階において前記溶体化目標温度に達したら、微量の加熱状態でゆっくり冷却してゆく第3加熱段階とからなり、
前記溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持するための処理は、前記第2加熱段階と前記第3加熱段階の処理を繰り返すことによって制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0020】
<請求項8記載の発明>
溶体化工程での昇温速度20℃/sec以上の昇温加熱は電源電圧を第1電圧で行い、溶体化目標温度への到達後の温度計の検出結果に基づいて、前記第1電圧よりも低い第2電圧と該第2電圧よりも高く該第1電圧よりも低い第3電圧の間で電源電圧を自動的に制御部によって切り替えることによって、前記溶体化目標温度到達後の温度を±2℃で5sec〜180secに保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0021】
<請求項9記載の発明>
アルミニウム合金製単体素材が7000系であり、時効処理工程において、120℃で24hrの人工時効処理を行い、該人工時効処理の直後に300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える第2の高周波誘導加熱装置によって、完成品、半製品を含むアルミニウム合金製単体素材を昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度に加熱し且つ該復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を行い、この復元処理工程の直後に115〜125℃の再時効処理工程を行うことを特徴とする請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
<請求項1記載の発明の効果>
2000系、6000系、7000系の展伸材用熱処理合金
のいずれか一種からなる
アルミニウム合金製の高強度材のボルト、
アルミニウム合金製の高強度材のタッピングネジ、
アルミニウム合金製の高強度材のナット、
アルミニウム合金製の高強度材のリベット、
アルミニウム合金製の高強度材の機械部品、
アルミニウム合金製の高強度材の自動車部品、
またはアルミニウム合金製の高強度材の航空機部品であるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる前記アルミニウム合金製単体素材に対応した形態の誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、
(1)300KHz〜2MHzの高周波によりアルミニウム合金製単体素材の一つ一つを、20℃/sec以上の昇温速度でかつ精密な温度制御線でコントロールした昇温コントロールができ、且つ、±2℃という狭い温度範囲での溶体化保持温度にコントロールされるものである。すなわち、一つ一つのアルミニウム合金製単体素材の結晶粒度の成長が、同一の急速加熱および同一の溶体化目標温度保持の精密温度制御(制御部によって高周波電源の電圧を自在にコントロールすることによって、アルミニウム合金製単体素材に誘起される渦電流を高精度にコントロールすることができる)という同一条件によって個々になされるものであるから、アルミニウム合金製単体素材の一つ一つが最も高い機械的性質のものにできるという効果を奏する。
【0023】
これは、本願発明は誘導加熱によってアルミニウム合金製単体素材そのものに渦電流が流れ該アルミニウム合金製単体素材自身が発熱する直接加熱であるので、誘導加熱コイルに流れる電流を切るとアルミニウム合金製単体素材に流れる渦電流も切れてそれ以上の発熱昇温は完全に止まり室温での加熱では温度降下が起こるものであり、あるいは電源電圧の電圧降下によってそれ以上の温度の上昇を止め緩やかな温度下降状態にできるなどの細かい温度制御が可能なものである。さらに、2MHzという高周波の表皮効果による表面から浅い加熱であっても、アルミニウム合金は熱伝導率が極めて高いので殆ど瞬時といってよい早さでアルミニウム合金製単体素材の全体が同一の加熱温度になるものである。これらによって、本願発明の誘導加熱によるアルミニウム合金製単体素材そのものの直接加熱では、高周波電源のON・OFF、電圧降下と電圧上昇、これらの組み合わせ制御によってアルミニウム合金製単体素材の加熱温度を俊敏高精度に制御することができることによるものである。
【0024】
アルミニウム合金の溶体化処理においては、溶体化目標温度に加熱するための加熱時間が長ければ長いほど(昇温速度が低ければ低いほど)結晶粒が成長してしまい機械的性質が低下する。しかるに、本願発明では20℃以上である実施例1の50℃/secの昇温速度で加熱した場合には、微細な結晶粒が得られ市販材より機械的性質が10%以上(6061材の場合は市販材より30%)向上させることができた。
【0025】
これは、アルミニウム合金の溶体化処理は温度管理が大切である。特に溶体化目標温度までの加熱に時間がかかる(昇温速度が遅い)と結晶粒が成長して大きくなり機械的性質が低下してしまうので、溶体化目標温度までの加熱時間を短時間(早い昇温速度)に行うことが重要である。この点で、加熱炉を使用する従来技術では一気に短時間で溶体化目標温度までアルミニウム合金単体素材を加熱することが不可能なものであり、結晶粒が大きく成長した機械的性質の劣る製品になってしまうものである。この点で本願発明では20℃以上の昇温速度である実施例1の50℃の昇温速度で溶体化目標温度までの到達時間11secによる短時間加熱を一つ一つのアルミニウム合金単体素材について、厳格且つ高精度に管理実現しているので、一つ一つのアルミニウム合金単体素材について同質の微細な結晶粒による均一な高い機械的性質を実現したことによるものである。
【0026】
(2)また、300KHz〜2MHzの高周波によりアルミニウム合金製単体素材の一つ一つを、20℃/sec以上の精密にコントロールされた昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する誘導加熱によるものであるので、アルミニウム合金製単体素材の例えば溶解温度よりも2℃低い至近温度(溶解温度で確実に溶解する場合や機械的性質が落ちる場合はそれよりも1℃低い温度から2℃低い温度=3℃低い温度、溶解温度で確実に溶解する場合や機械的性質が落ちる場合はそれよりも2℃低い温度から2℃低い温度=4℃低い温度とするなど、製品に溶解ないし溶解温度至近温度によって悪影響を受けない温度)である溶解至近温度を溶体化目標温度に設定し、アルミニウム合金製単体素材の一つ一つをその溶解至近温度で溶体化することを可能にするという効果を奏する。
【0027】
すなわち、製造されたアルミニウム合金製の一つ一つがバラツキのない均一な溶解至近温度によって溶体化されるものであるので、アルミニウム合金製の一つ一つの品質がバラツキのない均一な品質の製品の提供を可能とするものである。
また、溶体化保持時間は溶解温度に近づけば近づくほど短縮できるので、生産性を向上させることを可能とするものである。
【0028】
(3)本発明の製造方法によって製造されるファスナー製品は、その全てが一つ一つ、例えば実施例1のように昇温速度50℃/secの昇温速度で急速加熱(M10のボルト用のアルミニウム合金製単体素材では530℃まで11sec)され、且つ、溶体化目標温度を±3℃の範囲で例えば60sec保持する溶体化が行われ、溶体化完了時間となったらその直後に急冷が行われるものである。すなわち、製造される全てのファスナー製品が最も高品質となる全く同じ条件で製造されるものであるので、個々の品質が高品質であり、且つ、その個々の品質がバラツキのない均一な品質(不良品がでない)のものを実現するという効果を奏する。
【0029】
(4)誘導加熱コイルによって一つ一つのアルミニウム合金製単体素材を誘導加熱で溶体化するものであるので、誘導加熱コイルを製品に対応した形態のものに交換することによって、他品種少量生産に素早く効率的かつ低コストで対応できるという効果を奏する。
【0030】
(5)高周波電源電力は1KW〜50KWで1本ずつの高効率加熱であるので、200KVAで加熱効率の悪い従来の加熱炉に比べて1/10以下の省エネを実現するものであり、経費の低減および二酸化炭素の排出の軽減等を実現するものである。
太さが0.5mm程度〜1mm程度のボルトなどのファスナーとするアルミニウム合金製品単体の加熱は、2MHzの高周波での導体の表面浅い部位を電流が流れる表皮効果によって効率的に加熱することが可能であるので1KW〜数KW程度の電力で可能である。
【0031】
(6)例えば昇温速度50℃/secの昇温速度で急速加熱(M10のボルト用のアルミニウム合金製単体素材では530℃まで11sec)することにより、Si粒子などの結晶が微細状態(成長が少ない)での固溶化を昇温加熱+保持時間=70sec程度の短時間で実現するとともに、結晶が微細であるため強度が大きく向上した例えばファスナー製品を実現するという効果を奏する。
【0032】
具体的には下記のごとく、M10ボルトの引張強さ比較試験では現状の市販品に比べて、6061合金で42%、7075合金で20%の引張強さの向上をもたらすという著しい効果を奏している。
6061合金においては、市販品(T6済み材)295MPa、本発明製造419MPa、その差124MPa、向上率42%。
7075合金においては、市販品(T6済み材)540MPa、本発明製造684MPa、その差144MPaMPa、向上率20%。
【0033】
<請求項2記載の発明の効果>
6000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材からアルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)焼きなまし状態にある前記アルミニウム合金製単体素材を圧造してボルトヘッドを有する半製品を形成する半製品形成工程と、
(b)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記半製品を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(c)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記半製品の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(d)この溶体化工程直後に前記半製品を急冷する急冷工程と、
(e)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
(f)前記半製品にねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
を備えることを特徴とする
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるで、6000系アルミニウム合金製品ボルトにおいて請求項1と同様な効果を奏する。
【0034】
<請求項3記載の発明の効果>
7000系あるいは2000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)ボルトヘッドおよびねじ形成シャフト部分を切削加工により形成して半製品を形成する半製品形成工程と、
(e)前記半製品のねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
(f)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、7000系あるいは2000系アルミニウム合金製品ボルトにおいて請求項1と同様な効果を奏する。
【0035】
<請求項4記載の発明の効果>
溶体化目標温度が溶解温度より−6℃以内の溶解至近温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
すなわち、溶体化目標温度を溶解至近温度という溶解温度に至近した温度とすることにより、溶体化保持時間を短縮することができるので、生産性をあげることができるという効果を奏する。
【0036】
<請求項5記載の発明の効果>
溶体化目標温度が±1℃の範囲で制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
すなわち、溶体化目標温度が±1℃という狭い温度範囲で一つ一つのアルミニウム合金製品の溶体化が行われるので、より品質にバラツキの少ない均一な品質のアルミニウム合金製品を実現するという効果を奏する。
【0037】
<請求項6記載の発明の効果>
前記単体素材セット工程から時効処理工程におけるアルミニウム合金製単体素材に対する各処理が、全て自動的に所定の時間の流れに基づいて行われる工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
【0038】
すなわち、溶体化処理〜時効処理までの各処理が所定の時間の流れで行われるので、一つ一つのアルミニウム合金製単体素材が時効完了まで高精度に管理された時間と温度で処理されることになり、よって、より高品質でより均一な品質の製品群を実現するという効果を奏する。
【0039】
<請求項7記載の発明の効果>
溶体化工程が、
昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱を行い該溶体化目標温度に達したら高周波電源をOFFにする第1加熱段階と、
前記溶体化目標温度より−1℃となったら出力を落とした状態で高周波電源をONにして、該溶体化目標温度まで放熱に打ち勝つ出力でゆっくり昇温させてゆく第2加熱段階と、
前記第2加熱段階において前記溶体化目標温度に達したら、微量の加熱状態でゆっくり冷却してゆく第3加熱段階とからなり、
前記溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持するための処理は、前記第2加熱段階と前記第3加熱段階の処理を繰り返すことによって制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であので、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏する。
【0040】
<請求項8記載の発明の効果>
溶体化工程での昇温速度20℃/sec以上の昇温加熱は電源電圧を第1電圧で行い、溶体化目標温度への到達後の温度計の検出結果に基づいて、前記第1電圧よりも低い第2電圧と該第2電圧よりも高く該第1電圧よりも低い第3電圧の間で電源電圧を自動的に制御部によって切り替えることによって、前記溶体化目標温度到達後の温度を±2℃で5sec〜180secに保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏する。
【0041】
<請求項9記載の発明の効果>
アルミニウム合金製単体素材が7000系であり、時効処理工程において、120℃で24hrの人工時効処理を行い、該人工時効処理の直後に300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える第2の高周波誘導加熱装置によって、完成品、半製品を含むアルミニウム合金製単体素材を昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度に加熱し且つ該復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を行い、この復元処理工程の直後に115〜125℃の再時効処理工程を行うことを特徴とする請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の
高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
【0042】
すなわち、昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度への加熱を高精度で実現し、かつ、復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を正確に実現してなるものであるので、結晶粒径が45μm以下でアスペクト比(結晶粒の縦横比、以下同じ)が4以下であるミクロ組織を有する耐食性に優れ高強度7000系のアルミニウム合金製品を実現するという効果を奏する。