特許第5726433号(P5726433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726433
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】高強度のアルミニウム合金製品
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/043 20060101AFI20150514BHJP
   C22F 1/047 20060101ALI20150514BHJP
   C22F 1/053 20060101ALI20150514BHJP
   C22F 1/057 20060101ALI20150514BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20150514BHJP
【FI】
   C22F1/043
   C22F1/047
   C22F1/053
   C22F1/057
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 631Z
   !C22F1/00 691A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 640A
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2010-92635(P2010-92635)
(22)【出願日】2010年4月13日
(65)【公開番号】特開2011-219838(P2011-219838A)
(43)【公開日】2011年11月4日
【審査請求日】2013年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】510103989
【氏名又は名称】齊藤 基樹
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 基樹
(72)【発明者】
【氏名】竹田 文彦
(72)【発明者】
【氏名】熊木 宏
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−172359(JP,A)
【文献】 特開2006−057123(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053897(WO,A1)
【文献】 特開2005−152944(JP,A)
【文献】 特開2008−112620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/04−1/057
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2000系、6000系、7000系の展伸材用熱処理合金のいずれか一種からなるアルミニウム合金製の高強度材のボルト、アルミニウム合金製の高強度材のタッピングネジ、アルミニウム合金製の高強度材のナット、アルミニウム合金製の高強度材のリベット、アルミニウム合金製の高強度材の機械部品、アルミニウム合金製の高強度材の自動車部品、またはアルミニウム合金製の高強度材の航空機部品であるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる前記アルミニウム合金製単体素材に対応した形態の誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項2】
6000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材からアルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)焼きなまし状態にある前記アルミニウム合金製単体素材を圧造してボルトヘッドを有する半製品を形成する半製品形成工程と、
(b)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記半製品を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(c)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記半製品の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(d)この溶体化工程直後に前記半製品を急冷する急冷工程と、
(e)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
(f)前記半製品にねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項3】
7000系あるいは2000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)ボルトヘッドおよびねじ形成シャフト部分を切削加工により形成して半製品を形成する半製品形成工程と、
(e)前記半製品のねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
(f)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項4】
溶体化目標温度が溶解温度より−6℃以内の溶解至近温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項5】
溶体化目標温度が±1℃の範囲で制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項6】
前記単体素材セット工程から時効処理工程におけるアルミニウム合金製単体素材に対する各処理が、全て自動的に所定の時間の流れに基づいて行われる工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項7】
溶体化工程が、
昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱を行い該溶体化目標温度に達したら高周波電源をOFFにする第1加熱段階と、
前記溶体化目標温度より−1℃となったら出力を落とした状態で高周波電源をONにして、該溶体化目標温度まで放熱に打ち勝つ出力でゆっくり昇温させてゆく第2加熱段階と、
前記第2加熱段階において前記溶体化目標温度に達したら、微量の加熱状態でゆっくり冷却してゆく第3加熱段階とからなり、
前記溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持するための処理は、前記第2加熱段階と前記第3加熱段階の処理を繰り返すことによって制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項8】
溶体化工程での昇温速度20℃/sec以上の昇温加熱は電源電圧を第1電圧で行い、溶体化目標温度への到達後の温度計の検出結果に基づいて、前記第1電圧よりも低い第2電圧と該第2電圧よりも高く該第1電圧よりも低い第3電圧の間で電源電圧を自動的に制御部によって切り替えることによって、前記溶体化目標温度到達後の温度を±2℃で5sec〜180secに保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項9】
アルミニウム合金製単体素材が7000系であり、時効処理工程において、120℃で24hrの人工時効処理を行い、該人工時効処理の直後に300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える第2の高周波誘導加熱装置によって、完成品、半製品を含むアルミニウム合金製単体素材を昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度に加熱し且つ該復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を行い、この復元処理工程の直後に115〜125℃の再時効処理工程を行うことを特徴とする請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2000系合金、6000系合金、7000系合金に代表される展伸材用熱処理合金からなるボルト、ナット、リベット、機械部品、自動車部品、航空機部品などの高強度のアルミニウム合金製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアルミニウム合金製品の製造方法として以下のものが知られている。
(1)空気炉(バッチ炉)、連続焼鈍炉、熱風ファン、オイルバス、温湯浴槽等のいずれかの熱処理炉を使用して、溶体化処理及び焼入し、100〜145℃で5〜50hrの時効処理を行う、アルミボルトなどの高強度熱処理型7000系アルミニウム合金製単体品を得る製造方法が知られている。(例えば特許文献1)
(2)ボルトヘッドをプレス加工し、溶液焼きなまし(460℃〜520℃)あるいは電磁誘導焼きなまし(460℃〜520℃)を行い、水中で焼き入れ(急冷)し、人工時効硬化し、転造によりねじ山を形成するアルミニウム合金製ボルトの製造方法が知られている。(例えば特許文献2 [請求項11]、段落[0025])
(3)溶体化処理及び焼入れを行った後に、120℃で24hr(T6調質)の時効処理を行い、200〜260℃で7〜120秒の復元処理をオイルバス等の浴槽型の熱処理炉にて行い、115〜125℃(時間は任意)の再時効処理を行う、7000系合金の高強度で且つ高耐食性を狙った熱処理方法が知られている。(例えば特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3705320号公報([請求項1]、段落[0009]、段落[0028])
【特許文献2】特表2002-524691号公報([請求項11]、段落[0025])
【特許文献3】USP3856584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は次に述べるような問題をもつものであった。
(1)特許文献1の技術は、溶体化を連続焼鈍炉、熱風ファン、オイルバス、温湯浴槽等のいずれかの熱処理炉によって多数のアルミニウム合金製単体品の加熱をいっぺんに行うものである。一般的に、熱処理炉はJIS規格によれば、熱処理炉の9箇所(炉の大きさにもよるが10m×6m×8mの炉)の温度を計測して、その温度差が±7.5℃以内(クラス3)にあるいは±5℃以内(クラス2)となるように温度分布制御されればよいことになっている。そのため特許文献1の技術は以下に述べるような問題を有するものであった。
【0005】
[a]大量のアルミニウム合金製単体品を多数本纏めて熱処理炉(9箇所の温度分布±5℃以内)で加熱溶体化して、溶体化後その多数本の全部を纏めて同時に冷却槽に漬け込んで急冷するものである。
このような特許文献1の技術にあっては、製品単品毎に昇温速度にバラツキが生じる、製品単品毎に溶体化保持温度に対し±5℃のバラツキを生じる。±5℃はJIS規格ではクラス2であり温度管理に多大なコストがかかる。また製品の温度は測定できず製品と少しはなれた位置を測定し熱伝導、輻射熱を利用し製品単体の温度を均等にしている。しかし製品単体の温度を測定していないため実際はもっと大きなバラツキが生じている可能性は大きい。冷却槽に纏めていっぺんに製品単体群を漬け込み急冷するために製品単体ごとに冷却速度にバラツキが生じるなど、製品単体の個々の品質にバラツキが生じ、個々の製品の品質の均一化が図れない、ある程度の品質の不均一を前提としており中には不良品が含まれる可能性が大きいという問題点を有するものであった。
【0006】
[b]溶解温度にできる限り近い温度に加熱しての溶体化処理する場合にあっては、熱処理炉での加熱は±5℃の範囲で行うことになる。よって、溶解温度に至近した温度まで加熱しその温度を一定時間保持して溶体化を行うという場合にあっては、場所によってはそれよりも著しい低温箇所と溶解温度よりも高温箇所が生じて、高温箇所では材料が溶解してしまう危険があるものである。
例えば、±5℃の熱処理炉にあっては、溶解温度582℃のアルミニウム合金素材の溶体化目標温度を578℃に設定することは、高温の時では578℃+5℃=583℃となり溶解温度582℃を超えてアルミニウム合金素材の溶解するものが生じることを意味し、また、溶体化目標温度を575℃±5℃であるというように溶体化目標温度の管理最高温度を溶解温度582℃にとどかない580℃とした場合にあっても、溶解温度582℃を超える箇所が生じる危険が大きくその箇所では製品の溶解=不良品が生じる危険が大きいものである。よって、そのような不良品が生じないようにするために従来技術にあっては、溶体化目標温度をさらに下げた570℃±5℃あたりにせざるを得ない制約があるものであった。
以上の述べたことから明らかであるように、溶体化を熱処理炉で行う従来技術にあっては、溶解温度に至近した温度(溶解至近温度)での溶体化処理ができないという欠点を有するものであった。
【0007】
[c]また、熱処理炉は大量のファスナーを纏めて熱処理するものであるので、多品種少量生産には効率的に対応することができないという問題を有するものであった。
【0008】
[d]また、熱処理炉は例えば200KVAというような加熱効率の悪い大電力消費であり経済性と環境性に問題があるものである。
【0009】
(2)特許文献2において、溶液焼きなまし(おそらく溶体化?のことではないかと推察する)を「電磁誘導焼きなまし」とすることについての記載は、段落[00025]の「また、溶液焼きなまし工程の代わりにねじを電磁誘導により加熱することが好ましい。これにより、溶液焼きなまし工程に必要な時間を有利な方法で減少することができる。」だけである。よって、その条件が電磁誘導焼きなまし温度が460℃〜520℃であること以外は、全く記載も示唆も具体的な記述はなく皆目わからないものである。
【0010】
(3)特許文献3の技術は、復元時間は7〜120秒と極めて短く、復元時の熱処理方法もオイルバス等の浴槽型の熱処理炉に限定されてしまうものであり、また、たとえ製品サイズに見合ったオイルバスを用意できた場合でも、M10ボルト材などの厚肉材では昇温速度が遅く、復元時間は7〜120秒というような短時間で適正な復元処理を完全に行うことは、不可能であるという問題を有するものである。
【0011】
本発明は以上のような従来技術の欠点に鑑み、アルミニウム合金製品の個々の高品質での均一化を実現し、多品種少量生産を効率的に実現し、溶解至近温度での溶体化処理を可能する高強度のアルミニウム合金製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は次に述べるような構成としている。
【0013】
<請求項1記載の発明>
2000系、6000系、7000系の展伸材用熱処理合金のいずれか一種からなるアルミニウム合金製の高強度材のボルト、アルミニウム合金製の高強度材のタッピングネジ、アルミニウム合金製の高強度材のナット、アルミニウム合金製の高強度材のリベット、アルミニウム合金製の高強度材の機械部品、アルミニウム合金製の高強度材の自動車部品、またはアルミニウム合金製の高強度材の航空機部品であるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる前記アルミニウム合金製単体素材に対応した形態の誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0014】
<請求項2記載の発明>
6000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材からアルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)焼きなまし状態にある前記アルミニウム合金製単体素材を圧造してボルトヘッドを有する半製品を形成する半製品形成工程と、
(b)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記半製品を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(c)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記半製品の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(d)この溶体化工程直後に前記半製品を急冷する急冷工程と、
(e)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
(f)前記半製品にねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0015】
<請求項3記載の発明>
7000系あるいは2000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)ボルトヘッドおよびねじ形成シャフト部分を切削加工により形成して半製品を形成する半製品形成工程と、
(e)前記半製品のねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
(f)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0016】
<請求項4記載の発明>
溶体化目標温度が溶解温度より−6℃以内の溶解至近温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0017】
<請求項5記載の発明>
溶体化目標温度が±1℃の範囲で制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0018】
<請求項6記載の発明>
前記単体素材セット工程から時効処理工程におけるアルミニウム合金製単体素材に対する各処理が、全て自動的に所定の時間の流れに基づいて行われる工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法の製造方法である。
【0019】
<請求項7記載の発明>
溶体化工程が、
昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱を行い該溶体化目標温度に達したら高周波電源をOFFにする第1加熱段階と、
前記溶体化目標温度より−1℃となったら出力を落とした状態で高周波電源をONにして、該溶体化目標温度まで放熱に打ち勝つ出力でゆっくり昇温させてゆく第2加熱段階と、
前記第2加熱段階において前記溶体化目標温度に達したら、微量の加熱状態でゆっくり冷却してゆく第3加熱段階とからなり、
前記溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持するための処理は、前記第2加熱段階と前記第3加熱段階の処理を繰り返すことによって制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0020】
<請求項8記載の発明>
溶体化工程での昇温速度20℃/sec以上の昇温加熱は電源電圧を第1電圧で行い、溶体化目標温度への到達後の温度計の検出結果に基づいて、前記第1電圧よりも低い第2電圧と該第2電圧よりも高く該第1電圧よりも低い第3電圧の間で電源電圧を自動的に制御部によって切り替えることによって、前記溶体化目標温度到達後の温度を±2℃で5sec〜180secに保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【0021】
<請求項9記載の発明>
アルミニウム合金製単体素材が7000系であり、時効処理工程において、120℃で24hrの人工時効処理を行い、該人工時効処理の直後に300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える第2の高周波誘導加熱装置によって、完成品、半製品を含むアルミニウム合金製単体素材を昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度に加熱し且つ該復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を行い、この復元処理工程の直後に115〜125℃の再時効処理工程を行うことを特徴とする請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
<請求項1記載の発明の効果>
2000系、6000系、7000系の展伸材用熱処理合金のいずれか一種からなるアルミニウム合金製の高強度材のボルト、アルミニウム合金製の高強度材のタッピングネジ、アルミニウム合金製の高強度材のナット、アルミニウム合金製の高強度材のリベット、アルミニウム合金製の高強度材の機械部品、アルミニウム合金製の高強度材の自動車部品、またはアルミニウム合金製の高強度材の航空機部品であるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる前記アルミニウム合金製単体素材に対応した形態の誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、次に述べるような効果を奏する。
すなわち、
(1)300KHz〜2MHzの高周波によりアルミニウム合金製単体素材の一つ一つを、20℃/sec以上の昇温速度でかつ精密な温度制御線でコントロールした昇温コントロールができ、且つ、±2℃という狭い温度範囲での溶体化保持温度にコントロールされるものである。すなわち、一つ一つのアルミニウム合金製単体素材の結晶粒度の成長が、同一の急速加熱および同一の溶体化目標温度保持の精密温度制御(制御部によって高周波電源の電圧を自在にコントロールすることによって、アルミニウム合金製単体素材に誘起される渦電流を高精度にコントロールすることができる)という同一条件によって個々になされるものであるから、アルミニウム合金製単体素材の一つ一つが最も高い機械的性質のものにできるという効果を奏する。
【0023】
これは、本願発明は誘導加熱によってアルミニウム合金製単体素材そのものに渦電流が流れ該アルミニウム合金製単体素材自身が発熱する直接加熱であるので、誘導加熱コイルに流れる電流を切るとアルミニウム合金製単体素材に流れる渦電流も切れてそれ以上の発熱昇温は完全に止まり室温での加熱では温度降下が起こるものであり、あるいは電源電圧の電圧降下によってそれ以上の温度の上昇を止め緩やかな温度下降状態にできるなどの細かい温度制御が可能なものである。さらに、2MHzという高周波の表皮効果による表面から浅い加熱であっても、アルミニウム合金は熱伝導率が極めて高いので殆ど瞬時といってよい早さでアルミニウム合金製単体素材の全体が同一の加熱温度になるものである。これらによって、本願発明の誘導加熱によるアルミニウム合金製単体素材そのものの直接加熱では、高周波電源のON・OFF、電圧降下と電圧上昇、これらの組み合わせ制御によってアルミニウム合金製単体素材の加熱温度を俊敏高精度に制御することができることによるものである。
【0024】
アルミニウム合金の溶体化処理においては、溶体化目標温度に加熱するための加熱時間が長ければ長いほど(昇温速度が低ければ低いほど)結晶粒が成長してしまい機械的性質が低下する。しかるに、本願発明では20℃以上である実施例1の50℃/secの昇温速度で加熱した場合には、微細な結晶粒が得られ市販材より機械的性質が10%以上(6061材の場合は市販材より30%)向上させることができた。
【0025】
これは、アルミニウム合金の溶体化処理は温度管理が大切である。特に溶体化目標温度までの加熱に時間がかかる(昇温速度が遅い)と結晶粒が成長して大きくなり機械的性質が低下してしまうので、溶体化目標温度までの加熱時間を短時間(早い昇温速度)に行うことが重要である。この点で、加熱炉を使用する従来技術では一気に短時間で溶体化目標温度までアルミニウム合金単体素材を加熱することが不可能なものであり、結晶粒が大きく成長した機械的性質の劣る製品になってしまうものである。この点で本願発明では20℃以上の昇温速度である実施例1の50℃の昇温速度で溶体化目標温度までの到達時間11secによる短時間加熱を一つ一つのアルミニウム合金単体素材について、厳格且つ高精度に管理実現しているので、一つ一つのアルミニウム合金単体素材について同質の微細な結晶粒による均一な高い機械的性質を実現したことによるものである。
【0026】
(2)また、300KHz〜2MHzの高周波によりアルミニウム合金製単体素材の一つ一つを、20℃/sec以上の精密にコントロールされた昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する誘導加熱によるものであるので、アルミニウム合金製単体素材の例えば溶解温度よりも2℃低い至近温度(溶解温度で確実に溶解する場合や機械的性質が落ちる場合はそれよりも1℃低い温度から2℃低い温度=3℃低い温度、溶解温度で確実に溶解する場合や機械的性質が落ちる場合はそれよりも2℃低い温度から2℃低い温度=4℃低い温度とするなど、製品に溶解ないし溶解温度至近温度によって悪影響を受けない温度)である溶解至近温度を溶体化目標温度に設定し、アルミニウム合金製単体素材の一つ一つをその溶解至近温度で溶体化することを可能にするという効果を奏する。
【0027】
すなわち、製造されたアルミニウム合金製の一つ一つがバラツキのない均一な溶解至近温度によって溶体化されるものであるので、アルミニウム合金製の一つ一つの品質がバラツキのない均一な品質の製品の提供を可能とするものである。
また、溶体化保持時間は溶解温度に近づけば近づくほど短縮できるので、生産性を向上させることを可能とするものである。
【0028】
(3)本発明の製造方法によって製造されるファスナー製品は、その全てが一つ一つ、例えば実施例1のように昇温速度50℃/secの昇温速度で急速加熱(M10のボルト用のアルミニウム合金製単体素材では530℃まで11sec)され、且つ、溶体化目標温度を±3℃の範囲で例えば60sec保持する溶体化が行われ、溶体化完了時間となったらその直後に急冷が行われるものである。すなわち、製造される全てのファスナー製品が最も高品質となる全く同じ条件で製造されるものであるので、個々の品質が高品質であり、且つ、その個々の品質がバラツキのない均一な品質(不良品がでない)のものを実現するという効果を奏する。
【0029】
(4)誘導加熱コイルによって一つ一つのアルミニウム合金製単体素材を誘導加熱で溶体化するものであるので、誘導加熱コイルを製品に対応した形態のものに交換することによって、他品種少量生産に素早く効率的かつ低コストで対応できるという効果を奏する。
【0030】
(5)高周波電源電力は1KW〜50KWで1本ずつの高効率加熱であるので、200KVAで加熱効率の悪い従来の加熱炉に比べて1/10以下の省エネを実現するものであり、経費の低減および二酸化炭素の排出の軽減等を実現するものである。
太さが0.5mm程度〜1mm程度のボルトなどのファスナーとするアルミニウム合金製品単体の加熱は、2MHzの高周波での導体の表面浅い部位を電流が流れる表皮効果によって効率的に加熱することが可能であるので1KW〜数KW程度の電力で可能である。
【0031】
(6)例えば昇温速度50℃/secの昇温速度で急速加熱(M10のボルト用のアルミニウム合金製単体素材では530℃まで11sec)することにより、Si粒子などの結晶が微細状態(成長が少ない)での固溶化を昇温加熱+保持時間=70sec程度の短時間で実現するとともに、結晶が微細であるため強度が大きく向上した例えばファスナー製品を実現するという効果を奏する。
【0032】
具体的には下記のごとく、M10ボルトの引張強さ比較試験では現状の市販品に比べて、6061合金で42%、7075合金で20%の引張強さの向上をもたらすという著しい効果を奏している。
6061合金においては、市販品(T6済み材)295MPa、本発明製造419MPa、その差124MPa、向上率42%。
7075合金においては、市販品(T6済み材)540MPa、本発明製造684MPa、その差144MPaMPa、向上率20%。
【0033】
<請求項2記載の発明の効果>
6000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材からアルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)焼きなまし状態にある前記アルミニウム合金製単体素材を圧造してボルトヘッドを有する半製品を形成する半製品形成工程と、
(b)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記半製品を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(c)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記半製品の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(d)この溶体化工程直後に前記半製品を急冷する急冷工程と、
(e)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
(f)前記半製品にねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるで、6000系アルミニウム合金製品ボルトにおいて請求項1と同様な効果を奏する。
【0034】
<請求項3記載の発明の効果>
7000系あるいは2000系の展伸材用熱処理合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体を製造するためのアルミニウム合金製単体素材から、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
(a)300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える高周波誘導加熱装置の該誘導加熱コイルに、前記アルミニウム合金製単体素材を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程と、
(b)前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を流し、セットされた前記アルミニウム合金製単体素材の一つ一つを20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持する溶体化工程と、
(c)この溶体化工程直後に前記アルミニウム合金製単体素材を急冷する急冷工程と、
(d)ボルトヘッドおよびねじ形成シャフト部分を切削加工により形成して半製品を形成する半製品形成工程と、
(e)前記半製品のねじ山を転造形成するねじ転造工程と、
(f)人工時効処理あるいは自然時効処理を行う時効処理工程と、
を備えることを特徴とする高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、7000系あるいは2000系アルミニウム合金製品ボルトにおいて請求項1と同様な効果を奏する。
【0035】
<請求項4記載の発明の効果>
溶体化目標温度が溶解温度より−6℃以内の溶解至近温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
すなわち、溶体化目標温度を溶解至近温度という溶解温度に至近した温度とすることにより、溶体化保持時間を短縮することができるので、生産性をあげることができるという効果を奏する。
【0036】
<請求項5記載の発明の効果>
溶体化目標温度が±1℃の範囲で制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
すなわち、溶体化目標温度が±1℃という狭い温度範囲で一つ一つのアルミニウム合金製品の溶体化が行われるので、より品質にバラツキの少ない均一な品質のアルミニウム合金製品を実現するという効果を奏する。
【0037】
<請求項6記載の発明の効果>
前記単体素材セット工程から時効処理工程におけるアルミニウム合金製単体素材に対する各処理が、全て自動的に所定の時間の流れに基づいて行われる工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
【0038】
すなわち、溶体化処理〜時効処理までの各処理が所定の時間の流れで行われるので、一つ一つのアルミニウム合金製単体素材が時効完了まで高精度に管理された時間と温度で処理されることになり、よって、より高品質でより均一な品質の製品群を実現するという効果を奏する。
【0039】
<請求項7記載の発明の効果>
溶体化工程が、
昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度まで加熱を行い該溶体化目標温度に達したら高周波電源をOFFにする第1加熱段階と、
前記溶体化目標温度より−1℃となったら出力を落とした状態で高周波電源をONにして、該溶体化目標温度まで放熱に打ち勝つ出力でゆっくり昇温させてゆく第2加熱段階と、
前記第2加熱段階において前記溶体化目標温度に達したら、微量の加熱状態でゆっくり冷却してゆく第3加熱段階とからなり、
前記溶体化目標温度を±2℃で5sec〜180secに保持するための処理は、前記第2加熱段階と前記第3加熱段階の処理を繰り返すことによって制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であので、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏する。
【0040】
<請求項8記載の発明の効果>
溶体化工程での昇温速度20℃/sec以上の昇温加熱は電源電圧を第1電圧で行い、溶体化目標温度への到達後の温度計の検出結果に基づいて、前記第1電圧よりも低い第2電圧と該第2電圧よりも高く該第1電圧よりも低い第3電圧の間で電源電圧を自動的に制御部によって切り替えることによって、前記溶体化目標温度到達後の温度を±2℃で5sec〜180secに保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏する。
【0041】
<請求項9記載の発明の効果>
アルミニウム合金製単体素材が7000系であり、時効処理工程において、120℃で24hrの人工時効処理を行い、該人工時効処理の直後に300KHz〜2MHzの高周波電流を供給する高周波電源、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイルを備える第2の高周波誘導加熱装置によって、完成品、半製品を含むアルミニウム合金製単体素材を昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度に加熱し且つ該復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を行い、この復元処理工程の直後に115〜125℃の再時効処理工程を行うことを特徴とする請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の高強度のアルミニウム合金製品の製造方法であるので、請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の発明と同様な効果を奏するとともに次に述べるような効果を奏する。
【0042】
すなわち、昇温速度20℃/sec以上の昇温速度で200〜260℃の復元目標温度への加熱を高精度で実現し、かつ、復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程を正確に実現してなるものであるので、結晶粒径が45μm以下でアスペクト比(結晶粒の縦横比、以下同じ)が4以下であるミクロ組織を有する耐食性に優れ高強度7000系のアルミニウム合金製品を実現するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施例1を示す工程図。
図2】本発明の実施例2を示す製造装置および工程図。
図3】本発明の実施例3を示す工程図。
図4】本発明の実施例4を示す工程図。
図5】本発明の実施例5を示す高周波誘導加熱装置の正面図。
図6】本発明の実施例6を示す高周波誘導加熱装置の正面図(上図)および平面図(下図)。
図7】本発明の実施例7を示す高周波誘導加熱装置の正面図。
図8】本発明の実施例8を示す高周波誘導加熱装置の平面図(上図)および正面図(下図)。
図9】本発明の実施例9を示す高周波誘導加熱装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、後述する実施例の説明に当って前述した実施例の同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0045】
図1に示す本発明の実施例1において、アルミニウム合金製品の製造工程1は次のようになっている。
6000系展伸材用熱処理合金からなるボルト、タッピングネジ、ナット、リベット、タペット、機械部品、自動車部品、航空機部品などのアルミニウム合金製品単体となるアルミニウム合金製単体素材2、
電源出力1KW〜50KWの範囲で300KHz〜2MHz(好ましくは400KHz〜2MHz){本実施例では400KHz(20KW)・2MHz(10KW)を切り替えて使用でき、400KHz(20KW)では電力を電源電圧OFF〜20KWの間で電源電圧の可変により自在にコットロールでき、2MHz(10KW)では電力を電源電圧OFF〜10KWの間で電源電圧の可変により自在にコットロールできる高周波誘導加熱装置を使用}の高周波電流を供給する高周波電源3、前記高周波電流が流れる誘導加熱コイル4(銅管部材で該銅管内を冷却水が流されている)、この誘導加熱コイル4にセットされて誘導加熱される前記アルミニウム合金製単体素材2の温度を検出する放射温度計からなる温度計5(他の温度計でもよい)、この温度計5の検出温度に基づいて前記誘導加熱コイル4に流れる前記高周波電流を制御する制御部6とかなる高周波誘導加熱装置7、
焼きなまし状態(質別記号0)にある前記アルミニウム合金製単体素材2を圧造してボルトヘッドを有する半製品8を形成する半製品形成工程Aと、
前記誘導加熱コイル4に前記半製品8を1個セット(誘導加熱コイルの形態によっては複数個セットも可能)する単体素材セット工程Bと、
前記誘導加熱コイル4に前記高周波電流を流し、セットされた前記半製品8を{50℃/secの昇温速度で溶体化目標温度570℃まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃(好ましくは±1℃)で5sec〜180sec{本実施例においては60sec}に保持する溶体化工程Cと、
この溶体化工程C直後に前記半製品8を真下の水のはられた冷却槽9(水温20℃)に真っ直ぐに落とし漬けて急冷する急冷工程Dと、
冷却槽9のかご10に溜まった半製品8群を該かご10ごと該冷却槽9から取り出して、加熱炉11に収納(かご10に収めたまま入れても良い)して行う180℃.8hrの人工時効処理工程Eと、
人工時効処理済みの半製品8にダイス12によってねじ山を転造形成するねじ転造工程Fと、を備えてなるものである。
冷却媒体は水に限られず、オイルなど他の冷却媒体でもよい。
【0046】
高周波電源3は400KHzと2MHzの高周波を切り替えて使用できるものであるので、例えば10mmなどの太いアルミニウム合金製単体素材は400KHzで加熱し、1mmなどの細いアルミニウム合金製単体素材では2MHzで効率的に加熱する使い分けができるものである。
【0047】
アルミニウム合金製品の製造方法1によって形成された6061合金製ボルト13は、引張強さが419MPaであり、市販品の6061合金製ボルトの引張強さ295MPaより、124MPa(42%)の引張強度の向上が図られた。
これは、50℃/secの昇温速度で溶体化目標温度まで加熱する(M10ボルト相当で11secで溶体化目標温度に到達)という、急速昇温加熱によってSiなどの析出粒が微細な状態での固溶化を実現するとともに、60sec以内の溶体化保持という短時間の溶体化によってその粗大が進行しないで急冷焼き入れがされたことによって、その後の人工時効処理では微細な析出物の析出がなされたものであることによると推察される。
時効処理時間は長くなるが、自然時効処理とすることによって人工時効処理より強い機械的性質のものをえることができることが多い。これは、人工時効処理の場合にあっては亜時効→ピーク時効(最も良好な機械的性質が得られる)→過時効(機械的性質が低下する)のに対して、自然時効処理は時間が経過するにつれて機械的性質が向上し続け人工時効処理のピーク時効時の機械的性質を超える機械的性質を実現するからである。
【0048】
溶体化目標温度570℃を±3℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に制御する方法について説明する。
(1)昇温速度50℃/secあるいはそれ以上の急速昇温加熱は電源電圧を第1電圧(例えば170V)で行い、溶体化目標温度570℃への到達後の温度計5の検出結果に基づいて、前記第1電圧(例えば170V)よりも低い第2電圧(例えば70V)と該第2電圧よりも高く該第1電圧よりも低い第3電圧(例えば90V)の間で、電源電圧を自動的に制御部6によって切り替え指示して、前記溶体化目標温度570℃到達後の温度を±3℃好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃で保持することが可能である。
(2)昇温速度50℃/sec以上の昇温速度で溶体化目標温度570℃まで加熱を行い該溶体化目標温度570℃に達したら高周波電源3をOFFにする第1加熱段階と、前記溶体化目標温度570℃より−1℃となったら高周波電源3の出力を落とした状態でONにして、該溶体化目標温度570℃まで放熱に打ち勝つ出力でゆっくり昇温させてゆく第2加熱段階と、前記溶体化目標温度570℃に達したら微量の加熱を加えてゆっくり冷却してゆく第3加熱段階とからなり、前記溶体化目標温度570℃を±1℃で60secに保持する過程にあっては、前記第2加熱段階と前記第3加熱段階の処理を繰り返すことによって制御しすることによって可能である。
【0049】
テストに用いた市販材アルミニウム合金の成分および機械的性質は以下のようなものである。
≪6061合金≫
:成分(Si0.4〜0.8、Fe0.7、Cu0.15〜0.4、Mn0.15、Mg0.8〜1.2、Cr0.04〜0.35、Zn0.25、Pb0.003、Ti0.15、残Al)
:機械的性質(引張強さ295MPa(T6))、耐力245MPa(T6)、伸び8〜10%、溶解温度582℃〜652℃)
【0050】
前記6061合金製ボルトの溶体化温度と引張強さの関係は、直径10mm、重量12g、昇温速度50℃/secで溶体化目標温度570℃の保持時間60sec、急冷工程後に速やかにねじ山転造をし、人工時効処理180℃×8hrの処理条件で、ねじ山転造後の引張り強さ419MPaを実現した市販品(T6処理済み材)の引張り強さ295MPaMPaと比較すると124MPa(42%)の引張強さの実現である。
6061合金製ボルトの溶解温度582℃の至近温度である565℃から575℃での溶体化が最も良好な機械的性質が得られていることが確認できる。ここでは、570℃±3℃(好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃)とするのが均一な高品質の製品の実現できると考えられる。
【0051】
6061合金製ボルトの引張強さの比較
市販品(T6済み材) 295MPa
本実施例1のボルトでねじを切削形成したもの 380MPa(市販品より29%向上)
本実施例1のボルトでねじを転造形成したもの 419MPa(市販品より42%向上)
【0052】
(1)実施例1の製造方法によって製造されるファスナー製品は、その全てが一つ一つ、例えば昇温速度50℃/secの昇温速度で急速加熱(M10のボルト用のアルミニウム合金製単体素材では530℃まで11sec)され、且つ、溶体化目標温度570℃を±3℃、±2℃あるいは±1℃の範囲で例えば60sec保持するので、昇温時間+溶体化保持時間がM10ボルトでは70sec程度と短時間で行われ、溶体化完了時間となったらその直後に急冷が行われるものである。すなわち、製造される全てのファスナー製品が最も高品質となる同じ条件で製造されるものであるので、個々の品質が高品質であり、且つ、その個々の品質がバラツキのない(不良品が発生しない)均一な品質のものを短時間で実現するものである。
【0053】
(2)誘導加熱コイルによって一つ一つのアルミニウム合金製単体素材を誘導加熱で溶体化するものであるので、誘導加熱コイルを製品に対応した形態のものに交換することによって、他品種少量生産に容易に素早く効率的かつ低コストで対応できる製造方法を可能とするものである。
【0054】
(3)電力が1KW〜50KWで一つのボルトの加熱時間が70sec程度であるので、200KVAというような従来の加熱炉に比べて1/10以下の省エネを実現するものであり、経費の低減および二酸化炭素の排出の軽減等を実現するものである。
【0055】
工程にねじ転造工程の無い、製造されるアルミニウム合金製品がリベットとするのもよい。
本発明は、ボルト、ナット、リベットなどのアルミニウム合金製ファスナーの製造に最適である。
【0056】
10KWの2MHzでの昇温速度はM10では50℃/secであるが、M6では80℃/secとできる。これは、2MHzという超高周波誘導加熱あっては、アルミニウム合金製単体素材が細いほど昇温速度を早くできることを示しており、3mm、1mm、0.5mmというような細いものの溶体化処理をより省電力短時間で行うことを実現するものである。
【実施例2】
【0057】
図2に示す本発明の実施例2において前記実施例1と主に異なる点は、単体素材セット工程B〜人工時効処理工程Eまでを完全自動化して、半製品8の一つ一つが所定の時間の流れと温度に基づいて行われる工程とした、アルミニウム合金製品の製造システム16を形成した点にある。
【0058】
アルミニウム合金製品の製造システム16は次のようである。
トレー17に並べられた半製品8を制御部6によって制御されるハンド18で1個掴み搬送して、誘導加熱コイル4の下部に設けられた制御部6によって回動(開閉)自在に制御されたセラミックス製の受け皿19に載せて誘導加熱コイル4内にセットする(単体素材セット工程B)。
【0059】
誘導加熱コイル4に高周波電流を流し、セットされた半製品8を50℃/secの昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±1℃で60secに保持する(溶体化工程C)。
【0060】
保持時間60sec到達で受け皿19を下に回動させて、半製品8を真っ直ぐの姿勢で冷却水(冷却槽9)に落とし漬けて急冷を行う(急冷工程D)。
冷却槽9には半製品8を受け該冷却槽9外に搬送するコンベアー20が設けられ、加熱炉21のコンベアー22に自動的に半製品8を搬送するようになっている。
コンベアー22に載った半製品8は加熱炉21内を所定時間流されて人工時効処理される(人工時効処理工程E)。
【0061】
時効処理済み半製品8は、ねじ転造処理がされて6061合金ボルト13に形成される。
工程にねじ転造工程が無く、製造されるアルミニウム合金製品がリベットとするのもよい。
【実施例3】
【0062】
図3に示す本発明の実施例3において、アルミニウム合金製品の製造工程25は次のようになっている。
7075アルミニウム合金あるいは2024アルミニウム合金からなるボルトであるアルミニウム合金製品単体となるアルミニウム合金製単体素材26、
高周波誘導加熱装置7、
誘導加熱コイル4にアルミニウム合金製単体素材26を1個あるいは複数個セットする単体素材セット工程Jと、
誘導加熱コイル4に高周波電流を流し、セットされたアルミニウム合金製単体素材26の一つ一つを50℃/secの昇温速度で溶体化目標温度まで加熱し、該溶体化目標温度を±2℃(好ましくは±1℃)で60secに保持する溶体化工程Kと、
この溶体化工程K直後にアルミニウム合金製単体素材26を急冷する急冷工程Lと、
ボルトヘッド27およびねじ形成シャフト部分28を切削加工により形成して半製品29を形成する半製品形成工程Mと、
半製品29のねじ形成シャフト部分28にねじ山を転造形成して半製品ボウル31を形成するするねじ転造工程Nと、
半製品ボウル31を熱間時効処理して合金ボルト32を形成する人工時効処理工程Pとからなっている。
【0063】
冷却槽9の内部には制御部6に制御された昇降体30が設けられ、アルミニウム合金製単体素材26が投下冷却される毎に受けたアルミニウム合金製単体素材26を昇降体30が上昇して持ち上げ、人手、自動ハンドあるいは昇降体30の傾き動作や止め壁の倒れなどによって、昇降体30の外に出されるようにしている。
【0064】
溶体化目標温度=溶体化保持温度は400℃〜550℃、人工時効処理工程Pは120℃〜200℃ 8hr〜48hrの範囲である。
現時点での最適値は次のようである。
アルミニウム合金製単体素材26が7075アルミニウム合金である場合は、溶体化目標温度=溶体化保持温度は480℃、人工時効処理工程Pは125℃ 24hrとしている。
アルミニウム合金製単体素材26が2024アルミニウム合金である場合は、溶体化目標温度=溶体化保持温度は500℃、人工時効処理工程Pは195℃ 8hrとしている。
【0065】
テストに用いた市販材アルミニウム合金の成分および機械的性質は以下のようなものである。
≪2024合金≫
:成分(Si0.5、Fe0.5、Cu3.8〜4.9、Mn0.3〜0.9、Mg1.2〜1.8、Cr0.1、Zn0.25、Zr打ち合わせ、Ti0.15、残Al)
:機械的性質(引張強さ440MPa(N/mm2)(T6) 480MPa(T851)、耐力345MPa(T6) 430MPa(T851)、伸び3〜5%、溶解温度502℃〜638℃)
【0066】
前記2024合金製ボルトの溶体化温度と引張強さの関係は、直径10mm、重量14g、昇温速度50℃/secで溶体化目標温度500℃の保持時間60sec、急冷工程後に速やかにねじ山転造をし、人工時効処理195℃×8hrを行った。ねじ山転造後の引張強さ440MPaを実現している。
2024合金製ボルトの溶解温度502℃の極めて至近した至近温度である500℃での溶体化が最も良好な機械的性質が得られていることが確認できる。ここでは、500℃±2℃、より好ましくは±1℃とするのが均一な高品質の製品の実現できると考えられる。
【0067】
テストに用いた市販材アルミニウム合金の成分および機械的性質は以下のようなものである。
≪7075合金≫
:成分(Si0.4、Fe0.5、Cu1.2〜20、Mn0.3、Mg21〜29、Cr0.18〜0.28、Zn5.1〜6.1、Zr打ち合わせ、Ti0.2、残Al)
:機械的性質(引張強さ540MPa(T6))、耐力460MPa(T6)、伸び8%、溶解温度477℃〜635℃(テスト品の溶解温度は502℃))
【0068】
直径10mm、重量14g、昇温速度50℃/secで溶体化目標温度480℃の保持時間60sec、急冷工程後に速やかにボルトヘッドおよびねじ形成シャフト部分28を切削形成し、速やかにねじ山を転造形成し、人工時効処理125℃×24hrを行った。溶体化目標温度が480℃のときが最高引張強さねじ山転造後の引張強さ648MPaを実現した。
7075合金製ボルトの溶解温度502℃の至近温度である480℃での溶体化が最も良好な機械的性質が得られていることが確認できる。ここでは、480℃±3℃(好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃)とするのが均一な高品質の製品の実現できると考えられる。
【0069】
7075合金製ボルトの引張強さの比較
市販品(T6済み材) 540MPa
本実施例3のボルトでねじを切削形成したもの 629MPa(市販品より16%向上)
本実施例3のボルトでねじを転造形成したもの 648MPa(市販品より20%向上)
【0070】
工程にねじ転造工程が無く、製造されるアルミニウム合金製品がリベットなどとするのもよい。
【実施例4】
【0071】
図4に示す本発明の実施例4において、前記実施例3と主に異なる点は、アルミニウム合金製単体素材が7000系(実施例では7075)であり、人工時効処理工程Pを120℃〜180℃で24hr〜48hr(T6調質)の人工時効処理とし、該人工時効処理工程Pの直後に高周波誘導加熱装置7と同様の構成の第2の高周波誘導加熱装置35によって、合金ボルト32昇温速度50℃/secで200〜260℃の復元目標温度に加熱し、該復元目標温度を7sec〜120sec保持する復元処理工程Qを行い、冷却槽34で急冷する急冷工程Rを行い、急冷工程Rの直後に115〜125℃の再時効処理工程Sを加熱炉36によって行い、合金製ボルト37を形成するアルミニウム合金製品の製造方法38を実現した点にある。
このような製造方法としたことによって、結晶粒径が45μm以下でアスペクト比(結晶粒の縦横比、以下同じ)が4以下であるミクロ組織を有する耐食性に優れるアルミニウム合金製単体素材を実現している。
第2の高周波誘導加熱装置35が高周波誘導加熱装置7であるもの、すなわち、高周波誘導加熱装置7によって溶体化工程Cと復元処理工程Qを行うものも含まれるものである。
【実施例5】
【0072】
図5に示す本発明の実施例5において前記実施例1の高周波誘導加熱装置の一例である高周波誘導加熱装置7aを示している。
高周波誘導加熱装置7aの前記実施例1の高周波誘導加熱装置7と主に異なる点は、誘導加熱コイル4の内側にボルトと該誘導加熱コイル4の接触を防止するためのセラミックス部材製(耐熱性で絶縁性の部材であればよい)の接触防止管40がセットされ、誘導加熱コイル4の下方に制御部6の指示によって昇降動作および回動動作するアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を載せ置く支持部材41を設けた点にある。
【0073】
貫通孔である空洞部46を有する接触防止管40の上部には鍔42が設けられ、該鍔42が誘導加熱コイル4の上部に載って接触防止管40が落ちないように保持され、接触防止管40の側面中途には温度計5の測定光線45(レーザー光線が一般的)を接触防止管40内(空洞部46にある)のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)に当てその反射光線を受光するための温度測定孔44が設けられている。
支持部材41は制御部6によって制御された支持部材操作部43によって、昇降移動および回動動作を行うようになっている。
【0074】
降下して下方位置とされた支持部材41にアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)が立てにセットされる。支持部材41は上昇してアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)の加熱部分を接触防止管40内(空洞部46)にセットする。誘導加熱コイル4に高周波電流が供給され加熱が完了したら、支持部材41は回動してアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)は垂直の姿勢で下方の冷却水に落下し急冷される。
【0075】
接触防止管40の天井は塞がれた形態とすることによって、より昇温速度を高め、目標温度到達後の保持温度の昇降差を少なくできるとともに、ボルトヘッドがあるアルミニウム合金製単体素材にあって、該ボルトヘッドが誘導加熱コイル4外にある場合にあっては、ボルトヘッドの昇温速度が向上する。
図5にあってはボルトヘッドが誘導加熱コイル4および誘導加熱コイル4外にしているが、ボルトヘッドを誘導加熱コイル4および誘導加熱コイル4内とするのもよい。
【実施例6】
【0076】
図6に示す本発明の実施例6において前記実施例5と主に異なる点は、支持部材41および支持部材操作部43にかえて、横向き出し引き動作をするピン形態の支持部材48および該支持部材48の出し引き動作を行う制御部6に制御された支持部材操作部49とした、高周波誘導加熱装置7bを形成した点にある。
【0077】
高周波誘導加熱装置7bは、支持部材48が出し状態で接触防止管40(空洞部46)の下方に位置した状態で、上方からボルトヘッドを自動制御搬送アーム(図示せず省略)あるは人の手(図示せず省略)によってアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を空洞部46に挿入セットする。誘導加熱コイル4に高周波電流が供給され加熱が完了したら、支持部材48は空洞部46域外に引き移動され、アルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)は垂直の姿勢で下方の冷却水に落下し急冷される。
接触防止管40の形態はボルトヘッドも入るようにしている。
【実施例7】
【0078】
図7に示す本発明の実施例7において前記実施例6と主に異なる点は、誘導加熱コイルおよび接触防止管を3本のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を同時に誘導加熱できる長尺形態の誘導加熱コイル51、接触防止管52とし、接触防止管52の3箇所に支持部材48a、48b、48cが貫通される支持部材通し孔53a、53b、53cを設け、制御部6により制御される三つの支持部材操作部49a、49b、49cを設けてなる高周波誘導加熱装置7cを形成した点にある。
【0079】
高周波誘導加熱装置7cは、接触防止管52に3本のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)をセットし、一斉に加熱溶体化し一斉に支持部材48a、48b、48cを引き移動させて3本を略同時に落下冷却する、あるいは、常時誘導加熱コイル51には高周波電力を供給してあって、20秒〜25秒間隔でアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を一本ずつ挿入セットおよび下段に落下移動させてゆくという動作による方法が行える。
【実施例8】
【0080】
図8に示す本発明の実施例8において前記実施例1の高周波誘導加熱装置の一例である高周波誘導加熱装置7dを示している。
高周波誘導加熱装置7dは、誘導加熱コイルをアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)が三本同時にセットできる長さのU字形態をした誘導加熱コイル55とし、この誘導加熱コイル55の下方に櫛歯形態のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を受ける支持部材56a、56bが、櫛歯が相手の櫛歯の隙間に入る形態で対抗するように設けられ、支持部材56a、56bは棒状の回動体57a、57bに根本が支持部材操作部58に回動動作するように設けられ、支持部材操作部58は制御部6に制御されて回動体57a、57bを回動動作するようになっている。
【0081】
三本のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を手動あるいは自動アーム等(図示せず省略)によって、誘導加熱コイル55内の支持部材56a、56b上にセットする。誘導加熱コイル55に高周波電流を流し三本のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を同時に加熱溶体化し、所定時間保持したら回動体57a、57bを下方に回動させて支持部材56a、56bを開き三本のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を同時に落下させ、下の水槽で急冷する。
急冷は下方に逆△形態の受け網かごを設け、アルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を受けると同時に左右から大量の冷却水を噴出かけて、全面が同時に平均的に急冷されるようにするのがよい。
【実施例9】
【0082】
図9に示す本発明の実施例9において高周波誘導加熱装置の一例である高周波誘導加熱装置7eを示している。
前記実施例5と主に異なる点は、高周波誘導加熱装置7eの前記実施例1の高周波誘導加熱装置7と主に異なる点は、誘導加熱コイルが一本の管によって三つの誘導加熱コイル4a、4b、4cを形成し、三本のアルミニウム合金製単体素材(2、8、26、32)を同時に溶体化できるようにした点にある。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明はアルミニウム合金製品を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0084】
A:半製品形成工程、
B:単体素材セット工程、
C:溶体化工程、
D:急冷工程、
E:人工時効処理工程、
F:ねじ転造工程、
J:単体素材セット工程、
K:溶体化工程、
L:急冷工程、
M:半製品形成工程、
N:ねじ転造工程、
P:人工時効処理工程、
Q:復元処理工程、
R:急冷工程、
S:再時効処理工程、
1:アルミニウム合金製品の製造工程、
2:アルミニウム合金製単体素材、
3:高周波電源、
4、4a、4b、4c:誘導加熱コイル、
5:温度計、
6:制御部、
7、7a、7b、7c、7d、7e:高周波誘導加熱装置、
8:半製品、
9:冷却槽、
10:かご、
11:、加熱炉、
12:ダイス、
13:6061合金ボルト、
16:アルミニウム合金製品の製造システム、
17:トレー、
18:ハンド、
19:受け皿、
20:コンベアー、
21:加熱炉、
22:コンベアー、
25:アルミニウム合金製品の製造工程、
26:アルミニウム合金製単体素材、
27:ボルトヘッド、
28:ねじ形成シャフト部分、
29:半製品、
30:昇降体、
31:半製品ボウル、
32:合金ボルト。
34:冷却槽、
35:第2の高周波誘導加熱装置、
36:加熱炉、
37:合金製ボルト、
38:アルミニウム合金製品の製造方法、
40:接触防止管、
41:支持部材、
42:鍔、
43:支持部材操作部、
44:温度測定孔、
45:測定光線、
46:空洞部、
48、48a、48b、48c:支持部材、
49、49a、49b、49c:支持部材操作部、
51:誘導加熱コイル、
52:接触防止管、
53a、53b、53c:支持部材通し孔、
55:誘導加熱コイル、
56a、56b:支持部材、
57a、57b:回動体、
58:支持部材操作部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9