(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726517
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】金型離型回復用ゴム系組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 33/56 20060101AFI20150514BHJP
B29C 35/00 20060101ALI20150514BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20150514BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20150514BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20150514BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20150514BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20150514BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20150514BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20150514BHJP
【FI】
B29C33/56
B29C35/00
C08L23/16
C08L9/00
C08K5/098
C08K5/101
C08K5/01
C08K5/20
B29K21:00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-505659(P2010-505659)
(86)(22)【出願日】2009年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2009055772
(87)【国際公開番号】WO2009122955
(87)【国際公開日】20091008
【審査請求日】2012年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2008-91359(P2008-91359)
(32)【優先日】2008年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-91360(P2008-91360)
(32)【優先日】2008年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-7239(P2009-7239)
(32)【優先日】2009年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】弘光 清人
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘明
(72)【発明者】
【氏名】砂子 治
【審査官】
深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−226799(JP,A)
【文献】
特開平07−068562(JP,A)
【文献】
特開昭63−159019(JP,A)
【文献】
特開平04−357007(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/057479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00− 33/76
B29C 35/00− 35/18
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
B29K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に、金型表面に離型性を付与する樹脂組成物において、
基材樹脂として、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合が、90/10〜50/50重量部に設定されている未加硫ゴムを使用し、且つ金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤とを含有し、
上記金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤との割合が90:10〜30:70であり、
上記未加硫ゴムが、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、引張強度が3〜10MPa、ゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc(90)が50〜100秒の値の範囲にある未加硫ゴムであることを特徴とするコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に、金型表面に離型性を付与する樹脂組成物において、
基材樹脂として、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合が、90/10〜50/50重量部に設定されている未加硫ゴムを使用し、且つ金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤とを含有し、
上記金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤との割合が90:10〜30:70であり、
上記未加硫ゴムが、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、引張強度が3〜10MPa、ゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc(90)が200〜400秒の値の範囲にある未加硫ゴムであることを特徴とするコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項3】
硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に、金型表面に離型性を付与する樹脂組成物において、
基材樹脂として、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合が、90/10〜50/50重量部に設定されている未加硫ゴムを使用し、且つ金属石鹸系離型剤、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤を含有し、
上記金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤との割合が90:10〜30:70であり、
上記未加硫ゴムが、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、引張強度が3〜10MPa、ゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc(90)が200〜400秒の値の範囲にある未加硫ゴムであることを特徴とするコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項4】
上記有機脂肪酸エステル系離型剤が、モンタン酸部分ケン化エステル又は高分子複合エステルである、請求項1〜3の何れかに記載の金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項5】
上記合成ワックスが、変性炭化水素系ワックス又は鉱油系合成ワックスである、請求項1〜3の何れかに記載の金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項6】
更に、充填剤、洗浄剤、洗浄助剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、顔料の少なくとも1種を含有する、請求項1〜3の何れかに記載の金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項7】
前記離型剤の総添加量が、前記未加硫ゴム100重量部に対して、0.5〜30重量部である、請求項1〜3の何れかに記載の金型離型回復用ゴム系組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の金型離型回復用ゴム系組成物を用いた金型離型回復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型離型回復用ゴム系組成物に関し、詳しくは、硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後の金型表面の離型性を回復させるための金型離型回復用ゴム系組成物において、基材樹脂として、特定の未加硫ゴム及び特定の離型剤を使用したことを特徴とする金型離型回復用ゴム系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂成形材料等の熱硬化性樹脂成形材料による集積回路等の封止成形物の成形時には、上記熱硬化性樹脂成形材料中に含まれる離型剤が成形物と金型との界面に滲出することにより、カル部、キャビティ部、ランナー部に対して離型作用を発揮する。このような成形を数百回以上連続で行うと、成形材料中に含まれる離型剤や樹脂の低分子量物等が高温での成形の繰り返しにより酸化劣化して、次第に金型上に堆積するため、成形品の離型性が著しく悪くなったり、成形品の表面に肌荒れ等の外観不良を生じたり、成形後の印刷工程で不良を生じたりするという不具合を引き起こす。
そこで、これらの状況を回避するためにクリーニングの実施が必要となるが、クリーニングした後は、金型表面がきれいになる反面、金型表面の離型剤も取り去られるため、クリーニング直後に封止成形を再開すると、極端に金型離型性が悪くなるという問題があった。
そのためクリーニング材の使用後に、金型離型回復樹脂組成物を成形し、金型表面に金型離型回復樹脂組成物中の離型剤を移行させ、離型性を回復させる必要があった。
【0003】
一方、上記熱硬化性メラミン樹脂成形材料に替えて、洗浄成分を含有する未加硫ゴム系コンパウンドを使用し、金型中で加硫させて加硫ゴム化する際に、金型表面に存在する離型剤等の酸化劣化層を洗浄成分により分解すると共に加硫ゴムと一体化し、ついで加硫ゴムを金型から取り出すことにより金型表面を清掃するという方法が提案されている。又、未加硫ゴム成分として、ブタジエンゴム/エチレン−プロピレンゴム成分が90/10〜50/50重量部に設定したゴム系組成物も提案されている(例えば米国特許第4935175号明細書、特開平4−357007号公報参照)。
これら金型清掃用樹脂としては、トランスファタイプとコンプレッションタイプの2つのタイプに大別でき、トランスファタイプには、メラミン系樹脂成形材料が使用され、コンプレッションタイプには、メラミン系樹脂成形材料並びにゴム系組成物が使用されている。
近年、集積回路等(IC・LSIと略記する)の高集積化、薄型化、表面実装化に伴い、成形品の形状、構造の多様化が進んでおり、このため、半導体封止材料の高流動化や環境対応化が計られている。
このため、高流動化タイプのエポキシ封止材では、エアベント部分での樹脂詰まりが発生しやすく、これらの詰まりが発生するとエア抜けが悪く樹脂が流れなくなるために、キャビティ部に未充填が発生し不良となることから連続成形が困難になる。そこで、これらの状況を回避するためにクリーニングの実施が必要となるが、トランスファタイプのクリーニング材では、前述の理由で樹脂が正常に流れないために、エアベントに詰まった樹脂を除去することは難しかった。
【0004】
このようなエアベントの詰まりを解消するためにコンプレッションタイプのクリーニング材が使用されているが、メラミン系樹脂成形材料を用いると、エアベント部分の詰まりは解消するものの、金型外周付近は樹脂の流出によって充分に圧力が掛からないため、成形物の外周部が脆くなる傾向があり、硬化後の成形物を金型上から除去する作業が繁雑であった。これに対しゴム系組成物を使用した場合は、組成物全体が一様に硬化し1枚のシート状成形物として金型から離型することが出来るため作業性が改善される。しかしながら、流動性という点において、ゴム系組成物はメラミン系樹脂成形材料よりも悪いため、キャビティ内への充填性が悪く、キャビティコーナー等の汚れが除去出来ないという問題点があった。
【0005】
また、Plastic Dual Inline Package (以後PDIPと略記する)やSmall Outline Integrated Circuit(以後SOICと略記する)等のようにキャビティが深い小型のパッケージ製造用金型や、小型のパッケージの中でも、ピン数が少ない特に小さなパッケージ製造用金型においてゴム系組成物を使用した場合、パッケージの取り数が多くなるため、硬化後の成形物が金型に貼り付くという現象が発生しやすい。これを除去する際に、シート状成形物が破断してキャビティ内にゴム系組成物が残留するチッピングが発生するという問題点があった。これらの金型でチッピングが発生すると、キャビティ数が多いために、チッピング箇所の成形物を除去するのに多大なる時間を要することになり、生産性が大幅に低減される。
上記問題点を解決するため、作業性(離型性)、成形性に優れ、離型回復工程後の金型離型性が長時間持続し、封止成形品の連続成形回数が多い離型回復用ゴム系組成物が求められている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4935175号明細書
【特許文献2】特開平04−357007号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明は、前述の如く、作業性(離型性)は良いものの、ボイドやチッピングが発生する従来の金型離型回復用ゴム系組成物における欠点を解消し、ボイドやチッピングが発生することが無く、且つ、離型性回復後の金型離型性が長時間持続し、封止成形品の連続成形回数が多い金型離型回復用ゴム系組成物を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、前述の如く、作業性(離型性)は良いものの、ボイドやチッピングが発生する従来の金型離型回復用ゴム系組成物における欠点を解消すると共に、PDIPやSOIC等のようなキャビティが深い小型のパッケージ製造用金型や、小型のパッケージの中でも、ピン数が少ない特に小さなパッケージ製造用金型においてもボイドやチッピングが発生することが無く、且つ、離型性回復後の金型離型性が長時間持続し、封止成形品の連続成形回数が多い金型離型回復用ゴム系組成物を提供することを課題とする。
【0009】
本発明は、下記(1)、(2)及び(3)のコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物を提供することにより、前記課題を解決したものである。
(1)硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に、金型表面に離型性を付与する樹脂組成物において、
基材樹脂として、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合が、90/10〜50/50重量部に設定されている未加硫ゴムを使用し、且つ金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤とを含有し、
上記金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤との割合が90:10〜30:70であり、
上記未加硫ゴムが、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、引張強度が3〜10MPa、ゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc (90)が50〜100秒の値の範囲にある未加硫ゴムであることを特徴とするコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物。(以下、第1の金型離型回復用ゴム系組成物という)
(2)硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に、金型表面に離型性を付与する樹脂組成物において、
基材樹脂として、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合が、90/10〜50/50重量部に設定されている未加硫ゴムを使用し、且つ金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤とを含有し、
上記金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤との割合が90:10〜30:70であり、
上記未加硫ゴムが、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、引張強度が3〜10MPa、ゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc (90)が200〜400秒の値の範囲にある未加硫ゴムであることを特徴とするコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物。(以下、第2の金型離型回復用ゴム系組成物という)
(3)硬化性樹脂の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に、金型表面に離型性を付与する樹脂組成物において、
基材樹脂として、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合が、90/10〜50/50重量部に設定されている未加硫ゴムを使用し、且つ金属石鹸系離型剤、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤を含有し、
上記金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤との割合が90:10〜30:70であり、
上記未加硫ゴムが、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、引張強度が3〜10MPa、ゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc (90)が200〜400秒の値の範囲にある未加硫ゴムであることを特徴とするコンプレッションタイプ金型離型回復用ゴム系組成物。(以下、第3の金型離型回復用ゴム系組成物という)
【0010】
本発明の第1、第2及び第3の金型離型回復用ゴム系組成物は、作業性(離型性)のみならず、成形性や強度に優れ、ひいてはボイドやチッピングの発生が無く、離型性回復後の金型離型性が長時間持続し、封止成形品の連続成形回数が多いものである。
【0011】
本発明の第2及び第3の金型離型回復用ゴム系組成物は、PDIPやSOIC等のようにキャビティが深い小型のパッケージ製造用金型や、小型のパッケージの中でも、ピン数が少ない特に小さなパッケージ製造用金型の離型回復に特に適したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、まず、本発明の第1の金型離型回復用ゴム系組成物について詳しく説明する。
本発明において使用する未加硫ゴムは、エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとを混合併用するものである。
エチレン−プロピレンゴム(以下、EPMと略記することがある)とは、通常のエチレン−プロピレンゴム(EPM)とエチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDMと略記することがある)の双方を含む趣旨である。
【0013】
上記EPMとしては、エチレンとα−オレフィン(特にプロピレン)の共重合割合が、モル比でエチレン/α−オレフィン=55/45〜83/17で、ムーニー粘度ML
1+4 (100℃)が5〜300のものが好ましく、特に好ましくは上記共重合割合が、モル比でエチレン/α−オレフィン=55/45〜61/39で、ムーニー粘度ML
1+4 (100℃)が36〜44のものである。
【0014】
また、上記EPDMは、エチレンと、α−オレフィンと、非共役二重結合を有する環状物または非環状物からなるターポリマーである。詳述すると、エチレンとα−オレフィン(特にプロピレン)と、ポリエンモノマーからなるターポリマーである。
上記ポリエンモノマーとしては、ジシクロペンタジエン、5−シクロオクタジエン、1,7−シクロドデカジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、メチレンノルボルネン、2−メチルペンタジエン−1,4、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、メチル−テトラヒドロインデン、1,4−ヘキサジエン等があげられる。このようなターポリマー中の各モノマーの共重合割合は、好ましくはエチレンが30〜80モル%、ポリエンモノマーが0.1〜2モル%で残りがα−オレフィンである。より好ましくはエチレンが30〜60モル%である。そして、上記ターポリマーであるEPDMとしては、ムーニー粘度ML
1+4 (100℃)が20〜70のものを用いるのが好ましい。
【0015】
また、上記ブタジエンゴム(以後BRと略記すことがある)としては、シス1,4結合の含有量が90重量%以上のハイシス構造を有し、ムーニー粘度ML
1+4 (100℃)が20〜60、特に30〜45のものが好適に用いられる。
【0016】
そして、上記エチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとの配合割合は、重量比で90/10〜50/50重量部、好ましくは80/20〜60/40重量部である。
エチレン−プロピレンゴムが90重量部を超えて配合されると、金型離型性が悪くなるので好ましくない。ブタジエンゴムが50重量部を超えて配合されると、金型離型性は良くなるが、加硫後の成形物が硬くて脆くなることによりチッピングが発生しやすくなるので好ましくない。
【0017】
上記未加硫ゴムは、加硫硬化した後の伸び率が80〜800%、好ましくは100〜300%のものである。伸び率が80%以下になると、成形性が悪くなるので好ましくない。
上記未加硫ゴムは、加硫硬化した後の引張強度が3〜10MPa、好ましくは5〜8MPaのものである。引張強度が3MPa以下になると、チッピングが発生するので好ましくない。
上記未加硫ゴムは、加硫硬化した後のゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95、好ましくはA70〜90のものである。ゴム硬度がこの範囲を逸脱すると、チッピングやボイドが発生するので好ましくない。
上記未加硫ゴムは、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc (90)が50〜100秒、好ましくは70〜100秒のものである。tc (90)の値が該範囲内であれば、加硫速度が速すぎることがなく、キャビティの隅々まで樹脂を充填させることが出来るため、スティッキング等の不具合を発生することなく離型回復を実施することが出来る。
【0018】
本発明の第1の金型離型回復用ゴム系組成物は、上記未加硫ゴムの他に、金属石鹸系離型剤と、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤とを含有する。
金属石鹸系離型剤の例としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等を例示できる。有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス、脂肪酸アミド系離型剤としては、リコワックスOP(クラリアントジャパン株式会社製 モンタン酸部分ケン化エステル)、ロキシオールG−78(コグニスジャパン株式会社製 高分子複合エステル)、リコルブH−4(クラリアントジャパン株式会社製 変性炭化水素系ワックス)、ロキシオールVPN881(コグニスジャパン株式会社製 鉱油系合成ワックス)、脂肪酸アマイドS(花王株式会社製 脂肪酸アミド)、カオーワックスEB−P(花王株式会社製 脂肪酸アミド)、アルフローHT−50(日本油脂株式会社製 脂肪酸アミド)等を例示できる。
金属石鹸系離型剤と、その他の離型剤(有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス、脂肪酸アミド系離型剤)との割合は、90:10〜30:70が好ましい。その他の離型剤の割合が過剰になると、連続成形性が悪くなるので好ましくない。
金属石鹸系離型剤及びその他の離型剤(有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス、脂肪酸アミド系離型剤)の総添加量は、未加硫ゴム100重量部に対して、0.5〜30重量部が好ましい。
離型剤の量が不足すると、金型離型性が低下し、離型剤の量が多すぎると金型離型性は良いが、金型離型回復用ゴム系組成物が溶融した際の流動性が著しく低下して成形性が悪くなる他、離型回復工程後のダミーショット回数が増加するため好ましくない。
【0019】
本発明の第1の金型離型回復用ゴム系組成物は、上記未加硫ゴム及び上記離型剤の他に、充填剤、洗浄剤、洗浄助剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等を含有することができる。
【0020】
充填剤(補強剤)としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等があげられる。上記充填剤の使用量は、未加硫ゴム100重量部に対して、好ましくは10〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部である。
洗浄剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジ-n- ブチルエタノールアミン等のアミン類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、イミダゾール類及びイミダゾリン類があげられる。上記洗浄剤の使用量は、未加硫ゴム100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部である。この他にも界面活性剤等の洗浄助剤を用いることができる。
【0021】
加硫剤としては、例えば、ジ-t- ブチルパーオキサイド、ジ-t- アミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5- ジ- (t-ブチルパーオキシ)- ヘキサン等のジアリルパーオキサイド類有機過酸化物、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類有機過酸化物があげられる。一般的にジアリルパーオキサイド類と比較してパーオキシケタール類の方が長い半減期を持つが、これらは組成物の設計に併せて単独で使用しても良いし、半減期の長いものと短いものを併用して加硫速度を調整しても良い。上記加硫剤の使用量は、未加硫ゴム100重量部に対して、好ましくは1〜6重量部、より好ましくは2〜4重量部である。この他にもアクリル酸モノマーや硫黄等の加硫助剤を用いることができる。
【0022】
加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等のグアニジン系、例えば、ホルムアルデヒド−パラトルイジン縮合物、アセトアルデヒド−アニリン反応物等のアルデヒド−アミン系やアルデヒド−アンモニア系、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル・ジスルフィド等のチアゾール系等が挙げられ、マグネシア、リサージ、石灰等の加硫促進助剤を用いることができる。
【0023】
本発明の第1の金型離型回復用ゴム系組成物は、これら配合物の他、必要に応じて、例えば、クリーニング材と区別するために、顔料や着色剤を使用することができる。例えば、酸化チタン、カーボンブラック、亜鉛華、カドミウムイエロー、ベンガラ、紺青、鉄黒、群青、リトポン、チタンイエロー、コバルトブルー等の無機顔料、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、ジアゾ系、ハンザイエロー、キナクリドンレッド等の有機顔料、例えば、ベンザオキサゾール系、ナフトトリアゾール系、コーマリン等の蛍光顔料、例えば、アンスラキノン系、インジコ系、アゾ系等の染料の如き着色剤を例示できる。上記顔料や着色剤の使用量は、未加硫ゴム100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部程度である。
【0024】
次に、本発明の第2の金型離型回復用ゴム系組成物について説明する。
本発明の第2の金型離型回復用ゴム系組成物は、基材樹脂として使用する未加硫ゴムが、金型温度175℃における90%加硫時間(適正加硫点)tc (90)が200〜400秒、好ましくは250〜350秒の未加硫ゴムである点を除き、本発明の第1の金型離型回復用ゴム系組成物と同じである。
上記tc (90)の値の調整は、ジエンの種類や量、過酸化物の種類や量、加硫促進剤の種類や量、共架橋剤の種類や量等により適宜調整することが出来る。
【0025】
上記未加硫ゴムのtc (90)の値が200〜400秒の範囲内であれば、加硫速度が速すぎることがなく、キャビティの隅々まで樹脂を充填させることが出来るため、スティッキング等の不具合を発生することなく離型回復を実施することが出来る。
【0026】
次に、本発明の第3の金型離型回復用ゴム系組成物について説明する。
本発明の第3の金型離型回復用ゴム系組成物は、離型剤が、金属石鹸系離型剤、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤である点を除き、本発明の第2の金型離型回復用ゴム系組成物と同じである。
【0027】
金属石鹸系離型剤、有機脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス離型剤及び脂肪酸アミド系離型剤の中から選ばれた少なくとも1種の離型剤の添加量としては、未加硫ゴム100重量部に対して、10〜50重量部が好ましい。この離型剤の量が不足すると、PDIPやSOIC等のようなキャビティが深い小型のパッケージの中でも、ピン数が少ない特に小さなパッケージ製造用金型の金型離型性が低下し、この離型剤の量が多すぎると、金型離型性は良いが、金型離型回復用ゴム系組成物が溶融した際の流動性が著しく低下して成形性が悪くなる他、離型回復工程後のダミーショット回数が増加するため好ましくない。
【0028】
本発明の第1、第2及び第3の金型離型回復用用ゴム系組成物の調製方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ジャケット付き加圧型ニーダー中にEPMおよびBR生地を投入して混練を開始し、EPMとBRの混合生地がモチ状になるまで適宜生地の温度を観察しながら混練を続ける。そして、その混合生地の温度が70〜110℃となった時点で、離型剤、ホワイトカーボン、アミノアルコール系化合物、環状アミド化合物、プロセスオイル、非イオン系界面活性剤、ステアリン酸等を添加して数分間混練する。次いで有機過酸化物及び硫黄等を添加して手早く分散させた後取り出し、必要に応じて、例えばシート状等の適宜の形状に成形して本発明の金型離型回復用用ゴム系組成物とする。
【0029】
混練手段としては、上記加圧型ニーダーの外に、例えば、バンバリーミキサー、ロールミキサー等を挙げることができる。
【0030】
本発明の第1、第2及び第3の金型離型回復用用ゴム系組成物の形態は、特に限定されないが、混練された樹脂組成物は速やかに冷却しなければ混練時の予熱により加硫が促進され、安定した性能が得られなくなるため、短時間で容易に冷却が可能なシート状であるのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例等を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。
【0032】
試験方法
実施例及び比較例にて記載の各種物性評価の試験方法は以下の通りである。
〔伸び及び引張強度〕
JIS K6251における引張強さ及び切断時伸びの測定方法に準拠して測定する。
〈試験片の作製条件〉
37T自動プレス機を用い、金型温度175℃、成形圧10MPa(ゲージ圧)、成形時間5分にて未加硫試料を成形する。成形した試験片サイズは80×160×2mmのシート状で、これを3号ダンベルにて打ち抜いて測定用の試験片とした。
【0033】
〔ゴム硬度〕
JIS K6253『加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法』に準拠した方法で測定する。
前述の試験片作製条件にて得られた80×160×2mm試験片を3枚重ねにし、ゴム硬度に応じたタイプのデュロメータを用いてデュロメータ硬さを測定した。
【0034】
〔加硫速度〕
JIS K6300−2『振動式加硫試験機による加硫特性の求め方』に準拠した方法を用い、金型温度175℃にて90%加硫時間(適正加硫点)tc (90)を測定した。
【0035】
〔離型回復試験〕
金型の初期化
金型離型回復用用ゴム系組成物の試験を行うに際し、試験前の金型表面状態を定常にする必要があるため、市販のメラミン樹脂系金型クリーニング材(日本カーバイド工業株式会社製 ニカレットECR−CL)を用いてトランスファ成形により5ショットのクリーニングを実施し、さらに市販のメラミン樹脂系金型クリーニング材(日本カーバイド工業株式会社製 ニカレットECR−SW7320)を用いてコンプレッション成形により2ショットのクリーニングを実施して金型洗浄を行った。
〈成形条件〉
金型:実施例1〜8ではQFPを用いた。
実施例9〜12ではPDIP−8L(8ポット−96キャビティ)を用いた。
金型温度:175℃/175℃
硬化時間:ECR−CL 300秒
SW7320 180秒
離型回復試験
金型初期化のための清掃終了後、金型離型回復用用ゴム系組成物をコンプレッション成形により硬化時間200秒で3ショット成形した。その後、市販のビフェニル系エポキシ樹脂成形材料(住友ベークライト株式会社製 EME−7351T)を用いて成形を実施し、離型性及び連続成形性を評価した。
〈成形条件〉
金型:QFP又はPDIP−8L
金型温度:175℃/175℃
硬化時間:100秒
【0036】
実施例1(本発明の第1の金型離型回復用用ゴム系組成物)
3000mlのジャケット付き加圧型ニーダー中にEPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]を1050gとBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]450gを添加し、冷却しながら約3分間加圧混練すると、EPDMとBRの混合生地はモチ状になり、その温度は約80℃となった。次いで、ポリオキシアルキレンデシルエーテル系界面活性剤45g(EPDMとBRの混合生地100重量部に対して3重量部)、ステアリン酸15g(同1重量部)、ホワイトカーボン630g(同42重量部)、プロセスオイル [商品名PW−380;出光興産株式会社製] 45g(同3重量部)、炭酸カルシウム75g(同5重量部)、酸化チタン75g(同5重量部)、酸化亜鉛75g(同5重量部)、ステアリン酸亜鉛60g(同4重量部)及びリコワックスOP(クラリアントジャパン株式会社製 モンタン酸部分ケン化エステル)85g(同5.7重量部)を加えて約3分間混練した。最後に1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン48g(同3.2重量部)を加えて引続き約1分間混練した。この間の混練物温度は100℃を超えないように調節した。得られた混練物を速やかに加圧ロールに通し、シート状に加工すると共に25℃以下に冷却することにより、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Aを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Aの特性値及び離型回復試験結果を表1に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Aは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0037】
実施例2(本発明の第1の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例1において、基材樹脂の配合量を、EPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]900g及びBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]600gに変更し、プロセスオイル [商品名PW−380;出光興産株式会社製] の配合量を45g(同3重量部)から75g(同5重量部)に変更し、リコワックスOP 85g(同5.7重量部)の替わりに、ロキシオールG−78(コグニスジャパン株式会社製 高分子複合エステル)85g(同5.7重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Bを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Bの特性値及び離型回復試験結果を表1に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Bは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0038】
実施例3(本発明の第1の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例1において、ステアリン酸亜鉛60g(同4重量部)の替わりに、ステアリン酸カルシウム60g(同4重量部)を用い、リコワックスOP 85g(同5.7重量部)の替わりに、リコルブH−4(クラリアントジャパン株式会社製 変性炭化水素)85g(同5.7重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Cを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Cの特性値及び離型回復試験結果を表1に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Cは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0039】
実施例4(本発明の第1の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例1において、基材樹脂を、EPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]825g及びBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]675gに変更し、ステアリン酸亜鉛60g(同4重量部)の替わりに、ステアリン酸カルシウム60g(同4重量部)を用い、リコワックスOP 85g(同5.7重量部)の替わりに、脂肪酸アマイドS(花王株式会社製 脂肪酸アミド)85g(同5.7重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Dを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Dの特性値及び離型回復試験結果を表1に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Dは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0040】
比較例1
実施例1において、基材樹脂の配合量を、EPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]600g及びBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]900gに変更する以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Eを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Eの特性値及び離型回復試験結果を表1に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Eは、ボイドが発生し、連続成形性も不良であった。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例5(本発明の第2の金型離型回復用用ゴム系組成物)
3000mlのジャケット付き加圧型ニーダー中にEPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]を1050gとBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]450gを添加し、冷却しながら約3分間加圧混練すると、EPDMとBRの混合生地はモチ状になり、その温度は約80℃となった。次いで、ポリオキシアルキレンデシルエーテル系界面活性剤45g(EPDMとBRの混合生地100重量部に対して3重量部)、ステアリン酸15g(同1重量部)、ホワイトカーボン600g(同40重量部)、プロセスオイル [商品名PW−380;出光興産株式会社製] 45g(同3重量部)、炭酸カルシウム75g(同5重量部)、酸化チタン75g(同5重量部)、酸化亜鉛75g(同5重量部)、ステアリン酸亜鉛60g(同4重量部)及びリコワックスOP(クラリアントジャパン株式会社製 モンタン酸部分ケン化エステル)85g(同5.7重量部)を加えて約3分間混練した。最後にジクミルパーオキサイド48g(同3.2重量部)を加えて引続き約1分間混練した。この間の混練物温度は110℃を超えないように調節した。得られた混練物を速やかに加圧ロールに通し、シート状に加工すると共に25℃以下に冷却することにより、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Fを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Fの特性値及び離型回復試験結果を表2に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Fは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0043】
実施例6(本発明の第2の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例5において、基材樹脂の配合量を、EPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]900g及びBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]600gに変更し、プロセスオイル [商品名PW−380;出光興産株式会社製] の配合量を45g(同3重量部)から75g(同5重量部)に変更し、リコワックスOP 85g(同5.7重量部)の替わりに、ロキシオールG−78(コグニスジャパン株式会社製 高分子複合エステル)85g(同5.7重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Gを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Gの特性値及び離型回復試験結果を表2に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Gは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0044】
実施例7(本発明の第2の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例5において、ジクミルパーオキサイド48g(同3.2重量部)の替わりに、ジクミルパーオキサイド28g(同1.9重量部)及びn-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート20g(同1.3重量部)を用い、ステアリン酸亜鉛60g(同4重量部)の替わりに、ステアリン酸カルシウム60g(同4重量部)を用い、リコワックスOP 85g(同5.7重量部)の替わりに、リコルブH−4(クラリアントジャパン株式会社製 変性炭化水素)85g(同5.7重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Hを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Hの特性値及び離型回復試験結果を表2に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Hは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0045】
実施例8(本発明の第2の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例5において、BR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]450gの替わりに、BR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 35、1,4シス結合含有率95重量%のもの]450gを用い、ジクミルパーオキサイド48g(同3.2重量部)の替わりに、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン13g(同0.9重量部)及びジクミルパーオキサイド35g(同2.3重量部)を用い、ステアリン酸亜鉛60g(同4重量部)の替わりに、ステアリン酸カルシウム60g(同4重量部)を用い、リコワックスOP 85g(同5.7重量部)の替わりに、脂肪酸アマイドS(花王株式会社製 脂肪酸アミド)85g(同5.7重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Iを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Iの特性値及び離型回復試験結果を表2に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Iは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0046】
比較例2
実施例5において、基材樹脂の配合量を、EPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]450g及びBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]1050gに変更する以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Jを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Jの特性値及び離型回復試験結果を表2に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Jは、ボイドが発生し、連続成形性も不良であった。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例9(本発明の第3の金型離型回復用用ゴム系組成物)
3000mlのジャケット付き加圧型ニーダー中にEPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]を900gとBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]600gを添加し、冷却しながら約3分間加圧混練すると、EPDMとBRの混合生地はモチ状になり、その温度は約80℃となった。次いで、ポリオキシアルキレンデシルエーテル系界面活性剤45g(EPDMとBRの混合生地100重量部に対して3重量部)、ステアリン酸15g(同1重量部)、ホワイトカーボン900g(同60重量部)、酸化チタン75g(同5重量部)、カーボンブラック1.5g(同0.1重量部)、ステアリン酸亜鉛225g(同15重量部)、ロキシオールG−78(コグニスジャパン株式会社製 高分子複合エステル)150g(同10重量部)及びリコルブH−4(クラリアントジャパン株式会社製 変性炭化水素)150g(同10重量部)を加えて約3分間混練した。最後にジクミルパーオキサイド18g(同1.2重量部)を加えて引続き約1分間混練した。この間の混練物温度は110℃を超えないように調節した。得られた混練物を速やかに加圧ロールに通し、シート状に加工すると共に25℃以下に冷却することにより、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Kを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Kの特性値及び離型回復試験結果を表3に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Kは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0049】
実施例10(本発明の第3の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例9において、ホワイトカーボンの配合量を900g(同60重量部)から1050g(同70重量部)に変更し、ステアリン酸亜鉛225g(同15重量部)の替わりに、ステアリン酸カルシウム225g(同15重量部)を用い、ロキシオールG−78の配合量を150g(同10重量部)から225g(同15重量部)に変更する以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Lを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Lの特性値及び離型回復試験結果を表3に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Lは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0050】
実施例11(本発明の第3の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例9において、基材樹脂の配合量を、EPDM生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 23のもの]1050g及びBR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]450gに変更し、ステアリン酸亜鉛225g(同15重量部)の替わりに、ステアリン酸カルシウム150g(同10重量部)を用い、ロキシオールG−78の配合量を150g(同10重量部)から105g(同7重量部)に変更し、リコルブH−4 150g(同10重量部)の替わりに、脂肪酸アマイドS(花王株式会社製 脂肪酸アミド)45g(同3重量部)を用い、ジクミルパーオキサイドの配合量を18g(同1.2重量部)から30g(同2重量部)に変更する以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Mを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Mの特性値及び離型回復試験結果を表3に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Mは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0051】
実施例12(本発明の第3の金型離型回復用用ゴム系組成物)
実施例9において、BR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 42、1,4シス結合含有率95重量%のもの]600gの替わりに、BR生地[ムーニー粘度ML
1+4(100℃) 35、1,4シス結合含有率95重量%のもの]450gを用い、ホワイトカーボンの配合量を900g(同60重量部)から1050g(同70重量部)に変更し、ステアリン酸亜鉛225g(同15重量部)の替わりに、ステアリン酸亜鉛105g(同7重量部)及びステアリン酸カルシウム195g(同13重量部)を用い、ロキシオールG−78の配合量を150g(同10重量部)から300g(同20重量部)に変更し、ジクミルパーオキサイド18g(同1.2重量部)の替わりに、ジクミルパーオキサイド35g(同2.3重量部)及び1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン13g(同0.9重量部)を用いる以外は同様にして、厚さ6mmのシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Nを得た。
得られたシート状金型離型回復用用ゴム系組成物Nの特性値及び離型回復試験結果を表3に示す。試験結果から判るように、シート状金型離型回復用用ゴム系組成物Nは良好な成形性及び離型回復性を示した。
【0052】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の金型離型回復用用ゴム系組成物を用いることにより、優れた金型離型回復性が得られ、近年のエポキシ封止樹脂の高機能化及び半導体素子の高機能化を原因とする、キャビティ部、エアベント部等で発生するスティッキングを防止することが可能となる。また、金型離型性は長時間にわたって維持されるため、優れた連続成形性が示され、生産性向上に繋がる。