【実施例】
【0047】
次の実施例は、本発明の態様による単一源からのゲノムDNA、RNAおよびタンパク質の単離方法を詳しく説明するのに役立つが、制限するものではない。
溶液およびプロトコル
1.
実施例に用いられる溶液およびカラム
【0048】
【表3】
【0049】
2.
試料破壊および均一化
2.1 細胞破壊および均一化:
a.1x10
6個の培養細胞を、1.5mlミクロ遠心分離管中において8000xgで1分間の遠心分離によってペレットにする。
【0050】
b.上澄みを吸引によって完全に除去する。
c.350μlの溶解緩衝液(β−ME含有)を加える。
d.細胞ペレットを旋回させて再懸濁させる。
【0051】
e.溶解産物を、RNアーゼおよびDNアーゼ不含シリンジに装着した20ゲージ針を介して少なくとも5回通過させることによって、それを均一化する。
f.工程3へ進める。
【0052】
2.2 POLYTRON
TMホモジナイザー(Kinematica AG, Switzerland)を用いた組織破壊および均一化:
a.10mgの組織を、適当なサイズの試験管に入れる。
【0053】
b.350μlの溶解緩衝液(βME含有)を加える。
c.POLYTRON
TMの使用者手引書にしたがって組織を均一化する。
d.調製されたホモジネートを目視検査し、そして完全な均一化を確かめる。
【0054】
e.工程3へ進める。
2.3 乳鉢および乳棒を用いた組織破壊後、針およびシリンジを用いた均一化:
a.秤量済み組織を直ちに液体窒素中に入れ、そして乳鉢および乳棒で完全に粉砕する。
【0055】
b.組織粉末および液体窒素を、RNアーゼ不含の、液体窒素で冷却された2mlミクロ遠心分離管中に傾瀉する。
c.液体窒素を蒸発させるが、組織を融解させない。
【0056】
d.適当な容量の溶解緩衝液を加え、そして溶解産物を、RNアーゼ不含シリンジに装着した20ゲージ針を介して少なくとも5回通過させることによって均一化する。
3.
gDNA精製
3.1 gDNA結合
a.新しいスピンカラムを新しい採集管中に入れる。
【0057】
b.工程2による均一化された溶解産物(約350μl)をカラムに移す。
c.11000xgで1分間遠心分離する。
d.そのフロースルーを、RNAおよびタンパク質の精製用に蓄える。
【0058】
e.カラムを、新しい2ml採集管に移す。
3.2 カラム洗浄
a.500μlの溶解緩衝液をカラムに加える。
【0059】
b.11000xgで1分間遠心分離する。フロースルーを捨てる。
c.カラムを同じ採集管中に戻し入れる。
d.500μlの洗浄緩衝液をカラムに加える。
【0060】
e.11000xgで1分間遠心分離する。
f.カラムを、DNアーゼ不含の1.5mlミクロ遠心分離管に移す。
3.3 gDNA溶離
a.100μlのgDNA溶離緩衝液を、カラムの中央に加える。
【0061】
b.8000xgで1分間遠心分離する。
c.カラムを捨て、そして純粋なgDNAが入っている管を−20℃で貯蔵する。
4.
全RNA精製
4.1 RNA結合
a.新しいスピンカラムを新しい採集管中に入れる。
【0062】
b.工程3.1.d.によるフロースルーに、350μlの100%アセトンを加える。ピペットで数回上下することで十分に混合する。混合物全部をカラムに移す。
c.11000xgで1分間遠心分離する。
【0063】
d.そのフロースルーを、タンパク質精製用に蓄える。
e.カラムを、新しい2ml採集管に移す。
4.2 カラム洗浄
a.500μlの洗浄緩衝液をカラムに加える。
【0064】
b.11000xgで1分間遠心分離する。
c.カラムを、RNアーゼ不含の1.5mlミクロ遠心分離管に移す。
4.3 RNA溶離
a.100μlの溶離緩衝液を、カラムの中央に加える。
【0065】
b.8000xgで1分間遠心分離する。
c.カラムを捨て、そして純粋なRNAが入っている管を−80℃で、必要とされるまで貯蔵する。
【0066】
5.
2−D Clean-Up キット(GE Healthcare)を用いた全タンパク質精製
注記:全ての工程を、特に断らない限り、氷上で行うべきである。
5.1 タンパク質精製
a.工程4.1によるフロースルーを、タンパク質沈殿のための出発点として用いる。十分に混合し、そして100μlのフロースルーを、新しい1.5mlミクロ遠心分離管に移す。
【0067】
b.300μlの沈殿剤を加え、十分に混合する。氷上で15分間インキュベートする。
c.300μlの共沈殿剤を混合物に加える。短時間混合する。
【0068】
d.管を、最大速度で5分間遠心分離する。
e.上澄みを、ピペットで取るまたは傾瀉することによってできるだけ完全に除去する。
【0069】
f.400μlの共沈殿剤をペレットの上に加え、氷上で15分間インキュベートする。
g.管を、最大速度で5分間遠心分離する。上澄みを注意深く取り出し且つ捨てる。
【0070】
5.2 タンパク質ペレット洗浄
a.25μlの脱イオン水をペレットにピペットで加える。管を5分間旋回させる。
b.1mlの予備冷却された洗浄緩衝液および5μlの洗浄添加剤を、各々の管に加える。激しく旋回させる。(注記:ペレットは、洗浄緩衝液中に溶解しないであろう。)
c.管を、−20℃で30分間インキュベートし、10分毎に20〜30秒1回旋回させる。
【0071】
d.管を、最大速度で5分間遠心分離する。
e.上澄みを注意深く取り出し且つ捨てる。白色ペレットは、この工程で目に見えるはずである。
【0072】
f.蓋を開けたままにし、沈殿物を室温で最大5分間乾燥させる。
5.3 タンパク質ペレット再懸濁
a.100μlまでの5%SDSまたは7M尿素を加え、そして激しく混合して、タンパク質ペレットを溶解させる。ピペットの先端を用いてペレットを分散させる。
【0073】
b.95℃で3分間インキュベートして、タンパク質を完全に溶解させ且つ変性させる。次に、試料を室温に冷却させる。
c.11000xgで1分間遠心分離して、残留する不溶性材料を全てペレットにする。上澄みを、下流の用途、すなわち、SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングに用いる。試料は、−20℃で数ヶ月間または4℃で数日間貯蔵することができる。
【0074】
6.
全タンパク質単離(ZnSO4を用いた沈殿)
6.1 タンパク質沈殿
a.工程4.1.dによるフロースルーを、タンパク質沈殿のための出発点として用いる。
【0075】
b.600μlの10%ZnSO
4溶液を加える。
c.激しく混合し、そして室温で10分間インキュベートして、タンパク質を沈殿させる。
【0076】
d.16000xgで10分間遠心分離する。
e.上澄みをピペットで取るまたは傾瀉することによって注意深く除去する。
6.2 タンパク質ペレット洗浄
a.500μlの50%エタノールをタンパク質ペレットに加える。
【0077】
b.16000xgで1分間遠心分離する。
c.上澄みを、ピペットを用いることによってまたはできるだけの液体を傾瀉することによって除去する。
【0078】
d.蓋を開けたままにし、沈殿物を室温で5〜10分間乾燥させる。
6.3 タンパク質ペレット再懸濁
a.SDS−PAGE前のタンパク質定量化のために、最低100μlの5%SDS(または7M尿素)を加え、そして激しく混合して、タンパク質ペレットを溶解させる。ピペットの先端を用いてペレットを分散させる。
【0079】
b.必要ならば、1mlまでの5%SDS(または7M尿素)を加えて、ペレットを完全に溶解させる。
c.95℃で5分間インキュベートして、タンパク質を完全に溶解させ且つ変性させる。激しく旋回させる。
【0080】
d.試料を室温に5分間冷却させる。
e.16000xgで1分間遠心分離する。
f.上澄みを、新しい1.5mlミクロ遠心分離管に移す。
【0081】
g.SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングのために、上澄みを用いる。
h.試料を、−20℃で数ヶ月間または4℃で数日間貯蔵する。
実施例1:作業の流れの最適化
最適の作業の流れを見出そうとして、本発明者は、HeLa細胞培養物からのゲノムDNA、全RNAおよび全タンパク質の抽出および精製についていろいろな溶液および添加剤を調べた。
【0082】
本発明者は、7MグアニジンHCl、50mM Tris−HCl、pH7の(洗剤、例えば、5%NP−40またはTWEEN
TM20を含むまたは不含)混合物を含有する溶解緩衝液が、還元剤(例えば、TECPまたはβ−ME)の存在下で十分に作用するということを発見した。或いは、7MグアニジンHCl、50mM Tris−HCl、pH5の(洗剤、例えば、5%NP−40を含む)混合物を含有する溶解溶液も、還元剤(例えば、TECPまたはβ−ME)の存在下で十分に作用する。生物学的試料は、どちらかの溶液と混合した時に、上に与えられたプロトコルにしたがって均一化し、それをシリカメンブランカラム上に充填した。急速スピンで、フロースルーとしての混合物およびカラムに結合したゲノムDNAを取り出した。ゲノムDNAを含有するカラムを、上のプロトコルにしたがって更に処理して、純粋なゲノムDNAを単離した。
【0083】
フロースルーは、全RNA並びにタンパク質を含有する。全RNAのタンパク質からの更なる分離のために、0.7容量のアセトンは、全RNAをシリカメンブランカラムに選択的に結合させるのに有効であることが判明した。したがって、0.7容量のアセトンをフロースルーに加えた後、その混合物を、シリカメンブランカラムに充填した。急速スピンは、タンパク質を今のところ含有しているフロースルーとしての混合物と、RNAを上に結合した状態で含むカラムとを分離した。そのカラムを、上のプロトコルにしたがって更に処理して、純粋なRNAを単離し、同時に、フロースルーをタンパク質精製用に用いた。
【0084】
本発明者は、更に、低級脂肪族アルコールなどの極性プロトン性溶媒、更には、双極性非プロトン性溶媒を調べた。予想されるように、低級脂肪族アルコールは、シリカメンブランカラムへのRNA結合を可能にする。本発明者は、多数の双極性非プロトン性溶媒が、この目的にも有用であるということを発見した。具体的には、アセトンおよびアセトニトリルは、調べられた他の双極性非プロトン性溶媒も同様に作用することが判明したとはいえ(データは示されていない)、他のものより好ましいことが判明した。
【0085】
図2は、この方法より単離されたゲノムDNAおよび全RNAのゲル画像を示す。出発材料は、100万個のHeLa細胞であった。溶解溶液は、7M GuHCl、50mM Tris−HCl、pH7、5%TWEEN
TM20および1%TECPを含有した。第二鉱物支持体の充填前に、フロースルーを、アセトンまたはアセトニトリルと混合した。それ以外は、上のプロトコルにしたがった。ゲノムDNAを、200μlの最終容量中で溶離した。全RNAは、100μlの最終容量中で溶離した。ゲルの各レーンは、10μlの溶離試料を含有した。ゲノムDNAおよび全RNA双方の単離および精製について、プロトコルが十分に作用したということは明らかである(レーン1〜3:アセトンを用いて単離された全RNA;4〜5:アセトニトリルを用いて単離された全RNA;M:λHindIIIマーカー)。
【0086】
実施例2:培養細胞からのゲノムDNA、RNAおよびタンパク質の単離
培養細胞を、作業の流れの性能について更に調べた。本発明者は、更に、作業の流れを、市販製品、すなわち、AllPrep キット(Qiagen Inc., Valencia, CA)およびNUCLEOSPIN
TMRNA/Protein キット(DNA溶離緩衝液セット付加、MACHEREY−NAGELGmbH & Co. KG. Germany)と比較して調べた。多重試料を処理して、プロトコルの一貫性を評価した。製品の純度は、UV分光光度法でおよびゲル分析で評価した。得られた試料は、更に、リアルタイムPCR、RT−PCRおよびウェスタンブロッティング実験などの下流の用途において評価した。本発明者の結果は、上記のプロトコルが、培養細胞について一貫して且つ十分に作用するということを示している。
【0087】
本発明者は、1x10
7個のHeLa細胞培養物より出発した。それら細胞をペレットにし、そして1x10
6個のアリコートへ希釈後、調製を開始した。3人の作業者が各々、アリコートの一つについて上のまたは製造者からの同じプロトコルにしたがった。各々のプロトコルにおいて任意の工程は行わなかった。ゲノムDNAおよびRNAは、初日に単離した。タンパク質フロースルーは、その翌日に、3種類の異なった方法、すなわち、2−D Clean-Up Kit(GE Healthcare, Piscataway, NJ)、NUCLEOSPIN
TM Protein Pecipitator キット(Macherey-Nagel)および AllPrep Protein Precipitation キット(Qiagen)で更に精製した。
【0088】
ゲノムDNAおよび全RNA単離収量結果は、上の表1に示されている。タンパク質精製収量結果は、上の表2に示されている。ゲノムDNA、全RNAおよびタンパク質を単離する場合に、プロトコルが、一貫した高品質の結果を生じるということは理解されうる。
【0089】
ゲノムDNAおよびRNAの純度も、アガロースゲル分析によって調べた。
図3は、市販製品と比較される、ゲノムDNAおよびRNA試料のゲル画像を示す。上部:全RNA;下部:ゲノムDNA。左側パネルは、培養HeLa細胞より単離された核酸試料を示す。右側パネルは、ラット肝組織より単離された核酸試料を示す(実施例3を参照されたい)。M:マーカーλ/HindIII(100ng);D:ラットゲノムDNA対照(400ng);R:ラット肝全RNA対照(600ng)。ゲノムDNAについて、本方法およびNUCLEOSPIN
TMには、ウェルにつき2μlを充填したが、AllPrep には、4μlを充填した。全RNAについて、本方法および AllPrep には、ウェルにつき5μlを充填したが、NUCLEOSPIN
TMには3μlを充填した。単離されたゲノムDNAおよびRNAが、純粋であり且つ交差混入がほとんどないということは、それらゲル画像から明らかである。
【0090】
本発明者は、更に、単離された全RNAを、Agilent Bioanalyzer(Agilent Technologies, Inc., Santa Clara, CA)を用いて分析した。再度、それら画像は、異なったプロトコルによる類似の結果を示している(
図4)。
【0091】
精製されたゲノムDNAの品質は、リアルタイムPCR検定で評価した。リアルタイムPCR反応は、100ng/試料の精製ゲノムDNAを用い、PuReTaqREADY−TO−GO
TMPCRビーズ(GE Healthcare, Piscataway, NJ)をGELSTAR
TM染料(Cambrex, Baltimore, MD)の存在下で用い、GAPDH遺伝子に特異的なプライマーを用いて設定した。
【0092】
リアルタイムPCR反応
ゲノムDNA鋳型を、水中20ng/μlに希釈する。
【0093】
【表4】
【0094】
増幅は、以下のこれらサイクリング条件にしたがって、ABI7900HT Fast Real-time PCR System(Applied Biosystems Inc., Foster City, CA)で監視した。
【0095】
【表5】
【0096】
シグナルの量は、GAPDH遺伝子の増幅に相関する。シグナルが、バックグラウンド閾値より上に上昇する地点を、増幅のCt値として定義する。調べられた試料は全て、極めて類似の増幅プロフィールを示す(
図5)。
【0097】
同様に、全RNAを、リアルタイムRT−PCRで調べた。
図6は、市販製品によるものを含めた、試料の間で認められる極めて類似の増幅プロフィールを有する、得られた増幅結果を示す。
【0098】
単離されたタンパク質を、クーマシー染色を伴うSDS−PAGEゲルで分析した。RNAカラムからのフロースルーを、修飾2−D Clean-Up Kit プロトコルを用いて処理した。沈殿したタンパク質を、50μlの5%SDSで再構成させた。各々のウェルに、5μlの試料タンパク質を充填した。
図7は、HeLa細胞培養物より単離された全タンパク質が、本発明によるプロトコルと、市販製品(AllPrep)のものとの間で比較しうるということを示す。
【0099】
それらタンパク質試料を、更に、抗β−アクチン抗体でのウェスタンブロッティング実験を用いて分析し、そして市販製品と比較した。結果を、
図8に示す。M:Full-Range Rainbow Molecular Weigt Markers(GE Healthcare)。レーン1〜2、6〜7および10:2−D Clean-Up Kit での本プロトコルによるフロースルー。レーン3〜4および8〜9,AllPrep Protein ppt。レーン5,Macherey-Nagel Protein Pecipitator でのNUCLEOSPIN
TMフロースルー。HeLa細胞より単離されたタンパク質には、ウェルにつき5μgを用い、組織より単離されたタンパク質には、10μgを用いた(実施例3を参照されたい)。
【0100】
精製されたゲノムDNA、RNAおよびタンパク質の分析は、作業の流れが、培養細胞について十分に作用するということを明らかに示している。
実施例3:組織試料からのゲノムDNA、RNAおよびタンパク質の単離
本発明者は、作業の流れの性能について、ラット肝、脾臓および肺を含めたいろいろな組織源を調べた。本発明者は、更に、作業の流れを、市販製品、すなわち、AllPrep キットおよびNUCLEOSPIN
TMRNA/Protein キット(DNA溶離緩衝液セット付加)と比較して調べた。多重試料を処理して、プロトコルの一貫性を評価した。製品の純度は、UV分光光度法でおよびゲル分析で測定した。得られたゲノムDNAは、更に、リアルタイムPCR、RT−PCRおよびウェスタンブロッティング実験などの下流の用途において評価した。本発明者の結果は、上記のプロトコルが、組織試料について一貫して且つ十分に作用するということを示している。
【0101】
一例として、ここで、ラット肝からのゲノムDNA、RNAおよびタンパク質の単離についての詳細を与える。10mgのラット肝組織を、POLYTRON
TMホモジナイザーを用いて均一化した。それら実験は、実施例2の場合と同様に設計する。簡単にいうと、3人の作業者が各々、上のまたは製造者からの同じプロトコルにしたがって、溶解産物のアリコートを処理する。各々のプロトコルにおいて任意の工程は行わなかった。ゲノムDNAおよびRNAは、初日に単離した。タンパク質フロースルーは、その翌日に、2−D Clean-Up キット、NUCLEOSPIN
TMProtein Pecipitator キットおよび AllPrep Protein Precipitation キットを含めた異なった方法で更に精製した。
【0102】
ゲノムDNAおよび全RNA単離結果は、上の表1に示されている。タンパク質単離結果は、上の表2に示されている。プロトコルが、一貫した高品質ゲノムDNA、全RNAおよびタンパク質を生じるということは理解されうる。
【0103】
ゲノムDNAおよびRNAの純度も、アガロースゲル分析によって調べた。
図3は、単離されたゲノムDNAおよびRNA試料のゲル画像を示す(詳細は、実施例2を参照されたい)。単離されたゲノムDNAおよびRNAが、純粋であり且つ交差混入がほとんどないということは、それらゲル画像から明らかである。本発明者は、更に、単離された全RNAを、Agilent Bioanalyzer を用いて分析した。再度、それら画像は、異なったプロトコルの間で類似の結果を示している(
図9)。
【0104】
精製されたゲノムDNAの品質は、リアルタイムPCR検定で評価した。リアルタイム反応は、実施例2のプロトコルにしたがって、100ng/試料の精製ゲノムDNAを用いて設定した。調べられた試料は全て、極めて類似の増幅プロフィールを示す(
図10)。同様に、全RNAを、リアルタイムRT−PCRで調べた。
図11は、市販製品によるものを含めた、試料の間で認められる極めて類似の増幅プロフィールを有する、得られた増幅結果を示す。
【0105】
単離されたタンパク質を、クーマシー染色を伴うSDS−PAGEゲルで分析した。本プロトコルによるタンパク質フロースルーを、異なった量のZnSO
4またはTCAを用いた沈殿を含めたいろいろな方法を用いて処理した。沈殿したタンパク質を、700μlの5%SDSで再構成させた。各々のウェルに、10μlの試料を充填した。
図12は、ラット肝より単離された全タンパク質のプロフィールが、異なった沈殿プロトコルの間で比較しうるということを示す。
図13は、本プロトコルによるタンパク質フロースルーを、2−D Clean-Up Kit、更には、Macherey-Nagel Protein Pecipitator キットを用いて更に精製することができるということを示す。収量は、市販の AllPrep キットまたはNUCLEOSPIN
TMキットの場合と同様である(
図13)。
【0106】
それらタンパク質試料を、更に、ウェスタンブロッティング実験を用いて分析し、そして市販製品と比較した(
図8、詳細については、実施例2を参照されたい)。
精製されたゲノムDNA、RNAおよびタンパク質の分析は、作業の流れが、組織試料について十分に作用するということを明らかに示している。
【0107】
実施例4:増加量の非イオン性洗剤は、ゲノムDNAおよび全RNA双方の収量を改善する
実施例2および実施例3で詳しく説明されたように、2%TWEEN
TM20を含む本発明者の標準溶解緩衝液は、十分に作用する。しかしながら、本発明者は、増加量の非イオン性洗剤が、第一の場合のシリカメンブランへのゲノムDNAの結合を改善し、それによって、ゲノムDNAおよび全RNA双方の回収率を増加させるということを発見した。したがって、実施例1を、溶解緩衝液中の5%TWEEN
TM20で行った。増加した洗剤レベルでの追加の利点は、少なくとも一部分は、第一の場合のシリカメンブランへのゲノムDNAの改善された結合ゆえの、単離された全RNA中のゲノムDNA交差混入の減少である。
【0108】
本発明者は、多数の非イオン性洗剤(例えば、TWEEN
TM20、NP−40、TRITON X−100
TM)はいずれも、この効果を達成しうるということを発見した。これら洗剤のいろいろな組合せも有効である。更に、この増加量の洗剤は、溶解溶液の一部分でありうると考えられる、またはそれは、シリカメンブランカラムへの試料の結合直前に加えうると考えられる。本発明者は、ここで、TWEEN
TM20およびNP−40の最適の組合せで得られた結果を与える。すなわち、溶解緩衝液中において、2%TWEEN
TM20および5%NP−40の組合せを、2%TWEEN
TM20の代わりに用いた。他の溶液およびプロトコルは、それら実施例の初めの部分に述べられたようにしたがったが、洗剤組合せおよびレベルのこの調整は、単離された全RNA中のゲノムDNA混入を大きく減少させた。更に、ゲノムDNAおよび全RNA双方の収量も増加した。全タンパク質の単離は、溶解緩衝液中のこの洗剤レベル増加によって悪影響を受けなかった(デーは示されていない)。
図14は、100万個の細胞各々のHeLa細胞試料によるゲル画像および収量結果を示す。
図15は、各々10mgのラット肝試料より得られたものを示す。
【0109】
実施例5:単離された全RNAは、高レベルの低分子RNAを含有する
単離された全RNA中において、本発明者は、高濃度の低分子RNA分子を認めた(
図14および
図15を参照されたい)。ここで、本発明者は、上のプロトコルより精製された全RNA試料からの低分子RNA(200nt未満長さ)の豊富化および単離を示すデータを示し、そしてその単離された低分子RNAを、市販のマイクロRNA単離キットを用いて単離されたものと比較する。
【0110】
本発明者は、最初に、Qiagen 製の市販キット(miRNeasy Mini Kit Qiagen, Cat#217004)を用いて、本発明によって単離された全RNAから低分子RNAを精製した。簡単にいうと、30μgの上で単離された全RNA(10mgのラット肝組織より単離された全RNAの約3分の2に相当する)を用いて、市販キットのプロトコルにしたがって低分子RNAを精製した。対照として、更に、低分子RNAを、miRNeasy Mini Kit に与えられたプロトコルを用いて、10mgのラット肝組織より直接的に単離した。
図16は、それら結果を示す。レーン1、2、3は、本プロトコルにしたがって単離された全RNAより精製された低分子RNAである。Cと標識されたレーンは、ラット肝組織より直接的に単離された対照低分子RNAを示す。本発明者は、更に、単離された全RNAを別の対照(例えば、「投入」と標識されたレーン)として実験する。組織試料から直接的によりも多くの低分子RNAを、本方法にしたがって単離することができるということは明らかである。
【0111】
単離された低分子RNAが、マイクロRNAを含有するということを確かめるために、本発明者は、いろいろなコピー数の4種類の異なったマイクロRNAを用いてqRT−PCR検定を行った。本発明者は、試料中の全4種類のマイクロRNAを検出することに成功した(
図17)。したがって、本発明者は、商業的に入手可能なキットを用いて、本方法より精製された全RNAからマイクロRNAを首尾よく単離した。
【0112】
本発明者は、更に、単離された全RNA中の低分子RNAの存在および存在量に関して、本発明者のプロトコルを市販の製品と比較した。本発明者は、Qiagen 製の AllPrep および Norgen 製のRNA/DNA/Protein 精製キットを選択している。双方とも、ゲノムDNA、全RNAおよびタンパク質の同時単離用に奨励される。本発明者は、これらキット並びに本発明者自身のプロトコルを用いて、全RNAを単離した。次に、本発明者は、miRNeasy Mini Kit を用いて、全RNAから低分子RNAを単離することを試みた。結果を、
図18に示す。低分子RNAは、下部パネル上に示され、「大型」RNA(低分子RNAを奪われた全RNA)は、上部パネル上である。本方法による全RNA投入(cm)および AllPrep キット(Q)を、対照として示す。本発明者は、本発明者のプロトコルを用いて単離された全RNAが、10%を超える低分子RNAを含有し、他のキットより単離された全RNAが、3%未満の低分子RNAを含有すると予測している。
【0113】
本明細書中に挙げられている特許、特許公報および他の公開参考文献は全て、各々が本明細書中に個々に且つ具体的に援用されたかのように、本明細書中にそのまま援用される。本発明の好ましい代表的な態様を記載しているが、当業者は、本発明が、単に例示の目的であって且つ制限としてではなく与えられているそれら記載の態様以外で実施されうるということを理解するであろう。本発明は、請求の範囲によってのみ制限される。