【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0047】
なお、本実施例における評価方法は、以下に示す方法により行った。
【0048】
[ 評価方法 ]
(
1)総GSLの測定
GSLの測定方法としては、ミロシナーゼ分解法やHPLCによる手法などがあるが、本発明においては、LC−MSによる測定を行った。具体的な方法は次の通りである。サンプル100mgを正確に測り取り、エッペンドルフ(2ml)に分取する。ジルコニアビーズ(Φ5mm)をエッペンドルフに1個ずつ入れ、これに0.1%ギ酸溶液(ギ酸0.1gを80%メタノール水溶液100mlに溶解したもの)1mlを加え、ミキサーミル(MM 301、株式会社レッチェ)により懸濁(25times/sec、5分処理)する。
【0049】
懸濁処理物を遠心分離処理(15,000g、10分、4℃)し、上清を800μl分取する。カラム(Sep−Pack Vac NH
2 cartridge 3cc/500mg、日本ウォーターズ株式会社)を0.1%ギ酸溶液1mlで平衡化し、上清100μlを吸着させた後、0.1%ギ酸溶液1ml、次いでメタノール1mlでカラム洗浄を行う。
【0050】
カラムに吸着している画分を5%アンモニア溶液(28%アンモニア水をメタノールで5倍希釈したもの)900μlで溶出させ、1晩減圧乾燥させる。乾燥物に0.1%ギ酸溶液200μlを加え再溶解後、ろ過(ウルトラフリー−MC、孔径0.22μm、日本ミリポア株式会社)して分析用サンプルとする。分析は、LCMS−2010EV(株式会社島津製作所)を用い、以下の条件で分析を行う。なお、GSL類の含量比較は、得られた分析データのGSLの全てのピークの合計エリア面積で行なった。また、各GSLの構成成分量が併せて必要なときは、対応する各GSLピークを求め、これを積み重ねて全ピーク量を示した。
【0051】
<分析条件>
カラム : Develosil RPAQUEOUS AR−5
No.RPAR520150W(Φ2×150mm)
移動相A: 10mMギ酸アンモニウム水(pH3.75)
移動相B: 50%(v/v)アセトニトリル中、10mMギ酸アンモニ
ウム水 (pH3.75)
流 速 : 0.2ml/分、カラムオーブン40℃
グラジエント: min A B
0 100 0
5 100 100
30 0 100
40 0 100
60 0 100
M S : LCMS−2010EV(株式会社島津製作所)
イオン化法 : ESI
分析タイプ : スキャン/SIM
分析モード : スキャン(ネガティブ)
イベント時間 : 1秒
検出器電圧 : 1.5kV
測定開始(m/z) : 300
測定終了(m/z) : 500
測定時間 : 60分
【0052】
(2)各GSLの定量
GSLの定量は、具体的には以下のとおり行った。サンプル(100mg前後)を正確に量り、エッペンドルフチューブ(2mL容)に分取する。ジルコニアビーズ(Φ5mm)をエッペンドルフチューブに1個ずつ入れ、0.1%ギ酸溶液(ギ酸1mLを80%メタノール水溶液1Lに混和したもの)1mLを加え、ミキサーミル(MM301、株式会社レッチェ)により懸濁(25times/sec、5分処理)する。懸濁処理物を遠心分離して(15,000g、5分、RT)試料を得た。
【0053】
固相抽出カラム(ディープウェル仕様;Oasis WAX 96−Well Plate 30μm (30mg)、日本ウォーターズ株式会社)を0.1%ギ酸水溶液1mLで平衡化し、先に調製した試料(上清100μL)を吸着させた後、0.1%ギ酸水溶液1mL、次いでメタノール1mLでカラム洗浄を行う。カラムに吸着している画分を5%アンモニア/含水メタノール溶液(25%アンモニア水をメタノールで5倍希釈したもの)900μLで溶出させ、1−プロパノールを1ウェルあたり3滴添加し、40℃下で乾固させる。乾固物に0.1%ギ酸水溶液500μLを加えて再溶解し、分析用サンプルとする。
【0054】
分析は、LCMS−2010EV(株式会社島津製作所)を用い、以下の条件で分析を行う。インジェクト量は20μLである。
【0055】
<分析条件>
カラム : Develosil RPAQUEOUS−AR−3
(野村化学、Φ2×150mm)
移動相A: 10mMギ酸アンモニウム水(pH3.75)
移動相B: 10mMギ酸アンモニウム in 50%(v/v)含水アセト
ニトリル (pH3.75)
流 速 : 0.2ml/分、カラムオーブン40℃
移動相グラジエント: min A B
0 100 0
10 40 60
15 0 100
15.1 100 0
25 100 0
M S : イオン化法:ESI
分析タイプ : スキャン/SIM
分析モード : スキャン(ネガティブ)
イベント時間 : 1秒
検出器電圧 : 1.5kV
測定開始(m/z): 300
測定終了(m/z): 500
スキャンスピード : 250emu/sec
測定時間 : 25分
【0056】
なお、各GSLの定量は、分析データの各GSLに対応するピークエリア面積を、各標品GSLのピークエリア面積と比較し、行った。
【0057】
(3)ビタミンCの測定
ビタミンCの測定方法としては、ヒドラジン比色法、インドフェノール滴定法、HPLCによる手法などがあるが、本発明においてはヒドラジン比色法を用いた。具体的な方法は次の通りである。サンプル1gを正確に測り取り、5%メタリン酸溶液(メタリン酸5gを100mlの水に溶解させたもの)100mlに懸濁させた後、懸濁液をろ紙(Whatman No.2)でろ過し、このろ液を試験管に1mlずつ分注する(一方が本試験区、他方が空試験区)。また、VC標準液として、ビタミンCを5mg/100ml含有する溶液を調製し、これも試験管に1mlづつ分注する(標準液本試験区および標準液空試験区)。
【0058】
4本の試験管中に、インドフェノール溶液(2,6−ジクロロインドフェノールナトリウム30mgを100mlの温水に溶解し、ろ過したもの)0.5ml、チオ尿素溶液(チオ尿素2gを100mlの5%メタリン酸溶液に溶解させたもの)1mlを加える。
【0059】
次いで、本試験区の試験管にのみさらにヒドラジン溶液(2gの2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを9N硫酸溶液(濃硫酸1容と水3容を混和したもの)100mlに溶解したもの)0.5mlを加え、37℃で3時間反応させる。反応終了後氷浴中で冷却し、85%硫酸溶液(濃硫酸9容と水1容を混和したもの)を2.5ml加え、室温で30分間反応後、それぞれの520nmの吸光度を測定する(標準液本試験区のものをE
S、本試験区のものを、E
Tとする)。
【0060】
一方、空試験区の試験管は、そのまま37℃で3時間反応させた後、氷浴中で冷却し、85%硫酸溶液を2.5ml加え、更に前述のヒドラジン溶液0.5mlを加え、室温で30分間静置後、それぞれの520nmの吸光度を測定する(標準空試験区のものをE
SO、空試験区のものをE
TOとする)。
【0061】
ビタミンC量は、吸光度あたりのアスコルビン酸のmg数fを、5/(Es−Eso)としたとき、下式が成立するので、この式によりビタミンC量を算出する。
【0062】
ビタミンC量(mg/100ml) = G × f × (E
T−E
T0)
但し、
G; サンプル希釈倍数
E
S0; ビタミンC標準液の空試験区の吸光度
E
S; ビタミンC標準液の本試験区の吸光度
E
T0; サンプル液の空試験区の吸光度
E
T; サンプル液の本試験区の吸光度
【0063】
色調の測定
色調の測定方法としては、色彩計による測定や分光測色計による測定などがあるが、本発明においては分光式の測定器(Spectrophotometer SE2000、日本電色工業株式会社)を用いた。なお測定は粉体のまま行った。測定値(a値)は小さいほど緑色が強いことを示す。
【0064】
香味の測定
香味の測定方法としては、パネラーによる官能評価及び味認識装置による分析を実施した。具体的にはサンプル4gを分取し、水100mlに溶解したサンプルを用い、評価を行った。官能評価は優秀なパネラー5名で行い、各パネラーが比較品(表1、3、5及び10中、加熱時間0秒;0点)と比べた各サンプルの評価を下記基準で点数をつけ、5人の点数の平均値を官能評価の評価点とした。
【0065】
<評価基準>
比較例と比べて、不快味が非常に強い 3点
比較品と比べて不快味が強い 2点
比較品と比べ不快味がやや強い 1点
比較品と同じ 0点
比較品に比べて不快味がやや弱い −1点
比較品と比べて不快味が弱い −2点
比較品と比べて不快味が非常に弱い −3点
【0066】
また、味認識装置としては、SA402B(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー)を用い、アブラナ科特有の不快味と相関の高い渋味をパラメーターとして選択し、比較を行った。渋味の数値は低いほどアブラナ科特有の不快味が少ないことを示す。
【0067】
実 施 例 1
加熱温度、時間の検討:
ケール(2月播種、5月及び7月収穫)の生の葉を水で洗浄し、pH7〜8の、温度70℃〜95℃の湯浴中で、30秒〜10分加熱処理後、水浴中にて冷却した。冷却したケール葉を手で裂き、その後搾汁機(名称「PERSEE青汁さん」、型番FD−1800、フカダック株式会社)を用いて搾汁液を得た。この搾汁液を噴霧乾燥し、青汁粉末を得た。得られた青汁粉末について、上記の方法によりそのGSL量(各GSLの定量および総GSL量)およびビタミンC量の測定、色調(a値)の測定並びに香味評価を行った。その結果を
図1及び2、並びに表1〜11に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【0079】
実 施 例 2
茹で湯pHの検討:
ケールの生の葉を水で洗浄し、pH4〜9に設定した、温度90〜95℃の湯浴中で、1分〜2分加熱処理後、水浴中にて冷却した。冷却したケール葉を手で裂き、その後搾汁機(名称「PERSEE青汁さん」、型番FD−1800、フカダック株式会社)を用いて搾汁液を得た。搾汁液を噴霧乾燥し、青汁粉末を得た。得られた青汁粉末について、前記の方法によりそのGSL量およびビタミンC量の測定、色調(a値)の測定並びに香味評価を行った。その結果を表12〜18及び
図3〜7に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
【表13】
【0082】
【表14】
【0083】
【表15】
【0084】
【表16】
【0085】
【表17】
【0086】
【表18】
【0087】
比 較 例
未加熱処理品の試作:
ケールの生の葉を水で洗浄後、加熱せずにそのまま手で裂き、搾汁機(名称「PERSEE青汁さん」、型番FD−1800、フカダック株式会社)を用いて搾汁液を得た。搾汁液を噴霧乾燥し、青汁粉末を得た。得られた青汁粉末について、そのGSL量およびビタミンC量の測定、色調(a値)の測定並びに香味評価を行った(表1、3、5及び10中、加熱時間0秒)。
【0088】
参 考 例
播種後日数とGSL含量の関係:
播種後25日、35日、45日、55日、66日、75日、87日経過したケール(3月播種)の生の葉を水で洗浄後、その100mgを正確に測り取り、エッペンドルフ(2ml)に分取し、前記の総GSL量の測定方法に従い、各GSLの割合と、全GSL量の測定を行った。その結果を
図8に示す。