【実施例1】
【0059】
以下は、この開示の態様の非限定的説明例であり、それは、Wuら著Journal of the Electrochemical Society、第150巻、9号、H205〜H213(2003年)に記載されており、ここで参考のために取り込む。この例は、この開示のいかなる態様の範囲も制限することを意図しないが、特定の例示的条件および結果を提供するものである。従って、当業者は、所望の結果を得るために多くの条件を修飾することができることを理解し、これらの修飾はこの開示の態様の範囲内であることが意図される。さらに、この実施例に関するさらなる詳細を、Wuら著Journal of the Electrochemical Society、第149巻、10号、G555〜G561(2002年)およびWuら著、J.Appl.Polym.Sci.、第88巻、5号、1186〜1195(2003年)に見ることができ、いずれもここで参考として取り込む。
【0060】
実施例1は、非矩形、テーパーかつ非対称型断面プロフィールを有するチャンネル形状を作るための感光性捨てポリマー製造方法の開発および使用を説明する。チャンネル断面の形状を制御する性能は、例えば、微小チャンネルシステムの流れを正確に制御することに特に有用であると期待される。チャンネル断面を制御することにより流体の流れパターンおよび分散を制御する性能を、ここで、コンピューター流体力学シミュレーションにより検討する。非矩形、テーパーかつ非対称型断面プロフィールが、例えば曲線微小チャンネルにおける「栓流」条件の保存において有用であり、流れ中での成分の分散が低下させることが発見された。従って、感光性捨てポリマーの熱分解を詳細に研究し、分解中にチャンネル形状を維持する新規加熱プロトコールを開発した。これらの方法の使用は、グレースケール平板印刷を用いてテーパー断面を有する微小チャンネルを作ることを示した。
【0061】
(曲線チャンネル中の流れのシミュレーション)
微小流体装置を設計および製造する際に、曲線形状のチャンネルが必要であることは殆ど避けられない。例えば、チップ上の長い分離カラムを設計する際、装置を必要な寸法制限内に維持するためにチャンネルを蛇行経路に変えることが必要であった。そのような場合、チャンネルを通して移動する流体の滞留時間分布の相違を最小化するようにチャンネル中で流体流動パターンを正確に制御することが極めて重要であり得る。換言すると、通常、分離、分析および、注入または分離後の流体サンプルの混合および空間的制限の損失を防止するための他の流体操作のために用いられる装置中で「栓流」に近い条件を維持しようとする。一つの特別の問題は、微小流体チャンネルのコーナーおよび曲線セクションを通過して移動する流体のための滞留時間変動を最小化することである。この点を説明すると共に、テーパー断面を有するチャンネルを用いることにより実現され得る改良を検討するために、一連のコンピューター流体力学シミュレーションを行った。
【0062】
Fluent Inc.により製造されるコンピューター流体力学(CFD)シミュレーションパッケージであるFLUENT(登録商標)を用いて、微小チャンネル用の一連の異なるコーナー設計における流れをシミュレートした。Fluent Inc.により製造されるFLUENT用の前処理付属部品であるGAMBIT(登録商標)を用いて、所望のモデル形状を組み立て、メッシュ点をモデルに適用し、所望の境界領域を定義した。一旦定義されると、FLUENTを用いて、各微小チャンネル中の流動パターンをシミュレートすると共に、各場合についての数的および図的結果を得た。
【0063】
微小チャンネル中の一連の90度転換を、種々の断面形状を用いてシミュレートした。
図4Aおよび4Dは、四つのシミュレートしたチャンネルの断面を示す。
図4Aは、均一区域チャンネルの寸法を示す。
図4Bおよび4Cは、テーパーコーナーを有するチャンネルを示す。テーパーは、最適に近い設計を表す
図4Dでは、コーナーの周囲の流れを向上させる。転換の内側半径は、60μmの一定に維持し、転換の外側半径は120μmの一定に維持した。これらのチャンネルを通過する流れ、および大気圧と推定される一定圧力出力条件のシミュレーションをするのに、同じ境界条件を適用した。この場合、流動媒体として水を用いたが、結果は、層流条件下のニュートン流体に一般的なもののはずである。これらの条件下において、流速およびレイノルズ数はかなり低く、層流条件を示しており、よって、これらの問題の解決のためにFLUENT中で層流モデルを用いた。
【0064】
これらの微小チャンネルコーナーの各々の周囲を流れる流体中で起こる分散を見るために、流体パケット軌道および各転換の際の移動時間を計算した。
図5A〜5Cは、それぞれ、標準的矩形チャンネル型転換、三角形断面チャンネル転換、および構造中の改良されたチャンネル転換についてのコーナーに沿った放射方向距離の関数としての流体パケットの移動時間のプロットを示す。これらのプロットについてのパケット移動時間の異なるラインの外観は、チャンネル中の異なる垂直位置における流体パケットが、チャンネルの頂部および底部の近くでの低い速度故に小さな分散を見せるという事実による。
【0065】
図5Aは、標準的矩形チャンネル形状が、90度転換の周りに移動した後に、最初に平坦な濃度プロフィールをかなり分散させることを示している。層流条件下、転換の外側における流体の長い経路と組み合わされたチャンネル断面を通過する比較的均一な速度プロフィールが、内側半径における流体と比較して外側半径における流体について3〜5倍長い移動時間を提供する。この分散は180度曲げの場合、より誇張される。
【0066】
この問題の一つの自然な解決は、半径位置に拘わらず流体の等しい移動時間を達成するために、転換の内側半径に近い流体の速度を低下させることである。この速度修正を達成する一つの方法は、チャンネルの異なる領域の断面積を変えることである。
【0067】
図5Bは、三角形断面チャンネルにおける転換の周囲を流れる流体についての移動時間プロフィールを示す。転換の内側半径における低下したチャンネル高さは、転換の内側に沿った流体の速度を遅くすると予想される。実際、
図5Bは、三角形断面は過補償され、外側半径の近くの流体と比較して内側半径の近くの流体について移動時間が長くなることを示している。FLUENTの結果を詳しく調べると、鋭角で交差する二つの壁を有するチャンネルセクションによりこれらの領域において分散が著しくなり、よって、チャンネル断面形状の鋭角をできれば回避すべきであることも明らかである。これらの事実に基づき、シミュレーション転換の回りの分散を最小化する改良されたチャンネル断面プロフィールを設計するように最適化を行った。
【0068】
図5Cは、そのような改良されたチャンネル構造についての流体移動時間を示す。移動時間プロフィールは、この改良された形状を用いた90度コーナーの周りを流れる流体について実質的に均一である。すなわち、転換における微小チャンネルの断面形状を設計することにより、流動プロフィールにおける分散の最小化が可能となるはずであることが明らかである。
【0069】
(実験)
使用した捨てポリマーは、5−ブチルノルボルネン(BuNB)と5−アルケニルノルボルネン(ANB)との73/27のモル比のコポリマーを含むUnity(登録商標)4481Pであった(オハイオ州ブレクスヴィル在Promerus LLC製)。ポリスチレン検定標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリマーの重量平均分子量(M
W)および多分散度指数(PDI)を測定すると、それぞれ、425,000および3.74であった。フリーラジカル光開始剤(PI)として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を用いた。溶媒としてメシチレン(MS、97%、アルドリッチ社製)を用いて、ポリノルノルネン(PNB)およびPIの溶液を調製した。二つの異なる組成である16/0.32/84のモル比のPNB/PI/MS(乾燥ポリマーに対して開始剤2重量%)および16/0.64/84のモル比のPNB/PI/MS(乾燥ポリマーに対して開始剤4重量%)を実験で用いた。露光および焼成後、キシレン(98.5+%、アルドリッチ社製)を用いてポリマーパターンを現像した。
【0070】
捨てポリマーの熱分解特徴を、Seiko Instruments Inc.製TG/DTA320システムを用いて調べた。熱重量分析(TGA)測定を、N
2下に、28ml/分のパージ速度で行った。カプセル封入した捨てポリマーの構造を、N
2でパージングしたリンドバーグ管炉において熱分解した。
【0071】
微小チャンネルの製造のために、PNB/PIフィルムを、Brewer Sciene CEE100スピンナーおよびホットプレートシステムを用いてシリコンウエハ上に形成した。2400rpmのスピン速度および110℃で60分間のソフトベークで、約3.5〜4.0ミクロン厚PNB/PIフィルムを得た。フィルム厚さを、Veeco Dektakプロファイルメーターを用いて測定した。i線フィルター使用UV照射源(365nm波長)を備えるOAI Mask Alignerを用いて、PNB/PIフィルムを露光およびパターニングした。露光前に、UV光源の強度を、365nmプローブを有するOAI Model356 Exposure Analyzerを用いて測定した。露光後、サンプルを、炉内で120℃で30分間、露光後焼成した。サンプルを、ウエハを500rpmでスピンしつつキシレンを連続的に噴霧して現像した。
【0072】
以下の条件を用いるPlasma Therm反応性イオンエッチング(RIE)システムを使用して、現像パターンから残留ポリマーを除去した。
【0073】
5立方センチメートル毎秒(sccm)のCHF
3、45sccmのO
2、250mTorr、300W、35℃。
【0074】
これらの条件下のポリマーのエッチング速度は、約300nm/分である。プラズマ助長化学蒸着(PECVD)を行って、ポリマーチャンネルパターンのカプセル封入のためにSiO
2上塗りを付着させた。SiO
2を、以下の条件を用いるPlasma Them PECVDで付着させた。
【0075】
380kHz RF周波数、50W出力、200℃、550mTorr、およびN
2O(1400sccm)と、N
2(400sccm)中に希釈された2%SiH
4との気体混合。
【0076】
これらの条件を用いる酸化物の堆積速度は約50nm/分である。
【0077】
(熱分解プログラム)
熱分解プロセスにおいて、式(1)、
【数2】
【0078】
(式中、W
0は初期質量、Wは分解中のある時間に残っている質量、およびW
fは熱サイクルの最後におけるサンプルの最終的質量である)
に示すようなTG曲線から部分分解を計算することができる。
【0079】
ポリマーの熱分解についての速度記載は、通常、式(2)、
【数3】
【0080】
(式中、nは分解反応の全次数、Aはアレニウス前指数因子、およびE
aは分解反応の活性化エネルギーである)
に示すように表される。
【0081】
チャンネル構造の変形につながるポリマーパターンからの気体分解産物の突然かつ大きな放出を避けるために、全分解プロセス中、分解率(dα/dt)を一定に維持することが望ましい。分解プロセス全体において分解率が定数rに等しいと仮定すると、
【数4】
【0082】
式(3)を積分すると式(4)、
【数5】
【0083】
に示す一般的な所望の結果が得られる。
【0084】
反応次数、活性化エネルギーおよび前指数因子が分解中に著しく変化しないと仮定すると、dα/dtおよびαを、式(2)中でそれぞれrおよびrtで置き換えることができ、それにより、以下の式が得られる。
【数6】
【0085】
ここで、全プロセスを通してポリマー分解の一定速度を維持するのに必要な時間対必要温度プロフィールを得るために式(5)を整理することができる。時間対温度の明確な表現を式(6)に示す。
【数7】
【0086】
すなわち、加熱プロフィールを設計するために、四つのパラメーターを特定する必要がある。ポリマー分解を説明する三つの動的パラメーター(A、E
aおよびn)、所望のポリマー分解率r。先の実験で行ったTGAデータの回帰に基づいて、ここで用いられるポリマー用の速度パラメーターを以下のように決めた。A=5.8×10
14分
-1、E
a=207kJ/モル、およびn=1.05。すなわち、所定の一定分解率rについて、分解時間に対する温度の曲線を得ることができる。
【0087】
(結果および検討)
分解条件:非揮発性分解産物の形成および微小チャンネル中の望ましくない残渣につながり得るポリマーの酸化を避けるために純窒素雰囲気中で感光性捨てポリマーの熱分解を行った。不活性雰囲気の使用に加えて、先に提示したように、制御された加熱プロフィールを用いて、比較的一定のポリマー分解率を維持した。この一定分解率は、チャンネル形状を著しく変形させる高圧を発生させるような気体産物が放出されないことを確保する。
【0088】
図6は、それぞれ、約425℃の一定温度(等温分解)および種々の加熱速度(動的分解)の両方において分解される純PNBサンプルについての時間対分解率の曲線を示す。各場合において、分解率にピークがある。ピークの幅は、捨てポリマーから気体産物への転化中の遷移期間に相当する。より高い加熱速度またはより高い加温度の等温分解により、分解率プロフィールにおいて鋭いピークが得られる。これは、分解プロセスの大部分が短い時間間隔で起こり、よって、気体分解産物が突然かつ多量に放出されることを意味する。従って、制御された加熱プロフィールを用いて分解率を一定の低い水準に制御すると、この現象が取り除かれ、分解中のチャンネル変形が防止されることが予想された。種々の分解手順の効果を、最終的に得られる微小チャンネル形状および寸法に比較することにより、この理論を試験することにした。
【0089】
式(6)に基づき、1分当たり1、2および3%の分解率を達成するのに必要な時間対温度加熱プロフィールを計算し、
図7に示す。この図は、一定分解率において、大部分の分解時間中の分解温度を僅かな傾斜率で比較的低温に設定すべきであることを示す。しかしながら、完了近くの分解として、高温を用いることができ、これは、合理的時間内にポリマーが完全に分解することを補助する。
【0090】
式(6)により作られる滑らかな時間対温度曲線に密に近づく代表的温度プロフィールを用いて、分解を行った。
図8は、式(6)を用いて計算された時間対温度曲線および、装置製造のためのリンドバーグ分解炉において試験された対応する単純擬似加熱プロフィールを示す。
図9は、1%/分の分解率を達成するために示された単純擬似加熱プログラムについてのTGAの結果を示す。DTG曲線は、分解率が、極端に変動すること無く所望の1%/分水準の近くで実際に変動しないことを示す。すなわち、
図6に示す分解率中の鋭角ピークを、より巧妙な加熱プロフィール(時間の関数としての非線形加熱プロフィール)を用いて避けることができる。カプセル封入ポリマーサンプルの処理において同じ擬似加熱プロフィールを用いると、カプセル封入チャンネル中に変形は観察されないが、電子顕微鏡検査は、チャンネル構造中に少量のポリマーが残ることを示した。擬似加熱プロフィールの二つの異なる修飾を、この残留ポリマーを除去する試みにおいて試験した。第一の場合、最終的に455℃で1時間加熱して、残留ポリマーを除去しようとした。この高温維持は、実際、SEM断面で観察されるように残留ポリマーを実質的に減少させるが、一部の残渣は、1時間の保持後でも残っていた。
図8に示す中間保持を二倍にした第二の方法も試験した。これは、平均分解率をさらに0.5%/分水準近くに低下させた。この場合、分解中にチャンネルプロフィールの変形が起こらず、分解後の微小チャンネルにおいてポリマーが実質的に残らないことが観察された。これは、これらが、プロセスの傾斜が速すぎる場合、分解中に形成されるさらなる副産物であり得ることを意味している。これにより、高温加工でも、除去が困難な残渣が得られる。より低い温度でより長く保持することにより、分解率を遅く(および、すなわち、パターンプロフィール変形を低減)すると共に、最終的チャンネル構造中の残留ポリマーを取り除くことができる。
【0091】
ポリイミドおよびSiO
2でカプセル封入した微小チャンネル:
図3A〜3Fのスキームに従って微小チャンネルを作った。処理において、2400rpmのスピン速度および110℃で60分間のソフトベーク条件で、約3.5〜4.0ミクロン厚PNB/PIフィルム(PNB中4重量%開始剤)を成形した。フィルムを、石英上クロムマスクを用いて、450mJ/cm
2の線量でUV光に曝し、炉内で120℃で30分間露光後焼成した。露光後焼成の後、フィルムをキシレンを用いて噴霧現像して、所望のチャンネルパターンを作った。パターン区域には現像後に顕著な残渣はなかったが、現像物上に封入材料を上塗りすると、基体への接着が劣った。実際、捨てポリマーを基体からおそらくきれいに現像した区域では上塗り材料中に小さな起泡が観察された。従って、試料のポリマーが現像後に残る可能性があり、上塗りの基体への良好な接着が防止される。
【0092】
この現象を避けるために、チャンネルパターンをカプセル封入する前にRIEを用いて酸素プラズマ中でドライエッチングすることにより残渣除去処理を行った。プラズマを用いる残渣除去後、ポリイミドまたはSiO
2を用いてサンプルをカプセル封入した。ポリイミドは、高いガラス転移温度および熱安定性、低い誘電率、引張強さ、湿度吸着および応力を示すので、カプセル封入用の良好な材料である。ここでは、HD Microsystems PI2734ポリイミドを用いて、チャンネル構造の一部を上塗りした。これらの場合、PI2734は、チャンネルパターンの頂部に2300rpmで30分間スピンコートし、N
2下で350℃で1時間硬化させた。これらの条件下でのポリイミド層の厚さは、約4.5μmである。さらに、SiO
2を用いてチャンネル構造の一部をカプセル封入した。これらの場合、先に記載したPECVDレシピを用いてSiO
2の2μm厚カプセル封入層を沈着させた。
【0093】
カプセル封入ポリマーパターンの分解を、種々の分解率で行って、チャンネル構造への速度の効果を調べた。
図10A〜10Bは、ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルのSEM像を示す。この結果は、分解率が実際にはチャンネル構造に著しく影響を与えることを示している。低分解率(1〜2%/分)において、製造されたチャンネル構造は、最初のPNB捨てポリマーパターンの寸法および形状を維持している。しかしながら、比較的高い分解率(3%/分)においてまたは、高い一定温度分解プロセスを用いる場合、微小チャンネルがドームまたは円弧型プロフィールに変形される。この変形問題が、側部寸法が増加したときに、微小チャンネルのより重要な問題になることも明らかである。より大きな幅を有するチャンネルは、より小さい寸法のチャンネルよりも、明確に変形した。SiO
2でカプセル封入したチャンネルのSEM像を、
図11A〜11Fに示す。チャンネル変形の程度は、SiO
2上塗り構造において、同じ公称チャンネル構造寸法およびポリマー分解率でのポリイミド上塗りチャンネルと比較して大きく見えることが観察された。SiO
2上塗りサンプル中のこの大きな変形は、二つの上塗り材料の機械的特性の相違と、上塗り材料中での分解産物の拡散速度の相違の両方に起因し得る。
【0094】
テーパー断面構造を有する微小チャンネル:テーパー微小チャンネル構造を作るために、ここで記載されている概念は、グレースケールフォトマスクおよび低コントラスト感光性捨て材料を用いる平板印刷プロセスの使用である。一連の実験を行って、三次元全てにおいて制御されて形成されるような微小チャンネルを製造するための手法を用いる可能性を検討した。
【0095】
チャンネル構造は、クロムストライプの透明区域に対する比を変化させて、チャンネルの幅を通過する透過率%のほぼ線形のグラジエントを用いて示す。この特別の場合、クロムストライプ構造は、寸法が200nmであり、この操作において用いられる感光性捨てポリマー用の複解決構造として作用する。ETEC Systems(カリフォルニア州Hayward)における電子線平板印刷により、これらの設計から二つのマスクを作った。表2は、この操作において用いられる二つの主チャンネル構造をより詳細に説明する。このタイプのグレースケールフォトマスクの使用により、感光性捨て材料を、単一の平板印刷露光段階を用いてチャンネル構造の幅を通して所定の線量で露光することができる。この露光グラジエントを、低コントラストレジスト材料と共に用いて、単一平板印刷プロセスにおいて、基体の平面に対して横方向および垂直方向の両方に造形される構造を作ることができる。
【0096】
異なるコントラスト水準の二つの感光性材料を用いて、このマスクを有するテーパー微小チャンネル構造を生成させた。
図12は、この操作で用いられた二つの感光性捨てポリマー組成についてのコントラスト曲線を示す。これらの材料についてのコントラスト曲線を測定すると共にコントラスト値を計算する方法が、既に文献に記載されている。これらの二つのシステムのコントラスト因子は、乾燥ポリマー仕込量に対して2重量%(「材料1」と呼ぶ)および4重量%(「材料2」と呼ぶ)の光開始剤について、それぞれ、僅かに0.51および0.85である。
【0097】
【表2】
【0098】
このコントラスト曲線データを用いて、マスク上の位置の関数として相対的透明度が正確に知られている場合、これらの感光性材料を有するグレースケールフォトマスクを用いた露光から生じるパターンプロフィールの粗い予想を計算することができる。多項式の調整により、コントラスト曲線を、以下の関数を用いて適切に記載することができる。
【数8】
【0099】
ここで、f
iは、材料iについて、線量Dへの露光および湿式現像の後に残っているフィルム厚さの関数である。
【0100】
すなわち、グレースケールフォトマスクから製造されるチャンネルパターンの適当な形状は、式9を用いて予想することができる。
【数9】
【0101】
(式中、f
iは材料iについてのコントラスト関数、d(χ)はチャンネルパターンを交差する特定の位置χにおけるフィルム(現像後)の厚さ、TP(χ)は構造を交差する位置χにおけるマスクの部分的透明度、Dは用いられた公称露光線量、およびFTは成形フィルムの最初の厚さである)。
シミュレーションしたチャンネルパターンの概要は、式9により計算された点を含み、これを、7点補整式10により補整した。
【数10】
【0102】
(式中、S
iおよびY
iは、それぞれ、i番目の点についての補整信号および最初の信号である)。
【0103】
テーパー構造チャンネルパターンを、
図3A〜3Fに概略したものに類似の一連の段階を用いてグレースケール平板印刷手法を使用して作った。まず、12μm厚PNB/PIフィルムを、700rpmのスピン速度および110℃で2分間のソフトベーク条件を用いて成形した。次に、フィルムを、グレースケールフォトマスクを用いて、UV光に曝した。公称露光線量を、100%透明構造の現像後に最初の厚さの80%が残っているフィルムを得るように感光性材料用のコントラスト曲線データを用いて定めた。用いた線量は、2重量%および4重量%開始剤仕込量に対して、それぞれ、1300mJ/cm
2および165mJ/cm
2であった。フィルムを、炉内で、120℃で30分間、露光後焼成した。フィルムを、キシレンを用いて、500rpmのスピン速度で30秒間、噴霧現像した。微小チャンネルパターンの最終的形状を、プロファイルメーターを用いて測定した
。
【0104】
図13および14は、開始剤仕込量2重量%および4重量%での、プロファイルメーターにより測定される製造された真態様I型PNBパターンおよび、比較のための、予想される微小チャンネルパターン(式7〜10を用いる)を示す。二つの組成により製造された異なるパターン間の比較により、低コントラストを有する材料が、所望の平滑テーパー構造により、似ているプロフィールを作ることが明らかに示される。しかしながら、プロフィール形状の単純な予想は、この方法を用いて製造される実際の構造を大まかにしか得ることができないことが分かる。マスクをより詳しく調べると、透過率の所望の平滑グラジエントが、構成パターンに用いられる極めて小さな構造寸法故に、忠実にマスクに再現されないことが明らかであった。これにより、そのような方法のための正確なグレースケールフォトマスクの製造が、実際には困難なものとなる。いずれの場合にも、より慎重に注意してマスクにデザインを正確に移すと、材料用のコントラストデータを、所望のパターン形状を得るために用い得る特定の感光性材料用のグレースケールフォトマスク構造を設計するための式(7)〜(10)と組み合わせて用いることができる。
【0105】
テーパーポリマー微小チャンネルパターンを、次に、上塗りし、分解して、テーパープロフィールを最終的微小チャンネルに移す性能を試験した。最初に、酸素RIEプラズマエッチングを用いて基体からポリマー残渣を除去した。次に、先に記載したものと同じ条件を用いて、チャンネルパターンをSiO
2でカプセル封入した。カプセル封入したチャンネルパターンの熱的分解を、N
2下に0.5%/分の分解率で行った。得られるテーパー微小チャンネルのSEM像を、
図15A〜15Dに示す。分解中の加熱プロフィールを制御することによりポリマーの分解率を注意深く制御する性能故に、チャンネル構造中に変形は観察されなかった。これは、
図13および14中の最初のPNBパターンのプロフィールを、
図15A〜15D中のSEMチャンネル断面と比較することにより見ることができる。
図15A〜15D中のチャンネルの幅は、ポリマー残渣除去段階中の僅かなRIE過エッチングが一部の原因になり、グレースケールフォトマスク上の構造寸法より狭い。
図15A〜15Bを、
図15C〜15Dと比較すると、平滑テーパー微小チャンネル構造の製造に、低コントラスト捨て材料が望ましいことが分かる。参考として、
図15A〜15Cの右側、および
図15B〜15Dの左側は、グレースケール構造ではない。予想されるように、チャンネル構造の最終的形状は、マスク上のグレースケールパターン、感光性材料のコントラスト、および構造の印刷において用いられる公称露光線量の組み合わせにより決められる。
【0106】
微小チャンネルコーナーの周りの流れ中での分散の低下において、製造されたチャンネル断面の理想的な効果を得るために、
図13に示す形状のコーナーの周囲の予想された流体移動時間を、前述のようなFLUENTを用いてシミュレーションした。
図16は、初期の理想化されたチャンネルシミュレーションにおいて用いれらた境界条件および速度を用いるこのコーナーの周りの予想される移動時間を示す。このシミュレーションにより、この操作において実証目的で製造された粗く形成されたチャンネルでさえ、標準的矩形断面チャンネルよりも良好に実行されると期待されることが明らかである。さらに、マスク設計およびプロセス条件を最適化することにより、
図5Cに示すものに類似のより理想的な形状を、装置製造のために達成して用い得ることが期待される。
【0107】
(結論)
微小チャンネルの組み立てを、感光性捨てポリマー材料を用いて示した。このプロセスは、光平板印刷により捨てポリマーをパターニングすること、RIEを用いてポリマー残渣を除去すること、誘電性媒体でカプセル封入すること、およびカプセル封入されたポリマーチャンネルパターンを熱的に分解することからなる。ポリマー分解の速度モデルを用いて、捨てポリマーの熱的分解を一定速度に維持するために加熱プログラムを設計する方法が示された。この手法を用いて設計された加熱プロフィールが、突然かつ高度の分解率(例えば、チャンネル構造を変形させる気体分解産物を劇的に放出することになる)を防止するために、および、捨てポリマーの熱的分解後に任意の実質的変形を示さない制御構造を有する微小チャンネルパターンを製造するためにも示された。分解率を制御し気体分解産物をゆっくり放出すると、分解率に大体等しい速度で分解産物が上塗りを透過することができ、構造の変形および損傷につながり得る微小チャンネル中の高圧の形成が避けられる。チャンネルがより大きいと、変形の傾向が大きいことも分かった。テーパー断面を有する微小チャンネルの製造のために、グレースケール平板印刷プロセスが開発され示された。そのようなテーパーチャンネルは、シミュレーションにより、微小流体システムの性能に有害である分散のような効果を下げ得ることが示された。
【0108】
この開示の前記態様は、単なる実行例であり、この開示の原理の明確な理解のために提示されている。この開示の精神および原理から実質的に離れることなく、この開示の前記態様に多くの変化および修正を設けることができる。全てのそのような修正および変化は、ここで、この開示の範囲内に含まれ、特許請求の範囲により保護されると意図される。