特許第5726542号(P5726542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5726542ポリマー、その使用方法、およびその分解方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726542
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】ポリマー、その使用方法、およびその分解方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20150514BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20150514BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20150514BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   G03F7/038 501
   G03F7/029
   G03F7/031
   G03F7/40 511
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-9035(P2011-9035)
(22)【出願日】2011年1月19日
(62)【分割の表示】特願2004-545424(P2004-545424)の分割
【原出願日】2003年10月16日
(65)【公開番号】特開2011-90335(P2011-90335A)
(43)【公開日】2011年5月6日
【審査請求日】2011年1月19日
(31)【優先権主張番号】60/418,930
(32)【優先日】2002年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10/686,697
(32)【優先日】2003年10月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507071073
【氏名又は名称】ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】コール、ポール、エー.
(72)【発明者】
【氏名】アレン、スーアン、ビドストラップ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、シャオチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン、クリフォード、リー
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−230159(JP,A)
【文献】 特開2002−200599(JP,A)
【文献】 特開平04−067041(JP,A)
【文献】 特開平05−163328(JP,A)
【文献】 特開2000−075482(JP,A)
【文献】 特開2003−240915(JP,A)
【文献】 特開2002−189297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性捨てポリマーおよび光開始剤を含み、感光性捨てポリマーがポリノルボルネンを含み、ポリノルボルネンがアルケニル置換ノルボルネンを含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
光開始剤がネガ型光開始剤である請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項3】
光開始剤がポジ型光開始剤である請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項4】
光開始剤がフリーラジカル発生剤である請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項5】
光開始剤がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、およびそれらの組み合わせから選択される請求項4記載のポリマー組成物。
【請求項6】
感光性捨てポリマーを熱分解する方法であって、
基体、上塗り層、およびその上塗り層中の一定区域中の請求項1のポリマー組成物を含む構造を提供すること、
時間の関数として分解の一定速度を維持すること、および
その区域からポリマーを除去して一定区域中に空間領域を形成すること
を含んでなる方法。
【請求項7】
維持が、熱分解プロフィール式、
【数1】
(式中、Rは一般気体定数、tは時間、nは分解反応の全次数、rは所望のポリマー分解率、Aはアレニウス前指数因子、およびEaは分解反応の活性化エネルギーである)
に従って構造を加熱することを含む請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互関係)
この出願は、2002年10月16日に出願された整理番号60/418,930の「Fabrication of Microchannels using Polynorbornene Photosensitive Sacrificial Materials」と題する同時継続米国仮出願の優先権を主張し、その全てをここで参考に取り込む。
【0002】
(連邦出資研究または開発に関する記述)
米国政府は、この発明の出資ライセンスおよび、制限環境下にて特許所有権者にこの特許を、米国政府の米国立科学財団(認可#DMI−9980804)により与えられたMDAの期間として提供される合理的期間、他人に許諾させる権利を有する。
【0003】
本発明は、一般的にポリマー、より詳しくは、感光性ポリマー、その使用方法、およびその分解方法に関する。
【背景技術】
【0004】
微小流体装置は、薬剤発見、生物医学的試験および化学的な合成および分析を含む種々の分野における適用への可能性を有している。そのような装置において、数十〜数百ミクロンの水準の横断面寸法を有する微小チャンネル中で液体および気体が操作される。そのような微小チャンネス装置における処理は、試薬および検体の少ない消費量、高度に小型で搬送可能なシステム、迅速な処理時間、および使い捨てシステムの可能性を含む多くの利点を提供する。しかしながら、そのような全ての利点に拘わらず、微小流体装置は、現在、限定された用途でしか用いられず、通常、その操作複雑性および可能性において依然としてかなり単純な装置である。例えば、真に搬送可能な微小分析システムの製造において、一つの現在の難点は、電子的要素(例えば、感知法)および流体要素を同じ装置内に単純に一体化することである。機能を同じ装置内に一体化するこの性能を制御し、それにより微小流体装置の機能の水準を制御する最も重要な事項の一つは、構造を作るために用いられる方法である。さらに、微小チャンネルを通す微小動力学は、混合が必要とされないシステムにおいて混合を避けるのに重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在までの微小流体装置を作るための二つの最も普及している方法は、超平坦硝子またはポリ(ジメチルシロキサン)のような弾性ポリマーの層を一緒に結合することを含む。いずれの方法も、同じ基体中で検出器のような非流体要素を微小チャンネルシステムと一体化することに関する厳しい制限および困難を被る。他の方法は、単一水準の微小チャンネルの連続を完成させるための数10の加工段階を必要とすることを含む幾つかの制限を被る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡単に説明すると、この開示の態様は、特に、ポリマー、その使用方法、およびその分解方法を含む。特に、ポリマーの一例は、捨てポリマー(Sacrificial polymer、サクリフィシャルポリマー、犠牲ポリマー)および光開始剤を有する感光性ポリマーを含む。
【0007】
構造を作るための方法も提供される。方法の一例は、特に、捨てポリマーおよび、ネガ型光開始剤およびポジ型光開始剤から選択される光開始剤を含む感光性ポリマーを表面上に配置すること、感光性ポリマーから形成すべき三次元構造を定める光学密度プロフィールをコード化するグレースケールフォトマスクを感光性ポリマー上に配置すること、グレースケールフォトマスクを通して感光性ポリマーを光エネルギーに曝すこと、および感光性ポリマーの一部を除去して、架橋感光性ポリマーの三次元構造を形成することを含む。
【0008】
さらに、ポリマーを分解する方法も提供される。方法の一例は、特に、基体、上塗り層、およびその上塗り層中の一定区域中のポリマーを有する構造を提供すること、時間の関数として分解の一定速度を維持すること、およびその区域からポリマーを除去して一定区域中に空間領域を形成することを含む。
【0009】
さらに、構造が提供される。構造の一例は、基体、空間的に変化する高さを有する空間領域区域、および基体の一部上に配置されていると共に空間領域区域の実質的部分を構成する上塗り層を含む。
【0010】
他のシステム、方法、特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を調べると当業者に明らかとなる。全てのそのようなさらなるシステム、方法、特徴および利点が、この記載に含まれ、本発明の範囲に含まれ、添付の請求項の範囲により保護されるものとする。
【0011】
この開示の多くの局面は、以下の図面を参照してより良く理解され得る。図中の成分は、必ずしも寸法が正しくなく、その代わりにこの開示の原理を明確に説明するように強調されている。さらに、図面において、複数の図面を通して同様の参照番号は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、光開始剤の代表的態様を示す。
図2図2は、空間領域における態様を有する代表的構造の断面図を示す。
図3図3A図3Fは、図2に示す構造を作る代表的方法を示す断面図である。
図4図4A図4Dは、4つのシミュレーションチャンネルの断面を示す。図4Aは、均一区域チャンネルの寸法を示す。図4Bおよび4Cは、テーパーコーナーを有するチャンネルを示す。
図5A図5Aは、それぞれ、標準的矩形チャンネル型曲線、三角形断面チャンネル曲線、および構造中の改良されたチャンネル曲線についてのコーナーに沿った放射方向距離の関数としての流体パケットの移動時間のプロットを示す。
図5B図5Bは、それぞれ、標準的矩形チャンネル型曲線、三角形断面チャンネル曲線、および構造中の改良されたチャンネル曲線についてのコーナーに沿った放射方向距離の関数としての流体パケットの移動時間のプロットを示す。
図5C図5Cは、それぞれ、標準的矩形チャンネル型曲線、三角形断面チャンネル曲線、および構造中の改良されたチャンネル曲線についてのコーナーに沿った放射方向距離の関数としての流体パケットの移動時間のプロットを示す。
図6図6は、それぞれ、425℃の一定温度(等温分解)および種々の加熱速度(動的分解)の両方において分解された純ポリノルボルネン(PNB)サンプルについての時間対分解率の曲線を示す。
図7図7は、実施例1において式(6)を用いて1分当たり1、2および3%の分解率を達成するのに必要な時間対温度加熱プロフィールを示す。
図8図8は、式(6)を用いて計算される時間対温度曲線および、装置製造のためのリンドバーグ分解炉において試験された対応する単純擬似加熱プロフィールを示す。
図9図9は、1分当たり1%の分解率を達成するために示された単純擬似加熱プログラムについての熱重量分析(TGA)の結果を示す。
図10A図10Aは、ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図10B】ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図10C】ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図10D】ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図10E】ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図10F】ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図10G】ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図11A図11Aは、SiO2でカプセル封入されたチャンネルのSEM像を示す。
図11B図11Bは、SiO2でカプセル封入されたチャンネルのSEM像を示す。
図11C図11Cは、SiO2でカプセル封入されたチャンネルのSEM像を示す。
図11D図11Dは、SiO2でカプセル封入されたチャンネルのSEM像を示す。
図11E図11Eは、SiO2でカプセル封入されたチャンネルのSEM像を示す。
図11F図11Fは、SiO2でカプセル封入されたチャンネルのSEM像を示す。
図12】実施例1で用いられた2つの感光性ポリマー組成物についての対照曲線を示す。
図13】開始剤仕込量2重量%および4重量%での、プロファイルメーターにより測定される製造された真態様I型PNBパターンおよび、比較のための、予想される微小チャンネルパターン(実施例1の式7〜10を用いる)を示す。
図14】開始剤仕込量2重量%および4重量%での、プロファイルメーターにより測定される製造された真態様I型PNBパターンおよび、比較のための、予想される微小チャンネルパターン(実施例1の式7〜10を用いる)を示す。
図15A】テーパー微小チャンネルのSEM像を示す。
図15B】テーパー微小チャンネルのSEM像を示す。
図15C】テーパー微小チャンネルのSEM像を示す。
図15D】テーパー微小チャンネルのSEM像を示す。
図16】初期理想化チャンネルシミュレーションにおいて用いられる境界条件および速度を用いた微小チャンネルコーナーの周囲の流れについての予想移動時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的には、ポリマー、その使用方法、それから形成される構造、およびその分解方法を開示する。ある態様のポリマーを用いて、写真平板技術を用いて独自の空間的寸法(例えば、空間的に変化する高さ)を有する感光性三次元構造を形成することができる。さらに、分解方法を用いて、感光性ポリマー三次元構造により定められる空間的境界を変化(例えば、変形)させることなく、材料(例えば、上塗り層)中に位置するポリマー三次元構造を分解することができる。
【0014】
ポリマーの態様には、感光性ポリマーが含まれる。感光性ポリマーは、一または二以上の捨てポリマーおよび一または二以上の光開始剤を含むが、これらに限定されない。光開始剤は、ネガ型光開始剤およびポジ型開始剤を含むことができる。
【0015】
通常、ネガ型光開始剤を用いて、捨てポリマーの除去をより困難(例えば、普通は捨てポリマーを溶解する溶媒により安定)にすることができる。例えば、感光性ポリマー(捨てポリマーおよびネガ型光開始剤を含む)の層の半分が光エネルギー(例えば、紫外線(UV)光、近紫外線、および/または可視光)に曝され、一方、他の半分は曝されない。続いて、層全体が溶媒に曝され、この溶媒がUV光に曝されていない層を溶解する。
【0016】
より詳しくは、露光区域は架橋感光性ポリマーを含み、一方、露光されていない部分は、未架橋感光性ポリマーを含む。未架橋感光性ポリマーを溶媒を用いて除去して、架橋感光性ポリマーを残すことができる(例えば、感光性三次元構造)。
【0017】
理論に拘泥されることを意図しないが、光エネルギーに曝されたとき、特に一つのタイプのネガ型光開始剤はフリーラジカルを発生することができ、これが、捨てポリマー間の架橋反応を開始して架橋感光性ポリマーを形成する。その結果、グレースケール平板印刷を用いて、未架橋感光性ポリマーを除去することにより感光性ポリマーから感光性三次元構造を作ることができる。
【0018】
通常、ポジ型開始剤を用いて、捨てポリマーを除去容易(例えば、溶媒に対してより不安定)にすることができる。例えば、感光性ポリマー(捨てポリマーおよびポジ型開始剤を含む)の層の半分をUV光に曝し、一方、他の半分は曝さない。続いて、層全体を溶媒に曝して、この溶媒がUV光に曝された層を溶解する。
【0019】
理論に拘泥されることを意図しないが、光エネルギーに曝されたとき、ポジ型開始剤が酸を発生する。次に、塩基に曝されたとき、捨てポリマーの溶解が、光エネルギーに曝されていない捨てポリマーに比べて増加する。その結果、グレースケール印刷を用いて、露光感光性ポリマーを除去することにより感光性ポリマーから感光性三次元構造を作ることができる。
【0020】
通常、感光性ポリマーは、限定はされないが微小電子部品(例えば、マイクロプロセッサーチップ、通信チップおよび光電子チップ)、微小流体、センサー、分析装置(例えば、微小クロマトグラフィー)のような区域において、感光性ポリマーを熱的に分解することにより感光性空間領域中に形成することができる感光性三次元構造を作るための捨て材料として、用いることができる。さらに、感光性ポリマーは、例えば、絶縁材として用いることができる。
【0021】
感光性三次元構造を有する感光性空間領域を作るために捨て材料として感光性ポリマーを用いる態様の場合、感光性ポリマーの分解は、感光性ポリマーを包囲する材料(例えば、上塗りポリマー層)の一または二以上を透過するのに充分に小さな気体分子を作るべきである。さらに、感光性ポリマーは、不当に圧力を上昇させず、包囲材料中に空間領域を形成するように、ゆっくり分解すべきである。さらに、感光性ポリマーは、包囲材料の分解または劣化温度より低い分解温度を有すべきである。さらに、感光性ポリマーは、上塗り材料の堆積または硬化温度より高いが、感光性ポリマーが用いられる構造中の成分の劣化温度より低い分解温度を有すべきである。
【0022】
捨てポリマーは、ポリノルボルネン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、各々の官能化化合物およびそれらの組み合わせのような化合物を含み得るが、これらに限定されない。ポリノルボルネンは、アルケニル置換ノルボルネン(例えば、シクロアクリレートノルボルネン)を含み得るが、これらに限定されない。ポリカーボネートは、ノルボルネンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリシクロヘキセンカーボネート、およびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。さらに、捨てポリマーの分子量は10,000〜200,000とすべきである。
【0023】
捨てポリマーは、感光性ポリマーの約1〜30重量%であり得る。特に、捨てポリマーは、感光性ポリマーの約5〜15重量%であり得る。
【0024】
前述のように、光開始剤はネガ型光開始剤およびポジ型開始剤を含み得る。ネガ型光開始剤は、捨てポリマーの架橋を引き起こす反応体を発生する化合物を含み得る。ネガ型光開始剤は、限定はされないが感光性フリーラジカル発生剤のような化合物を含み得る。光酸発生剤(例えば、エポキシド官能化系)のような別のネガ型光開始剤を用いることができる。
【0025】
ネガ型感光性フリーラジカル発生剤は、光に曝したときに、少なくともその一方はフリーラジカルである二以上の化合物に分解する化合物である。特に、ネガ型光開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(図1における構造1)(イルガキュア819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(図1における構造2)(イルガキュア369、チバ社製)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(図1における構造3)(イルガキュア651、チバ社製)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(図1における構造4)(イルガキュア907、チバ社製)、ベンゾインエチルエーテル(図1における構造5)(BEE、アルドリッチ社製)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン(イルガキュア1300、チバ社製)、およびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。特に、光開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1を含み得る。
【0026】
ポジ型開始剤は、光酸発生剤を含み得るが、これらに限定されない。より具体的には、ポジ型開始剤は、求核ハロゲン化物(例えば、ジフェニルヨードニウム)および錯体金属ハロゲン化物アニオン(例えば、トリフェニルスルホニウム塩)を含み得るが、これらに限定されない。
【0027】
光開始剤は、感光性ポリマーの約0.5〜5重量%であり得る。特に、光開始剤は、感光性ポリマーの約1〜3重量%であり得る。
【0028】
光開始剤および捨てポリマー中で計数されない感光性ポリマーの残りの割合(例えば、約65〜99%)は、限定はされないがメシチレンMS、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−ブチルアセテートジグライム、3−エトキシプロピオン酸エチルおよびそれらの組み合わせのような溶媒で補給することができる。
【0029】
感光性ポリマーの例には、表1に示すものがある。
【0030】
【表1】
【0031】
ここまで感光性ポリマーを全般的に説明したが、以下に、感光性三次元構造を作るために感光性ポリマーを用い、感光性三次元構造を分解して感光性空間領域(例えば、固体または液体を実質的に排除している気体充填領域、または真空領域)を形成することができる態様の例を記載する。
【0032】
通常、基体および/または基体上の材料の層の上に感光性ポリマーの層を配置することにより感光性三次元構造を形成することができる。以下に記載するように感光性三次元構造をコード化する感光性ポリマーまたはその一部上にグレースケールフォトマスクが配置される。グレースケールフォトマスクを通して感光性ポリマーを光エネルギーに曝すと共に非露光感光性ポリマー(ネガ型)または露光感光性ポリマー(ポジ型)を除去した後、感光性三次元構造が形成される。
【0033】
グレースケールフォトマスクは、三次元感光性構造を定める光学密度プロフィールをコード化する。グレースケールフォトマスクを光エネルギーに曝したとき、既知量の光エネルギーが、グレースケールフォトマスクの一部を通過させられる。グレースケールフォトマスクを通過させられる光エネルギーの量を制御するように、グレースケールフォトマスクの設計が用いられる。特に、グレースケールフォトマスク上の位置の関数としてグレースケールフォトマスクを通過させられる光エネルギーの量を制御するようにグレースケールフォトマスクを設計することができる。すなわち、グレースケールフォトマスク上の位置の関数としてグレースケールフォトマスクを通過させられる光エネルギーの量を変化させることにより感光性ポリマーから三次元構造を作るようにグレースケールフォトマスクを設計し用いることができる。グレースケールフォトマスクは、当該分野で知られた方法により形成することができる(米国特許第4,622,114号)。
【0034】
三次元構造(および対応する感光性空間領域)は、限定はされないが非矩形断面、非対称断面、曲線断面、弓形断面、テーパー断面、楕円またはその部分に対応する断面、放物線またはその部分に対応する断面、双曲線またはその部分に対応する断面、およびそれらの組み合わせのような断面区域セクションを有し得る。例えば、三次元構造は、非矩形構造、非正方形構造、曲線断面、テーパー構造、楕円またはその部分に対応する構造、放物線またはその部分に対応する構造、双曲線またはその部分に対応する構造、およびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。さらに、三次元構造は、空間的に変化する高さを有する断面区域を有する。
【0035】
図2は、感光性三次元構造を有する代表的非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の断面図である。例えば、非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12を、微小流体システム中のコーナーセクションとして用いることができる。この使用および他の使用が、実施例1により詳細に記載されている。
【0036】
図2に示すように、非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12が、基体10上に配置される。上塗りポリマー層14が、非矩形テーパーかつ非対称感光性空間領域12の回りに配置される。特に、もう一つの態様において、非矩形テーパーかつ非対称感光性空間領域12を、上塗り層14中の基体10上に配置することができる。特に、さらにもう一つの態様において、複数の非矩形テーパーかつ非対称感光性空間領域および他の空間領域を、上塗り層14中に複数の高さに配置する(例えば、互いに重ねる、またはオフセット式に重ねる)ことができる。
【0037】
図示していないが、非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12を、他の空間領域および/または空間チャンネルと組み合わせて形成して、例えば、微小流体装置、センサー、および分析装置を形成することができる。
【0038】
基体10を、限定はされないがマイクロプロセッサーチップ、微小流体装置、センサー、分析装置およびそれらの組み合わせのようなシステムにおいて用いることができる。すなわち、基体10を、システムに適した材料から作ることができる。しかしながら、材料の例には、硝子、珪素、珪素化合物、ゲルマニウム、ゲルマニウム化合物、ガリウム、ガリウム化合物、インジウム、インジウム化合物、または他の半導体材料および/または化合物があるが、これらに限定されない。さらに、基体10は、任意の誘電材料、金属(例えば、銅およびアルミニウム)、または、例えば印刷配線基盤においてみられるセラミクスまたは有機材料を含む非半導体基体材料を含み得る。
【0039】
上塗りポリマー層14は、非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12を形成しつつ、捨てポリマーの分解により製造された分解気体に透過性または半透過性であるという特徴を含むモジュールポリマーを含み得る。さらに、上塗りポリマー層14は、製造および使用条件下において破裂または崩壊しないように弾性を有する。さらに、上塗りポリマー層14は、感光性ポリマーが分解する温度範囲で安定である。
【0040】
上塗りポリマー層14の例としては、例えば、ポリイミド、ポリノルボルネン、エポキシド、ポリアリーレンエーテル、パリレン、無機硝子およびそれらの組み合わせのような化合物がある。より具体的には、上塗りポリマー層14には、Amoco Ultradel(登録商標)7501、BF Goodrich Avatrel(登録商標)Dielectric Polymer、DuPont 2611、DuPont 2734、DuPont 2771、DuPont 2555、二酸化珪素、窒化珪素、および酸化アルミニウムのような化合物がある。上塗りポリマー層14は、例えば、スピンコート、ドクターブレード塗布、スパッタリング、ラミネーション、スクリーンまたはステンシル印刷、化学蒸着(CVD)およびプラズマ系堆積システムのような技術を用いて基体10上に配置することができる。
【0041】
非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12は、図2に示すように定められた非矩形、テーパーかつ非対称領域から架橋感光性ポリマー(ネガ型光開始剤)を除去(例えば、分解)することにより形成される。
【0042】
さらなる成分を、基体、上塗り層および/または非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の上および/または内部に配置できることに注目すべきである。さらに、さらなる成分を、ここに記載のような空間領域を有する任意の構造に含むことができる。さらなる成分は、電子装置(例えば、スイッチおよびセンサー)、機械的要素(例えば、ギアおよびモーター)、電気機械的要素(例えば、可動性ビームおよび鏡)、光学的要素(例えば、レンズ、格子および鏡)、光電子要素、流体要素(例えば、クロマトグラフおよび冷却剤を供給し得るチャンネル)、およびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
【0043】
非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の空間的境界は空間領域の長さ、高さおよび幅の変化故に容易に定義されないが、長さ、高さおよび幅の例として以下の空間的境界が提供される。非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の高さは、約0.01〜約100ミクロンに及び得る。非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の幅は、約0.01〜約10,000ミクロンに及び得る。非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の長さは、約0.01〜約100メートルに及び得る。より大きいおよび/またはより複雑な(例えば、x−、y−およびz−平面中の複数の曲線)空間領域が形成され得るように複数の空間領域を形成し得ることに注目すべきである。
【0044】
図3A〜3Fは、図2に示す非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12を製造するための代表的プロセスを示す断面図である。分かり易くするために、製造プロセスの一部は図3A〜3Fに含まれていないことに注目すべきである。そのように、以下の製造プロセスは、非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12を製造するのに必要な全ての段階を含む包括的リストであることを意図していない。さらに、製造プロセスは、図3A〜3Fに示す順番と異なる順番でプロセス段階を実施し得るまたは幾つかの段階を同時に実施し得るので、柔軟的である。
【0045】
図3Aは、その上に配置された感光性ポリマー16(ネガ型)を有する基体10を示す。感光性ポリマー16は、例えば、スピンコート、ドクターブレード塗布、スパッタリング、ラミネーション、スクリーンまたはステンシル印刷、溶融分配、化学蒸着(CVD)およびプラズマ系堆積システムのような技術を用いて基体10上に堆積させることができる。
【0046】
図3Bは、感光性ポリマー16上に配置されたグレースケールフォトマスク18を示す。グレースケールフォトマスク18は、非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12の断面を定める光学密度プロフィールをコード化する。
【0047】
図3Cは、グレースケールフォトマスク18を光エネルギーに曝した後の未架橋感光性ポリマー領域16Aおよび架橋感光性ポリマー領域16Bを示し、図3Dは、未架橋感光性ポリマー領域16Aの除去を示す。未架橋感光性ポリマー領域16Aは、例えば溶媒のような液体中への溶解により、またはポリマーを除去または溶解させることができる別の方法により除去することができる。
【0048】
図3Eは、架橋感光性ポリマー領域16B上への上塗り層14の形成を示す。上塗り層14は、例えば、スピンコート、ドクターブレード塗布、スパッタリング、ラミネーション、スクリーンまたはステンシル印刷、溶融分配、化学蒸着(CVD)およびプラズマ系堆積システムのような技術を用いて基体上に堆積させることができる。
【0049】
図3Fは、架橋感光性ポリマー領域16Bを分解して非矩形テーパーかつ非対称感光性空間領域12を形成することを示す。架橋感光性ポリマー領域16Bは、ポリマーの分解に充分な温度(例えば、約425℃)に架橋感光性ポリマー16Bを加熱することにより分解することができる。
【0050】
感光性ポリマー(図3A〜3Fにおける架橋感光性ポリマー)の熱分解は、感光性ポリマーの分解が速すぎる場合、得られる空間領域(図2に示す非矩形、テーパーかつ非対称感光性空間領域12)の空間的境界または寸法を変化させ得る。実施例1により詳しく説明するように、感光性ポリマーの熱分解は、空間領域を起泡および/または崩壊(例えば、垂れ)させて一または二以上の空間領域にすることがある。断面の空間的境界の変化は、システムが適当に機能するのに既知の設計された断面が必要であるシステムへの問題を引き起こし得る。
【0051】
例えば、流体システムは、混合が生じるまたは生じないことを確保するための既知の流動プロフィールを有することがしばしば必要とされる。流動システム中のチャンネルが、未知の断面および/または設計に一致しない断面を有する領域を有する場合、チャンネルを流通する流体は、未知の予想できない流動プロフィールを有することがある。
【0052】
この開示の態様は、ポリマー(例えば、捨てポリマーおよび感光性ポリマー)の分解により引き起こされる空間領域の空間的境界の変化を実質的に取り除く熱分解プロフィールを提供する。前者の溶液は、ポリマーの分解に一定温度を用い、他の溶液は、ポリマーの分解に線形温度プロフィールを用いた。これらの両方に関する問題は、実施例1により詳細に説明する。
【0053】
この開示の態様は、時間に対する一定の分解率でのポリマーの分解を記載する。時間の関数として一定分解率を維持することに基づく熱分解プロフィールは、空間領域の空間的境界の変化を実質的に取り除く。換言すると、分解は、感光性ポリマーの質量損失(1分間当たりのグラム数)の一定速度で行われる。
【0054】
熱分解プロフィールは、熱分解プロフィール式(以下の実施例の式6)、
【数1】
【0055】
(式中、Rは一般気体定数、tは時間、nは分解反応の全次数、rは所望のポリマー分解率、Aはアレニウス前指数因子、およびEaは分解反応の活性化エネルギーである)
により表すことができる。すなわち、熱分解プロフィールを設計するために、四つのパラメーターを特定することが有用である。各ポリマーのポリマー分解を説明する三つの動的パラメーター(A、Eaおよびn)、および、所望のポリマー分解率であるr。実施例1は、熱分解プロフィール式をより詳細に説明する。
【0056】
全ての熱分解プロフィールが、空間領域の空間的境界を変化させないポリマーの分解を生じさせる訳ではないことに注目すべきである。実施例1は、約2%分解/分を超える熱分解プロフィールが空間領域の空間的境界を変化させ、一方、約2%分解/分を下回る熱分解プロフィールが空間領域の空間的境界を変化させないような実例ポリマーを含む。従って、当業者は、不当な実験を含まない一連の実験により適当な熱分解プロフィールを実験的に容易に決めることができる。
【0057】
特に、一例では、適当な熱分解プロフィールを実験的に決めるには、5%分解/分プロフィールで出発することを含む。空間領域の空間的境界が変化する場合、熱分解プロフィールは、例えば、4%分解/分プロフィールまたは2.5%分解/分プロフィールに低下させることができ・BR>驕Bあるいは、空間領域の空間的境界が変化しない場合、熱分解プロフ
ィールは、例えば、1%分解/分プロフィール以上増加させることができる(例えば、5%分解/分プロフィールから6%分解/分プロフィール)。どの場合にも、当業者はこの開示の技術を用いて、多くの所望の形状用の適当な熱分解プロフィールを得ることができる。
【0058】
熱分解プロフィールが、例えば、感光性ポリマーを包囲する材料、上塗りの硬度、および/または上塗りのガラス転移温度のような種々の因子に依存し得ることも注目すべきである。すなわち、熱分解プロフィールの選択においてこれらの変数を考慮することができる。
【実施例1】
【0059】
以下は、この開示の態様の非限定的説明例であり、それは、Wuら著Journal of the Electrochemical Society、第150巻、9号、H205〜H213(2003年)に記載されており、ここで参考のために取り込む。この例は、この開示のいかなる態様の範囲も制限することを意図しないが、特定の例示的条件および結果を提供するものである。従って、当業者は、所望の結果を得るために多くの条件を修飾することができることを理解し、これらの修飾はこの開示の態様の範囲内であることが意図される。さらに、この実施例に関するさらなる詳細を、Wuら著Journal of the Electrochemical Society、第149巻、10号、G555〜G561(2002年)およびWuら著、J.Appl.Polym.Sci.、第88巻、5号、1186〜1195(2003年)に見ることができ、いずれもここで参考として取り込む。
【0060】
実施例1は、非矩形、テーパーかつ非対称型断面プロフィールを有するチャンネル形状を作るための感光性捨てポリマー製造方法の開発および使用を説明する。チャンネル断面の形状を制御する性能は、例えば、微小チャンネルシステムの流れを正確に制御することに特に有用であると期待される。チャンネル断面を制御することにより流体の流れパターンおよび分散を制御する性能を、ここで、コンピューター流体力学シミュレーションにより検討する。非矩形、テーパーかつ非対称型断面プロフィールが、例えば曲線微小チャンネルにおける「栓流」条件の保存において有用であり、流れ中での成分の分散が低下させることが発見された。従って、感光性捨てポリマーの熱分解を詳細に研究し、分解中にチャンネル形状を維持する新規加熱プロトコールを開発した。これらの方法の使用は、グレースケール平板印刷を用いてテーパー断面を有する微小チャンネルを作ることを示した。
【0061】
(曲線チャンネル中の流れのシミュレーション)
微小流体装置を設計および製造する際に、曲線形状のチャンネルが必要であることは殆ど避けられない。例えば、チップ上の長い分離カラムを設計する際、装置を必要な寸法制限内に維持するためにチャンネルを蛇行経路に変えることが必要であった。そのような場合、チャンネルを通して移動する流体の滞留時間分布の相違を最小化するようにチャンネル中で流体流動パターンを正確に制御することが極めて重要であり得る。換言すると、通常、分離、分析および、注入または分離後の流体サンプルの混合および空間的制限の損失を防止するための他の流体操作のために用いられる装置中で「栓流」に近い条件を維持しようとする。一つの特別の問題は、微小流体チャンネルのコーナーおよび曲線セクションを通過して移動する流体のための滞留時間変動を最小化することである。この点を説明すると共に、テーパー断面を有するチャンネルを用いることにより実現され得る改良を検討するために、一連のコンピューター流体力学シミュレーションを行った。
【0062】
Fluent Inc.により製造されるコンピューター流体力学(CFD)シミュレーションパッケージであるFLUENT(登録商標)を用いて、微小チャンネル用の一連の異なるコーナー設計における流れをシミュレートした。Fluent Inc.により製造されるFLUENT用の前処理付属部品であるGAMBIT(登録商標)を用いて、所望のモデル形状を組み立て、メッシュ点をモデルに適用し、所望の境界領域を定義した。一旦定義されると、FLUENTを用いて、各微小チャンネル中の流動パターンをシミュレートすると共に、各場合についての数的および図的結果を得た。
【0063】
微小チャンネル中の一連の90度転換を、種々の断面形状を用いてシミュレートした。図4Aおよび4Dは、四つのシミュレートしたチャンネルの断面を示す。図4Aは、均一区域チャンネルの寸法を示す。図4Bおよび4Cは、テーパーコーナーを有するチャンネルを示す。テーパーは、最適に近い設計を表す図4Dでは、コーナーの周囲の流れを向上させる。転換の内側半径は、60μmの一定に維持し、転換の外側半径は120μmの一定に維持した。これらのチャンネルを通過する流れ、および大気圧と推定される一定圧力出力条件のシミュレーションをするのに、同じ境界条件を適用した。この場合、流動媒体として水を用いたが、結果は、層流条件下のニュートン流体に一般的なもののはずである。これらの条件下において、流速およびレイノルズ数はかなり低く、層流条件を示しており、よって、これらの問題の解決のためにFLUENT中で層流モデルを用いた。
【0064】
これらの微小チャンネルコーナーの各々の周囲を流れる流体中で起こる分散を見るために、流体パケット軌道および各転換の際の移動時間を計算した。図5A〜5Cは、それぞれ、標準的矩形チャンネル型転換、三角形断面チャンネル転換、および構造中の改良されたチャンネル転換についてのコーナーに沿った放射方向距離の関数としての流体パケットの移動時間のプロットを示す。これらのプロットについてのパケット移動時間の異なるラインの外観は、チャンネル中の異なる垂直位置における流体パケットが、チャンネルの頂部および底部の近くでの低い速度故に小さな分散を見せるという事実による。
【0065】
図5Aは、標準的矩形チャンネル形状が、90度転換の周りに移動した後に、最初に平坦な濃度プロフィールをかなり分散させることを示している。層流条件下、転換の外側における流体の長い経路と組み合わされたチャンネル断面を通過する比較的均一な速度プロフィールが、内側半径における流体と比較して外側半径における流体について3〜5倍長い移動時間を提供する。この分散は180度曲げの場合、より誇張される。
【0066】
この問題の一つの自然な解決は、半径位置に拘わらず流体の等しい移動時間を達成するために、転換の内側半径に近い流体の速度を低下させることである。この速度修正を達成する一つの方法は、チャンネルの異なる領域の断面積を変えることである。
【0067】
図5Bは、三角形断面チャンネルにおける転換の周囲を流れる流体についての移動時間プロフィールを示す。転換の内側半径における低下したチャンネル高さは、転換の内側に沿った流体の速度を遅くすると予想される。実際、図5Bは、三角形断面は過補償され、外側半径の近くの流体と比較して内側半径の近くの流体について移動時間が長くなることを示している。FLUENTの結果を詳しく調べると、鋭角で交差する二つの壁を有するチャンネルセクションによりこれらの領域において分散が著しくなり、よって、チャンネル断面形状の鋭角をできれば回避すべきであることも明らかである。これらの事実に基づき、シミュレーション転換の回りの分散を最小化する改良されたチャンネル断面プロフィールを設計するように最適化を行った。
【0068】
図5Cは、そのような改良されたチャンネル構造についての流体移動時間を示す。移動時間プロフィールは、この改良された形状を用いた90度コーナーの周りを流れる流体について実質的に均一である。すなわち、転換における微小チャンネルの断面形状を設計することにより、流動プロフィールにおける分散の最小化が可能となるはずであることが明らかである。
【0069】
(実験)
使用した捨てポリマーは、5−ブチルノルボルネン(BuNB)と5−アルケニルノルボルネン(ANB)との73/27のモル比のコポリマーを含むUnity(登録商標)4481Pであった(オハイオ州ブレクスヴィル在Promerus LLC製)。ポリスチレン検定標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリマーの重量平均分子量(MW)および多分散度指数(PDI)を測定すると、それぞれ、425,000および3.74であった。フリーラジカル光開始剤(PI)として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を用いた。溶媒としてメシチレン(MS、97%、アルドリッチ社製)を用いて、ポリノルノルネン(PNB)およびPIの溶液を調製した。二つの異なる組成である16/0.32/84のモル比のPNB/PI/MS(乾燥ポリマーに対して開始剤2重量%)および16/0.64/84のモル比のPNB/PI/MS(乾燥ポリマーに対して開始剤4重量%)を実験で用いた。露光および焼成後、キシレン(98.5+%、アルドリッチ社製)を用いてポリマーパターンを現像した。
【0070】
捨てポリマーの熱分解特徴を、Seiko Instruments Inc.製TG/DTA320システムを用いて調べた。熱重量分析(TGA)測定を、N2下に、28ml/分のパージ速度で行った。カプセル封入した捨てポリマーの構造を、N2でパージングしたリンドバーグ管炉において熱分解した。
【0071】
微小チャンネルの製造のために、PNB/PIフィルムを、Brewer Sciene CEE100スピンナーおよびホットプレートシステムを用いてシリコンウエハ上に形成した。2400rpmのスピン速度および110℃で60分間のソフトベークで、約3.5〜4.0ミクロン厚PNB/PIフィルムを得た。フィルム厚さを、Veeco Dektakプロファイルメーターを用いて測定した。i線フィルター使用UV照射源(365nm波長)を備えるOAI Mask Alignerを用いて、PNB/PIフィルムを露光およびパターニングした。露光前に、UV光源の強度を、365nmプローブを有するOAI Model356 Exposure Analyzerを用いて測定した。露光後、サンプルを、炉内で120℃で30分間、露光後焼成した。サンプルを、ウエハを500rpmでスピンしつつキシレンを連続的に噴霧して現像した。
【0072】
以下の条件を用いるPlasma Therm反応性イオンエッチング(RIE)システムを使用して、現像パターンから残留ポリマーを除去した。
【0073】
5立方センチメートル毎秒(sccm)のCHF3、45sccmのO2、250mTorr、300W、35℃。
【0074】
これらの条件下のポリマーのエッチング速度は、約300nm/分である。プラズマ助長化学蒸着(PECVD)を行って、ポリマーチャンネルパターンのカプセル封入のためにSiO2上塗りを付着させた。SiO2を、以下の条件を用いるPlasma Them PECVDで付着させた。
【0075】
380kHz RF周波数、50W出力、200℃、550mTorr、およびN2O(1400sccm)と、N2(400sccm)中に希釈された2%SiH4との気体混合。
【0076】
これらの条件を用いる酸化物の堆積速度は約50nm/分である。
【0077】
(熱分解プログラム)
熱分解プロセスにおいて、式(1)、
【数2】
【0078】
(式中、W0は初期質量、Wは分解中のある時間に残っている質量、およびWfは熱サイクルの最後におけるサンプルの最終的質量である)
に示すようなTG曲線から部分分解を計算することができる。
【0079】
ポリマーの熱分解についての速度記載は、通常、式(2)、
【数3】
【0080】
(式中、nは分解反応の全次数、Aはアレニウス前指数因子、およびEaは分解反応の活性化エネルギーである)
に示すように表される。
【0081】
チャンネル構造の変形につながるポリマーパターンからの気体分解産物の突然かつ大きな放出を避けるために、全分解プロセス中、分解率(dα/dt)を一定に維持することが望ましい。分解プロセス全体において分解率が定数rに等しいと仮定すると、
【数4】
【0082】
式(3)を積分すると式(4)、
【数5】
【0083】
に示す一般的な所望の結果が得られる。
【0084】
反応次数、活性化エネルギーおよび前指数因子が分解中に著しく変化しないと仮定すると、dα/dtおよびαを、式(2)中でそれぞれrおよびrtで置き換えることができ、それにより、以下の式が得られる。
【数6】
【0085】
ここで、全プロセスを通してポリマー分解の一定速度を維持するのに必要な時間対必要温度プロフィールを得るために式(5)を整理することができる。時間対温度の明確な表現を式(6)に示す。
【数7】
【0086】
すなわち、加熱プロフィールを設計するために、四つのパラメーターを特定する必要がある。ポリマー分解を説明する三つの動的パラメーター(A、Eaおよびn)、所望のポリマー分解率r。先の実験で行ったTGAデータの回帰に基づいて、ここで用いられるポリマー用の速度パラメーターを以下のように決めた。A=5.8×1014-1、Ea=207kJ/モル、およびn=1.05。すなわち、所定の一定分解率rについて、分解時間に対する温度の曲線を得ることができる。
【0087】
(結果および検討)
分解条件:非揮発性分解産物の形成および微小チャンネル中の望ましくない残渣につながり得るポリマーの酸化を避けるために純窒素雰囲気中で感光性捨てポリマーの熱分解を行った。不活性雰囲気の使用に加えて、先に提示したように、制御された加熱プロフィールを用いて、比較的一定のポリマー分解率を維持した。この一定分解率は、チャンネル形状を著しく変形させる高圧を発生させるような気体産物が放出されないことを確保する。
【0088】
図6は、それぞれ、約425℃の一定温度(等温分解)および種々の加熱速度(動的分解)の両方において分解される純PNBサンプルについての時間対分解率の曲線を示す。各場合において、分解率にピークがある。ピークの幅は、捨てポリマーから気体産物への転化中の遷移期間に相当する。より高い加熱速度またはより高い加温度の等温分解により、分解率プロフィールにおいて鋭いピークが得られる。これは、分解プロセスの大部分が短い時間間隔で起こり、よって、気体分解産物が突然かつ多量に放出されることを意味する。従って、制御された加熱プロフィールを用いて分解率を一定の低い水準に制御すると、この現象が取り除かれ、分解中のチャンネル変形が防止されることが予想された。種々の分解手順の効果を、最終的に得られる微小チャンネル形状および寸法に比較することにより、この理論を試験することにした。
【0089】
式(6)に基づき、1分当たり1、2および3%の分解率を達成するのに必要な時間対温度加熱プロフィールを計算し、図7に示す。この図は、一定分解率において、大部分の分解時間中の分解温度を僅かな傾斜率で比較的低温に設定すべきであることを示す。しかしながら、完了近くの分解として、高温を用いることができ、これは、合理的時間内にポリマーが完全に分解することを補助する。
【0090】
式(6)により作られる滑らかな時間対温度曲線に密に近づく代表的温度プロフィールを用いて、分解を行った。図8は、式(6)を用いて計算された時間対温度曲線および、装置製造のためのリンドバーグ分解炉において試験された対応する単純擬似加熱プロフィールを示す。図9は、1%/分の分解率を達成するために示された単純擬似加熱プログラムについてのTGAの結果を示す。DTG曲線は、分解率が、極端に変動すること無く所望の1%/分水準の近くで実際に変動しないことを示す。すなわち、図6に示す分解率中の鋭角ピークを、より巧妙な加熱プロフィール(時間の関数としての非線形加熱プロフィール)を用いて避けることができる。カプセル封入ポリマーサンプルの処理において同じ擬似加熱プロフィールを用いると、カプセル封入チャンネル中に変形は観察されないが、電子顕微鏡検査は、チャンネル構造中に少量のポリマーが残ることを示した。擬似加熱プロフィールの二つの異なる修飾を、この残留ポリマーを除去する試みにおいて試験した。第一の場合、最終的に455℃で1時間加熱して、残留ポリマーを除去しようとした。この高温維持は、実際、SEM断面で観察されるように残留ポリマーを実質的に減少させるが、一部の残渣は、1時間の保持後でも残っていた。図8に示す中間保持を二倍にした第二の方法も試験した。これは、平均分解率をさらに0.5%/分水準近くに低下させた。この場合、分解中にチャンネルプロフィールの変形が起こらず、分解後の微小チャンネルにおいてポリマーが実質的に残らないことが観察された。これは、これらが、プロセスの傾斜が速すぎる場合、分解中に形成されるさらなる副産物であり得ることを意味している。これにより、高温加工でも、除去が困難な残渣が得られる。より低い温度でより長く保持することにより、分解率を遅く(および、すなわち、パターンプロフィール変形を低減)すると共に、最終的チャンネル構造中の残留ポリマーを取り除くことができる。
【0091】
ポリイミドおよびSiO2でカプセル封入した微小チャンネル:図3A〜3Fのスキームに従って微小チャンネルを作った。処理において、2400rpmのスピン速度および110℃で60分間のソフトベーク条件で、約3.5〜4.0ミクロン厚PNB/PIフィルム(PNB中4重量%開始剤)を成形した。フィルムを、石英上クロムマスクを用いて、450mJ/cm2の線量でUV光に曝し、炉内で120℃で30分間露光後焼成した。露光後焼成の後、フィルムをキシレンを用いて噴霧現像して、所望のチャンネルパターンを作った。パターン区域には現像後に顕著な残渣はなかったが、現像物上に封入材料を上塗りすると、基体への接着が劣った。実際、捨てポリマーを基体からおそらくきれいに現像した区域では上塗り材料中に小さな起泡が観察された。従って、試料のポリマーが現像後に残る可能性があり、上塗りの基体への良好な接着が防止される。
【0092】
この現象を避けるために、チャンネルパターンをカプセル封入する前にRIEを用いて酸素プラズマ中でドライエッチングすることにより残渣除去処理を行った。プラズマを用いる残渣除去後、ポリイミドまたはSiO2を用いてサンプルをカプセル封入した。ポリイミドは、高いガラス転移温度および熱安定性、低い誘電率、引張強さ、湿度吸着および応力を示すので、カプセル封入用の良好な材料である。ここでは、HD Microsystems PI2734ポリイミドを用いて、チャンネル構造の一部を上塗りした。これらの場合、PI2734は、チャンネルパターンの頂部に2300rpmで30分間スピンコートし、N2下で350℃で1時間硬化させた。これらの条件下でのポリイミド層の厚さは、約4.5μmである。さらに、SiO2を用いてチャンネル構造の一部をカプセル封入した。これらの場合、先に記載したPECVDレシピを用いてSiO2の2μm厚カプセル封入層を沈着させた。
【0093】
カプセル封入ポリマーパターンの分解を、種々の分解率で行って、チャンネル構造への速度の効果を調べた。図10A〜10Bは、ポリイミドでカプセル封入され異なる加熱プロフィールを用いて異なる速度で分解されたチャンネルのSEM像を示す。この結果は、分解率が実際にはチャンネル構造に著しく影響を与えることを示している。低分解率(1〜2%/分)において、製造されたチャンネル構造は、最初のPNB捨てポリマーパターンの寸法および形状を維持している。しかしながら、比較的高い分解率(3%/分)においてまたは、高い一定温度分解プロセスを用いる場合、微小チャンネルがドームまたは円弧型プロフィールに変形される。この変形問題が、側部寸法が増加したときに、微小チャンネルのより重要な問題になることも明らかである。より大きな幅を有するチャンネルは、より小さい寸法のチャンネルよりも、明確に変形した。SiO2でカプセル封入したチャンネルのSEM像を、図11A〜11Fに示す。チャンネル変形の程度は、SiO2上塗り構造において、同じ公称チャンネル構造寸法およびポリマー分解率でのポリイミド上塗りチャンネルと比較して大きく見えることが観察された。SiO2上塗りサンプル中のこの大きな変形は、二つの上塗り材料の機械的特性の相違と、上塗り材料中での分解産物の拡散速度の相違の両方に起因し得る。
【0094】
テーパー断面構造を有する微小チャンネル:テーパー微小チャンネル構造を作るために、ここで記載されている概念は、グレースケールフォトマスクおよび低コントラスト感光性捨て材料を用いる平板印刷プロセスの使用である。一連の実験を行って、三次元全てにおいて制御されて形成されるような微小チャンネルを製造するための手法を用いる可能性を検討した。
【0095】
チャンネル構造は、クロムストライプの透明区域に対する比を変化させて、チャンネルの幅を通過する透過率%のほぼ線形のグラジエントを用いて示す。この特別の場合、クロムストライプ構造は、寸法が200nmであり、この操作において用いられる感光性捨てポリマー用の複解決構造として作用する。ETEC Systems(カリフォルニア州Hayward)における電子線平板印刷により、これらの設計から二つのマスクを作った。表2は、この操作において用いられる二つの主チャンネル構造をより詳細に説明する。このタイプのグレースケールフォトマスクの使用により、感光性捨て材料を、単一の平板印刷露光段階を用いてチャンネル構造の幅を通して所定の線量で露光することができる。この露光グラジエントを、低コントラストレジスト材料と共に用いて、単一平板印刷プロセスにおいて、基体の平面に対して横方向および垂直方向の両方に造形される構造を作ることができる。
【0096】
異なるコントラスト水準の二つの感光性材料を用いて、このマスクを有するテーパー微小チャンネル構造を生成させた。図12は、この操作で用いられた二つの感光性捨てポリマー組成についてのコントラスト曲線を示す。これらの材料についてのコントラスト曲線を測定すると共にコントラスト値を計算する方法が、既に文献に記載されている。これらの二つのシステムのコントラスト因子は、乾燥ポリマー仕込量に対して2重量%(「材料1」と呼ぶ)および4重量%(「材料2」と呼ぶ)の光開始剤について、それぞれ、僅かに0.51および0.85である。
【0097】
【表2】
【0098】
このコントラスト曲線データを用いて、マスク上の位置の関数として相対的透明度が正確に知られている場合、これらの感光性材料を有するグレースケールフォトマスクを用いた露光から生じるパターンプロフィールの粗い予想を計算することができる。多項式の調整により、コントラスト曲線を、以下の関数を用いて適切に記載することができる。
【数8】
【0099】
ここで、fiは、材料iについて、線量Dへの露光および湿式現像の後に残っているフィルム厚さの関数である。
【0100】
すなわち、グレースケールフォトマスクから製造されるチャンネルパターンの適当な形状は、式9を用いて予想することができる。
【数9】
【0101】
(式中、fiは材料iについてのコントラスト関数、d(χ)はチャンネルパターンを交差する特定の位置χにおけるフィルム(現像後)の厚さ、TP(χ)は構造を交差する位置χにおけるマスクの部分的透明度、Dは用いられた公称露光線量、およびFTは成形フィルムの最初の厚さである)。
シミュレーションしたチャンネルパターンの概要は、式9により計算された点を含み、これを、7点補整式10により補整した。
【数10】
【0102】
(式中、SiおよびYiは、それぞれ、i番目の点についての補整信号および最初の信号である)。
【0103】
テーパー構造チャンネルパターンを、図3A〜3Fに概略したものに類似の一連の段階を用いてグレースケール平板印刷手法を使用して作った。まず、12μm厚PNB/PIフィルムを、700rpmのスピン速度および110℃で2分間のソフトベーク条件を用いて成形した。次に、フィルムを、グレースケールフォトマスクを用いて、UV光に曝した。公称露光線量を、100%透明構造の現像後に最初の厚さの80%が残っているフィルムを得るように感光性材料用のコントラスト曲線データを用いて定めた。用いた線量は、2重量%および4重量%開始剤仕込量に対して、それぞれ、1300mJ/cm2および165mJ/cm2であった。フィルムを、炉内で、120℃で30分間、露光後焼成した。フィルムを、キシレンを用いて、500rpmのスピン速度で30秒間、噴霧現像した。微小チャンネルパターンの最終的形状を、プロファイルメーターを用いて測定した
【0104】
図13および14は、開始剤仕込量2重量%および4重量%での、プロファイルメーターにより測定される製造された真態様I型PNBパターンおよび、比較のための、予想される微小チャンネルパターン(式7〜10を用いる)を示す。二つの組成により製造された異なるパターン間の比較により、低コントラストを有する材料が、所望の平滑テーパー構造により、似ているプロフィールを作ることが明らかに示される。しかしながら、プロフィール形状の単純な予想は、この方法を用いて製造される実際の構造を大まかにしか得ることができないことが分かる。マスクをより詳しく調べると、透過率の所望の平滑グラジエントが、構成パターンに用いられる極めて小さな構造寸法故に、忠実にマスクに再現されないことが明らかであった。これにより、そのような方法のための正確なグレースケールフォトマスクの製造が、実際には困難なものとなる。いずれの場合にも、より慎重に注意してマスクにデザインを正確に移すと、材料用のコントラストデータを、所望のパターン形状を得るために用い得る特定の感光性材料用のグレースケールフォトマスク構造を設計するための式(7)〜(10)と組み合わせて用いることができる。
【0105】
テーパーポリマー微小チャンネルパターンを、次に、上塗りし、分解して、テーパープロフィールを最終的微小チャンネルに移す性能を試験した。最初に、酸素RIEプラズマエッチングを用いて基体からポリマー残渣を除去した。次に、先に記載したものと同じ条件を用いて、チャンネルパターンをSiO2でカプセル封入した。カプセル封入したチャンネルパターンの熱的分解を、N2下に0.5%/分の分解率で行った。得られるテーパー微小チャンネルのSEM像を、図15A〜15Dに示す。分解中の加熱プロフィールを制御することによりポリマーの分解率を注意深く制御する性能故に、チャンネル構造中に変形は観察されなかった。これは、図13および14中の最初のPNBパターンのプロフィールを、図15A〜15D中のSEMチャンネル断面と比較することにより見ることができる。図15A〜15D中のチャンネルの幅は、ポリマー残渣除去段階中の僅かなRIE過エッチングが一部の原因になり、グレースケールフォトマスク上の構造寸法より狭い。図15A〜15Bを、図15C〜15Dと比較すると、平滑テーパー微小チャンネル構造の製造に、低コントラスト捨て材料が望ましいことが分かる。参考として、図15A〜15Cの右側、および図15B〜15Dの左側は、グレースケール構造ではない。予想されるように、チャンネル構造の最終的形状は、マスク上のグレースケールパターン、感光性材料のコントラスト、および構造の印刷において用いられる公称露光線量の組み合わせにより決められる。
【0106】
微小チャンネルコーナーの周りの流れ中での分散の低下において、製造されたチャンネル断面の理想的な効果を得るために、図13に示す形状のコーナーの周囲の予想された流体移動時間を、前述のようなFLUENTを用いてシミュレーションした。図16は、初期の理想化されたチャンネルシミュレーションにおいて用いれらた境界条件および速度を用いるこのコーナーの周りの予想される移動時間を示す。このシミュレーションにより、この操作において実証目的で製造された粗く形成されたチャンネルでさえ、標準的矩形断面チャンネルよりも良好に実行されると期待されることが明らかである。さらに、マスク設計およびプロセス条件を最適化することにより、図5Cに示すものに類似のより理想的な形状を、装置製造のために達成して用い得ることが期待される。
【0107】
(結論)
微小チャンネルの組み立てを、感光性捨てポリマー材料を用いて示した。このプロセスは、光平板印刷により捨てポリマーをパターニングすること、RIEを用いてポリマー残渣を除去すること、誘電性媒体でカプセル封入すること、およびカプセル封入されたポリマーチャンネルパターンを熱的に分解することからなる。ポリマー分解の速度モデルを用いて、捨てポリマーの熱的分解を一定速度に維持するために加熱プログラムを設計する方法が示された。この手法を用いて設計された加熱プロフィールが、突然かつ高度の分解率(例えば、チャンネル構造を変形させる気体分解産物を劇的に放出することになる)を防止するために、および、捨てポリマーの熱的分解後に任意の実質的変形を示さない制御構造を有する微小チャンネルパターンを製造するためにも示された。分解率を制御し気体分解産物をゆっくり放出すると、分解率に大体等しい速度で分解産物が上塗りを透過することができ、構造の変形および損傷につながり得る微小チャンネル中の高圧の形成が避けられる。チャンネルがより大きいと、変形の傾向が大きいことも分かった。テーパー断面を有する微小チャンネルの製造のために、グレースケール平板印刷プロセスが開発され示された。そのようなテーパーチャンネルは、シミュレーションにより、微小流体システムの性能に有害である分散のような効果を下げ得ることが示された。
【0108】
この開示の前記態様は、単なる実行例であり、この開示の原理の明確な理解のために提示されている。この開示の精神および原理から実質的に離れることなく、この開示の前記態様に多くの変化および修正を設けることができる。全てのそのような修正および変化は、ここで、この開示の範囲内に含まれ、特許請求の範囲により保護されると意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図12
図13
図14
図16
図10D
図10E
図10F
図10G
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図15A
図15B
図15C
図15D