(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726575
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】試料設置装置、及び荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
H01J37/20 D
H01J37/20 B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-48380(P2011-48380)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-186024(P2012-186024A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100091258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091580
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 雅文
(72)【発明者】
【氏名】舘野 宏志
【審査官】
小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−200447(JP,A)
【文献】
特開2002−008577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室の内部に配置され、荷電粒子ビームの照射対象となる試料が載置される試料ステージと、前記試料室に取り付けられ、前記試料室の壁面に形成された開口部から前記試料ステージに向け試料室外部から前記試料を移送する試料移送装置と、を備え、前記試料ステージ及び前記試料移送装置は、一体となって所定の方向への直線動及び回転動すると共に、前記試料ステージは、前記所定の方向以外の方向に前記試料を直線移動及び回転動する試料設置装置であって、
前記試料移送装置及び前記試料ステージは、一体となって水平面内の直交する2軸のうちの一方の軸に沿う移動及び前記水平面内の他方の軸を中心とする傾斜動を行うと共に、
前記試料ステージは、前記試料を垂直軸に沿う移動、水平面内の他方の軸に沿う方向の移動及び垂直軸を中心とする回転動をさせるものであり、
前記試料移送装置は、前記試料を載置して前記試料を水平方向に沿って前記試料室内の試料授受位置まで搬送する試料挿入機構を備え、
前記試料ステージは、前記試料授受位置まで直線移動し、その後、垂直移動して前記試料挿入機構によって搬送された前記試料を受け取り、その後、直線移動して前記試料を前記試料室の観察位置まで搬送する、ことを特徴とする試料設置装置。
【請求項2】
前記試料移送装置は、
前記試料室の開口に連通する試料挿入穴部及び前記試料室と間のシールを行うシール部を備え壁面に沿って水平方向に移動可能な水平移動部材と、
前記水平移動部材の穴部に連通する試料挿入穴部及び前記水平移動部材との間のシールを行うシール部を備え前記水平移動部材の面に沿って回動可能な傾斜移動部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の試料設置装置。
【請求項3】
前記試料挿入機構は、前記傾斜移動部材の試料挿入穴を密閉する蓋部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の試料設置装置。
【請求項4】
前記試料ステージは、試料移動用の電動機を備え、前記水平移動部材及び前記傾斜移動部材は、各部材駆動用の電動機を備えることを特徴とする請求項2に記載の試料設置装置。
【請求項5】
前記試料挿入機構は、手動で駆動されることを特徴とする請求項1に記載の試料設置装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の試料設置装置と、前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射手段と、前記荷電粒子ビームが照射された前記試料からの2次荷電粒子に基づいて信号を取得する検出器と、を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料設置装置及び荷電粒子ビーム装置に係り、特に試料室内に配置され、荷電粒子ビームの照射対象となる試料が載置される試料ステージと、前記試料室に取り付けられ、前記試料室の壁面に形成されたポートから前記試料ステージに向け試料室外部から試料を差し入れる試料移送装置と、を備えた試料設置装置及びこの試料設置装置を備えた荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置として5軸の自由度を持つ試料ステージを備える走査電子顕微鏡がある(特許文献1参照)。
図13は走査電子顕微鏡の試料の搬入動作及び試料の移動自由度を示す模式図である。このような走査電子顕微鏡200において、試料室210内には、同図(a)に示すように、試料220を保持する試料ステージ230が配置されている。試料ステージ230は、同図(b)に示すように、試料220を水平面に直交する2方向(X,Y)、上下方向(Z)、平面回転(R)、傾斜(T)の5自由度で移動することができる機構を備える。このような試料ステージを備える走査電子線装置によれば、試料を任意の姿勢及び位置で観察することができる。なお、
図12(a)中符号240は鏡筒を示している。
【0003】
そして、このような走査電子顕微鏡200において、試料ステージ230に保持される試料220を交換するに際しては、さまざまな手法がある。その一つは試料室210に開閉扉を配置して試料ステージ230を引き出して保持された試料を交換するものである。しかし、この方法は、確実であるが、試料ステージ230全体を試料室210から引き出して試料室210を装着するため、時間を要するという欠点がある。また、試料室210内を手で触れることが可能になるため、検出器などの繊細な部品を壊してしまう危険性がある。
【0004】
このような問題に対処するため、走査電子顕微鏡200に試料搬送装置を配置して、試料室210外に配置した搬送ユニットで試料を搬送するものが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−319364号公報
【特許文献2】特開2002−313271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した試料室外側から試料を搬送するものにあっては、複数の自由度を有する試料ステージに試料を搬送するために駆動軸全てを搬送位置に合わせて位置を決めないと試料の受け渡しができないため、試料の交換に時間がかかるという問題がある。即ち、試料の交換に際しては、まず試料ステージのX、Y、Z、T、Rの5軸全ての位置を搬送受け渡し位置まで移動し、次いで搬送ユニットからステージ上の試料ホルダー部に試料を搬送し、そして受け渡し後、搬送機構部を元の搬送ユニットの位置まで戻す、という操作が必要となる。このため、試料の交換に複雑な手順を要し、時間がかかってしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、複数の自由度を備える試料ステージにおける試料の交換を簡単な手順で迅速に行える試料設置装置、及び荷電粒子ビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する請求項1の発明は、試料室
の内部に配置され、荷電粒子ビームの照射対象となる試料が載置される試料ステージと、前記試料室に取り付けられ、前記試料室の壁面に形成された開口部から前記試料ステージに向け試料室外部から前記試料を移送する試料移送装置と、を備え
、前記試料ステージ及び前記試料移送装置は、一体となって所定の方向への直線動及び回転動すると共に、前記試料ステージは、前記所定の方向以外の方向に前記試料を直線移動及び回転動する試料設置装置であって、前記試料移送装置及び前記試料ステージは、一体となって水平面内の直交する2軸のうちの一方の軸に沿う移動及び前記水平面内の他方の軸を中心とする傾斜動を行うと共に、前記試料ステージは、前記試料を垂直軸に沿う移動、水平面内の他方の軸に沿う方向の移動及び垂直軸を中心とする回転動をさせるものであり、前記試料移送装置は、前記試料を載置して前記試料を水平方向に沿って前記試料室内の試料授受位置まで搬送する試料挿入機構を備え、前記試料ステージは、前記試料授受位置まで直線移動し、その後、垂直移動して前記試料挿入機構によって搬送された前記試料を受け取り、その後、直線移動して前記試料を前記試料室の観察位置まで搬送する、ことを特徴とする試料設置装置である。
【0009】
同じく請求項2の発明は、請求項1に記載の試料設置装置において、
前記試料移送装置は、前記試料室の開口に連通する試料挿入穴部及び前記試料室と間のシールを行うシール部を備え壁面に沿って水平方向に移動可能な水平移動部材と、前記水平移動部材の穴部に連通する試料挿入穴部及び前記水平移動部材との間のシールを行うシール部を備え前記水平移動部材の面に沿って回動可能な傾斜移動部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
同じく請求項3の発明は、
請求項2に記載の試料設置装置において、前記試料挿入機構は、前記傾斜移動部材の試料挿入穴を密閉する蓋部材を備えることを特徴とする。
【0011】
同じく請求項4の発明は、
請求項2に記載の試料設置装置において、前記試料ステージは、試料移動用の電動機を備え、前記水平移動部材及び前記傾斜移動部材は、各部材駆動用の電動機を備えることを特徴とする。
【0012】
同じく請求項5の発明は、
請求項1に記載の試料設置装置において、前記試料挿入機構は、手動で駆動されることを特徴とする
【0013】
同じく請求項6の発明は、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の試料設置装置と、前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射手段と、前記荷電粒子ビームが照射された前記試料からの2次荷電粒子に基づいて信号を取得する検出器と、を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る試料設置装置、及び荷電粒子ビーム装置によれば、試料ステージ及び試料移送装置は、一体となって所定の方向への直線動及び回転動すると共に、試料ステージは、所定の以外の方向に前記試料を直線移動及び回転動させるので、試料の設置、交換に際して位置合わせが容易となり試料の観察効率を向上させることができるほか、試料室のポートの数を削減できると共に位置合わせに必要な移動機構を省略できるので、試料設置装置及び荷電粒子ビーム装置の構成を全体として簡略で安価なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1に係る走査電子顕微鏡の基本構成を示す模式図である。
【
図2】同じく走査顕微鏡の試料設置装置を示すものであり、(a)は縦断面を示す模式図、(b)は水平断面を示す模式図、(c)は正面を示す模式図である。
【
図3】同じく試料の試料移送装置と試料ステージとの間の試料の授受状態を示す模式図である。
【
図4】同じく走査顕微鏡の試料室の構成を示す斜視透視図である。
【
図5】同じく走査顕微鏡の試料設置装置の構成を示す斜視図である。
【
図6】同じく試料設置装置の構成を示す
図4中A−A線に相当する断面図である。
【
図7】同じく試料設置装置の構成を示す
図5中B−B線に相当する断面図である。
【
図8】同じく試料設置装置の構成示す一部切欠斜視図である。
【
図9】同じく試料設置装置の試料搬送動作を示す斜視図である。
【
図10】同じく試料設置装置の試料搬送動作を示す斜視図である。
【
図11】同じく試料設置装置の試料搬送動作を示す斜視図である。
【
図12】同じく試料設置装置の試料搬送動作を示す斜視図である。
【
図13】走査電子顕微鏡の試料の搬入動作及び試料の自由度を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態例に係る荷電粒子ビーム装置としての走査電子顕微鏡を図面に基づいて説明する。以下、実施の形態として走査電子顕微鏡を例として説明するが、本発明は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、集束イオンビーム装置(FIB)、あるいは電子線薄膜トランジスタ(TFT)アレイ検査装置等の荷電粒子ビーム装置に適用できる。
【0020】
図1は実施の形態例に係る走査電子顕微鏡の概略構成を示す模式図である。この走査電子顕微鏡10は、光学顕微鏡30を同一の筐体に備え、試料における観察領域のSEM像データと光学像データとを取得して表示するものである。まず走査電子顕微鏡10の基本的構成について説明する。
【0021】
走査電子顕微鏡10は、鏡筒11内上部の電子線源12から発生した電子線13を、コンデンサレンズ14で収束し、偏向コイル15で偏向して、対物レンズ16で収束及びフォーカスを調整し、試料室17内の試料ホルダー18上の試料を走査する。試料ホルダー18は、3軸の自由度を持つ試料ステージ40に配置されている。この試料ステージ40は、モーター、ねじ機構など公知の駆動機構を備え、試料ホルダー18を試料設置平面の1方向(左右方向:X)、上下方向(Z)及び水平回転(R)の3自由度で移動ができる。この試料ステージ40は、下段からX方向移動機構41、Z方向移動機構42、水平回転機構43が配置される。走査電子顕微鏡10では、試料ホルダー18を上記X、Z、R方向への移動のほか、前記X方向と直交する方向(前後方向ー:Y)、傾斜方向(T)に移動ができる。実施例1では、前記2軸(Y、T)の移動は、試料ステージ40を後述する試料移送装置80と共に移動することにより行う。
【0022】
このような走査電子顕微鏡10では、試料ホルダー18から発生した2次電子、反射電子などの荷電粒子19は、2次電子検出器20で検出され、図示していないSEM画像表示制御手段で電子線13の走査状態と同期処理されてSEM像データが得られ、SEM像が図示しない画像表示装置に表示される。
【0023】
光学顕微鏡30は、光学鏡筒内に光学系を備えるほか、試料ホルダー18を照明する光源、CCD撮像素子、CMOS素子等の電子撮像素子を内蔵し光学像データを出力する。そして、試料ホルダー18上の試料の観察領域の拡大された光学像が図示しない画像表示装置に表示される。ここで、光学顕微鏡30の光軸は電子線ビーム光軸と試料ホルダー18の観察領域で交差するよう所定の角度で傾けて配置されている。なお、光学顕微鏡30は、走査電子顕微鏡の光軸と一致するように配置してもよい。本実施の形態例では、互いの観察条件に悪影響を与えることがない。例えば電子線を通過させるため光学顕微鏡の光学系に貫通孔を形成すると、光学顕微鏡の光学像が部分的に暗くなるなどの悪影響が発生するが、本実施の形態例ではそのような影響を排除することができる。
【0024】
ここで、走査電子顕微鏡10と光学顕微鏡30の撮像倍率は、撮像の目的に応じて適宜変更できる。走査電子顕微鏡10では、試料ホルダー18を任意の角度に傾斜させて観察することができ、試料表面が光学顕微鏡30の光軸に対して直交する方向に傾斜させると光学顕微鏡30で良好な光学像を取得できる。なお、
図1では、光学顕微鏡30は試料ホルダー18の傾斜方向に対応して描かれていないが、実際には光学顕微鏡30の光軸は、電子線ビーム光軸を含み
図1の紙面に直交する面内に配置される。
【0025】
次に試料設置装置について説明する。
図2は実施例1に係る走査顕微鏡の試料設置装置を示すものであり、(a)は縦断面を示す模式図、(b)は水平断面を示す模式図、(c)は正面を示す模式図、
図3は同じく試料の試料移送装置と試料ステージとの間の試料の授受状態を示す模式図である。
【0026】
まず、
図2を参照して試料設置装置100の基本的構成について説明する。試料設置装置100は、試料ステージ40と試料移送装置80とから構成される。試料移送装置80は、試料室17の試料交換用のポート21の配置部に水平移動部材である板状部材51をY方向に移動可能にする水平移動機構50と、この板状部材51の外側に配置される傾斜移動部材である板状部材61をY軸を中心とする回転運動、即ち試料の傾斜(T)駆動する傾斜移動機構60と、板状部材61の外側に配置され、試料ホルダー18の挿入を行う試料挿入機構70とを備えて構成される。
【0027】
水平移動機構50の板状部材51は、試料交換用のポート21に連通する開口55が開設され、モーターを駆動源とする公知の駆動機構で試料室17との密閉状態を保ちつつY方向に駆動される。
【0028】
また、傾斜移動機構60の板状部材61は、試料交換用のポート21及び開口55に連通する開口65が開設され、モーターを駆動源とする公知の駆動機構で板状部材51との密閉状態を保ちつつ、試料ホルダー18を傾斜するよう回転駆動される。なお、傾斜移動機構60は、水平移動機構50と共にY方向に移動する
【0029】
さらに、傾斜移動機構60は、試料ステージ40を支持する支持部材45を備え、この支持部材45は、開口55、65、試料交換用のポート21を連通して試料室17内に水平方向に張り出して試料ステージ40を支持している。このため、試料ステージ40は、水平移動機構50の直線移動と共に移動して試料ホルダー18をY方向に移動させると共に、傾斜移動機構60の回動と共に回転して試料ホルダー18を傾斜させる。また、試料ステージ40は、上述のように、X方向移動機構41、Z方向移動機構42、水平回転機構43を備え、これらはモーターを駆動源とするねじ機構等の公知の駆動機構を備え試料を水平、垂直移動、水平回転させる。なお、上記各機構を駆動するモーターは、コンピュータで実現された走査電子顕微鏡の制御装置で駆動制御される。
【0030】
それ故、実施例1に係る走査電子顕微鏡10では、試料ステージ40及び試料移送装置80を駆動して、試料ホルダー18をX、Y、Z、R、Tの5つの自由度で駆動することができる。なお、試料ステージ40のX方向移動機構41は、試料ステージ40を支持部材45に沿ってX方向に駆動し、試料ステージ40を電子顕微鏡での観察位置から試料授受位置まで移動することができる。
【0031】
試料挿入機構70は、傾斜移動機構60の板状部材61に開設された開口65を閉塞する蓋部材71と、試料ホルダー18を挿入する挿入部材72とを備える。この実施例では、蓋部材71は、手動で水平移動され、試料ホルダー18を試料室17の外部から試料室17の試料授受位置まで移動される。なお、挿入部材72には試料ホルダー18を載置するための切欠部72aが形成されている。また、蓋部材71を傾斜移動機構60に設置した状態で、蓋部材71と傾斜移動機構60の板状部材61とは密閉状態となり、その結果試料室17は密閉状態となる。
【0032】
次に、
図3を参照して試料交換動作の概要について説明する。試料を試料室に搬入する場合には、試料室17を大気圧にした後、試料挿入機構70の挿入部材72を試料室17から引き出して、切欠部72aに試料ホルダー18を配置する。
【0033】
次に、試料ステージ40をX方向移動機構41で図中(a)の位置に移動させる。このとき、Z方向移動機構42によって試料ステージ40が挿入部材72に接触しない高さに設定する。そして、挿入部材72を試料室17内に挿入し試料授受位置に配置する。この状態で、蓋部材71が試料室17を密封とするので、試料室17内を観察に必要な真空状態にすることができる。
【0034】
さらに、試料授受位置においてZ方向移動機構42を駆動して試料ホルダー18を下方から持ち上げ、試料ステージ40上に配置し、この状態で、水平方向に観察位置まで移動させ(同(b))、所定の高さに配置する(同(c))。試料を試料室から搬出する場合は前記手順と逆の手順をとる。
【0035】
このように、走査電子顕微鏡10では、試料ステージ40と試料移送装置80とがY方向及び傾斜方向(T)に一体となって移動するため、試料の設置、交換に際して試料ステージ40をY、Tの2方向について位置調整をする必要がない。また、水平回転(R)については、試料設置後から自由に設定できる。このため、試料交換時における試料ステージ40の位置制御はX方向及びZ方向の2方向についてだけでよく、制御が簡単になり、試料の交換を迅速かつ安全に行うことができる。
【0036】
さらに実施例1に係る走査電子顕微鏡の試料設置装置の細部について説明する。
図4は実施例1に係る走査顕微鏡の試料設置装置の構成を示す斜視透視図、
図5は同じく試料設置装置の構成を示す斜視図、
図6は同じく試料設置装置の構成を示す
図4中A−A線に相当する断面図、
図7は同じく試料設置装置の構成を示す
図5中B−B線に相当する断面図、
図8は同じく試料設置装置の構成示す一部切欠斜視図である。
【0037】
試料ステージ40は、X方向駆動用モーター46、Z方向駆動用モーター47、水平回転駆動モーター48を備えている。また、試料ステージ40は、X方向駆動用モーター46の駆動により、支持部材45に沿って配置された案内レール49に沿って移動し、試料観察時におけるX方向の位置調整ができるほか、試料を観察位置と試料授受位置との間を移動できる。
【0038】
試料移送装置80の水平移動機構50は、Y方向駆動用モーター52とねじ機構とを備え、板状部材51を水平方向に移動させる。板状部材51と試料室17との間には、Oリングからなるシール部材53が配置されシール部が形成されている。
【0039】
試料移送装置80の傾斜移動機構60は、T方向駆動用モーター62と、ねじ機構とを備え、板状部材61を、開口65を貫通するY軸を中心として回転駆動させる。板状部材61と水平移動機構50の板状部材51との間には、Oリングからなるシール部材63が配置されシール部が形成されている。さらに、板状部材61には、蓋部材71との間のシール部をなすOリングからなるシール部材64が配置されている。
【0040】
試料挿入機構70の蓋部材71は、2段スライド式の案内シャフト73,74で板状部材61に保持されており、オペレーターが手動で移動させることができる。試料室17から挿入部材72を引き出したとき、切欠部72aが試料室の外部に配置できるようにして、試料ホルダー18の切欠部72aへの取り付けを容易にしている。また、蓋部材71には引き出し押し込み操作用のハンドル75が取り付けられている。
【0041】
次に、試料室17への試料ホルダー18の搬入について説明する。
図9から
図12は実施例1に係る試料設置装置の試料搬送動作を示す斜視図である。まず、
図9に示すように、ハンドル75を引き、試料挿入機構70の挿入部材72を試料室17から引き出し、切欠部72aに試料を載置した試料ホルダー18を配置する。
【0042】
次いで、
図10に示すように、Z方向駆動用モーター47を駆動して、試料ステージ40の高さ位置を下げ、X方向駆動用モーター46を駆動して、試料ステージ40を案内レール49に沿って移動させ、試料授受位置に移動させる。さらに、
図11に示すように、蓋部材71を試料室17側に移動して試料室17を密閉する。これにより、挿入部材72が試料室17に挿入され、切欠部72aに配置された試料ホルダー18が試料授受位置に配置される。この状態で、Z方向駆動用モーター47を駆動して、試料ステージ40を上昇させて試料ステージ40で試料ホルダー18を保持する。なお、試料室17は密閉された状態となるので、試料室を観察に必要な真空状態にすることができる。
【0043】
そして、
図12に示すように、再びX方向駆動用モーター46を駆動して、試料ステージ40を移動させて試料ホルダー18を観察位置に移動させる。以上により試料ホルダー18を観察位置に配置でき、観察を行うことができる。なお、試料の搬出は前記搬入の手順と逆の手順で操作を行う。
【0044】
以上のように、本発明に係る走査電子顕微鏡10によれば、試料の設置、交換に際しての位置合わせが容易となり試料の観察効率を向上させることができるほか、試料室のポートの数を削減できると共に位置合わせに必要な移動機構を省略できるので、試料設置装置及び荷電粒子ビーム装置の構成を全体として簡略で安価なものとすることができる。
【0045】
なお、前記実施例では、試料ステージ40と試料移送装置80とは、一体となってY方向の移動及び傾斜回転(T)させたが、試料ステージ40は、Y方向または傾斜回転(T)の一方についてのみ連動するようにしてもよい。この場合試料移送装置の構成を簡単にできる。また、前記実施例では、試料挿入機構70の操作を手動で行うようにしたが、これはモーター等を駆動源として自動的に行うことができる。また、上記実施例では、試料の交換のたびに試料室を大気圧にしたが、二重扉を備えるエアロック装置を配置して、試料室17の真空状態を保ちつつ試料を搬入、交換することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 走査電子顕微鏡
11 鏡筒
12 電子線源
13 電子線
14 コンデンサレンズ
15 偏向コイル
16 対物レンズ
17 試料室
18 試料ホルダー
19 荷電粒子
20 2次電子検出器
21 ポート
30 光学顕微鏡
40 試料ステージ
41 X方向移動機構
42 Z方向移動機構
43 水平回転機構
45 支持部材
46 X方向駆動用モーター
47 Z方向駆動用モーター
48 水平回転駆動モーター
49 案内レール
50 水平移動機構
51 板状部材(水平移動部材)
52 Y方向駆動用モーター
53 シール部材
55 開口
60 傾斜移動機構
61 板状部材(傾斜移動部材)
62 T方向駆動用モーター
63 シール部材
64 シール部材
65 開口
70 試料挿入機構
71 蓋部材
72 挿入部材
72a 切欠部
73,74 案内シャフト
75 ハンドル
80 試料移送装置
100 試料設置装置