(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、工具本体の小型化を図る上で有効な打撃工具を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、本発明の好ましい形態によれば、工具ビットを長軸方向に打撃動作することで被加工材に所定の加工作業を遂行する打撃工具が構成される。本発明に係る打撃工具は、モータによって駆動され、工具ビット長軸方向に揺動運動する揺動部材と、揺動部材の揺動運動のうち工具ビット長軸方向の直線運動成分を用いて駆動される打撃機構と、揺動部材と打撃機構とを連結する連結部と、少なくとも連結部を
収容する内部空間を有するインナハウジングと、
インナハウジングの外側に配置されてインナハウジングを収容するアウタハウジングと、インナハウジングの内部空間に配置されて、工具ビット駆動時の制振を行うカウンタウェイトと、を有する。なお、本発明における「連結部」とは、揺動部材と、当該揺動部材により駆動されて直線運動を行う筒状ピストンとを相対移動可能に連結するための部材とその周辺部分をいう。また、本発明における「内部空間」は、好ましくは工具ビットの長軸方向及び周方向の一部が開放された空間として形成される。従って、
インナハウジングの内側に配置されるカウンタウェイトは、その一部が当該
インナハウジングから露出した状態での配置となる。
【0007】
上記のように、カウンタウェイトを
インナハウジングの内部空間に配置した構成では、工具ビットの長軸方向と交差する方向において、カウンタウェイトと
インナハウジングとの間に干渉回避用の隙間があれば足りる。このため、打撃工具の外郭を構成するアウタハウジングとインナハウジングの間にカウンタウェイトを配置する従来の場合に比べ、干渉回避用として設定される隙間数を減らして工具本体の小型化を図ることができる。
なお、本形態に係る打撃工具において、アウタハウジングは、カウンタウェイトが配置された状態のインナハウジングを取付け可能に構成されている。
【0008】
本発明の更なる形態によれば、カウンタウェイトは、
インナハウジングに回動軸を支点として相対回動自在に連結されるとともに、揺動部材の揺動中心を挟んで連結部の反対側において揺動部材と連結されて駆動される。
この形態によれば、打撃機構による工具ビットの打撃動作に対向してカウンタウェイトを駆動させることができる。このため、カウンタウェイトによる、工具ビットの打撃動作時に生ずる振動を効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明の更なる形態によれば、カウンタウェイトは、一体成型されている。なお、本発明における「一体成型」する手段については、焼結、切削、鍛造、鋳造等の、いずれの方法を用いて作製しても構わない。
この形態によれば、カウンタウェイトを一体成型とすることで、耐久性の高いカウンタウェイトを作成することが可能となる。
【0010】
本発明の更なる形態によれば、カウンタウェイトは、閉じた環状に形成されている。なお、本発明における「閉じた環状」とは、文字通り周方向に切れ目を有しない構造を指すが、周方向の外郭形状については、特に限定するものではなく、円形、長円形、あるいは被円形等を好適に包含する。
この形態によれば、カウンタウェイトを閉じた環状とすることにより、当該カウンタウェイトの耐久性をより一層高めることができる。
【0011】
本発明の更なる形態によれば、打撃機構と揺動部材が連結部を介して予め組み立てられたアッセンブリとして構成されている。
この形態によれば、打撃機構と揺動部材とを予め組み立てたアッセンブリとし、一部品として取り扱うことが可能となるため、
インナハウジングに対する組付け性あるいは修理性をより向上することができる。
なお、本発明の更なる形態によれば、インナハウジングは、カウンタウェイトが配置された状態において、アッセンブリを取付け可能に構成することができる。
【0012】
本発明の更なる形態によれば、回動軸を支点として相対回動する
インナハウジングとカウンタウェイトとの摺動面間に金属部材が介在されている。
この形態によれば、金属部材によって摺動面を保護することができる。従って、工具本体の軽量化のために
インナハウジングが、例えばアルミニュムのような軟質金属材料から作製され、一方重量を稼ぐ目的からカウンタウェイトが高比重の焼結合金から作製される場合であれば、金属部材を
インナハウジングに固定してカウンタウェイトに対し相対回動するように設定することで、軟質金属材料製の
インナハウジングの摺動面を摩耗から保護することができる。
【0013】
本発明の更なる形態によれば、
インナハウジングと金属部材は、回動軸が挿入される軸孔を有する。そして金属部材は、
インナハウジングに取付けられたときに、当該金属部材の軸孔の中心が
インナハウジングの軸孔の中心と一致するように当該
インナハウジングに対して位置決めされる。
この形態によれば、
インナハウジングの軸孔に対する金属部材の軸孔の芯出し作業が不要となり、回動軸の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の更なる形態によれば、
インナハウジングとアウタハウジングには工具ビットの長軸方向周りに延在する嵌合面が形成されるとともに、当該嵌合面には周方向に延在するOリングが介在されており、当該Oリングは、工具ビット長軸方向に関して、異なる位置に配置された個所を有する。
この形態によれば、アウタハウジング内に封入される潤滑材の漏れを防止するべく
インナハウジングとアウタハウジングとの周方向の嵌合面間の隙間をOリングによって封止する場合において、Oリングを、工具ビット長軸方向を横切る横断面に対して工具ビット長軸方向に変位した形態での配置が可能とされる。これにより、形状的にシール面として不都合な領域を回避する形態でのシール面の設定が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、工具本体の小型化を図る上で有効な打撃工具が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態につき、
図1〜
図7を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、打撃工具の一例として充電式のハンマドリルを用いて説明する。本実施形態のハンマドリル101
は、
図1に示すように、概括的に見て、ハンマドリル101の外郭を形成する工具本体としての本体部103と、当該本体部103の先端領域(図示右側)にツールホルダ137を介して着脱自在に取付けられたハンマビット119と、本体部103のハンマビット119の反対側に連接されたハンドグリップ109とを主体として構成されている。ハンマビット119は、本発明における「工具ビット」に対応する。ハンドグリップ109は、使用者が握るメインハンドルとして備えられている。ハンマビット119は、ツールホルダ137によってその長軸方向への相対的な往復動が可能に、かつその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。なお説明の便宜上、本体部103がハンマビット119の長軸方向を水平方向とする向きに置かれた状態において、ハンマビット119側を前、ハンドグリップ109側を後という。
【0018】
本体部103は、駆動モータ111を収容するモータハウジング105と、運動変換機構113、打撃要素115及び動力伝達機構117を収容するギアハウジング107とを主体として構成されている。駆動モータ111は、本発明における「モータ」に対応し、ギアハウジング107は、本発明における「アウタハウジング」に対応する。ハンドグリップ109は、ハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向に延在するとともに、その上端部と下端部が本体部103に連接され、これにより閉じられたループ状のハンドル(D形ハンドル)を構成している。ハンドグリップ109の下端部には、バッテリ装着部109Aが形成され、当該バッテリ装着部109Aには、駆動モータ111の電源となる充電式のバッテリパック110が着脱自在に装着されている。
【0019】
図2に運動変換機構113、打撃要素115及び動力伝達機構117が拡大断面図として示される。駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素115に伝達され、当該打撃要素115を介してハンマビット119の長軸方向(
図1における左右方向)への衝撃力を発生する。また駆動モータ111の回転出力は、動力伝達機構117によって適宜減速された上でハンマビット119に回転力として伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。駆動モータ111は、ハンマビット119の長軸方向の下方側において、出力軸112の軸線の延長線がハンマビット119の長軸線(長軸方向)を横切るように交差状に配置されている。なお、駆動モータ111は、ハンドグリップ109に配置されたモータ操作部材としてのトリガ109a(
図1参照)を作業者が引き操作することによって通電駆動される。
【0020】
運動変換機構113は、駆動ギア121、被動ギア123、中間軸125、回転体127及び揺動リング129を主体として構成される。駆動ギア121は、ハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向に延在する駆動モータ111の出力軸112に設けられ、水平面内にて回転駆動される小ベベルギアによって構成されている。被動ギア123は、駆動ギア121に噛み合い係合する大ベベルギアによって構成され、ハンマビット119の長軸方向と平行に配置された中間軸125と共に回転する。回転体127は、中間軸125と一体回転し、当該回転体127の外周面に揺動リング129が軸受126を介して相対回転可能に取り付けられている。揺動リング129は、回転体127の回転動作に伴ってハンマビット119の長軸方向に揺動される揺動部材として備えられ、ハンマビット119の長軸方向と交差する方向の上方に一体に突設された揺動ロッド128を有する。そして、揺動ロッド128が有底筒状の筒状ピストン130の後端部(底部側)と円柱状の連結軸124を介して相対回動自在に連結される。揺動リング129は、本発明における「揺動部材」に対応する。
【0021】
筒状ピストン130の後端部(
図2の左側)には、平面視で略U字形をなすU形連結部(クレビス)130bが一体に形成され、このU形連結部130bと揺動リング129の揺動ロッド128が連結軸124を介して連結される。連結軸124は、筒状ピストン130と揺動リング129とを連結する連結部材として備えられ、U形連結部130bに対しては、ハンマビット119の長軸方向と交差する水平方向(左右方向)の軸線周りに相対回動自在に取付けられ、揺動ロッド128に対しては、ハンマビット119の長軸方向と交差する鉛直方向(上下方向)の軸線周りに相対回動自在に取付けられている。これにより、揺動リング129の揺動運動のうちハンマビット119の長軸方向の直線運動成分が筒状ピストン130に伝達され、当該筒状ピストン130の直線動作が可能とされる。連結軸124は、本発明における「連結部」に対応する。
【0022】
打撃要素115は、駆動子としての有底筒状の筒状ピストン130と、筒状ピストン130のボア内壁に摺動自在に配置された打撃子としてのストライカ143と、ツールホルダ137に摺動自在に配置された中間子としてのインパクトボルト145とを主体として構成される。ストライカ143は、筒状ピストン130の相対的な摺動動作に伴う空気室130aの空気バネ(圧力変動)を介して駆動され、インパクトボルト145に衝突(打撃)し、当該インパクトボルト145を介してハンマビット119に打撃力を伝達する。打撃要素115は、本発明における「打撃機構」に対応する。
【0023】
動力伝達機構117は、中間軸125上において、揺動リング129を挟んで被動ギア123の反対側に配置された第1伝達ギア131と、当該第1伝達ギア131に噛み合い係合してハンマビット119の長軸方向周りを回転される第2伝達ギア133と、当該第2伝達ギア133と共に同軸でハンマビット119の長軸方向周りを回転される最終軸としてのツールホルダ137を主体として構成される。そして、駆動モータ111によって回転駆動される中間軸125の回転出力は、第1伝達ギア131から第2伝達ギア133を経てツールホルダ137に保持されたハンマビット119へと伝達される。ツールホルダ137は、略円筒状の筒状部材であり、ギアハウジング107にハンマビット119の長軸周りに回転自在に保持されるとともに、ハンマビット119の軸部及びインパクトボルト145を収容保持する前方筒部と、当該前方筒部から後方へ一体に延在するとともに、有底筒状の筒状ピストン130を摺動自在に収容保持する後方筒部とを備えている。
【0024】
上記のように構成されるハンマドリル101は、使用者によるトリガ109aの引き操作によって駆動モータ111が通電駆動され、中間軸125が回転駆動されると、揺動リング129の揺動運動を介して筒状ピストン130がツールホルダ137内を直線状に摺動動作され、それに伴う当該筒状ピストン130の空気室130a内の空気の圧力変化、すなわち空気バネの作用により、ストライカ143は筒状ピストン130内を直線運動する。ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突することで、その運動エネルギをハンマビット119に伝達する。
【0025】
一方、中間軸125とともに第1伝達ギアが回転されると、第1伝達ギアに噛み合い係合される第2伝達ギア133を介してツールホルダ137が鉛直面内にて回転され、更に当該ツールホルダ137にて保持されるハンマビット119が一体状に回転される。かくして、ハンマビット119が軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作を行い、被加工材(コンクリート)に穴開け作業を遂行する。
【0026】
本実施の形態に係るハンマドリル101は、上述したハンマビット119にハンマ動作と周方向のドリル動作とを行わせるハンマドリルモードでの作業態様のほか、ハンマビット119にドリル動作のみを行わせるドリルモードでの作業態様に切り替えるためのモード切替クラッチ139を備えている。モード切替クラッチ139は、中間軸125上に長軸方向に相対移動可能にスプライン嵌合されており、外部からの手動操作によって中間軸125上を長軸方向に相対移動されることにより、当該モード切替クラッチ139のクラッチ歯を回転体127のクラッチ歯に噛み合い係合して中間軸125の回転を回転体127に伝達する動力伝達状態と、当該噛み合い係合を解除して動力伝達を遮断する動力遮断状態との間で切替えられるように構成されている。動力伝達状態に切替えられることでハンマドリルモードが選択され、動力遮断状態に切替えられることでドリルモードが選択される。
【0027】
ハンマドリル101は、加工作業時において、ハンマビット119の長軸方向、すなわち打撃軸線方向に発生する衝撃的かつ周期的な振動の制振を行う制振機構を有する。本実施の形態に係る制振機構は、揺動リング129によって駆動されるカウンタウェイト155を主体にして構成される。カウンタウェイト155は、本発明における「カウンタウェイト」に対応する。
【0028】
カウンタウェイト155は、
図4に示すように、ハンマビット119の長軸方向から見て、略達磨型のリング状部材として形成され、ギアハウジング107内の後部に配置されたインナハウジング151の内側に配置されている。インナハウジング151は、本発明における「ハウジング部材」に対応する。インナハウジング151は、
図2に示すように、駆動モータ111の出力軸112、中間軸125及びツールホルダ137の後端部を回転自在に保持するとともに、駆動ギア121、被動ギア123及び揺動リング129と筒状ピストン130との連結領域(U形連結部130b、揺動ロッド128及び連結軸124)を覆う筐体部材として備えられる。
【0029】
インナハウジング151は、
図5に示すように、前面が開放されるとともに、前側領域の下半部の左右側面及び下面が更に開放された側面視で略逆さL形(かぎ型)に形成されている。インナハウジング151の上半部151aは、軸受137a(
図2、
図3参照)を介してツールホルダ137の後端部外周を回転自在に保持するとともに、揺動リング129と筒状ピストン130との連結領域を収容する領域として備えられる。インナハウジング151の下半部151bは、出力軸112の上端部及び中間軸125の後端部を軸受112a,125a(
図2参照)を介して回転自在に保持するとともに、駆動ギア121及び被動ギア123を収容する領域として備えられる。なお、上半部151aのうちツールホルダ137の後端部(軸受137a)を保持する領域は、閉じられた円環状のツールホルダ保持部152として別体で形成されている。
【0030】
インナハウジング151は、ギアハウジング107の後開口部107aに後方から嵌入された状態で組付けられている。インナハウジング151の嵌合外周面151c(
図5参照)とギアハウジング107の後開口部107a(
図2参照)の嵌合内周面間には、Oリング153が介在状に配置されている。Oリング153は、インナハウジング151の嵌合外周面151cに形成された周方向のOリング取付溝151dに嵌め込まれ、ギアハウジング107の後開口部107aの嵌合内周面に密接状に接触されている。これにより、ギアハウジング107内の運動変換機構113、打撃要素115及び動力伝達機構117等の駆動機構を潤滑するべく当該ギアハウジング107内に充填された潤滑剤(グリス)が外部に漏出することを防止している。
【0031】
なお、インナハウジング151の嵌合外周面151c及びOリング153は、
図2に示すように、ハンマビット119の長軸方向を横切る横断面(鉛直面)に対して下端側が前方に傾斜した配置とされている。これによりOリング153は、ハンマビット119の長軸方向において、異なる位置に配置された箇所を有する構成とされ、このような構成とすることで、同一鉛直面上において、形状的にシール面として不都合な領域が存在する場合、その領域を避ける形態でのシール面の設定が可能とされる。本実施の形態では、設計上の都合でギアハウジング107の後開口部107aの開口端面が前方に傾斜した形状に形成されるが、このような設計に対して好適に対応可能となる。
【0032】
カウンタウェイト155は、
図4に示すように、2つの環状部155a,155bが上下方向(径方向)に一体に連接された略達磨型の閉じられた環状部材として一体成型されており、焼結、切削、鍛造、鋳造等の手段を用いて作製される。そして、カウンタウェイト155は、インナハウジング151の上半部151a側では、上側環状部155aが揺動リング129と筒状ピストン130との連結部(U形連結部130b)の外側に置かれ、またインナハウジング151の下半部151b側では、下側環状部155bが揺動リング129の外側に置かれるように、ハンマビット119の長軸方向後方(
図4の右側から左側)へと移動させてインナハウジング151の内側に配置される。このようなインナハウジング151に対するカウンタウェイト155の内部配置は、インナハウジング151における環状のツールホルダ保持部152を、前述したようにインナハウジング151の上半部151aから分割して別体で形成することにより可能とされている。すなわち、ツールホルダ保持部152は、カウンタウェイト155をインナハウジング151内に配置後、
図3に示すように、当該インナハウジング151の上半部151aの開口前端面に突き当てた状態で左右2本の固定ネジ157により締着する構成とされ、これによりカウンタウェイト155の内部配置が可能とされる。
【0033】
図4に示すように、カウンタウェイト155の上下の環状部155a,155bのうち上側環状部155aは、インナハウジング151の上半部151aによって外側を覆われるが、下側環状部155bは、下半部151bから露出される。これは、前述したように下半部151bが左右側方及び下方がそれぞれ開放された形状に形成されているからであり、このような下半部151bの開放形状は、インナハウジング151の軽量化に有効となる。すなわち、カウンタウェイト155は、その一部である上側環状部155aがインナハウジング151の上半部151aによって収容される構成であり、上半部151aによって囲まれる内側空間156(
図3、
図5参照)が、本発明における「内部空間」に対応する。
【0034】
図4に示すように、インナハウジング151の上半部151aに収容されたカウンタウェイト155の上側環状部155aの上端部には、上方に一体に突出する方形状の取付部155cが形成されている。この取付部155cは、インナハウジング151の上半部151aの上側領域に形成された開口部154(
図2参照)に遊嵌状に配置されるとともに、頭付取付ピン159によって上半部151aに取付けられている。すなわち、カウンタウェイト155は、ハンマビット119の打撃軸線よりも上方において、インナハウジング151に対し頭付取付ピン159を回動支点にしてハンマビット119の長軸方向(前後方向)に回動動作可能に取付けられている。頭付取付ピン159は、本発明における「回動軸」に対応する。
【0035】
図2に示すように、カウンタウェイト155の下側環状部155bの下端部には、係合孔155eが形成され、これに対応して揺動リング129の下端部領域、すなわち、筒状ピストン130との連結部から周方向に約180度ずれた位置には、外径方向に突出する係合部としての円柱状あるいは円筒状の突起部129aが設けられ、当該突起部129aがカウンタウェイト155の係合孔155eに相対的な遊動を許容された状態で係合されている。したがって、揺動リング129が揺動動作されると、カウンタウェイト155は、頭付取付ピン159を支点にして当該揺動リング129の揺動動作によって駆動され、筒状ピストン130の直線動作に対して対向状に回動される。なお、
図4に示すように、カウンタウェイト155の外面とインナハウジング151の内壁面との間、またカウンタウェイト155の内面と、これに対向するU形連結部130bの外面との間、及び揺動リング129の外面との間には、それぞれ回動動作時の干渉を回避する上で必要な隙間Cが形成されている。
【0036】
頭付取付ピン159は、
図4に示すように、インナハウジング151の上半部151aに形成された開口部154を挟んで対向する左右のピン保持部151eのピン孔151fと、当該開口部154に配置されるカウンタウェイト155の取付部155cのピン孔155dに遊嵌状に挿通されるとともに、ピン先端部に取付けられた止め輪161によって抜け止めされる。インナハウジング151は、工具本体の軽量化のために、例えば、アルミニュムのような軽量金属材料を用いて作製されるが、アルミニュムの場合、摺動部が摩耗し易い。そこでこの実施の態様では、カウンタウェイト155の取付部155cとインナハウジング151のピン保持部151eとの、互いに対向する摺動面間に鉄板製のピン孔付きの介在部材163を配置することでインナハウジング151を摩耗から保護している。介在部材163は、本発明における「金属部材」に対応し、ピン孔151f、155dは、本発明における「軸孔」に対応する。
【0037】
介在部材163は、
図5に示すように、鉄板を平面視で略C形に折り曲げた形状に形成されており、ピン孔163aを有する鉛直面部が、左右のピン保持部151eとカウンタウェイト155の取付部155cとの間に配置(
図4参照)されるように、左右のピン保持部151eの外側に上方から嵌め込むことによって取付けられる。そしてピン保持部151eに取付けられた状態において、介在部材163は、その下端面が上半部151aの上面に当接することで上下方向に関する位置決めが行われ、C形開口部の端面がピン保持部151eの側面に当接することで左右方向に関する位置決めが行われるように構成されている。これにより介在部材163のピン孔163aの中心がピン保持部151eのピン孔151fの中心と一致する。このため、ピン保持部151eのピン孔151fに対する介在部材163のピン孔163aの芯出しが不要となり、頭付取付ピン159による、インナハウジング151のピン保持部151eに対するカウンタウェイト155の取付部155cの組付け作業を容易に行うことができる。
【0038】
本実施の形態では、
図6に示すように、動力伝達系における2番軸を構成する中間軸125と、打撃要素115の構成部材である筒状ピストン130とを予め組付けてアッセンブリとし、このアッセンブリをインナハウジング151に組付ける構成としている。すなわち、アッセンブリは、中間軸125に対して軸受125a、被動ギア123、回転体127、モード切替クラッチ139、第1伝達ギア131、及び揺動リング129等を順次組付けるとともに、更に揺動リング129の揺動ロッド128に、筒状ピストン130のU形連結部130bを連結軸124によって組付けることによって形成される。
【0039】
上記のように形成されたアッセンブリは、
図7に示すように、予めカウンタウェイト155が組付けられたインナハウジング151に対して、軸受125aの外輪をインナハウジング151の軸受ハウス部151gの内側に圧入することによって当該インナハウジング151に組付けられる。この組付けに際し、揺動リング129の突起部129aがカウンタウェイト155の係合孔eに係合される。その後、
図7では図示を省略しているが、インナハウジング151の上半部151aには、円環状のツールホルダ保持部152が固定ネジ157によって固定される。なお、このようにしてインナハウジング151に組付けられたアッセンブリは、当該インナハウジング151をギアハウジング107に組付ける際に、後開口部107aからギアハウジング107内に挿入されて収容される。
【0040】
上記のように構成されたハンマドリル101は、加工作業時において、ハンマビット119の長軸方向に発生する衝撃的かつ周期的な振動に対し、カウンタウェイト155が制振機能を奏する。カウンタウェイト155は、揺動リング129と筒状ピストン130とを連結する連結軸124から周方向に約180度の位相差を置いた箇所で揺動リング129と連結されている。すなわち、揺動リング129の揺動中心を挟んで連結軸124と対向状に揺動リング129と連結されている。このため、筒状ピストン130がストライカ143側に向かってツールホルダ137内を摺動するとき、カウンタウェイト155は、当該ストライカ143の摺動方向と反対方向へと対向状に回動動作し、これによりハンマドリル101に生ずるハンマビット119の長軸方向の振動を抑制する。
【0041】
本実施の形態では、カウンタウェイト155を、インナハウジング151の内側に配置する構成としている。このことにより、例えばインナハウジング151の外側に配置する構成(インナハウジング151とギアハウジング107との間に配置する構成)に比べてインナハウジング151とギアハウジング107との間に隙間が不要となり、本体部103の径方向(ハンマビット長軸方向と交差する方向)の小型化が可能になる。すなわち、インナハウジング151の外側に配置する場合であれば、カウンタウェイト155とインナハウジング151及びギアハウジング107間には、それぞれ干渉回避用の隙間が必要とされる。これに対し、本実施の形態によれば、カウンタウェイト155とインナハウジング151との間に干渉回避用の隙間があれば足りることとなり、干渉回避のための隙間数を減少することができる。その結果、本体部103の小型化を図る上で有効となる。
【0042】
本実施の形態では、インナハウジング151のうちツールホルダ137を保持する環状領域につき、当該インナハウジング151から分割された環状のツールホルダ保持部152として別体で形成し、カウンタウェイト155をインナハウジング151の内側に配置した後でインナハウジング151に組付けることを可能としている。このため、形状を変化させることなく、カウンタウェイト155をハンマビット119の長軸方向に移動させる形態でインナハウジング151の内側に組付けることが可能となり、このことによりカウンタウェイト155を閉じた環状に一体成型するとともに、焼結、機械切削、鍛造等で作製することで耐久性の高いカウンタウェイト155を得ることが可能となる。
【0043】
本実施の形態によれば、中間軸125上の揺動リング129と筒状ピストン130とを連結軸124を介して予め組み立ててアッセンブリとし、これをインナハウジング151に組付ける構成としている。このようにアッセンブリ化することで、中間軸125から筒状ピストン130までの動力伝達に関わる各部材を一部品として取り扱うことが可能となり、組付け性あるいは修理性を向上することができる。
【0044】
本実施の形態によれば、カウンタウェイト155の取付部155cとインナハウジング151のピン保持部151eとの摺動面間に、当該ピン保持部151e側に固定する形態で鉄板製の介在部材163を配置し、ピン保持部151eの摺動面を摩耗から保護している。このため、インナハウジング151をアルミニュムのような軽量金属から作製して本体部103の軽量化を向上することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、介在部材163は、ピン保持部151eに対して上方からの嵌め込みによって取付けられたとき、上下方向及び左右方向がそれぞれ位置決めされ、これにより当該介在部材163のピン孔163aの中心がピン保持部151eのピン孔151fの中心と一致するように構成されている。このため、頭付取付ピン159によって、インナハウジング151のピン保持部151eにカウンタウェイト155の取付部155cを組付ける場合の、介在部材163のピン孔163aとピン保持部151eのピン孔151fとの芯出し作業が不要となり、組付け性が向上する。
【0046】
なお、本実施の形態は、打撃工具として、電動式のハンマドリル101を例にとって説明しているが、ハンマドリル101に限らず、ハンマビット119が長軸方向の打撃運動のみを行う電動ハンマに適用可能である。