(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、下水道、マンホール、道路の側溝等における汚泥回収作業や、浄水場の泥砂回収作業などにおいて、汚泥や泥水などの回収対象物を、負圧を利用して吸引回収する吸引車が知られている。例えば、特許文献1には、レシーバタンク内のエアーを吸引して、レシーバタンク内の圧力を低下させ、レシーバタンクに接続された吸引ホースを通じて回収対象物を一気に吸引する吸引車が記載されている。
【0003】
また、
図6は従来の吸引車の左側面図、
図7は平面図を示しており、従来、この種の吸引車70では、レシーバタンク71内のエアーを吸引する吸引ポンプ(ベーンポンプ)72および油圧ポンプ77は、PTO(動力取出装置)73を通じて走行用エンジン74により駆動される。吸引ポンプ72はPTO73から直接トルクシャフト75により駆動されるため、PTO73と同じくシャーシフレーム76の下に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年の吸引車では、排気管に触媒が設けられたり、センサなどの電装品が増えたり、エアー配管や油圧配管が複雑に配置されたりしているため、シャーシフレーム76の下にトルクシャフト75や吸引ポンプ72を取り付けるためのスペースが十分に確保することが難しくなってきている。また、吸引ポンプ72は、PTO73から直接トルクシャフト75により駆動されるため、シャーシフレーム76の下に取り付けられる位置も限られており、空いたスペースに自由に配置することもできない。
【0006】
そこで、本発明においては、吸引ポンプを自由に配置することが可能な吸引車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸引車は、廃水または汚泥を回収するレシーバタンク内からエアーを吸引してこのレシーバタンク内を減圧するための吸引ポンプと、この吸引ポンプの吐出側に接続され、この吸引ポンプにより吸引したエアーからオイルを分離し、オイル溜まり部へ回収するオイルセパレータと、吸引ポンプの吸込側と、レシーバタンク側と、エアーの排気管側と、吸引ポンプの吐出側とが接続され、吸引ポンプの吸込側とレシーバタンク側とを連通させるとともにエアーの排気管側と吸引ポンプの吐出側とを連通させる第1の状態、吸引ポンプの吸込側とエアーの排気管側とを連通させるとともにレシーバタンク側と吸引ポンプの吐出側とを連通させる第2の状態、または、吸引ポンプの吸込側と吸引ポンプの吐出側とを連通させるとともにレシーバタンク側とエアーの排気管側とを連通させる第3の状態とを切り換える四方弁と、レシーバタンク側から吸引ポンプ側へ流れるエアーに含まれる異物を分離除去するエアセパレータとを有する吸引車において、吸引ポンプが、走行用エンジンによりPTOおよびトルクシャフトを介して駆動させる油圧ポンプに接続された油圧モータに直接接続されたものであることを特徴とするものである。本発明の吸引車によれば、吸引ポンプは油圧モータにより回転駆動され、油圧モータは油圧ポンプにより供給される作動油により作動する。したがって、油圧ポンプから油圧モータへ供給する作動油の配管は、PTOの配置に制約されることなく、自由に配設することができる。
【0008】
ここで、吸引ポンプおよび油圧モータは、当該吸引車のキャブとレシーバタンクとの間のシャーシフレーム上に設けられたものであることが望ましい。これにより、吸引車のキャブとレシーバタンクとの間のデッドスペースを有効活用することが可能である。
【0009】
また、吸引ポンプ、油圧モータ、オイルセパレータ、エアセパレータおよび四方弁、並びに油圧モータへ供給される作動油を冷却および貯留するオイルクーラ兼オイルタンクは、パレット上に設けられ、それぞれが配管により接続されてユニット化されたものであることが望ましい。これにより、吸引ポンプ、油圧モータ、オイルセパレータ、エアセパレータ、四方弁およびオイルクーラ兼オイルタンクはパレット上にユニット化されているので、吸引車のキャブとレシーバタンクとの隙間に容易に設置することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
(1)吸引ポンプが、走行用エンジンによりPTOおよびトルクシャフトを介して駆動させる油圧ポンプに接続された油圧モータに直接接続されたものであることにより、吸引ポンプは油圧モータにより回転駆動され、油圧ポンプから油圧モータへ供給する作動油の配管は、PTOの配置に制約されることなく、自由に配設することができるため、吸引ポンプを自由に配置することが可能となる。また、油圧ポンプは設置スペースが従来よりも少なくて良い。
【0011】
(2)吸引ポンプおよび油圧モータが当該吸引車のキャブとレシーバタンクとの間に設けられたものであることにより、レシーバタンクの前方のシャーシフレーム上のデッドスペースを有効活用することが可能となる。
【0012】
(3)吸引ポンプ、油圧モータ、オイルセパレータ、エアセパレータ、四方弁およびオイルクーラ兼オイルタンクが、パレット上に設けられてユニット化されたものであることにより、吸引車のキャブとレシーバタンクとの隙間にこれらの機器を容易に設置することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態における吸引車の左側面図、
図2は平面図、
図3はキャブ背面図である。
図1〜
図3に示すように、本発明の実施の形態における吸引車1は、車両10と車両10に搭載された吸引装置20とから構成される。車両10は、キャブ11とシャーシフレーム12とを有する。シャーシフレーム12には、走行用エンジン10a、ドライブシャフト13、PTO(動力取出装置)14(
図5参照。)や車輪15等が取り付けられている。
【0015】
シャーシフレーム12は、車両10の前後方向に延びたサブフレーム30を備えている。吸引装置20は、このサブフレーム30上に搭載されている。サブフレーム30の後側部分には、廃水や汚泥などの回収対象物を回収するレシーバタンク31が設置されている。なお、本明細書中において、車両10のキャブ11側を前側、レシーバタンク31側を後側とし、レシーバタンク31側からキャブ11側に向かって車両10の右舷を右側、左舷を左側として説明する。
【0016】
レシーバタンク31は後側が開放されたタンク本体31aと、タンク本体31aの開放部分を覆うテールゲート31bとを備えている。テールゲート31bは上側を支点として回動自在にタンク本体31aに支持されている。タンク本体31aとテールゲート31bとの間には、テールゲート31bを開閉するための油圧シリンダからなるゲートシリンダ31cが設けられている。また、サブフレーム30とレシーバタンク31との間には、レシーバタンク31を傾斜させてレシーバタンク31内の回収物を排出するための油圧シリンダからなるダンプシリンダ31dが設けられている。
【0017】
レシーバタンク31のタンク本体31aの上部前側には、回収対象物のオーバフローを防止するオーバフローストップ弁51を介して吸引加圧配管41が接続されており、この吸引加圧配管41にはレシーバタンク31の後方右側のエアセパレータ28を経由して、さらに前方左側の四方弁25を介して吸引ポンプ21が接続されており、この吸引ポンプ21によって、レシーバタンク31内のエアーが加減圧される。吸引ポンプ21は、シャーシフレーム12上のレシーバタンク31の前方のキャブ11との間に2つ設けられており、油圧モータ60に対してカップリング61a,61bにより車両10の幅方向に直列に連結されている。また、油圧モータ60の上方には
オイルクーラ兼オイルタンク62が搭載されている。また、レシーバタンク31の前部左側には、サブオイルセパレータ23、オイルセパレータ24、四方弁25等の配管機器類が搭載されている。
【0018】
また、レシーバタンク31の本体31aの上部中央には、吸引対象物を吸引する吸引口32が形成されており、この吸引口32に、可撓性の吸引ホース42が接続されている。吸引ホース42の先端部はブラケット33を介してレシーバタンク31の本体31aに支持固定されている。また、吸引ホース42の先端部には、開閉弁34が設けられている。さらに、開閉弁34の先端側には、図示しないホースを接続するためのホースニップル35が取り付けられている。
【0019】
また、テールゲート31bの下側には、開閉弁付き排出口36が設けられている。この開閉弁付き排出口36は、レシーバタンク31内に回収した回収対象物の排出口である。吸引車1がレシーバタンク31内の回収対象物を特定の場所(例えば汚水処理場など)へ排出する場合、レシーバタンク31内のエアーを加圧し、この開閉弁付き排出口36に接続した図示しない排出ホースを通じてレシーバタンク31内の回収対象物を外部へ排出することができる。また、テールゲート31bを開き、レシーバタンク31を傾斜させることにより、レシーバタンク31内の回収対象物を排出することもできる。
【0020】
次に、
図4に示す配管図に基づいて、吸引車1が搭載している吸引装置20の配管構成について説明する。
【0021】
図4において、2つの吸引ポンプ21はベーンポンプであり、それぞれの吸込側は、吸引配管44を介して四方弁(切換弁)25の第1ポート251に接続されている。吸引ポンプ21の吸込側には、それぞれ吸引ポンプ21が吸引するエアーの逆流を防止するための逆止弁22が設けられている。また、2つの吸引ポンプ21のそれぞれの吐出側は、吐出配管45を介して四方弁25の第4ポート254に接続されている。
【0022】
サブオイルセパレータ23およびオイルセパレータ24は、吸引ポンプ21の吐出側と四方弁25の第4ポート254との間を接続する配管45上に配置されている。吸引ポンプ21が吐出するエアーに含まれるオイルは、まず、サブオイルセパレータ23によって分離除去され、次に、オイルセパレータ24によって分離除去される。サブオイルセパレータ23およびオイルセパレータ24によって分離除去されたオイルは、オイルセパレータ24内のオイル溜まり部24aに貯留される。オイル溜まり部24aは、オイル供給配管43により2つの吸引ポンプ21のそれぞれのオイル補給口に接続されおり、このオイル供給配管43を通じて吸引ポンプ21を潤滑および冷却するためのオイルが供給される。オイル供給配管43の途中には、オイル内の異物を除去するためのオイルストレーナ27が設けられている。
【0023】
四方弁25の第3ポート253には、吸引ポンプ21の吐出側のエアーを排気管26の基端部が接続されている。この排気管26の先端部には、サイレンサ50が設置されている。
【0024】
レシーバタンク31は、吸引加圧配管41を介して、四方弁25の第2ポート252に接続されている。前述のオーバフローストップ弁51は、吸引加圧配管41のレシーバタンク31側の端部(レシーバタンク31内)に設置されている。また、吸引加圧配管41の途中には、オーバフローセフティ弁29、エアセパレータ28、安全弁52等が設置されている。
【0025】
オーバフローセフティ弁29は、万が一、回収対象物のオーバフローをオーバフローストップ弁51で止めることができなかった場合に、吸引加圧配管41内の流路を閉塞するために設けられている。
【0026】
エアセパレータ28は、レシーバタンク31側から吸引ポンプ21側へ吸引加圧配管41内を流れるエアーに含まれるごみ等の異物を分離除去するためのものである。
図4に例示するエアセパレータ28は、レシーバタンク31の減圧時にエアセパレータ28内へのエアーの入口となる入口ポート281と、レシーバタンク31の減圧時にエアセパレータ28内のエアーの出口となる出口ポート282とを有する。また、エアセパレータ28は、さらにその内部において、入口ポート281と出口ポート282との間にパンチングメタル、金網体等からなる異物分離フィルタ284を有している。また、エアセパレータ28には、異物分離フィルタ284によって分離された落下した異物の体積量を確認するための透明ガラス等からなる覗き窓283が設けられている。
【0027】
上記構成の吸引装置20において、汚水等の回収対象物をレシーバタンク31内に吸引回収する場合、吸引ポンプ21を駆動するとともに、切換弁である四方弁25の切換ハンドルを操作して、第1ポート251と第2ポート252とを連通させ、第3ポート253と第4ポート254とを連通させる。その結果、レシーバタンク31内のエアーは、エアセパレータ28、四方弁25および逆止弁22を介して吸引ポンプ21により吸引され、サブオイルセパレータ23、オイルセパレータ24、四方弁25、排気管26およびサイレンサ50を通じて外部に吐き出される。これにより、レシーバタンク31内が減圧されるので、開閉弁34先端に接続したホース(図示せず。)および吸引ホース42を通じて回収対象物がレシーバタンク31に吸引回収される。
【0028】
また、吸引装置20において、レシーバタンク31内を加圧する場合、吸引ポンプ21を駆動するとともに、四方弁25の切換ハンドルを操作して、第1ポート251と第3ポート253とを連通させ、第2ポート252と第4ポート254とを連通させる。その結果、外気がサイレンサ50、排気管26、四方弁25および逆止弁22を介して吸引ポンプ21に吸引され、サブオイルセパレータ23、オイルセパレータ24、四方弁25およびエアセパレータ28を介してレシーバタンク31内に供給される。このように、レシーバタンク31内のエアーを加圧することで、開閉弁付き排出口36からレシーバタンク31内の回収対象物を外部へ排出することができる。
【0029】
また、レシーバタンク31内に回収した汚水等の回収対象物を運搬する際には、吸引装置20においてレシーバタンク31内の圧力を開放する。このとき、四方弁25の切換ハンドルを操作して、第1ポート251と第4ポート254とを連通させ、第2ポート252と第3ポート253とを連通させる。これにより、レシーバタンク31は、エアセパレータ28、四方弁25、排気管26およびサイレンサ50を介して大気と連通する。これにより、レシーバタンク31内の圧力が開放され、大気圧となる。
【0030】
次に、
図5の油圧系統図に基づいて、吸引車1が搭載している吸引装置20の油圧系統について説明する。
【0031】
図5に示すように、油圧モータ60には、供給配管64を介して油圧ポンプ63が連結されている。油圧ポンプ63は、走行用エンジン10aから動力を取り出すPTO14により、直接トルクシャフト16で駆動され、オイルクーラ兼オイルタンク62に貯留される作動油を吸い上げて、供給配管64へ流通させ、油圧モータ60へ供給する。供給配管64の途中には、作動油の逆流を防止するための逆止弁69が設けられている。また、供給配管64の途中の逆止弁69と油圧モータ60との間には、圧力計66と、圧力設定用のストップ弁67が設けられている。
【0032】
油圧モータ60へ供給された作動油は、リターン配管65を通ってオイルクーラ兼オイルタンク62へ戻される。オイルクーラ兼オイルタンク62は、オイルタンク本体62aと、オイルクーラ62bとから構成されている。オイルクーラ62bは、作動油を冷却するコンデンサ62cと、コンデンサ62cに送風するファン62dと、ファン62dを回転駆動する油圧モータ62eとを備えている。リターン配管65により戻された作動油は、コンデンサ62cおよび油圧モータ62eに送られ、コンデンサ62cに送られた作動油は油圧モータ62eにより回転駆動されるファン62dの送風により冷却される。なお、コンデンサ62cおよび油圧モータ62eへそれぞれ送られる作動油の流量は、絞り弁62fによって調整することが可能である。
【0033】
また、供給配管64とリターン配管65とは、リリーフバルブ68を介して連通されている。また、供給配管64の途中には、油圧ポンプ63の前後にそれぞれフレキシブルホース64a,64bが設けられている。
【0034】
上記構成の吸引装置20では、PTO14により油圧ポンプ63が駆動され、この油圧ポンプ63により供給される作動油により油圧モータ60が駆動され、油圧モータ60により2つの吸引ポンプ21が回転駆動される。したがって、油圧ポンプ63から油圧モータ60へ供給する作動油の配管(フレキシブルホース64a,64b)は、PTO14の配置に制約されることなく、自由に配設することができるため、吸引ポンプ21を自由に配置することが可能となっている。
【0035】
また、
図5に例示する油圧系統では、供給配管64の途中をそれぞれフレキシブルホース64a,64bとすることで、PTO14に直接トルクシャフト16で連結された油圧ポンプ63から離れた位置に、油圧モータ60、吸引ポンプ21およびオイルクーラ兼オイルタンク62を自由にサブフレーム30上への配管することが可能となっている。
【0036】
また、この吸引装置20では、吸引ポンプ21を複数とし、吸引車1のシャーシフレーム12上のレシーバタンク31の前方に車両の幅方向で油圧モータ60に直列に連結されて、回転駆動されるようにしているため、吸引ポンプ21は小型のもので良く、省スペース化が可能となっている。したがって、レシーバタンク31の前方のキャブ11間におけるシャーシフレーム12上のデッドスペースを有効活用することができている。
【0037】
なお、2つの吸引ポンプ21、油圧モータ60、四方弁25およびオイルクーラ兼オイルタンク62は図示しないパレット上に設け、管(パイプ)、チューブやホースなどの配管により接続してユニット化したものとすることができ、このパレットを介してシャーシフレーム12上に搭載することが可能である。なお、本実施例ではエアセパレータ28をレシーバタンク31後方右側に設けているが、エアセパレータ28をこのパレット上に設ける構成としても良い。