特許第5726756号(P5726756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5726756無線通信システム、携帯端末、及びセルサーチ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726756
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】無線通信システム、携帯端末、及びセルサーチ方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/00 20090101AFI20150514BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20150514BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20150514BHJP
【FI】
   H04W36/00 110
   H04W48/16 110
   H04W48/18 115
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-545150(P2011-545150)
(86)(22)【出願日】2010年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2010069491
(87)【国際公開番号】WO2011070875
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-277557(P2009-277557)
(32)【優先日】2009年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314008976
【氏名又は名称】レノボ・イノベーションズ・リミテッド(香港)
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】都木 哲也
【審査官】 桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−234760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロセルを形成するマクロ基地局又はフェムトセルを形成するフェムト基地局との通信を行う自身の携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索するマクロセルサーチ手段と、
前記マクロセルサーチ手段が探索した前記マクロ基地局から報知情報を受信して当該マクロ基地局のセルIDを検出するセルID検出手段と、
前記マクロ基地局の前記セルIDを記憶するセルID情報記憶手段と、
前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと前記セルID検出手段が検出したセルIDとを比較するセルID比較手段と、
前記携帯端末が在圏するフェムト基地局からの受信品質が所定の閾値未満となった場合に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、検出された前記セルIDを前記セルID情報記憶手段に記憶し、前記携帯端末がセル間を移動する毎に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、前記セルID比較手段に前記セルIDを比較させる制御手段と、
前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとの比較結果に基づいて、前記フェムト基地局のセルサーチを行うフェムトセルサーチ手段と、
を備える携帯端末。
【請求項2】
前記フェムトセルサーチ手段は、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとに基づいて前記フェムト基地局のセルサーチを行うか否かを決定する条件であるセルサーチ条件を満たす場合にのみ前記フェムト基地局のセルサーチを行う
請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記セルサーチ条件は、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとが完全に一致した場合に前記フェムト基地局のセルサーチを行うことを示す条件である
請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記セルサーチ条件は、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとが部分的に一致した場合に前記フェムト基地局のセルサーチを行うことを示す条件である
請求項2に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記セルサーチ条件は、前記携帯端末の消費電力性能に応じて設定される請求項2に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記フェムトセルサーチ手段は、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとが一致した場合に、近距離通信を作動させ、前記近距離通信を用いて前記フェムト基地局のセルサーチを行う請求項1から5の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
マクロセルを形成するマクロ基地局又はフェムトセルを形成するフェムト基地局との通信を行う携帯端末を備え、
前記携帯端末は、
前記携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索するマクロセルサーチ手段と、
前記マクロセルサーチ手段が探索した前記マクロ基地局から報知情報を受信して当該マクロ基地局のセルIDを検出するセルID検出手段と、
前記マクロ基地局の前記セルIDを記憶するセルID情報記憶手段と、
前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと前記セルID検出手段が検出したセルIDとを比較するセルID比較手段と、
前記携帯端末が在圏するフェムト基地局からの受信品質が所定の閾値未満となった場合に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、検出された前記セルIDを前記セルID情報記憶手段に記憶し、前記携帯端末がセル間を移動する毎に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、前記セルID比較手段に前記セルIDを比較させる制御手段と、
前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとの比較結果に基づいて、前記フェムト基地局のセルサーチを行うフェムトセルサーチ手段と、
を備える無線通信システム。
【請求項8】
マクロセルを形成するマクロ基地局又はフェムトセルを形成するフェムト基地局との通信を行う携帯端末が在圏するフェムト基地局からの受信品質が所定の閾値未満となった場合に、前記携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索し、
探索した前記マクロ基地局から報知情報を受信して当該マクロ基地局のセルIDを検出して、検出したセルIDを記憶し、
前記携帯端末がセル間を移動する毎に、前記携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索し、探索した前記マクロ基地局から受信した報知情報より検出したセルIDと記憶されている前記セルIDとを比較し、
記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとの比較結果に基づいて、前記フェムト基地局のセルサーチを行う
セルサーチ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェムトセルを含む無線通信システム、携帯端末、及びセルサーチ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話市場の急激な拡大に伴い、携帯電話サービスを提供している携帯電話事業者はマクロセルの基地局を設置し、携帯電話サービスのカバーエリアを拡大させている。ところが、携帯電話のサービスは無線電波を利用して提供される。このため、例えば、屋内や、高層ビルの高層階などのエリアにおいて基地局の設置が制限されるという問題があった。また、無線電波の特性に起因する電波の不感地域が存在し、十分なサービスが提供できないという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するため、近年、フェムトセルを用いた不感地域の解消が進められている(例えば特許文献1)。フェムトセルとは、ユーザーが家庭や会社内などに設置できる小型基地局が形成するセルである。フェムトセルがカバーできるのは半径数十メートルの小さなエリアである。しかし、設置場所の制約が少ないため、電波が届きにくいビル内、地下街、住居内、高層階に小型基地局を設置できる。このため、ユーザーにとっては、きめ細やかにエリア整備された携帯電話サービスの享受が可能になるという利点がある。また、通信事業者にとっては、マクロセルの基地局設営、運営費の削減、マクロセルネットワークの負荷が軽減できるなどの利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本特開2009−225039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フェムトセルを形成する小型基地局の主な設置場所は一般の住居であり、その住居の居住者に対するサービスの提供が主目的である。このため、フェムトセルとマクロセルとは異なる運用がなされている。具体的には、マクロセルは、周辺セル情報としてフェムトセルの情報を含まずに運用がなされている。このため、携帯端末がマクロセルからフェムトセルに移動する場合、携帯端末は一度圏外状態に遷移した後、フェムトセルに再度位置登録を行う必要があった。そのため、例えば、ユーザーが通話中であった場合、マクロセルからフェムトセルへ移動したときに通話が途切れるというような、ユーザーの利便性を損ねる問題が生じていた。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、マクロセルからフェムトセルへの移動を行っても、携帯端末を圏外状態へ遷移させることなく、スムーズなセル間移動を実現する無線通信システム、携帯端末、及びセルサーチ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の携帯端末は、マクロセルを形成するマクロ基地局又はフェムトセルを形成するフェムト基地局との通信を行う自身の携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索するマクロセルサーチ手段と、前記マクロセルサーチ手段が探索した前記マクロ基地局から報知情報を受信して当該マクロ基地局のセルIDを検出するセルID検出手段と、前記マクロ基地局の前記セルIDを記憶するセルID情報記憶手段と、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと前記セルID検出手段が検出したセルIDとを比較するセルID比較手段と、前記携帯端末が在圏するフェムト基地局からの受信品質が所定の閾値未満となった場合に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、検出された前記セルIDを前記セルID情報記憶手段に記憶し、前記携帯端末がセル間を移動する毎に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、前記セルID比較手段に前記セルIDを比較させる制御手段と、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとの比較結果に基づいて、前記フェムト基地局のセルサーチを行うフェムトセルサーチ手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の無線通信システムは、マクロセルを形成するマクロ基地局又はフェムトセルを形成するフェムト基地局との通信を行う携帯端末を備え、前記携帯端末は、前記携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索するマクロセルサーチ手段と、前記マクロセルサーチ手段が探索した前記マクロ基地局から報知情報を受信して当該マクロ基地局のセルIDを検出するセルID検出手段と、前記マクロ基地局の前記セルIDを記憶するセルID情報記憶手段と、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと前記セルID検出手段が検出したセルIDとを比較するセルID比較手段と、前記携帯端末が在圏するフェムト基地局からの受信品質が所定の閾値未満となった場合に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、検出された前記セルIDを前記セルID情報記憶手段に記憶し、前記携帯端末がセル間を移動する毎に、前記マクロセルサーチ手段に前記マクロ基地局を探索させ、前記セルID検出手段に前記セルIDを検出させ、前記セルID比較手段に前記セルIDを比較させる制御手段と、前記セルID情報記憶手段に記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとの比較結果に基づいて、前記フェムト基地局のセルサーチを行うフェムトセルサーチ手段と、を備える。
【0009】
また、本発明のセルサーチ方法は、マクロセルを形成するマクロ基地局又はフェムトセルを形成するフェムト基地局との通信を行う携帯端末が在圏するフェムト基地局からの受信品質が所定の閾値未満となった場合に、前記携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索し、探索した前記マクロ基地局から報知情報を受信して当該マクロ基地局のセルIDを検出して、検出したセルIDを記憶し、前記携帯端末がセル間を移動する毎に、前記携帯端末が通信可能なマクロ基地局を探索し、探索した前記マクロ基地局から受信した報知情報より検出したセルIDと記憶されている前記セルIDとを比較し、記憶されている前記セルIDと検出した前記セルIDとの比較結果に基づいて、前記フェムト基地局のセルサーチを行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、携帯端末がフェムトセルの圏外となる境界付近に移動した時点で、周辺のマクロセルからの報知情報を受信し、そのとき受信できた報知情報からマクロセルのセルIDを検出し、検出されたセルIDをセルID情報記憶手段に記憶する。そして、携帯端末がセル間を移動する毎に、周辺のマクロセルからの報知情報を受信してマクロセルのセルIDを検出し、セルID情報記憶手段に記憶されているセルIDと検出したセルIDとを比較し、その比較結果に基づいて、フェムト基地局のセルサーチを実施する。これにより、携帯端末を圏外状態に遷移させることなく、マクロセルからフェムトセルへの移動が可能になる。その結果、例えばユーザーが携帯端末を用いて通信中に、マクロセルからフェムトセルへ移動したとしても、通信が途切れることなく、良好な通信の維持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の無線通信システムを示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおける携帯端末の構成を示すブロック図である。
図3A】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおいて携帯端末が移動したときの各位置での処理の説明図である。
図3B】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおいて携帯端末が移動したときの各位置での処理の説明図である。
図3C】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおいて携帯端末が移動したときの各位置での処理の説明図である。
図3D】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおいて携帯端末が移動したときの各位置での処理の説明図である。
図4A】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおいてセルID情報記憶部に記憶されるセルIDの説明図である。
図4B】本発明の第1の実施形態の無線通信システムにおいてセルID情報記憶部に記憶されるセルIDの説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの動作説明に用いるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の無線通信システムを示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態の無線通信システムでは、基地局102、基地局104、および基地局106の3つの基地局(マクロセルを形成するマクロ基地局)と、フェムトセル用の小型基地局(フェムトセルを形成するフェムト基地局)110とが設けられている。基地局102はマクロセル103をカバーしている。基地局104はマクロセル105をカバーしている。基地局106はマクロセル107をカバーしている。また、フェムトセル用の小型基地局110は、住居108内に設置されており、住居108の近傍の小エリアのフェムトセル109をカバーしている。
【0014】
なお、図1では、説明を簡単とするために、基地局102、基地局104、および基地局106の3つの基地局と、1つのフェムトセル用の小型基地局110とからなる無線通信システムを例に挙げている。しかし、実際には、無線通信システムには、更に複数の基地局やフェムトセル用の小型基地局が設けられている。
【0015】
図1において、基地局102、基地局104、および基地局106には、それぞれ異なるセルID(識別子)が割り振られている。ここでは、基地局102のセルIDはA(ID=A)とし、基地局104のセルIDはB(ID=B)とし、基地局106のセルIDはC(ID=C)とする。また、基地局102、基地局104、および基地局106のそれぞれから報知される報知情報には、それぞれのセルIDが含まれている。
【0016】
携帯端末101は、その携帯端末101が在圏する基地局102、基地局104、および基地局106との間で、音声やデータの通信を行う。また、携帯端末101がフェムトセル109に在圏している場合、携帯端末101は、フェムトセル用の小型基地局110との間で、音声やデータの通信を無線で行う。ここでは、携帯端末101のユーザーは、住居108に居住しているものとする。
【0017】
図2は、携帯端末101の構成を示すブロック図である。図2に示すように、携帯端末101は、通信部201と、制御部202とを有している。通信部201は、基地局との間で、音声やデータの通信を無線で行うものである。通信部201は、セルサーチを行って携帯端末101が通信可能な基地局を探索するセルサーチ機能部251と、基地局からの報知情報を受信して、受信した報知情報に含まれるセルIDを検出するセルID検出機能部252とを有する。制御部202は、携帯端末101内の各部の制御を行うものである。また、制御部202はセルID比較機能部254を有する。また、携帯端末101は、セルID情報記憶部253を有する。制御部202は、セルID情報記憶部253に対するセルID情報の登録及びセルID情報記憶部253からのセルID情報の読み出しも行う。
【0018】
図3A図3Dは、携帯端末101が移動したときの各位置での処理の説明図である。
図4Aおよび図4Bは、セルID情報記憶部253が記憶する情報を示す図である。
図3Aに示すように、携帯端末101が住居108の近傍の位置L1(マクロセル103およびフェムトセル109の圏内であり、マクロセル105およびマクロセル107の圏外である位置)にある場合、携帯端末101は、フェムトセル109に在圏し、フェムトセル用の小型基地局110と通信を行う。なお、携帯端末101のセルID情報記憶部253には、初期状態では、図4Aに示すように、セルIDの情報は記憶されていない。
【0019】
図3Bに示すように、ユーザーの外出に伴い、携帯端末101がフェムトセル109の圏外へ移動すると、携帯端末101がフェムトセル109から受信する信号の受信品質は劣化する。そのため、携帯端末101がフェムトセル109の境界の位置L2(フェムトセル109の圏外であり、マクロセル103、マクロセル105、およびマクロセル107の圏内である位置)に移動すると、受信品質は、良好な通信を行うことができる所定の閾値未満となる。フェムトセル109からの受信品質が所定の閾値未満となった場合、携帯端末101のセルサーチ機能部251は、セルサーチを実行する。携帯端末101が位置L2に存在する場合、携帯端末101は、セルサーチを実行して、マクロセル103、マクロセル105、およびマクロセル107を検出し、マクロセル103、マクロセル105、マクロセル107の中で、受信品質が最も良好のマクロセルに位置登録を行う。
【0020】
また、このとき、携帯端末101は、基地局102、基地局104、および基地局106からそれぞれ報知される報知情報を受信し、報知情報を受信できたマクロセル103のセルID(ID=A)、マクロセル105のセルID(ID=B)、およびマクロセル107のセルID(ID=C)を、図4Bに示すように、携帯端末101内に設けられたセルID情報記憶部253に記憶する。
【0021】
このように、携帯端末101は、フェムトセル109の圏外となる境界付近の位置L2で、基地局102、104、および106からセルIDを受信し、受信できたセルID(ID=A、ID=B、およびID=C)を、携帯端末101内に設けられたセルID情報記憶部253に記憶する。携帯端末101が、セルIDをセルID情報記憶部253に記憶した後にセル間を移動すると、携帯端末101は、セル間を移動する毎に、セルID情報記憶部253に記憶されているセルIDと、受信したセルIDとを照合し、セルIDの一致または不一致を確認する処理を行う。そして、携帯端末101は、セルID情報記憶部253に記憶されているセルIDと、受信したセルIDとが完全に一致すると判定した場合に、フェムトセル109のセルサーチを実施する。
【0022】
例えば、図3Cに示すように、携帯端末101がフェムトセル109から離れた位置L3(マクロセル107の圏内であり、マクロセル103、マクロセル105、およびフェムトセル109の圏外である位置)に移動したとする。この場合、携帯端末101は、マクロセル107のセルID(ID=C)のみを受信する。このとき、セルID情報記憶部253に格納されているセルID(ID=A、ID=B、およびID=C)(図4B参照)と、受信したセルID(ID=C)とは完全に一致していない。したがって、このときには、携帯端末101はフェムトセル109のセルサーチを実施しない。
【0023】
これに対して、図3Dに示すように、携帯端末101がフェムトセル109の近傍の位置L4(フェムトセル109の圏外であり、マクロセル103、マクロセル105、およびマクロセル107の圏内である位置)に来ると、携帯端末101は、マクロセル103のセルID(ID=A)と、マクロセル105のセルID(ID=B)と、マクロセル107のセルID(ID=C)とを受信する。このときには、セルID情報記憶部253に格納されているセルID(ID=A、ID=B、およびID=C)(図4B参照)と、受信したセルID(ID=A、ID=B、およびID=C)とは完全に一致する。
【0024】
携帯端末101は、セルID情報記憶部253に格納されているセルIDと、受信したセルIDとの完全一致を確認すると、フェムトセル109のセルサーチ処理を実施する。セルサーチの結果、十分な通信品質を有するフェムトセル109が検出されると、携帯端末101は、フェムトセル109に対し、セル間移動処理を実施し、フェムトセル109に位置登録する。
【0025】
これにより、携帯端末101がフェムトセル109の近傍に近づくと、フェムトセル109のセルサーチが行われるようになる。したがって、それ以降は、携帯端末101を圏外状態に遷移させることなく、フェムトセル109へのスムーズな移動が可能になる。
【0026】
なお、上述した処理では、セルID情報記憶部253が記憶するセルID情報と受信したセルIDとが完全に一致するという条件をセルサーチ条件としてあらかじめ設定しておき、このセルサーチ条件をクリアした場合にのみフェムトセル109のセルサーチ処理を行う場合について説明した。しかし、セルサーチ条件はこうした条件に限られない。例えば、セルサーチ条件としては、上述したように、マクロセル103、マクロセル105、およびマクロセル107のそれぞれのセルIDが携帯端末101内のセルID情報記憶部253に格納されているセルIDと完全に一致した場合のほかに、受信したセルIDがセルID情報記憶部253に格納されているセルIDの一部にでも一致した場合などが考えられる。
【0027】
また、セルサーチ処理は携帯端末101の電力消費に繋がるため、このセルサーチ条件は、携帯端末101の消費電力性能に応じ、任意の条件を設定してもよい。
【0028】
また、サーチ対象とするフェムトセル109を形成する小型基地局110は、ユーザーの住居108内に設置されており、セルサーチに必要となる周波数、スクランブリングコードなどの基地局識別コード等の情報は分かっている。したがって、これらの情報は、あらかじめ携帯端末101内に保有しておいてもよい。あるいは、ユーザー操作を通じてサーチしたいセルに関する情報を編集できるようなメニューを携帯端末101に設けておいて、特定のセルをサーチ対象として設定できるようにしておいてもよい。このため、たとえ、マクロセルの周辺セル情報にフェムトセルの情報が登録されてなくとも、セルIDからフェムトセルのセルサーチを起動することができる。
【0029】
次に、本実施形態の無線通信システムの詳細な動作を説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの動作説明に用いるフローチャートである。
携帯端末101が起動後にフェムトセルに在圏すると、携帯端末101のセルサーチ機能部251は、フェムトセルの受信品質を測定する(ステップS101)。次に、セルサーチ機能部251は、受信品質が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。セルサーチ機能部251が、受信品質が閾値以上であると判定した場合(ステップS102:YES)、処理はステップS101にリターンし、セルサーチ機能部251は再度フェムトセルの受信品質を測定する。他方、セルサーチ機能部251が、受信品質が閾値未満であると判定した場合(ステップS102:NO)、セルサーチ機能部251は、マクロセルのセルサーチを実施する(ステップS103)。
【0030】
セルサーチ機能部251は、セルサーチの結果、検出されたマクロセルの少なくとも何れか1つが閾値以上の受信品質であるか否かを判定する(ステップS104)。セルサーチ機能部251が、検出されたマクロセルが全て閾値以上の受信品質を有していないと判定した場合(ステップS104:NO)、処理はステップS103にリターンし、セルサーチ機能部251は再度マクロセルのセルサーチを実施する。他方、セルサーチ機能部251が、検出されたマクロセルの少なくとも1つが閾値以上の受信品質を有していると判定した場合(ステップS104:YES)、セルサーチ機能部251は、検出されたマクロセルのうち最も受信品質の高いものに位置登録を実施する(ステップS105)。次に、セルID検出機能部252は、検出されたマクロセルのそれぞれからセルIDを受信して、受信したマクロセルのセルIDを制御部202に送出し、制御部202は送出されたセルIDを携帯端末101内に設けられたセルID情報記憶部253に格納する(ステップS106)。
【0031】
その後、ユーザーの移動に伴い、セル間移動が実施されると(ステップS107)、セルサーチ機能部251はセルサーチを実行してマクロセルを探索する。セルID検出機能部252は探索されたマクロセルからセルIDを受信する。次に、セルID比較機能部254は、セルIDの照合を行う。すなわち、セルID比較機能部254は、セルID情報記憶部253に格納したセルIDと、セルID検出機能部252で受信したセルIDとが一致するか否かのチェックを実施する(ステップS108)。
【0032】
セルIDの照合を行った結果、セルID比較機能部254が、セルID情報記憶部253に格納したセルIDとセルID検出機能部252で受信したセルIDとが一致しないと判定した場合(ステップS109:NO)、処理はステップS107にリターンし、セルサーチ機能部251、セルID検出機能部252、およびセルID比較機能部254は、再度、マクロセルの探索、セルIDの受信、及び照合をそれぞれ行う。他方、セルID比較機能部254が、セルID情報記憶部253に格納したセルIDとセルID検出機能部252で受信したセルIDとが一致すると判定した場合(ステップS109:YES)、セルID比較機能部254は、受信したセルIDとセルサーチ条件との照合を行い、受信したセルIDがセルサーチ条件に合致するかの確認を行う(ステップS110)。ここで、上述したように、セルサーチ条件は、フェムトセルのセルサーチを実施する条件を示している。例えば、セルID情報記憶部253が記憶するセルID情報と受信したセルIDとが完全に一致するという条件や、受信したセルIDがセルID情報記憶部253に記憶されたセルID情報の少なくとも一部に一致するという条件などがセルサーチ条件として挙げられる。
【0033】
受信したセルIDがセルサーチ条件に合致しない場合(ステップS111:NO)、処理はステップS107にリターンし、再度、マクロセルの探索、セルIDの受信、及び照合を行う。これに対して、受信したセルIDがセルサーチ条件に合致した場合(ステップS111:YES;上述した図3A図3Dの例では、マクロセル103、マクロセル105、およびマクロセル107の3つのセルIDが完全に一致した場合)、携帯端末101がフェムトセルの近傍に移動したと判断し、セルサーチ機能部251は、マクロセルの周辺セルサーチに加えてフェムトセルのセルサーチを追加する。これにより、セルサーチ機能部251はフェムトセルのセルサーチを実施する(ステップS112)。そして、セルサーチ機能部251は、フェムトセルの受信品質が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS113)。セルサーチ機能部251が、フェムトセルの受信品質が閾値以上でないと判定した場合(ステップS113:NO)、処理はステップS112にリターンし、セルサーチ機能部251は再度フェムトセルのセルサーチを実行する。他方、セルサーチ機能部251が、フェムトセルの受信品質が閾値以上であると判定した場合(ステップS113:YES)、セルサーチ機能部251は当該フェムトセルに位置登録を行う(ステップS114)。
【0034】
次に、携帯端末101は、ユーザーの操作などを通じて、処理を終了することが指示されているか否かを判定する(ステップS115)。携帯端末101が、処理の終了を指示されていないと判定した場合(ステップS115:NO)、処理はステップS101にリターンし、セルサーチ機能部251は、フェムトセルの受信品質の測定を実行する。他方、携帯端末101が、処理の終了を指示されていると判定した場合(ステップS115:YES)、処理を終了する。
【0035】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、携帯端末101は、フェムトセルの近傍の圏外となる境界付近の位置L2に移動した時点で、周辺のマクロセル(マクロ基地局)からの報知情報を受信し、そのとき受信できた報知情報に含まれるマクロセルのセルIDをセルID情報記憶部253に格納する。セルID情報記憶部253にセルIDを記憶した後、ユーザーの移動に伴って携帯端末101がセル間を移動する毎に、携帯端末101は、セルID情報記憶部253に記憶されているセルIDと受信したセルIDとを照合して、セルIDの一致または不一致を確認する処理を実施する。セルID情報記憶部253に記憶されているセルIDと受信したセルIDとが一致した場合、携帯端末101は、フェムトセル109のサーチを実施する。以上のようにすることで、携帯端末101を圏外状態に遷移させることなく、フェムトセルへの移動が可能になる。
【0036】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同じであるが、フェムトセルの検出方法として、近距離通信の代表であるIEEE 802.15.1(Bluetooth(登録商標))を用いる。これにより、携帯端末の消費電力性能の向上を図る場合にも本発明を応用することができる。
【0037】
IEEE 802.15.1(Bluetooth(登録商標))は近距離通信として、昨今の携帯端末に設けられている機能であり、このような近距離通信を用いることでも、フェムトセルの検出を行なうことができる。関連する技術に従ったフェムトセル検出方法は、常時近距離通信を起動するため、携帯端末の消費電力性能を低下させる問題を発生させていた。しかし、本実施形態では、セルIDの検出、および、セルIDの一致または不一致の確認を行って、セルID同士が互いに一致するなど、セルサーチ条件に合致した場合にのみ、近距離通信を起動させるように、近距離通信の制御を行う。すなわち、セルサーチ機能部251は、図5のステップS112において、近距離通信を用いて、フェムトセルのセルサーチを実施する。そうすることで、近距離通信を常時起動させる必要がなくなり、前述した携帯端末の消費電力性能を劣化させるという問題を防ぐことができる。
【0038】
これにより、近距離通信を用いてフェムトセルを検出する場合であっても、携帯端末の消費電力性能を劣化させることなく、フェムトセルへの移動を実現することが可能となる。
【0039】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更を加えることができる。
【0040】
上述の携帯端末101は内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行して、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disc)−ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線でコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0041】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0042】
この出願は、2009年12月7日に出願された日本出願特願2009−277557号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば、フェムトセルを含む無線通信システムにおいて利用可能である。本発明に従えば、携帯端末を圏外状態に遷移させることなく、フェムトセルへの移動が可能になる。その結果、例えばユーザーが携帯端末を用いて通信中にマクロセルからフェムトセルへ移動したとしても、通信が途切れることなく、良好な通信の維持が可能となる。
【符号の説明】
【0044】
101…携帯端末 102,104,106…基地局 103,105,107…マクロセル 108…住居 109…フェムトセル 110…小型基地局 201…通信部 202…制御部(制御手段) 251…セルサーチ機能部(マクロセルサーチ手段、フェムトセルサーチ手段) 252…セルID検出機能部(セルID検出手段) 253…セルID情報記憶部(セルID情報記憶手段) 254…セルID比較機能部(セルID比較手段)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5