特許第5726835号(P5726835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726835
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   F15B15/14 375
   F15B15/14 350
   F15B15/14 345Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-240706(P2012-240706)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88949(P2014-88949A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2014年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−087254(JP,U)
【文献】 特許第3383593(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0145723(US,A1)
【文献】 実開平04−023870(JP,U)
【文献】 実開平03−107565(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ内に移動可能に収容されるピストンと、該ピストンと一体のピストンロッドとを備えた流体圧シリンダにおいて、
前記ピストンは、小径部と大径部とを有する凸型の凸型部材と、前記凸型部材の前記小径部が嵌め込まれる凹部を有する凹型部材とを含み、
前記ピストンロッドは、該ピストンロッドの周に亘って径方向に膨らむ膨部を有し、
前記凹型部材の前記凹部の奥方には、該凹部の内径が拡径される拡径部を有し、
前記凸型部材の前記小径部が前記凹型部材の前記凹部に嵌め込まれ、該小径部が前記ピストンロッドの前記膨部に乗り上げて径方向外方に向かって拡径しているとともに、該拡径した小径部の外周面と前記凹部の前記拡径部とが係合されていることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記ピストンロッドには、該ピストンロッドの周に亘って溝が形成され、
前記膨部は、前記溝に取り付けられたリング部材によって構成されている請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記凸型部材は筒状であって、該凸型部材における前記ピストンロッドが挿通される挿通口は、前記小径部側が面取りして形成される一方、前記凹型部材は筒状であって、該凹型部材における前記ピストンロッドが挿通される挿通口は、前記凹部側が面取りなしで形成される請求項1又は請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記ピストンロッドには、該ピストンロッドの周に亘って溝が形成され、
前記溝には、前記膨部を構成するリング部材が取り付けられ、
前記リング部材は、断面が丸型である請求項3に記載の流体圧シリンダ。
【請求項5】
前記凹型部材の前記拡径部の内壁は、前記凹部の奥に向かうにつれて拡径される傾斜面を有する請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧シリンダとしては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。この流体圧シリンダ(以下、「シリンダ」という)におけるピストンロッド及びピストンの連結構造では、2つのピストンロッドがピストンを挟んだ状態で締結されている。第1のロッドには、その一端部に形成される径小部の外周面に雄ねじを形成している。その雄ねじの先端部には、軸方向に突出するひだ部を設けている。また、第1のロッドと締結される第2のロッドには、その一端部に形成される凹穴の内周面に雌ねじを形成している。その凹穴には、雌ねじよりも奥に該雌ねじよりも内径の大きい周溝を設けている。さらにこの凹穴には、周溝よりも奥にこま部材が嵌まり込む凹部を設けている。
【0003】
そして、第1のロッドの雄ねじと第2のロッドの雌ねじとを螺合させることで、これらが締結される。これらねじを締めつけると、第1のロッドのひだ部の内周面に第2のロッドのこま部材が当接することで、該ひだ部は外方へ塑性変形される。この塑性変形した第1のロッドのひだ部の先端部は、第2のロッドの周溝に入り込む。なお、こま部材は、第1のロッドのひだ部の内周面に当接する側がテーパ面であったり円柱であったりする。
【0004】
これにより、塑性変形した第1のロッドのひだ部は、第2のロッドの雌ねじに当接し、且つ該雌ねじとこま部材との間に入り込んだ状態となる。このようにして特許文献1では、塑性変形した第1のロッドのひだ部の変形の戻りを抑制し、2つのピストンロッド及びピストンの締結の緩みを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3383593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなシリンダにあっては、ピストンロッドの内部において、ねじ山を形成し、さらに凹部を形成し、その凹部にこま部材を嵌め込むことを要するための余裕を確保しなければいけない。また、このような余裕の確保だけでなく、ねじ山や凹部を形成するための設備等も確保しなければいけない。このため、シリンダの小型化によっては、ピストンロッドも細くしなければいけないことから、ねじ山や凹部を形成するための余裕や設備等の確保が困難となり、シリンダの小型化を困難としている。
【0007】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化してもピストンロッド及びピストンの締結の緩みを効果的に抑制することのできる流体圧シリンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する流体シリンダは、シリンダチューブ内に移動可能に収容されるピストンと、該ピストンと一体のピストンロッドとを備えた流体圧シリンダにおいて、前記ピストンは、小径部と大径部とを有する凸型の凸型部材と、前記凸型部材の前記小径部が嵌め込まれる凹部を有する凹型部材とを含み、前記ピストンロッドは、該ピストンロッドの周に亘って径方向に膨らむ膨部を有し、前記凹型部材の前記凹部の奥方には、該凹部の内径が拡径される拡径部を有し、前記凸型部材の前記小径部が前記凹型部材の前記凹部に嵌め込まれ、該小径部が前記ピストンロッドの前記膨部に乗り上げて径方向外方に向かって拡径しているとともに、該拡径した小径部の外周面と前記凹部の前記拡径部とが係合されるようにした。
【0009】
上記流体圧シリンダについて、前記ピストンロッドには、該ピストンロッドの周に亘って溝が形成され、前記膨部は、前記溝に取り付けられたリング部材によって構成されるようにすることが好ましい。
【0010】
また、上記流体圧シリンダについて、前記凸型部材は筒状であって、該凸型部材における前記ピストンロッドが挿通される挿通口は、前記小径部側が面取りして形成される一方、前記凹型部材は筒状であって、該凹型部材における前記ピストンロッドが挿通される挿通口は、前記凹部側が面取りなしで形成されるようにすることが好ましい。
【0011】
また、上記流体圧シリンダについて、前記ピストンロッドには、該ピストンロッドの周に亘って溝が形成され、前記溝には、前記膨部を構成するリング部材が取り付けられ、前記リング部材は、断面が丸型であるようにすることが好ましい。
【0012】
また、上記流体圧シリンダについて、前記凹型部材の前記拡径部の内壁は、前記凹部の奥に向かうにつれて拡径される傾斜面を有するようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化してもピストンロッド及びピストンの締結の緩みを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ピストンロッド及びピストンの断面図。
図2】リングの取り付け態様を示す模式図。
図3】(a),(b)はピストンロッドとピストンの組み付け工程を示す断面図。
図4】別例におけるピストンロッド及びピストンの断面図。
図5】別例におけるリングの取り付け態様を示す模式図。
図6】別例におけるピストンロッド及びピストンの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、流体圧シリンダの一実施形態について図1図3を参照して説明する。
図1に示すように、流体圧シリンダは、シリンダチューブ10によって外郭が形成されている。このシリンダチューブ10には、ピストンPと一体の棒状のピストンロッド11が移動可能に収容されている。なお、ピストンPは、いずれもアルミ等の金属材料からなる凸型部材20と凹型部材30とを係合させて構成されている。これら凸型部材20と凹型部材30の間には、位置検出用マグネットMが挟持されている。そして、このピストンPは、流体(本実施形態では、圧縮エア)の供給及び排出によりシリンダチューブ10内を移動し、その位置が切換制御される。
【0016】
また、ピストンロッド11の軸方向一端側(ピストンP側)には、Oリング12が取り付けられている。また、ピストンロッド11の外周には、Oリング12が取り付けられるのと異なる位置に溝13が、ピストンロッド11の周方向全体に形成されている。なお、溝13は、ピストンPが取り付けられるピストンロッド11の軸方向一端側寄りに形成されている。そして、この溝13には、リング部材40が取り付けられている。リング部材40は、ばね性を有する金属製のCリング状で且つ径方向に弾性変形可能に形成されている。また、リング部材40は、断面が丸形、すなわち円形に形成されている。
【0017】
図2に示すようにリング部材40は、溝13に嵌め込まれている。そして、このリング部材40の内径は、該リング部材40が弾性変形していない状態においてピストンロッド11の溝13での直径よりも小さく形成されている。また、このリング部材40の外径は、溝13に嵌め込まれた状態で、ピストンロッド11の直径よりも大きくなるように形成されている。
【0018】
すなわち、溝13に嵌め込まれたリング部材40の露出している部分がピストンロッド11の周面から膨らんでいる。このようにピストンロッド11は、該ピストンロッド11の周面から径方向外方に膨らむ膨部41を有している。
【0019】
また、ピストンロッド11の軸方向一端側には、その周方向全体に筒状の凸型部材20が配設されている。凸型部材20には、ピストンPが移動する場合にシリンダチューブ10の内周面に摺接する大径部21と、該大径部21の軸方向一端側の端面の中央からピストンロッド11の軸方向に沿って延びるように小径部22とが形成されている。また、小径部22は、ピストンロッド11の挿通口でもあるその先端部23の内周側が面取りされている。そして、この小径部22には、その先端部23から径方向内方に傾斜する傾斜面24が形成されている。
【0020】
また、ピストンロッド11の軸方向一端側には、その周方向全体に筒状の凹型部材30が配設されている。凹型部材30には、ピストンPが移動する場合にシリンダチューブ10の内周面に摺接するピストン本体31が形成されている。そして、このピストン本体31には、凸型部材20側の中央が窪んだ凹部32が形成されている。また、凹部32内には、その開口部33から奥に向かって径方向外方に傾斜する傾斜面34を有する拡径部35が形成されている。なお、傾斜面34を有する拡径部35の内壁は、何れにおいてもピストンロッド11に比べて大径とされている。また、凹部32は、ピストンロッド11の挿通口でもあるその底部36の内周側が面取りされていない。そして、この底部36の周縁は、傾斜を有さないほぼ直角に形成されている。
【0021】
また、凹部32には、その開口部33から拡径部35にかけて小径部22が収容されている。また、凹部32に収容された小径部22は、その先端部23が傾斜面24に沿ってピストンロッド11の膨部41に乗り上げている。そして、この先端部23は、膨部41に沿って径方向外方へ拡径するように塑性変形し凹部32に収容され、さらにその外周が拡径部35の傾斜面34に当接している。
【0022】
なお、小径部22は、大径部21に比べて薄い且つ径方向外方に塑性変形可能な厚さに形成されている。また、ピストン本体31は、小径部22よりも厚い且つ小径部22が塑性変形しても形状を維持可能な厚さに形成されている。
【0023】
このように、凹型部材30の凹部32には、凸型部材20の小径部22が収容されることで、凸型部材20と凹型部材30とが係合されている。
次に、凸型部材20と凹型部材30とを係合させる工程について説明する。
【0024】
ピストンロッド11の溝13にリング部材40を嵌め込んだ状態で、ピストンロッド11の軸方向の両端側からリング部材40を挟むように凸型部材20及び凹型部材30のそれぞれが挿通される。
【0025】
図3(a)に示すように、凸型部材20及び凹型部材30を近付ける方向への力を作用させると、小径部22が開口部33に達して凹部32に入り込む。
その後、さらに凸型部材20及び凹型部材30を近付ける方向への力を作用させると、小径部22の先端部23が膨部41に達し、該先端部23の傾斜面24及び膨部41が当接する。一方、凹部32の底部36が膨部41に達し、該底部36及び膨部41が当接する。
【0026】
このように凸型部材20及び凹型部材30が膨部41に達すると、該膨部41との当接の状況から、径方向内方へ傾斜する傾斜面24を有する小径部22は、傾斜を有さない底部36に比べて小さな力で膨部41に乗り上げ可能となる。
【0027】
すなわち、ここからさらに凸型部材20及び凹型部材30を近付ける方向への力を作用させても、底部36が膨部41に引っ掛かって凹型部材30のピストンロッド11に対する移動が規制される。一方、さらに凸型部材20及び凹型部材30を近付ける方向への力を作用させると、小径部22の傾斜面24が膨部41に乗り上げて凸型部材20の凹型部材30側への移動が許容される。
【0028】
続いて、図3(b)に示すように、小径部22の傾斜面24が膨部41に乗り上げて凹型部材30側へ移動すると、小径部22の先端部23が該膨部41に沿って径方向外方へ拡径するように塑性変形される。そして、この先端部23は、その外周が拡径部35の傾斜面34に押し付けられながら塑性変形し、膨部41及び拡径部35の傾斜面34の間に嵌め込まれる。
【0029】
このようにして、小径部22の先端部23が膨部41及び凹部32、すなわち拡径部35の間に嵌め込まれることで、凸型部材20及び凹型部材30が係合されてピストンPが得られる。
【0030】
また、このように組み付けられたピストンPは、拡径部35の底部36により凸型部材20側への移動が規制されている。一方、このように組み付けられたピストンPは、小径部22の先端部23により凹型部材30側への移動が規制されている。すなわち、凸型部材20及び凹型部材30が係合されてピストンPが得られることで、ピストンロッド11及びピストンPが締結され一体となった構造体が得られる。
【0031】
次に、このような本実施形態の作用を説明する。
凸型部材20と凹型部材30とを係合させる工程において、ピストンロッド11の軸方向に沿って小径部22が凹部32に嵌め込まれると、該小径部22が膨部41に乗り上げる。これにより、この膨部41が小径部22を径方向外方へ塑性変形させるように作用する。こうして塑性変形した小径部22は、拡径部35と係合する一方、膨部41によりその復元が抑制される。そしてこうした小径部22の塑性変形により、ピストンロッド11に対してピストンPが締結される。すなわち、ピストンロッド11の内部に加工を施す必要なくピストンロッド11に対してピストンPの締結が実現されるようになる。
【0032】
また、ピストンロッド11の周方向全体に亘ってリング部材40を取り付けるための溝13を形成するのみで、膨部41を構成することができるようになる。そしてこのようにしてピストンロッド11に取り付けられるリング部材40が凸型部材20の小径部22の塑性変形に作用するようになる。すなわち、ピストンロッド11の内部に加工を施す必要なく膨部41を構成することができるようになる。
【0033】
また、凸型部材20と凹型部材30とを係合させる工程において、ピストンロッド11の軸方向に沿って小径部22が凹部32に嵌め込まれる際、先端部23を面取りして形成している凸型部材20が膨部41に容易に乗り上げるようになる。一方、底部36を面取りなしで形成している凹型部材30が膨部41に容易には乗り上げられないようになる。このように、膨部41において、凸型部材20が凹型部材30に比べて小さい力で乗り上げることができるようになる。
【0034】
そして、本実施形態では、小径部22の先端部23を面取りする構成に加えて、断面が丸型のリング部材40により膨部41を構成している。このため、小径部22が膨部41に乗り上げるための力がさらに低減されるようになる。
【0035】
また、拡径部35には、開口部33から径方向外方に傾斜する傾斜面34が形成されている。このため、小径部22が塑性変形すると、その外周が該小径部22の外周及び拡径部35の傾斜面34に当接されるようになり、凸型部材20及び凹型部材30の係合、さらにはピストンロッド11及びピストンPの締結がより強固とされる。そして、このように、傾斜面34を有する拡径部35の形成には、凹部32自体の形成に比べても特別な手間や設備等を必要なく実現することができる。すなわち、ピストンロッド11の内部に加工を施す必要なく、凸型部材20及び凹型部材30の係合、さらにはピストンロッド11及びピストンPの締結をより強固にすることができる。
【0036】
以上説明したように本実施形態によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)凸型部材20と凹型部材30とを係合させる工程において、ピストンロッド11の内部に加工を施す必要なくピストンロッド11に対してピストンPを締結させることができ、膨部41に関しては細いピストンロッドでも容易に設けることができる。さらに、ピストンPを構成する凹型部材30の内部に凹部32、すなわち拡径部35の形成を要するが、ピストンロッド11に比べて大きい径を有するので、ピストンロッド11の内部に加工を施す場合に比べて容易に形成することができる。その結果、流体圧シリンダが小型化してもピストンロッド11及びピストンPの締結の緩みを効果的に抑制することができる。
【0037】
(2)膨部41を構成するためには、ピストンロッド11の周に亘ってリング部材40を取り付けるための溝13を形成するのみでよくなる。したがって、ピストンロッド11の内部に加工を施すわけでないことから、膨部41に関しては細いピストンロッドでもさらに容易に構成することができる。
【0038】
(3)凸型部材20と凹型部材30とを係合させる工程において、凸型部材20が凹型部材30に比べて小さい力で膨部41に乗り上げることができ、凸型部材20の小径部22の拡径を効果的に促すことができる。
【0039】
さらに、凸型部材20に加工を施して膨部41に乗り上げ易くすることで、膨部41の形状に捉われることなく、凸型部材20の小径部22の拡径を効果的に促すことができる。このように、膨部41の構成に関する自由度を拡げることができ、コストや設備に合った手法を選択することができる。
【0040】
(4)断面が丸型のリング部材40により膨部41を構成することで、小径部22が膨部41へさらに乗り上げ易くなることから、該小径部22の拡径を効果的に促すことができる。
【0041】
(5)拡径部35に傾斜面34を形成することで、凸型部材20及び凹型部材30の係合、さらにはピストンロッド11及びピストンPの締結をより強固にすることができる。そして、この拡径部35の傾斜面34は、凹部32自体の形成に比べても特別な手間や設備等を必要なく実現することができる。したがって、流体圧シリンダが小型化してもピストンロッド11及びピストンPの締結の緩みを効果的に抑制することができる。
【0042】
(6)凸型部材20の凹型部材30の逆側、及び凹型部材30の凸型部材20の逆側には、特別な構成を設ける必要なくそれぞれピストンロッド11及びピストンPの締結の緩みを抑制することができる。このため、凸型部材20の凹型部材30の逆側、及び凹型部材30の凸型部材20の逆側には、他の機能、例えば、ピストンPの移動のストロークエンド付近での速度を調節するためのクッション機構等を設けるスペースを確保できる。
【0043】
なお、上述した本実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・拡径部35の内壁は、傾斜を有していなくてもよく、例えば、拡径部35の内壁は、開口部33よりも大きく、且つ同一径に形成されていればよい。そして、小径部22が塑性変形した場合にその先端部23が接触可能に構成されていればよい。
【0044】
・本実施形態では、ピストンロッド11の周方向全体に溝13を形成するようにしたが、リング部材40を取り付けることができれば周方向の部分的に溝13を形成するようにしてもよい。
【0045】
・リング部材40は、2部品から構成され、別々の2部品を合体させて溝13に嵌め込まれる構成を採用することもできる。
・リング部材40の断面は、丸型でなくてもよく、少なくともピストンロッド11から露出して膨部41として機能する部分の断面が丸状(円状)であればよい。このようなリング部材40としては、ピストンロッド11からの突出部の断面が半円形で且つ溝13内の断面が四角形であって、溝13内の部位に角部を有するようなものが挙げられる。また、小径部22の先端部23に傾斜面24を形成する場合には、リング部材40の断面を四角形にしてもよい。
【0046】
・また、図4及び図5に示すように、リング部材40は、ピストンロッド11からの突出部の断面が凸型部材20から凹型部材30に向かって拡径しながら傾斜する傾斜面42を有する台形であってもよい。そして、このリング部材40は、傾斜面42が凸型部材20側に向けて傾斜するように溝13に嵌め込まれている。一方、リング部材40は、傾斜面42に連接し、且つ該傾斜面42の先端からピストンロッド11に向けて直交して延びる壁面43を有する。これにより、小径部22が膨部41にさらに乗り上げられ易くなる。一方、凹部32が膨部41にさらに乗り上げられ難くなる。なお、本別例では、凹部32の底部36を面取りすることもできる。
【0047】
図6に示すように、膨部41は、ピストンロッド11自体を塑性変形させて形成されてもよい。例えば、ピストンロッド11には、その表面を転造加工して膨部41を形成することができる。また、このような膨部41としては、断面を半円形に形成することが好ましい。これにより、膨部41を構成するためには、ピストンロッド11の表面を転造加工するのみでよく、他の部材を採用する場合に比べて構造を簡素化することができる。そしてこのようにしてピストンロッド11に形成される膨部41が小径部22の塑性変形に作用する。したがって、ピストンロッド11の内部に加工を施すわけでないことから、膨部41に関しては細いピストンロッドでもさらに容易に構成することができる。
【0048】
・ピストンPは、凸型部材20及び凹型部材30に加えて、他の部材を構成部材に含んでいてもよい。
・本実施形態では、1箇所にのみ膨部41を有する例を示したが、2箇所等、複数箇所有するようにしてもよい。
【0049】
・本実施形態は、両ロッド形の流体圧シリンダに適用することもできる。
・流体としては、エアに限らず圧縮された流体であれば他の流体でもよい。
次に、上記実施形態及び別例(変形例)から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0050】
(イ)前記膨部は、前記ピストンロッド自体を塑性変形させて形成される請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【符号の説明】
【0051】
P…ピストン、10…シリンダチューブ、11…ピストンロッド、13…溝、20…凸型部材、21…大径部、22…小径部、23…先端部、24…傾斜面、30…凹型部材、32…凹部、34…傾斜面、35…拡径部、36…底部、40…リング部材、41…膨部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6