(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
当業者であれば、図中の物体が単純さおよび明確さを期して示されたものであり、必ずしも原寸に比例して描かれたものでないということを認識する。例えば、図中の物体の一部の寸法は、実施形態をより良く理解するための一助となるよう、他の物体と比べて誇張されているかもしれない。
【0012】
数多くの態様および実施形態が上述されてきたが、これらは単に例示的なものであり、制限的なものではない。本明細書を読んだ後、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様および実施形態が可能であることを認識する。
【0013】
いずれか1つ以上の実施形態の他の特徴および利益は、以下の詳細な説明ならびにクレームから明らかになる。詳細な説明はまず最初に、用語の定義および明確化とそれに続いて、照明器具、材料、方法そして最後に実施例を扱かっている。
【0014】
1.用語の定義および明確化
以下で記述する実施形態の詳細を扱う前に、いくつかの用語を定義または明確化する。
【0015】
本明細書中で使用される「アルコキシ」という用語は、RO―基を意味し、ここでRはアルキルである。
【0016】
「アルキル」という用語は、1つの付着点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するように意図され、直鎖、分岐鎖または環状基を含む。この用語は、ヘテロアルキル類を含むように意図されている。「炭化水素アルキル」という用語は、ヘテロ原子を一切有していないアルキル基を意味する。一部の実施形態において、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0017】
「アリール」という用語は、1つの付着点を有する芳香族炭化水素から誘導された基を意味するように意図されている。「芳香族化合物」という用語は、非局在化π電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を意味するように意図されている。この用語は、ヘテロアリール類を含むように意図されている。「炭化水素アリール」という用語は、環内にヘテロ原子を一切有していない芳香族化合物を意味するように意図されている。一部の実施形態において、アリール基は3〜30個の炭素原子を有する。
【0018】
「青色」という用語は、x=0.12〜0.14およびy=0.15〜0.21の色座標を有する発光を意味する。
【0019】
「色座標」という用語は、C.I.E色度等級(Commission Internationale de L’Eclairage,1931)によるxおよびy座標を意味する。
【0020】
「CRI」という用語は、CIE演色評価数を意味する。これは、理想的な光源すなわち自然光源と比較した、さまざまな物体の色を忠実に再現する光源の能力の定量的尺度である。黒体放射などの基準源は、100というCRIを有するものとして定義される。
【0021】
「電界発光(electroluminescence)」という用語は、材料内部を通過する電流に応答した材料からの光の発出を意味する。「電界発光性(electroluminescent)」という用語は、電界発光できる物質を意味する。
【0022】
「乾燥(drying)」という用語は、液体媒体の少なくとも50重量%の除去、一部の実施形態においては、少なくとも75重量%の液体媒体の除去を意味するように意図されている。「部分的に乾燥された」層は、一部の液体媒体が残留している層である。「本質的に完全に乾燥されている」層は、さらなる乾燥の結果としてさらなる重量損失を一切もたらさない程度まで乾燥された層である。
【0023】
「フルオロ」という接頭辞は、1つ以上の利用可能な水素原子がフッ素原子で置換されたことを表わす。
【0024】
接頭辞「ヘテロ」は、1つ以上の炭素原子が異なる原子で置換されたことを意味する。一部の実施形態において、この異なる原子はN、OまたはSである。
【0025】
「側方に間隔を置いて配置された」という用語は、同一平面内の間隔どりを意味し、この平面は第1の電極の平面に対して平行である。
【0026】
「液体組成物」という用語は、材料が溶解して溶液を形成している液体媒体、材料が分散され、分散を形成している液体媒体、または材料が懸濁されて懸濁液またはエマルジョンを形成している液体媒体を意味するように意図されている。
【0027】
「液体媒体」という用語は、純粋な液体、液体の組合せ、溶液、分散、懸濁液、およびエマルジョンを含めた液体材料を意味するように意図されている。液体媒体は、1つ以上の溶媒が存在するか否かに関わらず使用される。
【0028】
「照明器具」という用語は、照明パネルを意味し、付随するハウジングおよび電源に対する電気的接続を含んでいてもいなくてもよい。
【0029】
照明器具に言及する場合の「全体的発光」という用語は、照明器具全体として知覚される光出力を意味する。
【0030】
画素に言及する場合の「ピッチ」という用語は、1つの画素の中心から同じ色の次の画素の中心までの距離を意味する。
【0031】
「赤−橙色」という用語は、x=0.62+/−0.02およびy=0.35+/−0.03の色座標を有する発光を意味する。
【0032】
「シリル」という用語は、R
3Si−基を意味し、ここでRはH、D、C1−20アルキル、フルオロアルキルまたはアリールである。一部の実施形態においては、Rアルキル基内の1つ以上の炭素がSiで置換される。一部の実施形態では、シリル基は(ヘキシル)
2Si(CH
3)CH
2CH
2Si(CH
3)
2−、および[CF
3(CF
2)
6CH
2CH
2]
2Si(CH
3)−である。
【0033】
「白色光」という用語は、人間の目によって白色を有するものとして知覚される光を意味する。
【0034】
全ての基は、未置換かまたは置換されていてよい。一部の実施形態において、置換基は、D、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシおよびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0035】
別段の指示のないかぎり、全ての基は未置換であるかまたは置換されたものであり得る。別段の指示のないかぎり、全ての基は、可能であるかぎり、直鎖、分岐鎖または環状であり得る。一部の実施形態において、置換基はハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、アリールおよびシアノからなる群から選択される。
【0036】
本明細書中で使用される「含む(comprises、comprising、includes、including)」「有する(has、having)」という用語またはその任意の他の変形形態は、非排他的包含を網羅するように意図されている。例えば、一群の要素リストを含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていないまたはこのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含んでいてよい。さらに、別段の明示的記述がない場合、「または(or)」は、排他的「or」ではなく、包括的「or」を意味する。例えば、条件AまたはBは、Aが真であり(または存在する)、Bは偽である(または存在しない);Aは偽であり(または存在しない)Bは真である(または存在する);およびAとBの両方が真である(または存在する)、のいずれか1つによって満たされる。
【0037】
「a」または「an」の使用は、本明細書中に記述されている元素および成分を記述するために用いられる。これは便宜上、かつ本発明の範囲の一般的意味合いを与えるために行なわれている。この記述は1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数は、別段の意味が明らかであるのでないかぎり、複数をも含んでいる。
【0038】
元素周期表中の縦列に対応する族番号には、CRC Handbook of Chemistry and Physics、81
st Edition(2000−2001)中に見られる通りの「新表記法」規則が使用されている。
【0039】
別段の定義がないかぎり、本明細書中で使用されている全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書中で記述されているものと類似のまたは等価の方法および材料を本発明の実施形態の実践または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記述する。本明細書中で言及する全ての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、特定の下りが引用されているのでないかぎり、その全体が参照により本明細書に援用される。矛盾が生じた場合、定義を含め本明細書が支配することになる。さらに、材料、方法および実施例は一例にすぎず、限定するように意図されているものではない。
【0040】
本明細書に記述されていない範囲で、具体的な材料、加工技術および回路に関する多くの詳細は、従来通りであり、有機発光ダイオードディスプレー、光検出器、光電池および半導体部材の技術分野の範囲内で教本および他の情報源の中に見出されるかもしれない。
【0041】
2.照明器具
アノードとカソードの間で異なる色の発光層(emissive layer)が互いに積重ねられている白色発光層(light−emitting layer)を得ることは公知である。2つの例示的な先行技術のデバイスが
図1に示されている。
図1aでは、アノード3とカソード11は、基板2上で互いに積重ねられた青色発光層6、緑色発光層9および赤色発光層10を有する。発光層のいずれかの側に、正孔輸送層4、電子輸送層8がある。同様に、正孔遮断層7および電子遮断層5も存在する。
図1bでは、図示した通りに基板2、アノード3、正孔輸送層4、電子輸送層8およびカソード11が存在する。発光層12は、ホスト材料中の黄色および赤色発光体の組合せである。発光層13は、ホスト材料中の青色発光体である。層14はホスト材料の追加層である。
【0042】
本明細書中で記述されている照明器具は、積重ね構成ではなくむしろ互いに側方に配置されている発光層を有する。
【0043】
照明器具は第1のパターン化された電極、第2の電極およびその間の発光層を有する。発光層は、青色発光を有する第1の複数の画素、および赤−橙色発光を有する第2の複数の画素を含んでいる。複数の画素は、互いに側方に間隔を置いて配置されている。発光した色の加法混色は、白色の全体的発光を結果としてもたらす。電極の少なくとも1つは、少なくとも部分的に透明であり、生成された光の透過を可能にしている。
【0044】
電極の1つはアノードであり、これは、正電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。一部の実施形態において、第1の電極はアノードである。一部の実施形態において、アノードは、平行なストライプの形にパターン化される。一部の実施形態において、アノードは少なくとも部分的に透明である。
【0045】
もう一方の電極はカソードであり、これは電子または負電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。一部の実施形態において、カソードは連続する全体層である。個々の画素は任意の幾何形状を有することができる。一部の実施形態において、これらは矩形または卵形である。
【0046】
一部の実施形態において、第1の複数の画素は、画素の平行なストライプの形で配列されている。一部の実施形態において、第1および第2の複数の画素は、画素の交互の平行なストライプの形に配列されている。
【0047】
画素の分解能は、第1および第2の色が個別に見えず、全体的発光が白色となるよう充分高いものである。一部の実施形態において、同じ色の画素間のピッチは200ミクロン以下である。一部の実施形態において、このピッチは150ミクロン以下である。一部の実施形態において、ピッチは100ミクロン以下である。
【0048】
高いCRI値を獲得できるかぎりにおいて、代案として高い発光効率に基づいて電界発光材料を選択可能である。
【0049】
一部の実施形態において、各色の画素は異なるサイズを有する。これは、白色発光を達成するために最高の混色を得る目的で行なうことができる。平行な画素のストライプを有する実施形態において、画素の幅は異なるものであり得る。幅は、各色が同じ動作電圧で動作している間正しいカラーバランスを可能にするように選択される。これは
図2に例示されている。
図2(a)は、画素110および120が等しい幅を有している状態で、OLEDディスプレー100の典型的配置を示している。この配置は本明細書中で記述されている照明器具のために使用してもよい。
図2(b)は、異なる幅を有する画素210および220を有するOLED照明器具200の一実施形態を示している。画素のピッチは「P」として示されている。
【0050】
OLEDデバイスは、デバイスに電力を供給するための母線も含んでいる。一部の実施形態において、母線の一部は、画素のライン間で間隔を置いて配置されたデバイスの活性部域内に存在する。母線は、x本の画素ライン毎にその間に存在してよく、ここでxは整数であり、値は照明器具のサイズおよび電子的要件により決定される。一部の実施形態において、母線は、画素ライン10〜20本毎に存在する。一部の実施形態において、金属母線はまとめられて各色について1つだけの電気接点を提供する。
【0051】
電極をまとめることにより、単純なドライブエレクトロニクスが可能となり、その結果製造コストは最小限に保たれる。このような設計によって発生し得る潜在的な問題点は、画素のいずれかの中で電気的短絡が発生すると、照明器具全体の短絡および壊滅的な故障を導く可能性があるという点にある。一部の実施形態において、これは、個別の「弱連結」を有するように画素を設計することで対処可能である。その結果、いずれか1つの画素内での短絡はその画素の故障をひき起こすだけとなり、照明器具の残りの部分は、光出力の低下が認識されないまま、機能し続けることになる。考えられる1つのアノード設計が
図3に示されている。アノード250は、幅の狭いスタブ270により金属母線260に接続されている。スタブ270は、動作中電流を運ぶのに充分であるが、画素が短絡した場合に機能しなくなり、こうして短絡を単一の画素にとどめる。
【0052】
一部の実施形態において、OLED照明器具は、画素開口部を画定するためのバンク構造を含む。「バンク構造」という用語は、基板の上に存在し、かつ基板の内部または基板の上にある物体、領域またはそれらの任意の組合せを基板の内部または上にある異なる物体または異なる領域と接触しないよう分離するという主要な機能を提供する構造を意味するように意図されている。
【0053】
一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに追加の層を含む。一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに1つ以上の電荷輸送層を含む。「電荷輸送」という用語は、層、材料、部材または構造に言及している場合、このような層、材料、部材または構造が、比較的効率良くかつ小さい電荷損失で、これらの層、材料、部材または構造の厚みを通したこのような電荷の移動を容易にすることを意味する。正孔輸送層は正電荷の運動を容易にし、電子輸送層は負電荷の運動を容易にする。電界発光材料はいくつかの電荷輸送特性も有していてよいが、「電荷輸送層、材料、部材または構造」という用語は、その一次機能が発光である層、材料、部材または構造を含むようには意図されていない。
【0054】
一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに、電界発光層とアノードの間に1つ以上の正孔輸送層を含む。一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに、電界発光層とカソードの間の1つ以上の電子輸送層を含む。
【0055】
一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに、アノードと正孔輸送層の間に正孔注入層を含む。「正孔注入層」または「正孔注入材料」という用語は、電気的導体または半導体材料を意味するように意図されている。正孔注入層は有機電子デバイス中で、下位層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉および有機電子デバイスの性能を容易にするかまたは改善するための他の側面を含めた(ただしこれに限定されない)1つ以上の機能を有機電子デバイスにおいて有していてよい。
【0056】
OLED照明器具の1つの実施例が
図4に示されている。OLED照明器具300は、アノード320と母線330を伴う基板310を有する。バンク構造340が有機層すなわち正孔注入層350、正孔輸送層360そしてそれぞれ青色および赤−橙色のための電界発光層371および372を収納している。
図4に示されているように、青色電界発光層371の厚みは、赤−橙色電界発光層372の厚みより大きい。一部の実施形態において、厚みは同じである。一部の実施形態において、青色電界発光層371の厚みは、赤−橙色電界発光層372の厚みより小さい。電子輸送層380およびカソード390は全体的に適用される。
【0057】
さらには、空気および/または水分に起因する劣化を防止するため、OLED照明器具を封入することもできる。さまざまな封入技術が公知である。一部の実施形態において、パッケージの縁部から水分浸透をさせないように乾燥用シールを内蔵した薄い不透湿性ガラス製のフタを用いて、面積の広い基板の封入が達成される。封入技術は、例えば米国特許出願公開第2006−0283546号明細書中に記載されている。
【0058】
ドライブエレクトロニクスの複雑性のみが異なる(OLEDパネル自体はあらゆる場合において同一である)OLED照明器具のさまざまな変形形態が存在し得る。ドライブエレクトロニクス設計はなお非常に単純なものであり得る。
【0059】
一実施形態においては、等しくない画素幅が選択され、両方の色が同じ電圧(5〜6V前後)で動作して所望の白色点が達成される。両方の色がまとめられる。したがって、必要とされるドライブエレクトロニクスは、単純な安定化されたDC電圧源だけである。
【0060】
一実施形態においては、等しくない画素幅が選択され、2色が2つの別個のDC電源により駆動されて、各色を独立して調整できるようにしている。こうして、(例えば日光、白熱球または蛍光灯をシミュレートするために)ユーザーが白色点を選択できる可能性が提供される。これにより、照明器具が経年劣化につれて色ずれした場合でも色点の調整が可能となる。この設計には2つのDC電圧源が必要となる。一定範囲の色の間を循環するように照明器具をプログラミングできる可能性もある。これには、商業広告または店舗のディスプレーにおける有利な潜在的利用分野がある。
【0061】
一部の実施形態においては、正確な白色点の色調が求められ、経年劣化に伴う色ずれは許容不可能である。この場合、等しくない画素幅が選択され、2つの別個のDC電源によって2色が駆動される。さらに、照明器具は、白色点の色調を維持するために自動的に色を調整できる外部色センサーを含む。
【0062】
3.材料
a.電界発光層
小分子有機発光性化合物、発光性金属錯体、共役ポリマーおよびそれらの混合物を含めた(ただしこれらに限定されない)任意のタイプの電界発光(「EL」)材料を電界発光層中に使用することができる。小分子発光性化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、その誘導体およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。金属錯体の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物、例えばトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3);シクロメタル化イリジウムおよび白金電界発光性化合物、例えばPetrovらの米国特許第6,670,645号明細書およびPCT国際公開第03/063555号および第2004/016710号パンフレット中で開示されているイリジウムとフェニルピリジン、フェニルキノリンまたはフェニルピリミジン配位子との錯体、およびPCT国際公開第03/008424号、第03/091688号および第03/040257号パンフレット中に記載されている有機金属錯体およびそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。電荷担持ホスト材料および金属錯体を含む電界発光性発光層は、米国特許第6,303,238号明細書中でThompsonらによって、そしてPCT国際公開第00/70655号および第01/41512号パンフレットの中でBurrowsおよびThompsonによって記述されている。共役ポリマーの例としてはポリ(フェニレンビニレン類)、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン類)、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン類)そのコポリマーおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
一部の実施形態において、青色の発光色を有する第1の電界発光材料はIrの有機金属錯体である。一部の実施形態において、有機金属Ir錯体は、IrL
3という式を有するトリス−シクロメタル化錯体またはIrL
2Yという式を有するビス−シクロメタル化錯体であり、式中Yはモノアニオン二座配位子であり、Lは、
【0065】
【化2】
という式L−1〜L−12からなる群から選択される式を有し、式中、
− R
1〜R
8は同じかまたは異なるものであり、H、D、電子供与基および電子求引基からなる群から選択され、R
9はH、Dまたはアルキルであり、
− *は、Irとの配位点を表わす。
【0066】
発光した色は、電子供与および電子求引置換基の選択および組合せにより調整される。さらに、色はビス−シクロメタル化錯体内のY配位子の選択によって調整される。より短かい波長への色のシフトは、(a)R
1〜R
4について1つ以上の電子供与置換基を選択することおよび/または(b)R
5〜R
8について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(c)以下で示す配位子Y−1を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること;によって達成される。反対に、より長い波長への色のシフトは、(a)R
1〜R
4について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(b)R
5〜R
8について1つ以上の電子供与置換基を選択すること;および/または(c)以下で示す配位子Y−2を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること;により達成される。電子供与置換基の例としては、アルキル、アルコキシ、シリルおよびジアルキルアミノが含まれるが、これらに限定されない。電子求引置換基の例としては、F、CN、フルオロアルキル、アルコキシおよびフルオロアルコキシが含まれるが、これらに限定されない。溶解度、空気および水分安定性、発光寿命その他などの材料の他の特性に影響を及ぼすように、置換基を選択してもよい。
【0067】
式L−1〜L−12の一部の実施形態において、R
1〜R
4の少なくとも1つは電子供与置換基である。式L−1の一部の実施形態において、R
5〜R
8の少なくとも1つは電子求引基である。
【0068】
式L−1〜L−12の一部の実施形態において、
− R
1はH、D、F、またはアルキルであり;
− R
2はH、Dまたはアルキルであり;
− R
3=H、D、F、アルキル、OR
10、NR
102;
− R
4=HまたはD;
− R
5=H、DまたはF;
− R
6=H、D、F、CN、アリール、フルオロアルキルまたはジアリールオキソホスフィニル;
− R
7=H、D、F、アルキル、アリール、OR
10またはジアリールオキソホスフィニル;
− R
8=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル;
− R
9=H、D、アリールまたはアルキル;
− R
10=アルキル、フルオロアルキルであり、ここで隣接するR
10基は接合されて飽和環を形成し得、
− *はIrとの配位点を表わす。
【0070】
【化3】
というY−1、Y−2およびY−3からなる群から選択され、式中、
− R
11は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択され;
− R
12は、H、DまたはFであり;
− R
13は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0071】
一部の実施形態において、アルキルおよびフルオロアルキル基は、1〜5個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキル基はメチルである。一部の実施形態において、フルオロアルキル基はトリフルオロメチルである。一部の実施形態において、アリール基はヘテロアリールである。一部の実施形態において、アリール基は、F、C、CN、およびCF
3からなる群から選択される1つ以上の置換基を有するフェニル基である。一部の実施形態において、アリール基は、o−フルオロフェニル、m−フルオロフェニル、p−フルオロフェニル、p−シアノフェニルおよび3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルからなる群から選択される。一部の実施形態において、ジアリールオキソホスフィニル基はジフェニルオキソホスフィニルである。
【0072】
一部の実施形態において、青色の発光色を有する有機金属Ir錯体は式IrL
3を有する。一部の実施形態において、錯体は式IrL
3を有し、式中Lは式L−1であり、R
5はHまたはDであり、R
6はF、アリール、ヘテロアリールまたはジアリールオキソホスフィニルである。一部の実施形態において、R
5はFであり、R
6はHまたはDである。一部の実施形態において、R
5、R
6、R
7およびR
8の2つ以上がFである。
【0073】
一部の実施形態において、青色の発光色を有する有機金属Ir錯体は式IrL
2Yを有する。一部の実施形態において、錯体は式IrL
2Yを有し、式中Lは式L−1であり、R
1、R
2、R
6およびR
8はHまたはDである。一部の実施形態において、R
5およびR
7はFである。
【0074】
青色の発光色を有する有機金属Ir錯体の例としては以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0079】
一部の実施形態において、赤−橙色の発光色を有する第2の電界発光材料はIrの有機金属錯体である。一部の実施形態において、有機金属Ir錯体は、IrL
3という式を有するトリス−シクロメタル化錯体またはIrL
2Yという式を有するビス−シクロメタル化錯体であり、式中Yはモノアニオン二座配位子であり、Lは、
【0080】
【化8】
という式L−13、L−14、L−15およびL−16からなる群から選択される式を有し、式中、
− R
1〜R
6およびR
14〜R
23は同じかまたは異なるものであり、H、D、電子供与基、および電子求引基からなる群から選択され、
− *は、Irとの配位点を表わす。
【0081】
上述の通り、発光した色は電子供与および電子求引置換基の選択および組合せ、ならびにビスシクロメタル化錯体中のY配位子の選択によって調整される。より短い波長への色のシフトは、(a)R
1〜R
4またはR
14〜R
19について1つ以上の電子供与置換基を選択すること;および/または(b)R
5〜R
6またはR
20〜R
23について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(c)配位子Y−2またはY−3を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること、によって達成される。反対に、より長い波長への色のシフトは、(a)R
1〜R
4またはR
14〜R
19について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(b)R
5〜R
6またはR
20〜R
23について1つ以上の電子供与置換基を選択すること;および/または(c)配位子Y−1を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること、により達成される。
【0082】
式L−13〜L−16の一部の実施形態において、
− R
1〜R
4およびR
14〜R
19は同じであるかまたは異なるものであり、H、D、アルキル、シリルまたはアルコキシであるか、あるいは配位子L−13中のR
1とR
2またはR
2とR
3またはR
3とR
4、または配位子L−14およびL−15中のR
16とR
17またはR
17とR
18、または配位子L−16中のR
16とR
17またはR
17とR
18またはR
18とR
19は互いに接合されて炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;
− R
20=H、D、F、アルキルまたはシリル;
− R
21=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル、アリールまたはシリル;および
− R
22=H、D、F、アルキル、シリル、アルコキシ、フルオロアルコキシまたはアリール;
− R
23=H、D、CN、フルオロアルキルまたはシリルである。
【0084】
【化9】
というY−1、Y−2およびY−3からなる群から選択され、
式中、
− R
11は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択され;
− R
12は、H、D、またはFであり、および
− R
13は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0085】
複数の式の一部の実施形態において、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシおよびフルオロアルコキシ基は、1〜5個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキル基はメチルである。一部の実施形態において、フルオロアルキル基はトリフルオロメチルである。一部の実施形態において、フルオロアルキル基はトリフルオロメチルである。一部の実施形態において、アリール基はフェニルである。
【0086】
一部の実施形態において、L=L−14であり、錯体は式IrL
3を有する。一部の実施形態において、L=L−15であり、錯体は式IrL
2YまたはIrL
3を有する。一部の実施形態において、L=L−16であり、錯体は式IrL
2Yを有する。
【0087】
一部の実施形態において、L=L−14である。L−14の一部の実施形態において、R
16〜R
19の少なくとも1つはアルコキシである。L−14の一部の実施形態において、R
20〜R
23の少なくとも1つはアルコキシまたはフルオロアルコキシである。
【0088】
一部の実施形態において、L=L−15である。L−15の一部の実施形態において、R
16〜R
19はHまたはDである。L−15の一部の実施形態において、R
14およびR
22の少なくとも1つはC
1−5アルキル基である。
【0089】
一部の実施形態において、L=L−16である。L−16の一部の実施形態において、R
16〜R
19はHまたはDである。L−16の一部の実施形態において、R
14およびR
22の少なくとも1つはC
1−5アルキル基である。L−16の一部の実施形態において、R
20〜R
23の少なくとも1つはC
1−5アルコキシ基またはフルオロアルコキシ基である。
【0090】
赤色の発光色を有する有機金属Ir錯体の例としては、
【0092】
【化11】
が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
一部の実施形態において、電界発光材料はホスト材料中にドーパントとして存在する。「ホスト材料」という用語は、電界発光材料を追加してよい1つの層の形を通常とる材料を意味するように意図されている。ホスト材料は、電子特性あるいは放射線を発出する、受取るまたはろ過する能力を有していてもいなくてもよい。ホスト材料は、例えば米国特許第7,362,796号明細書および米国特許出願公開第2006−0115676号明細書中で開示されている。
【0094】
一部の実施形態において、ホスト材料は、
【0095】
【化12】
という式を有し、式中、
− Ar
1〜Ar
4は同じであるかまたは異なるものであり、アリールであり;
− Qは、多価アリール基および
【0096】
【化13】
からなる群から選択され;
− Tは、(CR’)
a、SiR
2、S、SO
2、PR、PO、PO
2、BRおよびRからなる群から選択され;
− Rは、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキル、フルオロアルキルおよびアリールからなる群から選択され;
− R’は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、H、D、フルオロアルキルおよびアルキルからなる群から選択されており;
− aは1〜6のうちの整数であり、かつ
− mは0〜6のうちの整数である。
【0097】
式Iの一部の実施形態において、隣接するAr基は、互いに接合されてカルバゾルなどの環を形成する。式Iにおいて、「隣接する」とは、Ar基が同じNに結合されていることを意味する。
【0098】
一部の実施形態において、Ar
1〜Ar
4は独立してフェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、フェナントリル、ナフチルフェニルおよびフェナントリルフェニルからなる群から選択される。5〜10個のフェニル環を有するクアテルフェニルより高次の類似体も使用可能である。
【0099】
一部の実施形態において、Qは少なくとも2つの融合環を有するアリール基である。一部の実施形態において、Qは3〜5個の融合芳香族環を有する。一部の実施形態において、Qはクリセン、フェナントレン、トリフェニレン、フェナントロリン、ナフタレン、アントラセン、キノリンおよびイソキノリンからなる群から選択される。
【0100】
一部の実施形態において、ホスト材料は電子輸送材料である。一部の実施形態において、ホスト材料は、フェナントロリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類および金属キノリネート錯体からなる群から選択される。
【0101】
一部の実施形態において、ホスト材料は、
【0102】
【化14】
という式を有するフェナントロン誘導体であり、式中、
− R
24は、同じであるかまたは異なるものであり、かつフェニル、ナフチル、ナフチルフェニル、トリアリールアミノおよびカルバゾリルフェニルからなる群から選択され;
− R
25およびR
26は同じであるかまたは異なるものであり、かつフェニル、ビフェニル、ナフチル、ナフチルフェニル、フェナントリル、トリアリールアミノおよびカルバゾリルフェニルからなる群から選択される。
【0103】
フェナントロリン誘導体の一部の実施形態において、R
24は両方共フェニルであり、R
25およびR
26はフェニル、2−ナフチル、ナフチルフェニル、フェナントリル、トリアリールアミノおよびm−カルバゾリルフェニルからなる群から選択される。
【0104】
ホスト材料の一部の例としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0109】
電界発光組成物中に存在するドーパントの量は、一般に、組成物の総重量に基づいて3〜20重量%の範囲内にあり、一部の実施形態において、5〜15重量%の範囲内にある。一部の実施形態においては、2つのホストの組合せが存在する。
【0110】
全体としての白色光発光は、2色の発光のバランスを取ることにより達成可能である。一部の実施形態において、cd/m
2で測定される2色からの相対発光は以下の通りである:
青色発光=30〜40%
赤−橙色発光=60〜70%。
【0111】
一部の実施形態において、cd/m
2で測定される2色からの相対発光は以下の通りである:
青色発光=35〜40%
赤−橙色発光=60〜65%。
【0112】
b.他の層
本明細書中に記載されている照明器具の他の層のために使用すべき材料は、OLEDデバイスにおいて有用であるとして公知の任意のものであり得る。
【0113】
アノードは、正電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。これは、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合金属酸化物を含む材料で作ることができ、あるいは導電性ポリマーおよびそれらの混合物でもあり得る。適切な金属としては、第11族金属、第4族、5族および6族中の金属ならびに第8〜10族遷移金属が含まれる。アノードが光透過性でなくてはならない場合、インジウムスズ酸化物などの第12、13および14族金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノードは同様に、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」、Nature vol.357、pp477〜479(11 June 1992)中に記載されている通りのポリアニリンなどの有機材料を含んでいてもよい。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、生成された光を観察できるように少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0114】
正孔注入層は正孔注入材料を含む。正孔注入材料はポリマー、オリゴマー、または小分子であってよく、溶液、分散、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物または他の組成物の形をしていてよい。
【0115】
正孔注入層は、しばしばプロトン酸でドープされているポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料で形成され得る。プロトン酸は、例えばポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであり得る。正孔注入層は、電荷移動化合物など、例えば銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)を含むことができる。一実施形態において、正孔注入層は、導電性ポリマーとコロイド形成ポリマー酸の分散から作られる。このような材料は、例えば米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、第2004−0127637号明細書および第2005−0205860号明細書およびPCT国際公開第2009/018009号パンフレット中に記載されている。
【0116】
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。正孔輸送層用の正孔輸送材料の例は、例えば、Y.Wangによる「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、Fourth Edition、Vol.18、p.837〜860、1996、中で要約されている。正孔輸送小分子およびポリマーの両方が使用可能である。一般に使用される正孔輸送分子としては、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);4,4’−ビス(カルバゾル−9−イル)ビフェニル(CBP);1,3−ビス(カルバゾル−9−イル)ベンゼン(mCP);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);およびポルフィリン化合物、例えば銅フタロシアニンが含まれるが、これらに限定されない。一般に使用される正孔輸送ポリマーには、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン類)、ポリアニリン類およびポリピロール類が含まれるが、これらに限定されない。同様に、上記で言及したものなどの正孔輸送分子をポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中にドープすることにより、正孔輸送ポリマーを得ることも同様に可能である。一部の場合において、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。一部の場合において、ポリマーおよびコポリマーは架橋可能である。架橋可能な正孔輸送ポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書およびPCT国際公開第2005/052027号パンフレット中に見出すことができる。一部の実施形態において、正孔輸送層は、P−ドーパント例えばテトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物でドープされる。
【0117】
電子輸送層は、電子輸送を容易にするように機能できると同時に、層界面における励起子の消光を防止するための緩衝層または閉じ込め層としても役立つことができる。好ましくは、この層は、電子の移動性を促進し、励起子の消光を減少する。任意の電子輸送層の中で使用できる電子輸送材料の例としては、金属キノレート誘導体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)を含めた金属キレート化オキシノイド化合物;およびアゾール化合物、例えば2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI);キノキサリン誘導体、例えば2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリン;フェナントロリン類、例えば4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA);およびそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態において、電子輸送層はさらに、n−ドーパントを含む。N−ドーパント材料は周知である。n−ドーパントには、第1族および第2族金属;第1族および第2族塩、例えばLiF、CsF、およびCs
2CO
3;第1族および第2族金属有機化合物、例えばLiキノレート;および分子n−ドーパント、例えばロイコ染料、金属錯体、例えばW
2(hpp)
4(なおここでhppは1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジンである)およびコバルトセン、テトラチアナフタセン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、複素環ラジカル又はジラジカル、および複素環ラジカルまたはジラジカルのダイマー、オリゴマー、ポリマー、ジスピロ化合物および多環が含まれるがこれらに限定されない。
【0118】
カソードは、電子または負の電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であり得る。カソードのための材料は、第1族のアルカリ金属(例えばLi、Cs)、第2族(アルカリ土類)金属、希土類元素およびランタニドを含む第12族金属、およびアクチニドから選択可能である。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの材料ならびに組合せを使用することができる。Li含有有機金属化合物、LiF、Li
2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs
2OおよびCs
2CO
3を有機層とカソード層の間に堆積させて、動作電圧を低下させることもできる。この層は、電子注入層と呼んでもよい。
【0119】
成分層の各々についての材料の選択は好ましくは、高い電界発光効率を有するデバイスを提供するようにエミッタ層内の正および負の電荷のバランスを取ることによって決定される。
【0120】
一実施形態において、異なる層は、以下の厚み範囲を有する:アノード、500〜5000Å、一実施形態では1000〜2000Å;正孔注入層、50〜2000Å、一実施形態では200〜1000Å;正孔輸送層、50〜2000Å、一実施形態では200〜1000Å;光活性層、10〜2000Å、一実施形態では100〜1000Å;電子輸送層、50〜2000Å、一実施形態では100〜1000Å;カソード、200〜10000Å、一実施形態では300〜5000Å。所望される層厚み比率は、使用する材料の正確な性質によって左右される。
【0121】
OLED照明器具は、アウトカップリング効率を増大させ、デバイスの側面上の導波性を防止するために、アウトカップリングの増倍も含んでいてよい。光アウトカップリング増倍のタイプとしては、ミクロスフェアまたはレンズなどの秩序構造を含む表示側の表面被膜が含まれる。別のアプローチは、表面の光散乱様のサンディングを達成するためのランダム構造の使用および/またはエアロゾルの塗布である。
【0122】
本明細書中で記述されているOLED照明器具は、現在の照明用機材に比べいくつかの利点を有することができる。OLED照明器具は、白熱電球に比べて電力消費量が低くなる可能性を有する。50lm/w超の効率が達成されるかもしれない。OLED照明器具は、蛍光灯に比べて改善された光質を有することができる。演色は、蛍光灯が62であるのに対し、80超となり得る。OLEDは拡散性をもつため、他の全ての照明オプションと異なり、外部拡散器の必要性が低減される。他の照明オプションとは異なり、単純な電子技術により、輝度および色を調整することができる。
【0123】
さらに、本明細書中に記載されているOLED照明器具は、他の白色発光デバイスに比べて利点を有する。構造は、積重ね型電界発光層を伴うデバイスに比べてはるかに単純である。色の調整がより容易である。電界発光材料の蒸発によって形成されるデバイスの場合に比べて、材料利用率が高い。電界発光ポリマーを含めたあらゆるタイプの電界発光材料の使用が可能である。
【0124】
4.方法
OLED照明器具の製造方法は、
− 第1のパターン化された電極を上に有する基板を提供するステップと;
− 第1のピクセル化されたパターン内に第1の液体組成物を堆積させて第1の堆積された組成物を形成するステップであって、第1の液体組成物が第1の液体媒体中に第1の電界発光材料を含み、前記第1の電界発光材料が第1の発光色を有しているステップと;
− 第1のピクセル化されたパターンから側方に間隔を置いて配置されている第2のピクセル化されたパターン内に、第2の液体組成物を堆積させて第2の堆積された組成物を形成するステップであって、第2の液体組成物が第2の液体媒体中に第2の電界発光材料を含み、前記第2の電界発光材料が第2の発光色を有しているステップと;
− 第1および第2の堆積された組成物を乾燥させて第1および第2の複数の画素を形成するステップと;
− 全画素にわたり第2の電極を形成するステップと;
を含み、発光色の1つは青色、発光色の1つは赤−橙色である。
【0125】
連続技術および不連続技術を含めた、公知のあらゆる液体堆積技術を使用することができる。連続液体堆積技術の例としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティングおよび連続ノズルコーティングが含まれる。不連続堆積技術の例としては、インクジェット印刷、グラビア印刷およびスクリーン印刷が含まれる。
【0126】
乾燥ステップは、各色の堆積後、または全色の堆積後、またはその任意の組合せで行なうことができる。加熱、真空およびその組合せを含めた任意の従来の乾燥技術を使用することができる。一部の実施形態において、乾燥ステップは、部分的に乾燥した層を結果としてもたらす。一部の実施形態において、乾燥ステップが合わさって、本質的に完全に乾燥した層を結果としてもたらす。本質的に完全に乾燥した層をさらに乾燥しても、デバイスのそれ以上の性能変化がもたらされることはない。
【0127】
一部の実施形態において、乾燥ステップは、全色の堆積後に実施される。一部の実施形態において、乾燥ステップは多段階プロセスである。一部の実施形態において、乾燥ステップは、堆積された組成物を部分的に乾燥させる第1段階と、部分的に乾燥した組成物を本質的に完全に乾燥させる第2段階を有する。
【0128】
一部の実施形態において、この方法はさらに、化学的閉じ込め層の堆積を含む。「化学的閉じ込め層」という用語は、物理的バリヤ構造ではなく表面エネルギー効果により液体材料の展延を閉じ込めるまたは抑止するパターン化層を意味するように意図されている。「閉じ込められる」という用語は、層に言及している場合、層が堆積された部域を超えて有意に展延しないことを意味するように意図されている。「表面エネルギー」という用語は、材料からの単位面積表面を作り上げるのに必要なエネルギーである。表面エネルギーの特徴は、所与の表面エネルギーを有する液体材料が、より低い表面エネルギーを有する表面を濡らすことはないという点にある。
【0129】
一部の実施形態において、この方法は、基板として、パターン化ITOおよび金属母線を伴うガラス基板を使用する。基板は、個別の画素を画定するためにバンク構造も含んでいてよい。バンク構造は、標準的フォトリソグラフィ技術などの任意の従来の技術を用いて形成しパターン化することが可能である。水溶液から緩衝層をコーティングするためにスロットダイコーティングを使用することができ、それに続いて正孔輸送層のためにスロットダイコーターを通して第2のパスが行なわれる。これらの層は、全ての画素に共通であり、したがってパターン化されない。発光層は、ノズル印刷装置を用いてパターン化可能である。一部の実施形態において、画素は約40ミクロンの側方寸法をもつ縦列の形に印刷される。スロットダイプロセスのステップおよびノズル印刷は共に、標準的なクリーンルーム雰囲気内で実施され得る。次にデバイスは、電子輸送層および金属カソードの堆積のため、真空チャンバに輸送される。これが、真空チャンバ装置を必要とする唯一のステップである。最後に、照明器具全体は、以上で記述した通りの封入技術を用いて密閉される。
【0130】
一般的記述の中で前述した活動の全てが必要とされるわけではなく、具体的活動の一部分は必要とされないかもしれず、かつ記述されたものに加えて1つ以上のさらなる活動が実施されてよいという点に留意されたい。さらに、活動を列挙した順序は、必ずしもそれらの実施順序ではない。
【0131】
以上の明細書においては、具体的実施形態を参照しながら概念を説明してきた。しかしながら、当業者であれば、以下のクレームに記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を加えることができることを認識する。したがって、明細書および図面は、限定的ではなく例示的なものとみなされるべきものであり、このような修正は全て本発明の範囲内に含まれるよう意図されている。
【0132】
以上では、利益、他の利点および課題に対する解決法が具体的実施形態に関連して記述されてきた。しかしながら、これらの利益、利点、課題に対する解決法および任意の利益、利点または解決法を発生させるかまたはより顕著なものにするかもしれない任意の1つのまたは複数の特徴は、いずれかまたは全てのクレームの極めて重要な、所要のまたは本質的な特徴とみなすべきものではない。
【0133】
明確さを期して本明細書では別個の実施形態という状況で説明されているいくつかの特徴を単一の実施形態の形に組合せて提供してもよいということが認識されるべきである。逆に言うと、簡略化のために単一の実施形態という状況で説明されているさまざまな特徴を別個にまたは任意の下位組合せの形で提供してもよい。さらに、範囲の形で記された値に対する言及には、その範囲内のあらゆる値が含まれる。