(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726984
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンの包装
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20150514BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
B65D77/04 F
C01B33/02 E
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-225121(P2013-225121)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-122153(P2014-122153A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2013年10月31日
(31)【優先権主張番号】10 2012 223 192.7
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(72)【発明者】
【氏名】マティアス、フィーツ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ、リヒテネッガー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー、ペヒ
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−528955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
C01B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊の形態にあるポリシリコンを包装するための方法であって、
前記塊を第一プラスチックバッグに導入し、前記塊を導入した後、前記第一プラスチックバッグを第二プラスチックバッグに導入するか、又は前記第一プラスチックバッグへの前記塊の導入より前に前記第一プラスチックバッグを前記第二プラスチックバッグの中にすでに挿入し、その結果、前記塊を密封される二重バッグの中に存在させ、前記塊を導入した後、前記二重バッグ中の、前記2つのプラスチックバッグ中に存在する空気を、前記二重バッグの密封前に、前記二重バッグの総体積が前記塊の体積に対して2.4〜3.0の割合になるように除去する、方法。
【請求項2】
前記第一プラスチックバッグの前記総体積が前記塊の前記体積に対して2.0〜2.7の割合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一プラスチックバッグの寸法が、前記第一プラスチックバッグを形成するプラスチックフィルムが前記塊に密接に適合するような寸法である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
クランプ又はラム装置により、吸引装置により、又は真空チャンバにより、前記プラスチックバッグを圧縮することによって、空気を前記プラスチックバッグから除去する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記包装操作の際における相対空気湿度が30〜70%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記二重バッグにおける前記2つのプラスチックバッグのそれぞれを、空気を除去した後、溶接により個別に密封する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記二重バッグ中の前記2つのプラスチックバッグを、溶接により、共通の溶接継目により密封する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記塊を前記第一プラスチックバッグの中に導入し、続いて前記第一プラスチックバッグから空気を除去し、前記第一プラスチックバッグを密封し、前記第二プラスチックバッグの中に導入し、前記二重バッグを形成し、次いで前記第二プラスチックバッグから空気を除去し、前記第二プラスチックバッグを密封する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第一及び第二プラスチックバッグ及び前記第一プラスチックバッグ中に存在する塊の形態にあるポリシリコンを備える二重バッグであって、前記第一プラスチックバッグが前記第二プラスチックバッグの中に挿入されており、両方のプラスチックバッグが密封されており、前記二重バッグの総体積が、前記塊の体積に対して2.4〜3.0の割合である、二重バッグ。
【請求項10】
前記第一プラスチックバッグの総体積が、前記塊の体積に対して2.0〜2.7の割合である、請求項9に記載の二重バッグ。
【請求項11】
前記第一及び前記第二プラスチックバッグが溶接により密封され、かつ共通の溶接継目を有する、請求項9又は10記載の二重バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン(ポリシリコン)は、主としてハロシラン、例えばトリクロロシラン、からシーメンス法により堆積させ、次いで汚染を最小に抑えながら多結晶シリコン塊(チャンク)に粉砕する。
【0003】
半導体及びソーラー工業における用途には、汚染が最小レベルである塊状ポリシリコンが望ましい。従って、材料は、顧客に搬送する前に、やはり低汚染レベルで包装する必要がある。
【0004】
典型的には、塊状ポリシリコンはプラスチックバッグに包装する。
【0005】
塊状ポリシリコンは、鋭い角を持つ、自由に流れないバルク材料である。従って、包装の際には、詰める時に材料が通常のプラスチックバッグを貫通しないようにする必要があり、さもなくば、最悪の場合には、バッグが完全に破れてしまう。これを避けるために、先行技術は、様々な対策を提案している。例えば、米国特許出願公開第2010/154357A1号は、プラスチックバッグ中にエネルギー吸収手段を意図している。
【0006】
しかし、そのようなバッグの貫通は、包装中のみならず、顧客への搬送の際にも起こり得る。塊状ポリシリコンは、鋭い角を持ち、従って、バッグ中の塊の向きが好ましくない場合、塊とバッグフィルムの相対的な運動により、塊がフィルムを切断するか、又はバッグフィルムに対する塊の圧力により、塊がフィルムを貫通する。
【0007】
バッグ包装から突き出た塊状ポリシリコンは、周囲の物質により直接、及び周囲空気が流れ込むために内側にある塊が、許容できない程度に汚染されることがある。
【0008】
その上、包装した塊を輸送する時、好ましくない後粉砕が起こる。
【0009】
後粉砕は、特に形成される微粉画分が顧客にとって劣った操作性能につながることが分かっているので、好ましくない。そのため、微粉画分は、顧客が、さらに処理する前に、再び篩にかけて除去しなければならず、これは不利である。
【0010】
この問題は、粉砕し、分類した、及び清浄にした、及び清浄にしていないシリコンに、包装のサイズ(典型的には、5又は10kgのポリシリコンを含むバッグ)に関係なく、等しく適用される。
【0011】
米国特許出願公開第2010/154357A1号は、密封する際に、10〜700mbarの真空が生じるまで、空気を吸引することを提案している。
【0012】
米国特許出願公開第2012/198793A1号は、低空気含有量を含む平らなバッグが得られるまで、溶接前に、空気をバッグから外に吸引することを開示している。
【0013】
これらの対策は、貫通を防止するのには不適当である。
【0014】
このことが、本発明の目的を生じたのである。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、塊の形態にあるポリシリコンを包装するための方法であって、前記塊を第一プラスチックバッグに導入し、前記塊を導入した後、前記第一プラスチックバッグを第二プラスチックバッグに導入するか、又は前記第一プラスチックバッグへの前記塊の導入より前に前記第一プラスチックバッグを前記第二プラスチックバッグの中にすでに挿入し、その結果、前記塊を密封される二重バッグの中に存在させ、前記塊を導入した後、前記二重バッグ中の、前記2つのプラスチックバッグ中に存在する空気を、前記二重バッグの密封前に、前記二重バッグの総体積が前記塊の体積に対して2.4〜3.0の割合になるように除去する、方法により達成される。
【0016】
好ましくは、二重バッグにおける2つのプラスチックバッグのそれぞれを、空気を除去した後、溶接により個別に密封する。
【0017】
二重バッグ中の2つのプラスチックバッグを溶接により、共通の溶接継目により密封するのも等しく好ましい。
【0018】
好ましくは、塊を第一プラスチックバッグの中に導入し、続いて第一プラスチックバッグから空気を除去し、第一プラスチックバッグを密封し、第二プラスチックバッグの中に導入し、二重バッグを形成し、次いで第二プラスチックバッグから空気を除去し、そのバッグを密封する。
【0019】
この目的は、第一及び第二プラスチックバッグ及び第一プラスチックバッグ中に存在する塊の形態にあるポリシリコンを備えてなる二重バッグであって、第一プラスチックバッグが第二プラスチックバッグの中に挿入されており、両方のプラスチックバッグが密封されており、二重バッグの総体積が、塊の体積に対して2.4〜3.0の割合である、二重バッグによっても達成される。
【0020】
好ましくは、第一バッグの総体積は、塊の体積に対して2.0〜2.7の割合である。
【0021】
好ましくは、第一バッグの寸法は、プラスチックフィルムがシリコン塊に密接に適合するような寸法である。その結果、塊同士の間で相対的な運動を回避することができる。
【0022】
プラスチックバッグは、好ましくは高純度プラスチックからなる。プラスチックは、好ましくはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)もしくは複合材料フィルムである。複合材料フィルムは、たわみ性包装物が作られる多層包装フィルムである。個々のフィルム層は、典型的には押出し又はラミネート加工されている。
【0023】
プラスチックバッグは、好ましくは厚さが10〜1000μmである。
【0024】
プラスチックバッグは、例えば溶接、接着、裁縫又はポジティブロッキングにより密封される。プラスチックバッグの密封は好ましくは溶接により行う。
【0025】
包装したバッグの体積を測定するには、バッグを水盤の中に浸漬する。
【0026】
排除された水は、バッグの総体積(V
tot)に相当する。
【0027】
シリコンの重量を、超純粋シリコンの一定密度(2.336g/cm
3)と共に使用し、シリコンの体積(V
si)を決定する。
【0028】
あるいは、シリコンの体積は、浸漬方法によっても同様に測定できる。
【0029】
表1は、空気の吸引を行わない包装、米国特許出願公開第2010/154357A1号による先行技術の包装及び簡単な方法で包装した2種類のバッグに関する、比V
tot/V
si及び貫通及び微粉生成に関する定性結果を示す。
【0030】
包装フィルムの貫通及び好ましくない微粉の形成は、標準的な輸送シミュレーション(トラック/列車/船)後に測定した。
【0031】
バッグ1は、サイズ4〜15mmの塊で満たした。
【0032】
バッグ2は、サイズ45〜120mmの塊で満たした。
【0033】
サイズ区分は、シリコン塊の表面上の2点間の最長距離として定義する(最大長さ)。
【0035】
バッグ1及び2は、さらなる試験(二重バッグ)で第二バッグに溶接した。
【0036】
表2は、空気吸引を行わない二重バッグ包装に関する、及び2種類の本発明の例に関する、比V
tot/V
si及び貫通及び微粉の生成に対する定性結果を示す。
【0038】
主要バッグに関して、目的は、2.0〜2.7、好ましくは2.0〜2.4の比V
tot/V
siを得ることである。
【0039】
従って、驚くべきことに、微粉及び貫通の無い包装を製造することができる。
【0040】
内側及び外側バッグ中に包装したシリコンに関して、2.40〜3.0のV
tot/V
siが不可欠である。
【0041】
空気は、シリコンを詰めたプラスチックバッグから、様々な方法により除去できる。
−手作業で圧迫し、続いて溶接
−クランプ又はラム装置、続いて溶接
−吸引装置、続いて溶接
−真空チャンバ、続いて溶接
【0042】
包装の際における周囲条件は、好ましくは温度18〜25℃である。相対空気湿度は、好ましくは30〜70%である。
【0043】
その結果、凝縮水の形成を回避できることが分かった。
【0044】
好ましくは、さらに空気を濾過した環境中で包装を行う。