(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727042
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】車両用のブレーキシステムおよび車両用のブレーキシステムの作動方法
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20150514BHJP
B60T 11/18 20060101ALI20150514BHJP
B60T 11/16 20060101ALI20150514BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
B60T13/74 Z
B60T11/18
B60T11/16 Z
B60T8/17 B
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-549734(P2013-549734)
(86)(22)【出願日】2011年11月23日
(65)【公表番号】特表2014-506538(P2014-506538A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2011070762
(87)【国際公開番号】WO2012097902
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】102011002966.4
(32)【優先日】2011年1月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】バウマン,ディートマール
【審査官】
城臺 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/121645(WO,A1)
【文献】
特開2006−076564(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/091883(WO,A1)
【文献】
特開2007−284007(JP,A)
【文献】
特開2003−137084(JP,A)
【文献】
特開2006−151342(JP,A)
【文献】
特表2004−528214(JP,A)
【文献】
特開2002−211386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12−8/1769
B60T8/32−8/96
B60T13/00−13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のブレーキシステムであって、
ブレーキ操作部材(10)と;
第1ピストン(12)を備える操作部材・連結装置(14)であって、前記第1ピストン(12)が、前記ブレーキ操作部材(10)の操作によって前記操作部材・連結装置(14)の第1内部チャンバ(16)内へ少なくとも部分的に変位可能となるように、前記ブレーキ操作部材(10)に配置されている操作部材・連結装置(14)と、
第2ピストン(22)を備えるブレーキマスタシリンダ(20)であって、前記ブレーキシステムが、少なくとも運転手ブレーキモードで作動可能であり、該運転手作動モードでは、前記第1ピストン(12)に伝達された運転手ブレーキ力が前記第2ピストン(22)に少なくとも部分的に伝達可能であり、これにより、前記第2ピストン(22)が、初期位置から前記ブレーキマスタシリンダ(20)の第2内部チャンバ(26)内へ少なくとも部分的に変位可能であるブレーキマスタシリンダ(20)と;
ブレーキ媒体リザーバ(30)であって、該ブレーキ媒体リザーバ(30)が、前記第2ピストン(22)が初期位置に位置する場合に前記第2内部チャンバ(26)に液圧接続されており、前記第2ピストン(22)が最小変位ストローク分だけ変位された場合に前記ブレーキ媒体リザーバ(30)と前記第2内部チャンバ(26)との間の液圧接続部(32)が遮断されているブレーキ媒体リザーバ(30)と;
前記ブレーキマスタシリンダ(20)に配置された少なくとも1つの第1ブレーキ回路(34)であって、少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)および少なくとも1つの第1ポンプ(38)を備える第1ブレーキ回路(34)と
を備える車両用のブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムが、運転手ブレーキモードから少なくとも外力ブレーキモードに制御可能であり、該外力ブレーキモードでは、前記第1ピストン(12)に伝達された運転手ブレーキ力にもかかわらず前記第2ピストン(22)が最小変位ストローク分だけ変位されることが阻止されており、少なくとも1つの前記第1ポンプ(38)によって、ブレーキ媒体容積が前記ブレーキ媒体リザーバ(30)から前記ブレーキマスタシリンダ(20)を介して少なくとも1つの前記車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)内へ圧送可能であることを特徴とする車両用のブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムが、第1弁(52)によって、少なくとも運転手ブレーキモードから外力ブレーキモードへ、および外力モードから運転手ブレーキモードへ制御可能であるブレーキシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムがシミュレータばね(64)を備え、該シミュレータばね(64)に、前記ブレーキシステムの第1シミュレーションモードで前記第1ピストン(12)に伝達された運転手ブレーキ力が伝達可能であり、これにより、前記シミュレータばね(64)が運転手ブレーキ力によって変形可能であり、前記ブレーキシステムが、前記第1シミュレーションモードから第2シミュレーションモードへ制御可能であり、該第2シミュレーションモードで、前記シミュレータばね(64)が延伸された状態で提供されている場合に、前記第1ピストン(12)が、前記操作部材・連結装置(14)の前記第1内部チャンバ(16)内へ少なくとも部分的に変位可能である、ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキシステムにおいて、
該ブレーキシステムが、第2弁(58)によって、少なくとも前記第1シミュレーションモードから前記第2シミュレーションモードへ、および前記第2シミュレーションモードから前記第1シミュレーションモードへ制御可能であるブレーキシステム。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
前記第1弁(52)が、非通電状態で開かれた弁であり、および/または前記第2弁(58)が、非通電時に閉じられた弁であるブレーキシステム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記ブレーキシステムが制御装置を含み、該制御装置が次のように設計されている:少なくとも運転手ブレーキモードから外力ブレーキモードへ、および外力ブレーキモードから運転手ブレーキモードへ前記ブレーキシステムを制御し、センサ(18,53)によって供給されたブレーキ操作部材の操作に関する操作変数を受信し、少なくとも受信した該操作変数を考慮して、少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)内へ移動すべき目標ブレーキ媒体容積を決定し、前記外力ブレーキモードへ制御された前記ブレーキシステムの少なくとも1つの前記第1ポンプ(38)を制御し、これにより、少なくとも1つの前記第1ポンプによって、前記ブレーキ媒体リザーバ(30)から前記ブレーキマスタシリンダ(20)を介して少なくとも1つの前記第1車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)内へ、前記目標ブレーキ媒体容積に対応したブレーキ媒体容積が圧送されるように設計されているブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
該ブレーキシステムが、付加的にダイナミックブレーキモードへ制御可能であり、該ダイナミックブレーキモードでは、前記第1ピストン(12)に伝達された運転手ブレーキ力が前記第2ピストン(22)に少なくとも部分的に伝達可能であり、これにより、前記第2ピストン(22)が、初期位置から前記ブレーキマスタシリンダ(20)の前記第2内部チャンバ(26)内へ少なくとも部分的に変位可能であり、前記少なくとも1つの前記第1ポンプ(38)または少なくとも1つの別のポンプ(174a)によって、前記少なくとも1つのブレーキ回路(34)の蓄圧チャンバ(180a)から少なくとも1つの前記第1車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)内へ、追加ブレーキ媒体容積が圧送可能であるブレーキシステム。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
前記第1ポンプ(38)の流入側から前記ブレーキマスタシリンダまでの流入管路長さが、25cm未満であるブレーキシステム。
【請求項9】
請求項2から8までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
前記操作部材・連結装置(14)の前記第1内部チャンバ(16)が、前記第1弁(52)を介して前記ブレーキマスタシリンダ(20)の第1圧力チャンバ(54)に接続されており、前記ブレーキマスタシリンダ(20)の前記第2ピストン(22)が、前記第2内部チャンバ(26)および前記第1圧力チャンバ(54)を区切るブレーキシステム。
【請求項10】
請求項3から8までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
前記操作部材・連結装置(14)が、前記第1内部チャンバ(16)および前記第2圧力チャンバ(14)を区切る変位可能な内部ピストン(162)を含み、該内部ピストン(162)が、前記シミュレータばね(64)を介して前記第1ピストン(12)によって支持され、前記ブレーキマスタシリンダ(20)の前記第2ピストン(22)が、第2内部チャンバ(26)および第1圧力チャンバ(54)を区切り、前記第1ピストン(12)に伝達された前記運転手ブレーキ力が前記内部ピストン(162)を介して前記第2ピストン(22)に少なくとも部分的に伝達可能であるように前記内部ピストン(162)に配置されており、第2圧力チャンバ(160)が、第1弁(52)を介して前記第1圧力チャンバ(54)に接続されているブレーキシステム。
【請求項11】
請求項4から9までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
シミュレータばね(64)を配置した前記第1内部チャンバ(16)が、前記第2弁(58)を介して前記ブレーキ媒体リザーバ(30)に接続されているブレーキシステム。
【請求項12】
請求項4から9までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
前記第1内部チャンバ(16)が、前記第2弁(58)を介して、シミュレータチャンバ(66)および該シミュレータチャンバ(66)に配置されたシミュレータばね(64)を備える別のピストン・シリンダユニット(60)の予備チャンバ(62)に接続されているブレーキシステム。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載のブレーキシステムにおいて、
該ブレーキシステムが、前記ブレーキマスタシリンダ(20)に配置された少なくとも1つの第2ブレーキ回路(40)を含み、該第2ブレーキ回路が、少なくとも1つの第2車輪ブレーキシリンダ(36b,42b)および少なくとも1つの第2ポンプ(44)を備え、前記ブレーキシステムが1つのみのポンプモータ(128)を備え、該ポンプモータのシャフト(130)に、前記ブレーキシステムの少なくとも2つのポンプ(38,44,174a,174b)が配置されているブレーキシステム。
【請求項14】
車両用のブレーキシステムの作動方法であって、
該ブレーキシステムが、
操作部材(10)と;
第1ピストン(12)を備える操作部材・連結装置(14)であって、前記第1ピストン(12)が、前記ブレーキ操作部材(10)が操作された場合に前記操作部材・連結装置(14)の第1内部チャンバ(16)内へ少なくとも部分的に変位される操作部材・連結装置(14)と、
第2ピストン(22)を備えるブレーキマスタシリンダ(20)と;
ブレーキリザーバ(30)であって、該ブレーキ媒体リザーバ(30)が、前記第2ピストン(22)が初期位置に位置する場合に前記ブレーキマスタシリンダ(20)の第2内部チャンバ(26)に液圧接続されており、前記第2ピストン(22)が最小変位ストローク分だけ変位された場合に前記ブレーキ媒体リザーバ(30)と前記第2内部チャンバ(26)との間の液圧接続部(32)が遮断されているブレーキ媒体リザーバ(30)と;
前記ブレーキマスタシリンダ(20)に配置された少なくとも1つの第1ブレーキ回路(34)であって、少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)および少なくとも1つの第1ポンプ(38)を備える第1ブレーキ回路(34)と
を備え、次のステップ:
前記ブレーキシステムが運転手ブレーキモードで作動され、該運転手ブレーキモードで、前記第1ピストン(12)に加えられた運転手ブレーキ力が前記第2ピストン(22)に伝達され、これにより、該第2ピストン(22)が、初期位置から前記ブレーキマスタシリンダ(20)の第2内部チャンバ(26)内へ少なくとも部分的に変位されるステップを備える車両用のブレーキシステムの作動方法において、
前記第1ピストン(12)に加えられた運転手ブレーキ力にもかかわらず、最小変位ストローク分だけ前記第2ピストン(22)が変位されることを阻止することによって、前記ブレーキシステムを運転手ブレーキモードから少なくとも外力ブレーキモードへ制御するステップと;
前記ブレーキ操作部材(10)の操作に関する操作変数を検出するステップと;
検出された前記操作変数を考慮して、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)内へ移動されるべき目標ブレーキ媒体容積を決定するステップと;
少なくとも1つの前記第1ポンプ(38)を制御し、これにより、少なくとも1つのポンプ(38)によって、前記目標ブレーキ媒体容積に相当するブレーキ媒体容積を前記ブレーキ媒体リザーバ(30)から前記ブレーキマスタシリンダ(20)を介して少なくとも1つの前記車輪ブレーキシリンダ(36a,42a)内へ圧送するステップを含むことを特徴とする車両用のブレーキシステムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキシステムに関する。さらに本発明は、車両用のブレーキシステムの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ国特許出願公開第102004025638号明細書には、自動車用のブレーキ装置が記載されている。このブレーキ装置の第1ピストンは、ブレーキペダルが操作された場合に、第2ピストンによって包囲された内部チャンバ内へ弾性部材によって変位可能である。第2ピストンが第1ピストンと共に変位されることによって、マスタシリンダの第3ピストンに圧力が加えられる。第2ピストンを介して第3ピストンに伝達される圧力によって車両運転手がブレーキマスタシリンダ内へ直接的にブレーキをかけることに対して代替的に、圧力媒体貯蔵タンクおよび圧力媒体貯蔵タンクを充填するための第1ポンプを備える液圧供給モジュールを介して、第2ピストンと第3ピストンとの間の中間スペースに圧力が蓄積可能である。蓄積された圧力によって、第3ピストンは少なくとも部分的にブレーキマスタシリンダ内に変位可能であり、第2ピストンはブレーキマスタシリンダから外側に変位可能である。ブレーキマスタシリンダには、それぞれ第2ポンプおよび第3ポンプを備える2つのブレーキ回路が配置されている。したがって、このブレーキ装置は、第1ポンプを作動するための第1ポンプモータと、第2および第3ポンプを作動するための第2ポンプモータとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102004025638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、請求項1に記載の特徴を備える車両用のブレーキシステムおよび請求項14に記載の特徴を備えるブレーキシステムの作動方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
「通常モード」として使用可能な外力ブレーキモードでは、運転手によってブレーキ操作部材、例えばブレーキペダルに加えられる力は、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内にブレーキ圧を形成するために必要とされないので、ブレーキシステムにブレーキブースタを設ける必然性がなくなる。したがって、例えば、ブレーキシステムにおいてブレーキブースタおよび真空ポンプを省略することができる。これにより、ブレーキシステムの所要構成スペースおよびコストが低減される。
【0006】
本発明は、少なくとも1つの第1ブレーキ回路の、還流ポンプとしても使用可能な少なくとも1つの第1ポンプによって少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内にブレーキ圧が形成されることを保障する。これにより、ブレーキシステムの所要構成スペースおよびコストがさらに低減される。
【0007】
通常はブレーキシステムが作動可能である運転手ブレーキモードでは、運転手は、全てのシステム機能において少なくとも1つの第1ポンプの操作からエネルギー的に分離されているので、少なくとも1つの第1ポンプのためには、安価なポンプタイプ、例えば、往復ピストンポンプを使用することができる。さらに少なくとも1つの第1ポンプを還流ポンプまたはブレーキ圧減衰ポンプとして使用した場合には、運転手はブレーキマスタシリンダから分離されている。したがって、ブレーキ操作部材による駆動系のポンプ操作は運転手によって感知されない。このように、一様なポンプ圧送流量が提供されていない場合にもブレーキ操作部材を操作した場合に運転手にとって好ましい快適性が保障されている。
【0008】
真空ブレーキブースタを備えるESP液圧装置とは反対に、ここに記載のブレーキシステムは1つのみのポンプモータを必要とする。さらに、唯一のポンプモータに加えて他の電動モータをブレーキ力増幅のために用いる必要はない。
【0009】
液圧装置および操作ユニットの統合により、還流ポンプとして操作可能な少なくとも1つの第1ポンプは、ブレーキマスタシリンダおよびブレーキ媒体リザーバ(貯蔵タンク)に対して比較的わずかな間隔をおいて配置可能である。これにより、少なくとも1つの第1ポンプとブレーキマスタシリンダとの間の流入管路を、比較的短い流入管路長さで構成することができる。これにより、特に低温時に、付加的構成部材なしに、高い圧力形成動力が可能となる。
【0010】
以下に詳述するように、全部で8個の接続箇所(固定部)のみを備える簡単な管ガイド(配管システム)が実施可能である。これにより、車両へのブレーキシステムの組込みが安価に、簡単に実施可能であることが保障される。
【0011】
好ましくは、ブレーキシステムは、第1弁によって少なくとも運転手ブレーキモードから外力ブレーキモードへ、および外力ブレーキモードから運転手ブレーキモードへ制御可能である。したがって、第1ピストンに伝達された運転手ブレーキ力にもかかわらず、最小変位ストローク分だけ第2ピストンが変位されることを阻止するために安価な弁を使用することができる。
【0012】
有利な実施形態では、ブレーキシステムはシミュレータばねを備え、このシミュレータばねには、ブレーキシステムの第1シミュレーションモードで、第1ピストンに伝達された運転手ブレーキ力が伝達可能であり、これにより、シミュレータばねは運転手ブレーキ力によって変形可能であり、この場合、ブレーキシステムは、第1シミュレーションモードから第2シミュレーションモードへ制御可能であり、この第2シミュレーションモードでは、シミュレータばねが延伸された状態で提供されている場合に/提供されているにもかかわらず、第1ピストンが操作部材・連結装置の第1内部チャンバ内へ少なくとも部分的に変位可能である。したがって、シミュレータばねを介して、第1シミュレーションモードでは、第1ピストンの内側への変位に反作用する付加的なシミュレータ力をブレーキ操作部材に加えることができ、このシミュレータ力は第2シミュレーションモードではなくなる。したがって、ブレーキシステムを第1シミュレーションモードへ制御することによって、外力ブレーキモードで、ブレーキマスタシリンダおよび少なくとも1つの第1ブレーキ回路に生じた圧力によるブレーキ操作部材への反作用が阻止されているにもかかわらず、運転手にとって好ましい(標準的な)ペダル感覚を実現することができる。同様に、第2シミュレーションモードへのブレーキシステムの制御によって、運転手ブレーキモードで、運転手がブレーキ操作部材に比較的わずかな力を加えた場合に既に少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ内にブレーキ圧が形成されることを保障することができる。
【0013】
好ましくは、ブレーキシステムは、第2弁によって、少なくとも第1シミュレーションモードから第2シミュレーションモードへ、および第2シミュレーションモードから第1シミュレーションモードへ制御可能である。これにより、ブレーキシステムが安価に形成されることが保障される。同時に、第1弁および第2弁を共に使用することにより、ブレーキシステムの簡単な作動性が保障される。
【0014】
好ましくは、第1弁は、非通電状態で開かれた弁であり、第2弁は、非通電状態で閉じられた弁である。この場合、ブレーキシステムは、車載システムの機能が損傷された場合にブレーキシステムの運転手ブレーキモードおよび第2シミュレーションモードへ自動制御される。
【0015】
有利な実施形態では、ブレーキシステムは制御装置を含み、この制御装置は、少なくとも運転手ブレーキモードから外力ブレーキモードへ、および外力ブレーキモードから運転手ブレーキモードへブレーキシステムを制御し、センサによって供給されたブレーキ操作部材の操作に関する操作変数を受信し、少なくともこの受信した操作変数を考慮して、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内へ移動すべき目標ブレーキ媒体容積を決定し、外力ブレーキモードへ制御されたブレーキシステムの少なくとも1つの第1ポンプを制御し、これにより、少なくとも1つの第1ポンプによって、目標ブレーキ媒体容積に対応したブレーキ媒体容積がブレーキ媒体リザーバからブレーキマスタシリンダを介して少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ内へ圧送されるように設計されている。このことは、運転手によって規定された目標車両減速度に対応して車両が制動されることを保障する。外力ブレーキモードでは、運転手によるブレーキ操作部材の操作に関係した操作変数、例えば、ブレーキ圧および/またはブレーキストロークを少なくとも考慮して、少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ内に圧送されるべき目標ブレーキ媒体容積を決定することができる。補足的に、この制御装置は、回生ブレーキ、特に発電機から車両の少なくとも1つの車輪に加えられる回生ブレーキトルクを付加的に考慮して目標ブレーキ媒体容積を決定するように設計されていてもよい。したがって、制御装置によって、回生ブレーキトルクを簡単に補完することができ、この場合、運転手によって規定された目標車両減速度を保持することができる。
【0016】
しかしながら、ここに記載のブレーキシステムの用途は、電気自動車またはハイブリッド車に制限されていない。例えば、少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ内で移動すべきブレーキ媒体容積は、運転支援システム(例えば、ACC、非常ブレーキシステムまたはアクティブパーキングアシスト)によって車両の目標総ブレーキトルクに関して規定されたブレーキ変数を考慮して決定することができる。したがって、ここに記載のブレーキシステムは、運転支援システム、例えば、ACCシステム、非常ブレーキシステムまたはアクティブパーキングアシストとの協働のためにも特に適している。
【0017】
有利な実施形態では、ブレーキシステムは、付加的にダイナミックブレーキモードで制御可能であり、このダイナミックブレーキモードでは、第1ピストンに伝達された運転手ブレーキ力が第2ピストンに少なくとも部分的に伝達可能であり、これにより、第2ピストンは、初期位置から少なくとも部分的にブレーキマスタシリンダの第2内部チャンバ内へ変位可能であり、少なくとも1つの第1ポンプまたは少なくとも1つの別のポンプによって、追加ブレーキ媒体容積が少なくとも1つのブレーキ回路の蓄圧チャンバから少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内へ圧送可能である。このように、車両はより迅速に制動可能であり、特により迅速に停止に移行可能である。ダイナミックブレーキモードへのブレーキシステムの制御は、ブレーキストローク、ブレーキストローク変化、ブレーキ力、ブレーキ力変化、周辺状況および/または車両構成部品状態を考慮して行うことができる。したがって、特にブレーキ操作部材を強度に操作した場合、ブレーキ操作部材を急激に操作した場合、車両構成部品の機能が損傷された場合および/または車両の迅速な制動を促す交通状態において、比較的短時間で確実に車両を制動することができる。
【0018】
有利には、第1ポンプの流入側からブレーキマスタシリンダまでの流入管路長さは、25cm未満、好ましくは、20cm未満、特に15cm未満である。流入管路長さは、好ましくは、10cm未満であってもよい。このようにして、高い圧力形成動力が実施可能である。
【0019】
有利な実施形態では、操作部材・連結装置の第1内部チャンバは、第1弁を介してブレーキマスタシリンダの第1圧力チャンバに接続されており、ブレーキマスタシリンダの第2ピストンは、第2内部チャンバおよび第1圧力チャンバを区切る。これにより、開かれた第1弁を介して得られた液圧接続によって、第2ピストンに運転手ブレーキ力を確実に伝達することができる。
【0020】
別の有利な実施形態では、操作部材・連結装置は、第1内部チャンバおよび第2圧力チャンバを区切る移動可能な内部ピストンを含み、この内部ピストンは、シミュレータばねを介して第1ピストンによって支持され、ブレーキマスタシリンダの第2ピストンは、第1内部チャンバおよび第1圧力チャンバを区切り、第1ピストンに伝達された運転手ブレーキ力が少なくとも部分的に内部ピストンを介して第2ピストンに伝達可能であるように内部ピストンに配置されており、第2圧力チャンバは、第1弁を介して第1圧力チャンバに接続されている。したがって、第1弁の閉鎖により、第2ピストンによって区切られた予備チャンバの体積拡大、ひいては最小ストローク分だけ第2ピストンが変位されることが確実に阻止される。
【0021】
これに対して代替的または補足的に、シミュレータばねを配置した第1内部チャンバは、第2弁を介してブレーキ媒体リザーバに接続されていてもよい。この場合、第2弁が閉じられた状態に制御されている場合には、第1内部チャンバの体積縮小、ひいては第1内部チャンバ内に配置されたシミュレータばねの変形を確実に防止することができる。
【0022】
代替的には、第1内部チャンバは第2弁を介して、シミュレータチャンバおよびシミュレータチャンバ内に配置されたシミュレータばねを備える別のピストン・シリンダユニットの予備チャンバに接続されていてもよい。この場合、第2弁が開かれた状態に制御されていることにより予備チャンバの体積が増大され、予備チャンバおよびシミュレータばねを備えるシミュレータチャンバを区切る分離部材が、シミュレータばねが変形もしくは圧縮されるように移動可能である。
【0023】
有利には、ブレーキシステムは、ブレーキマスタシリンダに配置された少なくとも1つの第2ブレーキ回路を含み、第2ブレーキ回路は、少なくとも1つの第2車輪ブレーキシリンダおよび少なくとも1つの第2ポンプを備え、この場合、ブレーキシステムは1つのみのポンプモータを備え、このポンプモータのシャフトには、ブレーキシステムの少なくとも2つのポンプが配置されている。したがって、従来技術とは反対に、ここに記載のブレーキシステムは、外力ブレーキモードに制御されたブレーキシステムが制動された場合に運転手が力および作業から解放されるにもかかわらず、1つのみのモータを必要とし、他のブレーキブースタ・モータを必要としない。これにより、ブレーキシステムのための所要構成スペースおよびコストが低減される。
【0024】
上記利点は、車両用ブレーキシステムを作動するための対応した方法においても保障されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ブレーキシステムの第1実施形態を示す概略図である。
【
図2】ブレーキシステムの第2実施形態を示す部分概略図である。
【
図3】ブレーキシステムの第3実施形態を示す部分概略図である。
【
図4】ブレーキシステムの第4実施形態を示す部分概略図である。
【
図5】ブレーキシステムの第5実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ブレーキシステムの第1実施形態を示す概略図を示す。
【0027】
車両で使用可能な
図1のブレーキシステムは、例えばブレーキペダルとして形成されたブレーキ操作部材10を備える。しかしながら、ブレーキペダルとして形成されたブレーキ操作部材10に対して代替的または補足的に、ブレーキシステムは、車両を制動するために運転手が操作可能な他の実施形態の操作部材を備えていてもよい。
【0028】
操作部材・連結装置14の第1ピストン12は、ブレーキ操作部材10の操作によって第1ピストン12が操作部材・連結装置14の第1内部チャンバ16内へ少なくとも部分的に変位可能となるように、ブレーキ操作部材10に配置されている。第1内部チャンバ16に配置された戻しばね17によって、ブレーキ操作部材10の非操作時には第1ピストン12が初期位置に位置することを保障することができる。
【0029】
随意に、センサ18がブレーキ操作部材10および/または第1ピストン12に配置されており、このセンサ18によって、ブレーキ操作部材10および/または第1ピストン12の操作ストロークおよび/またはブレーキ操作部材10および/または第1ピストン12に加えられた力が検出可能である。好ましい実施形態では、センサ18はブレーキ力センサおよび/またはブレーキストロークセンサとして形成されている。しかしながら、ブレーキシステムはこのようなセンサ18を取り付けることに限定されていない。例えば、圧力センサとして形成されたセンサ18によって、ペダル力のための代替変数として第1内部チャンバ16内の圧力を検出することもできる。
【0030】
ブレーキシステムは、第2ピストン22、例えば浮動ピストンを有するブレーキマスタシリンダ20も備えている。ブレーキマスタシリンダ20は、特にタンデム式ブレーキマスタシリンダとして形成されていてもよい。この場合、別のピストン24が、第2ピストン22と共に変位可能に第2ピストン22に結合されている。タンデム式ブレーキマスタシリンダの代わりに、ブレーキシステムは別のタイプのブレーキマスタシリンダ20を備えていてもよい。
【0031】
ブレーキシステムは運転手ブレーキモードで作動可能であり、運転手ブレーキモードでは、第1ピストン12に伝達された運転手ブレーキ力が第2ピストン22に少なくとも部分的に伝達可能であり、これにより、第2ピストン22は、初期位置からブレーキマスタシリンダ20の第2内部チャンバ26内へ少なくとも部分的に変位可能となる。ブレーキマスタシリンダ20がタンデム式ブレーキマスタシリンダである場合には、第2ピストン22と共に変位可能な別のピストン24は、初期位置からブレーキマスタシリンダ20の別の内部チャンバ28内へ少なくとも部分的に変位可能である。それぞれの初期位置は、運転手によりブレーキ操作部材10が操作されていない場合に第2ピストン22および/または第2ピストン24が位置する位置として理解することができる。これは、戻しばね27および29によって、簡単に保障することができる。
【0032】
貯蔵タンクとも呼ぶことのできるブレーキ媒体リザーバ30は、第2ピストン22(および別のピストン24)が初期位置に位置する場合に第2内部チャンバ26(および別の内部チャンバ28)に液圧接続されている。このことは、第2ピストン22(および別のピストン24)が初期位置に位置する場合に、ブレーキ媒体リザーバ30と第2内部チャンバ26(および別の内部チャンバ28)との間のブレーキ媒体交換が液圧接続を介して保障されていることとして理解することができる。ブレーキ媒体リザーバ30と第2内部チャンバ26との間、場合によってはブレーキ媒体リザーバ30と別の内部チャンバ28との間の液圧接続は、第2ピストン22もしくは別のピストン24が最小変位ストローク分だけ変位された場合に阻止される。ここでいう阻止とは、シールおよび/または閉鎖として理解することができる。これは、例えば、少なくとも1つの流入孔32を介してブレーキマスタシリンダ20とブレーキ媒体リザーバ30との間に液圧接続を実施することによって簡単に実施可能である。
【0033】
ブレーキシステムは、ブレーキマスタシリンダ20に配置された少なくとも1つの第1ブレーキ回路34を有し、このブレーキ回路34は、少なくとも1つの第1車輪ブレーキシリンダ36aおよび42aならびに少なくとも1つの第1ポンプ38を備える。随意に、ブレーキシステムは、さらにブレーキマスタシリンダ20に配置された少なくとも1つの第2ブレーキ回路40を有し、第2ブレーキ回路40は、少なくとも1つの第2車輪ブレーキシリンダ36bおよび42bおよび少なくとも1つの第2ポンプ44を備える。しかしながら、ブレーキシステムは、2つのブレーキ回路34および40を備えているものに限定されていない。
【0034】
それぞれ1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42bによって、それぞれ1つの車輪46a,46b,48aおよび48bが制動可能であってもよい。例えば、第1ブレーキ回路34に割り当てられた車輪46aおよび48aは、左前輪および右後輪として車両に配置されていてもよいし、第2ブレーキ回路40に割り当てられた車輪46bおよび48bは、右前輪および左後輪として用いられる。しかしながら、ここに記載のブレーキシステムはX型配管方式のブレーキ回路に限定されていない。むしろ、ブレーキ回路34または40に割り当てられた車輪は、共通の車軸に(前輪または後輪)として配置されていてもよい。同様に、ブレーキ回路34または40に割り当てられた車輪は、車両の一方側に配置されていてもよい。ここに記載のブレーキシステムは、ちょうど4つの車輪46a,46b,48aおよび48bを有する車両における使用に制限されていない。
【0035】
運転手ブレーキモードでは、運転手は、ブレーキ操作部材10の操作によって得られるマスタブレーキシリンダ20内の圧力形成によって、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42bに直接にブレーキをかける。付加的に、ブレーキシステムは、運転手ブレーキモードから少なくとも外力ブレーキモードへ制御可能である。外力ブレーキモードでは、第2ピストン22(および別のピストン24)が最小変位ストローク分だけ変位されることが、第1ピストン12に伝達された運転手ブレーキ力にもかかわらず阻止されている。このことは、ブレーキ操作部材10が操作され、これにより第1ピストン12が初期位置から変位された場合にも、少なくとも第2ピストン22(および別のピストン24)が初期位置から少なくとも変位ストローク分の変位ストロークだけ共に変位されることが阻止されていることと換言できる。したがって、ブレーキシステムが外力ブレーキモードへ制御された場合、ブレーキ操作部材10が操作され、第1ピストン12が共に変位されたにもかかわらず、ブレーキ媒体リザーバ30とブレーキマスタシリンダ20との間の液圧接続部が少なくとも部分解放されて、好ましくは開かれた状態であることが保障されている。さらに、ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキ回路34および40は、少なくとも1つのポンプ38および44によってブレーキ媒体リザーバ30のブレーキ媒体容積(所定容積のブレーキ媒体)がブレーキマスタシリンダ20を介して少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内へ圧送可能となるように設計されている。ブレーキシステムは、2つの等しく構成されたブレーキ回路34および40によって比較的簡単な構成を備えていてもよい。しかしながら、ブレーキシステムの構成は、2つのブレーキ回路34および40を類似に構成することに限定されていない。
【0036】
したがって、ブレーキシステムを外力ブレーキモードへ制御した後、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内に提供されるブレーキ圧は、運転手によってブレーキ操作部材10に加えられる力を用いることなしに、形成可能/調節可能である。これにより、外力ブレーキモードでは、ブレーキ操作部材10に加えられるブレーキ力/ブレーキストロークと、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内に形成されるブレーキ圧が、少なくとも1つのポンプ38および44の制御によって自由に規定可能である。このように、外力ブレーキモードでは、既に比較的小さいブレーキ力/比較的小さいブレーキストロークにより比較的高いブレーキ圧がもたらされるという関係が、ブレーキ操作部材10に加えられるブレーキ力/ブレーキストロークと形成されるブレーキ圧との間で実現される。したがって、外力ブレーキモードへ制御されたブレーキシステムによる車両の制動は、運転手にとって快適であり、大きい力を加えることなしに実施可能である。特に、ブレーキシステムは、外力ブレーキモードが「通常モード」として提供されるように作動することができる。この場合、このブレーキシステムは、従来のように車両の制動時に運転手が加えるべき力が軽減されるように運転手ブレーキ力に対して付加的にブレーキマスタシリンダ・ピストンに支援力を加えるブレーキブースタを必要としない。したがって、ブレーキ力・ブースタモータ、圧力媒体貯蔵タンクを充填するためのモータポンプおよび/または液圧供給モードが不可欠ではなくなる。むしろ、循環ポンプとして使用可能なポンプ38および44によって運転手の作業および力の軽減を実現することができる。ブレーキ操作部材10に加えられたブレーキ力/ブレーキストロークと、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内に生成されたブレーキ圧との間の関係を運転手にとって有利なものとするためには、安価な電子装置を対応してプログラミングすることのみが必要とされることも、ここで指摘しておく。
【0037】
次に、第2ピストン22(および別のピストン24)が第1ピストン12と共に変位されることを有利に阻止するための第1実施例を説明する。
【0038】
図1のブレーキシステムでは、第1内部チャンバ16は、第1弁52を挿入された管路50を介してブレーキマスタシリンダ20の第1圧力チャンバ54に接続されている。この場合、第2ピストン22は第1圧力チャンバ54および第2内部チャンバ26を区切り、これにより、第1圧力チャンバ54の体積を拡大するために第2ピストン22が変位された場合には第2内部チャンバ26が縮小され、第2内部チャンバ26の体積を拡大するために第2ピストン22が反対方向に変位された場合には第1圧力チャンバ54が縮小される。したがって、第1弁52の閉鎖によって、第1ピストン12が内部へ変位されたのにもかかわらず、第1チャンバ16から第1圧力チャンバ54への体積移動が阻止可能であり、これにより、第1圧力チャンバ54の体積が増大し、ひいては第2ピストンが(最小変位ストローク分だけ)第2内部チャンバ26の内部へ少なくとも部分的に変位されることも防止されている。したがって、ブレーキシステムは、第1弁52の閉鎖によって運転手ブレーキモードから外力ブレーキモードに制御可能である。第1弁52の少なくとも部分的な開放後に、第1内部チャンバ16から第1圧力チャンバ54への体積移動、ひいては少なくとも最小ブレーキストローク分だけ第2ピストン22が変位されることが再び保障されており、これにより、ブレーキシステムは第1弁52の少なくとも部分的な開放によって外力ブレーキモードから運転手ブレーキモードへ制御可能である。補足的に、ブレーキシステムは、第1内部チャンバ16と第1弁52との間に配置された圧力センサ53を備えていてもよい。このセンサ53によって、第1内部チャンバ16内の圧力を間接的に検出することができる。
【0039】
随意に、ブレーキシステムは、(シミュレータばね64を備える)操作部材・連結装置をも含み、この操作部材・連結装置には、第1シミュレーションモードで、第1ピストン12に伝達された運転手ブレーキ力を伝達することができ、これにより、シミュレータばね64は運転手ブレーキ力によって変形可能であり、この場合にブレーキシステムは第1シミュレーションモードから第2シミュレーションモードへ制御可能であり、第2シミュレーションモードでは、第1ピストン12は変位可能であり、シミュレータばね64が延伸された状態で提供されている場合に第1内部チャンバ16の内部へ少なくとも部分的に変位され得る。
【0040】
このことが、
図1のブレーキシステムでは、第2弁58が配置された管路56を介して第1内部チャンバ16が別のピストン・シリンダユニット60にも接続されていることにより保障されている。別のピストン・シリンダユニット60は、シミュレータばね64を備えるシミュレータチャンバ62と、予備チャンバ66と、シミュレータチャンバ62と予備チャンバ66との間に摺動可能に配置された中間ピストン68とを含む。中間ピストン68は、シミュレータチャンバ64および予備チャンバ66を区切り、中間ピストン68の対応した移動に基づいて、予備チャンバ66の体積増大はシミュレータチャンバ62の対応した体積減少をもたらし、予備チャンバ66の体積減少はシミュレータチャンバ62の対応した体積増大をもたらす。シミュレータチャンバ62の体積減少もしくは中間ピストン68の対応した変位動作にはシミュレータばね64が反作用する。
【0041】
随意に、逆止弁72を備えるバイパス管路70が、第2弁58に対して並列に延在している。逆止弁72が配置されていることにより、第1内部チャンバ16からバイパス管路70を介した予備チャンバ66内への体積移動を阻止することができる。
【0042】
管路56は予備チャンバ66に開口している。したがって、第2弁58が少なくとも部分的に開かれた場合には、第1チャンバ16から管路56を介して予備チャンバ66内へブレーキ媒体移動が可能となり、これにより、予備チャンバ66の体積が増大し、これに応じてシミュレータチャンバ62の体積が減少する。したがって、第2弁58が少なくとも部分的に開かれている場合には、シミュレータばね64によって、戻しばね17の戻し力に対して付加的に、さらなる反力(シミュレータ力)を、初期位置から変位された第1ピストン12に加えることができる。これは、第2弁58の少なくとも部分開放による第1シミュレーションモードへの制御と言い換えることもできる。第2弁58の閉鎖により、対応してブレーキシステムは第1シミュレーションモードから第2シミュレーションモードへ制御可能であり、第2シミュレーションモードでは、第1内部チャンバ16から予備チャンバ66へのブレーキ媒体移動が阻止されており、したがって、第1ピストン12は、シミュレータばね64が変形されることなしに第1内部チャンバ16内へ変位可能である。これにより、初期位置からの第1ピストン12の変位動作には、シミュレータばね64の変形によってもたらされるシミュレータ力が反作用することはない。
【0043】
このように、第1弁52の閉鎖後に第2弁58を開放することによって、ブレーキマスタシリンダ20が分離されているのにもかかわらず、ブレーキ操作部材10に付加的に加えられたシミュレータ力により、運転手が依然として好ましい(標準的な)ペダル感覚を有していることが保障されている。付加的に、第2弁58の閉鎖によって、特に運転手ブレーキモードでは、第1内部チャンバ16内への第1ピストン12の変位運動にはシミュレータ力が反作用せず、したがって、運転手によってブレーキ操作部材10に加えられた力は、(ほとんど)ブレーキマスタシリンダ20内へブレーキをかけ/少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内に圧力を形成するためだけに用いることができることを保障することができる。このように、運転手は、外力ブレーキモードにおける好ましい(標準的な)ブレーキ感覚にもかかわらず、ブレーキシステムを運転手ブレーキモードに制御した後にも、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42bで十分なブレーキ圧が形成されるように、素早く、比較的わずかな力でブレーキマスタシリンダ20内にブレーキをかける可能性を有している。
【0044】
好ましくは、第1弁52は非通電状態で開かれた弁である。したがって、車両の搭載システムの機能が損なわれた場合にはブレーキシステムは自動的に運転手ブレーキモードへ制御される。第2弁58を非通電状態で閉じられた弁として構成することも有利である。なぜなら、この場合には搭載システムの機能損傷時には、第1ピストン12の第1内部チャンバ16内への変位に反作用するシミュレータ力が阻止されているからである。
【0045】
次に、等しく構成された2つのブレーキ回路34および40の有利な構成を説明する。しかしながら、ブレーキシステムはこれらに制限されていない。
【0046】
それぞれのブレーキ回路34および40は、図示の実施形態では、流入管路74aまたは74bを介してブレーキマスタシリンダ20に接続されている。流入管路74aおよび74bは、それぞれポンプ38または44の流入側に通じていてもよい。それぞれのポンプ38および44の流入側からブレーキマスタシリンダまでの流入管路長さは、25cm未満、好ましくは、20cm未満、特に15cm未満であってもよい。好ましくは、それぞれのポンプ38および44の流入側からブレーキマスタシリンダまでの流入管路長さは、10cm未満である。これは、有利な圧力形成動力をもたらす。ポンプ38および44とブレーキマスタシリンダとの距離が短いことにより、特に低温時にさらに流入損失を低減することができる。
【0047】
ポンプ38および44は、それぞれ1つの管路78aおよび78bを介してそれぞれ1つの車輪流入弁80aおよび80bに接続されている。流入管路74aまたは74bのそれぞれ1つの分岐点82aまたは82bならびに管路78aおよび78bのそれぞれ1つの分岐点84aまたは84bを介して、それぞれ1つの管路86aまたは86b、これらの管路に配置された切換弁76aまたは76b、および切換弁76aまたは76bから導出された別の管路88aまたは88bが、ポンプ38またはポンプ44に対して並列に案内されている。逆止弁92aまたは92bを備えるバイパス管路90aまたは90bも分岐点82aおよび84aまたは82bおよび84bの間に延在しており、逆止弁92aおよび92bの配向により、それぞれの管路78aまたは78bからバイパス管路90aまたは90bを介した流入管路74aまたは74bへのブレーキ媒体移動が阻止されている。
【0048】
管路78aおよび78bに形成されたそれぞれ1つの分岐点94aまたは94bを介して、それぞれ1つの別の車輪流入弁96aまたは96bに通じる管路98aまたは98bおよびそれぞれ1つの圧力センサ100aおよび100bが接続されている。それぞれの車輪流入弁80a,80b,96aおよび96bは、それぞれ1つの管路102a,102b,104aおよび104bを介して、割り当てられた車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42bに接続されている。それぞれの管路102a,102b,104aおよび104bには、それぞれ1つの分岐点106a,106b,108aおよび108bが形成されており、これらの分岐点から、管路110a,110b,112aまたは112bが車輪流出弁114a,114b,116aおよび116bに通じている。ブレーキ回路34および40の2つの車輪流出弁114a,114b,116aおよび116bからは、それぞれ1つの管路118a,118b,120aおよび120bが回路内分岐点122aおよび122bに通じている。それぞれの分岐点122aおよび122bからはそれぞれ1つの管路124aまたは124bが、割り当てられた流入管路74aまたは74bに設けられた分岐点126aまたは126bに通じている。
【0049】
ブレーキ回路34および40は、比較的少数の管路接続部を備える。さらに、ブレーキ回路34および40は、ポンプ38および44が、車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内にブレーキ圧を形成するためのみならず、還流ポンプとしても使用可能であるように構成されている。ポンプ38および44のこのような多機能性により、ブレーキシステムのための所要スペースおよびコストを低減することができる。
【0050】
ブレーキシステムは、1つのみのポンプモータ128を備え、このポンプモータ128のシャフト130にはポンプ38および44が配置されている。したがって、従来のブレーキシステムに対して、本明細書に記載のブレーキシステムは、還流ポンプを作動し、車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内にブレーキトルクを能動的に形成するために1つのポンプモータ128しか必要とされないという利点を有する。さらに、ポンプ38および44およびブレーキマスタシリンダ20が有利にはわずかにしか離間されずに配置されていることにより、ポンプモータ128の所要出力を低減することができ、その際にこのために車両がより遅く制動されることを我慢せずにすむ。
【0051】
ブレーキシステムによって占められる構成スペースをさらに低減し、および/またはブレーキシステムの組み付けを容易にするために、操作部材・連結装置14およびピストン・シリンダユニット60が共通のケーシング150または共通の孔に配置されていてもよい。これは、ブレーキ部材連結部およびブレーキマスタシリンダ20の並列配置と言い換えることもできる。例えば、戻しばね17は、第1内部チャンバを予備チャンバ66から液密に分離する堅固な壁152と第1ピストン12との間で支持することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42bを除いて、全ての液圧部材は、ブレーキ操作部材10と共に(組込み式の)液圧ユニット154にまとめられている。有利には、(組込み式の)液圧ユニット154は、乗客内部スペースとエンジンスペースとの間の隔壁(防火壁)に組み付けられている(
図1には示していない)。
【0053】
図1のブレーキシステムは、外力ブレーキモード(ブレーキブースタ、ABS、ASR、ESPを備える運転ブレーキ)の全ての調整機能において、ブレーキマスタシリンダ20内の圧力なしに作動し、車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内の圧力を周辺圧力まで降下させることができるので、ブレーキ媒体リザーバ30の他に蓄圧チャンバを必要としないことを指摘しておく。したがって、車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内に形成されたブレーキ圧が減少した場合、ブレーキ媒体容積は、ブレーキマスタシリンダ20を介してブレーキ媒体リザーバ30内へ自動的に還流する。手間のかかる蓄圧器なしに作動するブレーキシステムは、液圧的なバックアップを備える。
【0054】
随意に、ブレーキシステムは、(図示しない)制御装置をも備え、この制御装置は、弁52および58の制御に加えて付加的に、例えば、センサ18によって検出されたブレーキ操作部材の操作に関する操作変数を受信し、少なくともこの操作変数を考慮して、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内へ移動すべき目標ブレーキ媒体容積を決定するように設計されている。同様に、制御装置は、外力ブレーキモードで制御されるブレーキシステムの少なくとも1つのポンプ38および/またはポンプ44を制御し、これにより、少なくとも1つのポンプ38または44によって、目標ブレーキ媒体容積に対応したブレーキ媒体容積がブレーキ媒体リザーバ30からブレーキマスタシリンダ20を介して少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42b内へ圧送されるように設計されていてもよい。これに対して補足的に、目標ブレーキ媒体容積を決定する場合に、(図示しない)回生ブレーキの回生ブレーキトルクおよび/または運転支援システムの目標ブレーキトルクを考慮することもできる。同様に、少なくとも1つのポンプ38または44を制御する場合に、少なくとも1つの圧力センサ100aおよび100bの少なくとも1つのセンサ信号を考慮してもよい。高度の調整および安全性アルゴリズムを実施することができるように、車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび42bにも、制御装置によって評価される圧力センサを配置してもよい。この場合、運転ブレーキ作動時にも常に車輪個別にブレーキ圧を調整することができる。このように、車両の傾斜を防止することができ、最適なブレーキ力分配を保障することができる。さらに、これにより固有操舵特性に影響を及ぼすこともできる。
【0055】
図2は、ブレーキシステムの第2実施形態の部分概略図を示す。
【0056】
図2に概略的に(部分的に)示したブレーキシステムでは、操作部材・連結装置14およびブレーキマスタシリンダ20が、共通のケーシング150内に堅固な壁152によって分離されて配置されている。ペダル連結部およびブレーキマスタシリンダ20が共通の孔内に構成されていると言い換えることもできる。ピストン・シリンダユニット60が、ケーシング150とは別個に、または共通の孔部の外部に配置されている。例えば、第1弁52と第1内部チャンバ16との間に配置された分岐点155を介して、第2弁58を備える管路56を管路50に接続することにより、ブレーキ操作部材に加えることのできるシミュレータ力の作動および非作動が信頼性良く保障されている。
【0057】
図2のブレーキシステムは、付加的に上記ブレーキ回路34および40を備えていてもよい。ブレーキ回路34および40については再度説明しない。
【0058】
図3は、ブレーキシステムの第3実施形態を示す部分概略図である。
【0059】
図3に部分的に、概略的に示したブレーキシステムでは、シミュレータばね64が(戻しばねの代わりに)第1内部チャンバ16内に配置されている。第1内部チャンバ16は、第2弁58が挿入された管路56を介してブレーキ媒体リザーバ30に接続されている。したがって、第2弁58が少なくとも部分的に開かれた状態へ制御された場合には、第1弁52が閉じられている場合にもシミュレータ力に抗して第1ピストン12を変位することができる。
【0060】
この実施形態では、操作部材・連結装置14は、シミュレータとして構成されている。したがって、この実施形態は、比較的わずかな構成スペースを必要とする。付加的に、操作部材・連結装置14およびブレーキマスタシリンダ20は、共通のケーシング150内で、もしくは堅固な壁152を備える共通の孔部内で、操作部材・連結装置14とブレーキマスタシリンダ20との間に配置されていてもよく、これにより、所要スペースをさらに低減することができ、ブレーキシステムの組み付けを簡略化することができる。さらに3つの変位可能なピストン12,22および24のみが必要とされる。
【0061】
図4は、ブレーキシステムの第4実施形態を示す部分概略図である。
【0062】
図4に概略的に、部分的に示したブレーキシステムにおいても、シミュレータばね64は操作部材・連結装置14の第1内部チャンバ16内に配置されている。さらに、シミュレータとして構成された操作部材・連結装置14およびブレーキマスタシリンダは、共通のケーシング150/共通の孔部内に配置されている。
【0063】
補足的に、操作部材・連結装置14は、第1内部チャンバ16および第2圧力チャンバ160を区切る変位可能な内部ピストン162を含み、内部ピストン162は、第1内部チャンバ16内に配置されたシミュレータばね64を介して第1ピストン12によって支持される。内部ピストン162の変位による第1内部チャンバ16の体積増大は、第2圧力チャンバ160の縮小をもたらし、内部ピストン162の変位による第1内部チャンバ16の体積減少は第2圧力チャンバ160の拡大をもたらす。ブレーキマスタシリンダ20の第2圧力チャンバ160と第1圧力チャンバ54との間の堅固な壁164は開口部を備え、この開口部を通って、ブレーキマスタシリンダ20の第2ピストン22の一部が突出している。堅固な壁164と第2ピストン22の突出部分との間の流体の漏出は、シール手段を介して防止することができる。
【0064】
第2ピストン22(および別のピストン24)は内部ピストン162で支持されており、これにより、第1ピストン12に伝達された運転手ブレーキ力は内部ピストン162を介して第2ピストン22(および別のピストン24に)に少なくとも部分的に伝達可能である。第2圧力チャンバ160と第1圧力チャンバ54との間の堅固な壁164は、第1弁52が挿入された管路50を介して架橋される。第1弁52が少なくとも部分開放状態へ制御された場合、第2圧力チャンバ160の体積の減少は、同時に第1圧力チャンバ54の体積が増大された場合に可能である。したがって、第1内部チャンバ16が縮小され、これによりシミュレータばね64が変形され/圧縮されることなしに、ピストン12および162を一緒に変位することができる。したがって、第1ピストン12の変位動作には、第1弁52の開放後にシミュレータ力が反作用しない。さらに、第2ピストン22(および別のピストン24)は内部ピストンと一緒に移動され、これにより、ブレーキマスタシリンダ20内の圧力形成、ひいては少なくとも1つの(図示しない)車輪ブレーキシリンダ内のブレーキ圧上昇がもたらされる。したがって、運転手は能動的にブレーキをかけることができる。
【0065】
これに対して、第1弁52の閉鎖後には第2圧力チャンバ160の体積減少は阻止される。したがって、第1内部ピストン162、第2ピストン22および別のピストン24は、第1ピストン12と共に移動することができない。その代わりに、第2ピストンが少なくとも部分開放されている場合には、ブレーキ媒体容積を第1内部チャンバ16からブレーキ媒体リザーバ内へ移動し、これにより、同時にシミュレータばね64が圧縮された場合に第1内部チャンバ16を縮小することができる。したがって、運転手は、この実施形態においても、ブレーキマスタシリンダ20をブレーキ操作部材10から「分離した」後に好ましい(標準的な)ブレーキ感覚を有する。
【0066】
図5は、ブレーキシステムの第5実施形態を示す概略図である。
【0067】
図5に概略的に示したブレーキシステムは、別の構成のブレーキ回路34および40により
図1の実施形態とは異なる。例えば、流入管路74aおよび74bにはそれぞれ流入弁170aおよび170bが挿入されている。ブレーキマスタシリンダ20と流入弁170aおよび170bとの間に形成されたそれぞれ1つの分岐点172aまたは172bを介して、少なくとも1つの別のポンプ174aおよび174bが管路176aまたは176bを介して流入管路74aおよび74bに接続されている。別の管路178aまたは178bが、ポンプ174aまたは174bからポンプ38または44の供給側に延在している。全てのポンプ38,44,174aおよび174bは、必要とされる唯一のポンプモータ128のシャフト130に配置することができる。
【0068】
それぞれのブレーキ回路34および40は、例えば低圧蓄積器として構成された蓄圧チャンバ180aまたは180bも備える。蓄圧チャンバ180aまたは180bは、共通の分岐点122aまたは122bから車輪流出弁116aまたは116bまで延在する管路120aまたは120bに接続されている。さらに、それぞれ1つの逆止弁182aおよび182bが、共通の分岐点122aまたは122bから供給管路74aまたは74bまでのそれぞれ1つの管路124aおよび124bに挿入されている。
【0069】
ここに説明したブレーキシステムの実施形態は、運転手ブレーキモードおよび外力ブレーキモードに対して付加的に、ダイナミックブレーキモードにおいても制御可能であり、ダイナミックブレーキモードでは、第1ピストン12に伝達された運転手ブレーキ力が少なくとも部分開放された第1弁52を介して少なくとも部分的に第2ピストン22に伝達可能であり、これにより、第2ピストン22は、初期位置から少なくとも部分的にブレーキマスタシリンダ20の第2内部チャンバ16内へ変位可能である。同時にポンプ38または44によって、追加・ブレーキ媒体容積が蓄圧チャンバ180aまたは180bから少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b,42aおよび/または42bに圧送可能である。
【0070】
したがって、運転手は、ダイナミックブレーキモードでは、ブレーキマスタシリンダ20に直接にブレーキをかける可能性を有する。このことは、必要とされる動力が運転手による支援によってポンプモータ128のより小さい出力で得られるという利点を提供する。ポンプおよびモータ出力の低減により、高ダイナミック制動が実施可能であるのにもかかわらず、ブレーキシステムのコストおよび/または所要スペースを低減することができる。
【0071】
ダイナミックブレーキモードでブレーキシステムを制御するためには、第1弁52が少なくとも部分的に開かれ、第2弁58が少なくとも部分的に、好ましくは完全に閉じられる。これにより、高ダイナミック制動が簡単に実施可能である。(ポンプ入口側の圧力変動により場合によって生じるペダル反作用は、ダイナミックブレーキが有利であるこのようなブレーキ状況では運転手によってほとんど感知されない。)
【0072】
割り当てられたポンプ38または44と、連結された蓄圧チャンバ180aまたは180bとの間の逆止弁182aおよび182bは、ブレーキマスタシリンダ20内に圧力が生じた場合に、この蓄圧チャンバ180aまたは180bが充填されることを防止する。流入弁170aおよび170bによって、同時に蓄圧チャンバ180aおよび180bの排出のためにポンプ入口圧力が低減される。
【0073】
随意に、車輪流入弁80a,80b,96aおよび96bには、逆止弁を備えるバイパス管路186a,186b,188aおよび188bが並列に延在している。
【0074】
上記実施形態は全て、液圧装置がブレーキ操作部材10に反作用することなしにブレーキ・バイ・ワイヤシステムとして外力ブレーキモードで使用可能である。流入損失が小さいことにより、1つのみのポンプモータ130によって十分な圧力形成動力が得られ、ポンプモータ130の出力および構成寸法は、電気機械式ブレーキブースタの駆動装置の値と比較可能である。
【0075】
全ての実施形態のポンプ38,44,174aおよび174bでは、異なるポンプタイプ、例えば、ピストンポンプ、ロータリポンプおよび/または歯車ポンプを使用することができる。ブレーキシステムに組みこまれる弁は、切換弁または比例弁であってもよい。全てのブレーキシステムは、異なるブレーキ回路配管方式に適合させることができる。車輪ブレーキを自己増幅式に構成することは全てのブレーキシステムにおいて可能である。これにより、ブレーキシステムのそれぞれのモードにおいて任意の頻度で増幅を利用することができる。
【0076】
ブレーキシステムを作動する方法は、ブレーキシステムについて既に説明した方法ステップを備える。したがって、この方法については正確な説明を省略する。