特許第5727085号(P5727085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5727085コンパクトに収納できる接眼型の映像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5727085
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】コンパクトに収納できる接眼型の映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/02 20060101AFI20150514BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   G02B26/02 Z
   H04N5/64 511A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-226354(P2014-226354)
(22)【出願日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年11月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314009456
【氏名又は名称】株式会社テレパシージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5593429(JP,B2)
【文献】 特開2013−044830(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108304(WO,A1)
【文献】 特開2006−003879(JP,A)
【文献】 特開2004−040390(JP,A)
【文献】 特開2004−236189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示光学系(10)と,
前記表示光学系(10)から射出された映像光を観察者の瞳に導く接眼光学系(20)と,
前記表示光学系(10)を収納した第1収納室(30)と,
前記接眼光学系(20)を収納した第2収納室(40)と,
前記第2収納室(40)を前記第1収納室(30)に対して回動可能に固定するための回動手段(50)と,備え
前記回動手段(50)は,
前記第2収納室(40)の上面(41)に固定された上側連結部(51)と,前記第2収納室(40)の下面(42)に固定された下側連結部(52)の両方又はいずれか一方を有し,
さらに,前記上側連結部(51)を前記第1収納室(30)の上面(31)に回動可能に固定する固定ピン(53)と,前記下側連結部(52)を前記第1収納室(30)の上面(32)に回動可能に固定する固定ピン(53)の両方又はいずれか一方を有する
映像表示装置。
【請求項2】
前記第2収納室(40)は,前記観察者の瞳から離れる方向に向かって回動するように,前記回動手段(50)によって前記第1収納室(30)に対して回動可能に固定されている
請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記第1収納室(30)に収納された前記表示光学系(10)は,
光源(11)と,
前記光源(11)からの入射光を画像データに応じて変調することにより映像を表示する表示素子(13)と,を有し,
前記第2収納室(40)に収納された前記接眼光学系(20)は,
前記表示素子(13)から射出された映像光を観察者の瞳に導くプリズム(21)を有する
請求項1又は請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記上側連結部(51)と前記下側連結部(52)は,前記第1収納室(30)の上面(31)と前記第1収納室(30)の下面(32)との間に隙間が設けられている
請求項1から請求項3のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記回動手段(50)は,前記第2収納室(40)の回動範囲を制限するためのストッパ(55)を,さらに備える
請求項1から請求項4のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の映像表示装置を備えた
ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)などに搭載される接眼型の映像表示装置に関するものである。具体的に説明すると,本発明の映像表示装置は,観察者の眼前に設置される光学装置であり,液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などから射出された映像光を観察者の瞳へと導くことで,その映像を観察者に視認させるものである。
【背景技術】
【0002】
近年,例えば頭部に装着して使用するHMDのように,使用者の身体に取り付けて使用することのできるウェアラブルデバイスへの需要が高まりつつある。また,例えば,コンピュータや,各種センサ機器,LCDなどの映像表示装置も,ウェアラブルデバイスに搭載可能な程度に小型化されており,これらの機器を搭載したウェアラブルデバイスの開発が急速に進行している。
【0003】
例えば,特許文献1〜3には,従来の眼鏡型のHMDが開示されている。特許文献1〜3に開示された眼鏡型HMDは,いずれも,表示素子から射出された映像光をプリズム内で観察者の眼幅方向(水平方向)に伝播して瞳に導く構成とされている。
【0004】
また,特許文献4及び5には,LCDによって表示された映像を観察者の片眼に投影する接眼型のHMDが開示されている。この接眼型HMDは,観察者の視界を遮らずに自然に映像を表示することができるように,その構造が小型化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−317798号公報
【特許文献2】特開2008−165063号公報
【特許文献3】特開2010−122478号公報
【特許文献4】特許第5420793号公報
【特許文献5】特許第5593429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来のHMDを装着すると,観察者の眼前には常に表示素子等を搭載した映像表示装置が存在することとなっていた。このため,従来のHMDは,観察者に対して明らかな装着感を与えることとなる。すなわち,従来のHMDでは,観察者の視界に映像表示装置が入り込むこととなるため,観察者は,常にHMDの存在を意識しなければならないという不具合があった。
【0007】
また,HMDを装着している観察者であっても,常時,HMDから提供される映像を視認することを必要としているわけではなく,HMDによる映像表示は,観察者が必要としているときにのみ行われれば十分である。このため,観察者がHMDを装着している状態においても,HMDによって映像が表示されない時間が多く存在する。また,HMDによって映像が表示されている状態であっても,観察者が不要であると考えているときには,その観察者はHMDから提供される映像を視認していない。しかし,従来のHMDは,観察者が必要としていないときであっても,観察者の眼前に映像表示装置が常に存在しており,観察者の視野を狭くする障害になるという問題があった。
【0008】
また,特に特許文献4及び5に示された接眼型HMDは,小型のプリズム等が観察者の眼前に配置されている。このため,観察者の視界を遮らずに自然に映像を表示することができるとされている。しかし,このような小型のプリズムが観察者の眼前に固定されていると,何らかのアクシデントによって観察者やHMDに衝撃が加わったときに,誤って小型のプリズムが観察者の眼球に接触して,眼球を傷つけてしまうというおそれがあった。
【0009】
従って,現在では,観察者がHMDによって表示される映像を視認することを求めていないときには,その観察者の視界を映像表示装置によって遮ることなく,観察者の視界を広く確保することのできる技術が求められている。併せて,アクシデントが発生した場合であっても,観察者の眼球を保護することのできる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで,本発明の発明者は,従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,使用状態と非使用状態を自在に切り換えることができ,しかも,アクシデントが発生したときに観察者の眼球を保護することのできる接眼型の映像表示装置の構成を発案した。具体的には,本発明者は,LCDなどを含む表示光学系とプリズムなどを含む接眼光学系とを別々の収納室に格納し,接眼光学系の収納室を,表示光学系の収納室に対して,回動自在に取り付けることとした。これにより,観察者が映像表示装置を使用していない状態(非使用状態)においては,接眼光学系の収納室を観察者の視界の外に移動させることができるようになり,観察者の視界を広く確保できるようになる。また,非使用状態において,映像表示装置をコンパクトに収納することが可能となる。さらに,着用者の眼球が接眼光学系に触れた場合であっても,この接眼光学系の収納室が回動するため,眼球に対して大きな衝撃が加わることを回避できるため,HMDの安全性が向上する。そして,本発明者は,このような知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0011】
本発明は,映像表示装置に関する。
本発明の映像表示装置は,表示光学系10と,接眼光学系20と,第1収納室30と,第2収納室40と,回動手段50と,を備える。
表示光学系10は,映像を表示する。接眼光学系20は,表示光学系10から射出された映像光を観察者の瞳に導く。第1収納室30は,表示光学系10を収納している。第2収納室40は,接眼光学系20を収納している。そして,回動手段50は,第2収納室40を第1収納室30に対して回動可能に固定している。
【0012】
上記構成のように,本発明では,表示光学系10と接眼光学系20とがそれぞれ別々の第1収納室30と第2収納室40に格納されており,この第2収納室40が第1収納室30に対して回動自在に固定されている。これにより,観察者が映像表示装置を使用していない状態(非使用状態)においては,第2収納室40を観察者の視界の外に移動させることで,観察者の視界を広く確保することができる。さらに,着用者の眼球が接眼光学系20を収納した第2収納室40に触れた場合であっても,この第2収納室40が自在に回動するため,眼球に対して大きな衝撃が加わることを回避できる。
【0013】
本発明の映像表示装置において,第2収納室40は,観察者の瞳から離れる方向に向かって回動するように,回動手段50によって第1収納室30に対して回動可能に固定されていることが好ましい。
【0014】
上記構成のように,第2収納室40が観察者の瞳から離れる方向に回動することが保証されていることにより,HMDの安全性を高めることができる。
【0015】
本発明の映像表示装置において,第1収納室30に収納された表示光学系10は,光源11と,この光源11からの入射光を画像データに応じて変調することにより映像を表示する表示素子13と,を有することが好ましい。また,第2収納室40に収納された接眼光学系20は,表示素子13から射出された映像光を観察者の瞳に導くプリズム21を有することが好ましい。
【0016】
上記構成では,電源線や信号線に接続される光源11や表示素子13と,電源線などに接続する必要のないプリズム21とを,それぞれ別々の収納室30,40に収納し,プリズム21が収納された第2収納室40を回動させるように構成する。これに対して,例えば,光源11,表示素子13,及びプリズム21を一つの収納室に収納して,このような収納室を他の部材に対して回動させるという構成も考えられる。しかしながら,電源線や信号線に接続される光源11や表示素子13を回動させることとすると,これらの電源線等が回動運動に対する抵抗となり,収納室を回転させにくくなる。そうすると,例えば,何らかのアクシデントによって観察者の眼球が収納室に接触した際に,この収納室を回動させるのに必要な力が大きくなり,観察者の眼球に対して大きな負荷がかかることとなる。従って,観察者の眼球を適切に保護することができなくなる。これに対し,本発明の好ましい形態のように,光源11及び表示素子13を第1収納室30に収納し,これとは別に,プリズム21を第2収納室40に格納し,この第2収納室40を第1収納室30に対して回動させることで,第2収納室40を非常に小さな慣性モーメントで回動させることが可能となる。これにより,観察者の眼球が第2収納室40に接触した場合であっても,小さな力で第2収納室40が回動するため,観察者の眼球に対する負荷が低減される。従って,観察者の眼球を適切に保護することができる。
【0017】
本発明の映像表示装置において,回動手段50は,第2収納室40の上面41に固定された上側連結部51と,第2収納室40の下面42に固定された下側連結部52と,を有することが好ましい。さらに,回動手段50は,上側連結部51を第1収納室30の上面31に回動可能に固定する固定ピン53と,下側連結部52を第1収納室30の上面31に回動可能に固定する固定ピン53の両方又はいずれか一方を有している。
【0018】
上記構成のように,上下の連結部51,52と固定ピン53によって,第1収納室30と第2収納室40を上下の連結部51,52を回動可能に連結することで,両者の連結状態が安定するとともに,第2収納室40を回動させやすくなる。
【0019】
本発明の映像表示装置において,上側連結部51と下側連結部52は,第1収納室30の上面31と第1収納室30の下面32との間に隙間が設けられている
【0020】
上記構成のように,上側連結部51と下側連結部52とを,第1収納室30の上面31と下面32に対して隙間を設けて固定することで,各部材同士の間に摩擦抵抗が生じることを回避できるため,第2収納室40を回動させやすくなる。
【0021】
本発明の映像表示装置において,回動手段50は,第2収納室40の回動範囲を制限するためのストッパ55を,さらに備えることが好ましい。
【0022】
上記構成のように,ストッパ55を設けることで,第2収納室40の回動範囲を適切にコントロールすることができ,映像表示装置が故障する原因を未然に防ぐことができる。
【0023】
本発明の別の側面は,上述した第1の側面にかかる映像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば,非使用状態において観察者の視界を広く確保することのできる映像表示装置を提供することができる。また,何らかのアクシデントが発生した場合であっても,観察者の眼球を適切に保護することのできる映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は,映像表示装置に備えられた光学系の例を示したブロック図である。
図2図2は,図2(a)は,映像表示装置の正面図であり,図2(b)は,映像表示装置の平面図である。
図3図3は,映像表示装置における第2収納室の動作例を示している。
図4図4は,他の実施形態にかかる映像表示装置の正面図である。
図5図5は,映像表示装置を備えたHMDのデザインの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願の図においては,装置の立体方向をわかりやすく示すために,X軸,Y軸,及びZ軸の直交座標系を設定した。本願明細書では,便宜的に,X軸方向を横方向とし,Y軸を上下方向とし,Z軸方向を奥行き方向としている。
また,本願明細書において,「A〜B」とは,基本的に「A以上B以下」であることを意味する。
【0027】
本発明は,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などに搭載される接眼型の映像表示装置100に関するものである。まず,図1を参照して,映像表示装置100が備える光学系について説明する。図1は,映像表示装置100の内部を平面(XZ面)から描画したものである。図1に示されるとおり,映像表示装置100は,映像を表示する表示光学系10と,この表示光学系10から射出された映像光を観察者の瞳Eに導く接眼光学系20と,を備える。図1に示されるように,表示光学系10は,第1収納室30内に収納され,接眼光学系20は,第2収納室40内に収納されている。
【0028】
図1に示されるように,本実施形態において,表示光学系10は,光源11と,集光レンズ12と,表示素子13を有する。光源11は,R(赤),G(緑),B(青)の各色の光を出射可能なものであることが好ましい。例えば,光源11は,例えば,RGB一体型のLEDパネルによって構成することができる。なお,光源11は,単色光や白色光を出射するものであってもよい。光源11が発光するためには電力が必要になるため,この光源11は,電源線を介してバッテリー(図示省略)に接続されている。また,集光レンズ12は,光源11からの光を集光して表示素子13に供給する。また,表示素子13は,入射光を画像データに応じて変調することにより,映像を表示するものである。表示素子13は,例えば,光が透過する領域となる各画素がマトリクス状に配置された透過型の液晶表示素子で構成されていることが好ましい。表示光学系10の例は,液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)である。表示素子13は制御装置(図示省略)によって光の変調状態が制御されるため,この表示素子13は,信号線を介してこの制御装置に接続されている。また,表示素子13は電源線を介してバッテリーにも接続されている。
【0029】
次に,接眼光学系20は,上記表示素子13からの映像光を観察者の瞳Eに導く光学系である。本実施形態において,接眼光学系20は,プリズム21を有している。また,接眼光学系20は,接眼レンズ22,23の両方又はいずれか一方を有している。プリズム21は,表示素子13からの映像光を内部で導光する部材である。プリズム21は,例えば,映像光の入射面21aと,反射面21bと,射出面21cを有する形状となっている。なお,プリズム21は,単一のプリズムで構成されてもよいし,複数のプリズムを組み合わせて構成されてもよい。また,接眼レンズ22は,正のパワーを持ち,反射面21bで反射した映像光を瞳面Eに集光する。接眼レンズ22は,プリズム21の射出面21cに接合されてプリズム21と一体化されていてもよい。接眼レンズ23は,プリズム21の入射面21aに接合されてプリズム21と一体化されていてもよい。
【0030】
ここで,プリズム21の構成について,具体的に説明する。プリズム21の入射面21aは,横方向(X軸方向)に進行する映像光の光軸と垂直に交差する奥行き方向(Z方向)に設けられている。また,射出面21cは,観察者の瞳Eと対向するように設けられている。反射面21bは,例えば矩形形状(長方形形状)であり,映像光の光路を直角に折り曲げる手段として機能している。具体的には,反射面21bは,入射面21aを介してプリズム内部に入射してX方向に進行する映像光を,Z方向に反射させる。
【0031】
上記の構成によれば,まず,表示光学系10によって映像光が生成される。すなわち,光源11から射出された光は,集光レンズ12で集光されて表示素子13に入射する。光は表示素子13によって変調されて映像光となる。次に,表示素子13(表示光学系10)から射出された映像光は,接眼光学系20に入射する。接眼光学系20では,映像光が,接眼レンズ23及び入射面21aを介してプリズム21の内部に入射する。その後,映像光は,プリズム21の内部を横方向(X軸方向)に沿って進行し,反射面21bで光路が折り曲げられ奥行き方向(Y軸方向)に向きを変えて進行する。これにより,映像光は,プリズム21の射出面21cを介して,観察者の瞳Eに導かれる。なお,射出面21cに取り付けられた接眼レンズ22は省略することもできる。このようにして,観察者は,瞳Eの位置で,表示素子13にて表示された映像の拡大虚像を観察することができる。なお,図1に示した光学系は,本発明の一実施形態に過ぎない。本発明は,図1に示した光学系以外にも,その他公知のものを適宜採用することができる。
【0032】
続いて,図2及び図3を参照して,上述した光学系(表示光学系10と接眼光学系20)を収容する映像表示装置100の筐体構造について具体的に説明する。図2(a)は,映像表示装置100を正面(XY面)からみた正面図を示しており,図2(b)は,映像表示装置100を平面(XZ面)からみた平面図を示している。また,図3は,映像表示装置100の動作例を示している。
【0033】
図2に示されるように,映像表示装置100は,表示光学系10を収納するための第1収納室30を備えている。第1収納室30は,互いに対面する上面31と下面32とを有し,さらに,この上面31と下面32とを繋ぐように上下方向(Y軸方向)に立設した側壁33が形成されている。このように,第1収納室30は,上面31,下面32,及び側壁33によって囲われた小部屋となる。第1収納室30には,映像を表示するための映像素子などを有する表示光学系10が収納される。また,図1に示されるように,第1収納室30の側壁33には,表示光学系10から射出される映像光が透過する射出窓33aが形成されている。また,例えば,第1収納室30に隣接して,表示光学系10に対して電力や制御信号を供給するための駆動回路60が配置される。このため,第1収納室30の側壁33には,駆動回路60と表示光学系10とを接続する各種のケーブルが差し込まれる差込窓(図示省略)が形成されている。つまり,表示光学系10には,差込窓を介して,表示光学系10の動作を制御するための制御ケーブル(図示省略)や,表示光学系10に電力を供給するための電力ケーブル(図示省略)を接続することができる。
【0034】
また,図2に示されるように,映像表示装置100は,接眼光学系20を収納するための第2収納室40を備えている。第2収納室40は,互いに対面する上面41と下面42とを有し,さらに,この上面41と下面42とを繋ぐように上下方向(Y軸方向)に立設した側壁43が形成されている。このように,第2収納室40は,上面41,下面42,及び側壁43によって囲われた小部屋となる。第2収納室40には,表示光学系10から射出された映像光を観察者の瞳に導くプリズムなどの接眼光学系20が収納される。また,図1に示されるように,第2収納室40の側壁43には,表示光学系10から射出される映像光が入射する入射窓43aや,接眼光学系20から射出された映像光が透過する接眼窓43bが形成されている。ここにいう入射窓43aや接眼窓43bは,側壁に形成された部分的な穴であってもよいし,壁がなく全面的に開放された状態の開口面であってもよい。
【0035】
図1及び図2に示されるように,第1収納室30と第2収納室40の間には,空間が存在する。このため,表示光学系10から射出された映像光は,第1収納室30の射出窓33aを経て,この空間に至る。そして,射出窓33aを通過した映像光は,この空間を経由して,接眼光学系20に入力される。その後,映像光は,接眼光学系20によって,観察者の瞳へと導かれる。
【0036】
図2(a)に示されるように,第1収納室30と第2収納室40とでは,上下方向(Y軸方向)の高さが異なっていることが好ましい。すなわち,第2収納室40の高さHは,第1収納室30の高さHよりも低い(H<H)。例えば,第1収納室30の高さHを100%としたときに,第2収納室40の高さHは,80%以下,60%以下,又は40%以下であることが好ましい。具体的には,第2収納室40の高さHは,第1収納室30の高さHに対し,10%〜80%,20%〜60%,又は30%〜50%程度であることが好ましい。第2収納室40は,観察者の眼前に存在するものであるため,第1収納室30と比較してより小型なものとすることが好ましい。ただし,本発明は,第2収納室40の高さが第1収納室30の高さよりも低くなっている構造に限定されず,第2収納室40の高さが第1収納室30の高さよりも高くなっていてもよい。
【0037】
図2に示されるように,本発明の映像表示装置100は,さらに,回動手段50を備えている。この回動手段50は,第2収納室40を第1収納室30に対して回動可能に固定するための構成を備える。具体的に説明すると,回動手段50は,上側連結部51と,下側連結部52と,上下の固定ピン53を含んで構成されている。
【0038】
上側連結部51は,第2収納室40の上面41に対して不動状態で固定されており,第2収納室40から第1収納室30に向かって延びている。本実施形態において,上側連結部51は,第2収納室40の上面41と一体となっている。また,上側連結部51は,厚みが薄く奥行きのある板状に形成されている。なお,ここにいう「板状」とは,厚みの値よりも,奥行きの値が3倍以上大きい形状を意味する。同様に,下側連結部52は,第2収納室40の下面42に対して不動状態で固定されており,第2収納室40から第1収納室30に向かって延びている。本実施形態において,下側連結部52は,第2収納室40の下面42と一体となっている。また,下側連結部52は,厚みが薄く奥行きのある板状に形成されている。このように,上側連結部51と下側連結部52は,接眼光学系20を収納した第2収納室40を,表示光学系10を収納した第1収納室30に連結するための支持部分として機能する。上側連結部51と下側連結部52は,表示光学系10から射出された映像光の光路上において,接眼光学系20を支持することができる。
【0039】
さらに,図2に示されるように,上側連結部51と下側連結部52の間の少なくとも一部には,観察者の視線が透過する開口54が形成されていることが好ましい。より詳しく説明すると,この開口54は,観察者の瞳が接眼窓43bと対面する位置にあるときに,その観察者の視線が通過するものである。つまり,開口54は,図2に示されるように,上側連結部51と下側連結部52の間に,上下方向(Y軸方向)に立設する側壁が形成されていない部分を意味する。このように,2枚の支持板(上側連結部51と下側連結部52)によって,表示光学系10から射出された映像光の光路上に接眼光学系20を支持すると共に,この2枚の支持板の間に,接眼光学系20を覗きこむ観察者の視線が透過する開口54を形成することで,映像表示装置100の構造自体を小型化でき,かつ,観察者の視界を極力遮らないようにすることができる。
【0040】
板状の上側連結部51と下側連結部52の厚さT(最大値)は,3mm以下であることが好ましい。具体的には,上側連結部51と下側連結部52の厚さTは,0.1mm〜3mmであることが好ましく,特に0.3mm〜3mm,又は0.5mm〜2mmであることが好ましい。本実施形態では,2つの上側連結部51と下側連結部52によって接眼光学系20を支持することとしている。このため,各連結部51,52の厚さを比較的薄くしても,接眼光学系20を十分強固に支持することができる。また,連結部51の厚さを薄くすることで,連結部51が観察者によって視認されにくくなる。これにより,観察者の自然な視界を実現することができる。また,上側連結部51と下側連結部52の奥行きD(最大値)は,5mm以上であることが好ましい。具体的には,上側連結部51と下側連結部52の奥行きは,5mm〜20mmであることが好ましく,特に7mm〜18mm,又は10mm〜15mmであることが好ましい。本発明では,上側連結部51と下側連結部52の間を映像光が通過することとなるが,この上側連結部51と下側連結部52の奥行き値を大きくすることで,この各連結部51,52が外光を遮る庇(ひさし)の役割を果たす。これにより,観察者に対して鮮明な映像を提供することができる。
【0041】
また,上側連結部51と下側連結部52は,高さの異なる第1収納室30と第2収納室40とを連結している。一般的には,第2収納室40の高さが第1収納室30の高さよりも低くなっている。この場合に,上側連結部51と下側連結部52は,第1収納室30の高さから第2収納室40の高さに合わせるために,傾斜部分51a,52aが存在している。すなわち,この傾斜部分51a,52aは,上側連結部51と下側連結部52が,第1収納室30側から第2収納室40側に向うにつれて,互いの間隔が徐々に近くなるように傾斜した部分である。特に,図2に示されるように,この傾斜部分51a,52aは,開口54が形成された部分に形成されたものであることが好ましい。このように,観察者の視線が通過する部分(開口54)において,上側連結部51と下側連結部52を傾斜させることで,観察者が各連結部51,52を視認しにくくなることが判明している。つまり,観察者にとって,直線的に延びる連結部51,52よりも,斜めに傾斜して延びる連結部51,52の方が,感覚的に視認しにくいものとなる。従って,上側連結部51と下側連結部52に傾斜部分51a,52aを形成することで,観察者の視界をさらに良好なものとすることができる。また,連結部51,52が,映像表示装置100の横方向(X軸方向)に延びる映像光の光軸に対して傾く角度θは,例えば,5度〜60度,10度〜45度,又は15〜30度とすればよい。
【0042】
本実施形態において,上記の上側連結部51と下側連結部52は,それぞれ,固定ピン53によって,第1収納室30の上面31と下面32に対して回動可能に固定されている。図2(a)に示されるように,上側連結部51は,上側の固定ピン53によって第1収納室30の上面31に連結され,下側連結部52は,下側の固定ピン53によって第1収納室30の下面32に連結される。このとき,上下の固定ピン53の中心軸は,互いに一致している。従って,第2収納室40,上側連結部51,及び下側連結部52は,第1収納室30に対して,奥行方向(Z方向)に回動することができる。なお,図示は省略するが,固定ピン53は,上側連結部51と下側連結部52の少なくともいずれか一方を,第1収納室30の上面31又は下面32に対して固定したものであってもよい。
【0043】
図3には,第2収納室40が回動する動作の様子が示されている。図3に示されるように,第2収納室40は,観察者の瞳から離れる方向(符号:A)と,観察者の瞳に近づく方向(符号B)の両方に回動可能であることが好ましい。第2収納室40が方向Aに向かって回動することで,例えば,観察者の眼球と第2収納室40が接触するようなアクシデントが発生した場合であっても,第2収納室40が方向Aに向かって回動するため,観察者の眼球を傷つけてしまうといった事故を防止できる。他方,第2収納室40が方向Bに向かって回動することで,例えば,映像表示装置100を使用しない状況において,この映像表示装置100をコンパクトに収納することが可能となる。また,映像表示装置100の使用を開始するときには,第2収納室40を回動させて,第2収納室40に収納されている接眼光学系20が,第1収納室30に収納されている表示光学系10の光路上に位置するように,第2収納室40の位置を調整すればよい。これにより,映像表示装置100の使用状態と非使用状態とを簡単に切り換えることができる。
【0044】
また,回動手段50は,第2収納室40の回動範囲を制限するためのストッパ55を備えていてもよい。例えば,図3に示されるように,第2収納室40を方向Bに向かって回動させると,第2収納室40若しくは各連結部51,52が駆動回路60に接触するような場合がある。このような接触が生じると,第2収納室40や駆動回路60が故障するおそれがある。そこで,例えば,図2及び図3に示されるように,第1収納室30の上面31(又は下面32)に,突起状のストッパ55を設けることが好ましい。上側連結部51(又は下側連結部52)が一定角度以上回動すると,上側連結部51(又は下側連結部52)がこのストッパ55に当接するようになっている。これにより,ストッパ55によって,上側連結部51(又は下側連結部52)の回動範囲を制限することができる。
【0045】
ただし,図3に示されるように,映像表示装置100には,第2収納室40が観察者の瞳から離れる方向(方向A)への回動運動を阻害するためのストッパは設けられていないことが好ましい。例えば,このようなストッパが設けられていないことで,第2収納室40は,第1収納室30の光路上から,観察者の瞳から離れる方向(方向A)に向かって90℃を超えて回動可能となっている好ましい。これにより,何らかのアクシデントが発生した場合であっても,十分に観察者の眼球を保護することができる。
【0046】
このように,本発明では,着用者の眼球が接眼光学系20を収納した第2収納室40に触れた場合であっても,この第2収納室40が自在に回動するため,眼球に対して大きな衝撃が加わることを回避できる。特に,本実施形態では,電源線や信号線に接続される光源11及び表示素子13を第1収納室30に収納し,これとは別に,プリズム21を第2収納室40に格納し,この第2収納室40を第1収納室30に対して回動させることで,第2収納室40を非常に小さな慣性モーメントで回動させることが可能となる。これにより,観察者の眼球が第2収納室40に接触した場合であっても,小さな力で第2収納室40が回動するため,観察者の眼球に対する負荷が低減される。従って,観察者の眼球をより適切に保護することができる。
【0047】
図4は,図2に示した実施形態の変形例を示している。図2に示された実施形態では,上側連結部51が第1収納室30の上面31に面接触し,下側連結部52が第1収納室30の下面32に面接触している。これに対して,図4に示された実施形態では,上側連結部51が第1収納室30の上面31に接触しないように固定ピン53によって固定され,同様に,下側連結部52が第1収納室30の下面32に接触しないように固定ピン53によって固定されている。つまり,上側連結部51と下側連結部52は,それぞれ,第2収納室40の上面41と下面42との間に隙間が設けられている。これにより,第2収納室40,上側連結部51,及び下側連結部52を,固定ピン53を回転軸として,スムーズに回動させることができる。本発明にかかる映像表示装置100は,図4に示されるような改良を加えたものであってもよい。
【0048】
図5は,映像表示装置100を備えたヘッドマウントディスプレイ(HMD)200のデザインの一例を示している。図5に示されるように,映像表示装置100は,極めて小型化して,HMD200の接眼部分に搭載することができる。このように,本発明の映像表示装置100によれば,従来の眼鏡型のHMDとは異なるスタイリッシュなデザインのHMDを実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は,HMDなどに搭載される接眼型の映像表示装置に関するものである。このため,本発明はウェアラブルデバイスの製造産業において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…表示光学系 11…光源 12…集光レンズ
13…表示素子 20…接眼光学系 21…プリズム
21a…入射面 21b…反射面 21c…射出面
22…接眼レンズ 23…接眼レンズ 30…第1収納室
31…上面 32…下面 33…側壁
33a…射出窓 40…第2収納室 41…上面
42…下面 43…側壁 43a…入射窓
43b…接眼窓 50…回動手段 51…上側連結部
51a…傾斜部分 52…下側連結部 52a…傾斜部分
53…固定ピン 54…開口 55…ストッパ
60…駆動回路 100…映像表示装置 200…HMD
【要約】
【解決課題】 非使用状態において観察者の視界を広く確保できる接眼型の映像表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る映像表示装置は,映像を表示する表示光学系10と,表示光学系10から射出された映像光を観察者の瞳に導く接眼光学系20と,表示光学系10を収納した第1収納室30と,接眼光学系20を収納した第2収納室40と,第2収納室30を第1収納室40に対して回動可能に固定するための回動手段50とを備える。第2収納室40を回動可能に構成することで,非使用状態において,接眼光学系20を観察者の視界の外に移動させることができるようになるため,観察者の視界を広く確保できる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5