【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
<PVA系樹脂(1)の作製>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000重量部、メタノール300重量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始2時間後、4時間後にそれぞれアゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)追加し、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶
液を得た。
次いで、上記メタノール溶液を、濃度50%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、未変性PVA系樹脂[PVA系樹脂(1)]を得た。
得られたPVA系樹脂(1)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ49モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、250であった。
【0032】
上記のようにして得られたPVA系樹脂(1)を、水/エタノール(重量比)が6/4である混合溶媒に溶解し、5重量%濃度のPVA溶液となるように調製した。そして、かかるPVA溶液100重量部に、非アルコール系の液体肥料(ハイポネックスジャパン社製、ハイポネックス)を指定濃度に希釈して5重量部添加し、農業用液状散布剤を調製した。
【0033】
〔実施例2〕
PVA系樹脂(1)の作製方法に準じ、ケン化度34モル%、平均重合度300の未変性PVA系樹脂を作製した。そして、上記作製の未変性PVA系樹脂を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
【0034】
〔実施例3〕
<PVA系樹脂(2)の作製>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000重量部、メタノール9580重量部、平均鎖長n=10のポリオキシエチレンアリルエーテル237重量部(2モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、13時間かけて、酢酸ビニル1410重量部、メタノール3195重量部、ポリオキシエチレンアリルエーテル2130重量部を滴下、また重合開始4時間後にアゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)追加し、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、上記メタノール溶液を、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化を1.5時間行った。中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加した後、攪拌しながら過熱してメタノールを完全に追い出した後、水を追加して溶解し、40%水溶液のオキシアルキレン基含有PVA系樹脂[PVA系樹脂(2)]を得た。
得られたPVA系樹脂(2)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ48モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、260であった。また、上記PVA系樹脂(2)の変性率[オキシアルキレン基含有量]は、その仕込み量から1.8モル%とした。
【0035】
上記のようにして得られたPVA系樹脂(2)を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
【0036】
〔実施例4〕
PVA系樹脂(2)の作製方法に準じ、ケン化度43モル%、平均重合度280、変性率1.7モル%の、オキシアルキレン基含有PVA系樹脂を作製した。そして、上記作製の変性PVA系樹脂を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
【0037】
〔実施例5〕
<PVA系樹脂(3)の作製>
酢酸ビニルと3−メルカプトプロピオン酸をメタノール中で共重合した。得られた共重合体を水酸化ナトリウムでケン化した。
得られたPVA系樹脂(3)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ38モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、530であった。また、上記PVA系樹脂(3)の変性率[末端カルボキシル基含有量]は、その仕込み量から0.25モル%とした。得られたPVA系樹脂(3)を、メタノールで48時間ソックスレー抽出による精製を行った後、重水に溶解し、核磁気共鳴分析(以下NMRと略記する)したところ、PVA系樹脂(3)の末端にCOONa基の存在が認められ、分子の片末端にNaOOC−CH
2−CH
2−S−のカルボキシル基を有するPVA系樹脂(3)が確認できた。
【0038】
上記のようにして得られたPVA系樹脂(3)を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
【0039】
〔比較例1〕
PVA系樹脂(1)の作製方法に準じ、ケン化度80モル%、平均重合度350の未変性PVA系樹脂を作製した。そして、上記作製の未変性PVA系樹脂を、PVA系樹脂(1)に代えて用い、さらに、水/エタノール混合溶媒において、その水/エタノール(重量比)を9/1にした。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
【0040】
〔比較例2〕
PVA系樹脂(1)の作製方法に準じ、ケン化度88モル%、平均重合度600の未変性PVA系樹脂を作製した。そして、上記作製の未変性PVA系樹脂を、PVA系樹脂(1)に代えて用い、さらに、水/エタノール混合溶媒において、その水/エタノール(重量比)を9/1にした。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
【0041】
このようにして得られた実施例および比較例の農業用液状散布剤に関し、下記の基準に従って固着性評価を行った。その結果を、後記の表1に併せて示す。
【0042】
≪固着性評価≫
農業用液状散布剤105重量部に対し、着色剤(食紅)を0.1重量部添加した後、植物(ベンジャミンエスタ)の葉面に対し、霧吹きにて農業用液状散布剤を散布した。そして、24時間放置後、その葉面(農業用液状散布剤の散布面)に対し、霧吹きにて水を噴きかけた。そして、落ちずに残った着色面を目視観察し、その着色面が、葉面(農業用液状散布剤の散布面)の面積に対して80%以上残ったものを「○」と評価した。なお、葉面(農業用液状散布剤の散布面)の面積に対して30%以上60%未満残ったものを「△」、30%未満しか残らなかったものを「×」と評価した。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1の結果より、実施例の農業用液状散布剤は、固着性が高く、また均一に葉面散布がなされたことから散布性も良好であった。これに対し、比較例の農業用液状散布剤は、水/エタノール(重量比)が6/4の混合溶媒を用いた際、溶媒にPVA系樹脂が溶けなかったため、散布することができず、固着性の評価ができなかったために、水/エタノール(重量比)が9/1の混合溶媒を用いたが、その場合であっても、実施例に比べ、固着性評価に劣る結果となった。
【0045】
また、実施例および比較例の農業用液状散布剤に関し、下記の基準に従って溶解性評価を行った。その結果を、後記の表2に併せて示す。
≪溶解性評価≫
水/エタノールの割合(重量比)を下記に示す割合にした溶媒に、濃度5%となるように実施例および比較例のPVA系樹脂を室温にて混合し、撹拌し下記の評価基準A〜Cに従い、溶解挙動を観察した。
A:溶解
B:不溶(安定に分散)
C:不溶(分散後に沈殿)
【0046】
【表2】
【0047】
上記表2の結果より、実施例のPVA系樹脂は、比較例のPVA系樹脂に比べ、水/アルコールの混合比が変化しても溶解又は分散する範囲が広く、特に、実施例3〜5の変性PVA系樹脂は、水/アルコールの混合比が変化しても溶解又は分散する範囲がより広かった。
【0048】
なお、ケン化度が25モル%程度のPVA系樹脂を用いた場合、溶媒に水のみを用いた場合であっても、PVA系樹脂の溶解がされなくなり、水溶性散布剤としての機能を果たすことができないと推測される。