(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727105
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】ホーニングリングの為のポット形状のホルダーを有するホーニング加工機のツールスピンドル
(51)【国際特許分類】
B23F 19/05 20060101AFI20150514BHJP
B24B 33/04 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
B23F19/05
B24B33/04
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-530219(P2014-530219)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-530769(P2014-530769A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2012067956
(87)【国際公開番号】WO2013037891
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年5月8日
(31)【優先権主張番号】102011082867.2
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507195508
【氏名又は名称】フェルゾマート・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100062317
【弁理士】
【氏名又は名称】中平 治
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー・ヘルムート・エフ
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
スイス国特許発明第00686937(CH,A5)
【文献】
独国特許出願公開第02719524(DE,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01724046(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/05
B24B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーニング加工機(60)のためのツールスピンドル(1)であって、ホーニングリング(2)の為のモーターにより駆動されるホルダー(6)を有し、その際、ホルダー(6)が少なくとも一つの液圧式の延伸要素(11)を備え、この延伸要素によって、ホーニングリング(2)がホルダー(6)内で放射方向に挟み込まれ、および中心合わせされることが可能であるツールスピンドルにおいて、
ホルダー(6)が、周回する壁部材(9)および壁部材(9)を一方側で閉じる底部材(10)によりポット形状に形成されていること、
少なくとも一つの延伸要素(11)が、周回する壁部材(9)に内側に形成されていること、
全ての延伸要素(11)が、底部材(10)内に配置される一つの液圧チャンバー(14)と接続されていること、
および、唯一の調節要素(15)が設けられ、この調節要素によって液圧チャンバー(14)内およびこれにともない全ての延伸要素(11)内の液圧媒体(12)の圧力が調節可能であることを特徴とするツールスピンドル。
【請求項2】
ホルダー(6)が、唯一の液圧式の延伸要素(11)を備えること、当該一つの液圧式の延伸要素(11)が、周回して形成されていること、および複数の液圧配管(13)が設けられ、これら経気圧配管が、前記一つの延伸要素を液圧チャンバー(14)と接続することを特徴とする請求項1に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項3】
調節要素(15)が、調節スクリュー(15a)として形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項4】
調節スクリュー(15a)が底部材(10)に内側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項5】
調節要素(15)が、移動可能なスライダー(15b;15c)として形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項6】
ホルダー(6)が、予負荷手段を備え、この予負荷手段によってスライダー(15b;15c)が、ホーニングリング(2)を挟み込みおよび中心合わせする箇所において、予負荷を与えられることを特徴とする請求項5に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項7】
ホルダー(6)が、固定機構(40、41、42)を備え、これらによってスライダー(15b;15c)が、ホーニングリング(2)を挟み込みおよび中心合わせを行う、一または複数の箇所にセルフロックされることを特徴とする請求項5に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項8】
ホルダー(6)の為のモーターによる駆動部が、ホルダー(6)の底部材(10)に外側に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項9】
ホルダー(6)が、底部材(10)に外側中央に一つの軸(8)を備えるか、または一つの軸(8)としっかりと接続されていること、およびホルダー(6)が、軸(8)に支承されており、軸(8)を介してモーターにより駆動されることを特徴とする請求項8に記載のツールスピンドル(1)。
【請求項10】
少なくとも一つの工作物スピンドルを(4)、および請求項1から9のいずれか一項に記載のツールスピンドル(1)を有するホーニング加工機(60)。
【請求項11】
ホーニング加工機(60)が、機械ハウジング(64)を有し、この機械ハウジング内に工作物スピンドル(4)およびツールスピンドル(1)が配置されていること、および、機械ハウジング(64)内に作動槽(3)が設けられ、この作動槽がツールスピンドル(1)をオイルを通さないよう取り囲むことを特徴とする請求項10に記載のホーニング加工機(60)。
【請求項12】
作動槽(3)が、空所部(19)を有する窓部(18)を備え、その際、工作物スピンドルが、巣員ドルネックによって空所部(19)を通して作動槽(3)内に挿入可能であるので、工作物スピンドル(4)のスピンドルネックが空所部(19)をオイルを通さないよう閉鎖すること、
窓部(18)が作動槽(3)にオイルを通さないようスライド可能に支承されているので、窓部(18)が工作物スピンドル(4)の調整動作の間にツールスピンドル(1)に対して相対的に連行されることが可能であることを特徴とする請求項11に記載のホーニング加工機(60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング加工機の為のツールスピンドルに関する。これは、ホーニングリングの為のモーターにより駆動されるホルダーを含む。その際、ホルダーは液圧式の延伸要素を備える。この延伸要素によってホーニングリングはホルダー内で放射方向に挟み込まれ、および中心決めされる。
【背景技術】
【0002】
ホーニング加工機の為のそのようなツールスピンドルは、例えばドイツの会社PRAEWEMA Antriebstechnik GmbH社によるパンフレット「SynchroFine 205 HS」(Eschwege/Werra町にて出版)より公知である。
【0003】
ホーニングの際、例えば歯車、またはギアのようなかみ合せられる工作物においては、歯面がいわゆるホーニングリングに押付けられる。このホーニングリングはしばしばセラミック材料からなるか、またはセラミック材料によりコーティングされている。これによって工作物の歯面の材料が、取り去られる。ホーニングリングは、円形状の基礎形状を有しており、そしてその放射方向内側に向けられた側に歯面を有している。
【0004】
工作物とホーニングリングの押付けの間、ホーニングリングはツールスピンドルによって回転する。同様に、工作物も工作物スピンドルによって回転する。工作物スピンドルは、その際、おおよそ10,000回転/分までの回転数で回転する。ホーニングの際に、およそ15−50μm分のみしか過剰分が取り除かれないので、ホーニングリングと工作物は極めて正確に互いに整向され、かつ同期されている必要がある。ホーニングリングは、従って、固定的かつ位置性格的にツールスピンドル内に保持されている必要がある。
【0005】
このため先行技術では、液圧的中心合せシステムが使用される。処理の為にホーニングリングを保持するために、液圧式の延伸要素によってホーニングリングが放射方向で挟み込まれる。これは、液圧媒体(概ね液圧オイル)が、延伸要素内に押し込められることにより行われる。拡張した延伸要素は、ホーニングリングから放射方向の可動性を奪う。
【0006】
先行技術、例えば「SynchroFine 205 HS」(上記参照)においては、液圧システム内の圧力は複数のスクリューを介して調達される。例えば摩耗に基づいて、あるいは、他の工作物タイプへの入れ替えに基づくツール交換(ホーニングリングの交換)の際には、これらスクリューはすべて開放され、そして再び締め付けられる必要がある。これによってツール交換はまったくもって費用・労力を伴うものとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】パンフレット「SynchroFine 205 HS」、PRAEWEMA Antriebstechnik GmbH社、ドイツ国出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題。本発明の課題は、ツール交換が迅速かつ簡単に行い得るホーニング加工機の為のツールスピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の簡単な説明。この課題は、冒頭に記載した形式のツールスピンドルによって解決される。このツールスピンドルは、ホルダーが集会する壁部材と、壁部材を一方側で閉じる底部材によりポット形状に形成される点、少なくとも一つの延伸要素が周回する壁部材の内側に形成されている点、全ての延伸要素が、底部材中に配置される液圧チャンバーと接続されている点、および唯一の調節要素が設けられており、この調節要素のよって液圧チャンバーと、これにともない全ての延伸要素内の液圧媒体の圧力が調節可能である点において際立っている。
【0010】
発明にかかるツールスピンドルにおいて、液圧システムはホルダーの底部材の基本的部分に統合されている。底部材中には、典型的には中央の液圧チャンバーが設けられており、この液圧チャンバーによって一または(通常)複数の液圧配管(少なくとも一つの延伸要素に液圧媒体を供給する液圧配管)が同時に圧力付勢される、または圧力解放されることが可能である。液圧チャンバーの大きさは、ホルダーの周回する壁部材の厚さによって制限されないので、その結果、ホーニング処理の間ホーニングリングの固定の為に十分な液圧力が、延伸要素に対してまたはホルダーの全内周に対して難なく、唯一の調節要素でもって構築されることが可能である。多くの場合、底部材に内側にまたは外側に配置される(または底部材に組み込まれることもある)唯一の調節要素は、液圧力をツール交換の際に簡単かつ迅速に下降または上昇させることができる。
【0011】
調節要素は典型的には、中央に(つまり、ホーニングリングの中心が推移する)ホルダーの回転軸上に)形成される。液圧チャンバー及び/又は中央の配置によって、場合によっては発生する異なる液圧配管及び液圧要素、または液圧的延伸要素の部分領域の間の圧力差が防止される。典型的には調節要素は(例えばスライド可能なスタンプ面によって)液圧媒体を供給する液圧チャンバーの部分容積を変更する。
【0012】
底部材は、一貫して(孔を有さず)形成されていることが可能である。この場合、底部材は、冷却の為及び切りくず及び摩耗くずの除去の為に使用されるオイルの受け止めの為に利用されることも可能である。代替として(および好ましくは)底部材は、貫通部(孔)を備え、オイルを導出する、または重量を削減する。底部材は、ホルダーの機械的安定も行う。その結果、不均衡がより良好に防止される。
【0013】
本発明の枠内で、一または複数の液圧的延伸要素がホルダー内に設けられる。そして各延伸要素は、好ましくは一つの液圧配管を設けられ、これが延伸要素を液圧チャンバーと直接接続する。そのような液圧は移管は、その際、通常、部分的には周回する壁部材内を、そして部分的には底部材内を推移する。
【0014】
本発明の有利な実施形。本発明にかかるツールスピンドルの有利な実施形においては、ホルダーが唯一の液圧的延伸要素を備えること、液圧的延伸要素が周回して形成されていること、および複数の液圧は移管が設けられ、これら液圧は移管が延伸要素を液圧チャンバーと接続することが意図される。この構成によって、ホルダー内における特別に正確なホーニングリングの中心決めが行われ、特に液圧配管が均等に分配して配置される。この実施形の代替として、複数の、好ましくは壁部材の(内側の)周囲に沿って均等に分配された液圧的延伸要素もまた可能である。複数の延伸要素において典型的には少なくとも、そして有利には正確に一つの液圧配管が液圧チャンバーに対して各延伸要素に設けられる。液圧配管は、(すべての実施形において)典型的には星形に配置されており、およびホルダーの周囲に沿って均等に分配されている。
【0015】
調節要素が調節スクリューとして形成される実施形は、特に好ましい。調節スクリューは、特に簡単に作業者が取り扱うことができ、そして、スクリューの調整によって比較的少ない労力で大きな圧力の構築を可能とする。望まれるならば、調節スクリューは、カウンターナットによって意図しない調整に対して簡単に保証されることが可能である。
【0016】
この実施形の有利な改良形は、調節スクリューを底部材に内側に配置することを意図する。内側は通常(工作物スピンドルを引き戻した際に)良好にアクセス可能であり、そして底部材の下側には、例えばツールスピンドルのモーターの為のスペースが残されている。本発明の枠内で、一般的にあらゆるタイプの調節要素が基本的に有利な方式で底部材の内側に配置されることが可能であるという点、注意されたい。
【0017】
他の実施形においては、調節要素は一つの移動可能なスライダーとして形成されている。スライダーは、特に簡単に、外部の操作機構を通じて操作されることが可能である。最も簡単な場合、スライダーは、底部材に例えば外側から、中央に形成され、およびホルダーと共に回転しない操作機構によって(「ボタンを押すごとに」)人と手を介して、またはモーターによって、ホルダーの回転の間もホーニングリングを固定する箇所に保持される。これは例えば底部材無いに進入するピンによる。
【0018】
この実施形の有利な改良形においては、ホルダーは予負荷手段を備えている。この予負荷手段によってスライダーは、ホーニングリングを挟み込みそして中心合わせする位置へと予負荷を与えられる。この場合、スライダーはホーニング処理の間外部の操作機構により保持される必要がない。予負荷手段として、特にバネが使用されることが可能である。スライダーは、ホーニングリングの交換の為または入れ替えの為に、人の手によりまたはモーターにより(「ボタンを押すごとに」)予負荷から解放されることが可能である。このため、ホルダーと共に回転しない、特に外部の操作機構が使用されることができる。
【0019】
他の有利な発展形では、ホルダーは固定機構を備えている。この固定機構によって、スライダーが、ホーニングリングに予負荷を与え、そして中心合わせを行う位置または複数の箇所でセルフロックされる。この場合にも、スライダーは、ホーニング処理の間、外部の操作機構によって保持される必要がない。固定は、その後、ホーニングリングの交換または入れ替えの為に、外側から人の手によって、またはモーターによって(「ボタンを押すごとに」)解除されることが可能である。このため、特に、ホルダーと共に回転しない固定機構が使用されることが可能である。
【0020】
ホルダーの為のモーターによる駆動部がホルダーの底部材に外側から設けられている実施形は、特に有利である。底部材の領域に設けられた駆動部によって、ツールスピンドルの構成は周囲方向でコンパクトに保たれることが可能であり、これは、特に、壁部材に対して隣接して放射方向外側に向かうモーター配置の場合よりもそうである。
【0021】
その際、ホルダーが底部材に外側中央に一つの軸を有し、または一つの軸としっかりと接続されており、そしてホルダーが軸に支承され、および軸を介してモーターにより駆動されることを意図する、この実施形の一つの発展形は有利である。この構成は実践で選択され、特に安定している。
【0022】
本発明の枠内に、少なくとも一つの工作物スピンドルと、発明に従う上述したツールスピンドルを有する 一つのホーニング加工機がある。ホーニングリング(ツール)は、特に簡単かつ迅速に交換されることが可能である。ツールスピンドルは、典型的には垂直方向に向けられ、そしてツールスピンドルは、典型的にはモーターにより移動可能であり、そしてそのスピンドル軸が垂直方向に向けられる。代替として、工作物スピンドルおよびツールスピンドルの他の方向、例えば水平な方向も可能である。
【0023】
本発明にかかるホーニング加工機の有利な実施形は、ホーニング加工機が、機械ハウジングを有し、この機械ハウジング内に工作物スピンドルとツールスピンドルが配置されていること、および機械ハウジング内に作動槽が設けられ、この作動槽がツールスピンドルをオイルを通さないよう取り囲んでいることを意図している。これによって機械ハウジングの内部室の汚染が防止される。作動槽は、特に漏斗形状に形成されていることが可能である。
【0024】
この実施形の有利な発展形は、 作動槽が、空所部を有する窓部を備えており、その際、工作物スピンドルがスピンドルヘッドでもって空所部を通して作動槽内に挿入可能である結果、工作物スピンドルのスピンドルネックは、空所部をオイルを通さないよう閉鎖すること、および窓部が作動槽に対してオイルを通さないようスライド可能に支承されている結果、窓部は工作物スピンドルの調整動作の間、ツールスピンドルに対して相対的に連行されることが可能であることを意図している。この構成は、実践で選択され、および極めて良好な作動室のシール性を可能とする。
【0025】
本発明の他の利点は、明細書および図面から生じる。同様に、上述した、およびさらに詳細に説明する特徴は、発明に従いそれぞれ個々としてまたは複数の任意の組み合わせとして使用されることが可能である。示されたおよび説明された実施形は、限定的列挙として理解されず、むしろ発明の描写の為の例示的特徴を有する。
【0026】
本発明の詳細な説明および図面について。本発明は図面に表されており、および実施例に基づき詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】発明に係るツールスピンドルの一つの実施形の簡略的垂直方向断面図。オイルシールされた作動槽内配置されている。
【
図2】
図1のツールスピンドルのホルダーの簡略的水平方向断面図。唯一の延伸要素の高さの図。
【
図3】
図1のそれと類似するツールスピンドルのホルダーの簡略的水平方向断面図。複数の延伸要素の高さの図。
【
図4】液圧チャンバーおよび調節要素の領域の
図1のそれと類似したツールスピンドルの簡略的垂直方向断面図。セルフロック式のスライダーを有する。
【
図5】調節要素と液圧チャンバーの領域の
図1のそれと類似したツールスピンドルの簡略的垂直方向断面図。ばね付勢されたスライダーを有する。
【
図6】発明に係るホーニング加工機の一つの実施形の簡略的側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、発明に係るツールスピンドル1の一つの実施形を、垂直方向のセクション図として例示的に示す。ツールスピンドル1内には、ツール、つまりホーニングリング2が保持されている。ツールスピンドル1は、作動槽3内に配置されている。この作動槽は、工作物スピンドル1の周囲を、オイルによる汚染から保護している。表された譲許においては、工作物スピンドル4はちょうど、スピンドルヘッドに保持された工作物5、ここでは歯車を、ホーニング処理を受けさせるために配送しているところである。工作物スピンドル4はその際未だ作動槽3の外側にある。
【0029】
ツールスピンドル1は、ホーニングリング2が保持されるホルダー6、軸8、および電動モーター7を有している。この電動モーターによって、軸8とこれに伴いホルダー6も駆動されることが可能である。ホーニングリング2は、その後したがって垂直軸VAの周りを回転する。軸8を介してホルダー6が、ここでは全体として支承されている。
【0030】
ホルダー6は、ポット形状に形成されており、および周回する壁部材9および底部材10を有する。これに対し、
図2のホルダー6の水平方向セクション図も参照されたい。この図は、(延伸要素11を通って推移する)セクション平面の外側のいくつかの詳細を点線で示している。壁部材9の内側には、周回する延伸要素11が形成されている。延伸要素11は、液圧媒体(液圧流体)12の上昇する圧力のもと、(点線で表されるように)放射方向内側に向かって拡大し(矢印方向R参照)、およびこれによってホーニングリング2を挟み込む。逆に、液圧媒体12の圧力が降下するとき、ホーニングリング2は開放される。
【0031】
延伸要素11は、表される実施形においては、基本的に一つのリング形状のチューブとして形成されている。ここでは四つの箇所で、液圧配管13が延伸要素11へと開口している。四つの液圧配管13は、一つの液圧チャンバー14と接続される。この液圧チャンバーは、(放射方向から見て)中央に底部材10内に形成されている。液圧配管13は、星形状(のよう)に液圧チャンバー14から離れそこ部材10を通って推移し、そしてその後壁部材9へと至る。液圧配管13は、その際、対称に液圧チャンバー14の周りに(ここでは360度/4=90度の角度オフセットを伴い四つの液圧配管13のもと)分配され、および同様に構成され、特に同じ長さである。
【0032】
液圧チャンバー14内(およびこれに伴い(延伸要素11、液圧配管13および液圧チャンバー14を有する)全体の液圧システム内の液圧媒体12の圧力は、ここでは調節スクリュー(「液圧延伸スクリュー(独語でいうHydrodehnschraube)」)15aとして形成される調節要素15によって調節可能である。液圧チャンバー14内の圧力を高める為に、調節スクリュー15aが底部材10内にねじ回しこまれる。調節スクリュー15aと接続されるスタンプ16は、液圧チャンバー14内へと深く入り込み、そしてこれによって液圧媒体12を圧縮する、または液圧チャンバー14から(延伸要素11内へと)追い出すことを試みる。液圧チャンバー14内の圧力を下げる為に、調節スクリュー15aは、底部材10からねじ回し引き出される。スタンプ16は、液圧媒体12を膨張させる、または液圧チャンバー14内へと吸引することを試みる。
【0033】
スタンプ16によって、延伸要素を顕著に膨張される(または収縮させる)ことが可能である液圧媒体のボリュームは、液圧チャンバーから排出される(または吸引される)。その結果、ここの調節要素15は、ホーニングリング2を挟み込みおよび開放するのに十分である。液圧チャンバー14および調節要素15の形成の為に、基本的に、全底部材10が提供される。その結果、これらは十分大きく寸法決めすることが可能である。特に、ホルダー6またはツールスピンドル1の放射方向の拡大は、影響されない。調節スクリュー15aは、その際、底部材の内側ISからアクセス可能であり、よって、作業者はホーニングリング2を通って上から良好に到達可能である。
【0034】
ツールスピンドル1は、作動槽3内に配置されている。この作動槽は、近似的に漏斗形状に形成されている。その上方の広がった領域にホルダー6は配置されており、そしてその下方の狭まった領域に電動モーター7が底部材10の外側(下側)ASの領域に配置されている。この配置によって、電動モーター7は、ツールスピンドルの放射方向の拡大に影響しない。
【0035】
作動槽3は、カバー17を有している。このカバーは、ホーニングリング2を交換するために取り外されることができる。カバー17内には、窓部18が水平にスライド可能に支承されている(矢印H参照)。窓部18は、空所部(開口部)19を有している。その直径は、工作物スピンドル4のスピンドルネックに相当する。その結果、空所部に挿入された工作物スピンドル4によって、空所部が完全に閉鎖される。その後、作動槽3もまた全体としてオイルシールされて密閉されるので、ホーニング処理の際にホーニングリング2と工作物5の接触領域に吹き付けられるオイルは、周囲へと至ることが無く、作動槽3の中に留まる。工作物スピンドル4の水平方向の調節動作は、その際、窓部18を水平方向に連行するに至る。しかし、これによって、作動槽3の密閉性は損なわれない。
【0036】
図1および2の実施形において、底部材10内には二つの排出チャネル21が設けられている。これらを通してオイルがホルダー6から下に向かって作動槽3内へと排出されることが可能である。作動槽3の底には、典型的にはオイル排出部が設けられている(図示されていない)。
【0037】
図3は、
図1および2に類似して表された、発明に係るツールスピンドルのホルダー6の液圧システムの代替的形態を表している。本質的相違点のみ説明する。
図3のセクション図は、
図2のセクション図に相当する。
【0038】
この液圧システムにおいては、複数、ここでは8つの延伸要素11が設けられている。これらは、それぞれ、一つの液圧配管13を介して中央の液圧チャンバー14と接続されている。すべての延伸要素11が、液圧媒体12の同じ圧力であるので、よって極めて正確なホーニングリングの中心決めが達成されることが可能である。圧力付勢は、
図1に表されるように、液圧チャンバー14に作用する個々の調節要素を介して行われる。
【0039】
図4は、
図1のツールスピンドル内にも挿入されることが可能であるような、調節要素15の代替的形態を表す。本質的相違点のみ説明する。
【0040】
調節要素15はここではスライダー15bとして形成されており、液圧媒体12の圧力を調節するために、これが液圧チャンバー14内へと押し込まれる、またはこれから外に引き出されることが可能である。スライダー15bが
図4において下に向かって液圧チャンバー14内へと押し込まれると、スライダー15bのスライダーノーズ部40が、後方に向かってホルダーノーズ部41へとはじけ入る。ホルダーノーズ部は、固定斜材42に形成されている。固定斜材42は、底部材10と堅固に接続されており、外側(矢印A参照)に向かって弾性的に曲げられることが可能である。これは、スライダー15bを挿入する際に楔の作用により自動的に行われる。
【0041】
スライダーノーズ部40がホルダーノーズ部41の後方へとはじけ入った状態において、スライダー15bは液圧ちゃんバー14から外に引き出すことができない。これによって、スライダー15bの十分に深い挿入によって達成される圧力付勢された状態が、自動的に保証されることが可能である(「自動固定」)。スライダーノーズ部40とホルダーノーズ部41および固定斜材42の共同性は固定機構とも称されることが可能である。固定斜材42が、外側に向かって曲げられる(例えば人の手によって)ときのみ、スライダー15bは引き戻すことができ、そして液圧チャンバー14の圧力が減少する。
【0042】
示された実施例においては、ホルダーノーズ部41による二つの面が設けられているので、その結果これによって二つの異なる強度の圧力が調節されることが可能であるということに注意されたい。
【0043】
図5は、調節要素15の代替的形態を、これが
図1のツールスピンドル内でどのように使用されるについて表している。本質的な相違点のみが説明される。
【0044】
調節要素15は、ここでも再びスライダー15cとして形成されている。これは基本的に底部材10内に統合されている。スライダー15cは、圧力バネ50によって、液圧チャンバー14内の液圧媒体12の高圧の為の位置に予負荷されている。ここで正確な位置は、固定されたストッパー51によって決定される(代替として固定的ストッパー51が取り除かれる結果、スライダー位置が、圧力バネ50の延伸要素とのバランスにおける高圧に対して生じ、その際、固定的なストッパーがなくとも、万一の液圧媒体12のリークが容易に保証されることができる。
【0045】
補助スタンプ52によって、スライダー15cはバネ力に対抗して上に向かって押圧され、これによって液圧媒体12内の圧力が減少される。補助スタンプ52は、このため、底部材10内へと矢印Dの方向へ挿入されるピン53によって上に向かってスライドされることが可能である。ピン53は、その際、モーターによる詳細には表されていない操作機構によって動かされる。この操作機構は、ここでホルダー6と共に回転しない。
【0046】
液圧チャンバー14内の圧力を、補助スタンプ52の挿入の開始に対して不必要に高めることのないよう、補助スタンプ52は小さな直径を有するべきである。
【0047】
図6には、例示的に側面図として発明にかかるホーニング加工機60の一つの実施形が表されている。ホーニング加工機60は、(例えば
図1に表されるように)作動槽3内に配置されているツールスピンドルと、および、十字式可動台6によっておよびポータルシステム62によって水平方向および垂直方向に移動可能である工作物スピンドル4を有している。工作物スピンドル4は、工作物5をホーニング処理の為に回転させる為のみならず、ピックアップ工程における収容および離脱を行うために形成されている。ホーニング加工機60は、基本的に閉じられた機械ハウジング64内に配置されている。
【0048】
ホーニング加工機60は、ベルトコンベアシステム65を有しており、これを介して個々の工作物5は、機械ハウジング64内の開口部63を通ってホーニング加工機60内へと運び込まれ、そして運び出されることが可能である。
【0049】
ベルトコンベアシステム65は、工作物5を検査スペース66へと連行し、そしてマスター歯車(空歯車)67に押し付けることによって測定が行われることができる。その際、工作物5を移動させるために、垂直方向に伸縮可能な恥部68が使用される。これは、ポータルシステム69によって水平方向に走行を受けることができる。検査の際に、更なる処理に適していないと判断された工作物5は、把持部68によってベルトコンベアシステム65に戻されそして運び出される。
【0050】
ホーニング処理に適当である工作物5は、ピックアップ工程中に検査スペース66で工作物スピンドル4によって捕まれ、そして作動槽3内のツールスピンドルへと連行される。ツールスピンドルまたはそこのホーニング歯車におけるホーニング処理が終了した後、工作物5は、工作物スピンドル4によってベルコトコベアシステム65に戻るよう連行され、そして運び出される。
【0051】
作動槽3は、その際、オイルの進入を防止する。オイルはホーニング処理の際に冷却のため、および旋削くずおよび摩耗くずを工作物5から押し流す為、およびホーニング歯車によって、機械ハウジング64の内部に必要とされる。場合によっては起こりうる、工作物5上のオイルかすは、(工作物スピンドル4によって閉鎖された)作動槽3内で圧力エアによって取り除かれることができる。ホーニングか後期60の内部室、つまり(作動槽3の外側の)機械ハウジング64の内部は、事実上オイルの無い状態である。これによって機械ハウジング64の内部は、基本的に爆発の危険性が無い。せいぜい作動槽3の内部にのみ爆発性のオイル・空気・混合物が発生する可能性があるので、作動槽3のみが爆発リリース部70を設けられる必要がある。