(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727124
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】圧電振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20150514BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20150514BHJP
H01L 41/18 20060101ALI20150514BHJP
H01L 41/22 20130101ALI20150514BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L41/08 C
H01L41/18 101A
H01L41/22
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2008-220141(P2008-220141)
(22)【出願日】2008年8月28日
(65)【公開番号】特開2010-56929(P2010-56929A)
(43)【公開日】2010年3月11日
【審査請求日】2011年8月25日
【審判番号】不服2014-2049(P2014-2049/J1)
【審判請求日】2014年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094651
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 晃
(72)【発明者】
【氏名】渡 辺 誠
【合議体】
【審判長】
水野 恵雄
【審判官】
加藤 恵一
【審判官】
佐藤 聡史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−209795(JP,A)
【文献】
特開2000−114915(JP,A)
【文献】
特開2000−151353(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶からなる圧電素子と、
該圧電素子を内部のキャビティに気密に確保する水晶あるいはガラス系材料からなる容器部材と、
前記容器部材の表面の一つの面である第1面に蒸着またはスパッタリングで形成された第1金属膜と、
前記容器部材の前記キャビティに接する面であり、前記キャビティを挟んで前記第1面に対向する面である第2面に蒸着またはスパッタリングで形成された第2金属膜と、を有し、
前記第1金属膜及び前記第2金属膜に外来ノイズのシールド効果をもたせた圧電振動子において、
前記容器部材が、前記圧電素子を内蔵した圧電素子部、該圧電素子部の下面に接合、積層されるベース部及び前記圧電素子部の上面に接合、積層されるカバー部、からなり、
前記第1金属膜が、前記カバー部の上面に形成され、また、前記第2金属膜が、前記ベース部のキャビティの底部に形成されることを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電部品、例えば、圧電発振器、圧電振動子、に関し、とくに圧電部品を構成するベース部及びカバー部を、圧電素子部の圧電素子と直接接合可能な材料、例えば、水晶、ガラス材料から形成し、圧電素子の気密保持を向上させるとともに、圧電部品の小型化、低背化を図った圧電部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子、水晶フィルター、水晶発振器等の表面実装型圧電部品は、
図3に示すように、底面に端子電極23を設けたベース部材20に絶縁材及び外部電極を介して水晶片21を接続配置し、金属製のリッド部材22をはんだあるいはろう材を用いてベース部材20に接合させて、水晶片21を内部に気密に封止していた。
【0003】
しかしながら、このような従来の圧電部品では、圧電素子の封入及び気密確保に金属製のカバー(リッド部材)が用いられているので、圧電素子の封入等のほかに、外来ノイズ等のシールド効果が期待できるものの、これらの金属製のカバーを、例えばシーム溶接封止等によりカバーをベース部材に固定させるためには、一定のシール巾が必要であった。そのため、圧電部品の小型化、低背化が極めて困難であった。
【0004】
また、従来の圧電部品では、個々の圧電部品毎にカバーを用意し、それぞれシーム溶接封止するので、その生産性が悪かった。
【特許文献1】特開2006−41296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、圧電部品の小型化、低背化と、外来ノイズのシールド効果の向上、ならびに圧電部品の製造の際の生産性の向上である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明は、圧電素子を内蔵し、かつ、該圧電素子を内部に気密確保する金属を蒸着あるいはスパッタリング可能な非導通材料からなる部材の表面に金属膜を蒸着またはスパッタリングにより形成し、外来ノイズのシールド効果をもたせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これにより、外来ノイズのシールド効果が向上するとともに、圧電部品の小型化、低背化が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の圧電部品を、圧電振動子の実施例について、詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の圧電部品の実施例である圧電振動子の縦断面図を示す。
【0010】
この圧電振動子1は、
図1に示すように、水晶またはガラス系材料からなるベース部2と、このベース部2の上面に接合、積層された圧電素子部3及びこの圧電素子部3を覆うようにして接合、積層されたカバー部4と、からなる。
【0011】
まず、ベース部2には、その上面に断面凹状のキャビティ7が形成され、キャビティ7の底部には金属膜2aが、蒸着またはスパッタリングにより形成され、また、ベース部2の底面には、端子電極8が配設されている。
【0012】
また、圧電素子部3には、その中央部に圧電現象を発生する圧電素子6が形成される。この圧電素子部3は、水晶、セラミック材料、あるいは半導体材料から形成する。
【0013】
さらに、カバー部4には、その下面に、断面凹状のキャビティ5が形成され、圧電素子部3をその上面から覆うようにして、圧電素子部3の上面に接合、積層される。また、カバー部4の上面には、Auを主材料とした金属膜4aが蒸着またはスパッタリングにより形成されている。
【0014】
とくに、本発明の圧電部品の実施例である圧電振動子では、圧電素子6を内部に保持し、該圧電素子6の気密を確保する圧電素子部3、ベース部2及びカバー部4を、水晶、ガラス材料のような、金属(Au)を蒸着またはスパッタリングできる非導通な物質から形成し、それらの部材の壁面(表面)に金属膜を、
図2(a)及び
図2(b)のぼかして示す部分に図示のように、蒸着またはスパッタリングにより形成して、外来ノイズ、EMI(電磁気妨害)ノイズのシールド効果をもたせるように構成する。
【0015】
また、本発明の圧電部品では、カバー部4及びベース部2を、ガラス系材料あるいは圧電素子6と同一の組成からなる材料、例えば水晶、で構成し、圧電素子部3とカバー部4及び圧電素子部3とベース部2とを熱圧着による分子間結合、例えばシロキサン結合、により接合して積層し、カバー部4あるいはベース部2の外部とのシールド効果をさらに向上させるようにしてある。
【0016】
ここで、シロキサン結合(Si−O−Si)では、直接接合の場合は、接合部材の接合面を鏡面加工して親水化(OH基化)して仮接合し、これを加熱してシロキサン結合(Si−O−Si)によって原子間レベルで接合する。
【0017】
例えば、水晶板の直接接合では、まず水晶板接合面を鏡面加工して、親水化する。すなわち、水晶板のSi(珪素)にOH基を結合させ、水晶板の接合面同士を重ね合わせて仮接合し、まずOH基の結合とする。
【0018】
次に、水晶の転移点温度未満の温度、例えば300℃で仮接合した水晶板の加熱処理を行い、H
2O(水)を脱水してSi−O−Si(シロキサン基)結合する。
【0019】
水晶片の直接接合は、2枚の水晶板をシロキサン結合による直接接合するので、原子間レベルでの接合となる。この直接接合では、接合面をも親水化してシロキサン結合(Si−O−Si)とするが、さらに水晶板の接合強度を高める場合には、次のようにしてもよい。
【0020】
すなわち、水晶板の一方を親水化(OH基)し、他方を疎水化(H基)して仮接合し、これを転移点温度(573℃)未満で加熱する。これにより、H
2Oが除去され、Si−Si結合となる(特開2000−269106号公報参照)。
【0021】
なお、疎水化は、親水面に対する、例えば希釈フッ素酸(HF)によって得られる。これにより、Siの直接結合となり、さらに接合強度を高めることができ、接合面からの溶液の侵入を防止できる。
【0022】
また、
図2は、本発明の圧電部品の実施例の圧電振動子を、カバー部、圧電素子部及びベース部に分解して示した分解図であって、
図2(a)は、ベース部2のキャビティ内に金属膜を蒸着またはスパッタリングで形成しない例を、また、
図2(b)は、ベース部のキャビティ内に金属膜を蒸着またはスパッタリングで形成した例を示す。両実施例では、これらの部材にスルーホール9を形成し、このスルーホール9をAu等により埋めて貫通電極を形成して、カバー部、圧電素子部及びベース部の電気的導通(グランド効果)の向上を図っている。
【0023】
そして、前述した圧電
振動子の実施例と同様に、
図2(b)に示す個所に、外来ノイズをシールドするAuを主材料とした金属膜2a(
図1参照)を蒸着またはスパッタリングにより形成する。
【0024】
とくに、本発明の圧電部品では、カバー部及びベース部を圧電素子と直接分子間結合により接合するため、水晶からなる圧電素子と同じ物質である水晶、またはガラス系材料で、圧電部品のカバー部またはベース部を形成するので、圧電部品は、透明または半透明なものとなる。
【0025】
例えば、このような構造をもつ圧電部品において、半導体素子(ICチップ)を組み込んで、圧電素子を励振する電子回路を構成したものでは、半導体素子に一様な光が照射され続け、半導体素子のもつ光電効果により電気的特性が変化する。そこで、例えば、カバー部全面に、本願発明の圧電部品のように、金属膜を蒸着またはスパッタリングにより形成することで、半導体素子への光を遮蔽し、半導体素子の光電効果を維持することができる。
【0026】
また、本発明の圧電部品に、半導体素子を組み込むことにより、外来ノイズ、EMIノイズの防止について顕著な効果を有するようになる。
【0027】
さらに、従来の圧電部品では、外来ノイズ、EMIノイズの防止に、金属製のカバー(リッド)を用いていたが、本発明のように、水晶、ガラス系材料からなるカバー部に金属膜を蒸着またはスパッタリングにより形成することにより、同等のシールド効果が得られるようになる。
【0028】
また、本発明の圧電部品では、水晶あるいはガラス系材料からなるカバー部またはベース部に、外部からのノイズのシールド効果が得られるように、それらの表面に金属膜を蒸着またはスパッタリングにより形成するので、周囲の環境(寄生容量等)による圧電部品の特性への悪影響が大巾に低減される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の圧電部品は、外来ノイズの防止及び小型化・低背化が要求される圧電発振器、圧電振動子、フィルター等に広範に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の圧電部品の実施例である圧電振動子の完成品の縦断面図を示す。
【
図2】
図1に示した本発明の実施例の圧電振動子をカバー部、圧電素子部及びベース部に分解して示した分解図であって、
図2(a)は、ベース部のキャビティ内に金属を蒸着またはスパッタリングにより形成しない圧電振動子を、また、
図2(b)は、ベース部のキャビティ内に金属膜を蒸着またはスパッタリングにより形成した圧電振動子を示す。
【0031】
1 圧電部品(圧電振動子)
2 ベース部
2a 金属膜
3 圧電素子部
4 カバー部
4a 金属膜
5 キャビティ(カバー部)
6 圧電素子
7 キャビティ(ベース部)
8 端子電極