(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
被培養体を収納するチャンバの内部に二酸化炭素(CO
2)ガスを供給するための手段と、培養室(チャンバ)の内部のCO
2ガスの濃度を検出するためのセンサとを備え、CO
2ガスの濃度に応じて、CO
2ガスの供給量を制御するCO
2インキュベータ(以後「インキュベータ」と略称する)が知られている。
【0003】
このようなインキュベータを用いて被培養体を培養した後にこれを変更する場合、細胞や微生物等の先の被培養体自体又は同被培養体に寄生していた菌やウイルス等がチャンバの内壁に付着していたり、同チャンバの内部を浮遊していたりするため、これらによる次の被培養体の汚染(コンタミネーション)を回避するべく、チャンバの内部に対し滅菌処理を行なう必要がある。
【0004】
チャンバ内を滅菌する仕組みに関し、例えば、特許文献1には、ファン、オゾン発生器、チャンバに併設されるバイパス路内のオゾン濃度を測るオゾンセンサ、チャンバ内を加熱するヒータとは別に設けられるバイパス路ヒータ、チャンバ内の温度を測る第1温度センサ、バイパス路内の温度を測る第2温度センサ、制御部、チャンバ内の空気の湿度の管理やオゾンガスの滅菌作用の向上させるための水皿等を備えたCO
2インキュベータが開示されている。
【0005】
また特許文献2には、培養物を収納するチャンバと当該チャンバの開口を開閉自在に閉塞する扉、外部から供給されるCO
2ガスをチャンバ内に取り込むためのバルブ、チャンバ内の空気を循環させるファン、紫外線を発する紫外線ランプ等を備えたCO
2インキュベータが開示され、チャンバ内の殺菌処理に際し、殺菌効果を有するガス(過酸化水素ガス、オゾンガス)を発生する殺菌ガス発生装置をチャンバ内に設置することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかになる。
【0014】
[第1実施形態]
図1乃至
図4に第1実施形態として説明するインキュベータ1を示している。尚、以下の説明では、これらの図に示した向きに座標系を設定するものとする。
【0015】
図1はインキュベータ1を前方(+X方向)から眺めた外観斜視図である。
図2はインキュベータ1を
図1と同じ方向から眺めた外観斜視図であり、後述する外扉22及び内扉32を閉じるとともに、後述する引き出し11を外箱2に設けられる後述する収納部12に収納した状態を示す図である。
図3はインキュベータ1を
図2のY−Y’線で切断した断面図である。
図4はインキュベータ1を
図2のX−X’線で切断した断面図である。
【0016】
これらの図に示すように、インキュベータ1は、外箱2、外箱2の内部に設けられる内箱3、及び内箱3の下方(−Z方向)に設けられる引き出し構造(引き出し11、収納部12)を備えている。
【0017】
外箱2はステンレス等の素材からなる略直方体状の箱体である。内箱3はステンレス等の素材からなる、外箱2の外形よりもやや小さな略直方体状の箱体である。
図3及び
図4に示すように、内箱3は、背板311、対向する2つの側面板312,313、及び天井板314を有する。尚、図面では内箱3をインキュベータ1内に支持するための構造については省略している。
【0018】
外箱2と内箱3との間には断熱材5が充填されている。外箱2の+X側の側面には開口21が形成されており、外箱2には、この開口21を閉塞してインキュベータ1内を気密に保つための2つの扉(外扉22及び内扉32)が蝶番(ヒンジ)等を介して取り付けられている。尚、外扉22や内扉32は、左右いずれを支点としても開閉可能な構造(リバーシブル構造)とすることもできる。
【0019】
外扉22はステンレス等の素材からなる、内扉32よりもやや外形の大きな略矩形状を呈し、内部に断熱材が充填されている。外扉22の内側の周縁には、インキュベータ1内の気密性を確保すべくパッキン23が設けられている。内扉32は、樹脂、硝子等の透明の素材からなる略矩形状の板材である。外箱2の開口21の周囲の内扉32が当接する部分には、インキュベータ1内の気密性を確保すべくパッキン33が設けられている。
【0020】
内箱3の内部空間(チャンバ)には、細胞や微生物等の被培養体を載置するための複数の棚板6が設けられている。棚板6の周囲には、棚板6の背面(−X側)に設けられる背板411、棚板6の両サイド(±Y方向)に設けられる2つの側面板412,413、及び棚板6の上方(+Z方向)に設けられる天井板414を備えて構成されるケース41が設けられている。ケース41は、例えば、ステンレス等の素材からなる。
【0021】
側面板412,413の面内には、パンチング加工等によって多数の風穴48が形成されている。以下の説明において、ケース41内の空間のことを培養室40と称する。図面では、ケース41をインキュベータ1内に支持するための構造については省略している。
【0022】
引き出し11は、ステンレスや樹脂等の素材からなる略直方体状の箱体である。引き出し11の左右側面111,112(及び収納部12の対応する位置)には、引き出し11を収納部12に円滑に抜き差しできるように支持するためのレール構造13が設けられている。
【0023】
引き出し11の前面パネル113の前面側(+X側)には、利用者が引き出し11を抜き差しする際に持ち手部分となる取手114が設けられている。引き出し11の前面パネル113の内側(−X側)の周縁には、インキュベータ1内の気密性を確保すべくパッキン36が設けられている。
【0024】
図3に示すように、ケース41の側面板412と内箱3の側面板312との間には、第1の隙間空間51が形成されている。ケース41(ケース41の最下段の棚板6)と引き出し11との間には、第1の隙間空間51に繋がる第2の隙間空間52が形成されている。ケース41の側面板413と内箱3の側面板313との間には、第2の隙間空間52に繋がる第3の隙間空間53が形成されている。さらに前述した天井板414と内箱3の天井板314との間には、第3の隙間空間53及び第1の隙間空間51に繋がる第4の隙間空間54が形成されている。そしてこれら第1乃至第4の隙間空間51〜54によって、棚板6の周囲には、内箱3内を循環する空気が流通するダクト50が形成されている。
【0025】
同図に示すように、ダクト50の流路中(同図では第1の隙間空間51内)には、ファン42(ファンモータ、多翼ファン等)が設けられている。インキュベータ1を用いた培養運転の際、もしくはインキュベータ1内部の除菌処理に際しては、このファン42が回転することによりダクト50内及び培養室40内を循環する空気の流れが生じる。ダクト50内の天井板414の上面側には、ダクト50を流れる空気を加熱するためのヒータ43が設けられている。
【0026】
図3又は
図4に示すように、引き出し11の内部には皿構造18が設けられている。皿構造18は、第1の底面1811と、第1の底面1811の周囲に立設された第1の側面1812によって区画された第1の収容部181を備える。また皿構造18は、第1の収容部181に設けられ、第1の収容部181の第1の底面1811よりも所定高さ底上げされた第2の底面1821と、第2の底面1821の周囲に立設され第1の側面1811よりも低背の第2の側面1822とによって区画された第2の収容部182を備える。
【0027】
第1の収容部181の第1の底面1811には、皿構造18に収容されている液体を加熱するためのヒータ192が設けられている。第2の収容部182の第2の底面1821には超音波振動子191が設けられている。
【0028】
以上の構成に加えて、インキュベータ1は、当該インキュベータ1の動作制御や状態監視等を行うための制御装置100を備えている。
図4に示すように、制御装置100は、例えば、外箱2の背面に設けられたカバー101や外扉22等に収容されている。
【0029】
図5に制御装置100のブロック図を示している。同図に示すように、制御装置100は、中央処理装置151、メモリ152、計時装置153、入力装置154、表示装置155、各種センサ群156、流量制御装置157、ファン制御装置158、振動子制御装置159、及びヒータ制御装置160を備えている。
【0030】
中央処理装置151は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等を用いて構成される。中央制御装置111は、制御装置100の統括的な役割を果たす。
【0031】
メモリ152は、中央処理装置151によって読み出されて実行されるプログラムや中央処理装置151によって参照されるデータが格納される、揮発性又は不揮発性の記憶装置である。
【0032】
計時装置153は、日時情報や経過時刻等の時間に関するデータを生成する。計時装置153が生成した情報は、例えば、流量制御装置157、ファン制御装置158、振動子制御装置159、及びヒータ制御装置160が備える計時情報に基づく駆動制御の機能に用いられる。
【0033】
入力装置154は、利用者からインキュベータ1の動作を設定するための情報等の入力情報を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、キーボード、タッチパネル等である。中央処理装置151は、入力装置154から受け付けた情報に基づき、流量制御装置157、ファン制御装置158、振動子制御装置159、及びヒータ制御装置160を制御する。
【0034】
表示装置155は、インキュベータ1の動作状態や監視情報等を利用者に視覚的な情報として提供するユーザインタフェースであり、例えば、液晶ディスプレイや有機ELパネル等である。中央処理装置151は、流量制御装置157、ファン制御装置158、振動子制御装置159、及びヒータ制御装置160から動作状態や監視情報を取得し、取得した情報を表示装置155に出力する。
【0035】
センサ群116は、内箱3の内部の温度を計測する温度センサ、内箱3の内部の湿度を計測する湿度センサ、第1の収容部181や第2の収容部182に貯留されている液体の水位を検知する水位センサ、内箱3の内部の二酸化炭素(以下、CO
2と記載する。)の濃度を計測するCO
2センサを含み、更に内箱3の内部の酸素(以下、O
2と記載する。)の濃度を計測するO
2センサ、内箱3の内部の窒素(以下、N
2と記載する。)の濃度を計測するN
2センサ、内箱3の内部の過酸化水素(以下、H
2O
2と記載する。)の濃度を計測するH
2O
2センサ等を備えてもよい。
【0036】
流量制御装置157は、一端が外箱2の外部から内箱3内に貫通して設けられ、他端がガスボンベ等のガス供給源に接続されたガス供給管(不図示)の経路途中に設けられた電磁バルブ(不図示)を制御(PID(Proportional Integral Derivative)制御等)し、ノズルから内箱3内へのガス8(CO
2、O
2等)の供給を制御する。中央処理装置151は、センサ群116から取得される情報に基づき、培養室40内のガス濃度(CO
2濃度、O
2濃度等)が適切になるように流量制御装置157を制御する。
【0037】
ファン制御装置158は、ファン42の回転数を制御(PID制御等)する。中央処理装置151は、センサ群116から取得される情報に基づき、ダクト50を流れる気流の速度が適切になるようにファン制御装置158を制御する。
【0038】
振動子制御装置159は、超音波振動子191の動作(オンオフ、周波数等)を制御(PID制御等)する。中央処理装置151は、センサ群116から取得される情報に基づき、培養室40内の湿度やH
2O
2の濃度が適切になるように振動子制御装置159を制御する。
【0039】
ヒータ制御装置160は、ヒータ43及びヒータ192の動作(オンオフ、温度等)を制御(PID制御、サーミスタ制御等)する。中央処理装置151は、センサ群116から取得される情報に基づき、皿構造18に貯留されている液体の温度、培養室40内の湿度、ダクト50を流れる気体の温度等が適切になるように、ヒータ制御装置160を制御する。
【0040】
<加湿時の動作>
図6はインキュベータ1を
図2に示すY−Y’線で切断した断面図であり、内箱3内の加湿時における、インキュベータ1の動作を説明する図である。同図に示す動作は、例えば、培養室40内の湿度が適正値(目標値)よりも低い場合に行われる。
【0041】
内箱3内を加湿する際は、まず皿構造18の第1の収容部181に必要量の水を予め供給しておく。尚、利用者は引き出し11を引き出すことで、簡便に第1の収容部181に水を供給することができる。また利用者は、引き出し11を引き出すことで、第1の収容部181に貯留されている水の残量を容易に確認することができる。
【0042】
図6に示すように、内箱3の加湿時にはファン42を回転させて空気を循環させる。同図に矢線で示しているように、この気流によって第1の隙間空間51から第2の隙間空間52に連続的に空気が流入し、第2の隙間空間52に流入した空気は第1の収容部181に貯留されている水と接触する。そして水と接触することにより湿潤となった空気が第1の隙間空間51から後続して流入してくる空気に押されて第3の隙間空間53に流入する。
【0043】
前述したように、側面板413の面内には多数の風穴48が形成されている。そのため、第3の隙間空間53に流入した空気の一部は第3の隙間空間53を第4の隙間空間53に向けて上昇し、一方、流入した空気の他の一部は側面板413に設けられた風穴48を通って培養室40に流入する。ここで第1の隙間空間51内では、ファン42の作用によって下降気流が生じているので、第1の隙間空間51は第3の隙間空間52に比べて負圧となる。そのため、第3の隙間空間53の空気は培養室40内に効率よく吸い込まれ、培養室40内に気流(+Y→−Y方向の気流)が生じて第1の隙間空間51に排出され、第1の隙間空間51を流れる下降気流と合流することとなる。
【0044】
このように、本実施形態のインキュベータ1によれば、加湿に際しダクト50内を循環する空気に効率よく水分が供給されるとともに、水分を含んだ湿潤な空気を効率よく培養室40内に送り込むことができるので、培養室40内の湿度管理を効率よく行うことができる。
【0045】
<急加湿時の動作>
図7は
図3と同様にインキュベータ1を
図2に示すY−Y’線で切断した断面図であり、内箱3内の急加湿時における、インキュベータ1の動作を説明する図である。急加湿動作は、培養室40内の湿度が適正値(目標値)よりも低く、内箱3内を急速に加湿したい場合に行われる。これは、例えば、扉が開閉されて庫内湿度が低下した場合があげられる。
【0046】
内箱3内を急加湿する際は、前述した加湿時の場合と同様に、皿構造18の第1の収容部181に予め水を供給しておく。尚、急加湿時には、加湿時と異なり、第2の収容部182に十分な量の水が浸入する程度の水を第1の収容部181に供給しておく。つまり、加湿時には第1の収容部181と第2の収容部182の双方に水が供給されることになる。そして、第2の収容部182の水位が所定水位まで低下したことを水位センサにより検知したときは、超音波振動子191の空焚きを防止するために動作を終了する。
【0047】
加湿時の場合と同様に、急加湿時にはファン42を回転させてダクト50内及び培養室40内に空気を循環させる。加えて急加湿時には超音波振動子191を動作させる。ここで貯音波振動子191を動作させると、第2の収容部182に貯留されている水が霧化(ミスト化)されて第2の収容部182の液面に水柱が形成され、第2の隙間空間52を流れる空気はこの水柱の水滴(ミスト)と接触する。
【0048】
このように本実施形態のインキュベータ1はダクト50内を循環する空気と超音波振動子191によって霧化された水とを接触させる構造(気液接触構造)を備えるため、第2の隙間空間52を流れる空気と水との間の接触面積が増大し、第2の隙間空間52を流れる空気に効率よく積極的に水分を供給することができる。そのため、水分を含んだ湿潤な空気を効率よく培養室40内に送り込むことができ、培養室40内の湿度管理を効率よく行うことができる。
【0049】
<除菌処理時の動作>
図8は
図3と同様にインキュベータ1を
図2に示すY−Y’線で切断した断面図であり、内箱3内の除菌処理時におけるインキュベータ1の動作を説明する図である。
【0050】
同図に示すように、除菌処理時には、皿構造18の第2の収容部182に過酸化水素水溶液等の除菌用処理液を貯留しておく。尚、利用者は引き出し11を収納部12から引き出すことで簡便に第2の収容部182に除菌用処理液を供給することができる。また第2の収容部182の容積を、例えば一回の除菌処理に必要な量に一致させておくようにすれば、計量作業を省略することができる。
【0051】
加湿時又は急加湿時の場合と同様に、除菌処理時にはファン42を回転させてダクト50内及び培養室40内に空気を循環させる。また急加湿時の場合と同様に、超音波振動子191を動作させて第2の収容部182に貯留されている除菌用処理液を第2の隙間空間51を流れる気流に積極的に接触させる。
【0052】
ここで急加湿時の場合と同様に、貯音波振動子191によって除菌用処理液の水柱が形成され、これにより第2の隙間空間52を流れる空気と除菌用処理液との間の接触面積が増大し、第2の隙間空間52を流れる空気に効率よく除菌用処理液を供給することができる。
【0053】
このように、本実施形態のインキュベータ1によれば、急加湿に際しダクト50内を循環する空気に効率よく積極的に除菌用処理液を供給することができるとともに、除菌用処理液を含んだ空気を効率よくダクト50内及び培養室40内に送り込むことができるので、ダクト50内及び培養室40内を確実に効率よく除菌することができる。
【0054】
また本実施形態のインキュベータ1は、必要供給量の異なる複数種類の液体のインキュベータ1への供給に柔軟に対応することができる。また同じ超音波振動子を第1の液体及び第2の液体の双方の霧化に用いることができる。そのため、液体の種類ごとに個別に超音波振動子191を設ける必要がなく、インキュベータ1の構成の簡素化、製造工程の簡素化、製造コストの低廉化等を図ることができる。
【0055】
また本実施形態のインキュベータ1は、加湿又は急加湿のいずれかを選択して培養室40内の加湿処理を行うことができるので、ユーザのニーズに柔軟に対応することができる。また不必要に急加湿を行わないことで、インキュベータ1の運転時の電力消費を抑えることができる。
【0056】
[第2実施形態]
図9は第2実施形態として説明するインキュベータ1の断面図である。第2実施形態のインキュベータ1は、第1実施形態のインキュベータ1と内箱3内部の構造や内箱3内部における空気の循環経路が異なるが、他の構成については第1実施形態のインキュベータ1と同様である。
【0057】
同図に示すように、第2実施形態のインキュベータ1は、第1実施形態のインキュベータ1におけるケース41に相当する構成は備えていない。第2実施形態のインキュベータ1は、内箱3内の背面側(−Y側)に内箱3の背板311と並行に棚板6の全体に亘って背面板45を設けている。同図に示すように、この背面板45によって内箱3内の背面側にダクト50が形成されている。
【0058】
背面板45の上方(+Z方向)には、パンチング加工等によって多数の風穴451が形成されている。ダクト50の上方(+X方向)の端部には、風穴451を介して棚板6が設けられている空間(以下、この空間のことを培養室40と称する。)から気体を吸い込み、吸い込んだ気体をダクト50内の下方に向けて送り出すファン42(ファンモータ、多翼ファン等)が設けられている。
【0059】
背板411の下端は皿構造18から所定間隔だけ離間させてあり、これにより背板411の下方でダクト50が培養室40と繋がっている。最下位に存在する棚板6と引き出し11との間にはカバー47が設けられている。カバー47の略水平な面内には多数の風穴471が形成されている。尚、第2実施形態のインキュベータ1においてカバー47は必ずしも必須の構成要素ではない。各棚板6の面内には、パンチング加工等により上下方向(±Z方向)に気流を通過させるための多数の風穴49が設けられている。
【0060】
<加湿時の動作>
図10は第2実施形態のインキュベータ1の加湿時における動作を説明する図である。同図に示す動作は、例えば、培養室40内の湿度が適正値(目標値)よりも低い場合に行われる。第1実施形態のインキュベータ1の場合と同様に、内箱3内の加湿時には、皿構造18の第1の収容部181に必要量の水を予め供給しておく。
【0061】
同図に示すように、加湿時にはファン42を回転させてダクト50内に下降気流を生じさせる。これにより培養室40の空気がダクト50の上方からダクト50内に吸い込まれ、吸い込まれた空気はダクト50を下降してダクト50の下方に送られる。
【0062】
ダクト50の下方に送られた空気は、ダクト50の下方から第1の収容部181の液面に向けて吹き降り、ダクト50から吹き降りた空気が第1の収容部181に貯留されている水と接触する。そして水と接触することにより空気は水分を包含し、水分を包含した空気は後続してダクト50から吹き降りてくる空気に押し出されて上昇流に転じ、カバー47の風穴471を抜けて培養室40に流入する。そして培養室40内に流入した空気は棚板6の風穴49を抜けて上昇し、内箱3の上方へと送られ、再び背面板45の風穴451から吸い込まれて下降する。
【0063】
このように、本実施形態のインキュベータ1によれば、加湿に際しダクト50から吹き降りてくる空気に効率よく水分が供給されるとともに、水分を含んだ湿潤な空気が効率よく培養室40内に送り込まれるので、培養室40内の湿度管理を効率よく行うことができる。
【0064】
また第2実施形態のインキュベータ1によれば、第1実施形態のインキュベータ1のように、側面板412,413、天井板414等を設けることなく、背板411のみによって気体を循環させるためのダクト50を構成することができる。
【0065】
<急加湿時の動作>
図11は第2実施形態のインキュベータ1の急加湿時の動作を説明する図である。同図に示す動作は、例えば、培養室40内の湿度が適正値(目標値)よりも低く、内箱3内を急速に加湿したい場合に行われる。
【0066】
内箱3内の急加湿時には、前述した加湿時の場合と同様、皿構造18の第1の収容部181に予め水を供給しておく。尚、急加湿時には、加湿時と異なり、第2の収容部182に十分な量の水が浸入する程度の水を第1の収容部181に供給しておく。
【0067】
加湿時の場合と同様に、急加湿時にはファン42を回転させてダクト50内及び培養室40内に空気を循環させる。加えて急加湿時には、超音波振動子191を動作させる。ここで貯音波振動子191を動作させることにより、第2の収容部182に貯留されている水の液面に水柱が形成され、ダクト50から吹き降りてくる空気はこの水柱の水滴(ミスト)と接触する。そのため、ダクト50から吹き降りてくる空気と水との間の接触面積が増大し、ダクト50から吹き降りてくる空気に効率よく水分を供給することができる。
【0068】
このように、本実施形態のインキュベータ1によれば、急加湿に際しダクト50から吹き降りてくる空気に効率よく積極的に水分が供給される。そのため、水分を含んだ湿潤な空気を効率よく培養室40内に送り込むことができ、培養室40内の湿度管理を効率よく行うことができる。
【0069】
<除菌処理時の動作>
図12は第2実施形態のインキュベータ1の除菌処理時の動作を説明する図である。同図に示すように、除菌処理時には、第2の収容部182に過酸化水素水溶液等の除菌用処理液を貯留しておく。尚、利用者は引き出し11を引き出すことで簡便に第1の収容部181に除菌用処理液を供給することができる。また第2の収容部182の容積を、例えば、一回の除菌処理について必要とされる量に一致させておけば、計量作業を省略することができる。
【0070】
加湿時又は急加湿時の場合と同様に、除菌処理時にはファン42を回転させてダクト5
5内及び培養室40内に空気を循環させる。また急加湿時の場合と同様に、超音波振動子191を動作させて第2の収容部182に貯留されている除菌用処理液をダクト50から吹き降りてくる空気に積極的に接触させる。
【0071】
ここで急加湿時の場合と同様に、貯音波振動子191によって除菌用処理液の水柱が形成され、ダクト50から吹き降りてくる空気と除菌用処理液との間の接触面積が増大し、ダクト50から吹き降りてくる空気に効率よく除菌用処理液を供給することができる。
【0072】
このように、本実施形態のインキュベータ1によれば、急加湿に際しダクト50内を循環する空気に効率よく積極的に除菌用処理液が供給されるとともに、除菌用処理液を含んだ空気が効率よくダクト50内及び培養室40内に送り込まれるので、ダクト5内及び培養室40内を確実かつ効率よく除菌処理することができる。
【0073】
尚、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、培養室40内の汚染をより確実に防ぐために、インキュベータ1に紫外線殺菌ランプやオゾン発生器等を設けてもよい。