(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態である検眼システムの概略構成図である。検眼システム100は、大別して、自覚的に被検者眼の視機能を検査するための検眼装置50と、被検者眼に遠用検査視標を呈示するための視標呈示装置30と、を備えている。検眼装置50は、左右対称な一対のレンズ室ユニット52(左レンズ室ユニット52L,右レンズ室ユニット52R)と、レンズ室ユニット52を吊下げ支持する支持ユニット53と、を備えており、検眼テ−ブル1に固定されている。レンズ室ユニット52内には、球面レンズ、円柱レンズ、分散プリズム、ロータリプリズム、等の多数の光学素子が同一円周上に配置されているレンズディスクが回転可能に保持されており、レンズ室ユニット52に設けられている検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)に光学素子が切換え配置される。検査窓50に配置される光学素子の切換え等は、入力手段(操作手段)であるコントローラ60の操作によって行われる。支持ユニット53は、被検者の瞳孔間距離に合わせて左検査窓51Lと右検査窓51Rとの間隔を変えるためのレンズ室ユニット52の間隔調節機構(輻輳機構を含む)を備えている。また、支持ユニット53の略中央部(左レンズ室ユニット52Lと右レンズ室ユニット52Rとの間付近)には、近用検査視標呈示ユニット55をスライド可能に保持している近用棒56が固定されている。視標呈示ユニット55は、検査窓51からの距離が20〜70cm程度の間で移動される。本実施形態では、近用視力値検査又は近用両眼視機能検査の際、視標呈示ユニット55は、検査窓51からの距離が40cmの位置に置かれる。
【0010】
視標呈示装置30は、遠用検査視標を呈示するディスプレイ(視標呈示部)31を備えている。視標呈示装置30は、リレーユニット6を介してコントローラ60と接続されており、ディスプレイ31に表示される視標の切換え等がコントローラ60の操作によって行われる。コントローラ60には、視力値検査を行うためのスイッチ、両眼視機能検査を行うためのスイッチ、等の種々のスイッチが設けられており、視標呈示装置30は、スイッチの操作に応じてディスプレイ31に遠用視力値検査視標又は遠用両眼視機能検査視標を呈示(表示)する。視標呈示装置30は、検眼装置50と略同じ高さに位置されると共に、検査に適した距離だけ検眼装置50から離れるように設置される。本実施形態では、検眼装置50と視標呈示装置30との間の距離(検査距離,設置距離)は、遠用検査に適した距離、例えば、5mとされている。
【0011】
図2は、左眼検査用の左レンズ室ユニット52Lを上方から見た部分断面図である。被検者眼E(左眼EL)が、測定光軸L上に位置することにより、検査が行われる。レンズ室ユニット52のカバー20内には、レンズディスク群10であり、各々が開口(又は0Dのレンズ)及び複数の光学素子を備えている6枚のレンズディスク11〜16がシャフト21を回転中心にして配置されている。各レンズディスクの配置は、被検者眼E側から順に、強球面レンズディスク11、弱球面レンズディスク12、強円柱レンズディスク13、弱円柱レンズディスク14、第1補助レンズディスク15及び第2補助レンズディスク16となっている。各レンズディスクの外周には、ギアが形成されており、各レンズディスクは、対応するモータ18(モータ18a〜18f)の回転シャフトに取り付けられているピニオンギアと噛合されている。モータ18(モータ18a〜18f)によってレンズディスク群10(レンズディスク11〜16)が回転されることにより、光軸L上に種々の光学素子が切換え配置される。なお、検査窓51(51L)には、検者側に保護カバー40aが取り付けられており、被検者側に保護カバー40bが取り付けられている。また、本実施形態では、レンズディスクの枚数を6枚としたが、これに限るものではなく、使用するレンズ等の光学素子の種類及び枚数に応じて適宜定められればよい。
【0012】
レンズディスク11及び12は、球面レンズを保持する。レンズディスク11及び12には、開口(又は0Dのレンズ)と度数の異なる複数の球面レンズとが配置されている(設けられている)。レンズディスク13及び14は、円柱レンズを保持する。レンズディスク13及び14は、開口(又は0Dのレンズ)と度数の異なる複数の円柱レンズとが配置されている(設けられている)。なお、レンズディスク13及び14の円柱レンズは、光軸Lを中心に回転可能となっている。
【0013】
レンズディスク15は、第1群の補助レンズを保持する。レンズディスク15は、開口(又は0Dのレンズ)以外に、+0.12Dの球面レンズ、赤フィルタ/緑フィルタ、分散プリズム(6/10△)、±0.50Dのクロスシリンダレンズ、偏光板(135度,45度)、+0.12D付き偏光板、マドックスレンズ、等が配置されている(設けられている)。なお、第1群の補助レンズは、これらに限定されるものではない。
【0014】
レンズディスク16は、第2群の補助レンズを保持する。レンズディスク16は、開口(又は0Dのレンズ)以外に、ロータリプリズム41、クロスシリンダレンズ(±0.25D,±0.50)、±0.25Dのオートクロスシリンダレンズ、眼幅調整用のマークが付されている素通しのレンズ、+10Dの球面レンズ、−10Dの球面レンズ、等が配置されている(設けられている)。なお、ロータリプリズム及びクロスシリンダレンズは、光軸Lを中心に回転可能となっている。また、第2群の補助レンズは、これらに限定されるものではない。
【0015】
ロータリプリズム41は、同じ度数の2つのプリズム41a及び41bを備えている。ロータリプリズム41はプリズム41a及び41bを相対的に回転させることにより、プリズム度数及び基底方向を連続的に変化させるものである。
【0016】
プリズム41a及び41bは、ギアが形成されているホルダ42a及び42bにより、光軸Lを中心に回転可能にディスク16に取り付けられている。ホルダ42aのギアは、シャフト21を中心に回転する大ギア22に噛合されており、この大ギア22の内側に一体的に形成されているギアがリレーギア23を介してモータ19aの回転シャフトに取り付けられているピニオンギアに連結されている。モータ19aの回転は、ギア23及び22を介してホルダ42aに伝達される。一方、ホルダ42bのギアは、シャフト21を中心に回転する大ギア24に噛合されており、この大ギア24に固定されているギア25がリレーギア26を介してモータ19bの回転シャフトに取り付けられているピニオンギアに連結されている。モータ19bの回転は、ギア26、25及び24を介してホルダ42bに伝達される。このようにして、モータ19aの駆動によってプリズム41aが回転され、モータ19bの駆動によってプリズム41bが回転される。これにより、プリズム41a及び41bが各々独立して回転され、検査窓51において所期する状態で被検者眼の前方に配置される。
【0017】
なお、円柱レンズの回転機構とクロスシリンダレンズの回転機構とは、ロータリプリズム41の回転機構と類似している。また、円柱レンズの回転機構、ロータリプリズム41の回転機構、等には、特開2007−68574号公報に開示された技術が利用できる。
【0018】
次に、本実施形態のコントローラ60について説明する。
図3は、コントローラ60を上方から見た外観図である、コントローラ60は、呈示されている視標、検査内容、検査結果、等を表示する表示手段(出力手段)及び入力手段(操作手段)であるモニタ61、入力手段(操作手段)である各種スイッチが複数配置されているスイッチパネル62、等を備えている。モニタ61は、タッチパネル機能を有するカラーディスプレイであり、表示されている視標、検査項目、等を検者が選択(タッチ)することにより、装置を操作できる構成となっている。スイッチパネル62には、左右に回すことによって数値の増減、光学素子の切換え、等の信号を入力するためのダイヤルスイッチ63、球面度数S、乱視度数C、乱視軸角度A、瞳孔間距離PD、等のデータを変更するモードに切換えるためのモードスイッチ64、プログラム検査用のスタート/送りスイッチ65、表示モードを設定又は変更するためのメニュースイッチ66、等が設けられている。例えば、水平斜位検査においては、ダイヤルスイッチ63を回転させることにより、検査窓51に配置されているロータリプリズム41のプリズム度数Δが増減される。ダイヤルスイッチ63が右に回転さえると、内側へのプリズム度数が増加するようにロータリプリズム41が回転される。一方、ダイヤルスイッチ63が左に回転さえると、外側へのプリズム度数が増加するようにロータリプリズム41が回転される。このようにして、コントローラ60(ダイヤルスイッチ63)によってロータリプリズム41を所期する状態(方向)のプリズム度数に設定できる。なお、ロータリプリズム41を回転させるための指令信号は、ダイヤルスイッチで送られるのではなく、通常のキー(ボタン)スイッチで送られてもよい。
【0019】
次に、検眼システム100の制御系について説明する。
図4は、検眼システム100の制御系の概略ブロック図である。リレーユニット6の制御手段である制御部7に、検眼装置50の制御手段である制御部57、視標呈示装置30の制御手段である制御部37、コントローラ60の制御手段である制御部67、が接続されている。リレーユニット6は、検眼システム100において、データ、指令信号、等の入出力を行うためのユニットである。
【0020】
制御部57には、モータ18(モータ18a〜18f)、モータ19a及び19b、等が接続されている。モータ18(モータ18a〜18f)には、図示無きギア等を介してレンズディスク群10(レンズディスク11〜16)が連結されている。モータ19aには、ギア22及び23等を介してホルダ42a(プリズム41a)が連結されている。また、モータ19bには、ギア24〜26等を介してホルダ42b(プリズム41b)が連結されている。なお、制御部57には、コントローラ60(制御部67)から送信される指令信号をデコードするデコーダ等が備えられている。指令信号によってモータが駆動され、各種光学素子が検査窓51に配置される。
【0021】
制御部37には、ディスプレイ31、視標(のデータ)等を記憶する記憶手段であるメモリ38、等が接続されている。制御部37には、コントローラ60(制御部67)から送信される指令信号をデコードするデコーダ等が備えられている。
【0022】
制御部67には、モニタ61、ダイヤルスイッチ63等を含むスイッチパネルパネル62、検査プログラム、検査結果、等を記憶する記憶手段であるメモリ68、等が接続されている。本実施形態では、コントローラ60(制御部67)が、検眼システム100全体を統括・制御している。
【0023】
モニタ61及びスイッチパネル62からの指令信号(光学素子の切換え指令信号、視標の切換え指令信号、等)は、制御部67から制御部7に送られる。制御部7は、受取った指令信号を制御部57と制御部37とに分配する。制御部57は、指令信号に基づいてモータ18、19a及び19b等を駆動し、検査窓51に光学素子を配置する(又はロータリプリズム41等を回転させる)。制御部37は、指令信号に基づいてメモリ171から視標(のデータ)を読み出してディスプレイ31に表示させる。
【0024】
次に、検眼システム100の動作を交えてモニタ61の表示画面について説明する。ここでは、被検者の左右眼の完全矯正度数を求めた後に斜位検査等の両眼視機能検査を行う場合の表示画面について説明する。
図5は、両眼視機能検査時にモニタ61に表示される画面である。
【0025】
完全矯正度数を求めるために、検者は、以下のような操作を行う。被検者の左右眼を検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)の前に位置させ、コントローラ60を操作することによって視標呈示装置30に遠用視力値検査視標を呈示させ、被検者眼の球面度数等を検査(測定)する。なお、被検者眼の完全矯正度数を求める検査手順、検査手法、等は、特開平11−19041号公報に開示された技術が利用できる。
【0026】
モニタ61には、検査情報表示画面70が表示されている。画面70は、被検者眼情報表示部71、補助レンズ表示部72、視標表示部73、検査選択スイッチ74、検査項目表示部75、表示切換えスイッチ76、等を備えている。
【0027】
表示欄71には、レンズ室ユニット52(検査窓52)に配置されている光学素子の情報、他の装置等から取得されて入力された被検者眼の屈折力(屈折度数)の情報、等が表示されている。表示部71には、完全矯正屈折度数(球面度数S、乱視度数C、乱視軸角度A、等)の数値が表示されている。また、表示部71には、プリズム度数Δを表示及び入力をするためのプリズム度数表示部71aが備えられている。さらにまた、表示部71aには、開散検査、輻輳検査、等の際にプリズム度数の種類を分けて入力及び表示するための分類表示部71bが備えられている。表示部72には、検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)に配置されている補助レンズが表示されている。表示部73には、選択されている(ディスプレイ31に表示されている)視標が表示されている。
【0028】
スイッチ74には、検者に判り易いように、両眼視機能検査に関する文字が表示されている。ここでは、米国式21項目検査に関する文字が表示されている。表示部75には、スイッチ74によって選択された検査の検査項目が一覧表示されている。ここでは、米国式21項目検査の各検査項目が、一般的に使用される順に並べて表示されている。表示部75の上部には、ページ切換えタブが設けられており、表示部75に表示しきれない検査項目が次ページ以降に表示されるようになっている。スイッチ76は、検査結果の一覧を表示(出力)させたり検査結果に基づく分析結果を表示(出力)させたりするためのスイッチである。本実施形態の分析としては、被検者の斜位、開散力、輻輳力、のプリズム度数を視覚的に判り易い視機能分析グラフとして表示させる処理と、検査結果に基づいてモーガン分析処理(モーガンの標準値との比較)と、の2つを備えている。
【0029】
表示部75において検査項目が選択されると、制御部67は、選択信号に基づいて制御部57に指令信号を送り、検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)に補助レンズ等を配置させる。また、制御部67は、スイッチパネル62の入力状態を変更する。例えば、水平斜位検査が選択されると、制御部67は、ダイヤルスイッチ63の回転をプリズム度数の増減の入力として受け付ける。
【0030】
また、表示部75において遠用検査が選択された場合には、制御部67は、選択信号に基づいて制御部37に指令信号を送り、メモリ38から視標(のデータ)を読み出させ、ディスプレイ31に表示させる。
【0031】
また、表示部75において近用検査が選択された場合には、制御部67は、選択信号に基づいて制御部37に指令信号を送り、ディスプレイ31の表示を消す(又は一面白色とする)。そして、検者は、視標呈示ユニット55を被検者の前方に配置する。視標の選択、視標の移動(検査距離の設定)、等の視標呈示ユニット55の操作は、検者が手動で行う。
【0032】
本実施形態では、米国式21項目検査のうち、以下の6項目を検査し、検査結果に基づいて視機能分析グラフを作成して表示する。以下の検査において、括弧内は米国式21項目検査の通し番号を示している。検査項目は、検査順に、遠用水平斜位検査(#8)、遠用開散(外よせ)検査(#11)、遠用輻輳(内よせ)検査(#9、#10)、近用斜位検査(#13B)、近用開散検査(#17)及び近用輻輳検査(#16)である。検査の順番は、被検者への負担、検査の効率、等を考慮し、上記の順番とすることが好ましい。なお、本明細書では、各検査の概要を示す。各検査の詳細な説明は、特開平11−19041号公報に開示されている。
【0033】
遠用水平斜位検査及び近用水平斜位検査(2項目)では、分散プリズムを検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)に配置させて縦一列視標をプリズム分離させ、さらに、検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)にロータリプリズム41を配置させる。検者は、被検者に確認しながら、被検者の左右眼で見えている視標が縦一列に見えるようにダイヤルスイッチ63を回転させ(ロータリプリズム41を回転させ)、被検者眼に付与されるプリズム度数を変化(調整)させる。そして、視標が縦一列に見えたときのプリズム度数が、被検者の斜位量となる。
【0034】
遠用開散検査、遠用輻輳検査、近用開散検査及び近用輻輳検査(4項目)では、ロータリプリズム41を検査窓51(左検査窓51L,右検査窓51R)に配置させる(水平斜位検査と同様に縦一列視標を用いる)。検者は、被検者に確認しながら、ダイヤルスイッチ63を回転させ(ロータリプリズム41を回転させ)て被検者眼に付与されるプリズム度数を変化(調整)させる。そして、視標がぼやけて見えたとき(ボヤケ)、視標が分離して見えたとき(分離)、視標が回復して見えた(再び縦一列に見えた)とき(回復)、を確認し、そのときのプリズム度数を得る。開散検査では、内側にプリズム度数を加え(ベースイン、基底内方向)、被検者の開散力(融像幅)を得る(測定する)。輻輳検査では、外側にプリズム度数を加え(ベースアウト、基底外方向)、被検者の輻輳力(融像幅)を得る(測定する)。
【0035】
なお、本実施形態では、遠用検査及び近用検査の何れであっても、縦一列視標を用いている。縦一列視標は、視力値0.7又は1.0に対応する数字、文字、等を縦一列に並べた視標である。
【0036】
このようにして得られたプリズム度数(のデータ)は、以下の手順でメモリ68に記憶される。斜位検査の場合には、表示部71aが押されると、制御部67は、このときのロータリプリズム41の状態を斜位のプリズム度数として対応付け、メモリ68に記憶する。開散検査及び輻輳検査の場合には、表示部71bの各項目(「ボヤケ」,「分離」,「回復」)の何れかが押されると、検査項目と、分類と、このときのプリズム度数(ロータリプリズム41の状態)と、を対応付け、メモリ68に記憶する。
【0037】
次に、視機能分析グラフについて説明する。斜位検査等が終了し、各検査結果が得られた状態でスイッチ76が押されると、
図6に示すグラフ表示画面80がモニタ61に表示される。制御部67は、スイッチ76からの指令信号に基づいて視機能分析グラフを作成し、モニタ61に表示させる。このとき、制御部67は、被検者眼の各検査に対応するプリズム度数(のデータ)をメモリ68から読み出し、演算処理する。
【0038】
モニタ61に表示される画面80は、グラフとして、横軸xf及びxn、縦軸y、ドンダーズ線82、斜位線83、RCI(Relative Convergence Inhibitory)線84及びRCS(Relative Convergence Stimulatory)線85を備えている。また、画面80は、グラフ上に重畳表示される標準領域91、92及び93を備えている。
【0039】
画面80において、横軸xf及びxnは、眼位の変化量をプリズム度数Δとして示している。縦軸yは、調節刺激を表し、検査距離の逆数をディオプタ(D)で示している。本実施形態では、遠用検査距離(5m)を無限遠(0D,調節刺激なし)としている。このため、遠用の横軸xfは、縦軸yの0Dの座標となる。また、近用検査距離を40cmとしている。このため、近用の横軸xnは、縦軸yの2.5D(1/0.4m)の座標となる。
【0040】
横軸xf及びxnでは、OΔより左側の領域をベースイン(BI)方向(開散方向、外寄せ)とする。一方、OΔより右側の領域をベースアウト(BO)方向(輻輳方向、内寄せ)とする。なお、グラフでは、瞳孔間距離PDを標準的な60mmとしている。このため、近用検査距離40cmでは、15Δ(60mm/40cm)の輻輳(内寄せ)が必要となるため、遠用と近用とでは横軸の基準位置が15Δ分ずれることとなる。従って、近用での横軸xnの基準点(斜位がない場合の基準点)は15Δ(遠用での横軸xfの基準点は0D)となる。
【0041】
画面80上の症例表示部81には、各検査で得られたプリズム度数の分離を示す4種類の異なるマークであるボヤケを示すマーク「○」、分離を示すマーク「□」、回復を示すマーク「△」、斜位を示すマーク「×」、が示されている。メモリ68に記憶されている各検査に対応するプリズム度数(のデータ)が、各マークに対応付けられて横軸xf及びxn上にプロットされる。また、プロットされたマークは、遠用と近用とで結ばれ、直線(線分)として表示される。
【0042】
ドンダーズ線82は、近用検査距離及び遠用検査距離で、視標をはっきり且つ一つに見るために必要とされる調節刺激及び輻輳刺激を示す直線である。この場合、斜位のない眼位となるため、近用の基準点と遠用の基準点とを通る直線となり、常に一定の関係を持つ直線となる。なお、ドンダーズ線82の傾きは、理想的な眼位を示す。この傾きは、被検者の斜位等をグラフ表示させた場合の基準となる。
【0043】
斜位線83は、遠用の斜位のプリズム度数と近用の斜位のプリズム度数とを結んだ直線である。斜位線83の傾きにより、被検者の斜位の傾向が把握できる。
【0044】
RCI線84は、遠用開散検査における分離(ボヤケではない)のプリズム度数と近用開散検査におけるボヤケのプリズム度数とを結んだ直線である。RCI線84は、被検者の開散力を示しており、その傾きにより、被検者の開散の特性が把握できる。
【0045】
RCS線85は、遠用輻輳検査におけるボヤケのプリズム度数と近用輻輳検査におけるボヤケのプリズム度数とを結んだ直線である。RCS線85は、被検者の輻輳力を示しており、その傾きにより、被検者の輻輳の特性が把握できる。
【0046】
このように、斜位線82、RCI線84及びRCS線85の傾き、位置をドンダーズ線82の傾き、位置と比較することにより、被検者の眼位が把握し易い。
【0047】
なお、RCS線85よりもプリズム度数の大きいマーク(
図6では「□」及び「△」)は、ボヤケを示すマーク「○」を結んだ直線であるRCS線85よりも右側にあるため、直線を結ぶ際には無視できる。
【0048】
標準領域(斜位標準領域)91は、斜位における標準的なプリズム度数を領域表示したものである。本実施形態では、モーガン分析の斜位における標準的な範囲内での遠用のプリズム度数の最大値及び最小値と近用のプリズム度数の最大値及び最小値とをプロットし、プロットされた4点で囲まれた領域をカラー表示している。領域91は、斜位線83等の各直線の視認を妨げない(遮らない)ように、淡い色で各直線とは異なる色で表示される。
【0049】
標準領域(開散標準領域)92は、開散における標準的なプリズム度数を領域表示したものである。本実施形態では、モーガン分析の開散における標準的な範囲内での遠用のプリズム度数の最大値及び最小値と近用のプリズム度数の最大値及び最小値とをプロットし、プロットされた4点で囲まれた領域をカラー表示している。領域92の表示色は、判別のため、領域91の表示色と異なっていることが好ましい。また、領域92は、各直線の視認を妨げないように、淡い色で各直線とは異なる色で表示される。
【0050】
標準領域(輻輳標準領域)93は、輻輳における標準的なプリズム度数を領域表示したものである。本実施形態では、モーガン分析の輻輳における標準的な範囲内での遠用のプリズム度数の最大値及び最小値と近用のプリズム度数の最大値及び最小値とをプロットし、プロットされた4点で囲まれた領域をカラー表示している。領域93の表示色は、判別のため、領域91及び92の各表示色と異なっていることが好ましい。また、領域93は、各直線の視認を妨げないように、淡い色で各直線とは異なる色で表示される。
【0051】
領域91〜93をグラフ上に表示することにより、標準的な眼位、開散力及び輻輳力の傾きとプリズム度数の幅とが視覚的に把握できる。さらに、被検者の斜位等の特性を示す直線(斜位線83等)と領域91〜93とが同じ画面上に表示されるため、被検者の斜位、開散力、輻輳力、等が標準に比べてどの程度異なるのかが把握し易い。また、領域91〜93を見分け易いように異なる色で表示することにより、各直線がどのような特性を示しているのかが判り易い。例えば、領域92の近くに直線があれば、この直線が開散力を示すRCI線84であることが容易に判る。
【0052】
上記のグラフを例に挙げると、画面80では、斜位は、遠用では若干内斜位傾向があるが、近用では標準的であることが判る。また、開散力は、標準的な傾きであり、調節によって大きく変化しないことが判る。また、標準よりも若干小さい(基準点に近い)ことが判る。一方、輻輳力は、遠用では標準よりも大きいが、近用では標準的であることが判る。
【0053】
斜位及び輻輳力は、標準的な傾きよりも大きい場合、調節してもあまり変化しない。逆に、標準的な傾きよりもが小さい場合、調節による影響を受け易い。ここでは、斜位線83の傾きとRCS線85の傾きとは、標準(領域91及び領域93)の傾きよりも大きいため、球面調整よりもプリズム処方を行った方が良いと判断できる(プリズム処方を行った方が効果的であると予測できる)。
【0054】
このようにして、各検査における検査結果(プリズム度数)を直線表示すると共に、標準的な範囲を領域表示することにより、斜位検査等の両眼視機能検査の分析結果を簡単に把握できる。さらに、効率的に適切な処方値を容易に得ることができる。
【0055】
なお、標準領域91〜93は、カラー表示に限定されるものではない。ハッチング等で領域表示されてもよいし、直線を結んで領域表示されてもよい。すなわち、標準領域が判る表示であればよい。また、標準領域は、表示/非表示を切換え可能としてもよい。
【0056】
また、以上の説明では、遠用(OD)から近用(2.5D)までの間をグラフ化するものとしたが、2.5Dよりも度数の高い領域まで斜位線等の直線を延長してもよい。直線の延長により、斜位等のある程度の予測ができる。
【0057】
また、以上の説明では、斜位、開散力及び輻輳力、を一つのグラフに表示するものとしたが、一つの検査項目毎にグラフ表示してもよい。また、検査項目は、水平方向の検査に限るものではないし、グラフ表示も水平方向の検査項目に限るものではない。
【0058】
また、以上の説明では、グラフをモニタに表示するものとしたが、これに限るものではない。視覚的に把握し易いように出力するものであればよく、グラフを画像データとして外部記憶装置に出力してもよいし、グラフをプリンタ等を介して印刷物に出力してもよい。
【0059】
また、以上の説明では、モーガン分析の標準的な範囲の数値を、斜位等の標準領域のプロットに用いる構成としたが、これに限るものではない。標準領域のプロットに用いる標準的な範囲(の数値)は、モーガン分析とは別の分析(統計結果)を用いてもよい。また、ユーザで定義してもよい。
【0060】
また、以上の説明では、検眼装置において被検者眼の斜位、開散及び輻輳の各プリズム度数を得ると共に、これを演算処理してグラフを表示(出力)させるものとしたが、これに限るものではない。コンピュータに、被検者眼のプリズム度数を入力し、演算処理及び出力処理をさせてもよい。コンピュータとしては、コンピュータの統括・制御を行う演算処理手段と、被検者眼のプリズム度数等のデータの入力手段と、プリズム度数等のデータ、処理プログラム、等を記憶するメモリと、モニタ、プリンタ、等の出力手段と、マウス、キーボード、等の操作手段と、を備えている汎用的なコンピュータであればよい。