(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2に記載の触媒を用いて、窒素含有化合物を含む排水を、酸化剤の存在下、100℃以上370℃未満の温度かつ該排水が液相を保持する圧力条件で該排水中の窒素化合物を処理することを特徴とする排水の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一に係る触媒は、貴金属と活性助剤とを、多孔性無機酸化物に被覆したことを特徴とする窒素含有化合物処理用触媒である。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
貴金属としては、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウムおよび金の少なくとも1種の元素の金属および/または酸化物を含有するものであり、好ましくは白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムを含有するものである。より好ましくは、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウムを含有するものである。さらにより好ましくは、白金、パラジウム、ルテニウムを含有するものである。特に好ましくは、パラジウム、ルテニウムを含有するものである。
【0021】
活性助剤は、チタン、鉄、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、セリウム、ランタン、マンガン、イットリウム、インジウム、亜鉛およびビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または上記群から選ばれる少なくとも2種の複合酸化物であり、好ましくはチタン、鉄、ジルコニウム、セリウム、ランタン、マンガン、イットリウム、インジウム、亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または上記群から選ばれる少なくとも2種の複合酸化物である。さらに好ましくはチタン、ジルコニウム、セリウム、ランタン、からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または上記群から選ばれる少なくとも2種の複合酸化物である。特に好ましくは、チタン酸化物(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、セリア(CeO
2)、ランタン酸化物(La
2O
3)である。上記活性助剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。通常これらは酸化物として触媒中に存在する。活性助剤と貴金属とを用いることで、硝酸態窒素および/または亜硝酸態窒素の生成を抑制することが可能となる。
【0022】
また、本発明において、活性助剤の大きさは、特に制限されない。活性助剤の平均粒子径は、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは2nm以上、さらにより好ましくは3nm以上である。なお、活性助剤の大きさの上限は特に制限されないが、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは47nm以下、特に好ましくは45nm以下である。通常、活性助剤は、酸化物として触媒中に存在し、平均粒子径を1〜80nmに制御することで、硝酸態窒素および/または亜硝酸態窒素の生成を特異的に抑制することが可能となる。本明細書中、「平均粒子径」は、透過型電子顕微鏡(TEM−EDS)で観察した。具体的には、拡大観察された粒子を任意に100個選択し、各粒子の長軸方向の長さを測定してその平均値を平均粒子径(nm)とした。
【0023】
多孔質無機酸化物としては、特に制限されず、通常触媒に使用されるものが使用できる。具体的には、チタン、鉄、ケイ素、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、セリウム、ランタン、マンガン、イットリウム、インジウム、亜鉛およびビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または複合酸化物や活性炭である。好ましくは、多孔質無機酸化物は、チタン、鉄、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、セリウム、ランタン、インジウムおよびビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または複合酸化物である。より好ましくは、多孔質無機酸化物は、チタン、鉄、ジルコニウム、セリウム、ランタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または複合酸化物である。特に好ましくは、多孔質無機酸化物は、チタン、鉄、ジルコニウム、セリウム、ランタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物または複合酸化物である。多孔質無機酸化物と活性助剤が同じ元素の酸化物である場合があるが、双方の前駆体の種類、調製時に用いる段階が異なるもので区別することができる。
【0024】
また、本発明において、多孔性無機酸化物の細孔容積は、特に制限されない。多孔性無機酸化物の細孔容積は、好ましくは0.12ml/g以上、より好ましくは0.2ml/g以上であり、より好ましくは0.25ml/g以上である。なお、多孔性無機酸化物の細孔容積の上限は特に制限されないが、好ましくは0.5ml/g以下、より好ましくは0.45ml/g以下である。なお、細孔容積が0.12ml/g未満の場合には、触媒と汚濁物質との接触効率が低下し、十分な処理性能を得られない場合が多い。また、0.50ml/gを超える細孔容積では、触媒の耐久性が低下することがあり、湿式酸化処理に用いると触媒が早期に崩壊する場合がある。細孔容積は、市販の水銀圧入法を用いた装置により測定することができる。
【0025】
活性助剤、貴金属および多孔質無機酸化物の含有量は、特に制限されない。活性助剤(酸化物換算)と貴金属(金属換算)と多孔質無機酸化物との合計を100質量%としたき、活性助剤の含有量は、酸化物換算で、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.2〜20質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが特に好ましい。また、活性助剤(酸化物換算)と貴金属(金属換算)と多孔質無機酸化物との合計を100質量%としたき、貴金属の含有量は、金属換算で、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。また、活性助剤(酸化物換算)と貴金属(金属換算)と多孔質無機酸化物との合計を100質量%としたき、多孔質無機酸化物の含有量は、60〜99.85質量%であることが好ましく、77〜99.7質量%であることがより好ましい。貴金属量が0.05質量%未満である場合は、貴金属元素類の効果が少なく、触媒の活性が向上しないものであり、10質量%を超える割合で使用しても、触媒費の上昇に見合った触媒性能の向上が得られないため経済的に好ましくない。
【0026】
本発明の触媒の調製方法は、特に制限されないが、貴金属成分と活性助剤を含浸法により多孔性無機酸化物上に被覆することが好ましい。すなわち、本発明の第二によると、貴金属成分と活性助剤を含浸法により多孔性無機酸化物上に被覆することを特徴とする本発明の窒素含有化合物処理用触媒の製造方法が提供される。より具体的には、本発明の触媒の調製方法としては、貴金属と活性助剤の各々の前駆体を適当な溶媒(例えば、水)に溶かした溶液(例えば、水溶液)に多孔性無機酸化物を加え、加熱により溶媒(例えば、水分)を蒸発させることで、貴金属と活性助剤を多孔性無機酸化物に含浸させることができる。また、貴金属と活性助剤の各々の前駆体を適当な溶媒(例えば、水)に溶かした溶液(例えば、水溶液)に多孔性無機酸化物を加えアルカリ性物質を加え沈殿物を当該多孔性無機酸化物上に担持することもできる。
【0027】
ここで、多孔性無機酸化物に貴金属成分と活性助剤を含浸させる方法は、特に制限されない。例えば、多孔性無機酸化物に貴金属成分と活性助剤を同時に含浸する方法、多孔性無機酸化物に貴金属成分と活性助剤を逐次的に含浸する方法などを適宜、選択できる。含浸後の触媒を乾燥、焼成および/または還元することで、多孔質無機酸化物に貴金属と活性助剤を被覆した触媒を得ることができる。好ましくは、貴金属成分と活性助剤を含む水溶液を蒸発またはアルカリ性物質を加えて析出(共沈)する方法である。なお、上記触媒の焼成温度は、300〜800℃、より好ましくは350〜600℃が好ましい。更に水素、窒素雰囲気下で還元処理することも好ましい。
【0028】
この触媒調製工程において、活性助剤を含浸担持後に、酸化雰囲気中にて200℃以上で、より好ましくは300℃〜800℃で、より好ましくは400〜600℃の温度で、1〜5時間、より好ましくは2〜4時間、熱処理(焼成)する工程を少なくとも1度採用することができる。この操作により、高い浄化性を維持することができる。ここで、酸化雰囲気としては、空気、酸素と不活性ガスの混合ガスなどが挙げられる。
【0029】
上記方法において、貴金属の原料(前駆体)としては、特に制限されず、上記金属の、有機酸塩、無機酸塩等のいずれも使用できるが、水溶性塩であることが好ましい。例えば、上記貴金属の、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、塩化物などのハロゲン化物等から適宜選ぶことができる。好ましくは、硝酸塩、酢酸塩、塩化物である。
【0030】
活性助剤の原料は、特に制限されないが、水溶性化合物、ゲルなどを用いることができる。具体的には、上記金属の、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等のハロゲン化物などの無機性化合物および酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。好ましくは、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物である。
【0031】
また、適当な溶媒としては、特に制限されないが、水、メタノール、エタノールなどが挙げられる。この際、溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合液の形態で使用されてもよい。好ましくは水が使用される。また、溶媒における貴金属の原料(前駆体)および活性助剤の原料の濃度は、特に制限されず、貴金属および活性助剤の原料が溶解する濃度であれば、所定の貴金属および活性助剤の含有量となるように適宜設定できる。
【0032】
また、アルカリ性物質を使用する場合のアルカリ性物質としては、特に制限されず、一般的な共沈法で使用されるアルカリ性物質が同様にして使用できる。例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウムまたはその水溶液、水酸化カリウムまたはその水溶液、炭酸ナトリウムまたはその水溶液などが挙げられる。この際、アルカリ物質の添加量は、所望な程度に沈殿物が形成できる量であれば特に制限されない。アルカリ物質を、貴金属の原料(前駆体)または活性助剤の原料を含む溶液のpHが好ましくは7〜10、より好ましくは7.5〜9.5になる程度の量、添加することが好ましい。
【0033】
上記焼成工程後は、必要であれば、貴金属成分の還元処理を行う。これにより、本発明の触媒が製造できる。ここで、貴金属成分の還元処理条件は、特に制限されないが、例えば、還元処理温度は、150〜600℃が好ましく、200〜400℃がより好ましい。また、還元処理時間は、1〜5時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。このような条件であれば、貴金属成分の粒子径成長(シンタリング)が起こらず、所望の大きさの貴金属成分を多孔性無機酸化物または活性助剤に担持できる。また、上記還元処理は、還元雰囲気下で行われる。この際、還元雰囲気は、貴金属成分の原料化合物が還元されれば特に制限されないが、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で行うことが好ましい。還元性ガスは、特に制限されないが、水素(H
2)ガスが好ましい。また、不活性ガスは、特に制限されないが、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、及び窒素(N
2)などが使用できる。上記不活性ガスは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合ガスの形態で使用されてもよい。不活性ガスに含有される還元性ガスの濃度は、特に制限されないが、安全面などを考慮すると、還元性ガスの濃度は、混合ガス全量に対して、好ましくは1〜20体積%である。このような条件であれば、貴金属成分を多孔性無機酸化物または活性助剤に効率よく還元できる。
【0034】
触媒の形状については特に制限はなく、例えば粒状、球状、ペレット状、破砕状、サドル状、ハニカム状およびリング状のいずれでもよい。ペレット状の場合、断面が円形であるものの他、楕円形、多角形、三葉形、四葉形等任意の形のものを用いることができる。
【0035】
次に、上記本発明の触媒を用いて排水を処理する方法について説明する。なお、本発明の方法において、上記本発明の触媒は、1種を単独で使用してもまたはそれぞれを2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0036】
本発明の触媒は、硝酸態窒素および/または亜硝酸態窒素の生成を効果的に抑制できる。このため、本発明の触媒を用いると、窒素含有化合物を含む排水を浄化性高く処理でき、また高い浄化性を維持することができる。
【0037】
したがって、本発明の第三によると、本発明の触媒を用いて、窒素含有化合物を含む排水を、酸化剤の存在下、100℃以上370℃未満の温度かつ該排水が液相を保持する圧力条件で該排水中の窒素化合物を処理することを特徴とする排水の処理方法が提供される。
【0038】
以下、本発明に係る触媒を用いた排水の処理方法、特に湿式酸化処理方法について詳述する。
【0039】
本発明の処理対象となる排水としては、窒素含有化合物が含まれるものであれば何れであってもよく、例えば、化学プラント、電子部品製造設備、食品加工設備、印刷製版設備、火力発電や原子力発電などの発電設備、写真処理設備、金属加工設備、金属メッキ設備、金属精錬設備、紙パルプ製造設備などの各種産業プラントから排出される排水や、屎尿、下水などの生活排水、湿式洗煙排水など各種有害物処理設備から排出される排水、埋立地浸出水などの種々の窒素含有化合物を含有する排水が挙げられる。また、有害物質を含有する土壌を処理するために該土壌中の有害物質を液中に抽出した抽出液も本発明の処理対象排水として扱うことができる。
【0040】
本発明に係る窒素含有化合物は、窒素原子を含有されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、無機態窒素化合物、アミン化合物、アミド化合物、アミノ酸化合物、含窒素五員環化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、ニトロシル化合物および窒素を含有するポリマー等を挙げることができる。
【0041】
本発明に係る無機態窒素化合物とは、アンモニア、アンモニウム塩、ヒドラジン、ヒドラジニウム塩が例示される。
【0042】
本発明に係るアミン化合物とは、分子内にアミノ基を有する化合物であり、メチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、アニリン、ピリジンが例示される。
【0043】
本発明に係るアミド化合物とは、分子内にアミド基を持つ化合物であり、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、尿素が例示される。
【0044】
本発明に係るアミノ酸化合物としては、グリシン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、トリプトファンが例示される。
【0045】
本発明に係る含窒素五員環化合物とは、N−メチルピロリドン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、フラザン等およびこれらの誘導体が例示される。これらの中でも特にDMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)等のイミダゾリジノン系窒素含有化合物は、非プロトン系極性溶媒として広く使用されているが、このような窒素化合物の処理においても本発明は好適である。
【0046】
なお、窒素含有化合物は水に不溶または難溶性のものであってもよいが、水に溶解するものが好ましい。なお、水に不溶または難溶性の窒素含有化合物を処理する場合は、窒素含有化合物が水に懸濁している状態等であることが処理上の取扱い面においては好ましいものである。排水中の窒素含有化合物は、単一化合物で存在しても、また、複数で混在してもよい。
【0047】
尚、本発明における「排水」には、上記した様な産業プラントから排出される所謂工業排水に限定されるものではなく、要するに窒素含有化合物を含む液体であれば全て包含され、液体の供給源は特に限定されない。
【0048】
本発明において処理対象となる排水中の全窒素濃度は、特に限定されるわけではないが、30mg/リットル以上6000mg/リットル以下が効果的であり、好ましくは50mg/リットル以上5000mg/リットル以下である。全窒素が30mg/リットル未満の場合は触媒湿式酸化処理するコスト的な優位性が十分に得られない。一方、6000mg/リットルを超える場合は、全窒素濃度が高すぎるため、十分な処理性能が得られなくなる場合がある。
【0049】
また、排水中には窒素含有化合物以外の成分、例えば、COD成分等の成分が含有されていても本発明に係る湿式酸化反応に支障のない範囲であれば特に問題はない。
【0050】
本発明に係る酸化剤は、排水中の被酸化性物質を酸化しうるものであれば何れのものであってもよく、例えば酸素および/またはオゾンを含有するガスや過酸化水素などが挙げられ、ガスを用いる場合には、一般に空気であることが好ましい。それ以外に、他のプラントより生じる酸素含有の排ガスも便宜使用することもできる。なお、被酸化性物質とは、窒素含有化合物、COD成分である。
【0051】
本発明において、酸化剤は排水に必要量が含まれるときは排水に供給する必要はないが、必要量含まれていないときは排水に供給することが好ましい。排水中に含まれる酸化剤の量は、排水中の被酸化性物質の量において適宜選択されるものであるが、好ましくは被酸化物質の理論酸素要求量に対して、0.7モル倍〜5.0モル倍、さらに好ましくは1.0モル倍〜4.0モル倍である。0.7モル倍未満であるときは、排水中の有害物質が十分に分解されず、5.0モル倍を超えるときは設備が大型化するだけだからである。ここでいう「理論酸素要求量」とは、排水中の被酸化物質(窒素含有化合物)を窒素、二酸化炭素、水、硫酸塩などの灰分にまで酸化および/または分解するのに必要な酸素量のことを指し、排水中に窒素含有化合物以外にも被酸化性物質が含まれている場合には、これらを含めて理論酸素要求量を求める。
【0052】
本発明にかかる窒素含有化合物の処理方法は、100℃以上370℃未満の温度範囲で処理できる。この処理温度が100℃未満であると窒素含有化合物の酸化・分解処理を効率的に行えなくなるため、好ましくない。この処理温度は、好ましくは120℃を超える温度とするのが良く、より好ましくは130℃を超える温度であり、更に好ましくは140℃を超える温度とするのが良い。また、処理温度が370℃以上であると、排水が液相を維持することができなくなるため、好ましくない。処理温度を高くすれば加熱に必要な運転費が高騰するため、好ましくは280℃以下、より好ましくは260℃以下とするのがよい。
【0053】
一方、処理圧力は、上記処理温度において排水が液相を保持する圧力であればよく、特に限定されるものではない。また、上記処理圧力の調整は、特に制限されず、公知の方法によって行うことができ、例えば、湿式酸化処理装置の排ガス出口側に圧力調整弁を設け、反応塔内で排水が液相を保持できるように処理温度に応じて圧力を適宜調整することが望ましい。ここで、処理圧力は、特に制限されず、処理温度によって適宜調節されうる。例えば、処理温度が100℃以上の場合には、大気圧下では排水が気化することが多いため、処理温度が100℃以上170℃未満の場合には、0.2〜1MPa(Gauge)程度の圧力を加え、排水が液相を保持できる様に圧力を制御することが望ましい。また、処理温度が170℃以上230℃未満の場合には、1〜5MPa(Gauge)程度の圧力を、また、処理温度が230℃以上の場合には、5MPa(Gauge)超の圧力を、それぞれ、加え、排水が液相を保持できる様に圧力を制御することが望ましい。さらに、処理性能および触媒の耐久性を向上するためには、処理圧力の変動を、±20%以内、より好ましくは±10%以内、更に好ましくは±5%以内に制御するのが良い。
【0054】
窒素含有化合物を含む排水の処理を流通系の場合、排水の空間速度は、特に限定されるものではないが、通常、各触媒層あたりの空間速度を0.1リットル・hr
−1〜10リットル・hr
−1、より好ましくは0.2リットル・hr
−1〜5リットル・hr
−1、更に好ましくは0.3リットル・hr
−1〜3リットル・hr
−1となるようにすればよい。空間速度が0.1hr
−1未満の場合、排水の処理量が低下し、過大な設備が必要となり、逆に10hr
−1を超える場合には、窒素含有化合物の酸化・分解処理を効率的ではない。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の効果を奏するものであれば本実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
市販の酸化チタン(TiO
2)に、ルテニウム(Ru)1.3質量%および酸化ジルコニウム(ZrO
2)3.5質量%を含浸担持した。貴金属(Ru)および活性助剤(ZrO
2)の前駆体には硝酸ルテニウム(Ru)および硝酸ジルコニウムを使用した。含浸担持後の触媒を空気中300℃で3時間焼成を行い、同温で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表1に記載した。
【0057】
(実施例2)
共沈法にて調製した酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)および酸化インジウム(In
2O
3)の複合酸化物[酸化鉄:酸化ビスマス:酸化インジウムの質量比=87:8:5]に、パラジウム(Pd)0.8質量%および酸化セリウム(CeO
2)5.5質量%を含浸担持した。貴金属(Pd)および活性助剤(CeO
2)の前駆体には硝酸パラジウムと硝酸セリウムを使用した。含浸担持後の触媒を空気中400℃で4時間焼成を行い、300℃で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表1に記載した。また、多孔性無機酸化物(Fe
2O
3−Bi
2O
3−In
2O
3)の細孔容積および活性助剤(CeO
2)の平均粒子径は表2に記載した。
【0058】
(
参考例3)
実施例1と同様の組成の触媒であり、貴金属および活性助剤担持後の焼成温度を200℃とした以外は実施例1と同様の方法で触媒を調製した。得られた触媒の組成は表1に記載した。また、多孔性無機酸化物(TiO
2)の細孔容積および活性助剤(ZrO
2)の平均粒子径は表2に記載した。
【0059】
(比較例1)
酸化アルミニウム(Al
2O
3)にイリジウム(Ir)を含浸担持した。貴金属(Ir)の前駆体には硝酸イリジウム溶液を使用した。含浸担持後の触媒を空気中400℃で3時間焼成を行い、300℃で2時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表1に記載した。また、多孔性無機酸化物(Al
2O
3)の細孔容積は表2に記載した。
【0060】
(比較例2)
市販の酸化チタン(TiO
2)にルテニウム(Ru)を含浸担持した。貴金属(Ru)の前駆体には硝酸ルテニウム溶液を使用した。含浸担持後の触媒を空気中300℃で3時間焼成を行い、同温で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表1に記載した。また、多孔性無機酸化物(TiO
2)の細孔容積は表2に記載した。
【0061】
(排水処理方法1)
図1に示す処理装置を使用し、この反応塔5に上記実施例1〜3,比較例1,2で得られた触媒5.1を1リットル充填して、下記の処理条件下で処理を1200時間連続して行った。以下に詳細な実験方法および結果について記述する。処理に供した排水はアンモニア水であり、排水供給ライン1から排水供給ポンプ2により1リットル/hrの流量で昇圧フィードした。一方、酸化剤供給ライン3からはコンプレッサーにて昇圧した空気を供給した。この気液混合物を熱交換器4で加熱した後、触媒5.1を充填した反応塔5に導入し、処理温度250℃で湿式酸化処理した。被処理液は熱交換器4および熱交換器(冷却器)6により冷却した後、気液分離機7に導入した。気液分離機7では、液面コントローラ(LC)により液面を検出して液面制御弁8を作動させて一定の液面を保持するとともに、圧力コントローラ(PC)により圧力を検出して圧力制御弁9を作動させて7.0MPa(Gauge)の圧力を保持するように操作した。アンモニア濃度および空気供給量は処理時間の経過とともに変化させた。処理条件を表3に示す。
【0062】
処理結果は表4、表5に示した通りであった。なお、下記表2において、300、600、900および1200時間経過時の全窒素処理効率、アンモニア態窒素残存量、硝酸態窒素生成量および亜硝酸態窒素生成量は、それぞれ、下記方法によって、測定した。
【0063】
<全窒素濃度の測定>
全窒素濃度の定量は全窒素測定装置を用いて行った。また、全窒素処理効率の算出方法は以下のとおりである。
【0064】
【数1】
【0065】
<アンモニア態窒素残存量の測定>
アンモニア態窒素残存量の定量はイオンクロマトグラフィーによる分析にて行った。
【0066】
<硝酸態窒素生成量の測定>
硝酸態窒素生成量の定量はイオンクロマトグラフィーによる分析にて行った。
【0067】
<亜硝酸態窒素生成量の測定>
亜硝酸態窒素生成量の定量はイオンクロマトグラフィーによる分析にて行った。
【0068】
(実施例4)
共沈法にて調製した酸化チタン(TiO
2)および酸化鉄(Fe
2O
3)の複合酸化物[酸化チタン:酸化鉄の質量比=20:80]に、パラジウム(Pd)1.5質量%および酸化セリウム(CeO
2)2.4質量%を含浸担持した。貴金属(Pd)および活性助剤(CeO
2)の前駆体には硝酸パラジウム溶液および硝酸セリウムを使用した。含浸担持後の触媒を空気中400℃で3時間焼成を行い、300℃で2時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表6に記載した。また、多孔性無機酸化物(TiO
2−Fe
2O
3)の細孔容積および活性助剤(CeO
2)の平均粒子径は表7に記載した。
【0069】
(実施例5)
共沈法にて調製した酸化セリウム(CeO
2)および酸化ジルコニウム(ZrO
2)の複合酸化物[酸化セリウム:酸化ジルコニウムの質量比=35:65]に、ルテニウム(Ru)1.0質量%および酸化チタン(TiO
2)3.0質量%を含浸担持した。貴金属(Ru)および活性助剤(TiO
2)の前駆体には硝酸ルテニウム溶液および四塩化チタンを使用した。含浸担持後の触媒を空気中500℃で3時間焼成を行い、300℃で2時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表6に記載した。また、多孔性無機酸化物(CeO
2−ZrO
2)の細孔容積および活性助剤(TiO
2)の平均粒子径は表7に記載した。
【0070】
(実施例6)
市販の酸化ランタン(La
2O
3)に、銀(Ag)1.8質量%および酸化マンガン(MnO
2)4.0質量%を含浸担持した。貴金属(Ag)および活性助剤(MnO
2)の前駆体には、酢酸銀および硝酸マンガンを使用した。含浸担持後の触媒を空気中400℃で2時間焼成を行い、300℃で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表6に記載した。また、多孔性無機酸化物(La
2O
3)の細孔容積および活性助剤(MnO
2)の平均粒子径は表7に記載した。
【0071】
(
参考例7)
市販の酸化ケイ素(SiO
2)に、ルテニウム(Ru)1.6質量%および酸化ランタン(La
2O
3)4.0質量%を含浸担持した。貴金属(Ru)および活性助剤(La
2O
3)の前駆体には塩化ルテニウムおよび硝酸ランタンを使用した。含浸担持後の触媒を400℃で2時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表6に記載した。また、多孔性無機酸化物(SiO
2)の細孔容積および活性助剤(La
2O
3)の平均粒子径は表7に記載した。
【0072】
(
参考例8)
市販の酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)および酸化イットリウム(Y
2O
3)を、酸化アルミニウム:酸化亜鉛:酸化イットリウムの質量比=55:35:10で、緊密に混合し、当該混合酸化物にパラジウム(Pd)1.2質量%および酸化インジウム(In
2O
3)2.5質量%を含浸担持した。貴金属(Pd)および活性助剤(In
2O
3)の前駆体には硝酸パラジウムと硝酸インジウムを使用した。含浸担持後の触媒を空気中500℃で3時間焼成を行い、300℃で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表6に記載した。また、多孔性無機酸化物(Al
2O
3−ZnO−Y
2O
3)の細孔容積および活性助剤(In
2O
3)の平均粒子径は表7に記載した。
【0073】
(排水処理方法2)
図1に示す処理装置を使用し、この反応塔5に上記実施例4〜8で得られた触媒5.1を1リットル充填して、下記の処理条件下で処理を900時間連続して行った。以下に詳細な実験方法および結果について記述する。処理に供した排水はアンモニア水およびモノエタノールアミン(MEA)であり、排水供給ライン1から排水供給ポンプ2により2リットル/hrの流量で昇圧フィードした。一方、酸化剤供給ライン3からはコンプレッサーにて昇圧した空気を供給した。この気液混合物を熱交換器4で加熱した後、触媒5.1を充填した反応塔5に導入し、処理温度250℃で湿式酸化処理した。被処理液は熱交換器4および熱交換器(冷却器)6により冷却した後、気液分離機7に導入した。気液分離機7では、液面コントローラ(LC)により液面を検出して液面制御弁8を作動させて一定の液面を保持するとともに、圧力コントローラ(PC)により圧力を検出して圧力制御弁9を作動させて7.0MPa(Gauge)の圧力を保持するように操作した。アンモニアおよびモノエタノールアミン濃度は処理時間の経過とともに変化させた。処理条件を表8に示す。
【0074】
処理結果は表9に示した通りであった。なお、下記表9において、300、600および900時間経過時の全窒素処理効率、アンモニア態窒素残存量、硝酸態窒素生成量および亜硝酸態窒素生成量は、それぞれ、上記実施例1に記載の方法によって、測定した。
【0075】
(実施例9)
共沈法にて調製した酸化ジルコニウム(ZrO
2)および酸化チタン(TiO
2)の複合酸化物[酸化ジルコニウム:酸化チタンの質量比=45:55]に、ルテニウム(Ru)0.8質量%および酸化セリウム(CeO
2)2.5質量%を含浸担持した。貴金属(Ru)および活性助剤(CeO
2)の前駆体には硝酸ルテニウム溶液および硝酸セリウムを使用した。含浸担持後の触媒を空気中300℃で4時間焼成を行い、300℃で2時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表10に記載した。また、多孔性無機酸化物(ZrO
2−TiO
2)の細孔容積および活性助剤(CeO
2)の平均粒子径は表11に記載した。
【0076】
(実施例10)
共沈法にて調製した酸化チタン(TiO
2)、酸化マンガン(MnO
2)および酸化ニッケル(NiO)の複合酸化物[酸化チタン:酸化マンガン:酸化ニッケルの質量比=75:20:5]に、パラジウム(Pd)1.3質量%と酸化イットリウム(Y
2O
3)2.5質量%を含浸担持した。貴金属(Pd)および活性助剤(Y
2O
3)の前駆体には塩化パラジウムおよび塩化イットリウムを使用した。含浸担持後の触媒を空気中500℃で4時間焼成を行い、300℃で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表10に記載した。また、多孔性無機酸化物(TiO
2−MnO
2−NiO)の細孔容積および活性助剤(Y
2O
3)の平均粒子径は表11に記載した。
【0077】
(実施例11)
沈殿法にて調製した酸化ジルコニウム(ZrO
2)に、イリジウム(Ir)0.9質量%および酸化チタン(TiO
2)3.0質量%を含浸担持した。貴金属(Ir)および活性助剤(TiO
2)の前駆体には塩化イリジウムおよび四塩化チタンを使用した。含浸担持後の触媒を空気中350℃で3時間焼成を行い、400℃で2時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表10に記載した。また、多孔性無機酸化物(ZrO
2)の細孔容積および活性助剤(TiO
2)の平均粒子径は表11に記載した。
【0078】
(実施例12)
市販の酸化ジルコニウム(ZrO
2)に、ロジウム(Rh)0.9質量%および酸化鉄(Fe
2O
3)2.0質量%を含浸担持した。貴金属(Rh)および活性助剤(Fe
2O
3)の前駆体には硝酸ロジウムおよび硝酸鉄を使用した。含浸担持後の触媒を空気中500℃で4時間焼成を行い、300℃で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行い、触媒を得た。得られた触媒の組成は表10に記載した。また、多孔性無機酸化物(ZrO
2)の細孔容積および活性助剤(Fe
2O
3)の平均粒子径は表11に記載した。
【0079】
(実施例13)
共沈法にて調製した酸化鉄(Fe
2O
3)および酸化コバルト(Co
3O
4)の複合酸化物[酸化鉄:酸化コバルトの質量比=93:7]に、銀(Ag)1.5質量%および酸化亜鉛(ZnO)2.0質量%を担持した。酢酸銀および硝酸亜鉛を溶解させた液を当該複合酸化物に吸水させ、アンモニア水を滴下することで、銀およびコバルトの水酸化物を析出させた。担持後の触媒を空気中400℃で5時間焼成を行い、300℃で3時間、水素と窒素の混合ガス(水素:5体積%)中で水素還元を行うことで触媒を得た。得られた触媒の組成は表10に記載した。また、多孔性無機酸化物(Fe
2O
3−Co
3O
4)の細孔容積および活性助剤(ZnO)の平均粒子径は表11に記載した。
【0080】
(排水処理方法3)
図1に示す処理装置を使用し、この反応塔5に上記実施例9〜13で得られた触媒5.1を1リットル充填して、下記の処理条件下で処理を900時間連続して行った。以下に詳細な実験方法および結果について記述する。処理に供した排水はメチルジエタノールアミン(MDEA)であり、排水供給ライン1から排水供給ポンプ2により2リットル/hrの流量で昇圧フィードした。一方、酸化剤供給ライン3からはコンプレッサーにて昇圧した空気を供給した。この気液混合物を熱交換器4で加熱した後、触媒5.1を充填した反応塔5に導入し、処理温度250℃で湿式酸化処理した。被処理液は熱交換器4および熱交換器(冷却器)6により冷却した後、気液分離機7に導入した。気液分離機7では、液面コントローラ(LC)により液面を検出して液面制御弁8を作動させて一定の液面を保持するとともに、圧力コントローラ(PC)により圧力を検出して圧力制御弁9を作動させて7.0MPa(Gauge)の圧力を保持するように操作した。メチルジエタノールアミン濃度は処理時間の経過とともに変化させた。処理条件を表12に示す。
【0081】
処理結果は表13に示した通りであった。なお、下記表13において、300、600および900時間経過時の全窒素処理効率、アンモニア態窒素残存量、硝酸態窒素生成量および亜硝酸態窒素生成量は、それぞれ、上記実施例1に記載の方法によって、測定した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
【表12】
【0094】
【表13】