特許第5727282号(P5727282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727282
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】オーバープリントの予測方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/46 20060101AFI20150514BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20150514BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H04N1/46 Z
   H04N1/40 D
   G01J3/46 Z
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-97080(P2011-97080)
(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2011-234359(P2011-234359A)
(43)【公開日】2011年11月17日
【審査請求日】2013年1月25日
(31)【優先権主張番号】10004328.0
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511103720
【氏名又は名称】ゲーエムゲー ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】GMG GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヴルスター
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ホフスタット
【審査官】 益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−128020(JP,A)
【文献】 特開2007−261010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40
H04N 1/46
G01J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色組み合わせのためにオーバープリント予測を行う方法であって、
印刷基板と、n個の印刷色と、n個の印刷色のそれぞれについてフルトーンを含む色相値の1階調と、n個の印刷色からなる所望の色組み合わせとが、予め定義され、
a)最初に、各色相値に対する3つの透過成分と関連する透過スペクトルとを含む色予測が、n個の印刷色のそれぞれに対し個別に決定され、3つの透過成分は、異なる光路に関連すると共に、
色コートを通過せずに前記印刷基板によって反射する光の成分である第1透過成分と、
前記色コートを1回だけ通過する光の成分である第2透過成分と、
前記色コートを2回通過する光の成分である第3透過成分とを含み、
b)前記所望の色組み合わせに対し、3のn乗個の光路のそれぞれに対応するn個の印刷色の透過成分の組合せと関る透過スペクトルとが決定され、
c)透過スペクトルと共に決定された透過成分と、印刷されていない基板の反射スペクトルとに基づいて、オーバープリントの全体的な反射スペクトルを予測する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
組み合わされた色相値は、ユーザ指定による基板材料に応じて補正される方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、
組み合わせ印刷中に、関与している別の印刷色の影響により変更された色相値が考慮される方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の方法において、
印刷順序が決定される方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法において、
予定された印刷技術が考慮される方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法において、
各色予測は、
a) 印刷されていない基板に対しスペクトル反射の度合いが決定されるステップと、
b) 印刷色の階調の各色合いに対しスペクトル反射の度合いが決定されるステップと、
c) i)光の単一通過と、ii)光の二重通過との両方に対し決定されたスペクトル反射の度合いを用いて、印刷色の階調の各色合い対し色コートのスペクトル透過の度合いが決定されるステップと、
d) 基板、光の単一通過、および二重通過の透過部分が各色合いに対し決定されるステップと、
e) 決定された透過成分、決定されたスペクトル透過の度合い、決定されたスペクトル反射の度合いに基づいて、各色合いに対し反射スペクトルが予測されるステップと
によって決定される方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
スペクトル反射の度合いは、基板上に予め定義された等級の色相値で色領域を印刷した後に分光光度を測定することによって決定される方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の方法において、
2回通過した色コートのスペクトル透過の度合いは、基板およびフルトーンのスペクトル反射の度合いに基づいて決定される方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法において、
1回通過した色コートのスペクトル透過の度合いは、2回通過した色コートのスペクトル透過の度合いに基づいて決定される方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法において、
1回通過した色コートおよび2回通過した色コートのスペクトル透過の度合いは、決定されたスペクトル反射の度合いについて予測された反射スペクトルの逸脱によって補正される方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法において、
基板、光の単一通過、および光の二重通過の3つの透過成分は、予め定義された色相値曲線と、スクリーン及び印刷の各工程時におけるデータとに基づいて決定される方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法において、
3つの透過成分および/または透過スペクトルにおける色合いと色合いとの間の色相値が補間される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバープリントの予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、例えば、パッケージ印刷において、オーバープリント工程中に実に様々な特殊色を組み合わせて使用することが知られている。組み合わせる何色かの色、例えば、8色〜12色は、数千もの特殊色のライブラリから選択される。実際には、これにより用途毎に異なる多数の色のセットが作成される。例えば、スクリーニング技術を用いて色相階調を作成し、これらの色相を1色ずつ重ねて印刷することで、上記のような各色のセットから、中間色相が生成される。したがって、中間色相と色のセットの多数の組み合わせが完全に可能である。
【0003】
オーバープリントの外観についての情報が必要である理由は様々である。これは、例えば、同じ色効果を持ちながらより好適な色の組み合わせを決定するために、モニタ上でトゥルーカラー表示する校正刷りに使用することができる。この情報は全て印刷における色の組み合わせであるCIELAB値に依存するものであり、この値は、スペクトル反射の度合いに基づく基準値である(CIEのL*a*b色空間、CIE出版15−2004)。
【0004】
基板の外観がその材料にも依存することを考えると、全ての色合い及び全てのオーバープリント組み合わせにおけるそれらの色と共に全ての色のセットをそれぞれの基板に適用し、評価することで、オーバープリントの予測を最も正確に行うことができる。しかしながら、こうした労力は経済的ではない。それでもこの方法は、数百さらにそれ以上の色組み合わせを複数の色領域として印刷する必要があり、その後スペクトル分析で得た測定値を用いて表にまとめることができる周知の方法の一つである。この測定は、単に各色領域のスペクトル反射の度合いを全体的に決定するだけであり、それ故、光の通路上の各色成分と印刷基板の寄与の効果も組み合わされてしまう。全てのオーバープリント組み合わせが必要なわけではないが、各色につき色合いを2〜3のみにまで低減する範囲を、色のセットの容量を増加させながら幅広くしていかなければならない。印刷と評価が含まれているため、各色のセットに費やす労力は大きい。
【0005】
このような先行技術の改良により、各色の色合いを、部分的に予め処理した印刷基板上、即ち、ブランク基板上、例えば、予め黒色及び灰色に印刷された基板上に印刷できるようになり、この色合いは、各印刷色の固有の特徴を決定するために用いられる。また、この方法は複雑でもあり、特に、オーバープリントされた色の効果に関する予測が比較的不正確でもある。
【0006】
既知のシステムは、例えば、特許文献1または特許文献2に記述されている。
既知の方法の改良において、特許文献3は、オーバープリント計算にノウバーガー(Neugebauer)モデルを使用することを記述している。ここでは、一方の側の上に個々のフルトーンのスペクトルを、もう一方の側の上にフルトーンオーバープリントのスペクトルをそれぞれ使用している。これに関連して改善されたシステムが、特許文献4に記述されている。しかしながら、ここで記述されている方法も、依然として、幾つかのオーバープリント、詳細には、フルトーン上のフルトーンに関連する幾つかのオーバープリント、及びフルトーン上の中間トーンに関連する幾つかのオーバープリントの測定が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第98/46008号
【特許文献2】米国特許第0,094,209号
【特許文献3】米国特許第0,007,252号
【特許文献4】米国特許第7,423,778号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の先行技術を鑑み、本発明の目的は、労力を減じる一方でより信頼性の高いオーバープリント予測を可能にする点で、この種の方法を改善することにある。特に、この方法を用いれば、予測の質に影響を及ぼすことなく、新規の色組み合わせに対し柔軟に対応することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的への技術的解決法として、本発明は請求項1の特徴を備えた方法を提案する。さらなる利点および特徴は従属請求項から明白になる。
本発明による方法は、主に、印刷工程における通常の指定に基づく。これらは概して、一方の側の上が印刷基板であり、もう一方の側の上に印刷色、例えば特別な色および/または通常のプロセスカラーを使用している。望ましい正確性に応じて、色相値の階調が例えば10%から始まり100%(フルトーン)に達するまで10%単位で決定される。これに加え、色の組み合わせが、印刷色のうち望ましいものの色相値のデータとして予め定義される。
【0010】
本発明によれば、まず、n個の印刷色の各々について、それぞれの色予測が個別に行われる。本発明はまた、色相値の各々について3つの透過成分と、これに関連した透過スペクトルとを備えている。
【0011】
本発明に関連した透過成分は、恐らくは通路の成分とも呼ぶことができ、また、印刷基板自体と、印刷領域を通る単通路および複通路との反射率を観察して得られる成分であると理解される。
【0012】
その後、上述の印刷工程により生じた色相値のスペクトル値、印刷基板の色相値のスペクトル値が決定される。これらの値は、データベースまたは他の安全なソースのどちらかの内部にて利用可能であるか、あるいはスペクトル分析によって測定される。この場合、各色相値を持った領域が各色について印刷される。
【0013】
図1は、印刷基板内の光の通過を区別する方法を概略的に示す。本発明による方法の特色は、測定値がブランク基板(11)の成分(13)、即ち色コート(12)を通る光の単一通過(15、16)の成分と、色コート(12)を通る光の二重通過の成分とに細分されることである。通常、光は印刷基板内へ反射するのに加えて側方散乱もするため、この場合、普遍的な実際の光路を考慮する。つまり、光線はスクリーンドット上に入射してこれを通過し、印刷媒体によって反射され、再び印刷範囲を通って反射されて、色コートを2回通過するか、あるいは、光線がスクリーンドットを介して入り、基板内で散乱し、非印刷位置にて基板を出るか、またはこれと反対に進行することで、光による色コートの単一通過に対応するか、または、光線は最終的にスクリーンドットの外の印刷基板によって排他的に反射されることを意味する。印刷された各色相値について、3種類の透過(透過成分と呼ぶ)の割合が測定したスペクトルによって決定される。また、この印刷色の色相値は3つの関連する透過スペクトルと共に3つの有効な表面成分(確率に関連して)からなると考えられる。
【0014】
これを考慮すると、図2に示すように、いくつかのこうした表面区分どうしを所与の印刷順序で重ね合わせることが可能となる。2つの色から、例えば3×3=9個の表面成分の組み合わせができあがる。例えば、第1の色を1回(21)通過する、2回(22)通過する重なり合わない成分と、第2の色を1回(23)通過する、2回(24)通過する重なり合わない成分と、非印刷成分(25)と重なり合う成分とがあり、第2の色を1回通過した後に第1の色を2回通過し(26)、次に、これとは逆の順序で(27)、両方の色を2回通過し(28)、両方の色を1回通過する(29)。
【0015】
各組み合わせの確率は個々の確率に基づいて計算される。これに対応して生じた結果値を、それぞれが独自のスペクトル透過挙動を持ったこれらの組み合わせ全ての寄与の合計から求めることができ、この結果値は、所与の印刷基板上のオーバープリントの結果を非常に高い精度で予測する。
【0016】
有利にも本発明は、色組み合わせの個々の色相値を基板材料に応じて修正するよう提案する。これには、例えばユーザによる指定が関与してもよい。さらに有利なことに、本発明は、組み合わせ印刷中に関与する他の色の影響によって変化した色相値を考慮することを提案する。ここでは、トラッピングがコート厚さに関連して影響することがあり得る。
【0017】
本発明のさらなる提案によれば、スクリーンドットにおける各色のコート厚さが考慮されるが、これは、スクリーニング技術と印刷技術によって、スクリーンドットの色コートの厚さが全体範囲におけるものとは異なるためである。これにより、透過と恐らくは色コートの散乱とがフルトーンに対応して変化する。この効果は色相値に依存するものであり、また、プロセス先行型の指定によって、あるいは測定データの数学的調整によって考慮することができる。
【0018】
さらに本発明の範囲において、印刷順序に加えて各印刷技術を考慮しているが、これは、当然ながら印刷技術の選択(インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷)によって、上述した確率の値またはコート厚さの決定が影響を受けるためである。
【0019】
特に有利なことに、本発明は個々の色予測を以下のステップによって決定するよう提案する:
a) 印刷されていない基板に関してスペクトル反射の度合いを決定する
b) 印刷色の階調の各色合いに、スペクトル反射の度合いを決定する
c) i)光の単一過、ii)光の二重通過、の両方に決定されたスペクトル反射の度合いを用いて、印刷色の階調の各色合いに、色コートのスペクトル透過の度合いを決定する
d) 各階調に、基板、光の単一通過、および光の二重通過の透過成分を決定する
e) 決定した透過成分、スペクトル透過の度合い、決定した基板のスペクトル反射の度合いに基づき、各階調について反射スペクトルに関する予測を行う。
【0020】
この最初に述べた個々の色予測を行う有利な方法により、各色に非常に適した反射スペクトルが得られる。そのため、これらの値に基づくオーバープリント予測が、非常に現実的で適切なものとなる。
【0021】
本発明の有利な技術によれば、対応する値は、通常、分光光度測定によって決定することができる。しかし、多くの色について十分な量の測定値が既に利用可能であり、これらをデータベースから学習することができる。さらに、今度は反対に、本発明に従って求めた値をデータベースに提供することができる。
【0022】
個々の値を求めるために様々な技術を適用することが可能である。3つの方法はそれぞれ独自の透過スペクトルを、即ち光を通過中にフィルタリングする独自の方法を備えている。興味深いのは単一通過と二重通過のみである。通過がゼロではフィルタリングは行われない。全ての波長についての透過スペクトルは1である。測定できるのは全体的な外観としての反射スペクトルのみであり、この反射スペクトルでは光は3つの異なる通路を均衡のとれた状態で進み、それぞれの通路は独自のフィルタリングを備えている。反射の全体的な結果が測定される。個々の成分が、例えば、物理的な仮定によって計算される。
【0023】
例えば、一方の側での基板のスペクトル反射の度合いと、もう一方の側でのフルトーンとに基づいて、2回通過された色のスペクトル透過の度合いを求めることができる。1回通過された色コートのスペクトル透過の度合いについては、2回通過された色コートのスペクトル透過の度合いを使用することができる。本発明のさらなる提案によれば、1回通過された色コートおよび2回通過された色コートのスペクトル透過の度合いを、求めたスペクトル反射の度合いから逸脱する予測された反射スペクトルの逸脱度によって修正することができる。関連した方法で、スペクトル反射の度合いと透過の度合いとに基づいて、基板、光の単一通過、および光の二重通過の透過成分を求めることもできる。
【0024】
本発明のさらなる有利な提案によれば、基板、光の単一通過、および光の二重通過の3つの透過成分が、色相値の所定の特性曲線と、スクリーンおよび印刷技術に関する追加的情報とに基づいて決定される。
【0025】
それぞれの技術が、最終的に求められるそれぞれの予測の質を決定する。
本発明の有利な提案によれば、定義された色相値間の各色の値を、補間によって完成させることができる。補間によりシステム全体に不正確が生じるかもしれないが、個々の印刷ジョブは予定される。望ましい正確さの度合いにより、選択するスクリーンの度合いが決まる。
【0026】
したがって、最初に、各色相値について3つの透過成分とこれに関連する透過スペクトルとを含む予測、n個の色のそれぞれに対し決定される。により、これらの釣り合った組合せが、予め定義された色相値の階調の反射スペクトル再び正確に対応するようになる。
【0027】
各色を予測するための非常に多様な方法が知られているが、新しく発明性を持ち、さらにオーバープリント予測とは関係のない、特許請求項6で特徴とされている方法の新規性は、この方法がさらに経験的な補正に関与している点にある。先行技術では、単に、独立したスペクトルと幾何学的表面被覆とが生成され、これらから全ての値が導出される。反射スペクトルがオリジナルの値に再度組み込まれることはない。
【0028】
本発明は透過成分の手段によりインク被覆割合について現実的に記述しているので、オーバープリントにおける表面被覆とコート厚さに関して変化した状況について、それぞれの色と比較して有利な方法で記述することが可能である。
【0029】
印刷技術では、白紙上でのインクトラップは印刷済みの紙上(紙には既に別の色で印刷がされている)でのインクトラップとは異なることが知られている。これは、コート厚さを変更したり、表面被覆を除外したりする、即ち減少させる、通常のトラッピング公式により表されている。本発明ではこれを有利に採用する。
【0030】
さらに、色の色相値の表面被覆の測定が、印刷済みの紙と印刷されていない紙とで異なると仮定できる。この効果は、表面相互作用の変化が現れたものであり(例えば、付着または接着の形態)、組み合わせ印刷における色相値の変化として経験的に様々な形で考慮することができる。このいわゆるトラッピングの考慮は、本発明のさらに有利な態様の1つである。
【0031】
色は完全に透明ではないが、光をある程度散乱させる、つまり光を直線的な光線伝播から屈折させることが知られている。そのため、色のオーバープリントは、その透過と散乱挙動の両方を考慮した場合により上手く説明できる。色の散乱挙動は、例えばこの色を別の色(黒が好適)の上に印刷するおよび測定したスペクトルを透過の純粋な計算結果と比較することで決定できる。光は、上側の色の散乱されることで、下側の色に到達せずに再び外部に到達する。この結果は、透過の純粋な計算から予測されたであろう結果よりも明るい。このいわゆる散乱効果の考慮も本発明の有利な態様である。
【0032】
さらに、本発明は表面反射の考慮も可能とする。空気と紙またはインクとの間の界面は、光学の法則に従って、入射光の一部を反射する。そのため、外部から入射する測定対象の光は媒体を完全に貫通することはない。さらに、内部では戻ろうとする光の一部が保持される。これらの効果を考慮すれば、色コートを使用したスペクトル測定データの解釈を向上させることが可能である。
【0033】
最後に、本発明は、いわゆる被覆構造の考慮を許容する。印刷工程中、色の塗布は完全に均質的ではない。特に、オフセット印刷においては、非常に高粘性のインクによってストリングを形成する。このインクストリングが破壊して、紙上に、主に供給方向に堆積する。多くの場合、紙の表面はインクコートの厚さよりも遥かに荒いので、接触問題やインクの不完全塗布が生じる。不完全な被覆は、予測モデルにおいて、例えば、印刷されていない紙の残余表面成分によってやはりフルトーンで表すことができる。
【0034】
本発明による方法は、既知の値を追加的に使用できるようにし、印刷および評価の必要性を妥当な範囲に抑えたため、比較的単純であり、既知の方法と比較して労力が低減されている。単一通過時および二重通過時における透過のスペクトルを、例えば、フルトーン領域を使用して決定することができ、また、別の値に変換することができる。この場合には、使用する支持点の数を少なくすることも可能である。印刷、スペクトル分析および評価に関して労力が比較的少ないにも関わらず、得られるオーバープリント予測の精度は、特にコート厚さ、印刷技術、印刷順序を考慮すると比較的高い。
【0035】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の図面の説明から明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】印刷基板を通過する光線の略図。
図2】2色間におけるオーバープリント関係の概略図。
図3】スペクトル透過と透過成分を決定する工程を示すフローチャート。
図4図3による工程の一つの別形を示すフローチャート。
図5】オーバープリント結果を決定する工程を示すフローチャート。
図6図5による工程の補足を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図3図4は、印刷する色の透過成分を決定する工程を示すフローチャートである。図中、同一のステップを同一の参照符号で識別している。図4は、工程の一つの別形を示す。
【0038】
まず、第1ステップ30で、基板上に1つの色が、0%から100%までの異なるスクリーン色合いにて印刷される。その後、測定31を行うか、またはデータベース32の値を調べることで、ステップ33において、基板と印刷された各色の色合いとの両方のスペクトル反射率が決定される。ステップ34で実施される分析は、スペクトル透過率と、各色の色合いについてのその成分とを求めるために役立つ。
【0039】
これにより、印刷されたそれぞれの色の各色合いについて以下の情報35が得られる。
‐ 印刷基板のスペクトル反射率、
‐ 単一通過の場合のスペクトル透過率、
‐ 同様に、二重通過の場合のスペクトル透過率、
‐ ゼロ通過の透過率成分、
‐ 単一通過の透過成分、および
‐ 二重通過の透過成分。
【0040】
これにより、ステップ36で、再合成の範囲内で利用可能な情報に基づき、各色の色合いのスペクトル反射率について予測できるようになる。
図4に示す別形の工程では、得られた値の補正を行う。一方で、工程ステップ33において測定またはデータベースから取得した、基板と各色の色合いの両方のスペクトル反射率と、もう一方で、プロセスステップ36で行った各色の色合いのスペクトル反射率に関する予測との逸脱について調べ、それぞれのスペクトル透過率と、各色の色合いについてのその成分との補正値を求める。これが、ステップ35の結果に補正値として流入される。
【0041】
図5および図6は、オーバープリント予測の決定をフローチャート方式で示しており、図6は基本工程の補足または別形を示す。この場合も、同一の工程ステップを同一の参照符号で示している。
【0042】
望ましい色の組み合わせ1が予め定義され、ステップ5で、これがn個の色の色相値のデータ内に流入される。
ステップ3.1、3.2、3.3で、n個の色の各々2.1、2.2、2.3などについて色予測が個別に行われ。その結果、既知の色合いについて、スペクトル透過率とその成分とが得られる。ステップ5で得たn個の印刷色の色相値を考慮してステップ4.1、4.2、4.3等では、n個の印刷色の各々について、望ましい色相値のためのスペクトル透過率とその成分とが決定される。このために補間を用いる。次に、ステップ6では、スペクトル透過の重ね合わせによ各組み合わせの確率と有効な透過スペクトルとを得るため、(3のn乗個の)通過可能性にまで、1〜n個の全ての印刷色について、ゼロ、単一通過二重通過のそれぞれ対応する透過率及びその成分が組み合わされる。
【0043】
さらに、スペクトル反射率がステップ8で決定されるかデータベースから学習される望ましい印刷基板7指定される。ステップ9では、合成の範囲内で、ステップ8での印刷基板のスペクトル反射率が組み合わせられた全ての成分およびその透過スペクトル組み合わされる。これにより、ステップ10の結果、すなわち、望ましい基板上の望ましい色相値のオーバープリントの反射スペクトルが得られる。
【0044】
図6から得られるこれ以外の別形について、第一例で方法を修正または改良して考える。
印刷技術と印刷順序の決定12に応じて、異なる効果を得ることができる。例えば、ステップ13へ進んだ場合には、組み合わせ印刷にて色相値が変更されることで、ステップ5においてn個の印刷色の色相値のデータに直接影響を与える。
【0045】
さらに、ステップ12での指定、即ち印刷技術および/または印刷順序は、組み合わせ印刷14において、変更されたコート厚さに影響する。次にこのコート厚さの結果を、全てのスペクトル透過率とその成分を重ね合わせるステップ6でのスペクトル透過率の修正に直接流入させることができる。
【0046】
さらなる改良として、ステップ11で印刷基板7に応じて色相値を補正することができるが、これがステップ5のn個の印刷色の色相値に直接影響する。
図面を参照して記述した実施形態は、単に本発明をより詳細に説明することを目的としたものであり、いかなる形でも限定を目的としていない。個々の工程ステップの異なる組み合わせも、個々のステップの別形と同様に、本発明の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6