【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的への技術的解決法として、本発明は請求項1の特徴を備えた方法を提案する。さらなる利点および特徴は従属請求項から明白になる。
本発明による方法は、主に、印刷工程における通常の指定に基づく。これらは概して、一方の側の上が印刷基板であり、もう一方の側の上に印刷色、例えば特別な色および/または通常のプロセスカラーを使用している。望ましい正確性に応じて、色相値の階調が例えば10%から始まり100%(フルトーン)に達するまで10%単位で決定される。これに加え、色の組み合わせが、印刷色のうち望ましいものの色相値のデータとして予め定義される。
【0010】
本発明によれば、まず、n個の印刷色の各々について、それぞれの色予測が個別に行われる。本発明はまた、色相値の各々について3つの透過成分と、これに関連した透過スペクトルとを備えている。
【0011】
本発明に関連した透過成分は、恐らくは通路の成分とも呼ぶことができ、また、印刷基板自体と、印刷領域を通る単通路および複通路との反射率を観察して得られる成分であると理解される。
【0012】
その後、上述の印刷工程により生じた色相値のスペクトル値、印刷基板の色相値のスペクトル値が決定される。これらの値は、データベースまたは他の安全なソースのどちらかの内部にて利用可能であるか、あるいはスペクトル分析によって測定される。この場合、各色相値を持った領域が各色について印刷される。
【0013】
図1は、印刷基板内の光の通過を区別する方法を概略的に示す。本発明による方法の特色は、測定値がブランク基板(11)の成分(13)、即ち色コート(12)を通る光の単一通過(15、16)の成分と、色コート(12)を通る光の二重通過の成分とに細分されることである。通常、光は印刷基板内へ反射するのに加えて側方散乱もするため、この場合、普遍的な実際の光路を考慮する。つまり、光線はスクリーンドット上に入射してこれを通過し、印刷媒体によって反射され、再び印刷範囲を通って反射されて、色コートを2回通過するか、あるいは、光線がスクリーンドットを介して入り、基板内で散乱し、非印刷位置にて基板を出るか、またはこれと反対に進行することで、光による色コートの単一通過に対応するか、または、光線は最終的にスクリーンドットの外の印刷基板によって排他的に反射されることを意味する。印刷された各色相値について、3
種類の透過(透過成分と呼ぶ)の割合が
、測定したスペクトルに
よって決定される
。また、この印刷色の色相値は
3つの関連する透過スペクトル
と共に3つの有効な表面成分(確率に関連して)
からなると考えられる。
【0014】
これを考慮すると、
図2に示すように、いくつかのこうした表面区分どうしを所与の印刷順序で重ね合わせることが可能となる。2つの色から、例えば3×3=9個の表面成分の組み合わせができあがる。例えば、第1の色を1回(21)通過する、2回(22)通過する重なり合わない成分と、第2の色を1回(23)通過する、2回(24)通過する重なり合わない成分と、非印刷成分(25)と重なり合う成分とがあり、第2の色を1回通過した後に第1の色を2回通過し(26)、次に、これとは逆の順序で(27)、両方の色を2回通過し(28)、両方の色を1回通過する(29)。
【0015】
各組み合わせの確率は個々の確率に基づいて計算される。これに対応して生じた結果値を、それぞれが独自のスペクトル透過挙動を持ったこれらの組み合わせ全ての寄与の合計から求めることができ、この結果値は、所与の印刷基板上のオーバープリントの結果を非常に高い精度で予測する。
【0016】
有利にも本発明は、色組み合わせの個々の色相値を基板材料に応じて修正するよう提案する。これには、例えばユーザによる指定が関与してもよい。さらに有利なことに、本発明は、組み合わせ印刷中に関与する他の色の影響によって変化した色相値を考慮することを提案する。ここでは、トラッピングがコート厚さに関連して影響することがあり得る。
【0017】
本発明のさらなる提案によれば、スクリーンドットにおける各色のコート厚さが考慮されるが、これは、スクリーニング技術と印刷技術によって、スクリーンドットの色コートの厚さが全体範囲におけるものとは異なるためである。これにより、透過と恐らくは色コートの散乱とがフルトーンに対応して変化する。この効果は色相値に依存するものであり、また、プロセス先行型の指定によって、あるいは測定データの数学的調整によって考慮することができる。
【0018】
さらに本発明の範囲において、印刷順序に加えて各印刷技術を考慮しているが、これは、当然ながら印刷技術の選択(インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷)によって、上述した確率の値またはコート厚さの決定が影響を受けるためである。
【0019】
特に有利なことに、本発明は個々の色予測を以下のステップによって決定するよう提案する:
a) 印刷されていない基板に関してスペクトル反射の度合いを決定する
b) 印刷色の階調の各色合いに、スペクトル反射の度合いを決定する
c) i)光の単一過、ii)光の二重通過、の両方に決定されたスペクトル反射の度合いを用いて、印刷色の階調の各色合いに、色コートのスペクトル透過の度合いを決定する
d) 各階調に、基板、光の単一通過、および光の二重通過の透過成分を決定する
e) 決定した透過成分、スペクトル透過の度合い、決定した基板のスペクトル反射の度合いに基づき、各階調について反射スペクトルに関する予測を行う。
【0020】
この最初に述べた個々の色予測を行う有利な方法により、各色に非常に適した反射スペクトルが得られる。そのため、これらの値に基づくオーバープリント予測が、非常に現実的で適切なものとなる。
【0021】
本発明の有利な技術によれば、対応する値は、通常、分光光度測定によって決定することができる。しかし、多くの色について十分な量の測定値が既に利用可能であり、これらをデータベースから学習することができる。さらに、今度は反対に、本発明に従って求めた値をデータベースに提供することができる。
【0022】
個々の値を求めるために様々な技術を適用することが可能である。3つの方法はそれぞれ独自の透過スペクトルを、即ち光を通過中にフィルタリングする独自の方法を備えている。興味深いのは単一通過と二重通過のみである。通過がゼロではフィルタリングは行われない。全ての波長についての透過スペクトルは1である。測定できるのは全体的な外観としての反射スペクトルのみであり、この反射スペクトルでは光は3つの異なる通路を均衡のとれた状態で進み、それぞれの通路は独自のフィルタリングを備えている。反射の全体的な結果が測定される。個々の成分が、例えば、物理的な仮定によって計算される。
【0023】
例えば、一方の側での基板のスペクトル反射の度合いと、もう一方の側でのフルトーンとに基づいて、2回通過された色のスペクトル透過の度合いを求めることができる。1回通過された色コートのスペクトル透過の度合いについては、2回通過された色コートのスペクトル透過の度合いを使用することができる。本発明のさらなる提案によれば、1回通過された色コートおよび2回通過された色コートのスペクトル透過の度合いを、求めたスペクトル反射の度合いから逸脱する予測された反射スペクトルの逸脱度によって修正することができる。関連した方法で、スペクトル反射の度合いと透過の度合いとに基づいて、基板、光の単一通過、および光の二重通過の透過成分を求めることもできる。
【0024】
本発明のさらなる有利な提案によれば、基板、光の単一通過、および光の二重通過の3つの透過成分が、色相値の所定の特性曲線と、スクリーンおよび印刷技術に関する追加的情報とに基づいて決定される。
【0025】
それぞれの技術が、最終的に求められるそれぞれの予測の質を決定する。
本発明の有利な提案によれば、定義された色相値間の各色の値を、補間によって完成させることができる。補間によりシステム全体に不正確が生じるかもしれないが、個々の印刷ジョブは予定される。望ましい正確さの度合いにより、選択するスクリーンの度合いが決まる。
【0026】
したがって、
最初に、各色相値について
、3つの透過成分とこれに関連する透過スペクトルとを
含む予測
が、n個の色のそれぞれに
対し決定
される。こ
れにより、これらの
釣り合った組合せが、予め定義された色相値の階調の反射スペクトル
と再び正確に対応するようになる。
【0027】
各色を予測するための非常に多様な方法が知られているが、新しく発明性を持ち、さらにオーバープリント予測とは関係のない、特許請求項6で特徴とされている方法の新規性は、この方法がさらに経験的な補正に関与している点にある。先行技術では、単に、独立したスペクトルと幾何学的表面被覆とが生成され、これらから全ての値が導出される。反射スペクトルがオリジナルの値に再度組み込まれることはない。
【0028】
本発明は透過成分の手段によりインク被覆割合について現実的に記述しているので、オーバープリントにおける表面被覆とコート厚さに関して変化した状況について、それぞれの色と比較して有利な方法で記述することが可能である。
【0029】
印刷技術では、白紙上でのインクトラップは印刷済みの紙上(紙には既に別の色で印刷がされている)でのインクトラップとは異なることが知られている。これは、コート厚さを変更したり、表面被覆を除外したりする、即ち減少させる、通常のトラッピング公式により表されている。本発明ではこれを有利に採用する。
【0030】
さらに、色の色相値の表面被覆の測定が、印刷済みの紙と印刷されていない紙とで異なると仮定できる。この効果は、表面相互作用の変化が現れたものであり(例えば、付着または接着の形態)、組み合わせ印刷における色相値の変化として経験的に様々な形で考慮することができる。このいわゆるトラッピングの考慮は、本発明のさらに有利な態様の1つである。
【0031】
色は完全に透明ではないが、光をある程度散乱させる、つまり光を直線的な光線伝播から屈折させることが知られている。そのため、色のオーバープリントは、その透過と散乱挙動の両方を考慮した場合により上手く説明できる。色の散乱挙動は、例えばこの色を別の色(黒が好適)の上に印刷するおよび測定したスペクトルを透過の純粋な計算結果と比較することで決定できる。光は、上側の色の散乱されることで、下側の色に到達せずに再び外部に到達する。この結果は、透過の純粋な計算から予測されたであろう結果よりも明るい。このいわゆる散乱効果の考慮も本発明の有利な態様である。
【0032】
さらに、本発明は表面反射の考慮も可能とする。空気と紙またはインクとの間の界面は、光学の法則に従って、入射光の一部を反射する。そのため、外部から入射する測定対象の光は媒体を完全に貫通することはない。さらに、内部では戻ろうとする光の一部が保持される。これらの効果を考慮すれば、色コートを使用したスペクトル測定データの解釈を向上させることが可能である。
【0033】
最後に、本発明は、いわゆる被覆構造の考慮を許容する。印刷工程中、色の塗布は完全に均質的ではない。特に、オフセット印刷においては、非常に高粘性のインクによってストリングを形成する。このインクストリングが破壊して、紙上に、主に供給方向に堆積する。多くの場合、紙の表面はインクコートの厚さよりも遥かに荒いので、接触問題やインクの不完全塗布が生じる。不完全な被覆は、予測モデルにおいて、例えば、印刷されていない紙の残余表面成分によってやはりフルトーンで表すことができる。
【0034】
本発明による方法は、既知の値を追加的に使用できるようにし、印刷および評価の必要性を妥当な範囲に抑えたため、比較的単純であり、既知の方法と比較して労力が低減されている。単一通過時および二重通過時における透過のスペクトルを、例えば、フルトーン領域を使用して決定することができ、また、別の値に変換することができる。この場合には、使用する支持点の数を少なくすることも可能である。印刷、スペクトル分析および評価に関して労力が比較的少ないにも関わらず、得られるオーバープリント予測の精度は、特にコート厚さ、印刷技術、印刷順序を考慮すると比較的高い。
【0035】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の図面の説明から明白となる。