特許第5727290号(P5727290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727290
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/26 20060101AFI20150514BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20150514BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150514BHJP
   B60L 11/12 20060101ALI20150514BHJP
   A01B 71/02 20060101ALI20150514BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20150514BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20150514BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20150514BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B60K6/20 330
   B60L11/18 AZHV
   B60L11/12
   A01B71/02 H
   B60K6/52
   B60K6/44
   B60K6/46
   H02J7/00 P
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-104565(P2011-104565)
(22)【出願日】2011年5月9日
(65)【公開番号】特開2012-232724(P2012-232724A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2013年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100144750
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼野 孝
(72)【発明者】
【氏名】東郷 学
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−088979(JP,A)
【文献】 特開2008−308881(JP,A)
【文献】 特開2010−133148(JP,A)
【文献】 特開2006−136119(JP,A)
【文献】 特開平03−270603(JP,A)
【文献】 特開2008−063969(JP,A)
【文献】 特開平02−074420(JP,A)
【文献】 特開2004−035183(JP,A)
【文献】 特開2004−068705(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/066665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 30/20
B60L 11/12
B60L 11/18
A01B 71/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を駆動する走行用電動機と作業装置を駆動するPTO電動機とを備えるとともに、前記走行用電動機を停止させた状態で前記PTO電動機を駆動する定置作業プロセス及び前記走行用電動機を駆動させた状態で前記PTO電動機を駆動する走行作業プロセスを実行するトラクタであって、
内部電源として機能する車載発電機と、
電力を供給する電源として前記内部電源と外部電源のいずれかあるいはその両方を選択する電源選択部と、
前記電源選択部によって選択された電源を充電電力用電源として充電されるバッテリと、
前記電源選択部によって選択された電源と前記バッテリの少なくとも1つから供給された電力を前記走行用電動機又は前記PTO電動機あるいはその両方の電動機に駆動電力を供給する駆動制御部と、
前記電源選択部における前記充電電力用電源の選択を管理する複数の充電管理モードと、前記電源選択部における電源選択及び前記駆動制御部における駆動電力の供給先の選択を管理する複数の駆動管理モードとを有する給電管理部と、
を備え
前記給電管理部は、前記外部電源と前記車載発電機と前記バッテリとの3つの電源のうちから選択された単独の電源で、あるいはその任意の組み合わせで、前記PTO電動機に駆動電力を供給することができるトラクタ。
【請求項2】
前記駆動管理モードには、前記定置作業プロセス時に前記内部電源と前記外部電源の両方からの電力をPTO電動機に給電する定置作業強化モードが含まれている請求項1に記載のトラクタ
【請求項3】
前記充電管理モードには、前記走行用電動機を停止させた状態で前記バッテリを充電する定置充電の際に、前記内部電源と前記外部電源の両方からの電力を前記バッテリに給電する充電強化モードが含まれている請求項1又は2に記載のトラクタ
【請求項4】
前記給電管理部は、運転者が着座する運転座席における着座検出部からの着座非検出信号と、駐車ブレーキ操作検出部からのブレーキON信号とを条件として前記定置作業プロセスの実行を許可する請求項1から3のいずれか一項に記載のトラクタ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を駆動する走行用電動機と作業装置を駆動するPTO電動機とを備えるとともに、前記走行用電動機を停止させた状態で前記PTO電動機を駆動する定置作業プロセス及び前記走行用電動機を駆動させた状態で前記PTO電動機を駆動する走行作業プロセスを実行する作業車両に関する。
なお、PTOとは(Power Take Off)の略語であり、動力取り出しの意味であるが、ここでは、作業車両が装備する作業装置に動力を供給する構成の総称として用いられている。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業車両として、特許文献1には、エンジンによって駆動される発電機と、該発電機によって発電された電力を蓄電することのできるバッテリと、前記エンジンを停止させた状態でも、該バッテリの電力によってモータを駆動して走行装置を駆動することのできる走行駆動手段と、発電機によって発電された電力と外部電源から供給される電力とをバッテリに選択的に充電することのできる充電手段と、発電機によって発電された電力を外部へ取り出して電動作業装置等の電動機器を駆動することのできる電力取り出し手段を設けた作業車両が記載されている。さらにこの作業車両では、バッテリ充電器の入力部は、発電機と外部電源と接続可能である。発電機又は外部電源からバッテリに充電された電力はコントローラを介してモータ駆動回路へ出力され電動モータを駆動するだけでなく、外部に交流電力又は直流電力を取出し可能である。これにより、交流・直流電力の電源車輌として機能し、交流・直流電力で作動する電動噴霧器等の電動作業装置を接続して駆動することができる。
しかしながら、この作業車両では、内部電源としての発電機からの電力及び外部電源からの電力のいずれかあるいは両方をバッテリ充電器に供給することや、そのバッテリ充電器に付加的なサービスコンセントを設けていることは記載されているが、内部電源と外部電源との組み合わせによるバッテリ充電については記載されていない。さらには、作業車両の走行装置及び作業車両に装着される作業装置と、内部電源及び外部電源との間の効率的な給電接続に関しても記載されていない。
【0003】
また、特許文献2による電動車両では、車両がシステムオフされかつ充電手段が外部電源に接続された状態で充電手段により二次電池を充電するときに、二次電池の温度が予め設定された所定温度以上のときには所定の充電シーケンスにより二次電池が充電されるよう充電手段を制御し、二次電池の温度が所定温度未満のときには所定の充電シーケンスによる充電より充電が制限されるよう充電手段が制御される。さらに、充電制御手段は、検出された温度が前記所定温度未満のときには車両が搭載する補機(エアコンなど)の作動を禁止することで、補機の負荷変動に伴って二次電池が過大な電力によって充電されるのを抑制する。この特許文献2には、充電電力の効果的な供給方法が記載されているが、補機の効果的な駆動方法に関しては記載されていない。
【0004】
さらに、特許文献3による電動車両の電気システムでは、外部充電時には、車両駆動力発生用電動機へ通電経路を形成する大容量のリレーをオフしたままで、対応するリレーのオンによって、外部電源からの供給電力によってメインバッテリを充電する経路を形成するとともに、補機負荷系が接続された電源配線に電力を供給できる。これにより、外部充電時において、補機負荷系の動作を確保した上で、リレー(開閉器)の消費電力を抑制することによって充電効率を高めることができる。しかしながら、この電気システムでも、走行装置としての駆動輪及び車両に搭載されている補機(エアコン)と、内部電源及び外部電源との間の効率的な給電接続に関しては十分に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐30683号公報 (段落番号〔0008−0049〕、図5図6
【特許文献2】特開2010‐252427号公報(段落番号〔0007−0013〕、図1
【特許文献3】特開2009‐225587号公報(段落番号〔0090〕、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、作業車両の走行装置及び作業車両に装着される作業装置と、内部電源及び外部電源との間の効率的な給電接続を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
走行装置を駆動する走行用電動機と作業装置を駆動するPTO電動機とを備えるとともに、前記走行用電動機を停止させた状態で前記PTO電動機を駆動する定置作業プロセス及び前記走行用電動機を駆動させた状態で前記PTO電動機を駆動する走行作業プロセスを実行するトラクタにおいて、上記課題を解決するため、本発明のトラクタでは、内部電源として機能する車載発電機と、電力を供給する電源として前記内部電源と外部電源のいずれかあるいはその両方を選択する電源選択部と、前記電源選択部によって選択された電源を充電電力用電源として充電されるバッテリと、前記電源選択部によって選択された電源と前記バッテリの少なくとも1つから供給された電力を前記走行用電動機又は前記PTO電動機あるいはその両方の電動機に駆動電力を供給する駆動制御部と、前記電源選択部における前記充電電力用電源の選択を管理する複数の充電管理モードと、前記電源選択部における電源選択及び前記駆動制御部における駆動電力の供給先の選択を管理する複数の駆動管理モードとを有する給電管理部とが備え、前記給電管理部は、前記外部電源と前記車載発電機と前記バッテリとの3つの電源のうちから選択された単独の電源で、あるいはその任意の組み合わせで、前記PTO電動機に駆動電力を供給することができる。なお、以下の記載における作業車両はトラクタを意味している。
【0008】
この構成によると、内部電源と外部電源とバッテリのいずれかあるいはそのすべてが電力供給元となるように選択でき、選択された電力を、走行用電動機又はPTO電動機のいずれかあるいはその両方に供給することができる。従って、作業車両の状況に応じて、最適な電力供給元と電力供給先を選択することができる。その結果、特に作業装置内部電源及び外部電源との間の効率的な給電接続が実現可能となる。
【0009】
本発明の好適実施形態の1つでは、好適な駆動管理モードとして、前記定置作業プロセス時に前記内部電源と前記外部電源の両方からの電力をPTO電動機に給電する定置作業強化モードが設定されている。この定置作業強化モードでは、前記内部電源と前記外部電源の両方からの電力を用いて作業装置を駆動することができるから、高負荷の定置作業を行う場合に適している。さらに大きな電力が必要な場合には、バッテリからの電力も付加することも可能である。
【0010】
本発明の好適実施形態の1つでは、好適な充電管理モードとして、前記走行用電動機を停止させた状態で前記バッテリを充電する定置充電の際に、前記内部電源と前記外部電源の両方からの電力を前記バッテリに給電する充電強化モードが設定されている。この充電強化モードでは、前記内部電源と前記外部電源の両方からの電力を用いてバッテリを充電することができるから、例えば、家庭用配線を外部電源としても、バッテリの高速充電が可能となる。
【0011】
車両の停止状態での作業装置を駆動する定置作業は、作業装置だけを駆動することになるので、その操作を行う者にそのことを明確に認識させる必要がある。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記給電管理部は、運転者が着座する運転座席における着座検出部からの着座非検出信号と、駐車ブレーキ操作検出部からのブレーキON信号とを条件として前記定置作業プロセスの実行を許可するように構成されている。この構成では、運転座席に運転者が存在しておらず、駐車ブレーキがかけられているという条件の下で定置作業プロセスが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における電力系の基本構成を説明するための模式図である。
図2】車両走行時における基本的な充電管理モードと駆動管理モードを説明する模式図である。
図3】車両停止時における基本的な充電管理モードと駆動管理モードを説明する模式図である。
図4】本発明の実施形態の1つとしてのハイブリッド式トラクタの外観図である。
図5】ハイブリッド式トラクタにおける電力システムの機能ブロック図である。
図6】充電管理モードと駆動管理モードとの組み合わせを自動的に決定する制御システムの一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による作業車両の具体的な実施形態を説明する前に、図1の模式図を用いて、本発明における電力系の基本構成を説明する。この作業車両は、走行系の駆動部として走行用電動機M1と作業系の駆動部としてのPTO電動機M2,M3とを備えている。これらの電動機M1,M2,M3に電力を供給する電源としてバッテリ10と内部電源4と外部電源1が用意されている。ここでの内部電源4とは、バッテリ10以外の車両に搭載されている電源であり、自ら電力を生み出す車載発電機ユニットである。そのような車載発電機ユニット4としては、内燃機関(エンジン)出力を用いたオルタネータユニットやソーラーパネルユニットなどがある。外部電源1は、商用電源であり、例えば家庭に設置された電気コンセントに車両側の電気プラグを差し込むことにより実現する。
【0014】
さらに、本発明の作業車両は、車両の停止状態、つまり走行用電動機M1を停止させた状態でPTO電動機M2,M3を駆動する定置作業プロセス、及び、車両の走行状態、つまり走行用電動機M1を駆動させた状態でPTO電動機M2,M3を駆動する走行作業プロセスを実行するために、電源選択部5と、駆動制御部6と、給電管理部7とを備えている。電源選択部5は、バッテリ10以外の電力を供給する電源として内部電源1と外部電源4のいずれかあるいはその両方を選択する。なお、バッテリ10は、バッテリ充電電力として電源選択部5によって選択された充電電力用電源によって充電される。駆動制御部6は、電源選択部5によって選択された電源(内部電源4または外部電源1あるいはその両方)とバッテリ10の少なくとも1つから供給された電力を走行用電動機M1又はPTO電動機M2,M3あるいはその両方に駆動電力を供給する。給電管理部7は、電源選択部5におけるバッテリ充電電力を供給する充電電力用電源の選択を管理する複数の充電管理モードと、電源選択部5における電源選択及び前記駆動制御部6における駆動電力の供給先の選択を管理する複数の駆動管理モードとを有する。給電管理部7には、センサ・スイッチコントローラ9が接続されている。センサ・スイッチコントローラ9には、走行状態検出センサ・スイッチ群、操縦・操作状態検出センサ・スイッチ群、作業状態検出センサ・スイッチ群が接続されている。従って、給電管理部7は、センサ・スイッチコントローラ9からの信号に基づいてこの作業車両の走行状態や作業装置の操作状態やバッテリ残量などを評価して、状況に応じた適切な充電管理モード及び駆動管理モードを決定する。
【0015】
給電管理部7によって管理されている複数の充電管理モード及び駆動管理モードの一例が図2図3に模式的に示されている。図2は車両走行時における充電管理モードと駆動管理モードの組み合わせを示しており、図3は車両停止時における基本的な充電管理モードと駆動管理モードの組み合わせを示している。
【0016】
車両走行時における、代表的な充電管理モードと駆動管理モードの組み合わせは以下の通りである。車両走行時には、外部電源からの電力供給は実質的には不可能であるので、ここでは、車載発電機ユニット4とバッテリ10が電力の供給元となっている。
(a)充電管理モードは、バッテリ10への充電は行わない非充電モードとする。駆動管理モードは、車載発電機ユニット4からの電力:S1とバッテリ10からの電力:Bとを駆動制御部6に供給して、駆動制御部6は、走行系だけを駆動制御するモードとする。これにより、走行用電動機M1は大電力:S1+Bでの駆動が可能となる。この組み合わせモードでは、PTO系には給電されずに走行系にだけ給電されるので、車両は作業装置を駆動することなしに、単に走行するだけである。
【0017】
(b)充電管理モードは、バッテリ10への充電は行わない非充電モードとする。駆動管理モードは、車載発電機ユニット4からの電力:S1とバッテリ10からの電力:Bとを駆動制御部6に供給し、駆動制御部6は、走行系とPTO系の両方を駆動制御するモードとする。例えば、走行用電動機M1はバッテリ10からの電力:Bで駆動させ、PTO電動機M2を車載発電機ユニット4からの電力:S1で駆動することができる。もちろん、車載発電機ユニット4からの電力:S1とバッテリ10からの電力:Bを駆動制御部6で混合させて、適切に分配してもよい。この組み合わせモードでは、PTO系と走行系の両方に給電されるので、車両は作業装置を駆動させながら走行する、走行作業プロセスが実行されている。
【0018】
(c)ここでも、充電管理モードは、バッテリ10への充電は行わない非充電モードとする。駆動管理モードは、バッテリ10からの電力:Bを駆動制御部6に供給し、駆動制御部6は、走行系とPTO系の両方を駆動制御するモードとする。この組み合わせモードでも、PTO系と走行系の両方に給電されるので、車両は作業装置を駆動させながら走行することになり、走行作業プロセスが実行されている。バッテリ10に余裕がある場合、この組み合わせモードはエンジン騒音などを伴わないことから、夜の作業走行に適している。
上記(a)(b)(c)では、充電管理モードが非充電モードであるため、バッテリ10への充電が行われない。しかしながら、図示はしていないが、車載発電機ユニット4からの電力:S1を少なくとも一部をバッテリ10に供給する充電モードも用意されている。
【0019】
車両停止時における、代表的な充電管理モードと駆動管理モードの組み合わせは以下の通りである。車両停止時には、外部電源からの電力供給は可能であるので、ここでは、車載発電機ユニット4と外部電源1とバッテリ10とが電力の供給元となっている。
(a)充電管理モードは、バッテリ10への充電は行わない非充電モードとする。駆動管理モードは、車載発電機ユニット4からの電力:S1と外部電源1からの電力:S2とを駆動制御部6に供給して、駆動制御部6は、PTO系だけを駆動制御するモードとする。これにより、PTO電動機M2は大電力:S1+S2での駆動が可能となる、定置作業強化モードである。この組み合わせモードでは、走行系には給電されずにPTO系にだけ給電されるので、車両は走行することなしに作業装置を駆動する定置作業プロセスが実行される。また、さらに大きな電力が必要な場合には、バッテリ10からの電力も付加することも可能である。
【0020】
(b)充電管理モードは、車載発電機ユニット4からの電力:S1でバッテリ10を充電する内部充電モードとする。駆動管理モードは、外部電源1からの電力:S2だけを駆動制御部6に供給して、駆動制御部6は、PTO系だけを駆動制御する外部駆動モードとする。これにより、充電しながらのPTO電動機M2の駆動が可能となる。この組み合わせモードでは、バッテリ10を充電しながら、定置作業プロセスが実行される。
【0021】
(c)充電管理モードは、外部電源1からの電力:S2でバッテリ10を充電する外部充電モードとする。駆動管理モードは、車載発電機ユニット4からの電力:S1だけを駆動制御部6に供給して、駆動制御部6は、PTO系だけを駆動制御する内部駆動モードとする。つまり、上記(b)のモードにおいて、車載発電機ユニット4と外部電源1の電力供給先を取り換えたモードがある。従って、PTO系により大きな電力が要求される場合、車載発電機ユニット4と外部電源1のうちで供給電力の大きい方をPTO系に供給できるモードを採用するとよい。
【0022】
(d)充電管理モードは、外部電源1からの電力:S2でバッテリ10を充電する外部充電モードとする。駆動管理モードは、外部電源1からの電力:S2だけを駆動制御部6に供給して、駆動制御部6は、PTO系だけを駆動制御する外部駆動モードとする。つまり、この組み合わせモードでは、外部電源1だけで、バッテリ10を充電しながら定置作業プロセスが実行される。
【0023】
(e)充電管理モードは、車載発電機ユニット4からの電力:S1でバッテリ10を充電する内部充電モードと外部電源1からの電力:S2でバッテリ10を充電する外部充電モードとを組み合わせた内外部充電モードである。これにより、バッテリ10は大電力:S1+S2で高速充電が可能となる、充電強化モードである。駆動管理モードは、駆動制御部6に電力が供給されない非作業モードである。この組み合わせモードでは、定置作業プロセスは実行されずにバッテリ10だけが高速で充電される。
なお、車両停止時でバッテリ10の充電を行わない場合には、その間にバッテリ交換が可能となる。
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態を図4図5とを用いて説明する。この実施形態では、本発明がトラクタに適用されている。図4図5から明らかなように、このトラクタは、操向車輪としての前輪11と、駆動輪としての後輪12によって支持された車体の後部に、作業装置13を装備している。作業装置13としては、耕耘装置のように走行しながら作業(走行作業)するタイプのもの、バックホウ装置のように停止した状態で作業(定置作業)するタイプのもの、放水装置ないしは薬剤散布装置のような走行作業及び定置作業の両方で利用されるタイプのものがある。車体の前部には、内部電源である車載発電機ユニット4を構成するエンジン40と発電機(オルタネータ)41が配置されている。外部電源1は、機体に装備されている長尺ケーブル付き電気プラグ1aを商用電源とつながっているソケットに接続することによって構築される。
【0025】
機体の中央部には、跳ね上がり式の運転座席30を備えた運転部3が設けられている。運転部3には、本発明に関係する操作デバイスとして、駐車ブレーキレバー31やステアリングホイール32が挙げられるが、その他ブレーキペダル、アクセルペダル、変速レバーなども備えられている。運転部3の下方領域には、充放電式のバッテリ10が配置されている。
【0026】
また、運転座席30に運転者が着座していないことを検出するために運転座席30が上方に跳ね上がっていることを検知する着座センサ91、駐車ブレーキレバー31の操作位置(駐車ブレーキのON/OFF)を検出する駐車ブレーキスイッチ92なども備えられている。
【0027】
さらに、左後輪12と右後輪12とをそれぞれ回転駆動するインホイール電動機である右輪電動機(図面ではM11で示されている)81と左輪電動機(図面ではM12で示されている)82が走行用電動機(図1図2ではM1で示されている)として装備されている。各電動機81,82はそれぞれ独立的に駆動制御部6を介して供給される電力量によってその回転速度が変化する。従って、左後輪12と右後輪12との回転速度を相違させることができ、電子制御ディファレンシャルとしての機能も実現する。
【0028】
作業装置13に動力を与えるPTO系として、外部作業装置11の入力軸と連結される出力軸を有するPTO電動機(図面ではM2で示されている)83と、油圧ポンプ(図面ではPで示されている)を駆動するPTO電動機(図面ではM3で示されている)84が備えられている。油圧ポンプにはサービスポートを有する油圧ホースが接続されており、種々の作業装置13に油圧を供給することができる。なお、以後は説明を簡単にするため、PTO電動機83がPTO電動機84も含めた総称として用いる。
【0029】
電気制御系として、このトラクタは、本発明に特に関係するものとして、電源選択部5、駆動制御部6、給電管理部7、センサ・スイッチコントローラ9が備えられており、互いに車載LANや車載電力線などによって接続されている。
【0030】
電源選択部5は、第1選択スイッチ51、AC−DCコンバータ52、DC−DCコンバータ53を備えている。第1選択スイッチ51は、内部電源4である発電機41又は外部電源1である商用電源に接続された電気プラグ1aあるいはその両方から電力を入力すべく、電源を選択するスイッチ回路からなる。ここでは、第1選択スイッチ51によって選択される電力は交流電力であるので、AC−DCコンバータ52で直流化し、その後、DC−DCコンバータ53で要求される直流仕様に調整される。電源選択部5からの出力ラインは2系統あり、一方はバッテリ10に接続されており、他方は駆動制御部6に接続されている。この構成により、駆動制御部6は、外部電源1又は内部電源4あるいはその両方からの電力を、バッテリ10又は駆動制御部6あるいはその両方に供給することができる。なお、電源選択部5は、入力した2系統の電力を混合して、適切な比率で分割して、出力する機能を有する。
【0031】
駆動制御部6は、第2選択スイッチ61、走行用インバータ62、作業用インバータ63を備えている。第2選択スイッチ61は、電源選択部5又はバッテリ10あるいはその両方から電力を入力するスイッチ回路からなる。第2選択スイッチ61によって選択入力された電力は、走行用インバータ62又は作業用インバータ63あるいはその両方に送られる。走行用インバータ62は、ここでは、右輪電動機81と左輪電動機82のそれぞれに駆動制御電流(例えばPWM信号)を与える。作業用インバータ67は、PTO電動機83やPTO電動機84に電力を供給して、作業装置13を駆動する。なお、駆動制御部6も、電源選択部5やバッテリ10から入力する電力を必要の場合混合して、適切な比率で分割して、出力する機能を有する。
【0032】
電源選択部5と駆動制御部6とは、複数の電力入力系統と複数の電力出力系統を有するので、この電源選択部5と駆動制御部6とを組み合わせた給電システムは、供給元と供給先が異なる多数の電力供給モードを作り出すことができる。上述したように、この電力供給モードは充電管理モードと駆動管理モードとの組み合わせから構成することができる。図2図3で例示されているこのような、電力供給モードから実際に実行されるモードの決定は、このトラクタの種々の機能を管理する管理コントローラ内に構築されている給電管理部7によって決定される。
【0033】
給電管理部7における電力供給モードは、運転者によるボタン・スイッチ操作等の人為操作具による直接的な操作命令で決定するように構成することができる。しかしながら、バッテリ10の残量や消費予測などを考慮したり、省エネルギ運転のレベルや静粛運転のレベルを考慮したりする場合には、その判断が複雑となるので、これを自動的に決定する制御システムを導入すると好都合である。そのような制御システムの一例を図6の模式図を用いて説明する。
【0034】
この制御システムでは、着座センサ91や駐車ブレーキスイッチ92やバッテリ残量センサなど各種センサやスイッチと接続されているセンサ・スイッチコントローラ9は、これらのセンサ・スイッチ検出信号から、各種デバイスの状態を検出する機能を備えている。そのような機能の例は、着座検出部9a、駐車ブレーキ操作検出部9b、作業装置操作検出部9c、バッテリ状態検出部9dなどである。このような各機能部から出力された信号(データ)は給電管理部7に構築されている評価部70の入力パラメータとして利用される。評価部70は、入力パラメータに基づいて駆動管理モードの1つと充電管理モードの1つを決定できるような評価値を出力するアルゴリズムをもつプログラムで構築することができる。例えば、ニューラルネットワークの技術によって構築することができ、より簡単には、IF〜THENタイプの判定式群によっても構築することができる。評価部70から出力された評価値に基づいて、駆動管理モード決定部71は実行すべき駆動管理モードを決定し、充電管理モード決定部72は実行すべき充電管理モードを決定する。決定された充電管理モードと駆動管理モードは電源選択部5と駆動制御部6に転送され、実際に電力供給が実行される。
【0035】
その一例では、運転者が着座する運転座席30における着座検出部9aから着座非検出信号が出力され、駐車ブレーキ操作検出部9bからのブレーキON信号が出力され、さらに作業装置操作検出部9cから作業装置13の始動指令が出力されると、給電管理部7から作業装置始動許可が出力され、実際に作業装置13を用いた定置作業プロセスが実行される。逆に、着座検出部9aから着座検出信号が出力され、駐車ブレーキ操作検出部9bからのブレーキOFF信号が出力され、さらに作業装置操作検出部9cから作業装置13の始動指令が出力されると、給電管理部7から作業装置始動許可が出力され、実際に作業装置13を用いた走行作業プロセスが実行される。なお、付加的に、省エネルギ運転のレベルや静粛運転のレベルが与えられている場合には、そのレベルに応じて、図3で例示したような各モードのうち最適なモードが選択される。
【0036】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、エンジン40は発電機41を駆動して電力を発生させるものとして用いられていたが、いわゆるハイブリッド型自動車のように、エンジン40の出力をそのまま走行系で用いる構成にしてもよい。その場合は、走行用電動機81、82は、ホイールモータではなく、エンジン40とシリアル又はパラレルに接続される発電電動モータとなる。
(2)上述した実施形態では、内部電源4として、エンジン40と発電機41からなる発電機ユニットが用いられていたが、ソーラパネルからなる発電機ユニットを用いてもよい。この発電機ユニットでは、直流電力が出力されるので、直接AC−DCコンバータ52を通らずに直接DC−DCコンバータ53に送られる。
(3)上述した実施形態では、本発明をトラクタに適用した例としていたが、本発明が適用できるその他の作業車両としては、芝刈機、耕耘機(管理機)、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車などが挙げられ、乗用型の作業機に限らず、歩行型の作業機にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、作業装置を装備するプラグイン式の電動作業車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1:外部電源
4:内部電源(車載発電機ユニット)
5:電源選択部
6:駆動制御部
7:給電管理部
10:バッテリ
11、12:走行装置(前輪、後輪)
13:作業装置
30:運転座席
81、82:走行用電動機(M1)
83、84:PTO電動機(M2、M3)
9:センサ・スイッチコントローラ
9a:着座検出部
9b:駐車ブレーキ検出部
91:着座センサ
92:駐車ブレーキスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6