【実施例】
【0051】
以下に、実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[試験例1]
本試験は、口腔内の日和見感染菌と歯周病菌に対する氷菓による効果を調べるために行った。
【0052】
(1)試料の調製
キシリトール(三菱商事フードテック社製)2.5g、ポリデキストロース(ダニスコジャパン社製)2.5g、還元難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)2.5g、アルギン酸ナトリウム(フードケミファ社製)1g、メントール(長谷川香料社製)0.2g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.1g、クエン酸三ナトリウム(扶桑化学工業社製)0.25g、ラクトフェリン(森永乳業社製)0.01g、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)0.03g、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)0.3gの各粉末を添加して乳鉢で均一に混合し、混合粉末を作成した。この混合粉末に、昆布ミネラル(フジッコ社製)2.5mlと精製水488.1mlの混合液を添加して溶解し、液体組成物を作成した。
次に、一粒当たり約3mlの液体組成物を、市販の小粒タイプアイストレイ(イノマタ化学社製)を使用し、ドライアイス/エタノールを−72℃の寒剤として急速に冷凍して氷菓(凍結組成物)を作成した。この氷菓を、試験試料とした。ここで使用した昆布ミネラル(フジッコ社製)に代えて、後述する実施例3による抗菌補助成分を水溶液に対して粉末5g/1000mlの最終濃度で使用した場合にも、以後の各試験において、同様の結果が得られた。
【0053】
(2)菌液の調製
要介護者や高齢者の口腔内から検出されることが知られている日和見感染菌として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin−resistant Staphylococcus aureus:MRSA)92005k(琉球大学より分譲)とカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC90028(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲)を使用した。また、口腔内の歯周病菌としてフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)JCM6328(理研JCMより分譲)を使用した。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、1%バクトペプトン(BD社製)培地を使用して、37℃のインキュベーター中で一晩培養した。カンジダ・アルビカンスは、1%バクトペプトンと2%グルコースからなるサブロー・デキストロース液体培地を使用して、37℃のインキュベーター中で一晩培養した。フソバクテリウム・ヌクレアタムは、GAMブイヨン液体培地(日水製薬社製)を使用して、嫌気性チャンバー(コイ・ラボラトリー・プロダクツ社製)内で、37℃、10時間、嫌気条件下(二酸化炭素10%、水素5%、窒素85%)で培養した。これらの培養液を菌液として試験に使用した。
【0054】
(3)試験方法
試験試料を試験直前に室温で融解した後、容量10mlの滅菌ディスポーザブルチューブに融解した試験試料を2.5ml添加し、25μlの上記菌液を添加、攪拌して10分間、室温(約25℃)で保持した。この混合液をリン酸緩衝生理食塩水で10倍ずつ段階希釈した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、標準寒天培地(日水製薬社製)に塗布して、37℃のインキュベーター内で1日間培養した。カンジダ・アルビカンスは、1%バクトペプトン(BD社製)、2%グルコース、1.5%寒天を添加したサブロー・デキストロース寒天培地に塗布して、37℃のインキュベーター内で2日間培養した。フソバクテリウム・ヌクレアタムは、ブルセラ培地(BD社製)に5%ヒツジ血清、5μg/mlヘミン(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製)、1μg/mlビタミンK(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製)を添加した寒天培地(Antimicrobial Agents and Chemotherapy,アメリカ、第43巻、1999年、p.2231〜2235)に塗布して嫌気性チャンバー内で嫌気条件下で、37℃、3日間培養した。培養後、各寒天培地上に形成されたコロニーの数を測定した。検出された各種菌のコロニー数から、上記溶液1ml当りの生菌数の対数値(log
10 cfu/ml)を求めた。
【0055】
(4)試験結果
本試験の結果を次の表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
その結果、試験試料は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンスの生菌数を10分間のうちに検出限界以下まで減少させ、非常に強い殺菌作用を示した。また、試験試料は、フソバクテリウム・ヌクレアタムの生菌数を10分間のうちに10分の1以下に減少させる殺菌作用を示した。本結果から、本発明の氷菓は、口腔内の日和見感染菌と歯周病菌に対して、比較的短時間のうちに抗菌活性を示すことが明らかとなった。
【0058】
[試験例2]
本試験は、本発明の氷菓に対する凍結とその方法の影響を調べるために行った。
(1)試料の調製
試験例1の方法で作成した液体組成物を、室温で4時間放置し、対照試料1とした。また、一粒当たり約3mlの液体組成物を、市販の小粒タイプアイストレイを使用し、−18℃のフリーザーで寒剤を用いずに冷凍し、試験試料1とした。さらに、一粒当たり約3mlの液体組成物を、市販の小粒タイプアイストレイを使用し、ドライアイス/エタノールを−72℃の寒剤として急速に冷凍して氷菓(凍結組成物)を作成した。この氷菓を、試験試料2とした。
【0059】
(2)菌液の調製
試験例1と同様の方法でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の菌液を調製した。
【0060】
(3)試験方法
対照試料1はそのまま、対照試料2と試験試料は試験直前に室温にて融解後、容量10mlの滅菌ディスポーザブルチューブに試験試料を2.5mlを添加した。次に、25μlの上記菌液を添加、攪拌して室温で10分間保持後の各混合液中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の生菌数を試験例1と同様の方法で測定した。
【0061】
(4)試験結果
本試験の結果を次の表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2から明らかなとおり、溶解後4時間経過した対照試料1では初菌数に比べて生菌数は殆ど変化しなかった。したがって、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、増粘剤、昆布抽出物、及びpH調整剤を含有する液体組成物は、溶解後に時間が経過すると抗菌活性が顕著に低下し、数時間後には抗菌活性が全く無くなることが明らかとなった。一方、−18℃で凍結させた試験試料1では、生菌数が10
2cfu/ml程度減少しており抗菌活性が保持されていた。さらに、急速に冷凍した試験試料2では10分間で生菌数を検出限界以下まで減少させ、非常に強い抗菌活性が保持されていた。すなわち、液体組成物を凍結させることによって抗菌活性を保持可能であることが明らかになり、さらに、液体組成物を急速に凍結させることで強い抗菌活性を保持可能であることが明らかとなった。
【0064】
[試験例3]
本試験は、氷菓の抗菌活性における抗菌補助成分の配合量の影響を調べるために行った。
(1)試料の調製
試験例1の方法で作成した混合粉末0.47gに、精製水に昆布ミネラル(フジッコ社製)を終濃度0、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5%となるように混合した溶液25mlを添加して溶解した。試験例1と同様の方法で氷菓(凍結組成物)を作成し、試験試料とした。
【0065】
(2)菌液の調製
試験例1と同様の方法でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の菌液を調製した。
【0066】
(3)試験方法
試験試料を室温にて融解後、容量10mlの滅菌ディスポーザブルチューブに試験試料を2.5mlを添加した。対照試料として、リン酸緩衝生理食塩水を2.5ml添加した。次に、25μlの上記菌液を添加、攪拌して室温で5分間、10分間保持後の各混合液中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の生菌数を試験例1と同様の方法で測定した。
【0067】
(4)試験結果
本試験の結果を次の表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
その結果、生菌数は、対照試料では5分及び10分後において、それぞれ6.10及び6.09log
10 cfu/mlであり、昆布ミネラル配合量0.1%では殆ど変化はなかったが、昆布ミネラル配合量0.2%以上では生菌数が顕著に減少し、良好な抗菌活性が観察された。昆布ミネラル配合量0.3%以上では5分間で生菌数を検出限界以下まで減少させ、非常に強い抗菌活性が観察された。したがって、本発明の氷菓は、抗菌補助成分として、昆布ミネラルの配合量が0.3%以上となるように添加することによって強い抗菌活性が得られることが明らかとなった。
【0070】
[試験例4]
本試験は、ヒトの唾液中の細菌に対する氷菓(凍結組成物)による抗菌活性を調べるために行った。
(1)試料の調製
実施例1と同様の方法で作成した氷菓(凍結組成物)を試験試料とした。精製水を試験試料と同様の方法で凍結させたものを対照試料とした。
【0071】
(2)唾液の採取
試験日の起床後、歯磨き、うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人4名から、試験日の午前中に唾液を採取した。
【0072】
(3)試験方法
試験直前に、試験試料及び対照試料を室温にて融解させた。容量10mlのディスポーザルチューブに融解した試験試料、対照試料を0.95mlずつ添加し、採取した唾液0.05mlを嫌気性チャンバー内で添加して攪拌した後、5分間、37℃で保持した。この混合液をリン酸緩衝生理食塩水で10倍ずつ段階希釈し、Blood Agar Base No.2(OXOID社製)に5%ウマ血清、5μg/mlヘミン(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製)、1μg/mlメナジオン(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製)を添加した非選択培地(Microbiological Research、ドイツ、第159巻、2004年、p.365〜370)に塗布した。
好気性菌は、37℃のインキュベーター内で3日間培養した。嫌気性菌は、嫌気性チャンバー内で37℃、7日間培養した。培養後、寒天培地上に形成されたコロニーの数を測定した。検出されたコロニー数から、上記溶液1ml当りの生菌数の対数値(log
10 cfu/ml)を求めた。被験者4名について好気性菌、嫌気性菌の平均値を求めた。
【0073】
(4)試験結果
本試験の結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
その結果、試験試料では初菌数に比べ好気性菌は0.23log
10 cfu/ml、嫌気性菌は半分程度(0.41log
10 cfu/ml)に減少した。一方、対照試料では好気性菌、嫌気性菌ともに生菌数は殆ど変化しなかった。これらの結果から、本発明の氷菓は、ヒトの唾液中の細菌に対し、比較的短時間のうちに抗菌活性を示すことが明らかとなった。
【0076】
[試験例5]
本試験は、本発明の氷菓(凍結組成物)の摂取による口腔内の細菌に対する抗菌活性を調べるために行った。
(1)試料の調製
試験例1と同様の方法で作成した氷菓を試験試料とした。精製水を試験試料と同様の方法で凍結したものを対照試料とした。
【0077】
(2)試験方法
(試験群)
試験日の起床後、歯磨き、うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人4名の被験者に対して、試験日の午前9:45に試験試料(氷菓:凍結組成物)を1分毎に1粒ずつ口腔内で融解させ、連続的に3粒摂取させた。また、摂取前[A](午前9:30)、摂取直後[B](午前9:55)、及び摂取1時間後[C](午前10:55)の各時点において、滅菌済バイアルに5分間に渡り、検体である唾液の全量を採取した。採取した検体は、嫌気性チャンバー内に入れ、リン酸緩衝生理食塩水で10倍ずつ段階希釈し、試験例4と同様の方法で、唾液1ml中の好気性菌、嫌気性菌の生菌数の対数値(log
10 cfu/ml)を求めた。
【0078】
(対照群)
また、対照試験として、前記試験日程とは別に、試験日の起床後、歯磨き、うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人4名の被験者に対して、対照試料(精製水の凍結物)を前記試験群と同様の方法で3粒摂取させ、同様の時間帯の[A]、[B]、[C]の時点で検体である唾液を採取して、検体中の好気性菌、嫌気性菌の生菌数を調べた。
【0079】
(無摂取群)
さらに、試験群、対照群とは別の試験日程で、試験群及び対照群と同様に、試験日の起床後、歯磨き、うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人4名の被験者に対して、凍結組成物を一切摂取させることなく、前記試験群と同様の方法、同様の時間帯の[A]、[B]、[C]の時点で検体である唾液を採取して、検体中の好気性菌、嫌気性菌の生菌数を調べた。
【0080】
(3)試験結果
本試験の結果を、次の表5、表6、表7に示す。表5は摂取群、表6は対照群、表7は無摂取群について、被験者各4名の好気性菌及び嫌気性菌の生菌数の平均値を示したものである。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
その結果、表5から明らかなように、試験群では、本発明の氷菓の摂取によって、摂取直後[B]において好気性菌が0.39log
10 cfu/ml低下し、嫌気性菌が0.21log
10 cfu/ml低下した。摂取1時間後[C]には、摂取前のレベルに戻った。
一方、表6及び表7から明らかなように、対照群及び無摂取群では、摂取直後[B]及び摂取1時間後[C]に好気性菌、嫌気性菌の明確な低下は確認されなかった。試験群では、対照群及び無摂取群に比べて摂取直後の生菌数が顕著に低かった。上記の結果から、本発明の凍結組成物の摂取によってヒトの口腔内の細菌数が減少し、口腔内細菌に対して抗菌活性が発揮されることが明らかとなった。
【0085】
[実施例1]
キシリトール(三菱商事フードテック社製)250g、ポリデキストロース(ダニスコジャパン社製)250g、還元難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)250g、アルギン酸ナトリウム(フードケミファ社製)100g、メントール(長谷川香料社製)20g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)10g、クエン酸三ナトリウム(扶桑化学工業社製)25g、をイオン交換水48リットルに溶解後、昆布ミネラル(フジッコ社製)250mlを添加し、混合液Aを作成した。この混合液Aを、バッチ式で75℃、30分間加熱殺菌後、5℃以下に冷却した。これとは別に、サイダー香料(長岡香料社製)50g、ラクトフェリン(森永乳業社製)1g、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)3g、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)30gをイオン交換水0.7リットルに溶解し、混合液Bを作成した。この混合液Bを孔径0.4μmのフィルターユニット(ミリポア社製)で滅菌し、上記混合液Aに添加、混合し、混合液Cを作成した。次に、この混合液Cを、一粒当たり約3mlの直方体の金型に充填し、−30℃の塩化カルシウム溶液からなるブラインに浸漬して凍結させ、金型から外し、凍結組成物を一万個製造した。
【0086】
[実施例2]
以下のように昆布抽出物から抗菌補助成分を調製した。
(1)昆布抽出物の調製
市販の乾燥マコンブ(八社会社製)4gを精製水400mlの入ったビーカーに添加し、室温で2時間浸漬した。続いて、マコンブ入りのビーカーを約95℃で30分間加熱した。さらに、ビーカーを放冷後、孔サイズ0.45μmのフィルター(アドバンテック社製)で除菌して、昆布抽出物350mlを得た。
本実施例では、昆布サンプル4gを精製水400mlに添加して昆布抽出物を調製したが、これは乾燥昆布から調理用にだしを取る場合の約2倍の濃度であった。
【0087】
(2)昆布抽出物の分画
昆布抽出物12mlを分取し、分画分子量5000ダルトンの遠心分離用限外ろ過膜カートリッジ(ミリポア社製)で2000rpm(960×g)、20分間の条件で遠心分離して、分子量5000ダルトンを超える画分を分離し、分子量5000ダルトン以下の画分からなる透過液を得た。この透過液が、昆布抽出物からの抗菌補助成分にあたる。
【0088】
[実施例3]
以下のように昆布抽出物から抗菌補助成分を調製した。
市販の乾燥マコンブ(納屋商店社製)1kgを精製水20Lの入ったステンレス製容器に添加し、室温で2時間浸漬後、約95℃で30分間加熱し、昆布抽出物15Lを得た。次に、この昆布抽出物を分画分子量4000ダルトンの限外ろ過膜モジュール(旭化成社製)で処理し、分子量4000ダルトン以下の画分からなる透過液13Lを得た。この透過液に、賦形剤としてデキストリン(東亜化成社製)450gを添加、溶解し、凍結乾燥機で処理し、抗菌補助成分の粉末500gを製造した。
本実施例では、乾燥マコンブ1kgから本発明の有効成分が50g(乾燥質量)得られた。そして、本実施例の抗菌補助成分の粉末は、有効成分が500g(乾燥質量)中に50g(乾燥質量)含まれるから、上記の粉末抗菌補助成分の有効成分の濃度は10質量パーセントである。
【0089】
[実施例4]
以下のように昆布抽出物からの抗菌補助成分を使用して、ラクトパーオキシダーゼシステムとして作用する抗菌組成物を製造した。
以下の組成の抗菌組成物原料粉末を混合し、抗菌組成物粉末117.6gを得た。これを0.375gずつ計量し、それぞれ容量250mlのプラスチック製容器に添加し、粉末状の抗菌組成物300個を製造した。
この抗菌組成物入り容器は、使用時に水250mlを添加して粉末を溶解することによって、液状抗菌組成物として飲用可能である。
【0090】
上記実施例3で製造した粉末抗菌補助剤 100g
ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製) 0.6g
グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製) 8.0g
グルコース(日本食品化工社製) 9.0g
【0091】
以下に試験例を示して、昆布抽出物からの抗菌補助成分の作用を詳細に説明する。
[試験例6]
本試験では、昆布抽出物からの抗菌補助成分がラクトパーオキシダーゼシステム抗菌組成物において、抗菌補助成分として有効であることを確認した。
(1)試料の調製
試験試料として、実施例2で製造した昆布抽出物の透過液(昆布抽出物低分子画分)を使用した。
一方、対照試料として、実施例2の未分画の昆布抽出物をそのまま使用した。
【0092】
(2)菌液の調製
黄色ブドウ球菌[スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)JCM2151、理化学研究所より分譲]を1%バクトペプトン培地で一晩培養した。この培養液20mlを遠心分離機(日立製作所社製)を用いて、3000rpm(2150×g)、10分間、4℃の条件で遠心分離後、残渣をリン酸緩衝生理食塩水10mlで懸濁して菌液を調製した。
【0093】
(3)試験方法
容量5mlのチューブに、試験試料1.0ml、塩化ナトリウム(国産化学社製)の3.4%水溶液0.5ml、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)の1mg/ml水溶液20μl、グルコース(和光純薬社製)の1%水溶液30μl、精製水403.3μl、及び上記(2)の菌液20μlを添加し、攪拌した。
次いで、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)の10mg/ml水溶液26.7μlを添加し、攪拌し、室温で5分間インキュベーション後、リン酸緩衝生理食塩水で10倍ずつ段階的に希釈した。この希釈液を20μlずつ標準寒天培地に塗布し、37℃のインキュベーター中で一晩培養した後、寒天培地上に形成されたコロニーの数を測定した。検出された細菌のコロニー数から、上記の試験混合液1ml当りの生菌数の対数値(log10cfu/ml)を求めた。
同様の方法で、対照試料を1.0ml使用して試験した。
さらには、試験試料、対照試料について、グルコースオキシダーゼを添加しないことを除き、上記試験例とすべて同じ系において同様の試験を行った。
【0094】
(4)試験結果
本試験の結果を次の表8に示す。
【0095】
【表8】
【0096】
試験試料(マコンブ抽出物の低分子画分)を使用した系では、試験混合液中で黄色ブドウ球菌の生菌数を検出限界以下に低下させた。一方、対照試料(マコンブ抽出物)を使用した系では、試験混合液中で黄色ブドウ球菌の生菌数はほとんど変化しなかった。また、グルコースオキシダーゼ無添加の系でも、試験試料、対照試料とも、黄色ブドウ球菌の生菌数はほとんど変化しなかった。
この結果から、昆布抽出物低分子画分、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースの組み合わせによって、顕著な抗菌効果を発揮することが明らかになった。そして、昆布抽出物は抗菌剤そのものとしてではなく、他の成分に添加することで抗菌効果を発揮する抗菌補助成分として作用していることが明らかとなった。
【0097】
なお、本試験の試験試料を用いた組み合わせでは、従来、ラクトパーオキシダーゼシステムの抗菌系を作用させるためには一定以上の濃度が必要であったチオシアン酸が全く使用されていないにも関わらず、抗菌効果を発揮するという驚くべき効果が明らかになった。
そして、昆布抽出物低分子画分が、ラクトパーオキシダーゼシステム抗菌組成物の有効成分として抗菌作用を発揮するという、顕著な効果を有することが明らかになった。
また、昆布抽出物は、分子量5000ダルトンを超える高分子画分に阻害物質を有しているが、その阻害物質を除去すれば、ラクトパーオキシダーゼの抗菌系に利用できることが明らかとなった。
【0098】
[試験例7]
本試験では、抗菌補助成分の原料として使用できる昆布の品種を検討した。
(1)試料の調製
市販の乾燥昆布4品種(マコンブ、ラウスコンブ、リシリコンブ、及びヒダカコンブ)各4gを使用し、実施例1の方法で昆布抽出物低分子画分を調製した。
試料は、昆布の品種ごとに異なる市販品3サンプルずつから調製した。
【0099】
(2)菌液の調製
試験例6の(2)と同様の方法で黄色ブドウ球菌の菌液を調製した。
【0100】
(3)試験方法
試験例6の(3)と同様の方法で試験した。
【0101】
(4)試験結果
本試験の結果を次の表9に示す。試験は各サンプルとも2回ずつ行った。
【0102】
【表9】
【0103】
その結果、試験した全品種の昆布から調製された昆布抽出物低分子画分が、黄色ブドウ球菌の生菌数を検出限界以下に低下させ、強い殺菌活性を示すことが明らかになった。
この結果から、抗菌補助成分の原料としては、マコンブ、ラウスコンブ、リシリコンブ、ヒダカコンブのいずれの昆布も好適に利用できることが明らかとなった。
【0104】
[試験例8]
本試験は、抗菌組成物における抗菌補助成分の用量依存性を検討することを目的とした。
(1)試料の調製
実施例2で調製したマコンブ抽出物低分子画分(抗菌補助成分)の試料を使用し、この希釈倍率を1倍とした。この試料は精製水で2倍ずつ段階的に希釈し、128倍までの2倍段階希釈系列を作成した。
【0105】
(2)菌液の調製
試験例6の(2)と同様の方法で黄色ブドウ球菌の菌液を調製した。
【0106】
(3)試験方法
実施例2で調製した抗菌補助剤(抗菌補助成分)及びその2倍段階希釈系列を試験混合液に添加したことを除いて、試験例6と同様の方法で試験した。
【0107】
(4)試験結果
本試験の結果を次の表10に示す。
【0108】
【表10】
【0109】
抗菌補助剤(抗菌補助成分)は、32倍希釈まで黄色ブドウ球菌の菌数が検出限界以下であり、64倍希釈においても、黄色ブドウ球菌を初菌数の1/100以下に低下させた。
本試験の結果より、抗菌補助成分の濃度と抗菌補助効果には相関関係があり抗菌補助成分は、用量依存的にラクトパーオキシダーゼシステム抗菌作用を補助することが明らかになった。