【実施例】
【0119】
実施例1
方法及び装置
I.プラスミドDNAの調製:
A.細菌の形質転換:
コンピテントDH5α細菌(200μl)を、BLVウイルスの野生型または突然変異体CD(商標登録)をコードする試験した13個のDNAの各々の12.5ngを用いて、熱衝撃によって、並びにネガティブコントロールとして機能している挿入断片(pLPCX)の欠損しているプラスミドによって形質転換した。
そして、この細菌を50μg/mLのアンピシリンを含有するLB/Agar培地上に、37℃で16時間散布した。そしてこれらを4℃で保存した。
【0120】
B.細菌の前培養及び培養:
次に、細菌の各タイプのコロニーを、アンピシリン100μg/mLを含有する3mLのLB培地中で、攪拌しながら37℃で約8時間前培養した。
各前培養物を、各々250mLのLB/Amp(100 μg/mL)を含有する2つのフラスコで、1/200希釈で植菌に提供した。培養は、37℃で攪拌と伴に12〜16時間実施した。
【0121】
C.STETマキシ調製:
得られた培養物を、速度3600rpm並びに温度4℃で20分間遠心分離した(GR 412, Jouan)。残渣を25mLのSTET緩衝液(スクロース8%、トリトンX100 5%、トリス塩酸pH8、50 mM、EDTA 50 mM)に溶解し、500μlのリゾチーム(10 mg/mL; Sigma)及び250μlのRNA分解酵素(2 mg/mL; Sigma)を添加した。そしてチューブを100℃で10分間インキュベートし、そして16000rpmで30分間遠心分離した。1mg/mLのタンパク質分解酵素K(Amresco)の存在下で、得られた上清を65℃で45分間インキュベートした。上清を除去し、そしてDNAを0.15容の酢酸ナトリウム(AcNa)3M、pH6及び0.6容のイソプロパノ−ルで沈殿させた。この溶液を4℃、15000rpmで15分間遠心分離した(Aventi 30, Beckman)。得られた残渣を、同様のパラメータを使用して再度遠心分離する前に、10mLのエタノールで洗浄した。得られた核酸を乾燥し、2mLのTE 1Xに溶解し、そして4℃で保存した。
高次コイルのDNAの存在が、0.8%のアガロ−スゲル電気泳動による0.2μl及びμlの生成物の電気泳動によって、各マキシ調製生成物で確認された。
【0122】
D.カラム精製:
STETマキシ調製は、大量のプラスミドを生成するために使用することができるが、純度を改善することが可能である。この目的のために、我々は2つのパス(passes)によってAX100カラムで14個の各プラスミドを精製した(Kit Nucleobond PC 100, Macherey Nagel)。イソプロパノ−ルでの沈殿の後、得られた精製されたプラスミドを500μlのTE1X中に溶解し、4℃で保存した。
カラム上で得られた各溶出液及び保持されなかった画分(FT=流水式)に関して、高次コイルDNAの存在がアガロ−スゲル電気泳動(0.8%)によって確認された。
得られた溶液のDNA濃度を、波長260nmの分光光度法で調べた。
【0123】
E.一定分量の取り出し及びエタノールでの沈殿:
各DNAタイプを一定分量50または100μgでチューブ内に置き、そしてプラスミドを滅菌するために層流式フードで、エタノール(EtOH)及びNaClを使用して沈殿を実施した。得られた残渣を100μgのプラスミドあたり200μlのTE1Xの量、すなわち濃度500ng/μlの量で溶解した。一定分量中のDNAの存在が、0.8%のアガロ−スゲル電気泳動によって確認された。
F.得られた一定分量の分光光度アッセイ:
一定分量を、260nmの波長の分光光度法でアッセイした。サンプルを1/50まで希釈し、そして最終容積500μlでアッセイした。
G.酵素による消化:
制限酵素(New England Biolabs):Hind III/Not I pair、Xba I、Aat II、Pac I、Sfo Iでのこれら各々の20ngの消化によって、各プラスミドの同一性を確認した。各消化生成物のアガロ−スゲル電気泳動(0.8 %)の後に、得られるバンドの数及びこれらの分子量によってプラスミドを識別した。
【0124】
II.キメラ発現の分析
A.細胞培養:
HEK293細胞(ヒト胎児腎臓細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)及び20μg/mLのゲンタマイシンを追加したDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)で、5%CO
2の下で37℃で培養した。
B.形質導入:
形質導入するために、5×10
5細胞を9.6cm
2ウェルごとに2mLの培地上に蒔いた(6ウェルプレート)。5%CO
2の下、37℃でオーバーナイトで培養後、培地を抗生物質非含有の完全DMEMで交換した。
その後、NaCl緩衝液(0.15 M)、6μlのJet PEI(Qbiogen)及び3μgの各テスト核酸中で、錯化剤によって形成されたポリプレックスによって細胞に形質導入した;LacZを発現しているプラスミドは、遺伝子導入のポジティブコントロールとして機能した。24時間の培養後、5%CO
2の下、37℃で、培地を除去し20μg/mLのゲンタマイシンを有する完全DMEMと交換した。最適なプラスミド発現が、形質導入を開始して48時間後に得られた。
一定の場合には、CD(商標登録)の分解及びターゲティングにおける小胞輸送の重要性を分析するために、我々は、小胞輸送阻害剤、すなわちバフィロマイシン及びLy294002を使用した。遺伝子導入の32時間後、濃度0.5μMのバフィロマイシン、及び10μMのLy294002の各阻害剤を培地へ添加した。
【0125】
C.タンパク質抽出:
遺伝子導入の48時間後、細胞を0.5%のTNE−NP40緩衝液で溶解し、0.1mMのPMSFを添加した。遠心分離(14000 rpm、15分、4℃; Eppendorf 5417R)による清澄後、可溶化物をブラッドフォード法を使用して分光光度法(595nmで)でアッセイした。
各サンプルに関して、200μgのタンパク質を除去し、最終容積30μlのために溶解緩衝液を追加し、10μlの4X緩衝液サンプル(CB 4X: NaOH 200 mM, EDTA 20 mM, SDS 2%, ブロモクレゾールグリーン 0.05%, グリセロール 10%)を添加した。
【0126】
D.エキソソームの調製:
細胞を溶解する前に培地を回収し、そして温度4℃で20分間10000rpmで前遠心分離した(Aventi 30, Beckman)。次に得られた上清を温度4℃で2時間100000gで超遠心分離した(Optima LE-80K, Ti 50 rotor, Beckman)。得られた残渣を100μlのCB 1X中に溶解した。
我々はまた、エキソソームをショ糖密度勾配の沈降により分析した。培地を超遠心分離した後に得られた残渣を、100μlの0.25Mショ糖溶液中に溶解した。
次に小胞を、異なる密度(モル濃度):0.5/0.75/1/1.25/1.5/1.75/2/2.5の(1.2 mLの)8層で調製したショ糖密度勾配上で堆積させた。次にチューブを、温度4℃で16時間、39000rpmで遠心分離した(Optima LE-80K, SW 41 rotor, Beckman)。
遠心分離の後、勾配を700μlの画分中に回収した。同容積の30%TCAを添加することによって、タンパク質を沈殿させた。チューブを4℃で2時間保存し、次に温度4℃で20分間13000rpmで遠心分離した(Eppendorf, 5417R)。残渣を500μlのアセトンに溶解し、そして前述のように再度遠心分離した。
従って、得られた残渣を80μlのCB1Xに溶解し、そしてアクリルアミド-SDSゲル泳動及びウエスタンブロットによって分析した。
【0127】
E.ウエスタンブロット及び免疫沈降:
得られたタンパク質サンプルを、ウエスタンブロットによって分析した:アクリルアミドゲル(12.5 %)上で泳動及び分離後、タンパク質を疎水性のPVDF膜(Immobillon-P, Millipore)上に移動した。
次の抗体を使用して免疫標識することにより、TMタンパク質の突然変異体の存在が明らかとなった:
・一次抗体:BLV抗ウサギCD(商標登録)抗血清(希釈1/200)
・二次抗体:ペルオキシダーゼで標識した抗ウサギIgG(希釈1/5000;Jackson Immuno Research, JIR)
次の抗体を使用した免疫標識することにより、トランスフェリン受容体の存在が明らかとなった:
・一次抗体:抗ヒトTFrマウスIgG(希釈1/200; Zymed)
・二次抗体:抗マウスIgG(希釈1/5000; JIR)
実験しているタンパク質濃度を選択的に増加させるために、ゲル泳動に先立って我々はまた免疫沈降をタンパク質可溶化物上で実施した。タンパク質量を標準化後、非特異的な反応を除去するために、可溶化物吸着をセファロース6B上で実施し、そして2.5μgの次の抗体の存在下でタンパク質セファロース6Aで免疫沈降を実施した:
・一次抗体:
抗マウスCD8マウスIgG(19/178)(JIR)
抗マウスCD8マウスラットIgG(53/672)(JIR)
・二次抗体抗体:
抗マウスIgG(JIR)
抗ラットIgG(JIR)
次に、得られた残渣を70μlのCB 1.5X中に溶解した。
【0128】
III .免疫蛍光法による局在性確認(Localisation)
A.スライドの調製
層流式フード中で、カバースリップ型スライドをエタノール溶液中で滅菌し、次に1.9cm
2ウェル(24ウェルプレート)中に置いた後に37℃で1時間ポリ-L-リジン(25 μg/mL, Sigma)でコーティングした。PBSで洗浄後、スライドを1mLのPBS中で4℃で保存した。
B.細胞培養及び形質導入
「キメラ発現の分析」のセクションに記述の方法に従って、HEK293細胞を培養しそして形質導入した。形質導入の24時間後、細胞を35mLの完全DMEM中に溶解し、続いて滅菌し1ウェルあたり1mLの細胞希釈の量でコーティングしたスライドを含有する、1.9cm
2のウェル(24ウェルプレート)中に分配した。従って、培養を経験している細胞を、37℃で5%CO
2の下で24時間、インキュベートした。
【0129】
C.固定及び透過処理
次に、細胞をホルムアルデヒド溶液(4%)で30分間固定し、そしてトリトンX―100(最終0.2 %)で透過処理した。3回のPBSでの10分のすすぎの後、スライドを1mLのPBSを使用して4℃で保存した。
D.免疫蛍光法に関する標識
我々は様々な抗体を自由に使用でき、このことから免疫蛍光法による局在確認に複数の標識をテストすることができることが示された:
CD8標識:
N°1:マウスIgG/抗マウスCD8(19/178)(JIR)+抗マウスIgG FITC(JIR)
N°2:マウスAscites/抗マウスCD8(19/178)(JIR)+抗マウスIgG FITC(JIR)
N°3:ラットIgG/抗マウスCD8(53/672)(JIR)+抗ラットIgG FITC(JIR)
N°4:ラットIgG(53/6.7)/抗マウスCD8 FITC(Pharmingen)
細胞内区画の標識:
N°5:マウスIgG/抗ヒトCD63(Lamp3)(Zymed)+抗マウスIgG Cy3(Sigma)
N°6:マウスIgG/抗ヒトLamp1+抗マウスIgG Cy3(Sigma)
N°7:マウスIgG/抗ヒトTf2(Zymed)+抗マウスIgG Cy3(Sigma)
N°8:ウサギIgG/抗カベオリン(BD)+抗ウサギIgG TRITC(JIR)
【0130】
結果
エキソソームの形成プロセスの知識は不十分である。同様に、Envの細胞質ドメインに付随した機能は、特徴があまりない。本研究は、BLVモデルがエキソソーム形成及びウイルス粒子形成の現象の研究において良好なツールであり、そしてBLVののTMタンパク質(CD(商標登録))の細胞質ドメインは「エキソソームディスプレー(display)」によるワクチン接種の発達のために潜在的に重要なツールである、という仮説に基づく。
この潜在力を評価し、そしてBLVのTMタンパク質のターゲティングに関与する機能、より詳細にはパルミトイル化されたまたは非パルミトイル化のシステイン残基の役割を特徴付けるために、我々は、真核細胞で、マウスCD8タンパク質の外部ドメイン及びCD(商標登録)ドメイン(CD8-CD(商標登録)キメラタンパク質)を含んでなるキメラ膜貫通型ベクターの発現を可能にする複数のベクターを開発した。野生型CD8―CD(商標登録)キメラ並びに変異されたCD8―CD(商標登録)キメラが、発現された。
【0131】
ヒト細胞では、マウスCD8外部ドメインは、細胞受容体を阻害しない中立の要素である。したがって、使用したキメラでは、タンパク質の外部ドメイン及び細胞構造の間の相互作用のないことが保証される。
結果としてこれらのキメラから、TMタンパク質の外部ドメイン及び関連するSUタンパク質によって生じる現象を回避しながら明らかにTMタンパク質の細胞質及び膜貫通型のドメインを実験することができる、ということが示される。
3つのタイプのコンストラクトを使用した(参照、
図1及び2)。これらのコンストラクトから開始して、我々は、システイン残基1、2及び3(CCCと略す)において野生型または変異型CD8―CD(商標登録)を発現することが可能な異なるpLPCX発現ベクターを開発した。次に、システイン残基をパルミトイル化することができないアラニン残基と置換または非置換した。
【0132】
試験した野生型または変異型CD8―CD(商標登録)タンパク質は:
・1:pX2 CCC(野生型表現型)
・2:pX2 ACC
・3:pX2 CAC
・4:pX2 AAC
・5:pX2 CCA
・6:pX2 ACA
・7:pX2 CAA
・8:pX2 AAA
・9:pX3 CCC(野生型表現型)
・10:pX3 CAC
・11:pX4 −−C (野生型表現型)
・12:pX4 −−A
・13:pX4 stp(pX4 stpは単にED、tmD及びCD8のCD(商標登録)のごく一部から構成される)、であった。
【0133】
これらのコンストラクトによりTMタンパク質のターゲティングのレベルで:システイン残基の変異の結果、TMタンパク質の膜貫通型ドメインの完全性の重要性、及びTMタンパク質(CD(商標登録))の細胞質ドメインの重要性を分析することができた。
【0134】
I.プラスミドDNAの調製:
最初に、我々は13個の各DNA及びネガティブコントロールとして機能する挿入断片(pLPCX)を有しないベクターを大量に産生した。我々の様々なプラスミドにより形質転換した細菌を培養後、続いて得られたDNAを連続してカラム上でSTET方法により精製した。そして得られたプラスミドの同一性は酵素消化によって確認した。
A.STET方法によるDNA調製:
プラスミドDNAの完全性及びSTET調製の収率を確認するために、これらの各1μl及び0.20μlの泳動をアガロ−スゲル(0.8%;参照、
図3)上で実施した。DNAの非分解が、均一のサイズの高次コイルDNAの異なるバンドの存在により実証される。
B.カラム精製の生成物におけるDNAの存在の確認:
STET方法により得られたDNAをカラム上で精製した;精製され得られたDNAの完全性を確認するために、保持され溶出された画分及び保持されなかった画分をゲル電気泳動により分析した。
図4に示されたゲルにより、高次コイルDNAがカラム(E及びE’)から溶出された純粋画分中には実際に存在し、しかしながら非保持画分(FT)では検出できないことが示された。
【0135】
C.酵素消化後の一定分量の分光測定アッセイ及びDNA濃度の調整:
次に、精製されたDNAを分光光度法によりアッセイした。従って得られた濃度は一定分量に応じて、149μg/mL〜584μg/mLの間で変動した。エタノールでの沈殿後、当該一定分量由来のDNAをTE1X中に取り出し、そして同濃度に調製した。
DNAの濃度を確認するために、酵素消化によりプラスミドをHind III/Not Iペアにより直線化し、次にこれらをゲル電気泳動により分析した(参照、
図5、最上部のプロファイル)。得られたバンドの強度は依然として可変である、ことを確認することができる。従って、分光測定アッセイ及び消化後得られたバンドの強度(参照、
図5-下層のプロファイル)に応じて濃度を再調整した。プラスミドの同一性を確認する場合に、バンドを細胞に導入する前に正確なDNA濃度が示されることに加えて、等価の強度のバンドの獲得によって、酵素消化に続く電気泳動測定の良好な可読性を達成することができるであろう。
【0136】
D.酵素消化後のDNAの同一性の確認
1)一般的原理:
調製した14個のDNAの同一性を確認するために、これらを制限酵素Hind III及びNot I、Xba I、Aat II、Pac I並びにSfo Iを使用した消化により全て確認したが、これらは各DNAのゲルプロファイルの異なる組合せとなる。消化生成物のアガロ−スゲル(0.8%)泳動により、得られたバンドの数及びサイズに応じて、表1に示すようにDNAを識別することができる (NB:サイズが100塩基対以下のバンドは、我々の電気泳動ゲル上では観察することができなかった):
【0137】
【表1】
【0138】
実験のコンストラクトの消化は、各プラスミドの同一性を確認するために使用した。大きなCD8―CD(商標登録)コンストラクト型は、酵素Hind III/Not I及びXba Iでの消化後に得られたバンドの数及びサイズ分析によって識別された。様々なシステイン残基突然変異体は、酵素Aat II、Pac I及びSfo Iでの消化後に識別された。従って、得られたバンドの数は、Hind III/Not I及びXba Iでの消化によるもの以上であり、識別は特定のバンド(太字)の存在または不存在に基づいて主に実施した。
予想されるバンドのサイズ(bp):
【0139】
【表2】
【0140】
2)実施例:
突然変異体pX2 AAC及びpX2 CCAの識別に関して、得られたゲルを
図6Aに示す。
【0141】
解釈:
・Hind III/Not Iでの消化:2つのサンプル各々において、約7206bpで得られた単一バンドは、コンストラクトX2またはX4の存在と一致する。
・XbaIでの消化:2つのサンプル各々において、約6822(または6812)及び367bpで得られている2つのバンドは、コンストラクトX2またはX3の存在と一致する。
これらの2つの結果により、我々は実際にX2型の2つのコンストラクトの存在下にあったことが照合されそして裏付けられる。
次に、これらの中のX2突然変異体を識別しようとした(参照、
図6B):
解釈:
・AatIIでの消化:
- サンプル4:得られている約3423bp(赤)の1つの特定のバンドは、次のX2プラスミドの1つの存在と一致する:pX2 CAC、pX2 AAC、pX2 CAAまたはpX2 AAA。
- サンプル5:得られている約4285bp(青)の1つの特定のバンドは、次のX2プラスミドの1つの存在と一致する:pX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CCAまたはpX2 ACA。
【0142】
・Sfo Iでの消化:
- サンプル4:約2538bp(赤)の得られている1つの特定のバンドは、次のX2プラスミドの1つの存在と一致する:pX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CAC、pX2 AAC。
この結果は、Aat IIによる消化のものと照合され、そして我々は次のプラスミドの1つの存在下にあったことを推測することができた:pX2 AACまたはpX2 CAC。
- サンプル5:約1839bp(黒)及び699bp(緑)の得られている2つの特定のバンドは、次のX2プラスミドの1つの存在と一致する:pX2 CCA、pX2 ACA、pX2 CAA、pX2 AAA。この結果は、Aat IIによる消化のものと照合され、次のプラスミドの1つの存在下にあったことを推測することができた:pX2 CCAまたはpX2 ACA。
【0143】
・Pac Iでの消化:
各サンプルに関して、非高次コイルDNApに一致する低い強度のバンド及び高次コイルDNAp(青)に一致する高い強度のバンドを得たが、これからPac Iによる消化がこれらのサンプルにないことが示される。
サンプル4及び5は、各々突然変異体pX2 AAC及びpX2 CCAに一致する。
このプロセスは、プラスミドの全ての識別に適用した。
【0144】
3)結論:
DNAの調製のためのこのステップの間に、14個の精製プラスミドが各々数ミリグラムずつ得られ、酵素消化及びゲル分析による確認の後にこれらの同一性は全て確認された。さらに、全DNAを同濃度に調整した。
【0145】
II.キメラの発現の分析:
DNA発現を調べるために、各プラスミドの同量をHEK293細胞内に導入した。これにより発現されたタンパク質をゲル泳動により分析し、続いてPVDF膜上へ輸送した。そして当該膜は、抗ウサギCD(商標登録)血清及びペルオキシダーゼで標識した二次抗ウサギ抗体を使用して明らかにした。
【0146】
A.細胞可溶化物中のCD8―CD(商標登録)の存在の分析:
1)未精製の可溶化物の分析:
形質導入の48時間後、細胞を溶解し、得られた抽出物をブラッドフォード法を使用してアッセイした。これらの可溶化物由来の未精製タンパク質ブルート(brutes)の200μgを、ゲル泳動及びウエスタンブロットによって分析し、抗CD(商標登録)抗体で明らかにした(参照、
図7)。
サンプル中で様々な特定のシグナルを観察することができた:
・CD8−CD(商標登録)の存在に一致する50kDaの二重バンド(青)。2つのバンドは、CD8のグリコシル化の2つのレベルに一致する。
・未確定のオリジンの約20kDaのシグナル(赤)。
サンプルpX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CAC、pX2 AAC、pX4 stp及びpLPCXは、これらのバンドを有しなかった。
【0147】
2)抗CD8抗体による免疫沈降の後の可溶化物の分析:
細胞可溶化物中のCD8−CD(商標登録)の検出閾値を低下させるために、大量の抽出物を使用し、CD8の外部ドメインの立体構造エピトープの特定のモノクローナル抗体での免疫沈降によってキメラを濃縮した。
形質導入48時間後、細胞を溶解し得られた抽出物をブラッドフォード法を使用してアッセイした。タンパク質濃度の標準化の後、抗CD8抗体及びタンパク質Aセファロースの存在下で抽出物を免疫沈降させた。得られた生成物をゲル泳動及びウエスタンブロットにより分析し、抗CD(商標登録)抗体(参照、
図8)で明らかにした。そしてサンプル中で様々なシグナルを観察することができた:
・CD8−CD(商標登録)の存在と一致する55kDaの二重バンド(青);
・約66kDaで各サンプルで確認される、不明のシグナル;
・おそらく多量体が形成されたCD8−CD(商標登録)タンパク質の存在と一致する、66kDa以上の分子量を有する1または複数のシグナル。
この場合、pX2 AACサンプルは、免疫沈降なく実施した分析と対照的に、50kDaで検出可能なシグナルを有した。その一方で、サンプルpX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CAC、pX4 stp及びpLPCXに関して検出可能なシグナルはなかった。
【0148】
3)細胞可溶化物中のCD8−CD(商標登録)の発現の分析の概要:
各キメラの特徴(tmD BLVの完全性、第三のシステイン残基の存在及びシステイン残基の数)を有する細胞可溶化物上でウエスタンブロットによって得られたデータの相互の関係を比較することによって、以下の表2を作成することができた。
BLVのCD(商標登録)に加え、2つのファクターがCD8−CD(商標登録)キメラの存在に作用している、ように見える。これらのファクターは:tmd BLVの存在または非存在、並びに第三のシステイン残基(Cys 213)の存在または非存在である。
【0149】
【表3】
【0150】
B.CD8−CD(商標登録)とエキソソームとの関係の分析:
使用した様々なDNAは2、3のヌクレオチドが相違するだけであった。従って、おそらく合成されたCD8−CD(商標登録)の量は同量であった。しかしながら、細胞可溶化物中のCD(商標登録)の発現の分析の間、形質導入48時間後に一定のキメラは検出不可能であったことが確認された。このシグナルの見られないことは、キメラタンパク質の一部の消失を反映するかもしれない。この消失は、これらのキメラの急速な分解、またはエキソソームの形態でのこれらの分泌のいずれかが原因であったのかもしれない。
従って、エキソソーム内のCD8−CD(商標登録)の存在を検出しようとした。
【0151】
1)遠心分離によって単離された小胞中のCD8−CD(商標登録)内容物:
形質導入の48時間後、培地を回収しエキソソームを分離するために遠心分離した。次に得られた残渣をゲル泳動及びウエスタンブロットで分析し、そして抗CD(商標登録)抗体で明らかにした(参照、
図9)。
一部のサンプルは、CD8−CD(商標登録)の存在に一致する55kDaでシグナルを示した。このシグナルは、サンプルpX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CAC、pX2 AAC、pX4 stp及びpLPCXに関しては検出不可能であった。
【0152】
2)ショ糖密度勾配上での小胞の沈降後のCD8−CD(商標登録)内容物:
培地の超遠心分離後に得られたシグナルは実際にエキソソーム中のキメラの存在に起因するものであり、CD8−CD(商標登録)を含有する細胞残屑の存在に起因するものではないということを確認するために、上述の方法に従ってショ糖密度勾配上での沈降によって得られたエキソソームの残渣を分析した。使用した細胞及び小胞の組成に応じて1.13g/mL〜1.20g/mLの密度でエキソソームが浮遊した。超遠心分離での沈降後、700μlの画分中で勾配を除去した。TCAを使用してタンパク質を沈殿させ、ゲル泳動、続いてウエスタンブロットで分析し、そして細胞小胞(エンドソームまたはエキソソーム)の存在を検出するために抗CD(商標登録)抗体及び抗トランスフェリン受容体(RTf)抗体で明らかにした。この分析は突然変異体pX4−−C及びpX4−−Aに関して実施した(参照
図10)。
pX4−−C及びpX4−−Aにおいて、CD8−CD(商標登録)と一致するシグナルを1.13g/mL〜1.25g/mLの密度を有する画分中で検出した。これらの同密度に関して、RTfと一致するシグナルを検出することもまたできる。これらの結果は、エキソソームを含有する画分中のCD8−CD(商標登録)の存在を明らかにする。
【0153】
3)エキソソームとCD8−CD(商標登録)との関係の分析の概要:
Cys 213を有するpX2を除いた、CD(商標登録)を含有する全突然変異体で、CD8−CD(商標登録)とエキソソームとの結合を検出した。pX4−−C及びpX4−−A突然変異体は、エキソソーム中で非常に効率的にターゲティングされたと思われる。Cys 213を有しないpX3及びpX2突然変異体もまたエキソソーム中で確認されたが、pX4−−C及びpX4−−A突然変異体よりも少ない割合であった。
従って、ウイルスのCD(商標登録)の存在に加え、エキソソームでのCD8−CD(商標登録)キメラのターゲティングに2つのファクターが作用するものと思われる。
【0154】
これらのファクターは:
・BLVの膜貫通型ドメインの存在または非存在。
・Cys3の存在または非存在、である。
C.CD8−CD(商標登録)キメラの発現への小胞輸送阻害の影響:
キメラpX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CAC及びpX2 AACの検出がないことはエキソソームの分泌の増加に起因しないので、これがMVBタンパク質のリソソームへの局在化による分解に起因するか否かを調べた。
この目的のために、小胞輸送阻害剤、主にバフィロマイシン及びLy294002を使用した。これらの阻害剤は、リソソームの分解経路をブロックすることができ、これによりエキソソームによるタンパク質の分泌を促進する。形質導入の32時間後に阻害剤を培地に添加し;16時間後に細胞を溶解し培地を回収し、次にエキソソームを分離するために遠心分離した。得られたサンプルをゲル泳動で分析し、抗CD(商標登録)抗体によりウエスタンブロットで明らかにした。このようにして、キメラpX2 CCC、pX2 CCA、pX3 CCC、pX4−−C、pX4−−A及びpX4 stpの発現を分析した(参照、
図11及び12)。
【0155】
これらの突然変異体に関して、得られたタンパク質に対する阻害剤の存在下でのウエスタンブロットプロファイルは、細胞可溶化物及びエキソソームどちらに関しても阻害剤なしの分析の間と同様であった、ように思われる。
従って、キメラpX2 CCC、pX2 ACC、pX2 CAC及びpX2 AACの不存在は、明らかに加速されたエキソソーム放出、またはリソソームでの分解のどちらにも起因しない。おそらく、これは小胞体(RE)及びTGN中でのフォールディングの制御に関するシステムのレベルでの非常に早期の分解での結果である。
【0156】
III.免疫蛍光法による局在確認:
細胞区画においてCD8−CD(商標登録)の膜ターゲティング及びこの局在性を評価するために、共焦点免疫蛍光顕微鏡を使用して観察を実施した。形質導入48時間後、細胞を固定し、様々な抗体を使用して標識した。
【0157】
A.抗体の選択:
最初に、標識の各タイプ(参照、方法及び装置)を、pX4−−CまたはpLPCXを発現している固定細胞上で可変の抗体希釈を使用してテストした。通常の免疫蛍光顕微鏡(ZEISS Axiovert 200 M)上で観察の後、様々な入手可能な抗体(参照、「方法及び装置」部分)をテストし、そしてこれらの有効性及びこれらの最適な希釈を測定した。複数の抗細胞内区画抗体が、ゼロまたは1つの特定のシグナルを有することが観察された。
従って、共焦点イメージ観察に関して、2つのタイプの標識を使用することができた:
・CD8−CD(商標登録)標識ラベル:
ラットIgG(53/6.7)抗マウスCD8 FITC(Pharmingen, dilution 1/50)
・Lamp3ラベル:
抗ヒトCD63(Lamp3)マウスIgG(Zymed, dilution 1/50)+抗マウスIgG Cy3(Sigma, dilution 1/500)
【0158】
B.CD8−CD(商標登録)の分布の観察:
細胞の固定及び我々の様々な抗体を使用した標識の後、共焦点顕微鏡(ZEISS LSM 510)を使用してCD8−CD(商標登録)に由来する標識の分布及びLamp3との共局在を観察した。
pLPCX(ネガティブコントロール)を発現している細胞はFITCシグナルを示さなかった。従って、このコントロールから、他の突然変異体に関して視覚化されたFITC蛍光は実際にはCD8−CD(商標登録)の存在に由来することを確認することができた。
驚くことに、ウエスタンブロットによって検出されないにもかかわらず、Cys3を含んでなるpX2コンストラクトは弱いものの免疫蛍光法で観察された。
【0159】
一般的な表現型の分析:
HEK293細胞に48時間形質導入し、固定した。ZEISS LSM 510共焦点顕微鏡(X63 immersion objective)を使用して、観察を実施した。
CD8:FITC標識(緑)からCD8を含んでなるキメラの存在が明らかとなった。
Lamp3:Cy3標識(赤)から後期エンドソームを特徴とするLamp3タンパク質の存在が明らかとなった。
CD8−CD(商標登録)/Lamp3:FITC及びCy3画像を重ね合わせた。得られた黄色の色調から、CD8−CD(商標登録)とLamp3の共局在が証明される。
この観察から、FITC標識の(小胞、膜または核周囲の)出現及び強度に基づき5つの一般的表現型を識別することができる(参照、
図13〜17)。小胞の出現に関するFITC標識のLamp3との共局在は、あらゆる突然変異体中に存在するので、これらの表現型の判定のために使用することができない。さらに、この共局在は常に部分的であった。
【0160】
強度のFITCシグナルを有している核周囲の分析:
pX4 stpを除く全サンプルに関して、大きく均一なCD8の核周囲のシグナルはほぼ常に核の周囲で発見された。細胞に存在するFITC蛍光の主要部を視覚化するために必要である強度パラメータは、この区域の飽和を生じた。このような飽和シグナルは、それほど有用でなく、特にLamp3との共局在の妥当性を測定するために、これらの区域の分析に焦点を合わせることによって強度の弱いパラメータを捕捉した。
【0161】
CD8−CD(商標登録)/Lamp3[a]:CD8−CD(商標登録)(緑)のLamp3(赤)との共局在。弱いものの捕捉のための強度パラメータは、核周囲シグナルの飽和及びこのレベルでの黄色の色調の出現を生じ、これによりこれらの2つの標識の間の部分的な共局在が示された。このシグナル飽和のため、生じている共局在が本当のものかまたは人工によるものなのか述べることは不可能であった。
CD8−CD(商標登録)[d]:CD8−CD(商標登録)に由来するFITCシグナル。強度パラメータは、任意のシグナル飽和現象を除去するために大幅に減少させた。FITCシグナルは散在し、均一であり非断続的に現れた。
【0162】
CD8−CD(商標登録)/Lamp3[d]:CD8−CD(商標登録)(緑)のLamp3(赤)との共局在。強度パラメータを、任意のシグナル飽和現象を除去するために大幅に減少させた。これにより黄色の色調はなくなり、FITC及びLamp3の間の共局在がないことが示された。
このデータによると、Lamp3に由来する標識化は、この核周囲の中に位置するように見えるが、FITC標識と決して共局在しなかった(参照、
図18)。
さらに、これらの核周囲のCD8−CD(商標登録)に由来する標識化は散在し、均一であり非断続的に見え、そして細胞組織内のCD8−CD(商標登録)の存在を示しているように思われた。この標識化の局在性及び出現、並びにLamp3との本当の共局在の無いことから、ゴルジ体でのCD8−CD(商標登録)の存在が示唆される。
【0163】
この表現型は、pX4 stpを除いた全突然変異体で多かれ少なかれ確認される。これが常に存在する突然変異体pX2及びpX3と対照的に、pX4−−C及びpX4−Aの突然変異体では、この表現型は少数の細胞で確認することができるだけである。
従って、FITCによって強固に標識された核周囲の特定の観察によって、TGN中のCD8−CD(商標登録)の存在の可能性を示すことができた。
我々は以下の表(参照、表3)を作成するために、得られたデータを使用した。
これらの観察から、ウイルスCD(商標登録)に加えて、2つのファクターがキメラの安定及びターゲティングに関与することが確認される。
これらのファクターは:
・tmd BLVの存在または非存在;
・BLV CD(商標登録)のN末端残基の存在または非存在;
・Cys 3の存在または非存在。
【0164】
【表4】
【0165】
結果:
分析中に、キメラpX4 stpは、単に外部ドメイン及びCD8のtmdから構成され、効率よく原形質膜へターゲティングされることによりHEK293細胞中に蓄積することが示された。
同様の態様で、キメラpX4−−C及びpX4−−Aは蓄積し、そしてpX4 stpよりも大きな割合で原形質膜で確認される。これらのキメラはエキソソーム内で非常に効率的に分泌される。
pX3キメラは、pX4キメラと対照的に、ゴルジ体中に確実に存在する。原形質膜及びエキソソームでのこれらのターゲティングは、pX4 キメラほど効率的でないようだが、多量には違いない。
【0166】
pX2キメラは、あまり安定的に見えず、原形質膜ではなくTGNで確認される。Cys 3を含んでなるpX2コンストラクトは、細胞内でそれほど安定でなく、そしてエキソソームで検出されない。コンストラクトのこのタイプにおける末端Cysの置換は、キメラタンパク質の安定性の増加に寄与するようである。実際、Cys 3のないpX2コンストラクトは、細胞及びエキソソームで検出可能である。
免疫蛍光法において、実験のキメラは全て後期エンドソームのマーカーと部分的に共局在化した小胞標識を有する。
この実験から、CD8−CD(商標登録)キメラの安定性及びターゲティングにおける、Cys 3のの存在または非存在の重要性が示された。このシステイン残基のないことは、実験のキメラの安定性及び膜ターゲティング並びにエキソソーム中でのこれらの存在に有利と思われる。これらの現象は、Cys 3のないことに関係する超パルミトイル化と無関係とすることができる。実際、パルミトイル化されていないコンストラクトpX2 AACは、Cys 3並びにCys 1及び/又はCys 2を有する3つのpX2突然変異体より安定であり、パルミトイル化することができる。しかしながら、キメラの安定性及びターゲティングにおいて、パルミトイル化の他の意味は排除することができる。
【0167】
この実験から、BLV tmDの根本的な重要性が示された。実際、tmD BLVの全ての或いは部分的な欠失は、原形質膜でのキメラの安定性及びターゲティンを大幅に増加するものと思われる。従って、驚くことに、tmD BLVの存在は、キメラの早期の分解に寄与し得る。リソソームの分解経路が原因ではないので、この分解は、細胞区画、すなわちRE及びTGNでのフォールディングを調整しているシステムを妨害し得る。小胞輸送阻害剤が無いことは、CD8−CD(商標登録)キメラの安定性及びエキソソームのターゲティング、並びに後期エンドソームとのこれらの非常に部分的な共局在に影響する、という仮設は最も安定でないキメラを考慮しても支持される。
我々の実験の本質的な魅力は、「エキソソームディスプレー(display)」のコンセプトに基づくワクチン接種モードの開発のための潜在的に有効なツールの発見に属する。実際、pX4−−C、特にpX4−−Aキメラは、ペプチド抗原(ここではCD8)のエキソソームへの非常に有効なターゲティングを可能にする分子「機構」を有するようだ。従って、この「機構」は、BLVのTMタンパク質の細胞質ドメインに位置するであろう。
【0168】
実施例2:CD(商標登録)ペプチドのエキソソーム ターゲティングに関与するアミノ酸の同定
最初の免疫付与トライアルを始める前に、BLV TM タンパク質の細胞質ドメインに位置する「機構」の正確な特質を特定するために、BLV TM タンパク質の細胞質ドメインでの変異の18タイプの影響を実験した(参照、
図19):
− 13個のN末端残基の欠失及び第一のPxxPモチーフの2つのプロリン残基の置換(配列番号13及び配列番号14; 変異KM4);
- 13個の末端残基の欠失及び第二のモチーフPxxPの2つのプロリン残基の置換(配列番号15及び配列番号16; 変異KM5);
- 13個のN末端残基の欠失及び第三のPxxPモチーフの2つのプロリン残基の置換(配列番号17及び配列番号18; 変異KM8);
- 13個のN末端残基の欠失及び第四のPxxPモチーフの一番目のプロリン残基の置換(配列番号19及び配列番号20; 変異KM11/1);
- 第四のPxxPモチーフの2つのプロリン残基の置換(配列番号21及び配列番号22; 変異KM11/3);
- 13個のN末端残基の欠失及び第一のYxxLモチーフのチロシン残基の置換(配列番号23及び配列番号24; 変異KTMY);
- 13個のN末端残基の欠失及び第二のYxxLモチーフのチロシン残基の置換(配列番号25及び配列番号26; 変異KM9);
- 13個のN末端残基の欠失及び第三のYxxLモチーフのチロシン残基の置換(配列番号27及び配列番号28; 変異KM13);
- 13個のN末端残基の欠失及び第一のYxxLモチーフの前のセリン残基の置換(配列番号29及び配列番号30; 変異S);
- 13個のN末端残基の欠失及び第二のYxxLモチーフ前に位置するグルタミン酸残基の置換(配列番号31及び配列番号32; 変異E);
- 13個のN末端残基の欠失及び第三のYxxLモチーフの前に位置するアスパラギン酸残基の置換(配列番号33及び配列番号34; 変異D);
- 6つの残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び39個のC末端残基の欠失(配列番号35及び配列番号36; 変異KS5);
- 15個の残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び30個のC末端残基の欠失(配列番号37及び配列番号38; 変異KS6);
- 21個の残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び24個のC末端残基の欠失(配列番号39及び配列番号40; 変異KS8);
- 26個の残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び19個のC末端残基の欠失(配列番号41及び配列番号42; 変異KS9);
- 31個の残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び14個のC末端残基の欠失(配列番号43及び配列番号44; 変異KS10);
- 37個の残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び8個のC末端残基の欠失(配列番号45 and配列番号46; 変異KS12);
- 41個の残基まで切断された配列- 13個のN末端残基及び4個のC末端残基の欠失(配列番号47及び配列番号48; 変異KS14)。
【0169】
置換及び欠失突然変異体は、定方向突然変異誘発によって得られる;置換された残基は、アラニン残基で置換された。欠失突然変異体の翻訳は終止コドン(TGA, TAGまたはTAAコドン)の添加によって停止された。
18個の突然変異体をコードするDNA配列、並びに13個のN末端残基のみが欠失された野生型DNA CD(商標登録)配列(配列番号7; ここで「野生型配列」と呼ばれる配列)は、マウスのCD8αの外部ドメインをコードする配列の下流でサブクローン化した。次に得られた19個のキメラ遺伝子をウイルス発現ベクターの中にクローン化した。従って、生じたキメラタンパク質のエキソソームへのターゲティングを分析するために、得られた組換え型ベクターを真核細胞(HEK細胞)の中に導入した。48時間後、細胞でのタンパク質の発現をウエスタンブロットで調べた。同時に、キメラタンパク質のエキソソーム中の局在化をFACS及びウエスタンブロットで評価するために、エキソソームを超遠心分離により精製した。
【0170】
以下に示す結果は、文字通り個々に認識された2つのペプチドモチーフの、ESCRT機構及び膜間のトランスファー機構と関係するタンパク質(特にAP3を含むアダプチン)とのこれらの相互作用のための、必要性を示す。
今回初めて、これらの2つのペプチドモチーフがエキソソーム ターゲティングで相乗効果の決定的機能を有するという実験上の証拠が得られた。
これらの結果は、エキソソームを使用した細胞間のシグナル伝達に関して新規で重要な情報を提供する。従って、我々はエキソソームでのタンパク質のターゲティングのための明確に定義したツールを有する。産業上の観点から、例えばこれらは新世代ワクチンの産生を促進し、そして治療用の分子または抗体をスクリーニングするための特有のツールを提供するであろう。
【0171】
1−分子のコンストラクトの獲得
A−PCRによる挿入断片の調製:
3つの置換突然変異体S(Ser→Ala)、D(Ac. Asp→Ala)及びE(Ac.Glut→Ala)を、以下の変異プライマーを利用の二重PCRを使用した定方向突然変異誘発によって得た:
- AへのプライマーS, センス:
5' CCCTAAACCCGATGCTGATTATCAGGCGTTGCTACCATCC 3'
-AへのプライマーS, アンチセンス:
5' CGCGGATGGTAGCAACGCCTGATAATCAGCATCGGGTTTA 3'
-AへのプライマーD, センス:
5' CCACCAAGCCGGCATACATCAACCT 3'
-AへのプライマーD, アンチセンス:
5' TCGAAGGTTGATGTATGCCGGCTTGGT 3'
-AへのプライマーE, センス:
5' GCTACCATCCGCGCCAGCGATCTAC 3'
-AへのプライマーE, アンチセンス:
5' GTAGATCGCTGGCGCGGATGGTA 3'。
【0172】
ポリメリゼーションの間のエラーを制限しそして平滑末端を有するフラグメントを得るために、(3’-5’-エクソヌクレアーゼの)校正活性を有する熱安定のTaq DNAポリメラーゼ及び熱安定のTgoポリメラーゼを含有する酵素混合物を有するエキスパンドハイフィディリティ(Expand High Fidelity)PCRシステムキット(Roche(商標登録))を使用してPCRを実施した。試薬の2つの混合物を4℃で調製した:
A(25μl):増幅のためのDNAの10ng、10mMのdNTPの1μl(最終各々200μM)、10μMでの2つのセンス及びアンチセンスプライマーの各々1.5μl(最終300nM)、滅菌水(qsp 25μl);及び
B(25μl):5μlの「エキスパンドハイフィディリティ」緩衝液、15mMのMgCl
2を有する10X(最終1.5mM)、0.75μlの「ハイフィディリティ」酵素混合物(最終2.6U)、滅菌水(qsp 25μl)。
【0173】
A及びBを4℃で混合し、次の増幅サイクルを実施した:
- 二重鎖DNAを2分間94℃で変性させること;
-変性(94℃、10秒)、ハイブリダイゼーション(50℃、15秒)及び伸長(72℃、20秒)を4サイクル;
- 25サイクル:94℃で10秒、64℃で15秒、そして72℃で20秒;
- 72℃で7分間の最終伸長。
得られたPCR生成物を4℃で保存した。
【0174】
18個の突然変異体及び野生型DNA配列をコードするDNA配列をPCRで組み換え(定方向突然変異誘発)、これらを特定の制限酵素部位によって取り囲んだ;制限酵素部位XbaI及びNotIを有する2つのプライマーを使用して、前述のプロトコルを実施した。
B−TOPO-bluntIIでのPCR生成物及びコントロ−ルのクローニング
19個の各DNAを、ケモコンピテント(chemocompetent)細菌中への導入のためのTopo−bluntクローニングキット(Invitrogen)のTOPOクローニングベクター中に連結させた(参照、
図20)。形質転換したクローンが選択され、DNA配列の全てがシークエンシングで確認された。
【0175】
a)プラスミド中への連結及びTop10での形質転換
様々なPCR生成物の各々は、既に開口され平滑末端を有しカナマイシン耐性遺伝子を輸送するTOPO−BluntIIプラスミド中に取り込まれた。ケモコンピテントTop10細菌はこれらのプラスミドによって形質転換され、そしてLB/agarディッシュ(100μg/mLのカナマイシン)上で培養した。ネガティブコントロール及び他のコントロールとして機能する挿入断片のないTOPO−BluntIIプラスミド(1ngのPUC19プラスミド)を形質転換用のポジティブコントロールとして使用した。培養後、挿入断片を含むプラスミドまたはPUC19(ポジティブコントロール)によって形質転換された細菌のみが、選択的薬剤(抗生物質)の存在下で成長した。
b)良好なクローンのターゲティング及びシークエンシング:
クローニング結果に応じて、プラスミドDNAの抽出を実施するために2〜10個のコロニーを増幅させた。各コンストラクト及び各クローンにつき、約150ng/μlで100μlのプラスミドDNA量を得た。各精製に関して260nmでの吸収/280nmでの吸収の比率は1.8〜2の範囲に値を有し、これは調製物が純粋であることを証明している(1.8未満の値は、タンパク質混入を証明する)。
プラスミドでの挿入断片の存在を確認するために、DNAを目的の配列を取り囲むEcoRI制限酵素によって消化した。(約300pbの)フラグメントの存在が組換え型のDNAの証拠を構成する2%のアガロ−スゲル上で、これらの消化を視覚化した。
一旦良好なクローンが確認されると、目的及びオープンリーディングフレームの各配列の完全性を確認するために、各突然変異体由来の2μg〜4μgのプラスミドDNAを配列決定した。変異及び添加した制限酵素部位を同時に確認した。
【0176】
C−pKSIIクローニングベクター中のキメラ遺伝子の獲得
19個のコンストラクトを提供するために、19個の配列(1つの野生型及び18個の変異型)各々を、マウスCD8α外部ドメインをコードする配列の下流に置いた。
a)
pKSII−CD8クローニングベクターの調製
pKSII−CD8αベクター(参照、
図22)を連続して制限酵素XbaI及びNotIで消化し、挿入断片を取り入れることができた。一度消化が実施されると、プラスミドは脱リン酸化され、エタノールで沈殿し0.8%のアガロ−スゲル上で精製される。
b)
挿入断片の調製
XbaI−NotI制限酵素部位によって囲まれた様々な挿入断片をプラスミドと同様に同じ制限酵素で消化し、これらを取り込むことができた。
c)
クローニングによるキメラプラスミドの獲得
直線化したpKSII−CD8αプラスミドにDNAを挿入した:
消化した挿入断片を2.5%アガロ−スゲル上で精製した。ゲル連結法を使用してpKSII−CD8αベクター中のこれらの再挿入を実施した。最初の(virgin)ゲルのフラグメントは、ネガティブ連結コントロールとして機能した。
ベクター及び挿入断片用に同一の制限酵素を使用したので、従ってこれらは凝集性のある、相補的なXbaI及びNotIサイトを有した:プラスミド及び挿入断片はこれらの間にバンドを確立することができるであろう。1つの酵素、リガーゼは、2つの核酸の3’−OH末端及び5’−リン酸末端の間のリン酸ジエステル結合の形成を触媒する。
【0177】
一度連結ステップが完結すると、DH5α細菌は、アンピシリン耐性遺伝子を輸送しているこれらのプラスミドによって形質転換された。37℃でLB/agar(50μg/mLのアンピシリン)上での形質転換された様々な細菌の培養及びネガティブコントロールとの比較後、コロニーの成長がCD(商標登録)挿入断片の存在下で連結生成物によって形質転換された細胞上でのみ観察された。このことから、得られたコロニーがXbaI及びNotIサイトの間の挿入断片を含むベクターによって実際に形質転換されたことが示唆される。
【0178】
d)
スクリーニング:
キメラプラスミドが得られたことを確認するために、プラスミドDNAを2つの酵素、XhoI/NotIで消化し消化生成物の0.8%アガロ−スゲル上での泳動後、各突然変異体の様々なクローンをスクリーニングした。この二重の消化は、作成されたあらゆるキメラ遺伝子、すなわちCD(商標登録)と一致するCD8αを有するものを切除する。
各クローン及び各コンストラクト(変異型または野生型pKSII−CD8α−CD(商標登録))に関しては、直線化したpKSIIプラスミドのサイズに一致する2.9kbpで第一のバンドが観察された。第二のバンドは約950bpで見られる;これは変異型または非変異型のCD8α−CD(商標登録)キメラをコードする遺伝子に一致する。
【0179】
D−レトロウイルスの発現ベクターpLPCXにおけるキメラ遺伝子の獲得:
発現ベクターpKSIIはこのサイズ及び制限酵素部位のため操作することは容易である一方で、真核細胞でのタンパク質発現はできない。それ故、pLPCX(Clontech Laboratories Inc., 参照
図23)を選択したが、これはレトロウイルスのベクターを使用した形質移入及び形質導入どちらによっても遺伝子を導入することができることを意味するものである。
精製のために、ヌクレオスピンエクストラ(Nucleospin Extract)II(商標登録)キット(Macherey-Nagel)を使用した2%アガロ−スゲル上での抽出によって、XhoI−NotIサイトの間のpKSIIプラスミドから各キメラ遺伝子を切除した。
また発現ベクターpLPCXをXhoI−NotI酵素ペアで消化し、脱リン酸化し、続いてイソプロパノールで沈殿させた(このステップは、XhoI及びNotIの間に位置する、消化の間に遊離したDNAの短いフラグメント(100pb未満)の除去のためであった)。
【0180】
T4DNAリガーゼ(Biolabs)を使用してキメラ遺伝子のpLPCXとの連結を実施した(約3分子/1分子の挿入断片/ベクターの割合)。これらの連結生成物によってケモコンピテントStbl2細菌(マックスエフィシエンシー(MAX Efficiency)(商標登録)Stbl2(商標登録)コンピテント細胞, Invitrogen)を形質転換した。同時に、ポジティブコントロール(1ngのpUC19プラスミド)及びネガティブコントロール(挿入断片なしに「連結させた」pLPCX)を調製した。50μg/mLのアンピシリンを含有するゲロース(gelose)培地上で30℃での細菌培養後、ポジティブコントロールまたは挿入断片を有する連結生成物によって形質転換した細菌のみが成長した。
続けてスクリーニングし真核細胞での形質導入に必要な十分量のDNAプラスミドを有することができるようにするため、ミディプレパレーション(Midipreparation)を実施した。XhoI次にNotIでの消化後、プラスミド中の挿入断片の存在が2%アガロ−スゲル上で確認された。各コンストラクト(変異型及び野生型pLPCX−CD8α−CD(商標登録);参照、
図24)に関して、直線化されたpLPCXに一致する6.3kpbのバンド及び切除されたキメラ遺伝子に一致する950pbのバンドが観察された。
【0181】
2−エキソソームへのターゲティングの発現及び分析:
A−HEH293T細胞での形質移入:
HEK293T真核細胞の形質移入を確認し変換された細胞のパーセンテージを測定するために、細胞にLacz遺伝子を含有するプラスミドを導入しX−Gal溶液中でインキュベートした。
最初に目測で、次に光学顕微鏡での観察(倍率×40)によって、細胞の50%以上が青く染色されたことを観察し、これからLacZプラスミドによって大多数が変換されたことが分かった。キメラ遺伝子の導入に関して同じ条件を適用し、従ってキメラ遺伝子によって細胞の50%以上が変換されたであろう。
同時に、20個の遺伝子導入をHEK293T細胞で同時に実施した。これらは、各プラスミド及びネガティブコントロール(CD(商標登録)のないpLPCX-CD8)と一致した。
【0182】
B−細胞でのキメラタンパク質の発現及びエキソソームへのターゲティング
a)ウエスタンブロット分析:
形質導入に由来する細胞及びエキソソーム可溶化物を、10%のSDS−PAGEゲル泳動、続いてPVDF膜(ポリフッ化ビニリデンジフロライド、イモビロンP、Millipore)上へのトランスファーにより分析した。次にこれらの膜を、一次抗ウサギCD(商標登録)血清、続いてペルオキシダーゼと結合した二次抗ウサギIgG抗体を使用して明らかにした。明らかにした後、これらの抗体を除去し同一の方法でしかしながら抗ウサギCD8α血清を使用してトランスファー膜を明らかにした。
結果は
図25及び26に表わす。
【0183】
・
細胞及びエキソソームでのキメラの発現レベルの比較:
細胞可溶化物では、キメラタンパク質の弱い発現のみ示したことが認められた。一方で、エキソソーム中では一定のキメラタンパク質が時折非常に大きく存在した。
この発現レベルに加え、細胞タンパク質及びエキソソームタンパク質で見られる大きな違いは、細胞に関しては2または3つのバンド及びエキソソームに関してはたった1つのバンドの存在であった。これは、細胞がグリコシル化されていない形態及び多かれ少なかれグリコシル化された形態を含有するだからである。エキソソームでは、正確にグリコシル化された形態だけが発見される。
【0184】
・
ポジティブ(CD8α-CD(商標登録))及びネガティブ(CD8α単独)コントロールのエキソソームのターゲティングのウエスタンブロット分析:
抗CD(商標登録)血清での、31kDaへ移動しているバンドは野生型CD8α−CD(商標登録)コントロールのエキソソーム可溶化物中に存在し、一方これはネガティブコントロールによって遺伝子導入された細胞由来の可溶化物中には存在しなかった。このバンドは期待されるキメラタンパク質の特徴を示す。
抗CD8α血清では、ネガティブCD8αコントロール単独は、27kDa付近にCD(商標登録)が欠損したCD8αの発現及びエキソソームのターゲティングに一致するバンドを有した。上述と同様に、31kDaへ移動しているバンドは野生型CD8α−CD(商標登録)コントロ−ルのエキソソーム可溶化物中に存在する。31kDa及び27kDaのバンド間の強度の相違から、CD(商標登録)と融合させる場合、CD8αはエキソソーム上で一層ターゲティングされることが示唆される。
【0185】
・
変異されたCD8α−CD(商標登録)のターゲティングにおけるウエスタンブロット分散分析:
抗CD8α血清で得られた結果のみ相互に同程度であった。抗CD(商標登録)血清で得られた結果を前述の結果を確認するためにのみ使用した。CD(商標登録)をコードする配列の変異に応じて、これらの結果はキメラタンパク質の発現及びエキソソームへのターゲティングにおける分散を示す。これは、タンパク質のエキソソームへのターゲティングを強固に阻害する変異に関して特に明らかである。当該突然変異体は、突然変異体KM8、KM13、D及びKS8に関してであった。
これらの見解から、(KM8突然変異体の)モチーフPSAP及び((突然変異体KM13及びDの)最後のモチーフYxxLにおける)モチーフDYは、エキソソームのターゲティングに重要であると結論付けることができる。
【0186】
b)エキソソーム上のキメラタンパク質のFACsによる定量化:
キメラタンパク質の存在はまた、蛍光モノクローナル抗CD8抗体を使用して細胞蛍光測定法分析(FACscan)によって調べた。
ラテックスビーズ(IDC (Interfacial Dynamics Corporation)超清浄アルデヒド/硫酸ラテックスビーズ)上でエキソソームを固定した後、、エキソソームの表面上に存在するキメラタンパク質をフルオレセイン(Pharmingen からの53-6.7 抗体)と結合したモノクローナルマウス抗CD8α抗体で標識し、細胞蛍光測定法で分析した(FACScan)。
得られた結果は突然変異体KM8、KM13及びDに関して特に明らかであり、エキソソーム上でのキメラタンパク質のターゲティングにおいて変異されたアミノ酸が重要であることは明らかである(参照、
図26及び27)。これらの結果から、ウエスタンブロットの結果によって既に明らかである、タンパク質をエキソソームへターゲティングすることにおけるモチーフPSAP、(モチーフDYxxL中の)D及びYの影響が追認される。
【0187】
結果:
この実験中、変異型またはマウスCD8αと結合した野生型CD(商標登録)の試験ペプチドを発現するためにキメラ遺伝子を構築した。アミノ酸または注目のCD(商標登録)のモチーフのこれらの変異はエキソソームへのターゲティングで重要であるアミノ酸及びコンセンサスモチーフを特定することを目的としたものであった。
様々なキメラ遺伝子のキメラタンパク質の発現を得るために、HEK293T真核細胞に形質導入するために、レトロウイルスの発現ベクターの中にこれらの遺伝子を取り込ませた。ウエスタンブロットで観察されたバンドから、天然のCD8αタンパク質のように、これらのタンパク質はゴルジ体を介するこれらの経路中で別々にグリコシル化されることが示唆される。正確にグリコシル化されたタンパク質のみがエキソソームで発見された。これらのタンパク質は、適当な翻訳後の修飾、ワクチン免疫の後の産生または治療用分子のスクリーニングに不可欠な立体構造エピトープの発現に必須の条件を受ける。しかしながら、多かれ少なかれ存在するこれらのグリコシル化は、比較タンパク質の定量化の間に妨害となった複数の散在するバンドを生じる。この課題を克服するために、ゲル上でシグナルバンドを観察するために可溶化物をエンドグリコシラーゼ(endoglycosylase)で処理しなければならなかった。
【0188】
この結果によると、モチーフPSAP及び(最後のYxxL由来の)DYは、キメラタンパク質の発現及びエキソソームへのターゲティングに必須である。これらの結果は、根本的な面及び産業上の利用の面両方において新規でありそして興味深いものである。
PSAPモチーフはESCRT複合体のTsg101タンパク質との相互作用に関与するかもしれない。モチーフDYxxLに関しては、ESCRT複合体のALIXタンパク質との相互作用に関係するかもしれない。従って、初めて、実験データから、ESCRT複合体がエキソソームの形成に関与することがが示唆される。
【0189】
実施例3:膜貫通型ドメインを有する受容体のエキソソームへのターゲティング。
膜受容体は、治療用分子の開発のための主な対象である。一般的に、薬物の高処理スクリーニングは、特に培養下で細胞上に発現された複数の膜ドメインを有する受容体で実施される。細胞表面上での受容体の強い発現を得ることが困難であることに加え、この技術はロボットによるオートメーションに困難をもたらす。しかしながら、精製される組換え型受容体の使用は現在技術上想定できないので、現在これは唯一の解決策である。
この文脈中で、受容体、特に複数のドメインを有する受容体を運搬するエキソソームは、安定性及び操作の容易性のため使用が簡単でスクリーニングに適切であるツールを構成するかもしれない。
【0190】
本実験は、1つのまたは複数の膜貫通型ドメインを有する受容体、特に受容体CxCR4(ケモカインSDS-1(CXCL-12)及びHIVに関する受容体)並びにCD4受容体(HIV受容体)を輸送するエキソソームを産生することを目的とした。
3つのキメラ遺伝子を合成した。これらは、3’末端で、配列 配列番号8のCD(商標登録)−BLVペプチドを、そして5’末端で、CxCR4ヒト受容体、307のアミノ酸(CxCR4(307))を含んでなるC末端部で切断されたCxCR4受容体のバージョン、或いは403アミノ酸(CD4(403))を含んでなるC末端部で切断されたCD4受容体バージョンをコードするDNAを含む。
CD4及びCxCR4受容体は、それぞれ1回及び7回膜貫通型ドメインを含んでなる。
【0191】
3つのキメラ遺伝子をレトロウイルスの発現ベクターpLPCX中にクローン化した。これらの細胞での様々なキメラタンパク質の発現並びにエキソソームへのこれらの局在化を観察するために、これらの様々なプラスミドをHEK293Tヒト真核細胞に導入した。
使用したクローニング及びサブクローニングストラテジーは、実施例2に記載のものと同様であった:
受容体CxCR4、CxCR4(307)及びCD4(403)をコードするDNA並びに試験ペプチドCD(商標登録)をコードするものを、増幅させたフラグメントの各末端で取り込まれる制限酵素部位のための配列を含んでなるプライマーを使用してPCRにより増幅させた(フラグメントCxCR4、CxCR4(307)及びCD4(403)は、EcoRIサイト付近の5’末端及びXbaIサイト付近の3’末端に隣接され、そしてCD(商標登録)/BLVは、XbaIサイト付近の5’末端及びNotI付近の3’末端で隣接されるであろう)。
生成された挿入断片は、Topo増幅ベクターの中にクローン化した(参照、
図20)。次に得られたプラスミドを制限酵素によって消化し1.5%のアガロ−スゲル上で分析し、次にこれらの配列の完全性を確認するために配列決定した。
【0192】
続いて、CD(商標登録)/BLV挿入断片をXbaI/NotIカップルを使用して酵素消化によりTopoベクターから切除し、pKS2増幅ベクターの中にサブクローン化した(参照、
図21)。そして、フラグメントCxCR4、CxCR4(307)及びCD4(403)を増幅ベクターpKS2の中にサブクローン化できるように、組換え型pKS2ベクター並びに挿入断片CxCR4、CxCR4(307)及びCD4(403)を含む組換え型Topoベクターを制限酵素EcoRI及びXbaIで消化したが、当該フラグメントはCD(商標登録)ペプチドをコードする配列の5’末端に置かれていた。
従って、得られる様々なコンストラクトを、EcoRI/NotI酵素ペアを使用した消化により組換え型pKS2プラスミドから切除し、次にレトロウイルスの発現ベクターpLPCXの中にサブクローン化した(参照、
図22)。得られたベクター(参照、
図28)がEcoRI/XbaI酵素ペアを使用した酵素消化によって確認された。
【0193】
キメラタンパク質CxCR4/CD(商標登録)、CxCR4(307)/CD(商標登録)及びCD4(403)/CD(商標登録)を発現するために、様々なpLPCXプラスミドをHEK293Tヒト真核細胞の中に導入した。
総細胞タンパク質(100μg)及び形質導入した細胞の各バッチによって生成されたエキソソームの懸濁タンパク質の抽出物にβ−メルカプトエタノールの存在または非存在下でSDS−PAGE(10%)泳動を実施した。抗ウサギCD(商標登録)一次血清及びペルオキシダーゼと結合させた抗ウサギIgG二次抗体を使用してウエスタンブロットにより、目的のタンパク質を明らかにした。抗体をECL溶液を使用して暗室で明らかにした。最終的に、各サンプルのタンパク質フィンガープリントをクマシーブルーでの染色により明らかにした。
【0194】
結果を
図29〜31に表わす。
キメラCxCR4/CD(商標登録)、CxCR4(307)/CD(商標登録)及びCD4(403)/CD(商標登録)が細胞タンパク質抽出物中で発現されたことは注目すべきである(参照、
図29)。
複数のバンド:36、42、62及び87kDaはキメラCxCR4/CD(商標登録)を特徴付ける。野生型CxCR4受容体の発現は、特にHEK293T細胞で、複数のアイソフォームによって特徴付けられる;34、40、47、62、73及び80kDaのバンドを認識することができる(Sloane JA, 等.)。HEK293T中のCxCR4/CD(商標登録)キメラの大きなサイズのバンドは、CxCR4/CD(商標登録)キメラ中の試験ペプチド(CD(商標登録)ドメイン)の存在に起因する。同様に、30、42、60及び83kDaバンドは、CxCR4(307)/CD(商標登録)キメラの存在を明らかにした。このキメラの様々なアイソフォームを表わしているバンドのサイズにおけるバリエーションは、CxCR4受容体が切断されるという事実によって説明される。CD4(403)/CD(商標登録)キメラは明確に視覚化される53kDaバンドによって特徴付けられる。
【0195】
さらに、これらのキメラは全てエキソソームへ局在化され、(CxCR4/CD(商標登録)に関して)36、42、62及び87kDaバンド;(CxCR4(307)/CD(商標登録)に関して)30、38、48及び83kDaバンド並びに(CD4(403)/CD(商標登録)に関して)53kDaバンドの存在(参照、
図30)によって示される。
様々なタンパク質フィンガープリントをクマシーブルーで明らかにすることにより、これらの実験の間に使用したエキソソーム由来のタンパク質の総量(
図31B)が、細胞由来のタンパク質の総量(
図31A)よりはるかに少量であることが示され、一方ウエスタンブロットシグナルは等価である。コントロール細胞可溶化物中に存在する全タンパク質はエキソソームへ局在化されないと見なすことができる。CxCR4/CD(商標登録)及びCD4(403)/CD(商標登録)キメラは、エキソソームへ非常に強く向けられる。一方で、CD4(403)/CD(商標登録)キメラは、ほぼ完全にエキソソームへ局在化される。
【0196】
結果
HEK293T細胞の様々なpLPCXプラスミドでの形質導入は、キメラCxCR4/CD(商標登録)BLV、CxCR4(403)/CD(商標登録)BLV及びCD4(403)/CD(商標登録)BLVを発現するために使用されてきた。ウエスタンブロット分析により、細胞可溶化物中のこれらの存在が示されてきた。
予想通りに、プラスミドpLPCX CxCR4/CD(商標登録)BLV及びpLPCX CxCR4(307)/CD(商標登録)BLVで形質導入したHEK293T細胞で、キメラCxCR4/CD(商標登録)BLV及びCxCR4(307)/CD(商標登録)BLVの複数のアイソフォームが発現される。キメラCxCR4/CD(商標登録)BLV及びCxCR4(307)/CD(商標登録)BLVは、エキソソームへ効率的に局在化され、これらの融合タンパク質は細胞及びエキソソーム間で同等に分配されるようだ。
【0197】
さらに、キメラCD4(403)/CD(商標登録)BLVの存在が、プラスミドpLPCX CD4(403)/CD(商標登録)BLVで形質導入されたHEK293T細胞において観察される。試験ペプチドCD(商標登録)BLVは、キメラCD4(403)/CD(商標登録)BLVのエキソソームへの主な局在化を助長するように見える。
上述の結果は、試験ペプチドCD(商標登録)BLVが単一のまたは複数の膜貫通型ドメインを有するタンパク質をエキソソームへ同等に局在化することができることを示す。
これらの受容体は原形質膜の中に取り込まれず、そして天然の構造を保持しないので、溶液中でこれらに作用することが非常に困難であることが分かっている。これらのタンパク質に実施した現在の実験は、目的の受容体を発現している安定的な細胞株を使用してしばしばなされる。しかしながら、不適な扱いをした場合に常に死滅するかもしれないこれらの株の入手、培養及び維持の時間及びコストの観点からこれは制限される。この理由のため、エキソソームは生存しておらずこれらの研究に関してエキソソームが不都合なく細胞のあらゆる利点を有するので、複数の膜貫通型ドメインを有する受容体を輸送しているエキソソームの使用の事実は興味深い解決策を表わす。
エキソソームの膜の中に取り込まれる組換え型タンパク質、特に複数の膜貫通型ドメインを含んでなるタンパク質を有するエキソソームを、ワクチン上及びスクリーニングツールとして使用することができる。
【0198】
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