(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語の定義および説明
層または材料について言及される場合の用語「活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電子デバイス中、活性材料は、デバイスの動作を電子的に促進する。活性材料の例としては、電子または正孔のいずれであってもよい電荷を伝導、注入、輸送、または遮断する材料、ならびに、放射線を受けた場合に、放射線を放出したり電子−正孔対の濃度変化を示したりする材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
用語「有機電子デバイス」は、1つまたは複数の有機半導体の層あるいは材料を含むデバイスを意味することを意図している。有機電子デバイスとしては:(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイス、ならびに項目(1)〜(4)のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
用語「反応性界面活性組成物」は、放射線感受性である少なくとも1つの材料を含む組成物であって、層に塗布すると、その層の表面エネルギーが低下する組成物を意味することを意図している。反応性界面活性組成物を放射線に露光すると、その組成物の少なくとも1つの物理的性質が変化する。この用語は「RSA」と略記され、放射線への露光前および露光後の両方の組成物を意味する。
【0016】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81
st Edition(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0017】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0018】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光源、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0019】
有機電子デバイス
本発明の方法を、電子デバイスにおける使用に関してさらに説明するが、本発明の方法がそのような使用に限定されるものではない。
【0020】
図1は、代表的な電子デバイスの有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであり、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも2つの有機活性層を含む。電子デバイス100は、アノード層110から光活性層140への正孔の注入を促進するための1つまたは複数の層120および130を含む。一般に、2つの層が存在する場合、アノードに隣接する層120は正孔注入層または緩衝層と呼ばれる。光活性層に隣接する層130は正孔輸送層と呼ばれる。場合により電子輸送層150が光活性層140とカソード層160(図示せず)との間に配置される。デバイス100の用途に依存するが、光活性層140は、印加電圧によって励起する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中など)であってよい。本発明のデバイスは、システム、駆動方法、および利用形態に関しては限定されない。
【0021】
マルチカラーデバイスの場合、光活性層140は、少なくとも3つの異なる色の異なる領域で構成される。異なる色の領域は、別々の着色領域を印刷することによって形成することができる。あるいは、層全体を形成し、異なる色の発光材料を層の異なる領域にドープすることによって形成することができる。このような方法は、たとえば米国特許出願公開第2004−0094768号明細書に記載されている。
【0022】
一実施形態においては、本明細書に記載される新規方法は、有機層(第2の層)を電極層(第1の層)に塗布するために使用することができる。一実施形態においては、第1の層がアノード110であり、第2の層が緩衝層120である。
【0023】
ある実施形態においては、本明細書に記載される新規方法は、デバイス中のあらゆる連続する有機層の組に使用されることができ、第2の層が特定の領域内に閉じ込められる。本発明の新規方法の一実施形態においては、第2の有機活性層が光活性層140であり、第1の有機活性層は、層140の直前に塗布されるデバイス層である。多くの場合、デバイスはアノード層から始まって製造される。正孔輸送層130が存在する場合、光活性層140が塗布される前に、RSA処理が層130に施されるであろう。層130が存在しなかった場合、RSA処理は層120に施されるであろう。カソードから始まってデバイスが製造された場合、光活性層140が塗布される前に、RSA処理が電子輸送層150に施されるであろう。
【0024】
本発明の新規方法の一実施形態においては、第2の有機活性層が正孔輸送層130であり、第1の有機活性層は、層130の直前に塗布されるデバイス層である。アノード層から始まってデバイスが製造される実施形態においては、正孔輸送層130を塗布する前に、緩衝層120に対してRSA処理が行われる。
【0025】
一実施形態においては、アノード110は平行なストライプのパターンで形成される。緩衝層120、および場合により正孔輸送層130は、アノード110の上に連続層として形成される。中間層は、層130(存在する場合)または層120(層130が存在しない場合)の上に別個の層として直接塗布される。アノードのストライプと、アノードのストライプの外端との間の領域が露出するようなパターンでRSAに露光される。
【0026】
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。本発明のデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあるし、有機の場合も無機の場合もある。一般に、ガラスまたは可撓性有機フィルムが支持体として使用される。アノード層110は、カソード層160よりも正孔の注入が効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の混合酸化物、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素が挙げられる。アノード層110を光透過性にするためには、インジウム・スズ酸化物などの12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、2族元素、あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層110の材料の一部の非限定的な具体例としては、インジウム・スズ酸化物(「ITO」)、インジウム・亜鉛酸化物、アルミニウム・スズ酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードは、ポリアニリン、ポリチオフェン、またはポリピロールなどの有機材料を含むこともできる。
【0027】
アノード層110は、化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピンキャスト法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
【0028】
通常、アノード層110は、リソグラフィ作業中にパターン化される。このパターンは、希望に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を塗布する前に、第1の可撓性複合バリア構造上にパターンニングされたマスクまたはレジストを配置することなどによってパターンを形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として塗布することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターン化されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターン化することができる。当該技術分野において周知の他のパターニング方法を使用することもできる。電子デバイスがアレイ内に配置される場合、典型的にはアノード層110は、実質的に同方向に延在する長さを有する実質的に平行なストリップに成形される。
【0029】
緩衝層120は、光活性層中への正孔の注入を促進し、デバイス中の短絡を防止するためにアノード表面を滑らかにする機能を果たす。典型的には緩衝層は、プロトン酸がドープされることが多いポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料で形成される。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。緩衝層120は、銅フタロシアニンやテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。一実施形態においては、緩衝層120は、導電性ポリマーとコロイド形成性ポリマー酸との分散体から作製される。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書および米国特許出願公開第2004−0127637号明細書に記載されている。
【0030】
緩衝層120はあらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、この緩衝層は、前述のような溶液堆積法によって塗布される。一実施形態においては、この緩衝層は連続溶液堆積法によって塗布される。
【0031】
任意選択の層130の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.WangによりKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが挙げられる。ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマー中に上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって正孔輸送ポリマーを得ることもできる。ある実施形態においては、正孔輸送材料は、架橋性のオリゴマー材料またはポリマー材料を含む。正孔輸送層を形成した後、材料を放射線で処理することで架橋させる。ある実施形態においては、放射線が熱放射である。
【0032】
正孔輸送層130は、あらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、正孔輸送層は、前述のような溶液堆積法によって塗布される。一実施形態においては、正孔輸送層は連続溶液堆積法によって塗布される。
【0033】
限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物などのあらゆる有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料を、光活性層140中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)らの米国特許第6,670,645号明細書、ならびに国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載されているような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、Thompsonらによる米国特許第6,303,238号明細書、ならびにBurrowsおよびThompsonによる国際公開第00/70655号パンフレットおよび国際公開第01/41512号パンフレットに記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
光活性層140は、あらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、光活性層は、前述のような溶液堆積法によって。一実施形態においては、光活性層は連続溶液堆積法によって塗布される。
【0035】
任意選択の層150は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たす場合もあるし、層界面における消光反応を防止する閉じ込め層として機能する場合もある。より具体的には、層150は、電子の移動を促進し、この層がなければ層140および160が直接接触する場合の消光反応の可能性を減少させることができる。任意選択の層150の材料の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物(たとえば、Alq
3など);フェナントロリン系化合物(たとえば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)など);アゾール化合物(たとえば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」など)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」など);他の類似の化合物;ならびにそれらの1つまたは複数のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、任意選択の層150は無機であってよく、BaO、LiF、Li
2Oなどを含むことができる。
【0036】
カソード層160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソード層160は、第1の電気接触層(この場合、アノード層110)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。一実施形態においては、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。一実施形態においては、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0037】
カソード層の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs,)、2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料を使用することもできる。カソード層160の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
通常、カソード層160は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。
【0039】
別の実施形態においては、追加層が有機電子デバイス内に存在することができる。
【0040】
デバイスがアノード側から始まって製造される場合、本明細書に記載の新規方法のRSA処理ステップは、アノード110の形成後、緩衝層120の形成後、正孔輸送層130の形成後、またはそれらのあらゆる組み合わせで行うことができる。デバイスがカソード側から始まって製造される場合、本明細書に記載の新規方法のRSA処理ステップは、カソード160の形成後、電子輸送層150の形成後、またはそれらのあらゆる組み合わせで行うことができる。
【0041】
種々の層はあらゆる好適な厚さを有することができる。無機アノード層110は通常約500nm以下、たとえば約10〜200nmであり;緩衝層120および正孔輸送層130はそれぞれ通常約250nm以下、たとえば約50〜200nmであり;光活性層140は通常約1000nm以下、たとえば約50〜80nmであり;任意選択の層150は通常約100nm以下、たとえば約20〜80nmであり;カソード層160は通常約100nm以下、たとえば約1〜50nmである。アノード層110またはカソード層160が少なくとも一部の光を透過する必要がある場合、そのような層の厚さは約100nmを超えないほうがよい。
【0042】
装置および方法
図2は、本発明の装置200および方法の一実施形態を示している。ブロック202は、第1のスロット出口204、第1の入口206、リザーバー208、収容タンク210、および供給ライン212を含む。第1のRSA材料214は収容タンク210中に収容されており、一方、加圧システム216が、乾燥空気または窒素などの不活性ガスを使用して収容タンク210を加圧する。第2の出口218および第3の出口220が、それぞれ第1のスロット出口204の上流および下流に示されている。第2の出口218および第3の出口220は、それぞれ第2または第3のRSA材料のために使用したり、あるいはコーティング環境をわずかに減圧するための通路として使用したり、またはそれらのあらゆる組み合わせとして使用したりすることができる。さらに、第2の出口218および第3の出口220は、完全開放位置と完全閉鎖位置との間で調節可能である(図示せず)。
【0043】
第1の間隙222、第2の間隙224、および第3の間隙226は、第1のスロット出口204、第2の出口218、および第3の出口220と基体228との間の距離を表している。一実施形態においては、第1の間隙222は、第2の間隙224または第3の間隙226のいずれかよりも小さい。
【0044】
気相の第1のRSA材料214は第1のスロット出口204を出て、基体228上に堆積して、RSA層230を形成する。基体228が冷却されることで、気相の第1のRSA材料214が凝縮し、一実施形態では、伝導性熱伝達を提供するために基体228に接触するチャック232が使用される。別の一実施形態では、伝導性熱伝達のためにガスまたは蒸気による冷却(図示せず)が使用される。ブロック202と基体228との間の相対運動は、座標軸233のいずれかにおいて生じさせることができ、ブロック202を静止した基体228に対して移動させることができるし、基体228を静止したブロック202に対して移動させることもできる。
【0045】
図3は、基体228に対して垂直のベクトル234に対してブロック202が傾斜している一実施形態を示している。傾斜角はθで示され、θは法線ベクトル234から±30°で変動することができる。さらに、他の成分に加えて、使用されていない第1のRSA材料214の排気処理は、第1の凝縮装置236、および場合により第2の凝縮装置238によって行うことができる。
【0046】
図4は、基体228上の最終的な堆積のために蒸気を均等に分布させるために、第1のスロット出口204に隣接して配置される分散板240の一実施形態を示している。
【0047】
プロセス条件としては、50〜150℃のコーティング温度、および20〜40℃の基体228の温度が挙げられる。作業圧力は、周囲圧力の1気圧、またはさらには約50kPaのわずかな減圧となる。コーティング速度は1〜100mm/sであり、第1の間隙222から第3の間隙226は100〜1000μmの範囲である。400mm×1.5mmの寸法を有するスロットダイ出口204の場合、1atmおよび22℃において200〜2000ml/分のガス流量が典型的である。第1のRSA材料214の消費速度は約0.2ml/hrである。
【0048】
本発明が提供する方法では、第1の層を形成し、第1の層を第1のRSA材料214で処理し、処理第1の層を放射線に露光し、処理し露光した第1の層の上に第2の層を形成する。
【0049】
一実施形態においては、第1の層は基体228である。この基体は無機または有機であってよい。基体の例としては、ガラス、セラミック、ならびにポリエステルフィルムおよびポリイミドフィルムなどのポリマーフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
一実施形態においては、第1の層は電極である。この電極は、パターン化されない場合もパターン化される場合もある。一実施形態においては、電極は、複数の平行な線にパターン化される。この電極は基体228上に存在することができる。
【0051】
一実施形態においては、第1の層は基体228上に堆積される。この第1の層は、パターン化される場合もパターン化されない場合もある。一実施形態においては、第1の層は電子デバイス中の有機活性層である。
【0052】
第1の層は気相堆積技術によって形成される。一実施形態においては、スロット出口204を有する加熱ブロック202から気相堆積し、基体228上の第1のRSA材料214の蒸気を凝縮させ、続いて乾燥させることによって、第1の層が堆積される。この場合、第1のRSA材料214は空気または不活性ガス(窒素など)を使用して加圧される。静止したブロックに対して基体を移動させることによって、ブロックと基体との間に相対運動を生じさせるか、または別の方法として、静止した基体に対してブロックを移動させる。この相対運動は、主座標軸233の少なくとも1つにおいて行われる。
【0053】
乾燥ステップは、室温または高温で行うことができるが、周囲温度であれば、電子デバイスを完成するための後の作業に基体を使用できる状態となるため、総プロセス時間が短縮される。温度範囲は典型的には50〜150℃であるが、第1のRSA材料214および後に使用されるあらゆる材料が損傷しないのであれば他の温度も許容できる。
【0054】
気相堆積は、第1の層の形成と同時またはその後に行うことができる。一実施形態においては、RSA処理は第1の層の形成後に行われる。この実施形態においては、RSAは、第1の層の上に重なり直接接触する別の層として塗布される。
【0055】
一実施形態においては、第1のRSA材料214は、気相堆積において溶媒を加えることなく塗布される。RSAは、それぞれのRSA溶融温度よりも高温に加熱することで、気相が得られる。気相RSAを堆積した後、第1の層の上に第2の層を形成するために、冷却した基体228によって、RSAをその融点よりも低温で液体に相変化することができる。
【0056】
ある実施形態においては、RSA処理は、第1の層の上に犠牲層を形成する第1のステップと、犠牲層の上にRSA層を塗布する第2のステップとを含む。犠牲層は、どのような現像処理が選択されてもRSA層よりも容易に除去される層である。したがって、放射線への露光後、後述するように、現像ステップにおいて露光領域または未露光領域のいずれかのRSA層および犠牲層が除去される。犠牲層は、選択された領域内のRSA層の完全な除去の促進、および下にある第1の層をRSA層中の反応性種による悪影響から保護することを意図している。
【0057】
RSA処理の後、処理済みの第1の層を放射線に露光する。使用される放射線の種類は前述のようにRSAの感受性に依存する。露光は、全面的なブランケット露光の場合もあるし、パターン状の場合もある。本明細書において使用される場合、用語「パターン状」は、材料または層の選択部分のみが露光されることを示している。パターン状露光は、あらゆる周知の画像形成技術を使用して行うことができる。一実施形態においては、パターンは、マスクを介して露光することで形成される。一実施形態においては、パターンは、選択した部分のみをレーザーで露光することによって形成される。露光時間は、使用されるRSA材料の個別の化学的性質に依存して数秒から数分の間の範囲とすることができる。レーザーが使用される場合、レーザーの出力に依存して、個別の各領域ではるかに短い露光時間が使用される。露光ステップは、材料の感受性に依存して、空気中または不活性雰囲気中で行うことができる。
【0058】
一実施形態においては、同時処理および逐次処理を含めて、放射線は、紫外線(10〜390nm)、可視光線(390〜770nm)、赤外線(770〜10
6nm)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態においては、放射線は熱放射である。一実施形態においては、放射線への露光が加熱によって行われる。この加熱ステップの温度および時間は、RSAの少なくとも1つの物理的性質が変化し、発光領域の下にあるすべての層を損傷しないような温度および時間である。一実施形態においては、加熱温度は250℃未満である。一実施形態においては、加熱温度は150℃未満である。
【0059】
一実施形態においては、放射線は紫外線または可視光線である。放射線をパターン状に照射して、RSAの露光領域とRSAの未露光領域とを得ることができる。
【0060】
一実施形態においては、放射線にパターン状に露光した後、第1の層が処理されることで、RSAの露光領域または未露光領域のいずれかが除去される。放射線へのパターン状露光、ならびに露光領域または未露光領域を除去するための処理については、フォトレジスト技術分野において周知である。
【0061】
一実施形態においては、RSAを放射線に露光することによって、RSAの溶媒に対する溶解性または分散性が変化する。露光がパターン状に行われる場合、これに続いて湿式現像処理を行うことができる。通常、この処理は、1つの種類の領域を溶解、分散、または剥離する溶媒で洗浄するステップを含む。一実施形態においては、放射線へのパターン状露光によって、RSAの露光領域が不溶化し、溶媒で処理するとRSAの未露光領域が除去される。
【0062】
一実施形態においては、RSAを可視光線またはUV放射線に露光することによって、露光領域中のRSAの揮発性が低下する反応が生じる。露光がパターン状に行われる場合、これに続いて熱現像処理を行うことができる。この処理は、未露光材料の揮発温度または昇華温度より高く、材料が熱反応性となる温度より低い温度に加熱するステップを含む。たとえば、重合性モノマーの場合、その材料は昇華温度より高く、熱重合温度よりも低い温度に加熱される。揮発温度に近いまたはそれより低い熱反応性温度を有するRSA材料は、この方法では現像できない場合があることは理解されよう。
【0063】
一実施形態においては、RSAを放射線に露光することによって、その材料が溶解、軟化、または流動する温度が変化する。露光がパターン状に行われる場合、これに続いて乾式現像処理を行うことができる。乾式現像処理の1つは、要素の最外面を吸収性表面と接触させて、より柔らかい部分を吸収または吸い取るステップを含むことができる。元の未露光領域の性質にさらなる影響を与えないのであれば、この乾式現像は高温で行うことができる。
【0064】
RSAで処理し、放射線に露光した後、第1の層は処理前よりも低い表面エネルギーを有する。放射線に露光した後にRSAの一部が除去される場合には、RSAによって覆われている第1の層の領域は、RSAによって覆われていない領域よりも低い表面エネルギーを有する。
【0065】
RSA層の厚さは、材料の最終用途に依存しうる。ある実施形態においては、RSA層の厚さは少なくとも100Åである。別の実施形態においては、RSA層は100〜3000Åの範囲内であり;別のある実施形態では1000〜2000Åの範囲内である。
【0066】
反応性界面活性(RSA)組成物
反応性界面活性組成物(RSA)は放射線感受性組成物である。放射線に露光すると、RSAの少なくとも1つの物理的性質および/または化学的性質が変化し、それによって露光領域と未露光領域とが物理的に区別可能になる。RSAで処理することで、処理された材料の表面エネルギーが低下する。
【0067】
一実施形態においては、RSAは放射線硬化性組成物である。この場合、放射線に露光すると、RSAは、液体媒体中に対する可溶性または分散性の増加、粘着性の低下、柔軟性の低下、流動性の低下、剥離性の低下、あるいは吸収性の低下が起こりうる。他の物理的性質にも影響が生じる場合がある。
【0068】
一実施形態においては、RSAは放射線軟化性組成物である。この場合、放射線に露光すると、RSAは、液体媒体に対する可溶性または分散性の低下、粘着性の増加、柔軟性の増加、流動性の増加、脱離性の増加、あるいは吸収性の増加が生じうる。他の物理的性質にも影響が生じる場合がある。
【0069】
放射線は、RSAの物理的変化を生じさせるあらゆる種類の放射線であってよい。一実施形態においては、放射線は、赤外線、可視光線、紫外線、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0070】
RSAの放射線に露光した領域と放射線に露光していない領域との間に物理的な差を生じさせることを、以下「現像」と呼び、これはあらゆる周知の技術によって行うことができる。このような技術は、フォトレジスト技術分野において広範に使用されている。現像技術の例としては、液体媒体による処理、吸収材料による処理、粘着性材料による処理などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
一実施形態においては、RSAは、1種類以上の放射線感受性材料から実質的になる。一実施形態においては、RSAは、放射線に露光すると硬化する、あるいは液体媒体に対する可溶性、膨潤性、または分散性が低下する、あるいは粘着性または吸収性が低下する材料から実質的になる。一実施形態においては、RSAは、放射線重合性基を有する材料から実質的になる。このような基の例としては、オレフィン類、アクリレート類、メタクリレート類、およびビニルエーテル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、RSA材料は、架橋を生じさせることができる2つ以上の重合性基を有する。一実施形態においては、RSAは、放射線に露光すると軟化する、あるいは液体媒体に対する可溶性、膨潤性、または分散性が増加する、あるいは粘着性または吸収性が増加する材料から実質的になる。一実施形態においては、RSAは、200〜300nmの範囲内の波長を有する深UV放射線に露光すると主鎖が分解する少なくとも1種類のポリマーから実質的になる。このような分解が進行するポリマーの例としては、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリケトン類、ポリスルホン類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
一実施形態においては、RSAは、少なくとも1種類の反応性材料と少なくとも1種類の放射線感受性材料とから実質的になる。この放射線感受性材料は、放射線に露光すると、反応性材料の反応を開始させる活性種を生成する。放射線感受性材料の例としては、フリーラジカル、酸、またはそれらの組み合わせを生成する材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、反応性材料は重合性または架橋性である。材料の重合または架橋反応は、活性種によって開始または触媒される。放射線感受性材料は、RSAの全重量を基準にして、一般に0.001%〜10.0%の量で存在する。
【0073】
一実施形態においては、RSAは、放射線に露光すると硬化する、あるいは液体媒体に対する可溶性、膨潤性、または分散性が低下する、あるいは粘着性または吸収性が低下する材料から実質的になる。一実施形態においては、反応性材料がエチレン系不飽和化合物であり、放射線感受性材料がフリーラジカルを生成する。エチレン系不飽和化合物としては、アクリレート類、メタクリレート類、ビニル化合物類、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フリーラジカルを生成するあらゆる周知の種類の放射線感受性材料を使用することができる。フリーラジカルを発生する放射線感受性材料の例としては、キノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、アリールケトン類、過酸化物類、ビイミダゾール類、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシルアルキルフェニルアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド誘導体、アミノケトン類、ベンゾイルシクロヘキサノール、メチルチオフェニルモルホリノケトン類、モルホリノフェニルアミノケトン類、αハロゲノアセトフェノン類、オキシスルホニルケトン類、スルホニルケトン類、オキシスルホニルケトン類、スルホニルケトン類、ベンゾイルオキシムエステル類、チオキサントロン類、カンファーキノン類、ケトクマリン類、およびミヒラーケトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、放射線感受性材料は、複数の化合物の混合物であって、その1つが、放射線によって活性化する増感剤によって活性化するとフリーラジカルが得られる化合物であってもよい。一実施形態においては、放射線感受性材料は、可視光線または紫外線に対して感受性である。
【0074】
一実施形態においては、RSAは、1つ以上の架橋性基を有する化合物である。架橋性基は、二重結合、三重結合、その場で二重結合を形成可能な前駆体、または複素環式付加重合性基を含有する部分を有することができる。架橋性基の例の一部としては、ベンゾシクロブタン、アジド、オキシラン、ジ(ヒドロカルビル)アミノ、シアネートエステル、ヒドロキシル、グリシジルエーテル、C1〜10アルキルアクリレート、C1〜10アルキルメタクリレート、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、マレイミド、ナジイミド、トリ(C1〜4)アルキルシロキシ、トリ(C1〜4)アルキルシリル、およびそれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。一実施形態においては、架橋性基は、ビニルベンジル、p−エテニルフェニル、パーフルオロエテニル、パーフルオロエテニルオキシ(perfluoroehtenyloxy)、ベンゾ−3,4−シクロブタン−1−イル、およびp−(ベンゾ−3,4−シクロブタン−1−イル)フェニルからなる群から選択される。
【0075】
一実施形態においては、反応性材料は、酸によって開始された重合を進行させることができ、放射線感受性材料が酸を生成する。このような反応性材料の例としてはエポキシ類が挙げられるが、これに限定されるものではない。酸を生成する放射線感受性材料の例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのスルホニウム塩類およびヨードニウム塩類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
一実施形態においては、RSAは、放射線に露光すると軟化する、あるいは液体媒体に対する可溶性、膨潤性、または分散性が増加する、あるいは粘着性または吸収性が増加する材料から実質的になる。一実施形態においては、反応性材料がフェノール樹脂であり、放射線感受性材料がジアゾナフトキノンである。
【0077】
当技術分野において周知の他の放射線感受性系も同様に使用することができる。
【0078】
一実施形態においては、RSAはフッ素化材料を含む。一実施形態においては、RSAは、1つ以上のフルオロアルキル基を有する不飽和材料を含む。一実施形態においては、これらのフルオロアルキル基は2〜20個の炭素原子を有する。一実施形態においては、RSAは、フッ素化アクリレート、フッ素化エステル、またはフッ素化オレフィンモノマーである。RSA材料として使用可能な市販材料の例としては、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)より入手可能なフッ素化不飽和エステルモノマーであるZonyl(登録商標)8857A、およびSigma−Aldrich Co.(St.Louis,MO)より入手可能なアクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ヘンエイコサフルオロドデシル(H
2C=CHCO
2CH
2CH
2(CF
2)
9CF
3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
一実施形態においては、RSAはフッ素化マクロモノマーである。本明細書において使用される場合、用語「マクロモノマー」は、末端に存在するまたは鎖のペンダント基である1つ以上の反応性基を有するオリゴマー材料を意味する。ある実施形態においては、マクロモノマーは1000を超える分子量を有し;ある実施形態においては2000を超える分子量を有し;ある実施形態においては5000を超える分子量を有する。ある実施形態においては、マクロモノマーの主鎖が、エーテルセグメントおよびパーフルオロエーテルセグメントを含む。ある実施形態においては、マクロモノマーの主鎖が、アルキルセグメントおよびパーフルオロアルキルセグメントを含む。ある実施形態においては、マクロモノマーの主鎖が、部分フッ素化アルキルセグメントまたは部分フッ素化エーテルセグメントを含む。ある実施形態においては、マクロモノマーが、1つまたは2つの末端重合性基または末端架橋性基を有する。
【0080】
一実施形態においては、RSAは、開裂可能な側鎖を有するオリゴマー材料またはポリマー材料であり、これらの側鎖を有する材料は、側鎖を有さない材料とは異なる表面エネルギーを有するフィルムを形成する。一実施形態においては、RSAは非フッ素化主鎖と、部分フッ素化または完全フッ素化側鎖とを有する。これらの側鎖を有するRSAからは、これらの側鎖を有さないRSAから作製したフィルムよりも低い表面エネルギーを有するフィルムが形成される。したがって、このRSAを第1の層に塗布し、あるパターンで放射線に露光して側鎖を開裂させ現像することによって、側鎖を除去することができる。これによって、放射線に露光し側鎖が除去された領域中の高い表面エネルギーと、側鎖が残留する非露光領域中の低い表面エネルギーとのパターンが生じる。ある実施形態においては、側鎖は熱的に不安定であり、赤外レーザーなどを使用して加熱することによって開裂する。この場合、赤外線の露光と同時に現像を行うことができる。あるいは現像は、真空の使用または溶媒処理によって行うことができる。ある実施形態においては、UV線に露光することによって側鎖が開裂可能となる。前述の赤外系と同様に、現像は、放射線への露光と同時に行うこともできるし、真空の使用または溶媒処理によっても行うことができる。
【0081】
一実施形態においては、RSAは、反応性基と第2の種類の官能基とを有する材料を含む。この第2の種類の官能基は、RSAの物理的加工特性または光物理的性質を変更するために存在することができる。加工特性を変更する基の例としては、アルキレンオキシド基などの可塑化基が挙げられる。光物理的性質を変更する基の例としては、カルバゾール基、トリアリールアミノ基、またはオキサジアゾール基などの電荷輸送基が挙げられる。
【0082】
一実施形態においては、放射線に露光すると、RSAは下にある領域と反応する。この反応の厳密な機構は、使用される材料に依存する。放射線に露光した後、好適な現像手段によって未露光領域のRSAが除去される。ある実施形態においては、RSAは未露光領域でのみ除去される。ある実施形態においては、RSAは、露光領域においても部分的に除去され、それらの領域内ではより薄い層が残留する。ある実施形態においては、露光領域において残留するRSAは50Å未満の厚さとなる。ある実施形態においては、露光領域中に残留するRSAは、厚さが実質的に単層である。
【0083】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲において記載される値への言及は、その範囲内にあるすべての値を含んでいる。
本明細書は以下の実施態様を開示する。
[実施態様1]
基体に気相コーティングするための装置であって:
少なくとも第1の入口、リザーバー、第1のスロット出口、第2の出口、および第3の出口を有するブロックと;
RSA材料を前記ブロックに提供するための、前記第1の入口に取り付けられた供給ラインとを含み;
前記第1のスロット出口と前記基体との間の距離が第1の間隙であり、前記第2の出口と前記基体との間の距離が第2の間隙であり、前記第3の出口と前記基体との間の距離が第3の間隙であり、前記第1の間隙が、前記第2または第3のいずれかの間隙よりも小さい、装置。
[実施態様2]
前記ブロックが少なくとも第1および第2の構造から形成され、前記第1の構造が前記第1の入口、前記リザーバー、および前記第1のスロット出口を有する、実施態様1に記載の装置。
[実施態様3]
前記第2の出口が前記第1のスロット出口の上流にあり、前記第3の出口が前記第1のスロット出口の下流にある、実施態様1に記載の装置。
[実施態様4]
前記第2および第3の出口のそれぞれが、完全開放状態と完全閉鎖状態との間で調節可能である、実施態様3に記載の装置。
[実施態様5]
前記ブロックの方向が、前記基体の表面に対して垂直のベクトルから±30度で調節可能である、実施態様4に記載の装置。
[実施態様6]
前記第2または第3の出口のいずれかまたは両方に接続された真空源をさらに含む、実施態様4に記載の装置。
[実施態様7]
第1の凝縮装置を含む排気処理をさらに含む、実施態様4に記載の装置。
[実施態様8]
第2の凝縮装置を含む排気処理をさらに含む、実施態様7に記載の装置。
[実施態様9]
前記第1のスロット出口に隣接して多孔質分散板が配置される、実施態様1に記載の装置。
[実施態様10]
前記ブロックがアルミニウムでできている、実施態様1に記載の装置。
[実施態様11]
基体に気相コーティングするための方法であって:
ブロックを提供するステップであって、前記ブロックが、少なくとも第1の入口、リザーバー、第1のスロット出口、第2の出口、および第3の出口を含むステップと;
第1の反応性表面領域(RSA)材料のための収容タンクを提供するステップと;
前記ブロックを第1の温度まで加熱し、前記収容タンクを第2の温度まで加熱するステップと;
前記収容タンクを加圧するステップと;
少なくとも1つの座標軸における相対運動を発生させるように前記ブロックまたは前記基体を移動させて、前記第1のRSA材料を、前記収容タンクから前記第1の入口まで、および前記リザーバー中に供給するステップと;
前記RSA材料を、前記第1のスロット出口に通して前記基体上まで流すステップとを含む、方法。
[実施態様12]
第2の材料を、前記第2の出口に通して前記基体上まで流すステップをさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様13]
前記第2の材料が第2のRSA材料である、実施態様12に記載の方法。
[実施態様14]
前記第2または第3の出口のいずれかに接続された真空源を利用するステップをさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様15]
前記基体を冷却して前記基体の前記第1のRSA材料を凝縮させるステップをさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様16]
第1の凝縮装置を含む排気処理を提供するステップをさらに含む、実施態様15に記載の方法。
[実施態様17]
第2の凝縮装置を提供するステップをさらに含む、実施態様16に記載の方法。
[実施態様18]
前記ブロックをクリーニングして、前記排気処理に達する第1のRSA材料を除去するステップをさらに含む、実施態様16に記載の方法。
[実施態様19]
前記第1のスロット出口に隣接して配置された多孔質分散板を提供するステップをさらに含む、実施態様11に記載の方法。