特許第5727372号(P5727372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5727372陰イオン界面活性剤を含むイオン性液状電解質およびそれらを含む蓄電池のような電気化学的デバイス
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  • 特許5727372-陰イオン界面活性剤を含むイオン性液状電解質およびそれらを含む蓄電池のような電気化学的デバイス 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727372
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】陰イオン界面活性剤を含むイオン性液状電解質およびそれらを含む蓄電池のような電気化学的デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20150514BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20150514BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20150514BHJP
【FI】
   H01M10/0568
   H01M10/0567
   H01M10/052
【請求項の数】36
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-517164(P2011-517164)
(86)(22)【出願日】2009年7月9日
(65)【公表番号】特表2011-527495(P2011-527495A)
(43)【公表日】2011年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2009058775
(87)【国際公開番号】WO2010004012
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年6月20日
(31)【優先権主張番号】0854743
(32)【優先日】2008年7月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509248165
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミ−ク エ オ エネルジー アルテルナティヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】506214909
【氏名又は名称】セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】ネリー ジロー
(72)【発明者】
【氏名】エリック シェネ
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ ルオー
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−035413(JP,A)
【文献】 特開2002−033118(JP,A)
【文献】 特開2006−228741(JP,A)
【文献】 特開2000−149945(JP,A)
【文献】 特開2003−077465(JP,A)
【文献】 特開2006−339010(JP,A)
【文献】 特開2007−35413(JP,A)
【文献】 特開2002−33119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式C+-、式中、C+は陽イオンを表し、およびA-は陰イオンを表すものの少なくとも1種のイオン性液体、および少なくとも1種の導電性塩を含むイオン性液状電解質であって、それがさらに少なくとも1種の陰イオン界面活性剤を含むことを特徴とする、イオン性液状電解質。
【請求項2】
前記陰イオン界面活性剤は、アルキルスルファート類およびアルキルアリールスルファート類石けん類、アルキルベンゼンスルホナート(ABS)類、アルコールスルファート類、アルコールアルキルスルファート類、ホスフェート類セルロースガム類、およびそれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記石けん類が脂肪酸のナトリウム塩類であり、前記セルロースガム類がカルボキシメチルセルロースナトリウムである、請求項2に記載の電解質。
【請求項4】
前記陰イオン界面活性剤はアルキルスルファート類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびステアリン酸ナトリウムから選ばれる請求項2に記載の電解質。
【請求項5】
前記アルキルスルファート類がドデシルスルファートナトリウム(SDS)である、請求項4に記載の電解質。
【請求項6】
さらに、陽イオン面活性剤類、ノニオン界面活性剤類および双性イオン界面活性剤類から選ばれる少なくとも1種の他の界面活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項7】
前記ノニオン界面活性剤は、(ポリ)エトキシル化および/または(ポリ)プロポキシル化されたアルコール類およびアルキルフェノール類、ポリオールエステル類、サッカロースエステル類、脂肪族アルカノールアミド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー、およびそれらの混合物から選ばれる、請求項6に記載の電解質。
【請求項8】
前記アルキルフェノール類のアルキル基が8〜9個の炭素原子を含む、請求項7に記載の電解質。
【請求項9】
前記ノニオン界面活性剤はトリトン(商標)〔TRITON(R)〕X、テルギトール(商標)〔Tergitol(R)〕Lおよびテルギトール(商標)NPから選ばれる、請求項7に記載の電解質。
【請求項10】
前記トリトン(商標)〔TRITON(R)〕Xがトリトン(商標)〔Triton(R)〕X−100である、請求項9に記載の電解質。
【請求項11】
前記イオン性液体の陽イオンC+は有機陽イオン類から選ばれる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項12】
前記イオン性液体の陽イオンC+は、ヒドロキソニウム、オキソニウム、アンモニウム、アミジニウム、ホスホニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ホスホリウム、ホスホロリウム、ヨードニウム、カルボニウム;および複素環陽イオン;およびそれらの互変異性型から選ばれる、請求項11に記載の電解質。
【請求項13】
前記複素環陽イオンが、ピリヂニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、イミダゾリニウム、トリアゾリウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピロリジニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、ピラジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、ピロリウム、ピリジニウム、インドリウム、キノキサリニウム、チオモルホリニウム、モルホリニウム、およびインドリニウム陽イオンから選ばれる、請求項12に記載の電解質。
【請求項14】
前記イオン性液体の陽イオンC+非置換または置換されたイミダゾリウム類、四級アンモニウム類非置換または置換されたピペリジニウム類非置換または置換されたピロリジニウム類非置換または置換されたピラゾリウム類非置換または置換されたピリヂニウム類ホスホニウム類、スルホニウム類;およびそれらの互変異性型から選ばれる、請求項12に記載の電解質。
【請求項15】
前記非置換または置換されたイミダゾリウム類がジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ−アルキルイミダゾリウム類から選択され、前記非置換または置換されたピペリジニウム類がジアルキルピペリジニウム類であり、前記非置換または置換されたピロリジニウム類がジアルキルピロリジニウム類であり、前記非置換または置換されたピラゾリウム類がジアルキルピラゾリウム類であり、前記非置換または置換されたピリヂニウム類がアルキルピリヂニウム類であり、前記ホスホニウム類がテトラアルキルホスホニウム類であり、前記スルホニウム類がトリアルキルスルホニウム類である、請求項14に記載の電解質
【請求項16】
前記イオン性液体の陽イオンC+ピペリジニウム類四級アンモニウム類イミダゾリウム類;およびそれらの互変異性型から選ばれる、請求項14に記載の電解質。
【請求項17】
前記ピペリジニウム類がジアルキルピペリジニウム類であり、前記四級アンモニウム類が4つのアルキル基を有する四級アンモニウム類であり、前記イミダゾリウム類がジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ−置換されたイミダゾリウム類から選択される、請求項16に記載の電解質。
【請求項18】
前記イミダゾリウム類が、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ−アルキルイミダゾリウム類から選択される、請求項17に記載の電解質。
【請求項19】
前記イオン性液体の陰イオンA-、ハロゲン化物、BF4-、B(CN)4-、CH3BF3-、CH2CHBF3-、CF3BF3-、m−Cn2n+1BF3-で、式中、nが1≦n≦10である整数であるもの、PF6-、CF3CO2-、CF3SO3-、N(SO2CF3)2-、N(COCF3)(SOCF3)-、N(CN)2-、C(CN)3-、SCN-、SeCN-、CuCl2-、およびAlCl4-から選ばれる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項20】
前記ハロゲン化物がCl-である、請求項19に記載の電解質。
【請求項21】
前記イオン性液体の陰イオンA-は、BF4-およびTFSI−(N(SO2CF3)2-)から選ばれる、請求項19に記載の電解質。
【請求項22】
前記イオン性液体は、BF4-およびTFSI−(N(SO2CF3)2-)から選ばれる陰イオンA-、ピペリジニウム類、四級アンモニウム類およびイミダゾリウム類から選ばれる陽イオンC+を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項23】
前記イオン性液体は、BMIBF4または1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートである、請求項22に記載の電解質。
【請求項24】
前記導電性塩はリチウム塩類から選ばれる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項25】
前記導電性塩は、LiPF6:リチウムヘキサフルオロホスフェート、LiBF4:リチウムテトラフルオロボラート、LiAsF6:リチウムヘキサフルオロアルセナート、LiClO4:リチウムパーコラート、LiBOB:リチウムビスオキサラトボラート、LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミジド、一般式Li[N(SO2n2n+1)(SO2m2m+1)]塩類で、式中、nおよびmは、いずれも同じか、または異なり、1および10の間含まれる自然整数である塩類、LiODBF、LiB(C65)、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3(LiTFSM)、およびそれらの混合物から選ばれる、請求項24に記載の電解質。
【請求項26】
前記一般式Li[N(SO2n2n+1)(SO2m2m+1)]の塩類が、LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミジド、またはLiN(CF3SO2)2、またはLiBeti:リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミジドである、請求項25に記載の電解質。
【請求項27】
前記導電性塩は、LiTFSI、LiPF6、LiFS、LiBF4、およびそれらの混合物から選ばれる、請求項25に記載の電解質。
【請求項28】
イオン性液体の溶媒1モル当たり0.001から0.5モルまでの陰イオン界面活性剤を含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項29】
0.1から10モル/Lまでの導電性塩を含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項30】
さらに、少なくとも1種の有機溶媒を含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項31】
前記イオン性液体前記導電性塩、前記陰イオン界面活性剤および前記他の随意の界面活性剤から構成される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項32】
1.6モル/lのLiPF6、イオン性液体溶媒BMIBF4およびSDSの等モル混合物に含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の液状電解質。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の電解質を含む、電気化学的システム。
【請求項34】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の電解質、陽極および陰極を含む、再充電可能な電気化学的アキュムレーター
【請求項35】
リチウムアキュムレーターである、請求項34に記載のアキュムレーター。
【請求項36】
ボタン電池セルである、請求項34に記載のアキュムレーター
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰イオン界面活性剤を含むイオン性液状電解質およびそれらを含むアキュムレーターのような電気化学的デバイスに関し、また本発明は、液状電解質に、およびより一層具体的には、イオン性液状溶媒および導電性塩、およびさらに陰イオン界面活性剤を含む電解質に関する。
【0002】
本発明に従う液状電解質はこのようにして、イオン性液状電解質と呼ぶことができる。
【0003】
本発明は、より一層具体的には、イオン性液状溶媒およびリチウム塩を含む、再充電可能な(充電式)リチウムアキュムレーター〔またはリチウム二次電池〕のための電解質に関する。
【0004】
本発明はさらに、この電解質を含む、充電式アキュムレーター(または二次電池)、特に一次リチウムアキュムレーター(電池)またはリチウムイオンアキュムレーター(電池)のような電気化学的デバイス(装置)またはシステムに関する。
【0005】
本発明はとりわけ、電気化学的貯蔵、アキュムレーター類またはバッテリー(電池)類の分野で、および特定のリチウムアキュムレーター類またはバッテリー類での適用を見出すことができる。
【背景技術】
【0006】
先行技術の状態。通例、本発明の技術的な分野は、電解質の策定のものとして、そしてより一層具体的には、イオン性液状電解質、すなわち、イオン性液状溶媒および導電性塩のような溶質を含む溶液の策定についてのものとして規定することができ、そこではイオン伝導機構が関与する。
【0007】
あるものがより一層具体的にリチウムアキュムレーター類またはバッテリー類に興味がある場合、リチウムアキュムレーターまたはバッテリーは通例、以下のものから構成される。
− 2つの電極、すなわち、陽極および陰極。陽極は通例、電気化学的な活物質として、リチウム化された(lithiated)遷移金属、オリビン(かんらん石)(LiFePO4)またはスピネル(尖晶石)(たとえば、スピネルLiNi0,5Mn1,5O4)の層状酸化物のようなリチウムインターカレーション物質を備える。陰極は通例、電気化学的に活性な物質として、一次アキュムレーター、バッテリーの場合での金属リチウム、またはグラファイトカーボン(黒鉛炭素)(Cgr)のようなインターカレーション物質、またはリチウムイオン技術に基づくアキュムレーター、バッテリーの場合でのリチウム化された酸化チタン(Li4Ti5O12)を備える。
− 電流コレクターで、通例、陰極のための銅で、または陽極のためのアルミニウムであり、それは電子の循環、および従って電子伝導を、外側の回路において可能にする。
− 1種の電極から別のものまでリチウムイオンの通過を確実にするイオン伝導が起こる電解質、
− 接触すること、および従って短絡を電極間で防止することができるセパレーター。これらのセパレーターは、微小孔性ポリマー膜であってよい。
【0008】
アキュムレーターまたはバッテリーは特に、図1に記載するようなボタン電池セルの形状をもつことができる。
【0009】
本リチウムまたはリチウムイオンアキュムレーターまたは電池で用いる電解質は有機溶媒、ほとんどの場合、カルボナート(炭酸塩)の混合物からなる液状電解質であり、そこでリチウム塩が溶解される。
【0010】
最新の有機溶媒はこのようにして、カルボナートであり、環状またはそうでないかのどちらか、たとえば、エチレンカルボナート(EC)、プロピレンカルボナート(PC)、ジメチルカルボナート(DMC)、ジエチルカルボナート(DEC)、およびビニレンカルボナート(VC)のようなものでもある。非常に良好な収率を可能にするが、これらの有機電解質は安全問題を起こす。実際には、それらは可燃性であり、および揮発性であり、そしてそれは一定の場合に、炎および爆発を発生させるかもしれない。さらに、これらの電解質は、それらの揮発性のために、60℃を超える温度で用いることができず、それらはリチウムアキュムレーターの膨張を引き起こすことがあり、そして後者の爆発につながることがある。
【0011】
電解質に加えられるリチウム塩類は、ほとんどの場合、以下の塩類から選ばれる。
○ LiPF6:リチウムヘキサフルオロホスフェート、
○ LiBF4:リチウムテトラフルオロボラート、
○ LiAsF6:リチウムヘキサフルオロアルセナート、
○ LiClO4:リチウムペルクロラート(過塩素酸塩)、
○ LiBOB:リチウムビスオキサラートボラート(oxalatoborate)、
○ LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
○ LiBeti:リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド、
○ LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミジド(imidure、imidide)、
○ または一般式Li[N(SO2CnF2n+1)(SO2CmF2m+1)]、式中、nおよびmは、同一または異なるかのいずれかのもので、1および10の間で、選択的に1および5の間で含まれる自然整数であるものの塩類。
【0012】
安全性の問題および特に燃焼の、そして低い熱安定性、高い蒸気圧、およびこれらの液状電解質の有機溶媒の低い引火点によるガス蓄積の問題を解決するために、それらをイオン性液体と置き換えることが提案された。
【0013】
イオン性液体は、陽イオンおよび陰イオンを含む液体塩類として規定することができる。イオン性液体はこのように、通例、かさ高の(バルキーな)有機陽イオンからなり、それらには正電荷が与えられ、それらは負電荷を与えられる無機陰イオンが関連する。さらに、イオン性液体は、それらの名称によって示されるように、通例0℃から200℃までの温度の範囲において、特に室温の前後で液体であり、そしてそれらはこのようにして《RTIL》 (または室温イオン性液体)と呼ばれることが多い。
【0014】
イオン液体の多様性は、多数の電解質を開発することが可能なようなものである。しかし、より一層関心を引くイオン性液体のファミリーが存在する。これらのファミリーは用いる陽イオンのタイプによって分類される。特に以下の陽イオンを言及することができる。
○ ジ−またはトリ−置換されたイミダゾリウム陽イオン、
○ 四級アンモニウム、
○ ジアルキルピペリジニウム、
○ ジアルキルピロリジニウム、
○ ジアルキルピラゾリウム(dialkyle pyrazolium)、
○ アルキルピリジニウム、
○ テトラ-アルキルホスホニウム、
○ トリアルキルスルホニウム。
【0015】
最も関連することが多い陰イオンは、非局在化された荷電をもつ陰イオン、たとえば、BF4-、B(CN)4-、CH3BF3-、CH2CHBF3-、CF3BF3-、m-CnF2n+1BF3-、PF6-、CF3CO2-、CF3SO3-、N(SO2CF3)2-、N(COCF3)(SOCF3)-、N(CN)2-、C(CN)3-、SCN-、SeCN-、CuCl2-、AlCl4-その他のようなものである。
【0016】
イオン性液状電解質は次いで、溶媒の役割を演じるイオン性液体、およびリチウム塩のような導電性塩から構成される。
【0017】
本イオン性液状電解質は、電気化学的適用のすべての塩類において安全性の観点から関心を引き、それは、それらが、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、BMIBF4、およびLiBF4の混合物について、たとえば、最高450℃まで変動することができる大きな熱安定性を見せるからであり、それらは液相の広範囲をもち、それらは可燃性でなく、そしてそれらは非常に低い蒸気圧を有する。
【0018】
文献[1]は、室温でイオン性液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、およびフェロセン、テトラチアフルバレンまたはLiBF4を含む電解質を記載する。
【0019】
電解質において、文献[2]において記載されるように、慣習的な液状有機溶媒およびイオン性液体を組み合わせることは可能であり、それは、室温でイオン性液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートの、ガンマ-ブチロラクトンの、およびリチウムテトラフルオロボラートの混合物を含むリチウムイオン電池のための電解質に関する。
【0020】
文献[3]は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(BMIBF4)に基づく電解質の、およびスピネル電極を有するリチウムイオン電池での1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMIBF4)の使用に言及する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 734 047号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/068822号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】J. FULLER(フラー)ら、J. Electrochem. Soc.(ジャーナル・オブ・ザ・エレクトロケミカル・ソサエティー)、第144巻、第11号、1997年11月、3881-3886.
【非特許文献2】A. CHAGNES(シャグネス)ら、Journal of Power Sources(ジャーナル・オブ・パワー・ソース)、145(2005)、82-88.
【非特許文献3】E. MARKEVICH(マルケビチ)ら、Electrochemistry Communications(エレクトロケミストリー・コミュニケーションズ)8(2006)、1331-1334.
【非特許文献4】S-Y. LEE(リー)ら、J. Phys. Chem. (ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー)、B 2005、109、13663-13667
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、ある一定の問題および欠点の原点にある複雑な現象が、イオン性液体およびリチウム塩類のような導電性塩類の混合物を含む電解質の範囲内で起こる。
【0024】
このようにリチウム塩濃度が増加するとき、これはイオン伝導率の低下および粘性の増加によって達成される。さらに、これらの混合物においてリチウムの拡散係数は、リチウム塩含量の増加について減少する。実際、混合物の構造化が起こり、それはリチウムイオンの移動性を減らす。
【0025】
これらの電解質でのリチウムの拡散係数は、イオン性液体を作成する陽イオンのそれよりも少ない。したがって、リチウム陽イオンおよびイオン性液体の陽イオンの間での競合が存在する。イオン性液体の陽イオンは、負に帯電した電極の表面に、より一層速く達し、そして電極のインターカレーション物質中に挿入することができないリチウムイオンへの表面のアクセスをブロックする。そのために、電気化学反応は起こることができない。したがって、電解質を用いる電池の性能は影響を受ける。この現象は、文献[6]において論じられる。
【0026】
したがって、前述のことを考慮して、イオン性液体電解質、すなわち、溶媒の役割を演じるイオン性液体およびリチウム塩のような導電性塩を含む電解質の必要性が存在し、それは、電気化学的システムにおいて、適用され、用いられるとき、電気化学的反応およびその収率に悪影響を及ぼすことがない。
【0027】
とりわけ、イオン性液状電解質のための必要性が存在し、それは、それがアキュムレーターまたはバッテリーにおいて用いられるとき、たとえば、充電式リチウムアキュムレーターまたはリチウム二次電池のようなもので、その能力(容量)を低下させない。
【0028】
言い換えると、イオン性液状電解質の必要性が存在し、そして、それには使用の安全性に関して特にイオン性液状電解質のすべての長所をもつ一方で、リチウムイオンのようなイオンの移動性、リチウムイオンのようなイオンの拡散係数、そして従って、アキュムレーターの不十分な性能に関してはその欠点をもたない。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の目標はイオン性液体および導電性塩を含むイオン性液状電解質を提供することであり、それはとりわけ、上記のニーズを満たす。
【0030】
本発明の目標はさらに、先行技術のイオン性液状電解質の欠点、欠陥、制限および不利がなく、そして先行技術の問題を解決するイオン性液状電解質を提供することである。
【0031】
この目標、およびさらに他のものは、式C+A-、式中、C+は陽イオンを表し、およびA-は陰イオンを表す少なくとも1種のイオン性液体、および少なくとも1種の導電性塩を含むイオン性液状電解質であって、それがさらに少なくとも1種の陰イオン界面活性剤を含むという点で特徴付けられるイオン性液状電解質により本発明に従って達成される。
【0032】
陰イオン界面活性剤は、アルキルスルファート類およびアルキルアリールスルファート類、脂肪酸のナトリウム塩類のような石けん類、アルキルベンゼンスルホナート類(ABS)、アルコールスルファート類、アルキルスルファートアルコール類、ホスフェート(リン酸塩)類、カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロースガム類、およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0033】
好ましい陰イオン界面活性剤は、ドデシルスルファートナトリウム(SDS)のようなアルキルスルファート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびステアリン酸ナトリウムから選ばれる。
【0034】
本発明に従うイオン性液状電解質は、少なくとも1種の陰イオン界面活性剤だけを含むことができるが、しかし、それはさらに陽イオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および双性(両性)イオン界面活性剤から選ばれる陰イオン界面活性剤でない少なくとも1種の他の界面活性剤を更に含むことができる。
【0035】
ノニオン界面活性剤は、(ポリ)エトキシル化および/または(ポリ)プロポキシル化されたアルコール類および(特にC8-C9)アルキルフェノール類、多価アルコールエステル類、サッカロース(ショ糖)エステル類、脂肪族アルカノールアミド類、エチレンオキシド(酸化エチレン)/プロピレンオキシド(酸化プロピレン)共重合体およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0036】
好ましいノニオン界面活性剤は、トリトン(商標)〔Triton(R)〕X-100、その式は後述で与えられ、それはポリエトキシル化オクチルフェノール類であるような、トリトン(商標)〔TRITON(R)〕X、テルギトール(商標)〔Tergitol(R)〕L(DOW)で、それは酸化エチレン/酸化プロピレンの共重合体であり、およびテルギトール(商標)NP(DOW)で、それはポリエトキシル化アルキルフェノール類であり、より一層具体的にはポリエトキシル化ノニルフェノールのファミリーに属するものから選ばれる。
【0037】
本発明に従うイオン性液状電解質は、決して先行技術においてこれまで記載されていなかった。
【0038】
本発明に従うイオン性液状電解質は、それが陰イオン界面活性剤またはテンサイド(tensioactif、tenside)、表面活性剤を含むという点で先行技術のイオン性液状電解質と基本的に区別される。
【0039】
テンサイドは確かに、アキュムレーター、バッテリーの電極を念入りに作る際に、使われることが多いが、テンサイド、特に、液状電解質で、イオン性液状電解質においてはもちろん、陰イオンのテンサイドの使用は、これまで決して説明されなかったか、または提案されなかった。電極はイオン性電解質とは全体として異なる物質からなり、そして電極で起こされる問題はイオン性液状電解質において特に電解質で起こされる問題と共通点を何ももたない。
【0040】
驚くべきことに、イオン性液状電解質において陰イオン界面活性剤またはテンサイドを加えることは、少しの陰イオンのテンサイドも含んでない同じイオン性液状電解質と比較して、リチウム陽イオンのような導電性塩の陽イオンの移動性において、ならびにこの陽イオンの拡散係数の驚くべき増加に至ることが見出された。
【0041】
電気化学的システム、たとえば、アキュムレーターのパフォーマンス(性能)は、本発明に従う電解質を使用し、具体的には、それらが、何らの陰イオン性テンサイドを伴わない以外は類似した電解質を使用して、電気化学的システムの、たとえば、アキュムレーター、バッテリーのパフォーマンスと比較するときに、特に、実際的な容量に関して向上する。
【0042】
本発明に従う電解質は、これらの電解質を用い、特にアキュムレーター、バッテリーのような電気化学的装置のパフォーマンスの悪化について、先行技術のイオン性液状電解質の欠点がない。
【0043】
本発明に従う電解質は、先行技術のイオン性液状電解質において遭遇する問題に対する解法である一方、電解質であって、その溶媒が、イオン性液体であり、安全性、非引火性、および低い蒸気圧、その他について固有の利点を常にもつものを提供する。
【0044】
有利には、イオン性液体の陽イオンC+は有機陽イオンから選ばれる。
【0045】
このように、イオン性液体の陽イオンC+は、ヒドロキソニウム、オキソニウム、アンモニウム、アミジニウム、ホスホニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ホスホリウム(phospholium)、ホスホロリウム(phosphorolium)、ヨードニウム、カルボニウム陽イオン;ピリヂニウム(pyridinium)、キノリニウム、イソキノリニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム(pyrazolium)、イミダゾリニウム、トリアゾリウム(triazolium)、ピリダジニウム(pyridazinium)、ピリミジニウム(pyrimidinium)、ピロリジニウム(pyrrolidinium)、チアゾリウム、オキサゾリウム(oxazolium)、ピラジニウム(pyrazinium)、ピペラジニウム(piperazinium)、ピペリジニウム(piperidinium)、ピロリウム(pyrrolium)、ピリジニウム(pyrizinium)、インドリウム(indolium)、キノキサリニウム(quinoxalinium)、チオモルホリニウム、モルホリニウム、およびインドリニウム(indolinium)陽イオンのような複素環陽イオン;およびそれらの互変異性型から選ぶことができる。
【0046】
有利には、イオン性液体の陽イオンC+は、たとえば、レズ(les)ジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-アルキルイミダゾリウム類のような非置換または置換されたイミダゾリウム類、四級アンモニウム類、たとえば、ジアルキルピペリジニウム類(dialkylpiperidiniums)のような非置換または置換されたピペリジニウム類、たとえば、ジアルキルピロリジニウム類(dialkylpyrrolidiniums)のような非置換または置換されたピロリジニウム類、たとえば、ジアルキルピラゾリウム類(dialkylpyrazoliums)のような非置換または置換されたピラゾリウム類、たとえば、アルキルピリヂニウム類(alkylpyridiniums)のような非置換または置換されたピリヂニウム類、テトラアルキルホスホニウム類のようなホスホニウム、たとえば、トリアルキルスルホニウム類のようなスルホニウム類;および後者の互変異性型から選ばれる。
【0047】
好ましくは、イオン性液体の陽イオンC+は、たとえば、ジアルキルピペリジニウム類のようなピペリジニウム類、たとえば、4つのアルキル基を有する(portant、bearing)四級アンモニウム類のような四級アンモニウム類;たとえば、ジ-、トリ-、テトラ-、およびペンタ-アルキルイミダゾリウム類のような、ジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-置換されたイミダゾリウム類のようなイミダゾリウム類;および後者の互変異性型から選ばれる。
【0048】
イオン性液体の陰イオンA-は、たとえば、Cl-のようなハロゲン化物、BF4-、B(CN)4-、CH3BF3-、CH2CHBF3-、CF3BF3-、m−Cn2n+1BF3-で、式中、nが1≦n≦10である整数であるもの、PF6-、CF3CO2-、CF3SO3-、N(SO2CF3)2-、N(COCF3)(SOCF3)-、N(CN)2-、C(CN)3-、SCN-、SeCN-、CuCl2-、およびAlCl4-から選ぶことができる。
【0049】
イオン性液体の陰イオンA-は、好ましくは、BF4-およびTFSI-(N(SO2CF3)2-)から選ばれる。
【0050】
好ましいイオン性液体は、BF4-およびTFSI−(N(SO2CF3)2-)から選ばれる陰イオン-、ピペリジニウム類、四級アンモニウム類およびイミダゾリウム類から選ばれる陽イオンC+を含む。
【0051】
特に好ましいイオン性液体は、BMIBF4または1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(ホウ酸塩)である。
【0052】
有利には、導電性塩はリチウム塩類から選ばれる。
【0053】
このように、導電性塩は、LiPF6:リチウムヘキサフルオロホスフェート、LiBF4:リチウムテトラフルオロボラート、LiAsF6:リチウムヘキサフルオロアルセナート(ヒ酸塩)、LiClO4:リチウムパーコラート(過塩素酸リチウム)、LiBOB:リチウムビスオキサラトボラート(oxalatoborate)、LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミジド、一般式Li[N(SO2CnF2n+1)(SO2CmF2m+1)])の塩類で、式中、nおよびmは、いずれも同じか、または異なり、1および10の間で含まれる自然整数であり、たとえば、LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミジドのようなもの、またはLiN(CF3SO2)2、またはLiBeti:リチウムビス〔ペルフルオロエチルスルホニル(perfluoroethylsulfonyl)〕イミジド、LiODBF、LiB(C6H5)、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3 (LiTFSM)、およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0054】
好ましくは、導電性塩は、LiTFSI、LiPF6、LiFSI、LiBF4、およびそれらの混合物から選ばれる。
【0055】
本発明に従う電解質は、イオン性液体溶媒の1モル当たり0.001から0.5モルまでの陰イオン界面活性剤を含むことができる。
【0056】
有利には、本発明に従う電解質は、0.1から10モル/Lまでの導電性塩を含むことができる。
【0057】
本発明に従う電解質はさらに、電解質の技術において熟練する者によって伝統的に用いられるもののような少なくとも1種の有機塩を含むことができる。随意の有機溶媒は特に、電解質の粘性の低下を可能にする。
【0058】
しかし、本発明に従う電解質は、イオン性液体、導電性塩および界面活性剤だけから構成することができる。
【0059】
本発明に従う特に好ましいイオン性液状電解質は、1.6モル/LのLiPF6、イオン性液体溶媒BMIBF4およびSDSの等モル混合物において含む。
【0060】
本発明はまた、上述のようなイオン性液状電解質を含む、電気化学的デバイスまたはシステムに関する。
【0061】
この電気化学的システムは、とりわけ、上述のようなイオン性液状電解質、陽極、および陰極を含む、充電式電気化学的アキュムレーター(または二次電気化学的バッテリー)、たとえば、リチウムアキュムレーター(またはバッテリー)のようなものであってよい。
【0062】
アキュムレーター(または電池)は特にボタン電池セルの形状であることができる。
【0063】
本発明を次に、より一層具体的に、以下に続く記載において、実例として与え、そして制限としてではない、添付の図面を参照して説明し、その図面は以下のようなものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】電解質であって、本発明に従い、たとえば、例1において、または例2において調製される電解質のような、試験される電解質を含むボタン電池セルの形態における、アキュムレーター、電池の概略縦断面図である。
【0065】
この説明は一般的には、ある具体例に、より一層詳細に言及し、そこでは、イオン性液状電解質は、充電式リチウムアキュムレーター(リチウム二次電池)のイオン性液状電解質であるが、必要であるならば、任意の電気化学的デバイスまたはシステムにでも用いることができる任意のイオン性液状電解質にまで、このあとに続く説明が簡単に拡張されうることは十分明らかである。
【0066】
本発明に従うイオン性液状電解質は、溶媒の役割を演じる、少なくとも1種のイオン性液体で、式C+A-、式中、C+は陽イオンを表し、そしてA-は陰イオンを表すもの、少なくとも1種の導電性塩、およびさらに少なくとも1種の陰イオン界面活性剤を含む。
【0067】
少なくとも1種のイオン性液体によって、本発明に従う電解質が単一のイオン性液体を含むことができ、またはそれがこれらのイオン性液体のいくつかを含むことができ、それはたとえば、陽イオンの、および/またはそれを作っている陰イオンの性質によって異なるかもしれないことが意味される。
【0068】
また、少なくとも1種の導電性塩および少なくとも1種の陰イオン界面活性剤によって、本発明に従う電解質が、1種の単一の、またはいくつかの導電塩(群)および1種の単一の、またはいくつかの陰イオン界面活性剤(群)をそれぞれ含むことができることを意味する。
【0069】
本発明に従う電解質のイオン性液体は導電性塩のための溶媒の役割を演じる。《液体》によって概して、イオン性液体溶媒が0から200℃までの温度範囲において液体であること、そして、それが特に、室温、すなわち、15から30℃まで、好ましくは20から25℃までの近くで液体であることを意味する。
【0070】
イオン性液体の陽イオンC+のための選定についての制限はない。
【0071】
好ましくは、陽イオンC+は、有機陽イオン、特に《かさ高(バルキー)》な有機陽イオン、すなわち、重大な立体障害があることについて有機化学でのこの技術において熟練した者に知られている基を含む陽イオンから選ばれる。
【0072】
このように、イオン性液体の陽イオンC+は、ヒドロキソニウム、オキソニウム、アンモニウム、アミジニウム、ホスホニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ホスホリウム、ホスホロリウム、ヨードニウム、カルボニウム陽イオン;複素環陽イオン、およびこれらの陽イオンの互変異性型から選ぶことができる。
【0073】
複素環陽イオンによって、複素環、すなわち概して、N、O、P、およびSから選ばれる1種またはそれよりも多くの(いくつかの)ヘテロ原子(群)を含むサイクル(素環)から誘導される陽イオンが意味される。
【0074】
これらの複素環は、飽和したか、不飽和か、芳香族であってよく、そしてそれらはさらに、1種またはそれよりも多くの他の複素環および/または1種またはそれよりも多くの他の飽和したか、不飽和か、または芳香族の炭素サイクルと融合することができる。
【0075】
言い換えると、これらの複素環は単環式または多環式であることができる。
【0076】
これらの複素環はさらに、1種またはそれよりも多くの置換基で置換することができ、好ましくは、1から20個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキル基で、たとえば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチル基のようなもの;3から7個までのC(炭素)原子を有するシクロアルキル基;1から20個までの炭素原子を有する線形または分枝したアルケニル基;1から20個までの炭素原子を有する線状または分枝したアルキニル基;フェニル基のような6から10個までの炭素原子を有するアリール基;ベンジル基のようなアルキル(1から20個までのC原子)-アリール(6から10個までのC原子)の基から選ばれる。
【0077】
複素環陽イオンは、ピリジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、イミダゾリニウム、トリアゾリウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピロリジニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、ピラジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、ピローリウム、ピリジニウム、インドリウム、キノキサリニウム、チオモルホリニウム、モルホリニウム、およびインドリニウム陽イオンから選ぶことができる。
【0078】
これらの陽イオンは上で定められるように、随意に置換されてよい。
【0079】
複素環陽イオンもまた、後者の互変異性型を含む。
【0080】
本発明に従う電解質のイオン性液体溶媒の陽イオンC+を形成することができる複素環陽イオンの例は、以下に挙げられる。
【化1】
【化2】
【0081】
これらの式において、R1、R2、R3およびR4の基は、互いに独立に、水素原子、または好ましくはすでに上記した基、特に、1から20個までのC(炭素)原子を有する線状または分枝したアルキル基から選ばれる置換基を表す。
【0082】
イオン性液体の多様性は、多数の電解質を調製することが可能なようなものである。しかし、イオン性液体のファミリーは、特にここで、より一層詳しく標的にされる適用のためにより一層関心が引かれる。イオン性液体のこれらのファミリーは、用いられるC+陽イオンのタイプによって規定される。
【0083】
このように、好ましくは、本発明に従う電解質のイオン性液体のC+陽イオンは、たとえば、ジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-アルキルイミダゾリウム類のような非置換または置換されたイミダゾリウム類、四級アンモニウム類、たとえば、ジアルキルピペリジニウム類のような非置換または置換されたピペリジニウム類、たとえば、ジアルキルピロリジニウム類のような非置換または置換されたピロリジニウム類、非置換または置換されたピラゾリウム類、ジアルキルピラゾリウム類、たとえば、アルキルピリヂニウム類のような非置換または置換されたピリヂニウム類、ホスホニウム類、テトラアルキルホスホニウム類、およびたとえば、トリアルキルスルホニウム類のようなスルホニウム類から選ばれる。
【0084】
好ましくは、イオン性液体のC+陽イオンは、たとえば、ジアルキルピペリジニウム類のようなピペリジニウム類、たとえば、4つのアルキル基を有する四級アンモニウム類のような四級アンモニウム類;およびイミダゾリウム類で、ジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-アルキルイミダゾリウム類のようなジ-、トリ-、テトラ-、およびペンタ-置換されたイミダゾリウム類のようなものから選ばれる。
【0085】
すでに上記に特定したように、アルキル基は、1から20個までのC原子を有し、そして線状または分枝されていてよい。
【0086】
これらの陽イオン中、ジアルキルピペリジニウム類、4つのアルキル基を有する四級アンモニウム、およびジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-アルキルイミダゾリウム類が特別に好ましい。しかしながら、イミダゾリウム陽イオンについては、ジ-およびトリ-置換されたイミダゾリウム類は、より一層良好な物理化学的、および電気化学的な特性を有し、そしてそのためにさらにより一層好ましい。
【0087】
これらの好適な陽イオンを選定したが、それはイミダゾリウム陽イオンが最も低い粘性だけでなく、最大のイオン伝導度(伝導率)を有するからである。ピペリジニウム陽イオンはそれ自体で、非常に高い電気化学的安定性および平均イオン伝導度および粘性を見せる。最終的に、四級アンモニウムは電気化学的に非常に安定であるが、非常に低いイオン伝導度をもつ。
【0088】
また、イオン性液体の陰イオンA-の選定に関し制限はない。
【0089】
好ましくは、イオン性液体の陰イオンA-は、たとえば、Cl-のようなハロゲン化物、BF4-、B(CN)4-、CH3BF3-、CH2CHBF3-、CF3BF3-、m−Cn2n+1BF3-(式中、nは1≦n≦10である整数である)、PF6-、CF3CO2-、CF3SO3-、N(SO2CF3)2-、N(COCF3)(SOCF3)-、N(CN)2-、C(CN)3-、SCN-、SeCN-、CuCl2-、およびAlCl4-から選ばれる。
【0090】
より一層好ましい陰イオンは、陰イオンBF4-およびTFSI-(N(SO2CF3)2-)である。
【0091】
これらの陰イオンは実際に、イオン伝導度での増加および粘性での減少を許す。さらに、陰イオンTFSI-は、高電圧でわずかにではあるがより一層安定である。しかし、他の陰イオンを選んでよいことは、十分に明らかである。
【0092】
本発明に従うイオン性液体のためのより一層好ましいイオン性液体は、陰イオンとして、陰イオンBF4-またはTFSI-(N(SO2CF3)2-)、および陽イオンとして、ピペリジニウム、四級アンモニウムまたはイミダゾリウム陽イオンを含む。そのような陰イオンの、およびそのような陽イオンの連関は、著しく有利な特性をイオン性液状電解質に与える。
【0093】
本発明に従うイオン性液状電解質において用いるのに大いによく適したイオン性液体は、BMIBF4または1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートである。
【0094】
イオン性液体の他の例は、文献[4]および[5]において挙げられ、その記載について言及することができる。
【0095】
本発明に従うイオン性液状電解質の導電性塩の選定に関して制限は存在しない。
【0096】
導電性塩は、特に本発明に従うイオン性液状電解質が充電式のリチウムまたはリチウムイオンアキュムレーター(リチウムまたはリチウムイオン二次バッテリー)の電解質である場合には、リチウム塩が好ましい。
【0097】
このリチウム塩は、LiPF6:リチウムヘキサフルオロホスフェート、LiBF4:リチウムテトラフルオロボラート、LiAsF6:リチウムヘキサフルオロアルセナート、LiClO4:リチウムパーコラート、LiBOB:リチウムビスオキサラトボラート、LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミジド、一般式Li[N(SO2CnF2n+1)(SO2CmF2m+1)]の塩類で、式中、nおよびmは、同じか、または異なるかのいずれかであり、1および10の間で含まれる自然整数であり、たとえば、LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミジドのようなもの、または(ou)LiN(CF3SO2)2、またはLiBeti:リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミジド、LiODBF、LiB(C6H5)、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3 (LiTFSM)、およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0098】
イオン性液体に添加されるリチウム塩類は、選択的に次の順である。
○ 第1:LiTFSI、
○ 第2:LiPF6
○ 第3:LiFSI、
○ 第4:LiBF4
【0099】
実際に、最良のイオン伝導度はこれらの塩類について得られ、そしてさらにLiTFSIを用い、粘性は最も低い。
【0100】
イオン性液体における導電性塩類(群)の合計濃度は、イオン性液体溶媒の1リッターあたり、0.1モル/lから、選定したイオン液体溶媒におけるそれらの溶解度の制限までの間で含まれ、好ましくは、それは0.1から10モル/lまでである。
【0101】
陰イオン界面活性剤は、本発明に従う電解質の本質的な基本的構成要素と考えることができ、それはこの構成要素が本発明に従う電解質を先行技術の電解質から区別するものであり、そしてこの界面活性剤が本発明に従う電解質の驚くべき、そして有利な特性の原点にあるからである。
【0102】
まず第一に界面活性剤がまた、分散剤、湿潤剤と称されることが思い出され、さもなければ、テンサイドは、両親媒性の特性を有する化学物質、すなわち、それには異なる極性の次の2つの部分をもつ。
○ 無極の、‘脂肪’物質(炭素鎖をもつ)を保持する脂溶性部分、
○ 極性の親水性部分。
【0103】
概して、これらの分散剤は、分散の創設を可能にする水のような親水性溶液に含まれる疎水性(または親油性)粒子が固定される可能性を与える。さらに、それらは自由エネルギーを低下させるため、それらは表面の相互作用が減らされる可能性を与える。
【0104】
4種類の界面活性剤類またはテンサイド類が存在する。
○ 陰イオン性テンサイド類で、分子の親水性の極性部分が負に帯電するもの、
○ 陽イオン性テンサイド類で、親水性部分が正に帯電するもの、
○ 両性イオン性または両性のテンサイド類で、正および負の電荷を有し、極性部分の全体的な電荷はゼロであるもの、
○ ノニオン性テンサイド類で、分子は正味の電荷を含まないもの。
【0105】
界面活性剤、テンサイドは、本発明に従うイオン性液状電解質において用いられるもので、陰イオン性テンサイドである。
【0106】
しかし、本発明に従うイオン性液状電解質は、1種またはそれよりも多くの(いくつかの)陰イオン界面活性剤(群)に加えて、さらに、陰イオン界面活性剤(群)でなく、そして陽イオン、非イオンおよび双性イオン性の界面活性剤から選ばれる、1種またはそれよりも多くの界面活性剤を含むことができる。
【0107】
イオン性液体は、多数の分子内および分子間の相互作用が起こる特定の溶媒であり、たとえば、クーロン力の(静電気的な)相互作用、双極子間相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、その他のものであり、およびどんな理論にも拘束される意図ではないが、本発明者は、陰イオン界面活性剤を、イオン性液体溶媒を含むイオン性液状電解質に加えることによって、以下の2つの作用を達成することが可能であることを示した。
○ 第1の作用は導電性塩、たとえば、リチウムイオンのようなものの陽イオンのまわりの複雑な構造の立体障害を減らすことであり、それでそれによってリチウム陽イオンのようなこの陽イオンの移動性を増やすことであり、
○ 第2の作用は、それをかさ高な負に帯電する分子と関連させることによってイオン性液体の陽イオンを捕捉することであり、それと共にそれがクーロン力の相互作用によって組み合わされ、それによってその拡散係数、そしてそのため、媒体でのその移動性の縮小が引き起こされる。
【0108】
陰イオン界面活性剤の、そして随意のノニオン界面活性剤の作用のモード(様態)を、以下に特定する。
【0109】
陰イオン界面活性剤は、アルキルスルファート類およびアルキルアリールスルファート類、脂肪酸のナトリウム塩類のような石けん類、アルキルベンゼンスルホナート(ABS)類、アルコールスルファート類、アルコールアルキルスルファート類、ホスフェート類、カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロースガム類、およびそれらの混合物から選ぶことができる。好ましくは、それは、アルキルスルファート類、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で、またラウリル硫酸ナトリウムとも称される化学式NaC12H25SO4のもの(下記の式I)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(下記の式II)のような、一般に1から20個までの炭素原子を含むそのアルキル基から選ばれる。
【化3】
【0110】
随意のノニオン界面活性剤は、(ポリ)エトキシル化および/または(ポリ)プロポキシル化されたアルコール類および(特にC8-C9の)アルキルフェノール類、ポリオールエステル類、サッカロースエステル類、脂肪族アルカノールアミド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー、およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0111】
好ましい随意のノニオン界面活性剤は、トリトン(商標)〔Triton(R)〕X-100のようなトリトン(商標)〔TRITON(R)〕X、その式は下記に与えられ、それはポリエトキシル化オクチルフェノール類であるもの、テルギトール(商標)〔Tergitol(R)〕L(DOW)で、それはエチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー類であり、また「ポリエーテルポリオール類」と称されるもの、およびテルギトール(商標)NP(DOW)で、ポリエトキシル化アルキルフェノール類に、より一層具体的には、ポリエトキシル化ノニルフェノール類のファミリーに属し、そしてまた「エトキシル化ノニルフェノール類」とも称されるものから選ばれる。
【0112】
トリトン(R)X-100は、式IIIで近似し、式中、nは9または10を表す。トリトン(R)X-100は特に、Sigma Aldrich(R)(シグマアルドリッチ)から入手可能である。
【化4】
【0113】
本発明に従う電解質は一般に、イオン性液体溶媒の1モルあたり0.001から0.5モルまでの陰イオン界面活性剤を含む。
【0114】
このように、加えられる界面活性剤のモルの数は、イオン性液体溶媒のモルの数の半分より少なくてよい。しかし、たとえば、0.01から0.1までのより一層少ない量を加えることができる。
【0115】
陰イオン界面活性剤をイオン性液状電解質に加えることによって、イオン性液状電解質内の電荷キャリヤ(担体)の数が増加し、それは溶液において異なるイオン間の競合のための妨害でありうる。しかし、陰イオン界面活性剤は通常、小さな陽イオンと関連したかさ高な陰イオン分子を構成する。クーロン力の相互作用は、イオン性液体の陽イオンとそれらの連関を引き起こす界面活性剤の陰イオンとの間で起こる。したがって、イオン対を創り出すことが、イオン性液体の陽イオンと、イオン液体の陽イオンを減速し、捕捉する結果をもつ界面活性剤の陰イオンとの間に存在し、それは初期に、リチウム陽イオンのような導電性塩の陽イオンの移動性よりも高い移動性をもつ。
【0116】
イオン性液体の陽イオンは次いで、あまり迅速には溶媒中に拡がらない。それはもはや、負に帯電した電極の表面に停滞せず、それに向けてリチウム陽イオンが拡散せず、そして電流が貫流することを確実にするためにその中にそれが挿入されなければならない。そのために、双方の陽イオン間の競合は減らされる。
【0117】
イオン性液体の、およびリチウム塩のような溶質の混合物においてノニオン界面活性剤を随意に加えることによって、ミセルが形成されえ、それがイオン性液体の溶媒和力を制限する。このように、イオン性液体において溶解されるリチウムイオンのようなイオンは、界面活性剤の添加によって減らされたその溶媒和層を有する。実際には、溶媒の分子の数、すなわち、イオン液体の陰イオンおよび陽イオンの数は、リチウム陽イオンのような陽イオンのまわりで、より一層小さく、そのためにその立体障害が減らされる。リチウム陽イオンのような陽イオンの移動性は、その拡散係数と同様に増加し、そしてアキュムレーター、バッテリーのような、イオン性液状電解質を含むデバイス、電気化学的システムの性能は実際的な容量に関して向上する。
【0118】
さらに、リチウムおよびその溶媒和の球体(スフェア)によって占められる実際の容積(ボリューム)がより一層小さいので、その後電極物質への挿入は促され、そして電極における電子交換はより一層速い。
【0119】
また、リチウム陽イオンのような陽イオンのまわりで溶媒和層がより一層大きいと、その挿入の間、電極物質を劣化させる危険がより一層大きく、次いで電極の効率が減少し、そしてそのために、アキュムレーターの性能が減少する。したがって、溶媒和層を減らすことは、電極の構造の劣化の危険性を最小にする。
【0120】
最終的に、陰イオン界面活性剤および随意のノニオン界面活性剤は、陰極の不動態化層上に作用する。界面活性剤の存在下に、この層は、より一層薄く、そしてより一層均質であり、樹枝状結晶の形成が制限され、そしてそのために短絡の危険が減らされる。
【0121】
さらに、一般に、陰イオン界面活性剤、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)をイオン性液状電解質に加えることは、イオン性液状電解質においてイオン伝導度を減らす結果を有することが注目された。
【0122】
イオン伝導度におけるこの減少は不利な条件であるように思われるかもしれない。しかし、この減少にもかかわらず、そして驚くべきことに、アキュムレーター、バッテリーのサイクリング性能は、陰イオン界面活性剤を伴う液状電解質を含むことで高められ、そして、アキュムレーター、バッテリーの実際的な容量はより一層良好である。
【0123】
実際には、5%の容量増加は、陰イオン界面活性剤添加物を伴う電解質のための最初のサイクルにわたって観察され;さらに、何らの界面活性剤もないシステムと比べ、第1のサイクルにおいて、より一層少ない不可逆的容量しかない。
【0124】
さらに、SDSのような陰イオン界面活性剤を加えることは、電解質の構造化によって、およびその粘性における増加によって付随して起こる。
【0125】
実際、イオン性液状電解質ゲルが形成される。これは、電解質の容積において相互作用が存在するということを証明する。
【0126】
まとめると、本発明に従うイオン性電解質には、特に以下の利点があると述べることができる。
○ 添加物としての陰イオン界面活性剤を有するイオン性液状電解質では、何らの陰イオン界面活性剤添加物を伴わないイオン性液状電解質が含まれるアキュムレーターと比較して、アキュムレーターの実際上の性能を高めることが可能である。
○ 本発明に従う電解質は、溶液において非有機的なイオンの溶媒和における減少が許容される。
○ 電解質は、インターカレーション物質においてリチウムの挿入を促進する。
○ 本発明に従う電解質は、高温で安定であり、そしてそのために、60℃よりも十分に高い温度で用いることができる。
○ 電解質はリチウム陽イオンの拡散を促す。
【0127】
本発明に従う電解質は、イオン性液体導電性塩および界面活性剤含むだけでよく、言い換えると、本発明に従う電解質は、イオン性液体導電性塩陰イオン界面活性剤および随意に他のもの(非アニオン)界面活性剤から構成されうる
【0128】
本発明に従う電解質はさらに、有機溶剤のような他の成分を含むことができる。たとえば、本発明に従うイオン性液状電解質はさらに、特に電解質の粘性を低下させるため、電解質の質量の5から20質量%までの割合で、1種またはそれよりも多くの、《標準的な》、慣習的な、有機溶媒(すなわち、イオン性液体でない溶媒)、たとえば、炭酸塩のような、電解質において目下用いられる溶媒のようなものを含むことができる。
【0129】
上述のイオン性液状電解質は、電解質を用いたどんな電気化学的システムででも用いることができる。
【0130】
この電気化学的システムは、特にそのようなリチウムアキュムレーターまたはバッテリーのような非水性電解質を伴う充電式電気化学的アキュムレーター(二次電気化学的バッテリー)であることができ、それは、上記に規定されたイオン性液状電解質に加えて、陽極および陰極を含む。
【0131】
電極は、結合剤で、それは一般に、有機ポリマー(有機重合体)であるもの、陽極または陰極の電気化学的に活性な物質(電気化学的な活物質)、随意に1種またはそれよりも多くの電子導電性添加物、および電流コレクター(集電装置)を含む。
【0132】
陽極において、電気化学的な活物質は、本明細書においてすでに上記した化合物から、およびLiCoO2;好ましくは、Al、Ti、Mg、NiおよびMnでの置換によって得られる、LiCoO2に由来する化合物、たとえばLiAlxNiyCo(1-x-y)O2、式中、x<0.5およびy<1、LiNixMnxCo1-2xO2;LiMn2O4;LiNiO2;好ましくは、Al、NiおよびCoでの置換によって得られるLiMn2O4に由来する化合物;LiMnO2;好ましくは、Al、Ni、Co、Fe、CrおよびCuでの置換によって得られるLiMnO2に由来する化合物、たとえば、LiNi0.5O2;かんらん石類LiFePO4、Li2FeSiO4、LiMnPO4、LiCoPO4;水和したか、またはそうでないかのいずれかのリン酸鉄および硫酸鉄;LiFe2(PO4)3;水和したか、またはそうでないかのいずれかのリン酸バナジルおよび硫酸バナジル、たとえば、VOSO4およびLixVOPO4;nH2O(0<x<3、0<n<2);Li(1+x)V3O8、0<x<4;LixV2O5、nH2Oで、0<x<3および0<n<2を有するもの;およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0133】
陰極において、電気化学的な活物質は、本明細書ですでに上記した化合物から、およびたとえば、自然な、または合成の黒鉛および、不規則なカーボンのような炭素質化合物;M=Sn、Sb、Siを有するタイプLixMのリチウム合金;0<x<13を有するLixCu6Sn5化合物;ホウ酸鉄;可逆的に分解可能な単純酸化物、たとえばCoO、Co2O3、Fe2O3;プニッカーズ(pnicures)、たとえば、Li(3-x-y)CoyN、Li(3-x-y)FeyN、LixMnP4、LixFeP2;LixFeSb2;および挿入酸化物で、チタン酸塩、たとえば、TiO2、Li4Ti5O12、LixNiP2、LixNiP3、MoO3およびWO3のようなもの、およびそれらの混合物、またはこの技術の分野でこの技術において熟練した者に知られる任意の物質から選ぶことができる。
【0134】
随意の電子導電性添加物は、金属粒子、たとえば、Ag粒子のような金属粒子、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノワイヤー、カーボンナノチューブおよび電子伝導ポリマー、およびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0135】
電流コレクターは通例、陰極のための銅にあり、または陽極のためのアルミニウムにある。
【0136】
アキュムレーターは特に、ボタン電池セルの形状をもつことができる。
【0137】
ボタン電池セルの異なる要素は、ステンレス鋼316Lで、図1中で記述される。
【0138】
これらの要素は、以下のものである。
− ステンレス鋼ケースの上側部分(5)および下側部分(6)、
− ポリプロピレンガスケット(8)、
− ステンレス鋼シム、スキッド(4)で、それらは双方とも、随意に金属リチウムを切断するために、そして次いでしかる後に電流コレクターと電池セルの外側部分との良好な接触を確かにするために用い、
− スプリング(7)で、それはすべての要素の間の接触を確かにし、
− 微小孔性セパレーター(2)、
− 電極(1)(3)。
【実施例】
【0139】
本発明を次に、以下の例に関し、実例として与え、そして制限するものとしてではなく説明する。
例:
【0140】
イオン性液体、リチウム塩および陰イオン界面活性剤を含む本発明に従う電解質を調製する。
○ イオン性液体は、BMIBF4すなわち1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートである。
○ リチウム塩は、LiPF6すなわちリチウムヘキサフルオロホスフェートである。
○ 界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムすなわちSDSである。
【0141】
電解質は、イオン性液体溶媒BMIBF4およびSDSの等モル混合物において、1.6モル/lのLiPF6溶解することによって作る。
【0142】
例において上記のように調製された電解質を次に、ボタン電池セルにおいて試験した。
【0143】
何らの陰イオン界面活性剤も伴わない同じ電解質を、同じ状況の下で試験した。
【0144】
各々のボタン電池セルを、同じ手順で慎重に観察しながら取り付ける。以下のアイテムはそれらによってセルのケースの底から積み重ねられ、これは図1に示されるようなものである。
− 陰極(1)φ14mm、これがこれらのテストのための電極であり、その活物質はLi4Ti5O12であるが、特に、非水性媒体にて陰極のために、この技術において用いられる標準的、慣習的、活物質の間で選ばれる任意の他の陰極活物質も用いることができた;
− 例で調製されるような電解質またはその他ではどんな陰イオン界面活性剤も伴わない電解質の200μl;
− ポリオレフィンにおいての微小孔性膜、より一層具体的にはポリプロピレンCelgard(c)(セルガード商標)(2)φ16.5mmでの微小孔性膜であるセパレーター;
− 陽極で、その活物質はLiNi0.5Mn1.5O4であるが、リチウムの、または特に、非水性媒体にて陽極のために、この技術において用いられる標準的、慣習的、活物質の間で選ばれる任意の他のタイプの陽極活物質のディスクも用いることができた;
− ステンレス鋼ディスクまたはシム、スキッド(4)、
− ステンレス鋼リッド(ふた)(5)およびステンレス鋼での底部(6)
− ステンレス鋼スプリング(7)およびポリプロピレンガスケット、ジョイント(8)。
【0145】
ステンレス鋼ケースは次に、型押し付け機を用いて閉じられ、それが完全に気密にされる。バッテリーが使用可能かどうか調べるために、その後半は、浮遊電圧を測ることによってチェックする。
【0146】
リチウムの、そしてその塩類の、酸素と水への強い反応性のため、ボタン電池セルを組み立てるのは、グローブボックスにおいて実行する。わずかに過度の圧力を用い、後者を無水アルゴン雰囲気下に維持する。センサーは、酸素と水の濃度の連続モニタリングを可能にする。典型的に、これらの濃度は、1ppm未満のままでなければならない。
【0147】
本例において調製された電解質およびいずれの陰イオン界面活性剤も含まない電解質を、上述の手順によってボタンセルに組み込み、サイクリング運転を、すなわち、電池の実用容量を評価するために、異なる動作状況の下で、一定の電流での充電および放電の操作を20サイクルについて受けさせる。
【0148】
ボタン電池セルを作製してから、それをバッテリーの実用容量を評価するために20サイクルについての異なる動作状況の下で一定の電流での充電および放電の操作を受けさせる。
【0149】
容量での5%の増加は、陰イオン界面活性剤の添加物を伴う電解質のための最初のサイクルにわたって観察されたが、さらに、どんな界面活性剤も伴わないシステムと比較して、より一層少ない不可逆容量が最初のサイクルに存在する。
【0150】
参考文献
[1] J. FULLER(フラー)ら、J. Electrochem. Soc.(ジャーナル・オブ・ザ・エレクトロケミカル・ソサエティー)、第144巻、第11号、1997年11月、3881-3886.
[2] A. CHAGNES(シャグネス)ら、Journal of Power Sources(ジャーナル・オブ・パワー・ソース)、145(2005)、82-88.
[3] E. MARKEVICH(マルケビチ)ら、Electrochemistry Communications(エレクトロケミストリー・コミュニケーションズ)8(2006)、1331-1334.
[4] EP-A1-1 734 047
[5] WO-A2-2007/068822
[6] S-Y. LEE(リー)ら、J. Phys. Chem. (ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー)、B 2005、109、13663-13667。
図1