(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザがコネクションを有する他のユーザとの間でコミュニケーションを行うことが可能なSNSにより、情報提供側の複数の組織と、情報受取側の複数の組織との間で、情報の開示や参照とコミュニケーションを行うことが可能なコミュニケーションシステムであって、
組織に属する個人を表すユーザに加え、組織自体、およびこれに属する組織、さらに組織において取り扱われ、情報の開示や参照とコミュニケーションの対象となり得るものを表すユーザがそれぞれ登録され、前記各ユーザの間の階層構造に係る情報を保持し、前記各ユーザに対してそれぞれ認証処理を行い、情報提供側の組織に係る各ユーザがそれぞれ独自に開示する情報を、所定の統一した形式によって情報受取側の組織に係るユーザに対して提供することを特徴とするコミュニケーションシステム。
【背景技術】
【0002】
例えば金融のマーケットの分野では、資金需要がある企業等がIR(Investor Relations)活動として当該企業についての経営状況や財務状況、業績などの各種情報を提供・開示し、これらの企業に対して投資などを行う投資家(企業や組織として大口投資を行う機関投資家や、個人・一般投資家など)が、開示された情報等を参照し、分析しながら投資先(銘柄)を決定し、投資するということが行われている。
【0003】
ここで、企業側、とくに中・小型銘柄企業等の知名度が高くない企業にとっては、例えばファンドの運用会社などの機関投資家に投資してもらうために、まずはいかに認知してもらうかということが大きな課題となる。中・小型銘柄企業等にとっては、中長期の安定した経営を実現するためには、中長期で投資を行なっている機関投資家に一定の株式等を保有してもらうのが望ましい。しかしながら、これらの企業は、機関投資家に振り向いてもらえない場合が多く、結局は個人・一般投資家に頼ることになる場合も多い。このような企業側としては、運用会社などの機関投資家に向けて、IR活動としてそもそもどのような情報を提供・開示すればよいのかが分からないという状況や、IR活動に割ける人員がほとんどおらず、手が回らないというような状況がある。
【0004】
一方で、機関投資家側にとっては、将来大化けするような企業を見つけ出したいという希望はあるものの、大型銘柄に比べて、中・小型銘柄企業の基本的な投資情報が絶対的に不足していることや、セルサイド・アナリストのカバーする銘柄数が減少していること、長期投資に不可欠の非財務情報(例えば、成長性やリスク、ESG(環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))等の情報)の入手が困難であることなどから、潜在的な投資対象となる企業を見つけ出すことが難しいという状況がある。
【0005】
また、決算説明資料や中期経営計画、CSR(Corporate Social Responsibility)/ESG報告書など、企業がIR活動として任意に開示する任意開示情報については、各社独自の体裁やフォーマットに従って公表されており、また、定性表現によるものが多いため、機関投資家はこれらの内容を都度読み取った上で、必要とする情報を抽出しなければならず、作業が煩雑になっているという状況がある。
【0006】
このように、企業と機関投資家との間には、情報の提供・開示と参照・利用という観点でギャップが存在する。そこで、企業(IR部門)と機関投資家との間を結ぶ情報提供・コミュニケーションの基盤としての仕組みが必要となってくる。ここでは、単に企業が経営状況や財務状況などの情報を提供・開示し、これを機関投資家等が参照することができる、というだけではなく、双方がアプローチする対象となる相手を効果的にスクリーニングすることができ、さらに、これらの相手とのメッセージ等のやり取りや、説明会等のアポイントメント取得などのコンタクトを容易にとることができるコミュニケーションの仕組みが望まれる。
【0007】
このような多数の参加者(企業や機関投資家)による情報提供とコミュニケーションの仕組みを提供するに際しては、近年広く普及してきたSNS(Social Networking Service)の仕組みを用いることが考えられる。
【0008】
例えば、特開2010−26602号公報(特許文献1)には、インターネットを介して利用者に企業情報を提供する企業情報提供サービスシステムにおいて、SNSを利用し、社名、電話番号等の基本情報に加えて電子メールアドレス等の独自の付属情報を含む各種の企業情報を収集する情報収集手段と、少なくとも電話帳に掲載されている各企業に固有の識別コードを付与する識別コード付与手段と、該識別コードと前記企業情報とを当該企業ごとに対応付けて格納する企業情報用データベースと、該企業情報用データベースに格納された企業情報を随時更新する更新手段とを備え、最新の各種企業情報を一元的に統合管理できるように構成した企業情報提供サービスシステムが記載されている。これにより、対象企業数及び企業情報量を豊富にし、最新の企業情報を随時更新して情報内容の信頼度を高めることが可能となっている。
【0009】
また、例えば、特開2008−46911号公報(特許文献2)には、ユーザが使用するユーザ端末装置、および管理者が使用する管理者端末装置とが、それぞれネットワークを介してデータセンタに接続されたSNSなどのコミュニティシステムにおいて、データセンタが備える管理者用アプリケーションサーバは、ユーザが所属する1つもしくは複数のグループをデータベースに登録し少なくともサービス利用権限もしくは制約を管理し、管理者は、任意のグループを対象として、そのグループおよび所属ユーザに対してニュースやメッセージの送信、広告の配信、物品販売の申出等様々な行動をとることができるシステムが記載されている。これにより、双方向型コミュニケーションサービスを利用するユーザを、実社会と同様に何らかのグループに所属させ、またそれらのグループを適切に管理することで様々なビジネスを行うことを支援することが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、上記の特許文献1に記載された技術では、SNSを利用することで、会員である企業自身が企業情報を公開して他の利用者に利用できる機能、および企業に関する取引実績の評価情報を会員で共有する機能を有し、さらに、各会員による評価情報または口コミ情報を書き込むための電子掲示板等の書込み手段を備えることで、書込み手段で告知された内容によって、利用者は特定の取引先企業に関する評価情報や信用情報を得ることができる。
【0012】
これらの各種企業情報には、取引先企業に関する業界(予測)のニュース、事業広告または求人広告、事業・財務に係る情報(予想、修正、報告)が含まれ、金融業、製造業などの産業分野毎または業種毎に、これらの情報の更新日時や、利用者がこれらの情報を検索する際に入力された条件(例えば、社名や本社所在地など)等の情報がグループウェアにて共有される。従って、取引先企業の商取引状況および業界の動向を把握して今後の商取引に役立てることができる。
【0013】
一方、上記の特許文献2に記載された技術では、SNSなどの双方向型コミュニケーションサービスを、会員が実際に所属する組織等のリアルコミュニティに適合させやすくするだけでなく、サービス提供者(管理者)が、グループ毎の権限に応じてサービスの利用範囲制限を行い、さらには、各グループ単位のユーザに対してサービスに関する各種行動(広告や物品販売等)を実施するなど、管理者がグループ毎のユーザに対して様々なビジネスを行うことが可能となる。
【0014】
しかしながら、いずれの従来技術も、SNSの利用ユーザという観点では、企業自体がユーザとなることが可能であるものの、その場合のユーザの階層構造(例えば、あるユーザはある組織に属しており、その組織はある企業に属している等)は適切に表現することはできない。ユーザをグループという形でカテゴライズすることで、各ユーザに対する均一なサービスを、グループ毎に異なるものにすることは可能であるが、この場合もやはりユーザの階層構造を適切に表現することはできない。
【0015】
例えば、企業としては、アプローチする機関投資家を選定するために、機関投資家単位で検索したい場合もあれば、当該機関投資家が取り扱うファンド単位で検索したい場合もあり、さらに、当該ファンドを取り扱うファンドマネージャーやアナリスト単位で検索したい場合もある。このように、単にユーザの属性だけではなくその階層構造も含めて管理されていなければ、このようなニーズに対応することはできず、単にユーザをグループ化することが可能である、というだけでは実現することができない。
【0016】
そこで本発明の目的は、SNSを利用して、情報の提供側(例えば企業)と受取側(例えば機関投資家)で属性が非対称であるような企業等の組織間における、ユーザの階層構造を考慮した情報提供および開示とコミュニケーションを支援するコミュニケーションシステムを提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0018】
本発明の代表的な実施の形態によるコミュニケーションシステムは、ユーザがコネクションを有する他のユーザとの間でコミュニケーションを行うことが可能なSNSにより、情報提供側の複数の組織と、情報受取側の複数の組織との間で、情報の開示や参照とコミュニケーションを行うことが可能なコミュニケーションシステムであって、組織に属する個人を表すユーザに加え、組織自体、およびこれに属する組織、さらに組織において取り扱われ、情報の開示や参照とコミュニケーションの対象となり得るものを表すユーザがそれぞれ登録され、前記各ユーザの間の階層構造に係る情報を保持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、SNSを利用して、情報の提供側(企業)と受取側(機関投資家)で属性が非対称であるような企業等の組織間における、ユーザの階層構造を考慮した情報提供および開示とコミュニケーションを支援することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
本発明の一実施の形態であるコミュニケーションシステムは、例えば、金融のマーケットにおいて、投資の対象となり得る企業と機関投資家のように、情報の提供側と受取側でユーザの属性が非対称である(異なる)ような企業等の組織間における情報の提供・開示とコミュニケーションをSNSの仕組みを利用して実現するシステムである。これにより、企業と機関投資家との間の情報の提供・開示やコミュニケーションにおけるギャップの解消を支援するための基盤もしくは「場」を提供する。
【0024】
本システムにおけるユーザの概念には、それぞれの組織に所属する自然人だけではなく、例えば、組織自体や、これに属する部署等の下位組織、機関投資家が取り扱うファンドなど、自然人ではないが情報の提供・開示やコミュニケーションの対象となり得るエンティティも含まれる。これらのユーザは、情報の提供側と受取側でそれぞれ非対称の(異なる)階層構造を有することが可能なように管理される。なお、本実施の形態では、情報の提供側や受取側のユーザとして企業と機関投資家を挙げているが、例えば、セルサイド・アナリストやバイサイド・アナリストなどの他のカテゴリの組織についても取り扱えるようにしてもよい。
【0025】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるコミュニケーションシステムの構成例について概要を示した図である。コミュニケーションシステム1は、SNSを利用して情報の提供側である企業と情報の受取側である機関投資家との間における情報の提供・開示とコミュニケーションの機能を提供するサーバシステムである企業情報ハブサーバ10を有する。この企業情報ハブサーバ10に対して、図示しないインターネット等のネットワークを介して、企業のユーザが利用する情報処理端末である企業ユーザ端末41と、機関投資家のユーザが利用する情報処理端末である投資家ユーザ端末42が接続可能な構成を有する。
【0026】
また、企業情報ハブサーバ10は、インターネット等のネットワークを介してニュース等の各種情報を一般に公開する外部ベンダーのWebサイト等の外部ベンダーシステム20や、企業が登録した法定の開示情報や他の任意の開示情報などをネットワークを介して参照可能とする機関やベンダー等が運用する各種の情報提供システム30に接続して、企業に係る情報を含む各種情報を取得することが可能である。
【0027】
企業情報ハブサーバ10は、例えば、コンピュータシステムにより構成されるサーバシステムであり、ソフトウェアにより実装される認証処理部100、SNS部110、企業情報開示部120、企業・投資家検索処理部130、公開情報開示部140、およびバッチ処理部150などの各部を有する。
【0028】
認証処理部100は、ユーザ(例えば、企業や機関投資家のユーザ、企業情報ハブサーバ10の管理者など)が、SNS部110が提供するSNS機能を始めとするコミュニケーションシステム1が提供する各種機能にアクセスするためのユーザ認証を、各ユーザのアカウント情報が登録されているユーザデータベース(DB)101を参照して行う。複数のシステムやアプリケーションにおいて認証を行う必要がある場合は、これらのシステム等の間で認証の連携を行い、ユーザに対してシングルサインオンの環境を提供するようにしてもよい。ユーザDB101に登録されたアカウント情報の登録や変更などのユーザ管理機能を有していてもよい。
【0029】
SNS部110は、例えば、図示しないWebサーバプログラム上で稼動し、ASP(Application Service Provider)サービスとしてWeb上でのSNS機能を提供するSNSエンジンであり、例えば、オープンソースとして一般に利用可能なSNS構築アプリケーションなどを基礎として機能の追加・修正等により実現され、アクセス制御部111、メッセージ処理部112、アクセス履歴管理部113、およびカレンダー処理部114などの各部を有する。また、データベースやファイルテーブル等により実装されるユーザデータベース(DB)101、メッセージデータベース(DB)116、ニュースデータベース(DB)117、およびカレンダーデータベース(DB)118などの各データベースを有する。
【0030】
SNS部110により提供されるSNS機能は、コミュニケーションシステム1の中心的機能であり、企業および機関投資家の各ユーザが情報の提供・開示やコミュケーションを行う際のポータル機能を提供するなどのフロントエンドの役割を有する。
【0031】
SNS部110のアクセス制御部111は、本システムにアクセスするユーザが利用可能なSNS部110の各機能、およびこれらを介して利用可能なコミュニケーションシステム1の各機能について、ユーザの属性等に基づいて利用可否や利用可能な場合の利用態様などを制御する機能を有する。この制御を行うためのルールに係る情報を、ルール定義115として企業情報ハブサーバ10の管理者等により予めファイル等の形式で定義しておくようにしてもよい。
【0032】
メッセージ処理部112は、一般的なSNSが通常有するメッセージの交換サービスを始めとするSNSとしての基本機能を提供する。ユーザ間でやり取りされたメッセージはメッセージDB116に蓄積される。また、例えば、後述するバッチ処理部150での制御により、ネットワークを介して定期的にニュースサイト等の外部ベンダーシステム20から取得してニュースDB117に記録した一般ニュースや経済ニュースなどの有益な情報を参照可能とする機能を含んでいてもよい。また、ユーザが属するもしくは構築したコネクションやコミュニティ、友達関係(以下ではこれらを総称して「コネクション」と記載する場合がある)の構成、これに基づくメッセージや各種アナウンス等の配信・閲覧の制御などの機能を含んでいてもよい。
【0033】
アクセス履歴管理部113は、各ユーザがSNS部110を介して企業情報ハブサーバ10の各機能にアクセスした際の履歴を図示しないログデータベースやログファイルに記録する機能を有する。この履歴情報を利用して、例えば、どのような機関投資家が自社の情報にアクセスしたかなどの情報を分析することで、コンタクトしたりアプローチしたりする機関投資家(ファンド)の抽出に活用することが可能である。
【0034】
カレンダー処理部114は、各ユーザのIR関連のイベントスケジュールなどをカレンダーデータベース(DB)118に保持・管理し、この情報をコネクション間で共有することを可能とする機能を有する。ここでは、各ユーザがイベントのスケジュール等を登録し確認することなどに加えて、例えば、企業が機関投資家に対する説明会のアポイントメントを取る場合など、他のユーザのスケジュールを参照して確保することなども可能である。
【0035】
企業情報開示部120は、企業(情報の提供側)が機関投資家(情報を受取側)に対して提供・開示する情報を取得して管理し、例えば、SNS部110を介した機関投資家からの要求に対して、必要な情報を参照可能とする機能を有し、例えば、法定開示情報処理部121、および任意開示情報処理部122などの各部と、企業開示情報データベース(DB)123を有する。
【0036】
法定開示情報処理部121は、例えば、バッチ処理部150の制御により、財務諸表や有価証券報告書、決算短信など、企業が開示することが法定されている法定開示情報について、金融庁のEDINETや東京証券取引所のTDnet(登録商標)などの電子情報開示サービス等からXBRL(eXtensible Business Reporting Language)形式などのファイルとして取得して、企業開示情報DB123に企業毎に格納・蓄積する。また、任意開示情報処理部122は、例えば、決算説明資料や中期経営計画、CSR/ESG報告書などの任意開示情報について、企業ユーザ端末41を介して企業のユーザが登録したものを、XBRL等の形式で企業開示情報DB123に企業ごとに格納・蓄積する。
【0037】
企業開示情報DB123に蓄積された情報(法定開示情報、任意開示情報)は、例えば、機関投資家のユーザが投資家ユーザ端末42を利用してXBRLによる検索を行なう等により参照し、必要に応じてダウンロードすることが可能である。また、任意開示情報についてもXBRL形式で企業情報ハブサーバ10上に保持して参照可能としているため、機関投資家のユーザはこれらの情報も効率的に利用することが可能である。すなわち、本実施の形態では、機関投資家が必要とする情報を電子的に処理しやすい形式(定義の統一化や訂正情報の数値化等)にして提供することで、機関投資家の銘柄選定に係る作業効率の向上に寄与する。
【0038】
企業・投資家検索処理部130は、本システムにより提供されるサービスへの複数の参加企業や参加機関投資家(ファンド)についての情報を保持する企業プロフィールデータベース(DB)102や投資家プロフィールデータベース(DB)103に登録されている企業や機関投資家から、例えば、名称や属性等の情報に基づいて、コンタクトしたりアプローチしたりする相手方を検索・スクリーニングする機能を有する。また、公開情報開示部140は、例えば、ユーザやシステムから指定された企業について、情報提供システム30から取得した株価や財務データなどの情報や、PDF(Portable Document Format)形式で提供された開示情報などを参照可能とする機能を有する。
【0039】
バッチ処理部150は、各企業や機関投資家(ファンド)の情報や株式データ、財務情報、法定開示情報、ニュースなど、外部ベンダーシステム20や情報提供システム30からデータを取得して各データベースに格納・蓄積しておくような処理を、例えば夜間などの負荷の少ない時間帯に定期的なバッチ処理として実行するよう制御する機能を有する。
【0040】
上記の構成を有する企業情報ハブサーバ10に対して、企業側および機関投資家側のユーザは、それぞれ企業ユーザ端末41もしくは投資家ユーザ端末42を利用して、インターネット等のネットワークを経由してアクセスし、SNS機能を介して各種機能を利用することが可能である。このとき、例えば、企業情報ハブサーバ10は、上述したように、これらの機能をASPサービスとして提供し、各ユーザは、端末上の図示しないWebブラウザを介してこれらの機能を利用する。
【0041】
例えば、企業側のユーザが、企業ユーザ端末41のWebブラウザにより企業情報ハブサーバ10にアクセスすると、SNS部110により、機関投資家とのメッセージのやり取りや情報共有を行うことが可能な画面が表示される。ここでは、例えば、企業のユーザがコネクションのある機関投資家との間で個別にメッセージをやり取りし、また、やり取りされたメッセージの一覧が表示される画面や、各機関投資家に対して行ったアナウンス(例えば、開示情報のアップデートや、アナリスト説明会の通知等)の一覧を表示する画面、IRイベントの管理や機関投資家への説明会等のミーティングを設定・確認するためのカレンダーの画面などがガジェットとして表示される。また、メニューやボタン等を介して、例えば、任意開示情報をアップロードして登録するための画面や、機関投資家(ファンド)をスクリーニングするための画面などを呼び出すことができる。
【0042】
機関投資家のユーザについても同様に、投資家ユーザ端末42のWebブラウザにより企業情報ハブサーバ10にアクセスすると、コネクションのある企業との間で個別にメッセージをやり取りし、また、やり取りされたメッセージの一覧が表示される画面や、各企業からのアナウンスの一覧を表示する画面、IRイベントの管理や説明会等のミーティングを設定・確認するためのカレンダーの画面などがガジェットとして表示される。また、メニューやボタン等を介して、例えば、企業の財務情報等をXBRLにより検索する画面や、企業をスクリーニングするための画面などを呼び出すことができる。
【0043】
このようなコミュニケーションシステム1により、例えば、多数の参加企業と機関投資家の中で、特定の企業(情報の提供側)と特定の機関投資家(情報の受取側)が、それぞれクローズドな環境でコミュニケーションすることができるASPサービスを提供することが可能となる。例えば、参加企業は、法定開示情報の他に、機関投資家が分析のために利用する企業情報を作成して任意開示情報として提供・開示することができる。このとき、例えば所定の項目を有するXBRLの形式で情報を登録することにより、機関投資家は、特に非財務情報について、標準化されたデータを利用したり、企業に対して直接追加情報の要請をしたりすることが可能となる。一方で、参加企業は、自社の既存株主の保有動向の分析や、自社に興味を持ちそうな潜在株主を割り出す分析を行うことが可能となる。
【0044】
<ユーザ管理>
ユーザ管理の概念としては、例えば、ユーザを各個人に対応するものとし、ユーザが属する組織等については、ユーザのグループという概念が用いられるのが一般的である。この場合、グループは単にユーザをグルーピングしたものであることから、グループ自体がアイデンティティを持ち、個別にグループとしてユーザ認証を受けてログインする、というような運用は考慮されていない。仮にユーザに対して自然人ではなく組織などのグループを擬人的に割り当てた(例えば、“部署ABC”という名称のユーザIDを登録する)場合でも、当該ユーザと現実世界において階層構造を有する他のユーザ(例えば“部署ABC”のメンバーである“ユーザabc”)との関係を表現することはできていない。
【0045】
そこで、本実施の形態のコミュニケーションシステム1では、ユーザの概念を拡張してユーザ間の階層構造を把握するものとし、また、情報の提要側(企業)と受取側(機関投資家)で非対称の異なる階層構造を管理することを可能とする。
【0046】
図2は、本実施の形態における機関投資家側のユーザ概念の例について概要を示した図である。図中における各枠は、それぞれアイデンティティを有するユーザとして定義されるものであることを示している。例えば、“機関投資家企業A”という組織を表すユーザについては、その下位層に“ファンドA1”、“ファンドA2”、“ファンドA3”、“ファンドA4”という当該機関投資家が取り扱う各ファンドを表すユーザを有していることを示している。
【0047】
ここで、“ファンドA1”は、さらにその下位層に“投資家ユーザa1”、“投資家ユーザa2”という当該ファンドを取り扱うファンドマネージャーやアナリスト等の個人ユーザを有していることを示している。また、“ファンドA2”は、さらにその下位層に“投資家ユーザa2”、“投資家ユーザa3”という各ユーザを有している。ここでは、“投資家ユーザa2”は、“ファンドA1”にも“ファンドA2”にも含まれる(両者を取り扱っている)ことを示している。なお、“ファンドA3”のように、下位層にファンドマネージャーやアナリスト等の個人ユーザを有さない状態のファンドも有効に存在し得る。また、“投資家ユーザa4”のように、特定のファンドを取り扱わないアナリスト等の個人ユーザも存在し得る(この場合でもいずれかの機関投資家の組織には属する必要がある)。
【0048】
図3は、本実施の形態における企業側のユーザ概念の例について概要を示した図である。
図2と同様に、図中における各枠は、それぞれアイデンティティを有するユーザとして定義されるものであることを示している。例えば、“企業A”という企業(実際はIR活動を行う組織が該当する)表すユーザについては、その下位層に“企業ユーザa1”、“企業ユーザa2”、“企業ユーザa3”という当該企業に所属する各個人ユーザを有していることを示している。
【0049】
このようなユーザの階層構造は、例えば、ユーザDB101において、各ユーザのアカウント情報の属性として、上位階層(親)のユーザのID情報を1つ以上保持するようにすることで実装することができる。なお、本実施の形態では、上記のようなユーザの階層構造を構成するに際して、ある階層のユーザをユーザDB101に登録する際、対象のユーザが最上位の企業や組織を表すユーザである場合を除き、対象のユーザが属する上位層のユーザが予め登録されていることを必要とするよう制御するものとする。すなわち、ユーザは必ずいずれかの企業や組織の階層構造に属するものとする。これにより、企業と機関投資家との間でのコミュニケーションを支援するという本実施の形態の目的により適合的とすることができる。
【0050】
また、階層構造を構成するに際して、例えば、情報の提供側(企業)と受取側(機関投資家)でそれぞれ個別に階層構造の雛形や制約条件、ルール等を別途定義しておくようにしてもよい。これにより、図示した例のような構造と異なり、例えば、ファンドマネージャーのユーザが下位層にファンドを有するという構造や、機関投資家のユーザに企業側のユーザが含まれるという構造など、雛形や制約条件、ルールを逸脱した不正な階層構造が構成されることを防止することができる。
【0051】
通常のSNSサービスでは、ユーザは基本的に皆フラットであり、各ユーザがそれぞれ独自に指定した、コミュニケーションの可能範囲のユーザについての制限(例えば、“友達の友達まで”など)を満たす限り、どのユーザとの間でもコネクションを構築してコミュニケーションを行うことが可能である。
【0052】
一方で、例えば、企業側のユーザがコネクションを構築したい相手方は機関投資家であり、他の企業(特にライバル企業など)ではない。機関投資家にしても同様で、コネクションを構築したい相手方は企業であり、他の機関投資家ではない。そこで、本実施の形態では、例えば、SNS部110のアクセス制御部111等において、ユーザの意思に関わらず、企業側のユーザがコネクションを構築できる相手方を機関投資家に制限し、また、機関投資家がコネクションを構築できる相手方を企業に制限する。換言すると、情報の提供側か受取側かの分類において、自身が属する側における他の組織のユーザとはコネクションの構築を制限する。これにより、不必要な情報がライバル企業等に参照されてしまうことなどがないようにする。
【0053】
図4は、階層および属性が異なる種類のユーザ間でのコミュニケーションの制限内容の定義例について示した図である。この定義内容は、例えば、SNS部110のアクセス制御部111が参照するルール定義115に含まれる。
図4(a)では、例えば、ある種類のユーザが他の種類のユーザに対してSNS部110のメッセージ処理部112を介してメッセージの送信を行うことができるか否かの制限について定義している。図の例では、送信側(From)のユーザとなるのは個人ユーザであり、受信側(To)のユーザとなるのは組織等を表す組織ユーザであることを示しており、例えば、システムの管理者は、企業側、機関投資家側問わず全ての種類の組織ユーザに対してメッセージを送信することが可能であることを示している。
【0054】
また、例えば、機関投資家ユーザ(ファンドマネージャーなどの個人ユーザ)は、企業(企業自体を表す組織ユーザ)に対してメッセージを送信することができるが、機関投資家側のユーザ(機関投資家企業およびファンドを表す組織ユーザ)に対してはメッセージを送信することができないよう制御されることを示している。企業ユーザ(個人ユーザ)についても同様に、機関投資家側のユーザ(機関投資家企業およびファンドを表す組織ユーザ)に対してはメッセージを送信することができるが、企業側のユーザ(企業自体を表す組織ユーザ)に対してはメッセージを送信することができないよう制御されることを示している。
【0055】
なお、本実施の形態では、送信側のユーザとなるのは個人ユーザであり、受信側のユーザ(送信先のユーザ)となるのは組織ユーザであるものとしているが、送信側のユーザを組織ユーザに拡張したり、受信側のユーザを個人ユーザに拡張したりすることも可能である。
【0056】
同様に、
図4(b)では、例えば、ある種類のユーザが他の種類のユーザのプロフィール情報を参照することができるか否かの制限について定義している。図の例では、プロフィールを参照する側(From)のユーザとなるのは個人ユーザであり、参照される側(To)のユーザとなるのは個人ユーザおよび組織ユーザであることを示しており、例えば、システムの管理者は、企業側、機関投資家側問わず全ての種類のユーザのプロフィール情報を参照することが可能であることを示している。また、例えば、機関投資家ユーザは、企業側のユーザのプロフィール情報のみを参照することが可能である一方、企業ユーザは、機関投資家側のユーザのプロフィール情報のみを参照することが可能であるよう制御されることを示している。
【0057】
このように、情報の提供側(企業)と受取側(機関投資家)で、それぞれ異なる階層構造の各エンティティを属性の異なる独立したユーザとして定義することで、SNS機能においてより柔軟かつ効率的に、また的確に、情報の提供・開示やコミュニケーションの対象となる相手方を特定することが可能となる。
【0058】
例えば、企業側のユーザは、“○○アセット・マネジメント”という機関投資家の企業をスクリーニング等により特定してアクセスすると、その下位層として当該機関投資家がどのようなファンドを取り扱っているか(すなわち、ファンドを表すユーザで、当該機関投資家が上位層(親)となっているものはどれか)を把握することができる。また、その中の特定のファンドにアクセスすると、同様に、その下位層として当該ファンドを取り扱っているファンドマネージャーやアナリストのユーザの情報を把握することができる。
【0059】
また、SNS部110のアクセス履歴管理部113によって蓄積したアクセス履歴の情報を分析して活用する際に、ユーザが属する階層や属性が異なることを考慮した分析を行うことが可能となる。例えば、企業側のユーザが、自社の情報に対するアクセス履歴を分析する際、機関投資家のアナリストのユーザが自社の情報に単にアクセスして参照した、というだけでは、何度アクセスがあったとしてもあまり大きな意味はなく、自社が開示しているレポート等を実際に開いて読んでくれたか否かが重要となる。一方で、機関投資家のファンドマネージャーの場合は、自社の情報にアクセスしてくれたこと自体に意味があると考えることができる。このような相違等を考慮してアクセス履歴等を詳細に分析することが可能となることは有用である。
【0060】
また、例えば、企業が機関投資家に対して何らかの案内を出すような場合、案内の送付先を再上位層の機関投資家の組織のユーザにすることで、自動的に下位層の各ユーザに対しても配信されたものとして取り扱うことが可能となる。また、内容に応じて、特定のファンドや、さらに下位層のファンドマネージャー単位で案内を出すような場合もあり得る。このように、企業もしくは機関投資家のユーザがコンタクトやアプローチをする対象となる相手(階層)のユーザを柔軟に選択することが可能となる。
【0061】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるコミュニケーションシステム1によれば、例えば、金融のマーケットにおいて、情報の提供側(企業)と受取側(機関投資家)でユーザの属性が非対称である(異なる)ような企業等の組織間における情報の提供・開示とコミュニケーションを、SNSの仕組みを利用して、柔軟かつ効率的に、また的確に行うことを実現することが可能となる。
【0062】
例えば、企業と機関投資家で、それぞれ異なる階層構造として表される各エンティティ(個人ユーザや組織ユーザ、機関投資家が取り扱うファンドなど、情報の提供・開示やコミュニケーションの対象となり得るもの)を属性の異なる独立したユーザとして定義することで、SNS機能においてより柔軟かつ効率的に、また的確に、情報の提供・開示やコミュニケーションの対象となる相手方を特定することが可能となる。
【0063】
また、機関投資家が必要とする情報、特に任意開示情報など各社での体裁等が異なる情報について、電子的に処理しやすい形式(定義の統一化や訂正情報の数値化等)にして提供することで、機関投資家の銘柄選定に係る作業効率を向上させることが可能となる。これらにより、企業と機関投資家との間の情報の提供・開示やコミュニケーションにおけるギャップの解消を支援することが可能となる。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0065】
例えば、本実施の形態では、金融のマーケットにおいて、情報の提供側を企業とし、情報の受取側を機関投資家としているが、これに限らず、例えば、いわゆるBtoBの分野における企業・組織間のコミュニケーションの基盤として適宜適用することができる。