(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,特許文献1,2の技術では,接合部(燃料電池)の長寿命化を図れるものの,例えば,数万時間もの実用的に十分な寿命を確保するのは容易ではなかった。
本発明は,接合部のさらなる長寿命化を図った,セパレータ付燃料電池セル,および燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセパレータ付燃料電池セルは,固体電解質層を空気極および燃料極で挟んで構成される燃料電池セル本体と,主面と裏面とに開口する開口部を有し,Agを含む接合材で構成される接合部を介して,該裏面側が前記燃料電池セル本体に取り付けられる,板状の金属製セパレータと,を具備する,セパレータ付燃料電池セルであって,前記接合部よりも前記開口部側でかつ前記金属製セパレータの裏面と前記セル本体との間に前記開口部の全周にわたって配置され,ガラスを含む封止材を含む封止部と,前記金属製セパレータを挟んで,前記封止部と対向する位置における,前記金属製セパレータ主面上に配置され,前記封止材よりも大きな熱膨張係数を有する材料で構成される拘束部と,を備えることを特徴とする。
【0008】
セパレータ付燃料電池セルが,金属製セパレータ裏面側の封止部と,封止材よりも大きな熱膨張係数を有する材料で構成される,金属製セパレータ主面側の拘束部と,を備える。
金属製セパレータ主面側の拘束部の熱膨張係数が,金属製セパレータ裏面側の封止部の熱膨張係数より,大きい。このため,燃料電池使用時の金属製セパレータが,封止部側に湾曲しようとし,結果的に封止部を押す(圧接)方向に力が働く。この力が,封止部と金属製セパレータとの間の界面での剥がれを抑制し,気密封止性が向上される。この結果,接合部に燃料ガスもしくは酸化剤ガスが到達することが抑制される。
【0009】
前記拘束部が前記開口部の全周にわたって配置されていることが好ましい。
封止部が開口部の全周にわたって配置されている。このため,拘束部を開口部の全周にわたって配置することで,開口部の全周にわたって,金属製セパレータの変形を抑制できる。
【0010】
前記金属製セパレータの開口部側面に配置された連結部によって,前記封止部と前記拘束部とが一体に形成されていることが好ましい。
封止部と拘束部とが一体となることで,金属製セパレータの変形のさらなる抑制が可能となる。
また,封止部と拘束部との一体化は,封止部の幅の実質的増大に寄与し,封止部による封止の確実性が向上する。
【0011】
金属製セパレータの熱膨張係数よりも,拘束部を構成する材料の熱膨張係数の方が小さくても良い。
金属製セパレータ,拘束部はそれぞれ,金属,ガラスから構成され,金属製セパレータよりも拘束部の熱膨張係数の方が小さいことが通例である。このような条件でも,拘束部による金属製セパレータの変形(撓み)の抑制が可能である。
【0012】
前記接合部と前記封止部との間に,間隙を有しても良い。
接合部と封止部とが接触していなくても,金属製セパレータの変形(撓み)の抑制は可能である。また,間隙にガスが入っていても少量であり,接合部の信頼性等への影響は小さい。
【0013】
前記封止材の熱膨張係数が,常温から300℃の温度範囲内において,8ppm/K以上12ppm/K以下であることが好ましい。
この範囲の熱膨張係数において,燃料電池使用時の金属製セパレータの変形の抑制が可能である。
【0014】
本発明に係る燃料電池スタックは,上記のセパレータ付燃料電池セル,を具備する。
上記のセパレータ付燃料電池セルを用いることで,燃料電池スタック全体としての信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,金属製セパレータの変形の形状を制御することにより,封止部の破損を抑制することで,封止部と金属製セパレータとの間の界面での剥がれを抑制し,接合部の長寿命化を図った,セパレータ付燃料電池セル,および燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明に係る固体酸化物形燃料電池について図面を用いて説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は,本発明の第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(燃料電池スタック)10を表す斜視図である。固体酸化物形燃料電池10は,燃料ガス(例えば,水素)と酸化剤ガス(例えば,空気(詳しくは空気中の酸素))との供給を受けて発電する。
【0019】
固体酸化物形燃料電池10は,エンドプレート11,12,燃料電池セル40(1)〜40(4)が積層され,ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)およびナット35で固定される。
【0020】
図2は,固体酸化物形燃料電池10の模式断面図である。
固体酸化物形燃料電池10は,燃料電池セル40(1)〜40(4)を積層して構成される燃料電池スタックである。ここでは,判り易さのために,4つの燃料電池セル40(1)〜40(4)を積層しているが,一般には,20〜60個程度の燃料電池セル40を積層することが多い。
【0021】
エンドプレート11,12,燃料電池セル40(1)〜40(4)は,ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)に対応する貫通孔31,32(32a,32b),33(33a,33b)を有する。
エンドプレート11,12は,積層される燃料電池セル40(1)〜40(4)を押圧,保持する保持板であり,かつ燃料電池セル40(1)〜40(4)からの電流の出力端子でもある。
【0022】
図3は,燃料電池セル40の断面図である。
図4は,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53(セパレータ付燃料電池セル)を分解した状態を表す分解斜視図である。
【0023】
図3に示すように,燃料電池セル40は,いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり,インターコネクタ41,45,集電体42,枠部43を備える。
【0024】
燃料電池セル本体44は,固体電解質層56を空気極(カソード,空気極層ともいう)55,および,燃料極(アノード,燃料極層ともいう)57で挟んで構成される。固体電解質層56の酸化剤ガス流路47側,燃料ガス流路48側それぞれに,空気極55,燃料極57が配置される。
【0025】
空気極55としては,ペロブスカイト系酸化物(例えば,LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物),LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物),各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットが使用できる。
【0026】
固体電解質層56としては,YSZ(イットリア安定化ジルコニア),ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア),SDC(サマリウムドープセリア),GDC(ガドリニウムドープセリア),ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。
【0027】
燃料極57としては,金属が好ましく,Ni及びNiとセラミックとのサーメットやNi基合金が使用できる。
【0028】
インターコネクタ41,45は,燃料電池セル本体44間の導通を確保し,かつ燃料電池セル本体44間でのガスの混合を防止し得る,導電性(例えば,ステンレス鋼等の金属)を有する板状の部材である。
【0029】
なお,燃料電池セル本体44間には,1個のインターコネクタ(41若しくは45)のみが配置される(直列に接続される二つの燃料電池セル本体44の間に一つのインターコネクタを共有しているため)。また,最上層および最下層の燃料電池セル本体44それぞれでは,インターコネクタ41,45に替えて,導電性を有するエンドプレート11,12が配置される。
【0030】
集電体42は,燃料電池セル本体44(空気極55)とインターコネクタ41との間の導通を確保するためのものであり,例えば,ニッケル合金等の金属材料からなる。
また,集電体42が,弾性を有していてもよい。
【0031】
枠部43は,酸化剤ガス,燃料ガスが流れる開口46を有する。この開口46内は,気密に保持され,かつ酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路47,燃料ガスが流れる燃料ガス流路48に区分される。また,本実施形態の枠部43は,空気極フレーム51,絶縁フレーム52,金属製セパレータ53,燃料極フレーム54で構成される。
【0032】
空気極フレーム51は,空気極55側に配置される金属製の枠体で,中央部には開口46を有する。該開口46によって,酸化剤ガス流路47を区画する。
【0033】
絶縁フレーム52は,インターコネクタ41,45間を電気的に絶縁する枠体で,例えば,Al
2O
3などのセラミックスやマイカ,バーミキュライトなどが使用でき,中央部には開口46を有する。該開口46によって,酸化剤ガス流路47を区画する。具体的には,絶縁フレーム52は,インターコネクタ41,45の間において,一方の面が空気極フレーム51に,他方の面が金属製セパレータ53に接触して配置されている。この結果,絶縁フレーム52により,インターコネクタ41,45間が電気的に絶縁されている。
【0034】
金属製セパレータ53は,開口部58を有する枠状の金属製の薄板(例えば,厚さ:0.1mm)であり,燃料電池セル本体44の固体電解質層56に取り付けられ,かつ酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を防止する金属製の枠体である。金属製セパレータ53によって,枠部43の開口46内の間隙が,酸化剤ガス流路47と燃料ガス流路48に区切られ,酸化剤ガスと燃料ガスとの混合が防止される。
【0035】
金属製セパレータ53には,金属製セパレータ53の上面と下面の間を貫通する貫通孔によって開口部58が形成される。この開口部58内に,燃料電池セル本体44の空気極55が配置される。また,この開口部58に燃料電池セル本体44が接合,封止される。金属製セパレータ53が接合された燃料電池セル本体44を「セパレータ付燃料電池セル」という。なお,この詳細は後述する。
【0036】
燃料極フレーム54は,絶縁フレーム52と同様に,燃料極57側に配置される絶縁フレームであり,中央部には開口46を有する。該開口46によって,燃料ガス流路48を区画する。
【0037】
空気極フレーム51,絶縁フレーム52,金属製セパレータ53,燃料極フレーム54は,ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)が挿入されるか,もしくは酸化剤ガスか燃料ガスが流通する貫通孔31,32(32a,32b),33(33a,33b)をそれぞれの周辺部に有する。
【0038】
(セパレータ付燃料電池セル50の詳細)
本実施形態に係るセパレータ付燃料電池セル50は,接合部61,封止部62,拘束部63を有する。燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53の間に接合部61,封止部62が配置される。開口部58に沿って,金属製セパレータ53の下面と固体電解質層56の上面が接合部61で接合され,封止部62で封止される。拘束部63は,封止部62に対応して,金属製セパレータ53の上面に配置される。
【0039】
接合部61は,Agを含むロウ材から構成され,開口部58に沿って,全周にわたって,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53とを接合する。接合部61(Agロウ)は,例えば,2〜6mmの幅,10〜80μmの厚さを有する。
【0040】
接合部61の材質として,Agを主成分とする各種のロウ材を採用できる。例えば,ロウ材として,Agと酸化物の混合体,例えば,Ag−Al
2O
3(AgとAl
2O
3(アルミナ)の混合体)を利用できる。Agと酸化物の混合体としては,Ag−CuO,Ag−TiO
2,Ag−Cr
2O
3,Ag−SiO
2も挙げることができる。また,ロウ材として,Agと他の金属の合金(例えば,Ag−Ge−Cr,Ag−Ti,Ag−Alのいずれか)も利用できる。
【0041】
Agを含むロウ材(Agロウ)は,大気雰囲気でもロウ付け温度で酸化し難い。このため,Agロウを用いて,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53とを大気雰囲気で接合でき,工程の効率上,好ましい。
【0042】
封止部62は,開口部58に沿って,全周にわたって,接合部61よりも開口部58側(内周側)に配置され,金属製セパレータ53の開口部58内にある酸化剤ガスと開口部58外にある燃料ガスとの混合を防ぐために燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53間を封止する。封止部62が接合部61よりも開口部58側に配置されることから,接合部61が酸化剤ガスに接触することが無くなり,酸化剤ガス流路47側から接合部61への酸素の移動が阻止される。この結果,水素と酸素の反応によって接合部61にボイドが発生してガスリークすることを防止できる。さらに,封止部62は金属製セパレータ53と燃料電池セル本体44の間に配置されることから,封止部62に働く熱応力が,引張応力ではなくせん断応力になる。このため,封止材が割れにくくなり,また封止部62と金属セパレータ53若しくは燃料電池セル本体44との界面での剥がれを抑制でき,封止部62の信頼性を向上できる。
封止部62は,例えば,0.2〜4mmの幅,10〜80μmの厚さを有する。
【0043】
拘束部63は,金属製セパレータ53を挟んで,封止部62と対向する位置における,金属製セパレータ53の主面(表面)上に,開口部58の全周にわたって,配置される。
拘束部63は,封止部62の構成材料(封止材)よりも大きな熱膨張係数を有する材料で構成されている。
【0044】
このため,固体酸化物形燃料電池10の使用時(700℃程度)には,金属製セパレータ53が,封止部62側に湾曲して,封止部62を押す(圧接)方向に力が働き,封止部62と金属製セパレータ53との間の界面での剥がれ(封止部62による封止性の低下)を抑制し,気密封止性が向上される。
【0045】
また,封止部62が開口部58の全周にわたって配置されていることから,拘束部63を開口部58の全周にわたって配置することで,開口部58の全周にわたって,金属製セパレータ53の変形を抑制できる。
【0046】
封止部62,拘束部63は,具体的には,ガラス,ガラスセラミックス(結晶化ガラス),ガラスとセラミックスの複合物等の封止材料から構成できる。
封止部62は常温から300℃の温度範囲内において,熱膨張係数が8ppm/K以上12ppm/K以下の封止材から構成され,拘束部63は封止材に比べて熱膨張係数が0.5ppm/K〜2ppm/K高い拘束材から構成される。
【0047】
金属製セパレータ53の熱膨張係数よりも,拘束部63を構成する材料の熱膨張係数の方が小さくても良い。
金属製セパレータ53,拘束部63はそれぞれ,金属,ガラスから構成され,金属製セパレータ53よりも拘束部63の熱膨張係数の方が小さいことが通例である。このような条件でも,拘束部63による金属製セパレータ53の変形(撓み)の抑制が可能である。
【0048】
金属製セパレータ53は,耐酸化耐久性の観点からSUH21(18Cr−3Al)のようなAl添加フェライト系SUS材を使用する。そのため,金属製セパレータ53の熱膨張係数は,常温から300℃の温度範囲内において,10〜14ppm/Kとなる。封止材は,引張応力には弱く割れやすいが,圧縮応力には強いので,封止材の熱膨張係数は金属製セパレータ53より低いことが好ましく,具体的には,常温から300℃の温度範囲内において,8ppm/K以上12ppm/K以下であることが好ましい。
【0049】
(セパレータ付燃料電池セル50の製造方法)
以下にセパレータ付燃料電池セル50の製造方法を説明する。
図5A〜
図5Eは,製造中のセパレータ付燃料電池セル50を表す断面図である。
【0050】
まず,例えば,SUH21からなる板材を打ち抜いて,開口部58を有する金属製セパレータ53を製造した。また,燃料極57のグリーンシートの一方の表面に,固体電解質層56のシートを貼り付けて,積層体を形成し,該積層体を一旦焼成した。その後,空気極55の材料を印刷し,焼成して燃料電池セル本体44を作成した。
【0051】
燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53それぞれにロウ材611,612を配置する(
図5A参照)。例えば,ペースト状のAgを含むロウ材を所定形状に燃料電池セル本体44の固体電解質層56の上面と金属製セパレータ53の下面に印刷することで,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53それぞれにロウ材611,612を配置した。なお,ロウ材611,612の配置の手法としては,上記以外に,ディスペンサを用いて行ってもよい。
ロウ材611,612は,例えば,2〜6mmの幅,10〜80μmの厚さを有する。
【0052】
次いで燃料電池セル本体44の固体電解質層56の上面に封止材621を配置する(
図5B参照)。例えば,封止材としてガラスを含むペーストを印刷することで,燃料電池セル本体44の固体電解質層56の上面に封止材621を配置できる。なお,封止材621の配置の手法としては,上記以外に,ディスペンサを用いて行ってもよい。また封止材621は金属製セパレータ53の下面に印刷してもよい。
封止材621は,例えば,0.2〜4mmの幅,10〜80μmの厚さを有する。
【0053】
ロウ材611,612及び封止材621を溶融し,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53とを接合する(接合部61の形成)と同時に封止部62を形成する(
図5C参照)。ロウ材611,612が配置された燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53とを接触させ,例えば,850〜1100℃で加熱することで,ロウ材611,612が溶融し,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53が接合された。このとき封止材621も同時に溶融し,燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53とが封止される(封止部62の形成)。
【0054】
金属製セパレータ53の上に封止材621よりも熱膨張が0.5ppm/K〜2ppm/K高い拘束材631を配置する(
図5D参照)。例えば,金属製セパレータ53の上面に拘束材631として,ガラスを含むペーストを印刷することで,所定の位置に拘束材631を配置することができる。拘束材631の配置の手法としては,上記以外に,ディスペンサを用いて行ってもよい。
拘束材631は,例えば,0.2〜4mmの幅,10〜200μmの厚さを有し,かつ封止材621よりも厚い。
【0055】
封止材621および拘束材631を溶融し,拘束部63を形成する(
図5E参照)。接合部61で接合され,かつ封止部62が形成され,さらに拘束材631が配置された燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53を例えば,850〜1100℃で加熱することで,拘束材631が溶融し,拘束部63の形成が行われる。
【0056】
以上の工程を経て,本実施例のセパレータ付燃料電池セル50(金属製セパレータ53が接合された燃料電池セル本体44)を作成した。
【0057】
(固体酸化物形燃料電池(燃料電池スタック)10の製造方法)
例えば,SUH21からなる板材を所定の形状に打ち抜き,空気極フレーム51,燃料極フレーム54を製造した。一方エンドプレート11,12,インターコネクタ41,45は例えば日立金属製ZMG232材からなる板材を所定の形状に打ち抜いて製造した。絶縁フレーム52は,例えばマイカよりなる板材を加工して製造した。
【0058】
上述した製造方法で作成したセパレータ付燃料電池セル50の燃料電池セル本体44の空気極55側には,金属製セパレータ53上に,絶縁フレーム52と空気極フレーム51とインターコネクタ41の順で,燃料極57側には,燃料極フレーム54とインターコネクタ45の順で,それぞれを配置し,燃料電池セル40を製造した。
【0059】
複数の燃料電池セル40を積層し,最上層と最下層にはエンドプレート11,12が配置し,ボルト21〜23とナット35によって,エンドプレート11,12で複数の燃料電池セル40を挟んで固定し,固体酸化物形燃料電池10を作成した。
【0060】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を説明する。
図6は,第2の実施形態に係る燃料電池セル40aの断面図である。
図7は,第2の実施形態に係る燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53(セパレータ付燃料電池セル50a)を分解した状態を表す分解斜視図である。
【0061】
燃料電池セル40aは,開口部58の側面に配置される連結部64を有する。即ち,封止部62aと拘束部63aが連結部64により連結され,一体に形成されている。封止部62aと拘束部63aとが一体となることで,より拘束力が高まり,金属製セパレータ53の変形(撓み)のさらなる抑制が可能となる。
【0062】
既述のように,拘束部63aは,封止部62aの構成材料(封止材)よりも大きな熱膨張係数を有する材料で構成され,封止部62aと共に,金属製セパレータ53を挟む。このため,固体酸化物形燃料電池10の使用時において,金属製セパレータ53が,封止部62側に湾曲して,封止部62を押す(圧接)方向に力が働く。この力が,封止部62と金属製セパレータ53との間の界面での剥がれ(封止部62による封止性の低下)を抑制し,気密封止性が向上される。
【0063】
開口部58に沿って,金属製セパレータ53の上下に加え,開口部58の側面にも,封止材621もしくは拘束材631によって構成される連結部64が配置されることで,金属製セパレータ53の変形がより効果的に阻止される。即ち,封止部62a,拘束部63a,および連結部64が,金属製セパレータ53をくわえ込んで固定することによって,封止部62aと金属製セパレータ53との間の界面での剥がれがより抑制される。
【0064】
また,封止部62aと拘束部63aとの一体化は,封止部62aの幅の実質的増大に寄与し,封止部62aによる封止の確実性が向上する。既述のように,封止部62aは,酸化剤ガス流路47から接合部61への酸化剤ガスの移動を阻止する。封止部62aと拘束部63aとが一体化することで,酸化剤ガス流路47から接合部61に至る経路上での,封止部62aの長さ(幅,シールパス)が大きくなる。この結果,封止部62aによる封止の確実性がより向上する。
【0065】
図6では,連結部64は,拘束部63aの構成材料と同じ材料から構成されるとしている。但し,連結部64を封止部62aの構成材料と同じ材料から構成することも可能であり,そのように構成しても,連結部64が無い場合と比べて,封止部62aと金属製セパレータ53との間の界面での剥がれの抑制およびシールパスの増大による封止の確実性の向上が図れる。
【0066】
これから判るように,封止部62aと拘束部63aの構成材料の境界は,金属製セパレータ53の厚さ方向にある程度の変動が許容される。
また,本実施形態では,封止部62aと拘束部63aの構成材料の境界が比較的明確であり,この境界で成分が不連続的に変化している。これに対して,封止部62aと拘束部63aの構成材料の境界において,成分が連続的に変化し,従い,境界が不明確(ぼやける)となることも許容される。
【0067】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の変形例を説明する。
図8は,第2の実施形態の変形例に係る燃料電池セル40bの断面図である。
図9は,第2の実施形態の変形例に係る燃料電池セル本体44と金属製セパレータ53(セパレータ付燃料電池セル50b)を分解した状態を表す分解斜視図である。
【0068】
燃料電池セル40bでは,接合部61と封止部62bの間に間隙(空間)65を有する。このように,接合部61と封止部62bとが接触していなくても,封止部62bにかかる部分の金属製セパレータ53の変形(撓み)の抑制は可能である。
【0069】
燃料電池セル40a,40bでは,接合部61と封止部62a,62bが開口部58の全周に亘って,接触している,または間隙65を有する。その中間の態様として,開口部58の周の一部で接合部61と封止部62a,62bとが接触し,開口部58の周の一部で接合部61と封止部62bとが接触しないことも考えられる。
また,燃料電池セル40のように,連結部64を有しない状態において,接合部61と封止部62bの間に間隙(空間)65を有しても良い。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0071】
上記実施形態では,アノード支持タイプの燃料電池セルに適用するために固体電解質層56の上面(空気極55側)に金属製セパレータ53が接合されている。これに対して,例えば,固体電解質支持タイプやカソード支持タイプなどでは,固体電解質層56の下面(燃料極57側)に金属製セパレータ53を接合しても良い。この場合,燃料極57は,固体電解質層56より小さく形成され,かつ開口部58内に配置され,酸化剤ガスに晒されないようにされる。