特許第5727436号(P5727436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベー・ブラウン・メルズンゲン・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許5727436カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング
<>
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000002
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000003
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000004
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000005
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000006
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000007
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000008
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000009
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000010
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000011
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000012
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000013
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000014
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000015
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000016
  • 特許5727436-カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727436
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】カテーテルハブ内に配置される針先保護装置ハウジング
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20150514BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   A61M5/32
   A61M5/158 500Z
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-200177(P2012-200177)
(22)【出願日】2012年9月12日
(62)【分割の表示】特願2009-522142(P2009-522142)の分割
【原出願日】2007年7月24日
(65)【公開番号】特開2012-236102(P2012-236102A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2012年10月12日
(31)【優先権主張番号】11/496,769
(32)【優先日】2006年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591002131
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・メルズンゲン・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】ウオーエル,ケビン
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−514943(JP,A)
【文献】 特開2003−180833(JP,A)
【文献】 特表2005−529717(JP,A)
【文献】 特表2005−533617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/158
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針組立体において、
ハウジングは壁を有し、該壁の内壁面はその内部に先端保護装置を収容する空間を画成し、
針は、その中心線で規定される第1と第2の側面と前記ハウジングと針保護装置を貫通する針先端部とを有し、
前記針保護装置は遠位開口と、2つの側壁と、近位壁と、該近位壁から該遠位開口に向けて延在する第1のアームと、該遠位開口に向けて延在する第2のアームと、該第2のアームに対向する第3のアームとを有し、
前記第2のアームと第3のアームは共にハウジングの内壁面に対して付勢されており、
前記第2のアームと第3のアームは共に針保護装置の2つの縁に対して可動であることを特徴とする針組立体。
【請求項2】
前記近位壁は開口を有することを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項3】
前記第2のアームと第3のアームはハウジングの内壁面に弾性的に係合することを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項4】
前記2つの側壁と前記第2のアーム及び第3のアームはハウジングの内壁面と接触することを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項5】
前記第3のアームは突出部を有することを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項6】
前記ハウジングはカテーテルハブであることを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項7】
前記第1のアームの幅は不均一であることを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項8】
前記針はひだを有することを特徴とする請求項1の針組立体。
【請求項9】
針組立体において、
ハウジングは壁を有し、該壁の内壁面はその内部に先端保護装置を収容する空間を画成し、
針は、その中心線で規定される第1と第2の側面と前記ハウジングと針保護装置を貫通する針先端部とを有し、
前記針保護装置は遠位開口と、2つの側壁と、近位壁と、該近位壁から該遠位開口に向けて延在する第1のアームと、該遠位開口に向けて延在する第2のアームと、該第2のアームに対向する第3のアームとを有し、
前記第2のアームと第3のアームは共にハウジングの内壁面に対して付勢されており、
前記第3のアームは突出部を有することを特徴とする針組立体。
【請求項10】
前記近位壁は開口を有することを特徴とする請求項9の針組立体。
【請求項11】
前記第2のアームと第3のアームはハウジングの内壁面に弾性的に係合することを特徴とする請求項9の針組立体。
【請求項12】
前記2つの側壁と前記第2のアーム及び第3のアームはハウジングの内壁面と接触することを特徴とする請求項9の針組立体。
【請求項13】
前記ハウジングはカテーテルハブであることを特徴とする請求項9の針組立体。
【請求項14】
前記第1のアームの幅は不均一であることを特徴とする請求項9の針組立体。
【請求項15】
前記針はひだを有することを特徴とする請求項9の針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
包括的には針組立体、特に、側方からの針先との接触を防止する密閉壁面を備える先端保護装置を有する針組立体が、本明細書において説明される。
【背景技術】
【0002】
IVカテーテル組立体の挿入処置は、4つの基本的ステップ、すなわち(1)医療従事者が、針及びカテーテルを共に患者の静脈に挿入するステップ、(2)針先を静脈に挿入した後、医療従事者が指でカテーテルを押すことによってカテーテルを患者の静脈内に前進させるステップ、(3)医療従事者が、ハブ端(先端の反対側)を掴むと同時に自由な方の手で患者の皮膚の挿入部位に圧力を加えることによって針を引込めるステップ、及び(4)続いて医療従事者が、挿入されているカテーテルを患者の皮膚にテープで留めて、カテーテル(カテーテルハブ)の露出端を患者の静脈に投与される流体源に接続するステップを含む。
【0003】
問題は、患者の静脈から針を引き抜いた直後に、少なくとも2つの緊急処置を担当している医療従事者が、露出した針先を手近な場所に置いて針を引込めるのに必要な作業に当たらなければならないことである。露出した針先から針刺し事故の危険が生まれるのはこの時点であり、この状況下では、医療従事者がAIDS及び肝炎を含む様々な危険な血液媒介病原菌に感染しやすくなる。
【0004】
他の針タイプも同様に、医療従事者を針刺し事故の危険に曝す。例えば、直針、フーバー針、硬膜外針等を用いて注射を投与する医師は、看護師に後で処分させるように使用済みの針をトレーに載せる場合がある。トレー又は作業台に使用済みの針を載せてからそれが廃棄されるときまでの期間の間、使用済みの針は、針の付近で作業している者への疾病の伝播源となる可能性がある。したがって、全ての針を使用直後に覆って、より高い作業者の安全を確保すべきである。理想的には、針先を覆う処置は、受動的に、自動作動式で、又は少なくとも単純に実施されるべきである。さらに、針を覆う装置は、信頼性が高く堅牢であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様によれば、針先と直接接触しないように針先を塞ぐ先端保護装置が提供される。
【0006】
より好ましくは、先端保護装置は、針先が見えないように且つ針先の内側から滴る血液が針先に付着しないように針先を守る側壁を有する。
【0007】
本発明のさらなる態様では、先端保護装置内から針が不用意に再出現しないように針を撓ませるデフレクタ板が提供される。
【0008】
本発明のさらに別の態様では、デフレクタ板は、少なくとも一部は先端保護装置をハウジング内に配置するために用いられる。
【0009】
カテーテルチューブからの針の抜去時に先端保護装置とカテーテルハブとの弾性係合によって針先端を自動的に守るために、安全IVカテーテルに先端保護装置を組み込むことが、本発明の別の目的である。弾性係合は、製造公差を減らす必要なく比較的滑らかな解放を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る針組立体は、
ハウジングは壁を有し、該壁の内壁面はその内部に先端保護装置を収容する空間を画成し、
針は、その中心線で規定される第1と第2の側面と前記ハウジングと針保護装置を貫通する針先端部とを有し、
前記針保護装置は遠位開口と、2つの側壁と、近位壁と、該近位壁から該遠位開口に向けて延在する第1のアームと、該遠位開口に向けて延在する第2のアームと、該第2のアームに対向する第3のアームとを有し、
前記第2のアームと第3のアームは共にハウジングの内壁面に対して付勢されており、
前記第2のアームと第3のアームは共に針保護装置の2つの縁に対して可動であることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記近位壁は開口を有することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記第2のアームと第3のアームはハウジングの内壁面に弾性的に係合することを特徴とする。
本発明に係る針組立体はまた、
ハウジングは壁を有し、該壁の内壁面はその内部に先端保護装置を収容する空間を画成し、
針は、その中心線で規定される第1と第2の側面と前記ハウジングと針保護装置を貫通する針先端部とを有し、
前記針保護装置は遠位開口と、2つの側壁と、近位壁と、該近位壁から該遠位開口に向けて延在する第1のアームと、該遠位開口に向けて延在する第2のアームと、該第2のアームに対向する第3のアームとを有し、
前記第2のアームと第3のアームは共にハウジングの内壁面に対して付勢されており、
前記第3のアームは突出部を有することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記近位壁は開口を有することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記第2のアームと第3のアームはハウジングの内壁面に弾性的に係合することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記2つの側壁と前記第2のアーム及び第3のアームはハウジングの内壁面と接触することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記第3のアームは突出部を有することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記ハウジングはカテーテルハブであることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記第1のアームの幅は不均一であることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記針はひだを有することを特徴とする。
【0014】
本明細書において提供される先端保護装置の他の態様及び特徴は、明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を参照してよりよく理解されればよりよい評価を得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】上壁及び2つの側壁を備える先端保護装置を組み込んだ従来技術の安全IVカテーテルの部分断面の概略図である。
図1B】上壁及び2つの側壁を備える先端保護装置を組み込んだ従来技術の安全IVカテーテルの部分断面の概略図である。
図2】針先を塞ぐ第1の保護装置体及び第2の保護装置体を備える、本発明の態様に従って提供される先端保護装置の概略斜視図である。
図3図2の先端保護装置の上面図である。
図4図2の先端保護装置の下面図である。
図5】線5−5に沿った図4のクリップの概略側断面図である。
図6】線6−6に沿った図5のクリップの概略端面図である。
図7】線7−7に沿った図5のクリップの概略正面図である。
図8】第2の保護装置体無しで示す図2の第1の保護装置体の概略側断面図である。
図9】線9−9に沿った図8の第1の保護装置体のアームの概略断面端面図である。
図10】線10−10に沿った図8の第1の保護装置体の概略端面図である。
図11】使用準備完了位置で示す図2の先端保護装置を組み込んだカテーテル組立体の概略側断面図である。
図12】線12−12に沿った図11のカテーテル組立体の断面端面図である。
図13】使用位置で針ハブがカテーテルチューブから後退して先端保護装置が針先を塞いでいる状態を示す、図11のカテーテル組立体の部分側断面図である。
図14】針先を塞ぐために図2の先端保護装置を針上に残したままカテーテルハブから完全に取り外した針ハブの部分側断面図である。
図15】本発明の態様に従って提供される代替的な第2の保護装置体の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面に関連して後述される詳細な説明は、本発明の態様に従って提供される、複数の針又は針組立体で用いられる先端保護装置の好ましい実施形態を説明することを意図したものであり、本発明を構成又は利用することができる唯一の形態を示すためのものではない。本説明は、図示の実施形態に関連して本発明の先端保護装置を構成及び使用するための特徴及びステップを記載している。しかしながら、同じく本発明の精神及び範囲内に包含される種々の実施形態によって、特に本明細書に含まれる種々の実施形態で示される特徴の組み合わせを組み込んだ実施形態によって、同じ又は等価な機能及び構造を達成することができることを理解されたい。本明細書において、同じ参照符号(element numbers)は同じ又は同様の要素又は特徴を示すことを意図している。
【0017】
図1A及び図1Bは、本明細書に明示的に援用されるWoehr他の米国特許第6,616,630号に図示及び記載されている従来技術のばねクリップ針防護物を示す。本明細書に示される図1A及び図1Bは、‘630号特許において図4A及び図4Bとして表記及び説明されている。図1A及び図1Bに再現されているように、ばねクリップ針防護物40aは、上端が湾曲リップ66で終結すると共に下端がU字部67で終結する遠位アーム65を含み、U字部67は、図1Aに示す準備完了位置においてカテーテルハブ26の下方内壁に形成されている突起68に接触する。
【0018】
中心開口70を有する横断部69が、近位側上方に延びて上方U字部72で終結する。‘630号特許に開示されているように、開口は、使用位置において点d及びeで針を固定するように構成される。開口76を有する近位端壁74が、上方U字部72から垂直に延びてから水平下部78として遠位側に延び、水平下部78は、針防護物の準備完了位置において遠位アーム65及び横断部69の下半分が貫通する開口80を有する。水平下部78は、その遠位端において前壁82となって上方に延び、前壁82は、開口70、76と軸方向に心合わせされた中心開口84を有する。遠位前壁82は、その上端において上部86として近位方向に延び、上部86は、図1Aに示すようにカテーテルハブの上方内壁に実質的にその全長に沿って接触する。
【0019】
カテーテルが準備完了位置にあるとき、針軸は、開口70、76、及び84を貫通すると共に湾曲リップ66上に載置されて、アーム65をカテーテルハブの下方壁の突起68に付勢する。この係合は、上部86とカテーテルハブの上方内壁との弾性係合と共に、ばねクリップ40aをカテーテルハブ内のその準備完了位置において係止する。
【0020】
針ハブ12及び針16を図1Aに見られるように右側に十分な量だけ後退させると、針先18は、リップ66の近位側に移動して最終的にリップ66の下を通過する。これが起こると、アーム65への下向きの力が解放されるためアーム65が図1Bに示す後退位置に跳ね上がり、後退位置においてアーム65及びリップ66が針先18を覆うことにより、針先との偶然の接触を防止する。この状態で、針防御物40aは、開口70の点d及びeにおいて針軸16に固定され、針及びこれに固定された針保護物は、カテーテルハブから容易に取り外すことができる。
【0021】
図1A及び図1Bに示す従来技術の先端保護装置40aは、意図された目的のために適切に設計されているが、先端保護装置40aには、より信頼性が高く効果的で製造しやすくするために行うことができる改良の余地がいくつか残っている。
【0022】
次に図2を参照すると、本発明の態様に従って提供される先端保護装置が示されており、これを全体的に100で示す。例示的な実施形態では、先端保護装置100は、第2の保護装置体104によって少なくとも部分的に囲まれた第1の保護装置体(図5参照)102を備える。
【0023】
実施形態では、第2の保護装置体104は、開口108を有する遠位壁106を備え、開口108の構成は円形であることが好ましい。2つの側壁110A、110B、及びデフレクタ壁、板、あるいはアーム112を含む複数の壁が、遠位壁106から延びる。第2の保護装置体104は、「T」に類似した1枚の打ち抜き又は切り抜きステンレス鋼シートから形成されることが好ましく、遠位壁106に開口108を形成するために「T」の3つの枝の交点に円形の切り抜き108を有する。例示的な実施形態では、T字形のシートの交点がカーバイド等の金属型又はダイに押し付けられ、続いて2つの側壁110A、110B、及びデフレクタ板112を同時に近位側に押しながら遠位壁106の外周に曲線状外周輪郭114が形成される。底部外周輪郭もこのプロセスによって形成することができる。
【0024】
例示的な実施形態では、2つの側壁110A、110B及びデフレクタ板112の縁116は、遠位壁106の曲線状外周輪郭114を形成するのに用いたのと同じダイに嵌めて形成される。したがって、2つの側壁110A、110Bとデフレクタ板112との交点118は、直角というよりも全体的に湾曲状又は滑らかである(図6及び図7にも示す)。さらに後述するように、滑らかな縁116は、先端保護装置100が一点接触になってしまう単に直角を有するコーナと比較して大きな表面積にわたってクリップハウジング又はカテーテルハブの内面と接触することを可能にする。側壁及びデフレクタ板は、針先が見えないように且つ針先の内側にあって針から滴る可能性がある血液のあらゆる滴を捕らえるように十分なほど互いに近接していることが好ましい。
【0025】
例示的な実施形態では、さらに後述するように、作動位置での針移動の範囲を定めるために、突出部又は窪み120がデフレクタ板112に設けられる。一方の側壁110Aから他方の側壁110Bまで延びる窪み部120の幅は、窪み部の近位側及び遠位側に隣接するデフレクタ板の幅よりもわずかに短い。デフレクタ板112に沿った幅が異なることにより、滑らかな縁116の形態に従って窪み120を形成することができる。好ましいこととは言えないが、先端保護装置100は、交点118とデフレクタ板112の種々の交点において直角の角部を有しても良く、これは本発明の精神及び範囲から逸脱しない。組み立てを容易にするために、オプションの開口122をデフレクタ板112に組み込んでもよい。例えば、第1の保護装置体のアーム140(図5)を押し下げるために、ピン(図示せず)を開口122に挿入することができる。これは、カニューレ又は針の先端を保護装置内に挿入するのに役立ち得る。好ましくは、第1の保護装置体102の遠位壁150が斜めに形成されていればカニューレの先端が遠位壁を下方に撓ませるので自動的に組み立てられることができるため、開口は不要となる。
【0026】
図3は、図2の先端保護装置100の上面図である。例示的な実施形態では、遠位側に隣接する部分よりも短い幅寸法を有する縮小近位部124がデフレクタ板112に設けられる。縮小近位部124の各側にギャップ126が形成され、これは各側壁110A、110B及び縮小近位部124によって部分的に画定される。しかしながら、2つのギャップ126は、デフレクタ板112の全長を同じ幅に保つことによって埋められてもよい。
【0027】
例示的な実施形態では、側壁取り付け板128A、128Bが各側壁110A、110Bの近位端に組み込まれる。先端保護装置100の長さ方向に中心線又は軸を引いた場合、2つの側壁取り付け板128A、128Bは、軸に直交して配置されると共に、概ね同一平面上にある。しかしながら、2つの取り付け板128A、128Bは重なり合って同一平面上になくてもよく、これは本発明の精神及び範囲から逸脱しない。さらに後述するように、2つの取り付け板128A、128Bは、第2の保護装置体104を第1の保護装置体102に取り付ける手段である。
【0028】
図4は、図2の先端保護装置100の下面図である。第1の保護装置体102は、第2の保護装置体104の2つの側壁110A、110B間に配置されて明確に図示されている。例示的な実施形態では、先端保護装置100をハウジング又はハブ内で安定させるためのアーム130が組み込まれる。アーム130は、近位壁132から遠位側に延びており(図5も参照)、下流部136と、これに対して斜めに配置されている上流部134とによって画定される曲折部又は頂点133を含む(図5も参照)。さらに後述するように、アーム130は、先端保護装置100の近位端の点138を中心にして枢動、屈曲、又は片持ち支持されるように構成され、ヒンジのように働く。近位壁132及び2つの取り付け板128A、128Bは共に、保護装置近位端129を画定する。
【0029】
安定用のアーム130よりも比較的長い長さの、針先を塞ぐアーム140も、近位壁132から延びる。例示的な実施形態では、アーム140は、開口142及び2つのリブ144を備える。好ましくは、開口142は長円形であり、2つのリブ144はコイニング加工によって形成される。アーム140はさらに、前腕部146、戻り部148(図5)、針先を覆う遠位壁150(図5)、及び使用位置で針の一部に重なる端部又はフィンガ152(図5)を含む。前腕部146、戻り部148、遠位壁150、及びフィンガ152を合わせて、遠位アーム閉塞部と総称する。例示的な実施形態では、開口142があるアームの部分は、アームの残りの部分よりも幅広である。この構成により、開口142を組み込むだけでなく2つのコイニング加工リブ144も組み込む余地が与えられる。代替的に、アーム部の各縁にタブ又はフラップを組み込んでからこれらを曲げて2つのリブを形成してもよい。この代替的なアームは、コイニング加工リブがないことで、全体にわたって均一な幅を有することができる。
【0030】
図5は、線5−5に沿った図4の先端保護装置の側断面図である。2つのアーム130、140が近位壁132の2つの異なる縁から延びているのを見ることができる。図11に示すように、先端保護装置100が針に配置されると、2つのアームは針の中心線から見て互いに針の反対側から出る。しかしながら、長い方のアーム140は、近位壁132の遠位側に斜めに延びて針軸を横切り、針はアームの開口142を貫通する。しかしながら、短い方のアーム130は、針に接触することも針を横切ることもない。より好ましくは、短い方のアーム130の端縁154は、使用準備完了位置及び使用位置の両方で針から離間している。
【0031】
さらに後述するように、先端保護装置100が使用準備完了位置にあるとき、長い方のアーム140は、短い方のアーム130に向けて半径方向外方に付勢されてフィンガ152が針の側部と接触する。そのために、長い方のアーム140は、針の側部と当接接触しているときに近位壁132の点156を中心にして少なくとも部分的に曲げられる。
【0032】
図3図5と組み合わせて再度参照すると、デフレクタ板112は、第2の保護装置体104の遠位壁106の外周輪郭114から片持ち支持されている。これが、デフレクタ板112全体、より具体的には縮小近位部124が跳躍板のように撓むことを可能にする。例示的な一実施形態では、デフレクタ板112及び短い方のアーム130の両方がハウジングの壁面によって内方に付勢されるように、短い方のアーム130の頂点133とデフレクタ板112の丸い縁116との間の寸法は、先端保護装置が入れられるハウジングの内部曲率よりも大きいべきである。換言すれば、先端保護装置100は、図11に示すカテーテルハブ等のハウジング内に装着されると、デフレクタ板112の2つの丸い縁及び短い方のアーム130で締め付けられる。この締め付け作用により、先端保護装置をハウジング又はハブに取り外し可能に固定することができる。
【0033】
図6は、線6−6に沿った図5の先端保護装置の端面図である。2つの側部取り付け板128A、128Bは、近位壁132の近位側に面する面と接触して図示されている。例示的な一実施形態では、2つの取り付け板128A、128Bは、超音波、高周波溶接、又はレーザを用いて近位壁132に溶接される。針(図示せず)を受け入れるために、開口158が第1の保護装置体102の近位壁132に設けられる。2つの取り付け壁128A、128Bはいずれも、合わさると近位壁132の開口158よりも大きな直径になる2つの半円に類似した切り抜き160を組み込んでいる。代替的に、2つの取り付け壁128A、128Bは、互いに重なって、それぞれが近位壁の開口158の直径よりも大きな直径の別個の開口を組み込んでいてもよい。
【0034】
図7は、線7−7に沿った図5の先端保護装置100の正面図である。明確に図示されているように、第2の保護装置体104は、複数の壁構造、すなわち2つの側壁110A、110B及びデフレクタ板112、前壁106、及び2つの取り付け壁128A、128B(図示せず)を組み込むことで、空洞155及び中心アクセス開口162を備える筐体を形成する(図5も参照)。図7に加えて図5及び図6を参照すると、短い方のアーム130は、中心アクセス開口162から突出して先端保護装置とカテーテル等のハウジングとの間の接触点を提供する。さらに後述するように、長い方のアーム140(図5)も同様に、使用準備完了位置にあるときに中心アクセス開口162から突出するが、使用位置にあるときには空洞155内に移動する。
【0035】
図8は、第2の保護装置体104無しで示す図1の第1の保護装置体102の側断面図である。例示的な実施形態では、第1の保護装置体102は、1枚の一体ステンレス鋼シートから形成される。第1の保護装置体102が図8に示す形状に形成される前に、開口142が打ち抜かれて2つのリブ144がコイニング加工されるべきである。
【0036】
図9は、線9−9に沿った図8の第1の保護装置体102の断面端面図である。2つのリブ144、リブ間の開口142、及び近位壁132の一部が図示されている。
【0037】
図10は、線10−10に沿った図8の第1の保護装置体102の端面図である。近位壁132の開口158を通して、長円形の開口142及び遠位壁150の一部を見ることができる。例示的な実施形態では、4つの切り欠き164が近位壁132の各コーナに形成される。切り欠き164は、2つのアーム130及び140が発生させるばね力の量を減らすように構成される。切り欠きの大きさは、所望のばね力を得るように変えることができる。
【0038】
図5を再度参照すると、本明細書に開示されている先端保護装置は、3つの可動アーム112、130、及び140を備えるハウジングを有する装置とみなすことができる。先端保護装置は、針先端をブロックするアームを備えた針保護装置を内部に有するデフレクタプレートあるいはアームを保持するハウジングと該デフレクタプレートとともに、先端保護装置をハブあるいはクリップハウジングに弾性的に固定するアームとを有する。
【0039】
図11は、図2図10の先端保護装置100を組み込んだカテーテル組立体166の概略側断面図である。概して、カテーテル組立体166は、針170が取り付けられている針ハブ168を備える。針170は、鋭利な針先172及び不均一針部175(図13)を備え、先端保護装置100、カテーテルハブ174、及びカテーテルチューブ176を通って突出する。不均一針部175は、ひだ、堆積材料、曲折部、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましい実施形態では、針ハブ168は、カテーテルハブ174の内壁面180内に突入するノーズ部178を組み込んでいる。ノーズ部178は、使用準備完了位置(図11)で先端保護装置100の保護装置近位端129を、カテーテルハブ174の壁面180によって画定される空洞182内に所望の深さ又は長さまで押し込むように構成される。
【0040】
例示的な実施形態では、空洞182は、帯又は幅に沿った空洞の内周全体又は図示のように内周の一部に延び得る凹部184を含む。凹部184は、フィンガ部152及び戻り部148への圧縮又は付勢力の量を減らすように第1の保護装置体102の遠位端に追加の空間を与える。これはさらに、針170と先端保護装置100との相対移動時にフィンガ部152と針の側部との間の抗力を減らす。明らかに、針組立体166は凹部184が無くても実現することができるが、あまり好ましくはない。
【0041】
図示のように、凹部184は、近位テーパ部186及び遠位テーパ部を備える。図11に加えて図5を参照すると、第1の保護装置体102の前腕部146、戻り部148、及び遠位壁150は全て、近位テーパ部186の遠位側に離間して配置される。近位テーパ部186と遠位アーム閉塞部との物理的な接触が、カテーテルハブ174に対する針ハブ168の移動時にカテーテルハブと先端保護装置100との間の固定関係を維持するのに必要ないため、この離間構成が採用されている。しかしながら、二者間の接触は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに組み込むことができる。
【0042】
次に図12を参照すると、これは線12−12に沿った図11のカテーテル組立体の断面端面図であり、先端保護装置100は、デフレクタ板112の2つの湾曲した縁116及び短い方のアーム130の概ね頂点133の領域の2つの縁がカテーテルハブ174の内壁面180に接触した状態で図示されている。4つの接触点は、4つの接触矢印で図12に示されている。したがって、例示的な一実施形態では、アーム130が第1の保護装置体102の近位端から片持ち支持され、別のアーム112が第2の保護装置体104の遠位端から片持ち支持されて、先端保護装置100をカテーテルハブ内に保持する。換言すれば、保護装置ハウジングの近位壁から片持ち支持されるアームと、同じ保護装置ハウジングの遠位壁から片持ち支持される第2のアームとを有する先端保護装置が、本明細書では提供される。代替的な実施形態では、片持ちアーム112が省かれて、2つの側壁110A、110Bが短い方のアーム130と共に、代替的な先端保護装置をカテーテルハブ又はクリップハウジング等のハウジングに取り外し可能に固定するように構成される。
【0043】
図13は、針170を図11の右側に後退させた使用位置を示す、図11のカテーテル組立体166の部分側断面図である。先端保護装置100、及び針170は、カテーテルハブ174を片手で保持しながら針ハブ168を図11の右側に引き抜く(又はその逆、すなわち針ハブ168を保持しながらカテーテルハブ174を図11の左側に移動させる)ことによって、図13に示す使用位置に移動させられる。針先172がフィンガ部152の近位側に移動すると、アーム140に働く付勢力が除去されるため、アームは図13に示す曲がりの小さな状態に跳ね戻される。針ハブ168が右側に移動し続けると、第1の保護装置体102の近位壁132の開口158よりも大きな断面寸法を有する針170の不均一部175は、開口158外周との係合によって開口158に接触して近位壁を右側に引っ張る。近位壁132への引張力が片持ちアーム112及び短い方のアーム130とカテーテルハブの内面180との間の摩擦力よりも大きくなると、摩擦係合が克服されて先端保護装置100がカテーテルハブから離脱する。
【0044】
図14は、先端保護装置100がカテーテルハブ174から取り外されて遠位壁150が針先を塞いでいる状態を示す。先端保護装置は、2つの側壁110A、110B、及びデフレクタ板112を組み込んでいるため、針先に近接して針170の円周の約3/4を覆う。針先172に近接した針170の残りの部分は、短い方のアーム130と、第1の保護装置体102の遠位閉塞部とによっても部分的に覆われる。針先は、見えないように又は接触しないように守られる。針先から滴る可能性がある血液は、いずれかの壁によって捕らえられるように構成される。
【0045】
図14に示すように、点189付近で先端保護装置の遠位端に力が加わった場合、針170は、枢動してフィンガ部152によって提供される覆いから離れ、第2の保護装置体104の遠位壁106の開口108から再度突出するように操作され得る。したがって、例示的な実施形態では、デフレクタ板112の窪み又は突出部120は、点189又はその付近で先端保護装置に直接的又は付随的な力が加わった場合の針の移動を阻止又は制限するように構成される。突出部120は、フィンガ部152の半径方向の針先172の移動を防止するように構成される。
【0046】
図15は、本発明の態様に従って提供される第2の保護装置体188の概略斜視図である。この代替的な第2の保護装置体188は、図8図10に示す第1の保護装置体と協働して代替的な先端保護装置を形成することができる。例示的な実施形態では、代替的な第2の保護装置体188は、概ね曲線状の外面と、デフレクタ板に切り抜き194を作って2つの逃げ点196を含めることによって形成されるタブ192とを備えるデフレクタ板190を組み込んでいる。タブ192は、前述の第2の保護装置体の突出部又は窪み120のように、針が先端保護装置の内部空間から枢動して出るのを防止するように構成される。例示的な一実施形態では、デフレクタ板190は、側壁110A及び110Bに一体形成される。これは、例えば深絞り成形法を用いて行うことができる。さらに代替的に、2つの側壁110A、110Bとデフレクタ板190との間に切り抜かれたノッチがあってもよい。
【0047】
例示的な実施形態では、デフレクタ板190の曲線状外面の少なくとも一部が、デフレクタ板190がカテーテル組立体の一部としてカテーテルハブに入れられるとカテーテルハブの内面に接触するように構成される。代替的に、デフレクタ板190は、2つの側縁198のみが2つの側壁110A、110Bと共にカテーテルハブ又はクリップハウジングの内面に接触するように平面を組み込む。
【0048】
先端保護装置及び先端保護装置を組み込んだ針装置の限られた実施形態が本明細書において具体的に説明及び図示されているが、多くの変更形態及び変形形態が当業者には明白であろう。例えば、本明細書に記載の先端保護装置は、Luther他の米国特許第6,585,704号に示すもの等、曲折部を有する針のスリーブと組み合わせて用いることができる。代替的に、本明細書に記載の先端保護装置は、Fergusson他の米国特許第6,595,955号に示すもの等、シリンジと共に用いる針の外側ハウジングと共に用いることができる。さらに代替的に、本明細書に記載の先端保護装置は、PROTECTIVE DEVICE FOR AN INJECTION NEEDLEと題する第10/856,315号に示すもの等、先端保護装置を針に沿って摺動させるグリップ部品と共に用いることができる。上記特許及び出願は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に援用される。したがって、本発明の原理に従って構成される先端保護装置及びその構成要素は、本明細書に具体的に記載されている以外の形で具現されてもよい。本発明は、以下の特許請求の範囲にも規定される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15