(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727440
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】床用目地装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-225896(P2012-225896)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-77298(P2014-77298A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−240175(JP,A)
【文献】
特開2006−063630(JP,A)
【文献】
特許第3409312(JP,B2)
【文献】
特開2007−070958(JP,A)
【文献】
特開2008−106516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を介して設けられた左右の躯体の一方の躯体の目地部側床面に、反目地部側が傾斜面に形成された目地プレートスライド支持凹部と、前記左右の躯体の他方の躯体の前記目地プレートスライド支持凹部と対応する目地部側床面に形成された目地プレート支持凹部と、この目地プレート支持凹部に後端部が支持され、先端部が前記目地プレートスライド支持凹部に支持された前記目地部を覆う床用目地プレートと、この床用目地プレートの後端部を該床用目地プレートの先端部が上方へ回動移動できるように前記他方の躯体に取付ける取付け具と、前記床用目地プレートの後部の下部位置の他方の躯体に固定された支持台、この支持台の上面に固定された外周に傾斜面の切り欠きが形成されたガイド筒、このガイド筒内に回動可能で、かつ上方へスライド移動して前記床用目地プレートの後部を押し上げることができる押し上げ杆、この押し上げ杆に前記切り欠きを介して一端部が固定され、他端部が前記一方の躯体の目地部側部位に直角よりも小さな角度で当接する、地震で目地部が狭くなると前記切り欠きの傾斜面に沿って移動することによって、前記押し上げ杆を上方へ押し上げるアームとからなる床用目地プレート押し上げ装置とからなることを特徴とする床用目地装置。
【請求項2】
床用目地プレート押し上げ装置は床用目地プレートの後部下部位置の他方の躯体に固定された支持台と、この支持台の上面に固定された対称部分に傾斜面の切り欠きを有するガイド筒と、このガイド筒の中心部に固定された支持軸と、該ガイド筒の内壁面に回転可能で、かつ前記床用目地プレートの後部を押し上げることができる筒状の押し上げ杆と、この押し上げ杆に前記切り欠きを介して一端部が固定され、他端部が前記一方の躯体の目地部側部位に、直角よりも小さな角度で当接する、地震で目地部が狭くなると前記切り欠きの傾斜面に沿って移動することによって、前記押し上げ杆を上方へ押し上げるアームと、この押し上げアームが取付けられた部位と対応する部位の、前記押し上げ杆に固定された切り欠きの傾斜面と当接するガイド片と、前記アームを一方の躯体の目地部側部位に、直角よりも小さな角度で当接させる前記切り欠きに形成したストッパー、あるいは押し上げ杆に設けたストッパーとで構成されたことを特徴とする請求項1記載の床用目地装置。
【請求項3】
地震で目地部が狭くなると、床用目地プレートの先端部が目地プレートスライド支持凹部の傾斜面に沿って上昇するのと、床用目地プレート押し上げ装置で床用目地プレートの後部が押し上げられるのがほぼ同一となるように設定されるとともに、床用目地プレート押し上げ装置は床用目地プレートの中央部に1個あるいは両側部寄りに2個配置されていることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の床用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた左右の建物を含む左右の躯体の目地部を覆う床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床用目地装置は左右の躯体間の目地部が地震で狭くなると、該目地部を覆っていた床用目地プレートの先端部が上方へ押し上げられるようにスライド移動して危険になるため、床用目地プレートの後端部を床用目地プレートの後部底面に固定した傾斜面が形成された、せり上げプレートを、せり上げバーを用いたせり上げ機構を用いて上方へ押し上げていた。
【0003】
しかしながら、このように構成された床用目地装置は、せり上げバーをせり上げプレートの傾斜面に沿って移動させることにより、床用目地プレートを上方へ移動させるため、せり上げバーやせり上げプレートに大きな力が加わるため、十分な強度を有する構造にしなければならないとともに、床用目地プレートの底面にせり上げプレートを固定しなければならず、その作業が大変であるとともに、床用目地装置の設置作業に苦労するという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3402307号公報
【特許文献2】特許第3409312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、地震で目地部が狭くなるとスムーズに床用目地プレートの後端部を上方へ押し上げることができるとともに、その押し上げ構造が簡単で、床用目地プレートを加工しなくても設置することができ、その設置作業が容易で、楽に行なうことができる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は目地部を介して設けられた左右の躯体の一方の躯体の目地部側床面に、反目地部側が傾斜面に形成された目地プレートスライド支持凹部と、前記左右の躯体の他方の躯体の前記目地プレートスライド支持凹部と対応する目地部側床面に形成された目地プレート支持凹部と、この目地プレート支持凹部に後端部が支持され、先端部が前記目地プレートスライド支持凹部に支持された前記目地部を覆う床用目地プレートと、この床用目地プレートの後端部を該床用目地プレートの先端部が上方へ回動移動できるように前記他方の躯体に取付ける取付け具と、前記床用目地プレートの後部の下部位置の他方の躯体に固定された支持台、この支持台の上面に固定された外周に傾斜面の切り欠きが形成されたガイド筒、このガイド筒内に回動可能で、かつ上方へスライド移動して前記床用目地プレートの後部を押し上げることができる押し上げ杆、この押し上げ杆に前記切り欠きを介して一端部が固定され、他端部が前記一方の躯体の目地部側部位に直角よりも小さな角度で当接する、地震で目地部が狭くなると前記切り欠きの傾斜面に沿って移動することによって、前記押し上げ杆を上方へ押し上げるアームとからなる床用目地プレート押し上げ装置とで床用目地装置を構成している。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、ガイド筒内に回動可能で、かつ上方へスライド移動する床用目地プレートの後部を押し上げる押し上げ杆を用いているので、床用目地プレートに床用目地プレート押し上げ装置を取付けることなく、設置作業が楽で、容易に行なうことができる。
(2)前記(1)により、押し上げ杆をガイド筒の切り欠きの傾斜面と、一方の躯体によって押し圧されて回転するアームで回動させながら上方へ移動させるので、スムーズに押し上げ杆を回動させるとともに、上方へ移動させることができる。
(3)前記(1)により、押し上げ杆をガイド筒内で回動と上方へスライド移動させるため、従来のように衝突的にぶつかることなく、回動させるだけであるため、壊れずらく、耐久性の向上を図ることができる。
(4)前記(1)により、アームをガイド筒内に挿入された押し上げ杆に固定されているため、その取付けが容易で、かつ従来のように取付け金具が不要で、容易に設置することができる。
(5)請求項2も前記(1)〜(4)と同様な効果が得られるとともに、押し上げ杆が偏心することなく、さらにスムーズに回動や上方への移動をよりスムーズに行なわせることができる。
(6)請求項3も前記(1)〜(4)と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を実施するための第1の形態の平面図。
【
図4】本発明を実施するための第1の形態の床用目地プレート押し上げ装置の平面図。
【
図5】本発明を実施するための第1の形態の床用目地プレート押し上げ装置の側面図。
【
図6】本発明を実施するための第1の形態の目地部が狭くなった床用目地プレート押し上げ装置の平面図。
【
図8】本発明を実施するための第1の形態の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図9】本発明を実施するための第1の形態の目地部が広くなった状態の説明図。
【
図10】本発明を実施するための第2の形態の平面図。
【
図12】本発明を実施するための第2の形態の床用目地プレート押し上げ装置の平面図。
【
図13】本発明を実施するための第3の形態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0011】
図1ないし
図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた左右の建物を含む左右の躯体3、3間を覆う本発明の床用目地装置で、この床用目地装置1は前記左右の躯体3、3の一方の躯体3の目地部側床面に、反目地部側が傾斜面4に形成された目地部2の幅寸法Lとほぼ同じ幅寸法に形成された目地プレートスライド支持凹部5と、この目地プレートスライド支持凹部5と対応する他方の躯体3の目地部側床面に形成された目地プレート支持凹部6と、この目地プレート支持凹部6に後端部が支持され、先端部が前記目地プレートスライド支持凹部5に支持された前記目地部を覆う床用目地プレート7と、この床用目地プレート7後端部を該床用目地プレート7の先端部が上方へ回動できるように前記他方の躯体3の目地プレート支持凹部6に取付ける取付け具8と、前記左右の躯体3、3が地震で目地部が狭くなり、床用目地プレート7の先端部が前記傾斜面4に沿って上方へ移動すると、後部を上方へ押し上げる床用目地プレート押し上げ装置9とで構成されている。
【0012】
前記床用目地プレート7は、
図2に示すように金属材で浅皿状に形成された床用目地プレート本体10と、この床用目地プレート本体10の前方と後方の上部にヒンジ部材11、11を介して回動可能に取付けられたカバープレート12、12と、前記床用目地プレート本体10内に充填されたモルタルやコンクリート13と、このモルタルやコンクリート13の上面に、必要に応じて設置されるレンガやタイル等の床化粧板14とで構成されている。
【0013】
前記取付け具8は前記床用目地プレート7の両側後部に底面が開口する係合ピン収納ボックス15、15と、この係合ピン収納ボックス15、15内に頭部16aが挿入され、前記床用目地プレート7の上下移動が可能に係止する、前記目地プレート支持凹部6の他方の躯体3に固定された係合ピン16、16とで構成されている。
【0014】
前記床用目地プレート押し上げ装置9は前記床用目地プレート7の後部中央部の下部位置の他方の躯体3に複数個のアンカーピン17で固定されたアングル材製の支持台18と、この支持台18の上面に固定された対応する外周に傾斜面19とストッパーとなる垂直面20の切り欠き21、21が形成されたガイド筒22と、このガイド筒22内に回転可能で、かつ上方へスライド移動して、前記床用目地プレート7の後部を押し上げることができる押し上げ杆23と、この押し上げ杆23に前記切り欠き21を介して一端部が固定され、他端部が前記一方の躯体3の目地部側部位に直角よりも小さな角度で当接する、地震で目地部が狭くなると前記切り欠き21の傾斜面19に沿って移動することによって、前記押し上げ杆23を上方へ押し上げるアーム24と、前記押し上げ杆23必要によっては固定された、前記アーム24が前記切り欠き21の傾斜面19と接触する状態と同じように、前記切り欠き21の傾斜面19と当接するガイド片25とからなり、前記アーム24が直角よりも小さな角度位置で前記切り欠き21のストッパーとしての垂直面20と当接して、地震時の揺れ動きにアーム24がスムーズに一方の躯体3の押し圧力で回動できるように設定されている。
【0015】
なお、本発明の実施の形態では目地プレートスライド支持凹部5や目地プレート支持凹部6に直接床用目地プレート7を設置したものについて説明したが、本発明はこれに限らず、必要に応じて目地プレートスライド支持凹部5や目地プレート支持凹部6の上面を金属材製の下地材で覆ってもよい。
【0016】
上記構成の床用目地装置1は、通常時には
図1および
図2に示すように左右の躯体3、3間の目地部2は床用目地プレート7で、ほぼ同一面状態で覆われ、人や車両が安全に通行することができる。
【0017】
地震で、
図8に示すように目地部2の幅寸法が狭くなると、左右の躯体3、3が近づくため、床用目地プレート7の上端部が床用目地プレートスライド支持凹部5、傾斜面4をスライド移動し、上方へ押し上げられるとともに、床用目地プレート7の後部は床用目地プレート押し上げ装置9のアーム24が一方の躯体3によって押し付けられ、ガイド筒22内の押し上げ杆23を回動させる。
【0018】
このアーム24の押し上げ杆23を回動させる動作で、該アーム24は切り欠き21の傾斜面19に沿って上方へ移動するため、押し上げ杆23も回動しながら上方へ移動し、床用目地プレート7の後部を上方へ押し上げる。
【0019】
このため、地震で目地部が狭くなると床用目地プレート7の先端部は傾斜面4で上方へ移動され、後部は床用目地プレート押し上げ装置9で上方へ押し上げられ、床用目地プレート7が傾斜状態となることなく、ほぼ水平状態で上下移動させる。
【0020】
なお、床用目地プレート7をほぼ水平状態で上下移動させるために、傾斜面4の傾斜とアーム24の回動によって、該アーム24がガイド筒22の傾斜面19に沿って上方へ移動する移動量を同じに設定することにより、ほぼ水平状態で床用目地プレート7を上方へ移動させることができる。
【0021】
この時、床用目地プレート7の両端部のカバープレート12、12によって、該両端部は傾斜面26、26となり、安全に使用することができる。
【0022】
なお、地震での揺れ動きが停止すると、床用目地プレート7の自重で押し上げ杆23やアーム24が自動的に元の状態へ戻る。
【0023】
地震によって、
図9に示すように目地部2が広くなると、床用目地プレート7の先端部が目地プレートスライド支持凹部5上をスライド移動して、その揺れ動きを吸収する。
なお、地震での揺れ動きが停止すると、自動的に元の状態へ戻る。
【0024】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図10ないし
図15に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図10ないし
図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、ガイド筒22の中心部に支持軸27を固定するとともに、該支持軸27によって回動可能で上下移動できる筒状の押し上げ杆23Aを使用した床用目地プレート押し上げ装置9Aを用いた点で、このような床用目地プレート押し上げ装置9Aを用いて構成した床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、支持軸27により、よりスムーズに押し上げ杆23Aを上方へスライド移動させることができる。
【0026】
図13ないし
図15に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、床用目地プレート7の中央部と両端部との中間部に位置するように床用目地プレート押し上げ装置9、9を配置した点で、このように床用目地プレート押し上げ装置9、9を配置した床用目地装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、より床用目地プレート7を安定状態で支持することができる。
【0027】
なお、床用目地プレートの両側後端底面に係合ピンを突出させ、目地プレート支持凹部に該係合ピンをスライド移動可能に支持するガイド筒を埋設した取付け具を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は目地部を介した左右の躯体間の床目地部を覆う床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0029】
1、1A、1B:床用目地装置、2:目地部、
3:躯体、 4:傾斜面、
L:目地部の幅寸法、
5:目地プレートスライド支持凹部、
6:目地プレート支持凹部、 7:床用目地プレート、
8:取付け具、
9、9A:床用目地プレート押し上げ装置、
10:床用目地プレート本体、 11:ヒンジ部材、
12: カバープレート、 13:モルタルやコンクリート、
14:床化粧板、 15:係合ピン収納ボックス、
16:係合ピン、 17:アンカーピン、
18:支持台、 19:傾斜面、
20:ストッパーとなる垂直面、 21:切り欠き、
22:ガイド筒、 23、23A:押し上げ杆、
24:アーム、 25:ガイド片、
26:傾斜面、 27:支持軸。