(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)デバイスは、基板と、アノードと、有機化合物からなる正孔輸送層と、適切なドーパントを含む有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードを備えている。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視角が広く、フル-カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。Tangらは、この多層OLEDデバイスをアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
【0003】
真空環境中での物理的気相蒸着は、小分子OLEDデバイスで用いられているような有機材料の薄膜を堆積させる主要な方法である。このような方法はよく知られており、例えばBarrのアメリカ合衆国特許第2,447,789号とTanabeらのヨーロッパ特許第0,982,411号に記載されている。OLEDデバイスの製造に用いられる有機材料は、速度に依存した望ましい気化温度またはそれに近い温度に長時間にわたって維持したとき、分解することがしばしばある。感受性のある有機材料をより高温に曝露すると、分子構造が変化し、それに伴って材料の性質が変化する可能性がある。
【0004】
このような材料の熱に対する感受性の問題を解決するため、ほんの少量の有機材料を蒸発源に供給し、その少量をできるだけ少なく加熱するということが行なわれてきた。このようにすると、材料は、大量に分解する温度曝露閾値に到達する前に消費される。この方法の欠点は、ヒーターの温度に制約があるために利用できる気化速度が非常に小さいことと、蒸発源の中に存在する材料が少量であるために蒸発源の動作時間が非常に短いことである。小さな蒸着速度と蒸発源への頻繁な材料供給が、OLED製造設備のスループットに関する実質的な制約となっている。
【0005】
装填する有機材料全体をほぼ同じ温度に加熱することの二次的な結果として、追加の有機材料(例えばドーパント)をホスト材料と混合するのが実際的ではなくなる。ただし例外は、ドーパントが気化するときの挙動および蒸気圧が、ホスト材料が気化するときの挙動および蒸気圧と非常に近い場合である。一般に、気化するときの挙動および蒸気圧が両者で非常に近いことはないため、その結果として、従来の装置は、ホスト材料とドーパント材料を同時に堆積させるのに別々の蒸発源を必要とすることがしばしばある。複数のこれら蒸発源は、それぞれの蒸発源から蒸発する材料をOLED基板上の共通する一点に収束させようとすると、角度をつけた状態に維持せねばならない。互いに離れた複数の蒸発源を利用する場合には、同時に蒸着できる材料の数が明らかに制限され、ホスト膜とドーパント膜の均一性が明らかに不足する。
【0006】
OLEDデバイスで使用される有機材料は、気化速度と蒸発源の温度の関係が比例状態から大きくはずれている。蒸発源の温度がわずかに変化すると、気化速度が非常に大きく変化する。それにもかかわらず従来の装置では、蒸発源の温度を、気化速度を制御するための唯一の手段として利用している。温度をうまく制御するため従来の蒸発源では、よく断熱された熱伝導率の大きい材料で構成されていて本体部の体積が有機装填物の体積よりもはるかに大きい加熱構造が一般に利用されている。大きな熱伝導率によって構造全体の温度がうまく一様になり、大きな熱量が、温度のゆらぎを小さくして温度を極めて小さな範囲内に維持することを助ける。このような方法により、定常状態での気化速度の安定性に関しては望ましい効果がもたらされたが、作動開始時に好ましくないことが起こる。このような装置は、作動させるとき何時間にもわたって動作させた後に、定常状態の熱平衡になって安定な気化速度が実現される。
【0007】
従来の蒸発源のさらに別の制約は、装填した有機材料が消費されるにつれて蒸気用マニホールドの形状が変化することである。この変化があるため、気化速度を一定に維持するにはヒーターの温度を変化させねばならない。実際、オリフィスから出てくる蒸気の気柱の形状は、蒸発源の内部における有機材料の厚さおよび分布の関数として変化することが観察されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで
図1を参照すると、本発明による装置の一実施態様の断面図が示してある。気化装置5は、有機材料を気化させて基板の表面に膜を形成するための装置であり、透過可能な第1の部材40と、マニホールド60と、計量手段を備えている。計量手段とは、粉末状の有機材料を流動化させるか、流動化した粉末の形態になった有機材料を供給し、その粉末化した有機材料を計量し、そのように流動化した粉末流を透過可能な第1の部材40の表面に誘導することを意味する。透過可能な第1の部材40は、マニホールド60の一部であってもよい。マニホールド60には1つ以上の開口部90もある。気化装置5は、1つ以上のシールド70も備えている。
【0021】
一実施態様では、容器45は、粉末形態になった所定量の有機材料を収容する容器である。この実施態様の計量バルブ55は、有機材料を流動化し、その流動化した粉末有機材料を気化速度に比例して変化する制御された速度で計量する手段を備えている。ノズル15を有する有機材料導入口10は、流動化した粉末有機材料流を透過可能な第1の部材40の表面に誘導する手段である。粉末を流動化する公知の手段として、振動手段、装填物を粒子にする手段、粒子を流体に部分的に懸濁させる手段などがある。
【0022】
別の一実施態様では、容器45は、装填された有機材料を不活性なキャリア・ガス中のエーロゾルとして懸濁させた状態に維持する容器である。この実施態様の計量バルブ55は、流動化した粉末有機材料のエーロゾルを気化速度に比例して変化する制御された速度で計量する手段を備えている。
【0023】
別の一実施態様では、容器45は、超臨界溶媒(例えば超臨界CO2)の中に有機材料が溶けた溶液を保持する。超臨界溶媒の中に有機材料が溶けた溶液を蒸発させたり急膨張させたりするのは、流動化した粉末形態の有機材料を供給するための1つの手段である。この方法は、Graceらのアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号に詳しく記載されている。計量バルブ55は、このようにして生成させた流動化した粉末状有機材料を気化速度に比例して変化する制御された速度で計量する手段を備えている。
【0024】
有機材料は、単一の成分を含むこと、または気化温度が異なる2種類以上の有機成分を含むことができる。例えば
図2は、OLEDデバイスで一般的に使用される2つの有機材料について蒸気圧と温度の関係を示すグラフである。気化速度は蒸気圧に比例するため、望む気化速度が決まると、
図2のデータを利用して、望む気化速度に対応する必要な加熱温度を決めることができる。
【0025】
流動化した粉末有機材料は、計量バルブ55を用いて制御された速度で計量する。ノズル15を有する有機材料導入口10は、流動化した粉末有機材料流を透過可能な第1の部材40の表面に誘導する手段を備えている。ノズル15は、加熱されたノズルにすることが可能である。ノズル15の外面は、凝縮した有機材料がその表面に蓄積してノズルのオリフィスが詰まらないようにするため、蒸気の凝縮温度よりも高温に維持することが好ましい。ノズルの内側は、同様に材料が気化する前に液化して詰まらないようにするため、粉末有機材料の気化温度または融点よりも低い温度に維持せねばならない。この条件は、表面の内側と外側で別々の要素を有する構成のノズルを使用することを示唆している。
【0026】
透過可能な第1の部材40は一定の温度に加熱される。透過可能な第1の部材40は、開放セル耐熱性フォームの形態を取ることができる。このタイプの開放性を有するさまざまな耐熱性金属やセラミック・フォームが例えばウルトラメット社から入手できる。このようなフォームは90%を超える開放領域を持ち、市場ではガス拡散装置として利用されている。
透過可能な第1の部材40の加熱手段は、誘導カップリングまたはRFカップリング、近接した位置にある放射式加熱素子、抵抗式加熱手段のいずれかを備えている。透過可能な第1の部材40は、望む速度で有機材料を気化させるのに十分な一定の温度に加熱することができる。この温度は、有機材料またはその各有機成分の気化温度よりも高温である。ある1つの有機成分は連続した温度範囲にわたって異なる速度で気化するため、気化速度の温度依存性は対数になる。望む堆積速度を選択する際には、有機材料を気化させるのに必要な温度も決定する。その温度を、速度に依存した望む気化温度と呼ぶことにする。有機材料が2種類以上の有機成分を含んでいる場合には、透過可能な第1の部材40の温度は、有機材料の各成分が同時に気化するよう、各成分の気化温度よりも高温にする。気化した有機材料の蒸気は素早く透過可能な第1の部材40を通過し、加熱されたガス用マニホールド60の中に入るか、標的とする基板へと直接到達することができる。蒸気が望む気化温度になっている時間は短いため、熱分解は非常に少ないか、まったくない。有機材料が高温(すなわち速度に依存した気化温度)になっている時間は、従来の装置と方法よりも数桁短い(従来技術での数時間〜数日に対して数秒)。そのため有機材料を従来よりも高い温度に加熱できる。したがって本発明の装置と方法では、有機材料の顕著な分解を引き起こすことなく、実質的により大きな気化速度を実現できる。気化速度が一定だと、気柱の形状が一定になってその形が維持される。この明細書では、気柱は、気化装置5から出てくる蒸気雲として定義される。有機材料のエーロゾルは、透過可能な第1の部材40の下面に衝突して気化し、蒸気が透過可能な第1の部材40を通って加熱されたガス用マニホールド60の中に入ることがわかる。本発明は、エーロゾルが透過可能な第1の部材40のマニホールド側に衝突する場合にも実施できる。この場合には、蒸気が加熱されたガス用マニホールドの中で直接生成され、透過可能な第1の部材40を通過することはない。そのような場合、透過可能な第1の部材40は、厚さ全体にわたって多孔性ではないことが好ましく、多孔性媒体の大きな比表面積特性を少なくともエーロゾルが衝突する面で保持している。
【0027】
透過可能な第1の部材40から出る気化した有機材料はマニホールド60に通じている。したがって気化した有機材料はマニホールド60の中に回収される。気化が続くと圧力が大きくなり、蒸気流がマニホールド60から一連の開口部90を通って出ていき、第2の部材50の中に入る。第2の部材50は、図示したようにマニホールド60と一体化すること、または別のユニットとして取り付けることができる。開口部90がマニホールド60に通じているため、マニホールド60の中に回収された気化した有機材料は、開口部90を通ってOLED基板などの表面に誘導することができる。マニホールド60と第2の部材50は、加熱手段(例えば上記の透過可能な第1の部材40)によって一定の温度に加熱することができる。マニホールドの長さ方向のコンダクタンスは、開口部のコンダクタンスの和よりも大まかに2桁大きくなるように設計してある。そのことに関しては、Graceらによって上記アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号に記載されている。このコンダクタンス比によってマニホールド60内の圧力が一定になりやすくなるため、気化速度が局所的に一様でない可能性があるにもかかわらず、蒸発源の長さ方向に沿って分布している開口部90を通る流れの不均一性が最少になる。
【0028】
向かい合った位置にある標的基板に向けて放射される熱を減らすことを目的として、1つ以上の熱シールド70が、加熱されたマニホールド60の隣に位置している。熱シールドは、その熱シールドから熱を逃がすため、基部ブロック20に熱的に接続されている。この基部ブロック20を貫通する制御通路30は温度制御流体を流すことができる。この流体は、基部ブロック20から熱を吸収するか、基部ブロック20に熱を供給するのに適した流体である。したがって制御通路30は、その制御通路30内の流体の温度を変えることによって熱シールド70の温度を調節する手段となる。この流体は、気体、液体、混合相のいずれかにすることができる。気化装置5は、制御通路30を通じて流体を吸引する手段を備えている。このような吸引手段(図示せず)は当業者には周知である。熱シールド70の上部は、その熱シールドの相対的に冷たい面に凝縮する蒸気を最少にするため、開口部の平面よりも下に来るように設計されている。
【0029】
速度に依存した気化温度まで加熱されるのは有機材料のわずかな部分(透過可能な第1の部材40に残っている部分)だけである一方で、その材料の塊は気化温度よりもはるかに低い温度に維持されるため、透過可能な第1の部材40での加熱を中断する(例えば計量手段55を通過する流動化した粉末有機材料流を止めることで、透過可能な第1の部材40の通過を止める)手段によって気化を中断することが可能である。この操作を実行することで、基板表面のコーティングを行なっていないときに、有機材料を保護し、関連するあらゆる装置(例えば蒸着チェンバーの壁)の汚染を最少にすることができる。これについてはあとで説明する。
【0030】
透過可能な第1の部材40は粉末有機材料がその中を自由に通過するのを妨げるため、気化装置5はどの向きで使用してもよい。例えば気化装置5は、その下に位置する基板を被覆するため、
図1に示したものに対して180°の角度をなす方向を向けることができる。これは、従来の加熱ボートには見られない利点である。
【0031】
実際には気化装置5を以下のように使用することができる。ある量の有機材料(1つまたはそれ以上の成分を含むことができる)を気化装置5の容器45に供給する。透過可能な第1の部材40を有機材料またはその各成分の気化温度よりも高温に加熱し、有機材料が消費されていくとき一定の温度に維持する。粉末有機材料を流動化し、計量バルブ55を用いて制御された速度で計量し、有機材料導入口10に、したがってノズル15に送る。そのノズル15は、流動化した粉末流を透過可能な第1の部材40の表面に誘導する。流動化した粉末有機材料流は、透過可能な第1の部材40を通過するとき、望む速度に依存した気化温度に加熱されて気化する。有機材料が複数の成分を含んでいる場合には、各成分が同時に気化する。気化した有機材料はマニホールド60に回収され、第2の部材50に設けられた開口部90を通過する。その開口部が、気化した有機材料を基板の表面に誘導して膜を形成させる。第2の部材50が加熱されるときには、有機材料が消費されるのに合わせて一定の温度に加熱される。
【0032】
あるいは気化装置5を以下のように使用することもできる。有機材料の超臨界CO2溶液(1つまたはそれ以上の成分を含むことができる)を気化装置5の容器45に供給する。透過可能な第1の部材40を有機材料またはその各成分の気化温度よりも高温に加熱する。超臨界CO2溶液が蒸発すると流動化した粉末形態の有機材料が提供されるため、それを、計量バルブ55を用いて制御された速度で計量して有機材料導入口10に、したがってノズル15に送る。そのノズル15は、流動化した粉末流を透過可能な第1の部材40の表面に誘導する。流動化した粉末有機材料流は、透過可能な第1の部材40を通過するとき、望む速度に依存した気化温度に加熱されて気化する。有機材料が複数の成分を含んでいる場合には、各成分が同時に気化する。気化した有機材料はマニホールド60に回収され、第2の部材50に設けられた開口部90を通過する。その開口部が、気化した有機材料を基板の表面に誘導して膜を形成させる。
【0033】
ここで
図3を参照すると、基板を取り囲む蒸着チェンバーを備える本発明の装置の一実施態様が示してある。蒸着チェンバー80は、気化装置5から来た有機材料10の膜でOLED基板85を被覆することのできる閉鎖装置である。蒸着チェンバー80は、制御された状態に維持される(例えば圧力は、真空源100によって1トル以下にされる)。蒸着チェンバー80は、被覆されていないOLED基板85を装着し、被覆されたOLED基板85を除去するのに使用できる装着用ロック装置75を備えている。OLED基板85は並進移動装置95によって移動させることができるため、気化した有機材料10がOLED基板85の表面全体に均一にコーティングされる。図では気化装置5の一部が蒸着チェンバー80によって囲まれているように描いてあるが、他の構成も可能であることがわかるであろう。例えば、気化装置5が蒸着チェンバー80によって完全に取り囲まれている構成がある。
【0034】
実際には、装着用ロック装置75を用いてOLED基板85を蒸着チェンバー80の中に配置し、並進移動装置95またはそれに付随する装置によってOLED基板85を保持する。気化装置5は上記のように動作し、並進移動装置95は、気化装置5から有機材料の蒸気が放出される方向に対して垂直にOLED基板85を移動させる、そのため有機材料の膜がOLED基板85の表面に形成される。
【0035】
ここで
図4を参照すると、一部を本発明に従って製造できるOLEDデバイス110の画素の断面が示してある。このOLEDデバイス110は、少なくとも、基板120と、カソード190と、カソード190から離れたアノード130と、発光層150を備えている。このOLEDデバイス110は、正孔注入層135と、正孔輸送層140と、電子輸送層155と、電子注入層160も備えることができる。正孔注入層135と、正孔輸送層140と、発光層150と、電子輸送層155と、電子注入層160は、アノード130とカソード190の間に配置された一連の有機層170を含んでいる。有機層170は、本発明の装置と方法によって堆積させることが最も望ましい層であり、これらの層を含む要素は、本発明の有機材料である。これらの要素についてさらに詳しく説明する。
【0036】
基板120は、有機の固体、または無機の固体、または有機の固体と無機の固体の組み合わせにすることができる。基板120は、堅固でも可撓性があってもよく、個別の部材(例えばシートやウエハ)として、または連続したロールとして加工することができる。典型的な基板材料としては、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、酸化物半導体、窒化物半導体、ならびにこれらの組み合わせがある。基板120は、複数の材料が均一に混合したもの、または複数材料の複合体、または多層材料にすることができる。基板120は、OLEDデバイスを作るのに一般的に使用されているOLED基板(例えばアクティブ-マトリックス用の低温ポリシリコンまたはアモルファス-シリコンからなるTFT基板)にすることができる。基板120は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。光透過特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミック、回路板材料などのほか、OLEDデバイス(パッシブ・マトリックス・デバイスでもアクティブ・マトリックス・デバイスでもよい)を形成するのに一般に用いられている他の任意の材料が挙げられる。
【0037】
1つの電極が基板120の上に形成され、それがアノード130になるのが最も一般的である。EL光を基板120を通して見る場合、アノード130は、興味の対象となる光に対して透明であるか、実質的に透明である必要がある。本発明で有用な透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物と酸化スズであるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛、インジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード用材料として用いることができる。EL光を上部電極を通して見るような用途では、アノード用材料の透光特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での具体的な導電性材料としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。好ましいアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させることができる。アノード用材料は、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。
【0038】
必ずしも必要なわけではないが、有機発光ディスプレイでは、正孔注入層135をアノード130の上に形成すると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、その後に形成する有機層の膜形成特性を改善することと、正孔輸送層140に正孔を容易に注入することに役立つ。正孔注入層135で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、無機材料(例えばバナジウム酸化物(VO
x)、モリブデン酸化物(MoO
x)、ニッケル酸化物(NiO
x))などがある。有機ELデバイスで有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許0,891,121 A1と1,029,909 A1に記載されている。
【0039】
必ずしも必要なわけではないが、正孔輸送層140をアノード130の上に形成して配置すると有用であることがしばしばある。望ましい正孔輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、この明細書に記載した装置と方法を利用して堆積させることができる。正孔輸送層140で有用な正孔輸送材料は周知であり、例えば、芳香族第三級アミンなどの化合物がある。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0040】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されている少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式A:
【化1】
で表わされるものがある。ただし、
Q
1とQ
2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され;
Gは、結合基(例えば、炭素-炭素結合のアリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。
【0041】
一実施態様では、Q
1とQ
2の少なくとも一方は、多環縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q
1とQ
2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分であることが好ましい。
【0042】
構造式Aに合致するとともに2つのトリアリールアミンを含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式B:
【化2】
で表わされる。ただし、
R
1とR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R
1とR
2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R
3とR
4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式C:
【化3】
に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R
5とR
6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R
5とR
6のうちの少なくとも一方は、多環縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0043】
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式Cに示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式D:
【化4】
で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に、アリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)の中から選択され;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R
7、R
8、R
9は、独立に、アリール基の中から選択される。
【0044】
典型的な一実施態様では、Ar、R
7、R
8、R
9のうちの少なくとも1つは多環縮合構造(例えばナフタレン)である。
【0045】
上記の構造式A、B、C、Dのさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0046】
OLEDデバイスにおける正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物、または芳香族第三級アミン化合物の混合物から形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式Bを満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式Dに示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入・輸送層の間に配置された層となる。この明細書に記載した装置と方法を利用して単成分層または多成分層を堆積させることができ、その装置と方法を順番に使用して多数の層を堆積させることができる。
【0047】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1,009,041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0048】
発光層150は、正孔-電子再結合に応答して光を出す。発光層150は、一般に正孔輸送層140の上に堆積される。望ましい有機発光材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、放射線によるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、この明細書に記載した装置と方法を利用して堆積させることができる。有用な有機発光材料は周知である。アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層は、発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト化合物(すなわちドーパント)をドープしたホスト材料を含んでいる。後者の場合、光は主としてドーパントから発生する。ドーパントは、特定のスペクトルを持つ色の光が出るように選択する。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の材料にすることができる。ドーパントは、通常は、強い蛍光を出す染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。ドーパントは、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
この明細書に記載した装置と方法を利用すると、複数の蒸発源を必要とせずに多成分ゲスト/ホスト層をコーティングすることができる。
【0049】
有用であることが知られているホスト分子および発光分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,294,870号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0050】
8-ヒドロキシキノリンおよび同様の誘導体の金属錯体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0051】
【化5】
ただし、Mは金属を表わし;
nは1〜3の整数であり;
Zは、各々独立に、少なくとも2つの縮合芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす)。
【0052】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価の金属が可能であることが明らかである。
金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(ホウ素、アルミニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価の金属を使用することができる。
【0053】
Zは、少なくとも2つの縮合芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0054】
発光層150のホスト材料としては、9位と10位に炭化水素置換基または置換された炭化水素置換基を有するアントラセン誘導体が可能である。例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0055】
ベンズアゾール誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の別のクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0056】
望ましい蛍光ドーパントとしては、ペリレンまたはその誘導体、アントラセンの誘導体、テトラセンの誘導体、キサンテンの誘導体、ルブレンの誘導体、クマリンの誘導体、ローダミンの誘導体、キナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、ビス(アジニル)メタンホウ素錯体化合物、カルボスチリル化合物などがある。
【0057】
他の有機発光材料としては、Wolkらが、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第6,194,119 B1号とその中で引用している参考文献に記載しているように、ポリマー物質(例えばポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ-ポリフェニレンビニレン、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体)が可能である。
【0058】
必ずしも必要なわけではないが、OLEDデバイス110は、発光層150の上に配置された電子輸送層155を含んでいると好ましい場合がしばしばある。望ましい電子輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、この明細書に記載した装置と方法を利用して堆積させることができる。電子輸送層155で用いるのが好ましい電子輸送材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物(オキシンそのもの(一般には8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含む)である。このような化合物は、電子の注入と輸送を容易にし、優れた性能を示すのを助け、しかも容易に薄膜の形態にすることができる。考慮するオキシノイド系化合物の具体例は、すでに説明した一般式Eを満たす化合物である。
【0059】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光増白剤がある。一般式Gを満たすベンズアゾールも、有用な電子輸送材料である。
【0060】
他の電子輸送材料としては、ポリマー物質が可能である。それは例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレンや、他の導電性ポリマー有機材料(例えば『導電性分子と導電性ポリマーのハンドブック』、第1〜4巻、H.S. Nalwa編、ジョン・ワイリー&サンズ社、チチェスター、1997年に記載されているもの)である。
【0061】
電子注入層160がカソード190と電子輸送層155の間に存在していてもよい。電子注入材料の具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化アルカリ塩(例えば上記のLiF)や、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をドープした有機層がある。
【0062】
カソード190は、電子輸送層155の上、または発光層150の上(電子輸送層を使用しない場合)に形成される。アノード130を通して光が出る場合には、カソード材料をほぼ任意の導電性材料にすることができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(3.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとしては、仕事関数が小さな金属または金属塩からなる薄い層の上に導電性金属からなるより厚い層を被せた二層がある。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に記載されているものがある。
【0063】
カソード190を通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第5,776,623号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0,732,868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。