(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727470
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】マニュアルギヤボックスの自動操作用装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/28 20060101AFI20150514BHJP
F16H 63/32 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
F16H61/28
F16H63/32
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-516033(P2012-516033)
(86)(22)【出願日】2010年6月14日
(65)【公表番号】特表2012-530881(P2012-530881A)
(43)【公表日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】SE2010050664
(87)【国際公開番号】WO2010147543
(87)【国際公開日】20101223
【審査請求日】2012年1月27日
【審判番号】不服2014-11876(P2014-11876/J1)
【審判請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】0950469-7
(32)【優先日】2009年6月17日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】594097848
【氏名又は名称】スカニア シーブイ アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ハグベリ, マグヌス
【合議体】
【審判長】
小柳 健悟
【審判官】
冨岡 和人
【審判官】
森川 元嗣
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/099155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
F16H 61/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ギヤのための可動係合要素が設けられた自動切り替えマニュアルギヤボックスの操作装置であって、回転シャフト(1)、および選択された係合要素を動かすための回転可能なシフトフィンガ手段(2、3、4)が設けられており、各シフトフィンガ手段(2、3、4)が、いくつかの独立したシフトフィンガ(2、3、4)を含み、各シフトフィンガが、特定の係合要素に関連づけられており、他のシフトフィンガに依存せずに独立して軸回転可能であり、前記シフトフィンガ(2、3、4)が、軸方向に互いに前後して回転シャフト(1)に沿って取りつけられている操作装置であって、
前記回転シャフト(1)が、さまざまな動作位置につくために軸方向に可動であり、各動作位置において、前記回転シャフト(1)が、前記シフトフィンガ(2、3、4)の少なくとも1つと連帯して回転するために、前記シフトフィンガの少なくとも1つに連結されて、他のシフトフィンガに対して軸回転可能となり、
前記回転シャフト(1)が、各シフトフィンガ(2、3、4)の空孔部を通って延び、
前記各空孔部が、この空孔部を通って、前記回転シャフト(1)の軸方向に延びる少なくとも1つの溝(15)を有し、
前記回転シャフト(1)には、前記回転シャフト(1)の動作位置に応じて前記シフトフィンガ(2、3、4)の少なくとも1つの対応する溝(15)に係合し、当該対応する溝(15)と協働して軸回転するための少なくとも1つの半径方向の突出部(14)が設けられており、
各シフトフィンガ(2、3、4)にはインデックス要素(16)が設けられており、
このインデックス要素が、対応するばね(17)によって前記回転シャフトの方に付勢され、
前記回転シャフト(1)の前記少なくとも1つの半径方向の突出部(14)と同一の円周上には、前記インデックス要素(16)のいずれかを収容することができる少なくとも1つのくぼみ(18)が設けられていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記回転シャフトを回転させるソレノイドまたは電動モータを含むことを特徴とする、請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
請求項1又は2による操作装置(200)が設けられていることを特徴とする、自動切り替えマニュアルギヤボックス(202)。
【請求項4】
請求項3に記載のギヤボックス(202)が設けられていることを特徴とする、自動車両(205)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動切り替えマニュアルギヤボックスの操作装置に関し、前記ギヤボックスには、各ギヤのための可動の係合要素が設けられており、前記操作装置には、選択された係合要素を動かすための軸回転可能なシフトフィンガ手段および回転シャフトが設けられている。
【背景技術】
【0002】
自動切り替えマニュアルギヤボックスの一般的に存在する構成では、通常はシャフトの形状をした係合要素を動かすことにより、それぞれのギヤを係合または解放する。この係合要素は、シフトフィンガによる作用を受けるノッチすなわちヨーク様ショルダ部を有し、このシフトフィンガが、ノッチに係合し、ギヤを係合または解放させるためにそれぞれの方向に係合要素を押す。
【0003】
シフトフィンガは、回転シャフトの周囲を軸回転することにより、この動作を行う。このためには、シフトフィンガと、この軸回転する操作シャフトとをまず軸方向に動かして、シフトフィンガを、それぞれの係合シャフトと協働するための位置に軸方向に配置しなければならない。
【0004】
シフトフィンガと共に回転シャフトを軸方向に動かすには、比較的大きな力を加える必要があり、通常は空気圧または油圧手段を使用して行われる。したがって、ギヤチェンジは、面倒で、不正確になる傾向がある。
【0005】
この種のギヤボックスは、とりわけUS20040154419、US20020189388、US2001037698およびFR2860567において記述されている。
【0006】
US20040154419A1には、ギヤボックス作動のための機構が記述されているが、ここでは、ソレノイドまたは電動モータによりシャフトおよびプルソレノイドを軸回転させ、このプルソレノイドが、ギヤボックス内のどのギヤを係合することになっているかによって複数のシフトフィンガ、すなわちパッケージ内の2つ以上のフィンガの向きを変えることができる。向きを変えるのは、二重のギヤチェンジ、すなわち2つのセレクタシャフトが同時に係合することを防ぐためである。この向きの変更は、軸回転の動きおよび軸方向の動きを伝えるセレクタシャフトに沿って、軸方向に行われる。
【0007】
US20020189388A1は、完全にソレノイドおよびただ1つのシフトフィンガに基づくギヤチェンジ機構であり、ソレノイドを使用してシフトフィンガを7つの異なる位置に切り替える。この切り替えを行うために3つのソレノイドが使用されている。
【0008】
US2001037698では、ソレノイドによって軸回転するシフトフィンガが記述されている。
【0009】
FR2860567では、スライドに互いに別個に係合できるいくつかのシフトフィンガについて記述されており、このスライドは、他のギヤが操作されることになっている場合に誤ったギヤが係合することを防止する、一種の固定用スライドである。
【0010】
本発明の目的は、本明細書が関係する種類の、上述の欠点を解消する操作装置を提案することであり、したがって操作装置によって、ギヤの係合および解放が、現況の技術でできるよりもいっそう滑らかで簡易にできるようにすることである。
【発明の概要】
【0011】
提示した目的は、本発明によって、導入部に示した種類の操作装置により達成され、この操作装置は、シフトフィンガ手段がいくつかの独立したシフトフィンガを含むという特別な特徴を有しており、各シフトフィンガが、特定の係合要素に関連づけられ、他のシフトフィンガに依存せずに、独立して軸回転可能である。
【0012】
各シフトフィンガの動作が独立し、非依存的であることにより、ギヤの係合または解放に関連してシフトフィンガを軸方向に動かす必要がなくなる。したがって、原理的には、シフトフィンガを、さらには回転シャフトも、軸方向に可動ではないようにしてもよい。これにより、ギヤボックスの操作を簡単にすることができ、精度が高くなる。加えるべき力が小さくなり、回転シャフトの軸方向に必要な力を著しく小さくするか、または無くすことができる。したがって、動力装置を簡素化し、空気圧手段なしで構成することができる。また、シフトフィンガを軸方向に動かせるようにする必要性を無くすことにより、知られている類似の装置よりも操作装置の構成を簡単にすることができる。
【0013】
好ましい一実施形態によれば、シフトフィンガは、軸方向に互いに前後して回転シャフトに沿って取りつけられており、この回転シャフトが、さまざまな動作位置につくために軸方向に可動であり、各動作位置において、シフトフィンガの1つのみと連帯して回転するために、シフトフィンガの1つのみに連結され、他のシフトフィンガに対して軸回転可能となる。
【0014】
このバージョンは、すべてのシフトフィンガを操作するために同じシャフトを使用するという点で、軸回転する動きを生じさせるための非常に簡易な解決策を提供する。また、このバージョンでは、操作装置のいかなる部分をも軸方向に動かす必要がない。
【0015】
さらに好ましい一実施形態によれば、回転シャフトが各シフトフィンガの空孔部を通って延び、各空孔部が、この空孔部を通って軸方向に延びる少なくとも1つの溝を有し、回転シャフトには、回転シャフトの動作位置に応じてシフトフィンガの少なくとも1つの対応する溝と協働して軸回転するための少なくとも1つの半径方向の突出部が設けられている。
【0016】
この結果として、回転シャフトと各シフトフィンガとの間にスプライン様の連結が確立し、したがって軸回転する動きが有効かつ確実に伝達される。回転シャフトを動かすことが、回転シャフトの突出部を、意図したギヤに関連するシフトフィンガと協働して軸回転させる簡易な方法となる。
【0017】
さらに好ましい一実施形態によれば、各シフトフィンガには、インデックス要素を設け、このインデックス要素が、対応するばねによって回転シャフトの方に押しつけられ、回転シャフトには、インデックス要素のいずれかを収容することができるくぼみを設けている。
【0018】
このインデックス要素により、回転シャフトの軸方向の位置決めが容易になるので、意図したシフトフィンガを軸回転させるための正確な位置に回転シャフトが到達するようになる。くぼみが、軸方向に移動して、インデックス要素のうちの1つに合う位置までくると、ばねがインデックス要素をくぼみの中にはめ込み、それによって、ギヤチェンジのために軸回転を行うシフトフィンガに対して正確な軸方向位置を示す。他のギヤに係合するために、この位置から軸方向に移動すると、インデックス要素は、ばねの作用に対抗してこのノッチから押し出され、回転シャフトの周囲部に接するようになる。
【0019】
このインデックス要素は、ボールの形状にするか、または少なくとも回転シャフトに面する側を球状の構成し、くぼみは、対応する球形状にすることが有利である。そうすると、インデックス要素をはめ込み、押し出すことが容易になる。
【0020】
さらに好ましい一実施形態によれば、シフトフィンガは、軸方向に互いに前後して回転シャフトパッケージに沿って取りつけられており、回転シャフトパッケージはいくつかの同軸の回転シャフトを含み、これらの回転シャフトは、互いに対して軸回転可能であり、それぞれ特定のシフトフィンガと連帯して回転するために、特定のシフトフィンガに連結される。
【0021】
この代替実施形態により、各シフトフィンガをしっかりと固定するロック機構を提供する必要がなくなり、この点において簡易化策となる。ギヤの選択は、選択された1つの回転シャフトを軸回転することにより行う。
【0022】
さらに好ましい一実施形態によれば、各回転シャフトには、回転シャフトと連帯して回転するために、回転シャフトに連結された、半径方向に突出する軸回転要素を設けており、この軸回転要素が、軸方向に互いに前後して回転シャフトパッケージに沿って配置されている。
【0023】
この軸回転要素により、各回転シャフトの軸回転が容易になる。また、この軸回転要素が軸方向に独立していることにより、回転シャフトの1つのみを軸回転させることが容易になる。各軸回転要素は、半径方向のピンの形状にすることが有利である。
【0024】
さらに好ましい一実施形態によれば、装置はスライドを含み、このスライドは、軸方向に可動で、回転シャフトパッケージ上で軸回転可能であり、スライドの軸方向位置に従って、選択された軸回転要素に対して軸回転作用するショルダ要素を備えている。
【0025】
このスライドおよび軸回転要素は、ギヤの係合のための簡易かつ堅固で、確実な機構を構成する。ギヤの選択は、スライドのショルダ要素が各軸回転要素に作用する位置に来るようにスライドを動かすことにより行う。その後、スライドを軸回転させることにより、関係するシフトフィンガを、そのシフトフィンガに関連する回転シャフトを介して容易に軸回転させることができる。
【0026】
さらに好ましい一実施形態によれば、このスライドは、回転シャフトの最外側上に支持されている切断された円柱の形状をして、軸方向に延びる開口部を有しており、この開口部は、より小さい外周幅を有する第1の部分と、より大きい外周幅を有する少なくとも1つの第2の部分とを含んでおり、小さい方および大きい方の外周幅は、ギヤを係合または解放するために必要なシフトフィンガの角運動の少なくとも2倍である角度の範囲の差によって規定されている。
【0027】
このように構成したスライドのショルダ要素は、開口部の小さい方の部分の縁部自体が、ショルダ要素として機能するので、非常に簡易な構造になる。開口部の残りの部分の幅がより大きいため、他の回転シャフトの軸回転要素に影響することなくスライドを軸回転させることができる。
【0028】
さらに好ましい一実施形態によれば、開口部は、大きい幅を有する2つの部分を含んでおり、大きい幅を有する部分の各々が、軸方向に沿って、小さい幅を有する部分の各側に位置している。
【0029】
したがって、ギヤの係合に必要なスライドの軸方向の最大移動量は、最小限になる。
【0030】
さらに好ましい一実施形態によれば、小さい方の幅は5°〜10°の範囲内の角度に対応し、大きい方の幅は120°〜175°の範囲内の角度に対応する。
【0031】
上述した小さい方、および大きい方の幅の相対的な規定は、通常この角度範囲内において満足される。小さい方の幅は、少なくとも各軸回転要素の外周範囲と同じ大きさを有していなければならず、さらに軸回転要素とスライドとの間の軸方向の相対的移動を阻害しないように一定の公差を有していなければならない。提示した範囲は、この点で有利である。大きい方の幅を提示した範囲内にすれば、どちらの方向であってもギヤチェンジの動きのための空間については充分な余裕が得られる。大きい方の幅が180°未満であるという事実により、回転シャフトパッケージの周囲でスライドを確実にセンタリングできる。
【0032】
さらに好ましい一実施形態によれば、操作装置は、回転シャフト/回転シャフトの1つを軸回転させるように構成したソレノイドまたは電動モータを含む。
【0033】
本発明の操作装置により、ギヤの係合または解放のためには、比較的小さい力のみをかければよいようになる。この実施形態は、空気圧または油圧による作動を省くことが可能なことを活かしている。それによって、装置は、とりわけ簡易で確実になる。
【0034】
また、本発明は、本発明に従った、特に本発明の好ましい実施形態のいずれかによる操作装置を設けたギヤボックスに関する。
【0035】
本発明は、さらに、本発明のギヤボックスを設けた自動車両に関する。
【0036】
本発明のギヤボックスおよび本発明の自動車両は、本発明の操作装置およびその好ましい実施形態に類似した種類の利点を提供し、この利点は上述した。
【0037】
本発明の上述した有利な実施形態は、請求項1に従属するクレームに示す。さらに好ましい実施形態は、当然、上述した好ましい実施形態の考え得るすべての組み合わせの形態となり得ることに注目されたい。
【0038】
本発明による操作装置のいくつかの例に関して以下に述べる詳細な説明により、添付の図面を参照しながら、本発明についてさらに説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の第1の実施形態の例による操作装置の側面図である。
【
図4】第2の実施形態の例による操作装置の斜視図である。
【
図5】
図4の操作装置の詳細部を上から見た図である。
【
図7】
図4の操作装置の詳細部における縦断面図である。
【
図8】本発明による操作装置を有するギヤボックスを模式的に示す図である。
【
図9】
図8によるギヤボックスを設けた車両を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明による操作装置の側面図であり、本図では、回転シャフト1に、いくつかのシフトフィンガ、この例では3つのシフトフィンガ2、3、4が設けられている。各シフトフィンガは、スプライン様の連結よって、回転シャフト1と連帯して回転するために、回転シャフト1に連結できる。シフトフィンガの1つが、回転シャフト1と連帯して回転するために、回転シャフト1にしっかりと連結されると、他の2つは空走する。したがって、回転シャフト1が軸回転することにより、シフトフィンガ2、3、4のうち連帯して回転するために連結されているシフトフィンガが軸回転すると、シフトフィンガの図面の下方に突出している部分が動いて、紙面に対して直角方向に飛び出すことになる。他の2つのシフトフィンガは、静止している。軸回転したシフトフィンガは、紙面に対して直角に延びる図示しない係合シャフトに連結され、係合シャフトを動かして、図示しないギヤボックス内のギヤの1つを係合または解放させる。
【0041】
参照番号11は、回転シャフト1を軸方向に動かすための駆動装置を示す。駆動装置11は、ソレノイドまたは電動モータにすることが有利である。参照番号10は、回転シャフトを回転させるための駆動機構を示す。
【0042】
図2に、
図1の右側の部分の斜視図を示すが、ここでは、特定の詳細部をより明確にするためにシフトフィンガの1つを取り外してある。各シフトフィンガ3、4は、回転シャフト1を囲む環状部分12、および環状部分12から突出し、平坦な形状をしているフィンガ部分13を含む。各シフトフィンガは、その環状部分内に半径方向の空孔部を有しており、この空孔部が、
図3に関連してより詳細に記述する各インデックス機構5、6、7を収容する。回転シャフト1は、2つの突出部14を有しており、そのうちの1つだけを
図2に示し、もう1つの突出部は正反対の側に位置している。各突出部14は、シフトフィンガの厚さより多少小さい軸方向の範囲で軸方向に延びている隆起14の形状をしている。
【0043】
図3に、中間のシフトフィンガ3を軸方向に対する横断面図で示し、ここではシフトフィンガ3が、回転シャフトの突出部14に対して中央となるように軸方向に位置決めされている。シフトフィンガ3は2つの溝15を有し、この溝15は正反対に配置され、突出部14を補完するように成形されている。したがって、シフトフィンガ3の溝15が突出部14と協働する状態で、スプライン様の連結が、回転シャフト1と、軸方向に位置決めされたシフトフィンガ3との間で確立される。
【0044】
インデックス機構5は、ボール16の形状のインデックス要素16を回転シャフトの方へ付勢するばね17を含む。回転シャフト1には、ボール16を収容することができる球状のくぼみ18を設けている。図示した位置において、ボール16は、くぼみ18内に押しつけられている。回転シャフトのくぼみ18は、シャフトの隆起14に対して中央となるように軸方向に位置している。
【0045】
図2および
図3に示すように、ギヤチェンジは以下のように行われる。ニュートラルの状態において、シフトフィンガ2、3、4は、互いに中央に位置して、それぞれの溝15が合わさって1つの溝を形成するようになっている。この状態では、回転シャフト1は、その隆起14が、複数のシフトフィンガの溝15に対して中央に位置するように位置決めされている。回転シャフト1のくぼみ18も、1つのシフトフィンガ、有利には中間のシフトフィンガ3のボール16に対して中央となるように軸方向に位置している。
【0046】
シフトフィンガ4が係合するギヤを作動させる場合、回転シャフトを、軸方向に沿って
図2の右へ移動させる。これにより、そのボール16はくぼみ18から押し出されて回転シャフトの周囲部上を軸方向に滑る。この軸方向の移動によって、くぼみ18が図面の右側のシフトフィンガ4に到達すると、シフトフィンガ4のボールは、くぼみ18にはまり込み、こうして明確な軸方向位置が示されることになる。この移動中に、回転シャフトの隆起14は移動して、右側のシフトフィンガ4の対応するノッチに係合する。
【0047】
この位置において、回転シャフト1は軸回転し、スプライン様の連結14、15により、シフトフィンガ4を軸回転させ、図示しない係合シャフトに作用させる。この軸回転の動きにより、シフトフィンガ4のインデックス機構7のボールは外側へ押され、回転シャフト1上を外周方向に滑る。
【0048】
図示した例において、回転シャフトは、ボールの固定のために1つのくぼみ18のみを有する。その代わりに、くぼみの数を、シフトフィンガの数と同じにして、ニュートラルの状態で、各ボール16がそれぞれのくぼみに押し込まれるようにしてもよい。あるいは、この1つまたは複数のくぼみ18を、周方向に延びる環状の輪郭の溝の形状にしてもよい。
【0049】
本発明による操作装置の他の例を
図4から
図7に示す。この場合、回転シャフトパッケージ101は、シフトフィンガ102、103、104を操作する。回転シャフトパッケージ101は、3つの同軸の回転シャフト101a、101b、101cで構成されており、各回転シャフトが、シフトフィンガ102、103、104のうちのそれぞれ1つと連帯して回転するために、それぞれのシフトフィンガと連結されている。したがって、外側の2つの回転シャフト101b、101cは、中空シャフトであるが、内側の回転シャフト101aは中実でもよい。
【0050】
図示のように、各回転シャフトの左側の端部には、ニュートラルの状態ではすべて同じ軸面に位置する、それぞれ半径方向に突出するピン105、106、107が設けられている。内側の駆動軸101aは、中間の駆動軸101bよりも多少左方向の外側に延在しており、駆動軸101b自体は、最外側の駆動軸101cよりも多少外側に延在している。この目的は、内側の2つのシャフト上のピン105、106のために空間を提供することである。回転シャフトを軸回転させるスライド110を、ピンの領域に設けている。回転シャフトパッケージ101は、図面の右側の端部において、第1の例に類似した方法で、ベアリングブラケット109に支持されたベアリングハウジング108内にジャーナル受けされている。
【0051】
スライド110は、全体として円筒形で、外側の回転シャフト101cの外径に対応する内径を有しており、軸方向に動かし、軸回転できるように回転シャフト101c上にジャーナル受けされる。軸方向に延びる開口部111は、スライド110の全体の長さに沿って延在する。
【0052】
この開口部は、幅が変化しており、スライド110の長さの3分の1にわたってそれぞれ延びる3つの部分111a、111b、111cに分割されている。かろうじて半回転の角度に相当する比較的幅の大きい部分111aは、スライド110の一方の端部に位置している。同じ幅のさらなる部分111cは、スライド110のもう一方の端部に位置している。それらの間の、スライドの軸方向の中央部に、第1および第2の部分よりも幅が相当に小さい部分111bがある。この中間部分111bの幅は、約10°の角度に相当する。
【0053】
この中間部分は、広い方の部分111a、111cを構成する開口部の縁部のそれぞれの側から広がり出る舌115の形状である。第3の部分111bは、他の2つに対して対称に位置している。
【0054】
ギヤの係合および解放は、最も小さい幅を有する部分111bが、ピン105、106、107のうち、係合するギヤに関連するピンに対して軸方向に中央になるように、スライド110を回転シャフトパッケージ101に沿って軸方向に移動させることによって行う。その後、スライド110を軸回転すると、最も幅の小さい部分111bの1つの縁部が、対応するピン、図面では中間のピン106に押しつけられ、部分111bがピン106を共に軸回転させる。その結果として、ピン106が固定されている回転シャフト101bが軸回転し、したがって、この回転シャフトに固定されているシフトフィンガ103が軸回転する。次いで、シフトフィンガ103は、従来の方法で、関連づけられた係合シャフト(図示せず)を動かす。
【0055】
スライド110が軸回転してピン106を動かすとき、他の2つのピン105、107に対して軸方向に位置する開口部の部分111a、111cが相当大きい幅を有しているため、他の2つのピン105、107は影響を受けない。最も幅が小さい部分111bの縁部と、他の2つの部分111a、111cの対応する縁部との間の角距離が、必要な移動角度より大きいため、2つの部分111a、111cのそれぞれの縁部は、軸回転する間それぞれのピンには到達しない。
【0056】
最も幅の小さい部分は、必ずしもスライドの軸方向の中間に位置している必要がないことを理解されたい。代わりに、最も幅の小さい部分はスライドの一方の端部にあってもよく、その場合には、他の2つの部分が合わさってより幅の大きい1つの部分を形成する。
【0057】
参照番号112は、スライド110の軸方向移動の制御手段を示し、参照番号113は、スライド上に提供したピボットラグ114の1つを介するスライドの軸回転の制御手段を示す。制御手段自体に、従来の空気圧機器または油圧機器を含めてもよいが、本発明による操作装置の場合は、この目的ために、ソレノイドまたは電動モータ等のより簡易で安価な手段を使用することができるようになる。したがって、操作装置はこの種類にするのが有利である。
【0058】
図7は各回転シャフト101a、101b、101cを示すが、各回転シャフトが、関連づけられたそれぞれの操作フィンガ102、103、104にまで延在しており、それぞれの操作フィンガと連帯して回転するために、それぞれの操作フィンガに連結されている。この図面は、シャフトパッケージの外側に置かれたスライド110も、図面のシャフトパッケージの左の端部に示す。
【0059】
図8は、本発明による操作装置200を設けたギヤボックス202を模式的に示しており、それによってギヤチェンジの動きが、従来の方法で、係合シャフト203および切り替えヨーク204を有する係合要素201を介して伝達される。
【0060】
図9は、本発明によるギヤボックス202を設けた車両205を示す。