特許第5727478号(P5727478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5727478閉じ込め層を製作するための方法および物質ならびにそれによって製作されるデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727478
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】閉じ込め層を製作するための方法および物質ならびにそれによって製作されるデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20150514BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150514BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   H05B33/12 B
【請求項の数】2
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2012-522796(P2012-522796)
(86)(22)【出願日】2009年12月21日
(65)【公表番号】特表2013-500575(P2013-500575A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】US2009068918
(87)【国際公開番号】WO2011014216
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2012年11月29日
(31)【優先権主張番号】61/228,689
(32)【優先日】2009年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダム フェニモア
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エム.ジーバース
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−235280(JP,A)
【文献】 特開2009−087760(JP,A)
【文献】 特開2004−235128(JP,A)
【文献】 特開2004−071286(JP,A)
【文献】 特開2001−237069(JP,A)
【文献】 特開2004−234901(JP,A)
【文献】 特開2005−093751(JP,A)
【文献】 特表2011−501389(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/055628(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/042474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極を含み、その陽極上に正孔注入層および正孔輸送層がある有機電子デバイスを製作するための方法であって、前記方法が、
前記正孔注入層を前記陽極の上に形成させる工程であって、前記正孔注入層が導電性ポリマーおよびフッ素化酸ポリマーを含みかつ第1表面エネルギーを有する工程と;
下塗層を前記正孔注入層上に直接形成させる工程と;
前記下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
前記下塗層を現像して、前記下塗層を前記非暴露領域から実質的に除去して、現像下塗層のパターンを前記正孔注入層上に生じさせる工程であって、前記現像下塗層が前記第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
前記下塗層の現像パターン上に正孔輸送層を液体付着によって形成して前記正孔輸送層が前記下塗層のパターンの上にだけに残るようにする工程と
を含む、有機電子デバイスを製作するための方法。
【請求項2】
前記下塗層が正孔輸送物質を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2009年7月27日に出願された米国仮特許出願第61/228,689号明細書の優先権を主張するものであり、その全体を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は一般に、電子デバイスを製作するための方法に関する。さらにその方法で製作されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
有機活性物質を利用した電子デバイスは、数多くの種類の電子機器内に含まれている。そのようなデバイス中では、有機活性層は2つの電極間に挟まれている。
【0004】
電子デバイスの1つのタイプは有機発光ダイオード(OLED)である。OLEDは、電力変換効率が高く加工費が安いため、ディスプレイ用途に有望である。そのようなディスプレイは、携帯電話、携帯情報端末、ハンドヘルドコンピューター、およびDVDプレーヤーを含め、電池式携帯用電子デバイスには特に有望である。こうした用途では、電力消費が少ないことに加え、情報量が多く、フルカラーであり、速いビデオレート応答時間のディスプレイが必要とされる。
【0005】
フルカラーOLEDの製造における最新の研究は、経済的で高生産性のカラーピクセル製造方法の開発に向けられている。液体処理によるモノクロディスプレイの製造では、スピンコーティング法が広く採用されている(例えば、David Braun and Alan J.Heeger,Appl.Phys.Letters 58,1982(1991)を参照)。しかし、フルカラーディスプレイを製造するには、モノクロディスプレイの製造に用いられている手順に何らかの変更を加える必要がある。例えば、フルカラーの画像のディスプレイを製作するには、各ディスプレイピクセル(display pixel)を、それぞれが3種類の主要な表示色(赤色、緑色、および青色)の1つを発する3つのサブピクセルに分割する。このようにフルカラーピクセルを3つのサブピクセルに分割した場合、液体着色物質(すなわち、インキ)の拡散および色の混合を防ぐために現在の方法を改める必要が生じてきた。
【0006】
インクを閉じ込める幾つかの方法が文献に記載されている。それらは、閉じ込め構造部(containment structures)、表面張力の不連続部(discontinuities)、およびその両方の組合わせに基づいている。閉じ込め構造部は、拡散を幾何学的に妨害するもの(ピクセルのウェル、バンクなど)である。効果的なものにするためには、そうした構造部は、付着物質のぬれ厚(wet thickness)と比べて大きいものでなければならない。放射(emissive)インクが印刷されてそうした構造部内に入ると、構造部表面をぬらし、その結果、厚さの均一性が構造部の付近で低下する。それゆえに、動作時に不均一部(non−uniformities)が目立たないように、構造部を放射「ピクセル」領域の外側に移さなければならない。ディスプレイ(特に高解像度のディスプレイ)上ではスペースが限られているため、これにより、ピクセルにおける使用可能な放射領域が減少してしまう。実際の閉じ込め構造部では一般に、電荷注入層と電荷輸送層の連続層を付着させると、品質に悪影響が及ぶ。それゆえに、すべての層を印刷しなければならない。
【0007】
さらに、表面張力の低い物質の印刷領域または蒸着領域のいずれかがある場合、表面張力の不連続部が得られる。そうした表面張力の低い物質は一般に、ピクセル領域の第1有機活性層を印刷またはコーティングする前に施さなければならない。一般に、そうした処理を行うと、連続非放射層をコーティングする際に品質に影響を及ぼすので、すべての層を印刷しなければならない。
【0008】
2つのインク閉じ込め技法を組み合わせた例は、フォトレジストバンク(photoresist bank)構造部(ピクセルのウェル、チャネル)のCF4−プラズマ処理である。一般に、活性層はすべてピクセル領域に印刷しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした閉じ込め方法にはすべて、連続コーティングが不可能であるという欠点がある。生産量を多くし、装置費用を安くすることができるので、1つまたは複数の層を連続コーティングするのが望ましい。それゆえに、電子デバイスを作るための改良された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1層の上に閉じ込め第2層を形成させるための方法であって、
第1表面エネルギーを有する第1層を形成させる工程と;
第1層に下塗(priming)層を施す(treating)工程と;
下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
下塗層を現像して、下塗層を暴露領域または非暴露領域のいずれか一方から効果的に除去して、下塗層のパターンを有する第1層を生じさせる工程であって、下塗層のパターンが第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
第1層上の下塗層のパターン上に第2層を液体付着によって形成させる工程と
を含む、第1層の上に閉じ込め第2層を形成させるための方法が提供される。
【0011】
電極を含み、電極の上に第1有機活性層と第2有機活性層とが配置されている有機電子デバイスを製作するための方法であって、
第1表面エネルギーを有する第1有機活性層を電極の上に形成させる工程と;
第1有機活性層に下塗層を施す工程と;
下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
下塗層を現像して、下塗層を暴露領域または非暴露領域のいずれか一方から効果的に除去して、下塗層のパターンを有する第1活性有機層を生じさせる工程であって、下塗層のパターンが第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
第1有機活性層上の下塗層のパターン上に液体付着によって第2有機活性層を形成させる工程と
を含む、有機電子デバイスを製作するための方法も提供される。
【0012】
電極の上に配置された第1有機活性層および第2有機活性層を含み、かつ第1有機活性層と第2有機活性層との間にパターン化下塗層をさらに含む有機電子デバイスであって、前記第2有機活性層が下塗層の存在する領域にのみ存在する、有機電子デバイスも提供される。
【0013】
上述の概要および以下の詳細な説明は単なる例示および説明であり、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0014】
本明細書で提示する概念がいっそう理解されるように添付図で実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】接触角を示す図を含む。
図2】有機電子デバイスの説明図を含む。
図3】下塗層を有する有機電子デバイスの部分説明図を含む。
【0016】
図中の物体は、簡単にするためまた明解にするために例示されているのであり、必ずしも縮尺通り描かれてはいないことは、当業者なら理解することである。例えば、図中の一部の物体の大きさは、実施形態をいっそう理解するのを助けるために、他の物体との関係で誇張されていることがある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
閉じ込め第2層を第1層の上に形成させるための方法であって、
第1表面エネルギーを有する第1層を形成させる工程と、
第1層に下塗層を施す工程と、
下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と、
下塗層を現像して、下塗層を暴露領域または非暴露領域のいずれか一方から効果的に除去して、下塗層のパターンを有する第1層を生じさせる工程であって、下塗層のパターンが第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と、
第1層上の下塗層のパターン上に第2層を形成させる工程と
を含む、閉じ込め第2層を第1層の上に形成させるための方法が提供される。
【0018】
多くの態様および実施形態が上述されているが、それらは単なる例示的なものであり、限定するものではない。本明細書を読むならば、本発明の範囲内で他の態様および実施形態が可能であることは、当業者なら理解することである。
【0019】
実施形態のいずれか1つまたはそれ以上における他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかであろう。詳細な説明では、最初に用語の定義と説明を扱い、その後で方法、有機電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0020】
1.用語の定義と説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義し説明する。
【0021】
「活性」という用語は、層または物質に言及している場合、電子的または電気的放射性(electronic or electro−radiative properties)を示す層または物質を意味することを意図する。電子デバイスでは、活性物質によりデバイスの動作が電子的に促進される。活性物質の例としては、電荷の伝導、注入、輸送または遮断を行う物質(電荷は電子または正孔のいずれかであってよい)、および放射線を発するかまたは電子−正孔ペアの濃度の変化を示す(放射線を受けたとき)物質があるが、これらに限定されない。不活性物質の例としては、平坦化物質、絶縁物質、および環境障壁物質があるが、これらに限定されない。
【0022】
層に言及している場合の「閉じ込め」という用語は、層が印刷されたときに、その層は、閉じ込められなければ付着領域を越えて広がろうとする自然の傾向があるにもかかわらず、その領域を著しく越えて広がらないことを意味することを意図している。「化学的閉じ込め」では、層は表面エネルギーの影響で閉じ込められる。「物理的閉じ込め」では、層は物的障壁構造部によって閉じ込められる。層は、化学的閉じ込めと物理的閉じ込めの組合わせによって閉じ込められ得る。
【0023】
「現像する」および「現像」という用語は、放射線に暴露された物質の領域と放射線に暴露されない領域との間に物理的な相違を生じさせること、ならびに暴露領域または非暴露領域のいずれかを除去することを示す。
【0024】
「電極」という用語は、電子部品内で担体を輸送するように構成されている部材または構造部を意味することを意図している。例えば、電極は、陽極、陰極、コンデンサー電極、ゲート電極などであってよい。電極として、トランジスター、コンデンサー、抵抗器、誘導器、ダイオード、電子部品、電源といったものの一部、またはそれらの任意の組合わせを挙げることができる。
【0025】
有機化合物に言及している場合の「フッ素化」という用語は、化合物内で炭素に結合していた1個または複数個の水素原子がフッ素で置換されていることを意味することを意図している。この用語は、部分フッ素化物質および完全フッ素化物質を包含する。
【0026】
「層」という用語は、「膜」という用語と同義語的に使用され、目的の領域を覆うコーティングを表す。この用語は大きさによって限定されるものではない。この領域は、デバイス全体と同じくらい大きくても、あるいは実際の表示装置など特定の機能領域と同じくらい小さくても、あるいは単一のサブピクセルと同じくらい小さくても構わない。層および膜は、蒸着、液体付着(連続技法および不連続技法)、および熱転写を含め、従来の任意の付着技法で形成できる。層は、高度にパターン化されていてもよく、あるいは全体的にパターン化されていなくてもよい。
【0027】
「液体組成物」という用語は、物質が溶解して溶液を形成している液状媒体、物質が分散させられて分散液を形成している液状媒体、または物質が浮遊させられて懸濁液またはエマルジョンを形成している液状媒体を意味することを意図している。
【0028】
「液状媒体」という用語は、純粋な液体、液体を組み合わせたもの、溶液、分散液、懸濁液、およびエマルジョンを含む、液体物質を意味することを意図している。1種または複数種の溶媒が存在するかどうかにかかわらず、液状媒体を使用する。
【0029】
「有機電子デバイス」という用語は、1つまたは複数の有機半導体層または物質を含むデバイスを意味することを意図している。有機電子デバイスには、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的方法を用いて信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスター、光電スイッチ、フォトトランジスター、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、(4)1つまたは複数の有機半導体層を含んでいる1つまたは複数の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスターまたはダイオード)、あるいは項目(1)〜(4)のデバイスの任意の組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
「光硬化性」という用語は、放射線に暴露されると、表面にいっそうしっかり付着するかまたは表面から除去しにくくなる放射線感受性の組成物または層を表すことを意図する。
【0031】
「放射」および「放射線」という用語は、任意の形の熱、電磁スペクトル全体、または原子より小さい粒子を含め、任意の形態のエネルギーを(そのような放射線が光線、波、または粒子の形であるかどうかにかかわりなく)加えることを表す。
【0032】
物質に言及している場合の「放射線感受性」という用語は、放射線への暴露により、物質の少なくとも1つの化学的性質、物理的性質、または電気的性質が変化することを意味することを意図している。
【0033】
「表面エネルギー」という用語は、物質から単位面積の表面を作り出すのに必要なエネルギーである。表面エネルギーの特徴は、所与の表面エネルギーを持つ液体物質が、表面エネルギーがいっそう十分に小さい表面をぬらさないことである。表面エネルギーの小さい層は、表面エネルギーの大きい層よりもいっそうぬれにくい。
【0034】
本明細書で使用される「の上に」という用語は、層、部材、または構造部が、別の層、部材、または構造部のすぐ隣にあること、またはそれと接触していることを必ずしも意味しない。介在する層、部材または構造部がさらにあってもよい。
【0035】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの他のいずれの変化形も、非排他的な包含に適用されることを意図している。例えば、列挙された要素を含む方法、方式、物品、または装置は、必ずしもそうした要素に限定されるわけではなく、明確に列挙されていない他の要素またはそのような方法、方式、物品、または装置に固有の要素も含みうる。さらに、逆のことを特に述べていない限り、「または」は、包含的な「または」であり、排他的な「または」ではない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれによっても満たされる:Aが正しく(または存在し)かつBが誤りである(または存在しない)、Aが誤りであり(または存在せず)かつBが正しい(または存在する)、さらにAおよびBの両方が正しい(または存在する)。
【0036】
また「1種(a)」または「1種(an)」を用いて、本明細書に記載の元素および成分が説明されている。このようにしているのは、便宜上のためだけであり、本発明の範囲の一般的な意味を示すためである。この表現は、1種または少なくとも1種を含むものと解釈すべきであり、単数形は複数形も包含する(複数形を包含しないという意味であることが明らかでない場合)。
【0037】
元素周期表内の列に対応する族の番号では、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition(2000−2001)に示されている「新表記」規則を用いている。
【0038】
特に定義されていない限り、本明細書に用いられている技術用語および科学用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および物質と同様または同等の方法および物質を本発明の実施形態の実施または試験に使用できるが、好適な方法および物質を以下に記載しておく。特別な節が挙げられない限り、本明細書で挙げる刊行物、特許出願、特許、および他の文献はすべて、その全体を援用する。矛盾がある場合には、定義を含んでいる本明細書で調整されるであろう。さらに、そうした物質、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0039】
本明細書に記載されていない事柄について言えば、特定の物質、処理作業、および回路に関する多くの詳細事項は、普通の事柄であり、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体部材の技術分野における教科書および他の情報源の中に見出されるであろう。
【0040】
2.方法
本明細書で示す方法では、第1層が形成され、下塗層が第1層の上に形成され、下塗層がパターン状に放射線に暴露され、下塗層が現像されて暴露領域または非暴露領域のいずれか一方から下塗層が効果的に除去されて、パターン化下塗層をその上に有する第1層が生じる。「効果的に除去する」および「効果的除去」という用語は、暴露領域または非暴露領域のいずれかで下塗層が基本的に完全に除去されることを意味する。下塗層は、他方の領域で部分的に除去されることもありうる。その結果、残りの下塗層のパターンが元の下塗層より薄くなることがある。下塗層のパターンは、第1層の表面エネルギーより大きい表面エネルギーを有する。第2層は、第1層上の下塗層のパターンを覆うように液体を付着させて形成される。
【0041】
相対表面エネルギーを求める方法の1つは、第1有機層での所与の液体の接触角と、暴露して現像した後の下塗層(以下、「現像下塗層」と呼ぶ)での同じ液体の接触角とを比較することである。本明細書で使用される「接触角」という用語は、図1に示す角度Φを意味することを意図している。液状媒体の液滴の場合、角度Φは、表面の平面と液滴の外縁部から表面へ向かう線との交差によって画定される。さらに、角度Φは、液滴を付けた後、表面上で平衡位置に達した後に測る(すなわち「静的接触角」)。接触角は、表面エネルギーが低下するにつれて増大する。さまざまな製造業者が、接触角を測定できる装置を製作している。
【0042】
実施形態によっては、第1層は、アニソールとの接触角が40℃より大きく;実施形態によっては、50°より大きく;実施形態によっては、60°より大きく;実施形態によっては、70°より大きい。実施形態によっては、現像された下塗層は、アニソールとの接触角が30°より小さく;実施形態によっては、20°より小さく;実施形態によっては、10°より小さい。実施形態によっては、所与の溶媒において、現像された下塗層との接触角は第1層との接触角よりも少なくとも20°小さく;実施形態によっては、所与の溶媒において、現像された下塗層との接触角は第1層との接触角より少なくとも30°小さく、実施形態によっては、所与の溶媒において、現像された下塗層との接触角は第1層との接触角よりも少なくとも40°小さい。
【0043】
1つの実施形態では、第1層は、基板上に付着させた有機層である。第1層は、パターン化されていても、パターン化されていなくてもよい。1つの実施形態では、第1層は、電子デバイス内の有機活性層である。1つの実施形態では、第1層はフッ素化物質を含む。
【0044】
第1層は、蒸着技法、液体付着技法、および熱転写技法を含め、任意の付着技法で形成させることができる。1つの実施形態では、第1層は液体付着技法で付着させ、その後に乾燥させる。この場合、第1物質を液状媒体中に溶解させるかまたは分散させる。液体付着法は、連続法であっても不連続法であってもよい。連続液体付着技法には、スピンコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬塗装、スロットダイコーティング(slot−die coating)、吹付け塗り、および連続ノズルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。不連続液体付着技法には、インクジェット式印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷およびスクリーン印刷が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、第1層は連続液体付着技法で付着させる。乾燥工程は、第1物質および下にくる任意の物質が損傷をうけない限り、室温かまたは高温で行うことができる。
【0045】
次いで第1層に下塗層を施す。これは、下塗物質を第1層と直接接触するようにその上に施して、下塗層を形成させることを意味する。下塗層は、放射線に暴露されると反応して、暴露されていない下塗物質と比べて、下にある第1層から除去しやすくなるかまたは除去しにくくなる物質を生じる組成物を含む。この変化は、暴露領域と非暴露領域との物理的な差異ならびに現像を可能にするほど十分でなければならない。
【0046】
1つの実施形態では、下塗層は放射線硬化性組成物を含む。この場合、放射線に暴露されると、下塗層は、液状媒体への可溶性または分散性の低下、粘着性の低下、軟化性の低下、流動性の低下、剥離性の低下(less liftable)、または吸収性の低下が起こりうる。他の物理的性質も影響を受けうる。
【0047】
1つの実施形態では、下塗層は1種または複数種の放射線感受性(radiation−sensitive)物質から本質的になる。1つの実施形態では、下塗層は、放射線に暴露された場合に、硬化するか、あるいは液状媒体における可溶性の低下、膨潤性の低下、または分散性の低下、あるいは粘着性または吸収性の低下が起きる物質から本質的になる。1つの実施形態では、下塗層は、放射線重合可能な基を有する物質から本質的になる。そのような基の例としては、オレフィン、アクリレート、メタクリレートおよびビニルエーテルがあるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、下塗物質は、架橋を生じうる2種以上の重合可能な基を有する。
【0048】
1つの実施形態では、下塗層は、少なくとも1種の反応性物質および少なくとも1種の放射線感受性物質から本質的になる。放射線感受性物質は、放射線に暴露されると、反応性物質の反応を開始させる活性種を生じる。放射線感受性物質の例としては、フリーラジカル、酸、またはそれらの組合せを生じる物質があるが、これらに限定されない。
【0049】
1つの実施形態では、反応性物質は重合可能または架橋性である。物質の重合反応または架橋反応は、活性種によって開始されるか触媒される。1つの実施形態では、反応性物質はエチレン性不飽和化合物であり、放射線感受性物質はフリーラジカルを生じる。エチレン性不飽和化合物としては、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、およびそれらの組合せがあるが、これらに限定されない。フリーラジカルを生じる放射線感受性物質は、知られているどんな種類のものでも使用できる。フリーラジカルを生じる放射線感受性物質の例としては、キノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、アリールケトン類、過酸化物類、イミダゾール類、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシルアルキルフェニルアセトホン(hydroxyl alkyl phenyl acetophone)、ジアルコキシアセトフェノン(dialkoxy actophenone)、トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド誘導体、アミノケトン類、ベンゾイルシクロヘキサノール、メチルチオフェニルモルホリノケトン類、モルホリノフェニルアミノケトン類、アルファハロゲノアセトフェノン類、オキシスルホニルケトン類、スルホニルケトン類、オキシスルホニルケトン類、スルホニルケトン類、ベンゾイルオキシムエステル類、チオキサントロン類(thioxanthrones)、カンファキノン類、ケトクマリン類、およびミヒラー・ケトンがあるが、これらに限定されない。あるいはまた、放射線感受性物質は、化合物の混合物であってよく、その化合物の1種がフリーラジカルを生じる(放射線によって活性化される増感剤によりそのことが引き起こされたとき)。1つの実施形態では、放射線感受性物質は可視光線または紫外線放射に敏感である。
【0050】
放射線感受性物質は一般に、下塗層の全重量を基準にして0.001%〜10.0%の量だけ存在する。
【0051】
1つの実施形態では、反応性物質は、酸によって開始される重合が起こりうるものであり、放射線感受性物質は酸を生じる。そのような反応性物質の例としては、エポキシ化合物があるが、それらに限定されない。酸を生じる放射線感受性物質の例としては、スルホニウム塩およびヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファートなど)があるが、これらに限定されない。
【0052】
1つの実施形態では、下塗層は放射線軟化性組成物を含む。この場合、放射線に暴露されると、下塗層は、液状媒体への可溶性または分散性の増大、粘着性の増大、軟化性の増大、流動性の増大、剥離性の増大、または吸収性の増大が起こりうる。他の物理的性質も影響を受けうる。
【0053】
1つの実施形態では、下塗層は、放射線に暴露された場合に、軟化するか、あるいは液状媒体における可溶性の増大、膨潤性の増大、または分散性の増大が起きるか、あるいは粘着性または吸収性の増大が起きる物質から本質的になる。
【0054】
放射線軟化性組成物の1つの例では、反応性物質はフェノール樹脂であり、放射線感受性物質はジアゾナフトキノン(diazonaphthoquinone)である。
【0055】
放射線軟化性組成物の1つの例では、下塗層は、波長が200〜300nmの範囲である深紫外線に暴露されると骨格劣化が起きる少なくとも1種のポリマーから本質的になる。そのような劣化が起こるポリマーの例として、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリケトン類、ポリスルホン類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0056】
当該技術分野において知られている他の放射線感受性の系も使用できる。
【0057】
1つの実施形態では、下塗層は、放射線に暴露されると、下にある領域と反応する。この反応の正確なメカニズムは、使用する物質によって異なるであろう。放射線に暴露された後、下塗層は、好適な現像処理によって非暴露領域において効果的に除去される。実施形態によっては、下塗層は非暴露領域のみで除去される。実施形態によっては、下塗層は暴露領域でも部分的に除去され、そうした領域に薄い層が残る。実施形態によっては、暴露領域に残る下塗層は厚さが50Å未満である。実施形態によっては、暴露領域に残る下塗層は基本的に厚さが単分子層である。
【0058】
実施形態によっては、下塗物質が重水素化される。「重水素化」という用語は、少なくとも1個のHがDで置換されていることを意味することを意図する。「重水素化類似体」という用語は、1つまたは複数個の利用可能な水素が重水素で置換されている化合物または基の構造的類似体を表す。重水素化合物または重水素化類似体では、重水素が、自然の存在レベルの少なくとも100倍存在する。実施形態によっては、下塗物質は少なくとも10%が重水素化されている。「重水素化%」または「重水素化の%」とは、陽子と重陽子の合計に対する重陽子の比率(百分率で表現)を意味する。実施形態によっては、下塗物質は少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、;実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、;実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されており、実施形態によっては、100%が重水素化されている。
【0059】
重水素化下塗物質は、正孔、電子、エキシトン(exitons)、またはそれらの組合わせによる劣化の影響をうけにくくなりうる。重水素化により、デバイス動作時の下塗層の劣化が潜在的に抑制されうるので、ひいては、デバイス寿命の向上につながりうる。一般に、こうした向上はデバイスの他の特性を犠牲にしなくても達成される。さらに、重水素化合物は往々にして、非重水素化類似体よりも空気露出耐性(air tolerance)が大きい。そのため、物質の調製および精製の両方における処理耐性(processing tolerance)が増大しうるし、またその物質を用いた電子デバイスが形成されうる。
【0060】
下塗層は、任意の周知の付着法で施すことができる。1つの実施形態では、下塗層は溶媒に添加されることなく施される。1つの実施形態では、下塗層は蒸着によって施される。
【0061】
1つの実施形態では、下塗層は凝結法で施す。下塗層を蒸気相からの凝結で施す場合に、蒸気凝結の間に表面層温度があまりに高いと、下塗層は有機基板表面の細孔または自由体積に入り込むことがある。実施形態によっては、有機基板は、基板物質のガラス転移温度または溶融温度より下の温度に維持する。温度は、周知の任意の手法(流れる液体または気体によって冷却される表面上に第1層を置くなど)によって維持できる。
【0062】
1つの実施形態では、下塗層は、凝結ステップに先だって、一時的支持体に施されて下塗層の均一コーティングが形成される。これは、液体付着、蒸着、および熱転写を含め任意の付着法で実施できる。1つの実施形態では、下塗層は、連続液体付着技法で一時的支持体上に付着させる。下塗層を付着させるための液状媒体の選択は、下塗層自体のまさにその性質によって異なるであろう。1つの実施形態では、物質はスピンコーティングで付着させる。次いで、被覆された一時的支持体は、凝結ステップ用の蒸気を生じさせるための加熱源として使用する。
【0063】
下塗層を施すことは、連続法またはバッチ法のいずれかを利用して遂行できる。例えば、バッチ法では、1つまたは複数のデバイスを下塗層で同時に被覆し、その後、放射線源に同時に暴露するであろう。連続法では、ベルトまたは他のコンベア装置で輸送されるデバイスは、デバイスが連続的に下塗層で被覆されるステーションを通過し、その後、デバイスが連続的に放射線源に暴露されるステーションをそのまま通過するであろう。方法の一部は連続的であってよく、一方でその方法の他の部分はバッチ式であってもよい。
【0064】
1つの実施形態では、下塗物質は室温において液体であり、第1層を覆うように液体付着によって施す。液体の下塗物質は、膜を形成してよいか、または第1層の表面に吸収されるかまたは吸着されてよい。1つの実施形態では、第1層を覆うように第2層を形成させるために、液体の下塗物質をその融点より下の温度まで冷却する。1つの実施形態では、下塗物質は室温において液体ではなく、その融点より上の温度まで加熱して、第1層上に付着させ、室温まで冷却して第1層を覆うように第2層を形成させる。液体付着では、上述の方法のいずれを使用してもよい。
【0065】
1つの実施形態では、下塗層を第2液体組成物から付着させる。液体付着法は、上述したように連続でも不連続でもよい。1つの実施形態では、下塗り液体組成物は、連続液体付着法を用いて付着させる。下塗層を付着させるための液状媒体の選択は、下塗物質自体のまさにその性質によって異なるであろう。
【0066】
下塗層を形成した後、それを放射線に暴露する。使用する放射線のタイプは、上述した下塗層の敏感性によって異なるであろう。暴露はパターン状に行われる。本明細書で使用される「パターン状」という用語は、物質または層の選択部分のみが暴露されることを示す。パターン状暴露は、周知の任意の画像化技法(imaging technique)を用いて実現できる。1つの実施形態では、パターンはマスクを介して暴露することによって得られる。1つの実施形態では、パターンは、ラスターレーザー(rastered laser)で選択部分のみを暴露することで得る。暴露時間は、使用する下塗層の特定の化学的性質に応じて数秒間から数分間の範囲にすることができる。レーザーを使用する場合、レーザーの出力に応じて、それぞれの個別の領域に関して使用する暴露時間はずっと短くなる。暴露ステップは、物質の敏感性に応じて、空気中かまたは不活性雰囲気中で実施できる。
【0067】
1つの実施形態では、放射線は、紫外線(10〜390nm)、可視光線(390〜770nm)、赤外線(770〜106nm)、およびそれらの組合せ(同時処理および逐次処理を含む)よりなる群から選択される。1つの実施形態では、放射線は可視光線および紫外線放射から選択される。1つの実施形態では、放射線は300〜450nmの範囲の波長を有する。1つの実施形態では、放射線は深紫外線(200〜300nm)である。別の実施形態では、紫外線放射は300から400nmの間の波長を有する。別の実施形態では、放射線は400〜450nmの範囲の波長を有する。1つの実施形態では、放射線は熱放射である。1つの実施形態では、放射線への暴露は加熱によって実施される。加熱ステップの温度および継続時間は、発光領域のどんな下にある層にも損傷を与えることなく、下塗層の少なくとも1つの物理的性質を変化させるようなものである。1つの実施形態では、加熱温度は250℃未満である。1つの実施形態では、加熱温度は150℃未満である。
【0068】
放射線に対してパターン状暴露した後、下塗層を現像する。現像は周知の任意の技法で遂行できる。そのような技法は、フォトレジストおよび印刷の技術分野で広く使用されてきた。現像技法の例としては、加熱(蒸発)、液状媒体による処理(洗浄)、吸収物質による処理(ブロッティング)、粘着性物質による処理などがあるが、これらに限定されない。現像ステップにより、露出領域または非暴露領域のいずれかの下塗層が効果的に除去される。次いで、下塗層は、非暴露領域または暴露領域のいずれかにそれぞれ残る。下塗層は、非暴露領域または暴露領域において部分的に除去されてもよいが、暴露領域と非暴露領域との間に湿潤性の差があるようにするため、十分に残っていなければならない。例えば、下塗層は、非暴露領域において効果的に除去されてよく、また暴露領域において厚みの一部が除去されてよい。実施形態によっては、現像ステップにより非暴露領域の下塗層が効果的に除去される。
【0069】
1つの実施形態では、放射線への下塗層の暴露により、溶媒中への下塗層の溶解度または分散性が変化する。この場合、現像は湿式現像処理(wet development treatment)によって遂行できる。この処理は普通、一方のタイプの領域の溶解、分散、または剥離をもたらす溶媒による洗浄を含む。1つの実施形態では、放射線へのパターン状暴露により下塗層の暴露領域が不溶化し、溶媒による処理により下塗層の非暴露領域が除去される。
【0070】
1つの実施形態では、放射線への下塗層の暴露により、暴露領域の下塗層の揮発性を変化させる反応が起こる。この場合、現像は、熱現像処理によって遂行できる。この処理は、より揮発性のある物質の揮発温度または昇華温度より上で、かつその物質が熱反応する温度より下の温度まで加熱することを含む。例えば、重合可能なモノマーの場合、物質は、昇華温度より上でかつ熱重合温度より下の温度で加熱されるであろう。揮発温度に近いかまたはそれより低い熱反応温度を有する下塗物質は、このような仕方で現像することができないであろうことが理解されるであろう。
【0071】
1つの実施形態では、放射線に下塗層を暴露すると、物質が溶融、軟化または流動する温度が変化する。この場合、現像は乾式現像処理(dry development treatment)で遂行できる。乾式現像処理は、要素の最も外側の表面を吸着剤表面と接触させて、より軟らかい部分を吸収するかまたは吸い取ることを含みうる。この乾式現像は、残りの領域の特性にさらなる影響を及ぼさない限り、高温で実施できる。
【0072】
現像ステップにより、下塗層が残っている領域と、下にある第1層がむき出しにされた領域とが生じる。実施形態によっては、パターン化下塗層とむき出しにされた領域の、所与の溶媒との接触角の差が、少なくとも20°であり、実施形態によっては、少なくとも30°であり、実施形態によっては、少なくとも40°である。
【0073】
次いで第2層を、第1層上の下塗物質の現像パターンの上一面に液体付着によって施す。1つの実施形態では、第2層は電子デバイス内の第2有機活性層である。
【0074】
第2層は任意の液体付着技法によって施すことができる。液状媒体中に溶解または分散させられた第2物質を含む液体組成物を、現像下塗層のパターンの上に施し、乾燥させて第2層を形成させる。液体組成物としては、第1層の表面エネルギーよりも大きいが、現像下塗層の表面エネルギーとほぼ同等であるかそれより小さい表面エネルギーを有するようなものを選ぶ。したがって、液体組成物は現像下塗層をぬらすが、下塗層が除去された領域では第1層からはね返されることになる。液体は、処理された第1層領域に広がりうるが、それははじかれて(de−wet)現像下塗層のパターンに閉じ込められることになる。実施形態によっては、第2層は、上述したように連続液体付着技法で施す。
【0075】
本明細書で提供する方法の1つの実施形態では、第1層および第2層は有機活性層である。第1有機活性層を第1電極の上に形成させ、下塗層を第1有機活性層の上に形成させ、放射線に暴露して現像して現像下塗層のパターンを生じさせ、さらに第2有機活性層を第1有機活性層上の現像下塗層の上に形成させ、その結果として第2有機活性層は下塗層の上にのみ下塗層と同じパターンで存在する。
【0076】
1つの実施形態では、第1有機活性層は、第1有機活性物質と第1液状媒体とを含む第1液体組成物の液体付着によって形成させる。液体組成物を第1電極層の上に付着させ、次いで乾燥させて、層を形成させる。1つの実施形態では、第1有機活性層は連続液体付着法によって形成させる。そのような方法では、収量が多くなり、装置費用が安くなりうる。
【0077】
1つの実施形態では、下塗層は、第2液状媒体中に下塗物質を含む第2液体組成物の液体付着によって形成させる。第2液状媒体は、第1層を損なわない限り、第1液状媒体と同じであっても異なっていてもよい。液体付着法は、上述したように連続法でも不連続法でもよい。1つの実施形態では、下塗り液体組成物は、連続液体付着法を用いて付着させる。
【0078】
1つの実施形態では、第2有機活性層は、第2有機活性物質と第3液状媒体とを含む第3液体組成物の液体付着によって形成させる。第3液状媒体は、第1層や現像下塗層を損なわない限り、第1液状媒体および第2液状媒体と同じであっても異なっていてもよい。実施形態によっては、第2有機活性層は印刷によって形成させる。
【0079】
実施形態によっては、第3層を第2層の上に施して、第2層の上にのみ、第2層と同じパターンで存在するようにする。第3層は、第2層に関して上述したどの方法でも施すことができる。実施形態によっては、第3層は液体付着技法で施す。実施形態によっては、第3有機活性層は、インクジェット式印刷および連続ノズル印刷(continuous nozzle printing)よりなる群から選択される印刷法で形成させる。
【0080】
実施形態によっては、下塗物質は第2有機活性物質と同じである。
【0081】
現像下塗層の厚さは、物質の最終用途によって異なりうる。実施形態によっては、現像下塗層は厚さが100Å未満である。実施形態によっては、厚さは1〜50Åの範囲であり、実施形態によっては5〜30Åである。
【0082】
3.有機電子デバイス
この方法を、電子デバイスへの利用の観点からさらに説明するが、そのような利用に限定されるわけではない。
【0083】
図2は、例示的な電子デバイスであり、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも2つの有機活性層を含む有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。電子デバイス100は、陽極層110から放射層140への正孔の注入を促進するために、1つまたは複数の層120および130を含む。一般に、2つの層が存在する場合、陽極に隣接した層120を正孔注入層と呼ぶ(バッファー層と呼ぶこともある)。放射層に隣接した層130は正孔輸送層と呼ぶ。任意選択の電子輸送層150は、放射層140と陰極層160との間に置く。有機層120〜150は、個別に、またひとまとめにしてデバイスの有機活性層と呼ぶ。デバイス100の用途に応じて、放射層140は、印加電圧によって活性化される発光層であってよいか(発光ダイオードまたは発光電気化学セルの場合など)、あるいは印加バイアス電圧の有無にかかわりなく放射エネルギーに反応して信号を発生する物質の層(光検出器の場合など)であってよい。デバイスは、システム、駆動方式、およびユーティリティー・モード(utility mode)に関して限定されない。下塗層はこの図に示されていない。
【0084】
多色デバイス(multicolor devices)では、放射層140は、少なくとも3種類の異なる色のいろいろな領域で構成されている。色の異なる領域は、別個の着色領域を印刷することによって形成させることができる。あるいはまた、全体層(overall layer)を形成させ、層のいろいろな領域にいろいろな色の放射物質をドープすることにより、そのことを達成できる。そのような方法は、例えば、米国特許出願公開第2004−0094768号明細書に記載されている。
【0085】
実施形態によっては、本明細書に記載されている新規の方法は、第2層が特定の領域に閉じ込められる、デバイス内の任意の連続した対の有機層に使用できる。電極を含み、電極の上に第1有機活性層と第2有機活性層とが配置されている有機電子デバイスを製作するための方法は、
第1表面エネルギーを有する第1有機活性層を電極の上に形成させる工程と;
第1有機活性層に下塗層を施す工程と;
下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
下塗層を現像して、下塗層を暴露領域または非暴露領域のいずれか一方から除去して、下塗層のパターンを有する第1活性有機層を生じさせる工程であって、下塗層のパターンが第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
第1有機活性層上の下塗層のパターン上に液体付着によって第2有機活性層を形成させる工程と
を含む。
【0086】
新規の方法の1つの実施形態では、第2有機活性層は放射層140であり、第1有機活性層は、層140のすぐ前に施されたデバイス層である。多くの場合、デバイスの構成は陽極層から始める。正孔輸送層130が存在する場合、放射層140を施す前に、下塗層を層130に施して現像するであろう。層130が存在しない場合、下塗層を層120に施すであろう。デバイスの構成を陰極から始める場合、下塗層は、放射層140を施す前に、電子輸送層150に施すであろう。
【0087】
新規の方法の1つの実施形態では、第1有機活性層は正孔注入層120であり、第2有機活性層は正孔輸送層130である。デバイスの構成を陽極層から始める実施形態では、正孔輸送層130を施す前に、下塗層を正孔注入層120に施してから現像する。1つの実施形態では、正孔注入層はフッ素化物質を含む。1つの実施形態では、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーを含む。1つの実施形態では、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーから本質的になる。実施形態によっては、下塗層は正孔輸送物質から本質的になる。1つの実施形態では、下塗層は、正孔輸送層と同じ正孔輸送物質から本質的になる。
【0088】
デバイス中の他の層は、そのような層に有用であることが知られている任意の物質で作ることができる。デバイスは、陽極層110または陰極層150に隣接していてもよい支持体または基板(図示せず)を含むことができる。支持体は、陽極層110に隣接することがきわめて多い。支持体は、柔軟であっても剛直であってもよく、有機であっても無機であってもよい。一般に、ガラスまたは柔軟な有機フィルムを支持体として使用する。陽極層110は、陰極層160と比べて、正孔を注入するためのより効率的な電極である。陽極は、金属、混合金属(mixed metal)、合金、金属酸化物または混合酸化物を含有する物質を含んでもよい。好適な物質には、2族の元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba)、11族の元素、4族、5族、および6族の中の元素、さらに8〜10族の遷移元素といった元素の混合酸化物が含まれる。陽極層110を光伝達性のものにする場合、12族、13族および14族の元素の混合酸化物(インジウムスズ酸化物など)を使用してよい。本明細書で使用される「混合酸化物」という語句は、2族の元素あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2種以上の異なる陽イオンを有する酸化物を示す。陽極層110用の物質の一部の非限定具体例には、インジウムスズ酸化物(「ITO」)、アルミニウムスズ酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが含まれるが、これらに限定されない。陽極はまた、ポリアニリン、ポリチオフェン、またはポリピロールなどの有機物質を含んでもよい。
【0089】
陽極層110は、化学蒸着法または物理蒸着法またはスピン・キャスト法で形成させてよい。化学蒸着は、プラズマ促進化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として実施してよい。物理蒸着には、あらゆる形態のスパッタリング(イオンビームスパッタリングを含む)、ならびに電子ビーム蒸発および抵抗蒸発(resistance evaporation)が含まれうる。物理蒸着の特定の形態には、rfマグネトロンスパッタリングおよび誘導結合プラズマ物理蒸着(inductively−coupled plasma physical vapor deposition)(「IMP−PVD」)が含まれる。こうした付着技法は、半導体製造技術分野ではよく知られている。
【0090】
普通、陽極層110は、リソグラフ操作時にパターン化される。パターンは所望に応じて変わりうる。層は、第1電気接触層物質を施す前に、例えば、パターン化マスクまたはレジストを第1柔軟複合障壁構造部に配置することにより、パターン状に形成させることができる。あるいはまた、層は、全体層(ブランケット付着とも呼ぶ)として施し、その後に、例えば、パターン化レジスト層および湿式化学エッチングまたはドライエッチングの技法を用いてパターン化できる。当該技術分野において周知である他のパターン化方法を使用することもできる。電子デバイスをアレイ内に配置する場合、陽極層110は典型的には、実質的に平行で、実質的に同じ方向に伸びている細長いストライプに成形する。
【0091】
正孔注入層120は、放射層への正孔の注入を促進し、また陽極表面を平坦化してデバイス内での短絡を防ぐ働きをする。正孔注入物質は、ポリマー、オリゴマー、または小分子であってよく、また溶液、分散液、懸濁液、エマルジョン、コロイド状混合物、または他の組成物の形であってよい。
【0092】
正孔注入層は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの高分子材料(プロトン酸がドープされることが多い)によって形成させることができる。プロトン酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。正孔注入層120は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷移動化合物などを含むことができる。1つの実施形態では、正孔注入層120は、導電性ポリマーとコロイド形成ポリマー酸との分散液から作る。そのような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および公開されたPCT出願の国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0093】
正孔注入層120は任意の付着技法で施すことができる。1つの実施形態では、正孔注入層は、上述のように溶液付着法で施す。1つの実施形態では、正孔注入層は連続溶液付着法で施す。
【0094】
層130は正孔輸送物質を含む。正孔輸送層の正孔輸送物質の例は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996,by Y.Wangに要約されている。正孔輸送小分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用できる。通常用いられる正孔輸送分子には、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);4、4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP);1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);およびポルフィリン化合物(porphyrinic compounds)(銅フタロシアニンなど)が含まれるが、これらに限定されない。通常用いられる正孔輸送ポリマーには、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)類、ポリアニリン類、およびポリピロール類が含まれるが、これらに限定されない。正孔輸送分子(上述したものなど)をポリマー(ポリスチレンおよびポリカーボネートなど)にドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。
【0095】
実施形態によっては、正孔輸送層は正孔輸送ポリマーを含む。実施形態によっては、正孔輸送ポリマーはジスチリルアリール化合物である。実施形態によっては、アリール基は2つ以上の縮合芳香族環を有する。実施形態によっては、アリール基はアセンである。本明細書で使用される「アセン」という用語は、2つ以上の直鎖状配列(straight linear arrangement)のo−縮合ベンゼン環を含む炭化水素親成分(hydrocarbon parent component)を指す。
【0096】
実施形態によっては、正孔輸送ポリマーはアリールアミンポリマーである。実施形態によっては、それはフルオレンとアリールアミンモノマーとのコポリマーである。
【0097】
実施形態によっては、ポリマーは架橋性基を有する。実施形態によっては、架橋は、熱処理及び/またはUVまたは可視光線への暴露によって達成できる。架橋性基の例には、ビニル、アクリレート、パーフルオロビニルエーテル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン、シロキサン、およびメチルエステルが含まれるが、これらに限定されない。架橋性ポリマーは、溶液処理のOLEDの製造で利点がありうる。可溶性ポリマー物質を施して層(付着の後に、不溶性フィルムに変換できるもの)を形成させることで、層が溶解するという問題のない、溶液で処理される多層OLEDデバイスの製造が可能でありうる。
【0098】
架橋性ポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005/0184287号明細書および公開されたPCT出願の国際公開第2005/052027号パンフレット中に見出すことができる。
【0099】
実施形態によっては、正孔輸送層は、9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマーであるポリマーを含む。実施形態によっては、ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマーである。実施形態によっては、ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマーである。実施形態によっては、ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーである。実施形態によっては、コポリマーは、(ビニルフェニル)ジフェニルアミンおよび9,9−ジスチリルフルオレンまたは9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンから選択される第3コモノマーから作られる。実施形態によっては、正孔輸送層は、非平面構成で結合している共役部分を有するトリアリールアミン類を含んでいる物質を含む。そのような物質は、単量体であっても重合体であってもよい。そのような物質の例は、例えば、公開されたPCT出願の国際公開第2009/067419号パンフレットに記載されている。
【0100】
実施形態によっては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物(perylene−3,4,9,10−tetracarboxylic−3,4,9,10−dianhydride)などのp−ドーパントがドープされる。
【0101】
正孔輸送層130は、任意の付着技法で施すことができる。1つの実施形態では、正孔輸送層は、上述したように溶液付着法で施す。1つの実施形態では、正孔輸送層は連続溶液付着法で施す。
【0102】
デバイス100の用途に応じて、放射層140は、印加電圧によって活性化される発光層であってよいか(発光ダイオードまたは発光電気化学セルの場合など)、あるいは印加バイアス電圧の有無にかかわりなく放射エネルギーに反応して信号を発生する物質の層(光検出器の場合など)であってよい。1つの実施形態では、光活性物質は有機エレクトロルミネセンス(「EL」)物質である。任意のEL物質をデバイスに使用でき、その物質としては、小分子有機蛍光化合物、蛍光性および燐光性の金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物があるが、それらに限定されない。蛍光化合物の例としては、クリセン類、ピレン類、ペリレン類、ルブレン類、クマリン類、アントラセン類、チアジアゾール類、それらの誘導体、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。金属錯体の例としては、金属キレート化オキシノイド(metal chelated oxinoid)化合物(トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)など);環状メタル化(cyclometalated)イリジウムおよび白金エレクトロルミネセンス化合物であって、イリジウムとフェニルピリジン、フェニルキノリン、またはフェニルピリミジン配位子との錯体など(Petrovet al.の米国特許第6,670,645号明細書および公開されたPCT出願の国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されている)、および有機金属錯体(例えば、公開されたPCT出願の国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載)、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。場合によっては、小分子の蛍光物質または有機金属物質は、ホスト物質と共にドーパントとして付着して処理特性及び/または電子特性を改善する。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン)類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0103】
放射層140は、任意の付着技法で施すことができる。1つの実施形態では、放射層は、上述したように溶液付着法で施す。1つの実施形態では、放射層は、連続溶液付着法で施す。
【0104】
任意選択の層150は、電子輸送を促進するために機能することも、層界面でのエキシトンの失活(quenching)を防止するためのバッファー層または閉じ込め(confinement)層として働くこともできる。好ましくは、この層は電子移動性を促進し、エキシトンの失活を低減する。任意選択の電子輸送層150に使用できる電子輸送物質の例には、金属キレート化オキシノイド化合物(トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート(metal quinolate)誘導体を含む);およびアゾール化合物(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)など);キノキサリン誘導体(2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなど);フェナントロリン類(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)など);およびそれらの混合物がある。実施形態によっては、電子輸送層はn−ドーパントをさらに含む。n−ドーパント物質はよく知られている。n−ドーパントとしては、1族および2族の金属;1族および2族の金属塩(LiF、CsF、およびCs2CO3など);1族および2族の金属有機化合物(Liキノレートなど);および分子のn−ドーパント(ロイコ染料など)、金属錯体(W2(hpp)4[ここで、hpp=1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジン]およびコバルトセンなど)、テトラチアナフタセン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、複素環式基または複素環式二基(heterocyclic diradicals)、ならびに複素環式基または複素環式二基のダイマー、オリゴマー、ポリマー、ジスピロ化合物および多環体(polycycles)があるが、これらに限定されない。
【0105】
電子注入層150は普通、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。
【0106】
陰極160は、電子または負の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。陰極は、陽極よりも仕事関数の小さい任意の金属または非金属であってよい。陰極用の物質は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、2族の(アルカリ土類)金属、12族の金属(希土類元素およびランタニドを含む)、およびアクチニドから選択できる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの物質、ならびにそれらの組合わせを使用できる。動作電圧を下げるために、有機層と陰極層との間に、Li含有有機金属化合物、LiF、Li2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs2O、およびCs2CO3を付着させることもできる。この層は電子注入層と呼ぶことができる。
【0107】
陰極層160は普通、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。
【0108】
実施形態によっては、更なる層(1つまたは複数)が有機電子デバイス内に存在してもよい。
【0109】
各機能層は、複数の層で構成できることが理解される。
【0110】
1つの実施形態では、種々の層の厚さの範囲は以下の通りである:陽極110は100〜5000Åで、1つの実施形態では100〜2000Åであり;正孔注入層120は50〜2500Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;正孔輸送層130は50〜2500Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;放射層140は10〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;電子輸送層150は50〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;陰極160は、200〜10000Åで、1つの実施形態では300〜5000Åである。層の厚さの所望の比率は、使用する物質のまさにその性質によって異なるであろう。
【0111】
実施形態によっては、電極の上に配置された第1有機活性層および第2有機活性層を含み、かつ第1有機活性層と第2有機活性層との間にパターン化下塗層をさらに含む有機電子デバイスであって、前記第2有機活性層が下塗層の存在する領域にのみ存在する、有機電子デバイスが提供される。実施形態によっては、第1有機活性層は導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含む。実施形態によっては、第2有機活性層は正孔輸送物質を含む。実施形態によっては、第1有機活性層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーと正孔輸送物質から本質的になる第2有機活性層とを含む。
【0112】
実施形態によっては、陽極を含み、その陽極上に正孔注入層および正孔輸送層がある有機電子デバイスを製作するための方法であって、
正孔注入層を陽極上に形成させる工程であって、前記正孔注入層がフッ素化物質を含みかつ第1表面エネルギーを有する工程と;
下塗層を正孔注入層上に直接形成させる工程と;
下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
下塗層を現像して、下塗層を暴露領域または非暴露領域のいずれか一方から効果的に除去して、現像下塗層のパターンを正孔注入層上に生じさせる工程であって、前記現像下塗層が第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
下塗層の現像パターン上に正孔輸送層を液体付着によって形成させる工程と
を含む、有機電子デバイスを製作するための方法が提供される。
【0113】
これを模式的に図3に示す。デバイス200は、基板(図示せず)上に陽極210を有する。陽極上には正孔注入層220がある。現像下塗層を225として示してある。正孔注入層220の表面エネルギーは、下塗層225の表面エネルギーより小さい。正孔輸送層230は、下塗層および正孔注入層の上に付着させると、正孔注入層の低エネルギー表面をぬらさないので、下塗層のパターンの上にだけに残る。
【0114】
実施形態によっては、陽極を含み、その陽極上に正孔注入層および正孔輸送層がある有機電子デバイスを製作するための方法であって、
正孔注入層を陽極の上に形成させる工程であって、前記正孔注入層が導電性ポリマーおよびフッ素化酸ポリマーを含みかつ第1表面エネルギーを有する工程と;
下塗層を正孔注入層上に直接形成させる工程と;
下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
下塗層を現像して、下塗層を非暴露領域から効果的に除去して、現像下塗層のパターンを正孔注入層上に生じさせる工程であって、前記現像下塗層が第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
下塗層の現像パターン上に正孔輸送層を液体付着によって形成させる工程と
を含む、有機電子デバイスを製作するための方法が提供される。
【0115】
実施形態によっては、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーを含む。実施形態によっては、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーから本質的になる。実施形態によっては、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーと無機ナノ粒子とから本質的になる。実施形態によっては、無機ナノ粒子は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、三酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化サマリウム、酸化イットリウム、酸化セシウム、酸化第二銅、酸化第二スズ、酸化アンチモン、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される。そのような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および公開されたPCT出願の国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0116】
実施形態によっては、下塗層は正孔輸送物質を含む。実施形態によっては、下塗層は、トリアリールアミン類、カルバゾール類、フルオレン類、それらのポリマー、それらのコポリマー、それらの重水素化類似体、およびそれらの組合せよりなる群から選択される物質を含む。実施形態によっては、下塗層は、高分子トリアリールアミン類、ポリカルバゾール類、ポリフルオレン類、非平面構成で結合している共役部分を有する高分子トリアリールアミン類、フルオレンとトリアリールアミンとのコポリマー、それらの重水素化類似体、およびそれらの組合せよりなる群から選択される物質を含む。実施形態によっては、高分子物質は架橋性である。実施形態によっては、下塗層は電子輸送物質を含む。実施形態によっては、下塗層は、金属キレート化オキシノイド化合物を含む。実施形態によっては、下塗層は金属キノレート誘導体を含む。実施形態によっては、下塗層は、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム、およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウムよりなる群から選択される物質を含む。実施形態によっては、下塗層は、高分子トリアリールアミン類、ポリカルバゾール類、ポリフルオレン類、それらのコポリマー、および金属キノレート類よりなる群から選択される物質から本質的になる。
【0117】
実施形態によっては、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーを含み、下塗層は正孔輸送物質から本質的になる。実施形態によっては、正孔輸送物質はトリアリールアミンポリマーである。そのようなポリマーは、例えば、公開されたPCT出願の国際公開第2008/024378号パンフレット、国際公開第2008/024379号パンフレット、および国際公開第2009/067419号パンフレットに記載されている。実施形態によっては、下塗物質は、非平面構成で結合している共役部分を有する高分子トリアリールアミン類、少なくとも1つのフルオレン部分と少なくとも2つのトリアリールアミン部分とを有する化合物、およびそれらの重水素化類似体よりなる群から選択される。実施態様によっては、高分子トリアリールアミン類は、式I、式II、または式IIIを有する。
【0118】
【化1】
【0119】
[式中、
Ar1は、それぞれの出現において同一または異なっていて、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、および置換ナフチレンよりなる群から選択され;
Ar2は、それぞれの出現において同一または異なっていて、アリール基であり;
Mは、それぞれの出現において同一または異なっていて、共役部分であり;
1およびT2は、それぞれの出現において独立に同一または異なっていて、共役部分であり;
aは、それぞれの出現において同一または異なっていて、1〜6の整数であり;
b、c、およびdは、b+c+d=1.0となるようなモル分率であるが、但し、cはゼロではなく、bおよびdの少なくとも1つがゼロではないこと、またbがゼロの場合、Mが少なくとも2個のトリアリールアミン単位体を含むことを条件とし;
eは、それぞれの出現において同一または異なっていて、1〜6の整数であり;さらに
nは、1より大きい整数である]
【0120】
実施形態によっては、正孔輸送層は、トリアリールアミン類、カルバゾール類、それらの高分子類似体、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される。実施形態によっては、正孔輸送層は、高分子トリアリールアミン類、非平面構成で結合している共役部分を有する高分子トリアリールアミン類、およびフルオレンとトリアリールアミン類とのコポリマーよりなる群から選択される。
【0121】
実施形態によっては、この方法は、液体付着によって正孔輸送層上に放射層を形成させることをさらに含む。実施形態によっては、放射層は、光活性ドーパントおよび1種または複数種のホスト物質を含む。実施形態によっては、放射層は、インクジェット式印刷および連続ノズル印刷よりなる群から選択される液体付着技法で形成させる。
【実施例】
【0122】
本明細書に記載する概念を以下の実施例でさらに説明するが、実施例は請求項に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【0123】
実施例では、以下の下塗物質を使用した。
【0124】
【化2】
【0125】
【化3】
【0126】
【化4】
【0127】
【化5】
【0128】
【化6】
【0129】
xは0〜5であり、Σ(x)=10〜32である。
【0130】
PM−8からPM−12は、よく知られている化合物である。PM−1およびPM−4などの調製化合物は、公開されたPCT出願である国際公開第2009/067419号パンフレットに以前から記載されている。PM−2、PM−3、およびPM−6などの化合物の調製については、公開されたPCT出願である国際公開第2008/024378号パンフレットおよび国際公開第2008/024379号パンフレットに記載されている。PM−7などの化合物の調製については、米国特許出願公開第2005−0187411号明細書に記載されている。
【0131】
重水素化下塗物質PM−13は、以下のようにして調製できる。
【0132】
化合物2の合成
【0133】
【化7】
【0134】
窒素雰囲気下において、250mLの丸底に、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(25.0g、45.58ミリモル)、フェニルボロン酸(12.23g、100.28ミリモル)、Pd2(dba)3(0.42g、0.46ミリモル)、PtBu3(0.22g、1.09ミリモル)および100mLのトルエンを仕込んだ。反応混合物を5分間攪拌し、その後KF(8.74g、150.43ミリモル)を2回に分けて加え、得られた溶液を室温で一晩攪拌した。その混合物を500mLのTHFで希釈し、シリカとセライトのプラグを通過させ、揮発分を減圧下で濾過液から除去した。ヘキサンを溶離剤として用いてシリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィーで黄色油を精製した。白色固体として80.0%(19.8g)の生成物が得られた。NMR分析は、その物質が上に示した構造を有する化合物2であることを示した。
【0135】
化合物3の合成
【0136】
【化8】
【0137】
凝縮器および滴下漏斗を備えた250mLの三つ口丸底フラスコをN2で30分間洗浄した。9,9−ジオクチル−2,7−ジフェニルフルオレン(19.8g、36.48ミリモル)を加え、100mLのジクロロメタンに溶かした。透明な溶液を−10℃まで冷却し、臭素(12.24g、76.60ミリモル)を20mLのジクロロメタン中に含む溶液を滴加した。その混合物を0℃で1時間攪拌し、それから室温になるまで温まるままにし、一晩攪拌した。100mLの10%Na223水溶液を加え、反応混合物を1時間攪拌した。有機層を抽出し、水層を100mLのジクロロメタンで3回洗浄した。一緒にした有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、乾燥するまで濃縮した。得られた油にアセトンを加えると、白色沈殿が生じた。濾過して乾燥させると、白色粉末が得られた(13.3g、52.2%)。NMR分析は、その物質が上記に示した構造を有する化合物3であることを示した。
【0138】
化合物4の合成
【0139】
【化9】
【0140】
窒素雰囲気下において、250mLの丸底に、3(13.1g、18.70ミリモル)、アニリン(3.66g、39.27ミリモル)、Pd2(dba)3(0.34g、0.37ミリモル)、PtBu3(0.15g、0.75ミリモル)および100mLのトルエンを仕込んだ。反応混合物を10分間攪拌し、その後NaOtBu(3.68g、38.33ミリモル)を加え、反応混合物を室温で1日間攪拌した。得られた反応混合物を3Lのトルエンで希釈し、シリカとセライトのプラグを通過させて濾過した。揮発分を蒸発させたなら、得られた暗褐色の油を、酢酸エチル:ヘキサンが1:10の混合物を溶離剤として用いて、シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。50.2%(6.8g)の生成物が淡黄色の粉末として得られた。NMR分析は、その物質が上に示した構造を有する化合物4であることを示した。
【0141】
化合物5の合成
【0142】
【化10】
【0143】
凝縮器を備えた250mLの三つ口丸底フラスコ中で、4(4.00g、5.52ミリモル)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(4.68g、16.55ミリモル)、Pd2(dba)3(0.30g、0.33ミリモル)およびDPPF(0.37g、0.66ミリモル)を80mLのトルエンと一緒にした。得られた混合物を10分間攪拌した。NaOtBu(1.17g、12.14ミリモル)を加え、その混合物を4日間80℃に加熱した。得られた反応混合物を1Lのトルエンおよび1LのTHFで希釈し、シリカとセライトのプラグを通過させて不溶性塩を除去した。揮発分を蒸発させたなら、得られた褐色の油を、ジクロロメタン:ヘキサンが1:10の混合物を溶離剤として用いて、シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。乾燥後に黄色粉末が得られた(4.8g、84.8%)。NMR分析は、その物質が上に示した構造を有する化合物5であることを示した。
【0144】
化合物6の合成
【0145】
【化11】
【0146】
窒素雰囲気下において、1gの化合物5をC66(20mL)に溶かし、それにCF3OSO2D(1.4mL)を滴加した。その反応混合物は室温で一晩攪拌されるようにし、その後、飽和Na2CO3/D2Oで急冷した。有機層を分離し、MgSO4で乾燥させた。シリカクロマトグラフィー(20%CH2Cl2:ヘキサン)を用いて生成物を精製して、0.688gの物質を得た。分離された物質のMSスペクトルにより、18個の芳香族Dを有するその構造が確認された。
【0147】
化合物6の重合:
操作はすべて、特に記載のない限り、窒素洗浄されたグローブボックス中で実施した。化合物6(0.652g、0.50ミリモル)をシンチレーションバイアルに加え、16mLのトルエンに溶かした。清浄で乾燥した50mLのシュレンク管に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(0.344g、1.252ミリモル)を仕込んだ。2,2’−ジピリジル(0.195g、1.252ミリモル)および1,5−シクロオクタジエン(0.135g、1.252ミリモル)を秤量してシンチレーションバイアルに入れ、3.79gのN,N’−ジメチルホルムアミドに溶かした。その溶液をシュレンク管に加えた。シュレンク管をアルミニウムブロックの中に挿入し、そのブロックを、内部温度が60℃になる設定点において熱板/撹拌機で加熱・攪拌した。触媒系を45分間60℃に保持してから、65℃に上昇させた。モノマーのトルエン溶液をシュレンク管に加え、その管を密閉した。トルエン(8mL)を加えることによって粘度を調節しながら、重合混合物を65℃で1だけ攪拌した。反応混合物を室温まで冷まし、20mLの濃HCLを加えた。その混合物を45分間、攪拌されるままにした。ポリマーを真空濾過で回収し、さらなるメタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させた。トルエンからアセトンおよびMeOHへ移す連続沈殿によりポリマーを精製した。白色の繊維状ポリマー(0.437g、79%の収率)が得られた。ポリマーの分子量は、GPC(THF移動相、ポリスチレン標準物質)で求めた:Mw=1,696,019;Mn=873,259。NMR分析により、その構造がポリマーである化合物PM−13であることが確認された。
【0148】
更なる物質には、以下のものが含まれる:
HIJ−1(これは、導電性ポリマーと高分子フッ素化スルホン酸との水性分散液である)。そのような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および公開されたPCT出願の国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0149】
HIJ−2(これは、導電性ポリマーと高分子フッ素化スルホン酸と無機ナノ粒子との水性分散液である)。そのような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および公開されたPCT出願の国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0150】
実施例1〜10
これらの実施例は、種々の下塗物質および得られた接触角の変化を例示しており、ここでは、下塗層が液体付着で形成され、液体による処理で現像されている。
【0151】
HIJ−1またはHIJ−2の水性分散液を、厚さ50nmになるまでガラス基板にスピンコーティングして、試験片を作製した。この層を乾燥させた後、乾燥させたHIJ層に下塗物質の溶液をスピンコーティングすることにより下塗層を生じさせた。実施例1〜8および10では、下塗物質をトルエンからスピンコーティングした。実施例9では、下塗物質をジクロロメタンからスピンコーティングした。乾燥させた後、下塗層を放射線にパターン状に暴露した。実施例1〜6および8〜9では、100mJ/cm2の放射線量を用いて248nmで暴露した。実施例7では、暴露放射線量は200mJ/cm2であった。実施例10では、何度も暴露した:248nm(1J/cm2)、365nm(13J/cm2)、405nm(3J/cm2)、および436nm(8J/cm2)。暴露後に、下塗層を溶媒で処理して現像した。実施例1〜4および10では、撹拌しながらトルエンに浸し、トルエンで洗浄し、それから窒素で乾燥させることにより、試料を現像した。実施例5および8では、2000rpmで60秒間スピンさせながらキシレンを吹き付け、次いで30秒間スピンさせて乾燥させることにより、試料を現像した。実施例6では、2000rpmで60秒間スピンさせながらアニソールを吹き付け、次いで30秒間スピンさせて乾燥させることにより、試料を現像した。実施例7では、2000rpmで60秒間スピンさせながらトルエンを吹き付け、次いで30秒間スピンさせて乾燥させることにより、試料を現像した。実施例9では、2000rpmで60秒間スピンさせながらジクロロメタンを吹き付け、次いで30秒間スピンさせて乾燥させることにより、試料を現像した。物質と結果の要約を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
実施例11〜12
これらの実施例は、種々の下塗物質および得られた接触角の変化を例示しており、ここでは、下塗層が蒸着で形成され、加熱で現像されている。
【0154】
試験片は、上述のようにしてHIJ−1をガラス基板に付着させることにより作製した。その後、熱蒸発器(thermal evaporator)内で下塗物質を蒸着させて下塗層を形成させた。次いで下塗層を暴露し、焼き付けて現像した。実施例11では、400mJ/cm2の放射線量を用いて248nmで暴露した。試験片は、225℃で5分間焼き付けて現像した。実施例12では、何度も暴露した:248nm(1J/cm2)、365nm(13J/cm2)、405nm(3J/cm2)、および436nm(8J/cm2)。試験片は、275℃で5分間焼き付けて現像した。物質と結果の要約を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例13および比較例A
この実施例は、電子デバイス内に液体付着で形成された下塗層を例示しており、ここでは、放射層が蒸着によって形成されている。
【0157】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有していた。
陽極=インジウムスズ酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ−1(50nm)
下塗り層:実施例13=PM−3(20nm)
比較例A=なし
正孔輸送層=PM−1(20nm)
放射層=6:1(ホスト1:ドーパント1)(32nm)(ここで、ホスト1はジアリールアントラセン化合物であり、ドーパント1はビス(ジアリールアミノ)クリセン化合物である)
電子輸送層=ET1(これは、金属キノレート誘導体である)(10nm)
陰極=CsF/Al(0.7/100nm)
【0158】
OLEDデバイスは、溶液処理技法と熱蒸発技法とを併用することによって製造した。パターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)被覆のガラス基板(Thin Film Devices,Incからのもの)を使用した。このITO基板は、シート抵抗が30オーム/平方であり光透過率が80%であるITOで被覆されたCorning 1737ガラスをベースにしている。パターン化ITO基板を、洗浄剤水溶液中で超音波を使って清浄にし、蒸留水ですすいだ。その後、パターン化ITOをアセトン中で超音波を使って清浄にし、イソプロパノールですすぎ、窒素流で乾燥させた。
【0159】
デバイスの製造の直前に、清浄にしたパターン化ITO基板を紫外オゾンで10分間処理した。冷却直後に、HIJ−1の水性分散液を、ITO表面の上にスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後に、PM−3のトルエン溶液を正孔注入層上にスピンコーティングすることによって、下塗層を形成させた。下塗層は、100mJ/cm2の放射線量を用いて248nmで画像状に暴露した。暴露後に、下塗層は、撹拌しながらトルエンに浸してから、トルエンですすいで現像した。現像層を窒素で乾燥させた。比較例Aでは、下塗層はなかった。次いで、基板を正孔輸送物質の溶液でスピンコーティングし、その後、加熱して溶媒を除去した。冷却後に、基板をマスキングし、真空チャンバーに入れた。次いで放射層の物質を熱蒸発で付着させ、その後電子輸送層を、次いでCsFの層を付着させた。次いで真空中でマスクを変え、Al層を熱蒸発で付着させた。チャンバーのガス抜きを行い、ガラスの蓋、乾燥剤、および紫外線硬化性エポキシを用いてデバイスをカプセル化した。
【0160】
OLED試料は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネセンスの輝度 対 電圧、および(3)エレクトロルミネセンスのスペクトル 対 電圧を測定して特徴を決定した。3種類の測定はすべて同時に実施し、コンピューターで制御した。ある一定電圧でのデバイスの電流効率は、LEDのエレクトロルミネセンス輝度を、デバイスを作動させるのに必要な電流で割ることによって求めた。単位はcd/Aである。電力効率は、電流効率にpiを乗じ、動作電圧で割ったものである。単位はlm/Wである。
【0161】
得られたデバイスのデータを表3に示す。
【0162】
実施例14および比較例B
この実施例は、電子デバイス内に液体付着で形成された下塗層を例示しており、ここでは、放射層が液体付着によって形成されている。
【0163】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有していた。
陽極=インジウムスズ酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ−2(50nm)
下塗り層:実施例14=PM−3(20nm)
比較例B=なし
正孔輸送層=PM−1(20nm)
放射層=13:1(ホスト1:ドーパント2)(40nm)(ここで、ドーパント2はビス(ジアリールアミノ)クリセン化合物である)
電子輸送層=ET1(10nm)
陰極=CsF/Al(0.7/100nm)
【0164】
OLEDデバイスは、実施例13に関して説明したようにして製造し、評価したが、以下の点については異なっていた:(1)実施例14の下塗り層は、2000rpmで60秒間スピンさせている間にアニソールを吹き付けて現像し、次いで30秒間スピンさせて乾燥させ;かつ(2)実施例14および比較例Bの放射層は、安息香酸メチル溶液からスピンコーティングして付着させた。
【0165】
得られたデバイスのデータを表3に示す。
【0166】
実施例15および比較例C
この実施例は、電子デバイス内に蒸着で形成された下塗層を例示しており、ここでは、放射層が蒸着によって形成されている。
【0167】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有していた。
陽極=インジウムスズ酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ−1(50nm)
下塗り層:実施例15=PM−11(20nm)
比較例C=なし
正孔輸送層=PM−1(20nm)
放射層=6:1(ホスト1:ドーパント1)(32nm)
電子輸送層=ET1(10nm)
陰極=CsF/Al(0.7/100nm)
【0168】
OLEDデバイスは、実施例13に関して説明したようにして製造し、評価したが、以下の点については異なっていた:(1)実施例15の下塗り層は、熱蒸発器内で蒸着によって形成させ;かつ(2)実施例15の下塗り層は、225℃で5分間焼き付けて現像した。
【0169】
得られたデバイスのデータを表3に示す。
【0170】
実施例16および比較例D
この実施例は、電子デバイス内に液体付着で形成された下塗層を例示しており、ここでは、放射層が液体付着によって形成されている。
【0171】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有していた。
陽極=ITO:50nm
正孔注入層=HIJ−2(50nm)
下塗り層:実施例16=PM−13(20nm)
比較例D=なし
正孔輸送層=PM−1(20nm)
放射層=13:1(ホスト2:ドーパント2)(40nm)(ここで、ホスト2は重水素化ジアリールアントラセン化合物である)
電子輸送層=ET1(10nm)
陰極=CsF/Al(1/100nm)
【0172】
OLEDデバイスは、実施例14に関して説明したようにして製造し、評価した。
【0173】
得られたデバイスのデータを表3に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
データはすべて1000ニットでのものである。CIE(x,y)は、C.I.E.色度(C.I.E.chromaticity scale)(国際照明委員会、1931)に従ったxおよびy色座標である。CE=電流効率(cd/A);EQE=外部量子効率(%);PE=電力効率(lm/W);寿命試験の電流密度(mA/cm2);寿命試験のLum.=輝度(ニット);Raw T50は、デバイスが、所与の寿命試験の輝度において初期輝度の半分に達する時間(時間)である。計画T50は、加速係数1.7を用いた1000ニットでの計画寿命である。
【0176】
デバイス性能は下塗層の存在によって悪影響を受けていないことが、表3から分かる。
【0177】
概要および実施例において上で述べた作業のすべてが必要であるわけではないこと、特定作業の一部は必要ではないことがあること、また説明したものに加えて1つまたは複数の更なる作業が実行されうることに留意されたい。またさらに、列挙されている作業の順序は、必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0178】
上記の明細書により、各概念が特定の実施形態に関連して説明された。しかし、以下の請求項に記載した本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を行うことができることは、当業者により理解される。したがって、明細書および図は、制限的な意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、そのような修正はすべて本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0179】
上記において、便益、他の利点、および問題の解決法は、特定の実施形態に関連して説明されている。しかし、便益、利点、問題の解決法、ならびにいずれかの便益、利点、または解決法をもたらしうるかまたはより顕著なものにしうるどの特徴も、いずれかまたはすべての請求項の重要な特徴、必須の特徴、または基本的特徴と解釈すべきではない。
【0180】
明快にするために別々の実施形態の文脈において本明細書で説明されている特定の複数の特徴を、1つの実施形態で兼ね備えさせることもできることを理解すべきである。その逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で説明されている様々な特徴を、別個に、あるいは任意の副次的な組合せで備えさせることもできる。さらに、範囲内に示されている値に言及している場合、それはその範囲内の各値およびすべての値を含む。
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1.第1層の上に閉じ込め第2層を形成させるための方法であって、前記方法が、
第1表面エネルギーを有する前記第1層を形成させる工程と、
前記第1層に下塗層を施す工程と、
前記下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と、
前記下塗層を現像して、前記下塗層を前記暴露領域または前記非暴露領域のいずれか一方から効果的に除去して、下塗層のパターンを有する第1層を生じさせる工程であって、前記下塗層のパターンが前記第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と、
前記第1層上の前記下塗層のパターン上に前記第2層を液体付着によって形成させる工程と
を含む、第1層の上に閉じ込め第2層を形成させるための方法。
2.前記非暴露領域を除去する、前記1に記載の方法。
3.液体による処理によって現像を実施する、前記1に記載の方法。
4.蒸発によって現像を実施する、前記1に記載の方法。
5.前記非暴露領域の最も外側の表面を吸収性表面と接触させることによって現像を実施する、前記1に記載の方法。
6.前記非暴露領域の最も外側の表面を粘着表面と接触させることによって現像を実施する、前記1に記載の方法。
7.電極を含んでいてその上に第1有機活性層と第2有機活性層とが配置されている有機電子デバイスを製作するための方法であって、前記方法が、
第1表面エネルギーを有する前記第1有機活性層を前記電極の上に形成させる工程と;
前記第1有機活性層に下塗層を施す工程と;
前記下塗層をパターン状に放射線に暴露して、暴露領域および非暴露領域を生じさせる工程と;
前記下塗層を現像して、前記下塗層を前記暴露領域または前記非暴露領域のいずれか一方から実質的に除去して、下塗層のパターンを有する第1活性有機層を生じさせる工程であって、前記下塗層のパターンが前記第1表面エネルギーより大きい第2表面エネルギーを有する工程と;
前記第1有機活性層上の前記下塗層のパターン上に液体付着によって前記第2有機活性層を形成させる工程と
を含む、有機電子デバイスを製作するための方法。
8.前記第1活性層が正孔輸送層であり、前記第2活性層が放射層である、前記7に記載の方法。
9.前記第1活性層が正孔注入層であり、前記第2活性層が正孔輸送層である、前記7に記載の方法。
10.前記正孔注入層が導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含む、前記9に記載の方法。
11.前記正孔注入層が、フッ素化酸ポリマーがドープされた導電性ポリマーと無機ナノ粒子とから本質的になる、前記9に記載の方法。
12.前記下塗層が正孔輸送物質を含む、前記9に記載の方法。
13.前記下塗層が、高分子トリアリールアミン類、ポリカルバゾール類、ポリフルオレン類、非平面構成で結合している共役部分を有する高分子トリアリールアミン類、フルオレンとトリアリールアミンとのコポリマー、金属キノレート類、それらの重水素化類似体、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される物質を含む、前記9に記載の方法。
14.前記正孔輸送層が、高分子トリアリールアミン類、非平面構成で結合している共役部分を有する高分子トリアリールアミン類、およびフルオレンとトリアリールアミン類とのコポリマーよりなる群から選択される、前記9に記載の方法。
15.前記正孔輸送層上に液体付着によって放射層を形成させることをさらに含む、前記9に記載の方法。
図1
図2
図3