(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可動部を駆動する駆動部と、該駆動部の駆動力を可動部へ伝達する力伝達部と、該力伝達部の発熱量に関する物理量として、前記力伝達部が伝達する仕事量、前記力伝達部の推力、前記駆動部の消費エネルギー量、前記駆動部の駆動力のうち少なくとも一つを検出する物理量検出部と、該検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を推定する温度推定部とを有し、
さらに、該推定した温度が所定温度を超えないように力伝達部の温度を管理する温度管理部を有することを特徴とする射出成形機の制御装置。
可動部を駆動する駆動部と、該駆動部の駆動力を可動部へ伝達する力伝達部と、該力伝達部の発熱量に関する物理量を検出する物理量検出部と、該検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を推定する温度推定部とを有し、
さらに、該推定した温度が所定温度を超えないように力伝達部の温度を管理する温度管理部を有し、
前記力伝達部は型締部の力伝達部であり、前記物理量は型締力、型締に必要な仕事量のうち少なくとも一つであることを特徴とする射出成形機の制御装置。
可動部を駆動する駆動部と、該駆動部の駆動力を可動部へ伝達する力伝達部と、該力伝達部の発熱量に関する物理量を検出する物理量検出部と、該検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を推定する温度推定部とを有し、
さらに、該推定した温度が所定温度を超えないように力伝達部の温度を管理する温度管理部を有し、
前記力伝達部は射出部の力伝達部であり、前記物理量は射出圧力、射出に必要な仕事量のうち少なくとも一つであることを特徴とする射出成形機の制御装置。
前記温度推定部は、前記検出した物理量に基いて前記力伝達部の発熱量を推定し、該推定した発熱量に基いて前記力伝達部の温度を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された射出成形機の制御装置。
前記温度管理部は、前記推定した温度を表示する表示部、前記推定した温度が所定温度を超えた場合に警報を出力する警報出力部、前記推定した温度が所定温度を超えた場合に警告を表示する警告表示部、前記推定した温度が所定温度を超えた場合に運転を停止する運転停止部のうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機の制御装置。
前記温度管理部は、前記推定した温度が所定温度を超えないように成形動作の一部に動作を休止する工程を挿入する第1の成形条件調整部、対象可動部の動作速度を下げる第2の成形条件調整部、成形サイクルにおける対象可動部以外の動作工程の所要時間が伸びるように成形条件を調整する第3の成形条件調整部のうち少なくとも一つを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の射出成形機の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される技術では、ボールねじの単位時間あたりの回転量に基いて冷媒供給手段を制御するが、実際にはボールねじの発熱量は、ボールねじの単位時間あたりの回転量だけでなく、ボールねじの伝達力などによっても変化するので、射出成形機などのようにボールねじが大きな推力を伝達する場合には、ボールねじの温度を精度よく管理できない可能性がある。
特許文献2に開示される技術は、ボールねじ軸またはボールねじナットに温度センサを用意する必要があり、コストアップになるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑み、温度センサなどの特別の手段を必要とすることなく、ボールねじ等の力伝達部の温度を推定し、前記推定した温度が許容温度を超えないように管理することが可能な力伝達部の温度管理機能を有する射出成形機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、可動部を駆動する駆動部と、該駆動部の駆動力を可動部へ伝達する力伝達部と、該力伝達部の発熱量に関する物理量
として、前記力伝達部が伝達する仕事量、前記力伝達部の推力、前記駆動部の消費エネルギー量、前記駆動部の駆動力のうち少なくとも一つを検出する物理量検出部と、該検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を推定する温度推定部とを有し、さらに、該推定した温度が所定温度を超えないように力伝達部の温度を管理する温度管理部を有することを特徴とする射出成形機の制御装置である。
請求項2に係る発明は、
可動部を駆動する駆動部と、該駆動部の駆動力を可動部へ伝達する力伝達部と、該力伝達部の発熱量に関する物理量を検出する物理量検出部と、該検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を推定する温度推定部とを有し、さらに、該推定した温度が所定温度を超えないように力伝達部の温度を管理する温度管理部を有し、前記力伝達部は型締部の力伝達部であり、前記物理量は型締力、型締に必要な仕事量のうち少なくとも一つであることを特徴とする射出成形機の制御装置である。
請求項3に係る発明は、
可動部を駆動する駆動部と、該駆動部の駆動力を可動部へ伝達する力伝達部と、該力伝達部の発熱量に関する物理量を検出する物理量検出部と、該検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を推定する温度推定部とを有し、さらに、該推定した温度が所定温度を超えないように力伝達部の温度を管理する温度管理部を有し、前記力伝達部は射出部の力伝達部であり、前記物理量は射出圧力、射出に必要な仕事量のうち少なくとも一つであることを特徴とする射出成形機の制御装置である。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記温度推定部は、前記検出した物理量に基いて前記力伝達部の発熱量を推定し、該推定した発熱量に基いて前記力伝達部の温度を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された射出成形機の制御装置である。
請求項5に係る発明は、前記温度管理部は、前記推定した温度を表示する表示部、前記推定した温度が所定温度を超えた場合に警報を出力する警報出力部、前記推定した温度が所定温度を超えた場合に警告を表示する警告表示部、前記推定した温度が所定温度を超えた場合に運転を停止する運転停止部のうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機の制御装置である。
請求項6に係る発明は、前記温度管理部は、前記推定した温度が所定温度を超えないように成形動作の一部に動作を休止する工程を挿入する第1の成形条件調整部、対象可動部の動作速度を下げる第2の成形条件調整部、成形サイクルにおける対象可動部以外の動作工程の所要時間が伸びるように成形条件を調整する第3の成形条件調整部のうち少なくとも一つを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の射出成形機の制御装置である。
請求項7に係る発明は、
前記温度推定部は、前記検出した物理量に基づいて前記力伝達部の温度を所定温度に対する割合として推定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の射出成形機の制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、温度センサなどの特別の手段を必要とすることなく、ボールねじ等の力伝達部の温度を推定し、前記推定した温度が許容温度を超えないように管理することが可能な力伝達部の温度管理機能を有する射出成形機の制御装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の力伝達部の温度管理機能を有する射出成形機の制御装置の実施形態を説明する図である。機台15上に固定プラテン1、リアプラテン2、可動プラテン3、トグルリンク機構6などから構成される型締め部と、射出シリンダ20、射出スクリュ22、射出用サーボモータ25などから構成される射出部を備えて射出成形機の本体部が構成される。
【0012】
まず、型締め部について説明する。固定プラテン1とリアプラテン2は複数のタイバー4によって連結されている。固定プラテン1とリアプラテン2の間には可動プラテン3がタイバー4に沿って移動自在に配設されている。また、金型5の固定側金型5aが固定プラテン1に取り付けられ、可動側金型5bが可動プラテン3に取り付けられている。
【0013】
リアプラテン2と可動プラテン3間にはトグルリンク機構6が配設され、トグルリンク機構6のクロスヘッド6aに設けられたナットが、リアプラテン2に回動自在で軸方向移動不能に取り付けられたボールねじ7と螺合している。ボールねじ7に設けられたプーリ10と型締用サーボモータ8の出力軸に設けられたプーリ11間にはベルト(タイミングベルト)9がかけられている。
【0014】
型締用サーボモータ8の駆動により、プーリ11、ベルト9、プーリ10からなる動力伝達部を介してボールねじ7を駆動し、トグルリンク機構6のクロスヘッド6aを前進,後進(
図1において右方向,左方向)させてトグルリンク機構6を駆動し、可動プラテン3を固定プラテン1方向に前進、後退させて金型5a,5bの型閉じ・型締、型開きを行う。
【0015】
型締用サーボモータ8には型締用サーボモータ8の回転位置・速度を検出するパルスコーダなどの位置・速度検出器12が取り付けられている。この位置・速度検出器12からの位置・速度フィードバック信号により、クロスヘッド6aの位置・速度、可動プラテン3(可動側金型5b)の位置・速度を検出するように構成されている。
【0016】
符号13はエジェクタ装置であり、エジェクタ装置13は可動プラテン3に設けられた金型(可動側金型5b)内から成形品を突き出すための装置である。エジェクタ装置13は、エジェクタ用サーボモータ13aの回転力をプーリ、ベルト(タイミングベルト)からなる動力伝達部13c、ボールねじ/ナット機構13dを介して、図示しないエジェクトピンに伝達し、該エジェクトピンを金型(可動側金型5b)内に突出させて成形品を金型(可動側金型5b)から突き出すものである。なお、符号13bはエジェクタ用サーボモータ13aに取り付けられた位置・速度検出器であり、このエジェクタ用サーボモータ13aの回転位置・速度を検出することによって、エジェクトピンの位置、速度を検出するものである。
【0017】
符号14は、リアプラテン2に設けられた型締力調整機構であり、型締力調整用モータ14aを駆動し、伝動機構を介してタイバー4に設けられたネジに螺合する図示しないナットを回転させ、タイバー4に対するリアプラテン2の位置を変える(つまり機台15上での固定プラテン1に対する位置を変える)ことによって型締力の調整を行うものである。上述した、型締装置、エジェクタ機構などは従来から射出成形機に備えられた公知のものである。
【0018】
次に、射出部について説明する。射出シリンダ20内に樹脂材料を供給するために、ホッパ27が射出シリンダ20の上部に設けられている。射出シリンダ20の先端にはノズル部21が取り付けられ、射出シリンダ20内には射出スクリュ22が挿通されている。射出部には、射出シリンダ20内の溶融樹脂の圧力を検出するロードセル等の図示しない圧力センサが設けられている。
【0019】
射出スクリュ22は、スクリュ回転用サーボモータ23により、プーリ、タイミングベルト等で構成される動力伝達部24を介して正,逆回転させられる。また、射出スクリュ22は、射出用サーボモータ25によって、プーリ、ベルト、ボールねじ/ナット機構を含む動力伝達部26を介して駆動され、射出シリンダ20内を射出シリンダ20の軸方向に移動する。スクリュ回転用サーボモータ23には図示を省略したパルスコーダが取り付けられており、射出スクリュ22の回転位置や回転速度を検出する。また、射出用サーボモータ25には図示を省略したパルスコーダが取り付けられており、射出スクリュ22の軸方向の位置や速度を検出する。
【0020】
次に、射出成形機の制御装置について説明する。符号30は射出成形機を制御する制御装置である。制御装置30は、プロセッサ(CPU)35,RAM34a,ROM34b等からなるメモリ34、バス33、表示装置インタフェース36を備え、バス33でこれらの要素が接続されている。ROM34bには、可動プラテン3の動作を制御するソフトウェアやエジェクタ装置13を制御するための突き出し制御用のソフトウェアなど、射出成形機を全体として制御するソフトウェアが格納されている。また、本発明の実施形態では、メモリ34のROM34bには、本発明に係る射出成形機の力伝達部の温度を管理するための各種ソフトウェアが格納されている。
【0021】
表示装置インタフェース36には、LCD(液晶表示装置)37が接続されている。また、サーボインタフェース32には、射出成形機の各可動部を駆動しサーボモータの位置、速度を制御するサーボアンプ31が接続されている。そして、各可動部を駆動するサーボモータに取り付けられた位置・速度検出器がサーボアンプ31に接続されている。なお、表示装置インタフェース36には図示を省略した手動入力による入力部が接続されている。
【0022】
射出成形機には複数の可動部を駆動するために複数のサーボモータが用いられているが、
図1では、型締用サーボモータ8用とエジェクタ用サーボモータ13a用のサーボアンプ31のみを示している。そして、サーボアンプ31はそれぞれのサーボモータ8、13aの位置・速度検出器12,13bと接続され、位置・速度検出信号がそれぞれのサーボアンプ31にフィードバックされる。なお、スクリュ回転用サーボモータ23及び射出用サーボモータ25のサーボアンプ、並びに、それぞれのサーボモータ23,25に取り付けられている位置・速度検出器は図示を省略している。
【0023】
プロセッサ(CPU)35は、予めメモリ34のROM34bに格納されているプログラムを成形条件などに基づいて実行し、射出成形機の各可動部への移動指令を、サーボインタフェース32を介してサーボアンプ31に出力する。各サーボアンプ31は、この移動指令、それぞれの位置・速度検出器(12,13b)からの位置、速度フィードバック信号に基づいて位置、速度のフィードバック制御、さらには、図示しない電流検出器からの電流フィードバック信号に基づいて電流フィードバック制御を行い、各サーボモータ(8、13a)を駆動制御する。なお、各サーボアンプ31は、従来技術と同様に、プロセッサとメモリ等で構成されており、この位置、速度のフィードバック制御等の処理をソフトウェアの処理によって実行するものである。なお、PMC38はプログラマブル・マシン・コントローラであり、シーケンス制御により射出成形機本体を制御するための装置である。
【0024】
上述した射出成形機およびその制御装置の構成は従来公知である。射出成形機の制御装置30は、下記に説明する第1の実施形態および第2の実施形態の機能を備えることにより、温度を直接的に測定する温度センサなどの特別の手段を必要とすることなく、力伝達部の温度を推定し、前記推定した温度が許容温度を超えないように管理することを実現している。ここで、力伝達部は、射出部、計量部、型開閉部、もしくは、エジェクタ部などを駆動するボールねじでもよいし、または、型締の駆動力を伝達するトグル機構、もしくは、クランク機構でもよい。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、力伝達部が単位時間あたりに伝達する仕事量を検出し、前記検出した仕事量に基いて力伝達部で発生する単位時間あたりの発熱量を推定し、前記推定した発熱量に基いて力伝達部の温度を推定し、前記推定温度が許容温度を超えたら警告を表示することを特徴とする。
【0025】
図2は第1の実施形態の処理を説明するフローチャートである。
●[ステップSA01]力伝達部の温度を推定する。力伝達部の温度は
図6または
図7に示される処理により推定できる。
●[ステップSA02]推定温度を画面に表示する。
●[ステップSA03]推定温度は許容温度より高いか否か判断し、高い場合(YES)ステップSA04へ移行し、高くない場合(NO)ステップSA06へ移行する。
●[ステップSA04]警報を出力する。
●[ステップSA05]警告を画面に表示する。
●[ステップSA06]運転を継続するか否か判断し、継続の場合(YES)ステップSA01へ戻り、継続ではない場合(NO)処理を終了する。
【0026】
上記フローチャートを補足して説明する。
ステップSA01において力伝達部の温度を推定するにあたって、
図6のフローチャートのステップSE02において、力伝達部が単位時間あたりに伝達する仕事量を検出し、力伝達部で発生する単位時間あたりの発熱量を推定している(
図6参照)。あるいは、
図7のフローチャートのステップSF02において、力伝達部が1サイクルあたりに伝達する仕事量を検出し、力伝達部で発生する1サイクルあたりの発熱量を推定している(
図7参照)。これらの方法の他に、力伝達部の単位動作距離あたりに伝達する仕事量を検出し、力伝達部で発生する単位動作距離あたりの発熱量を推定するようにしてもよい。
【0027】
警告の表示手段としては、表示画面に警告を表示したり(SA05)、警報のため、警告灯を点灯させたり、外部装置へ警告信号を出力するようにしてもよい(SA04)。また、単に表示画面に推定温度を表示し、オペレータが推定温度に応じて運転を停止できるようにしてもよい。なお、成形サイクル実行中の射出成形機の運転を停止する機能は従来から射出成形機の制御装置に備わっている機能である。
【0028】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に力伝達部の温度を推定し、前記推定温度が許容温度を超える場合は、推定した温度が許容値以下となるように成形条件を調整することを特徴とする。
(第1の成形条件調整部:動作休止時間を調整して成形条件を調整する形態)
成形条件の調整手段として、成形動作の一部に対象可動部の動作を休止する工程を挿入する。例えば、サイクル動作の切替部や、型開閉、射出、保圧、計量、冷却、エジェクトなどの各動作工程の切替部などのうち任意の箇所に対象可動部の休止工程を挿入する。そして、前記推定温度が許容温度以下となるように、前記推定した温度と許容温度との偏差や大小関係に基いて、前記休止工程の時間を調整する。
【0029】
図3は動作休止時間を調整する第2の実施形態の処理を説明するフローチャートである。
●[ステップSB01]力伝達部の温度を推定する。力伝達部の温度は
図6または
図7に示される処理により推定できる。
●[ステップSB02]推定温度が許容温度より高いか否か判断し、高い場合(YES)ステップSB03へ移行し、高くない場合(NO)ステップSB04へ移行する。
●[ステップSB03]動作休止時間を増加させる。
●[ステップSB04]動作休止時間を減少させる。
●[ステップSB05]運転を継続するか否か判断し、継続の場合(YES)ステップSB01へ戻り、継続ではない場合(NO)処理を終了する。
【0030】
(第2の成形条件調整部:動作速度を調整する形態)
成形条件の調整手段としては、対象可動部の速度を下げる。
図4は可動部の動作速度を調整する第2の実施形態の処理を説明するフローチャートである。
●[ステップSC01]力伝達部の温度を推定する。力伝達部の温度は
図6または
図7に示される処理により推定できる。
●[ステップSC02]推定温度が許容温度より高いか否か判断し、高い場合(YES)ステップSC03へ移行し、高くない場合(NO)ステップSC04へ移行する。
●[ステップSC03]可動部の動作速度を下げる。
●[ステップSC04]可動部の動作速度を上げる。
●[ステップSC05]運転を継続するか否か判断し、継続の場合(YES)ステップSC01へ戻り、継続ではない場合(NO)処理を終了する。
なお、ステップSC04において可動部の動作速度を上げるに際して、可動部の動作速度を調整する前に速度設定値を超えないように可動部の動作速度を制限してもよいし、可動部の動作速度を調整する前の速度設定値を超えて可動部の動作速度を上げるようにしてもよい。
【0031】
(第3の成形条件調整部:成形サイクルにおける対象可動部以外の動作工程にかかる所要時間を調整する形態)
成形条件の調整手段として、成形サイクルにおける対象可動部以外の動作工程にかかる所要時間が伸びるように、例えば保圧時間や冷却時間を伸ばしたり、射出速度や計量回転速度を下げるようにしてもよい。
【0032】
(力伝達部の給脂間隔を調整する形態)
また、力伝達部に給脂する手段を設け、推定温度が許容値以下となるように給脂量や給脂間隔を制御するようにしてもよい。
図5は力伝達部の給脂間隔を調整する第2の実施形態の処理を説明するフローチャートである。
●[ステップSD01]力伝達部の温度を推定する。力伝達部の温度は
図6または
図7に示される処理により推定できる。
●[ステップSD02]推定温度が許容温度より高いか否か判断し、高い場合(YES)ステップSD03へ移行し、高くない場合(NO)ステップSD04へ移行する。
●[ステップSD03]力伝達部の給脂間隔を短くする。
●[ステップSD04]力伝達部の給脂間隔を長くする。
●[ステップSD05]運転を継続するか否か判断し、継続の場合(YES)ステップSD01へ戻り、継続ではない場合(NO)処理を終了する。
なお、ステップSD04において力伝達部の給脂間隔を長くするに際して、力伝達部の給脂間隔を調整する前の給脂間隔より長くならないように調整してもよいし、力伝達部の給脂間隔を調整する前の給脂間隔より長くなるように調整してもよい。
【0033】
上記のフローチャートは力伝達部の1回あたりの給脂量を一定とし、給脂間隔を長くしたり短くしたりする場合について記載したが、給脂間隔を一定として1回あたりの給脂量を増減してもよい。
【0034】
(力伝達部の冷却部の運転を制御する形態)
力伝達部を冷却する手段を設け、推定温度が許容値以下となるように冷却手段の運転を制御するようにしてもよい。
【0035】
上記の第2の実施形態では、推定した力伝達部の温度が許容値以下となるように成形条件を調整したが、力伝達部が伝達する仕事量の1サイクルあたりの時間平均値が許容値以下となるように成形条件を調整してもよいし、力伝達部で発生する発熱量の推定値の1サイクルあたりの時間平均値が許容値以下となるように成形条件を調整してもよい。
【0036】
次に、力伝達部の温度を推定する方法を
図6,
図7を用いて説明する。力伝達部で発生する発熱量を推定し、前記推定した発熱量と、力伝達部から外部への放熱量と、力伝達部の熱容量とに基づいて力伝達部の温度を推定する。
【0037】
図6は力伝達部の伝達する仕事量に基づく温度推定の処理を説明するフローチャートである。
●[ステップSE01]力伝達部の伝達する単位時間あたりの仕事量を数1式により算出する。
【0039】
●[ステップSE02]仕事量から力伝達部の単位時間あたりの発熱量を数2式により推定する。
【0041】
●[ステップSE03]力伝達部の単位時間あたりの放熱量を数3式により推定し、さらに、力伝達部の温度を数4式により推定し、処理を終了する。なお、数3式においては、現在までに推定した推定温度により単位時間あたりの放熱量を計算する。このとき、推定温度の算出処理を一度も行っていない場合は、推定温度=0として処理を行うようにしてもよい。
【0044】
図7は型締力に基づく温度推定の処理を説明するフローチャートである。
●[ステップSF01]型締力を検出する。
●[ステップSF02]型締力から力伝達部の1サイクルあたりの発熱量を数5式により推定する。
【0046】
●[ステップSF03]力伝達部の1サイクルあたりの放熱量を数6式により推定し、さらに、力伝達部の温度を数7式により推定し、処理を終了する。なお、数6式においては、現在までに推定した推定温度により1サイクルあたりの放熱量を計算する。このとき、推定温度の算出処理を一度も行っていない場合は、推定温度=0として処理を行ってもよい。
【0049】
力伝達部から外部への放熱量は、上述のように力伝達部の推定温度に所定の係数を乗算して算出してもよいし、力伝達部で発生する発熱量に所定の係数を乗算して算出してもよい。また、力伝達部の熱容量は力伝達部の設計値から求めてもよいし、実験によって予め決めておくようにしてもよい。なお、力伝達部の推定温度は、ケルビンや摂氏などの温度単位を用いて求めてもよいし、許容温度に帯する割合(%)として求めてもよい。推定温度は、室温を初期値として室温からの温度上昇値として求めてもよい。許容温度に対する割合は、室温または運転前の温度を0%として、許容温度を100%とする。
【0050】
以下、発熱量に関する物理量を説明する。
油圧式あるいは電動式の射出成形機において、力伝達部で発生する発熱量は、上記のように力伝達部が単位時間あたりに伝達する仕事量や、力伝達部が1サイクルあたりに伝達する仕事量に基いて推定してもよい。あるいは、力伝達部が単位動作距離あたりに伝達する仕事量に基づいて推定してもよい。また、サーボモータを用いて可動部を駆動する場合は、サーボモータの消費エネルギー量や駆動力に基いて推定してもよい。また、対象可動部が型締部の場合は、型締力や型締に必要な仕事量に基いて推定してもよい。また、対象可動部が射出部の場合は、射出圧力や射出に必要な仕事量に基いて推定してもよい。