(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727586
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】潤滑剤の保持機構とデブリの排除機構とを有するラジアルシャフトのシールアセンブリおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/32 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
F16J15/32 311Z
F16J15/32 311A
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-500098(P2013-500098)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公表番号】特表2013-522563(P2013-522563A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011028034
(87)【国際公開番号】WO2011115824
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2013年10月29日
(31)【優先権主張番号】12/725,759
(32)【優先日】2010年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッチ,フレデリック・アール
(72)【発明者】
【氏名】トス,デイビッド・エム
【審査官】
莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−510936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16−15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルシャフトのシールアセンブリであって、
軸方向に延在する円筒状の外リムと、環状ポケットによって前記外リムから半径方向の内側に間隔を空けて配置され、前記軸方向に延在する円筒状の内リムとを有する外ケースを備え、
前記外ケースは、前記外リムを前記内リムに接続する、前記半径方向に延在する第1のレッグと、前記内リムから自由端に前記半径方向の内側に延在する第2のレッグとを有し、
前記軸方向に延在する円筒状の壁を有し、前記壁には、シャフトに固定するために構成された内面と滑り面を与える外面とが設けられ、前記外面において、前記滑り面から前記半径方向の外側にフランジが延在する摩耗スリーブと、
前記第2のレッグの前記自由端から前記半径方向の内側に延在し、前記摩耗スリーブの前記滑り面に接してシールする主シールリップと、
前記環状ポケットに設置される、多孔質の第1のフィルタと、
前記外ケースの前記外リムと前記第2のレッグとに実質的に接して延在する、多孔質の第2のフィルタとをさらに備え、
前記第1のフィルタは、前記第2のフィルタに隣接する、ラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項2】
前記第2のフィルタは、前記外ケースに固定される、請求項1に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項3】
前記第2のフィルタは、前記第2のレッグに固定される、請求項2に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項4】
前記第1のフィルタは、前記ケースから完全に分離される、請求項2に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項5】
前記第2のフィルタと前記主シールリップとの間には、環状ボイドが設けられ、
前記環状ボイドを実質的に満たすグリースパックをさらに備える、請求項1に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項6】
前記第2のフィルタと前記主シールリップとの間には、環状ボイドが設けられ、
前記主シールリップと前記第2のフィルタとの間に延在する補助シールリップをさらに備える、請求項1に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項7】
前記外ケースは、前記外リムから前記半径方向の内側に延在する環状リップを有する、請求項1に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項8】
前記環状リップは、前記第2のフィルタの一部と相対的に前記半径方向の内側に延在する、請求項7に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項9】
前記第2のフィルタと前記摩耗スリーブの前記滑り面との間に環状ギャップが形成される、請求項1に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項10】
前記摩耗スリーブの前記フランジと前記第2のフィルタとの間に平面ギャップが形成される、請求項9に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項11】
前記摩耗スリーブの前記フランジと前記第2のフィルタとの間に平面ギャップが形成される、請求項1に記載のラジアルシャフトのシールアセンブリ。
【請求項12】
ラジアルシャフトのシールアセンブリを構築する方法であって、
軸方向に延在する円筒状の外リムと、環状ポケットによって前記外リムから半径方向の内側に間隔を空けて配置され、前記軸方向に延在する円筒状の内リムとを有する外ケースを形成するステップを備え、
前記外リムを前記内リムに接続する、前記半径方向に延在する第1のレッグと、前記内リムから自由端に前記半径方向の内側に向かって延在する第2のレッグとが前記外ケースには設けられ、
前記軸方向に延在する円筒状の壁を有し、前記壁には、シャフトに固定するために構成された内面と滑り面を与える外面とが設けられ、前記外面において、前記滑り面から前記半径方向の外側にフランジが延在する摩耗スリーブを形成するステップと、
主シールリップが前記第2のレッグの前記自由端から前記半径方向の内側に延在するように、前記主シールリップを前記ケースに固定するステップと、
前記環状ポケットの中に多孔質の第1のフィルタを非固定的に設置するステップと、
第2のフィルタが前記第1のフィルタと前記軸方向に向かい合いかつ接するように、多孔質の前記第2のフィルタを前記外リムに固定するステップとをさらに備える、方法。
【請求項13】
前記第2のフィルタを前記外ケースの前記第2のレッグに固定するステップを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記外ケースの前記第2のレッグと前記摩耗スリーブの前記フランジとの間で前記第2のフィルタを前記軸方向に圧縮するステップをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のフィルタと前記主シールリップとの間の環状ボイドをグリースで満たすステップをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記主シールリップと前記第2のフィルタとの間に補助シールリップを設けるステップをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記主シールリップと前記補助シールリップとを異なる材料で形成するステップをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記摩耗スリーブの前記フランジと前記第2のフィルタとの間に平面ギャップを設けるステップをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のフィルタと前記摩耗スリーブの滑り面との間に環状ギャップを設けるステップをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
この発明は主にシャフトシールに関し、より特定的には、潤滑剤の保持機構とデブリの排除機構とを有するシャフトシールに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
シールアセンブリは、ハウジングとシャフトとの間の動的な流体のシールを与えることでよく知られている。シールアセンブリは、たとえば、自動車、機械、重機、建造物、農業および工業上の応用に用いられ得る。このようなシールアセンブリは一般に、ハウジングの開口部にシールアセンブリを支持するための剛体のキャリアと、シールアセンブリのシールリップのための滑り面を与える摩耗スリーブとを有する。シールアセンブリは、油のような潤滑剤をシールアセンブリの「油側」に封じ込めるとともに、汚染物質あるいはデブリを大気またはシールアセンブリの「大気側」に保つ機能を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの従来のシールでは、潤滑剤を保持する主リップがデブリを排除する複数の機構と組み合せて用いられることが知られている。デブリを排除する複数の機構には、シャフトと係合するリップ、エラストマ排除部、ラビリンス通路、および多孔質のフィルタなどの形式が用いられ得る。しかしながら、これら従来のシールは、デブリの侵入を抑制するため、および潤滑剤の流出を防ぐための改良が可能である。デブリが侵入すると、最終的には主シールリップの性能が低下する可能性がある。潤滑剤が流出すると、最終的には潤滑剤が漏れ、その結果としてたとえば私道およびガレージに油が見苦しく溜った状態になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明は、デブリの排除機構と潤滑剤の保持機構との特定の組合せおよび構成を有するシールアセンブリを提供する。これらの機構は相互に協調して、潤滑剤を保持するための主シールリップを「大気側」の汚染物質から保護する一方で、シールアセンブリの「油側」から潤滑剤が流出することを長期間抑制する。
【0005】
この発明のある局面に従うと、ラジアルシャフトのシールアセンブリが提供される。シャフトのシールアセンブリは外ケースを含む。外ケースは、環状のポケットによって半径方向に互いに隔離された、軸方向に延在する円筒状の外リムと、軸方向に延在する円筒状の内リムとを有する。半径方向に延在する第1のレッグは、外リムを内リムに接続する。第2のレッグは、内リムから自由端に半径方向に内側へ向かって延在する。このアセンブリは、摩耗スリーブをさらに含む。摩耗スリーブは、軸方向に延在する円筒状の壁を含む。壁は、シャフトに固定するために構成された内面と、滑り面を与える外面とを有する。フランジは滑り面から半径方向に外側へ延在する。さらに、シールリップは、外ケースの第2のレッグの自由端から、摩耗スリーブの滑り面と接してシールされる箇所に、半径方向に内側へ延在する。第1の多孔質フィルタは、環状のポケットに設置される。第2の多孔質フィルタは、外ケースでの外リムおよび第2のレッグに実質的に接する箇所と、摩耗スリーブでの円筒状の壁に実質的に接する箇所とに向かって延在する。
【0006】
この発明の他の局面に従うと、ラジアルシャフトのシールアセンブリを構築する方法が提供される。この方法は、外ケースを形成するステップを含む。外ケースは、軸方向に延在する円筒状の外リムと、軸方向に延在する円筒状の内リムとを有する。内リムは、環状のポケットによって外リムから半径方向に内側へ間隔を空けて配置される。外ケースには、外リムを内リムに接続する、半径方向に延在する第1のレッグと、内リムから自由端へと半径方向に内側へ延在する第2のレッグとが設けられる。この方法は、摩耗スリーブを形成するステップをさらに含む。摩耗スリーブは、軸方向に延在する円筒状の壁を有する。壁は、シャフトに固定するために構成された内面と、滑り面を与える外面とを有する。滑り面には、滑り面から半径方向に外側へ延在するフランジが設けられる。また、この方法は、主シールリップをシールリップでケースに固定するステップと、多孔質の第1のフィルタを環状のポケットの中に非固定的に配置するステップとをさらに含む。シールリップは、第2のレッグの自由端から半径方向に内側へ延在する。この方法は、その後に、多孔質の第2のフィルタを外リムに固定するステップを含む。第2のフィルタは、第1のフィルタと軸方向に向き合うとともに、摩耗スリーブの円筒状の壁に実質的に接する。
【0007】
図面の簡単な説明
現在の好ましい実施の形態およびベストモードの以下の詳細な説明、添付された特許請求の範囲、および添付された図面に関連して検討された場合に、この発明のこれらの局面およびその他の局面における特徴および利点は容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】シャフトに配置されて示される、この発明のある局面に従って構成されたラジアルシャフトのシールアセンブリの軸方向の断面図である。
【
図1A】シャフトから取り外すとともに、内側の摩耗スリーブをアセンブリの残りの部分から軸方向に分解したシールアセンブリを示す、
図1と類似する図である。
【
図1B】シャフトに配置して示される、この発明の他の局面に従って構成されたラジアルシャフトのシールアセンブリを示す、
図1と類似する図である。
【
図2】シャフトに配置して示される、この発明の他の局面に従って構成されたラジアルシャフトのシールアセンブリの軸方向の断面図である。
【
図2A】シャフトから取り外すとともに、内側の摩耗スリーブをアセンブリの残りの部分から軸方向に分解したシールアセンブリを示す、
図2と類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
現在の好ましい実施の形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、
図1および
図1Aは、この発明のある局面に従って構成されたラジアルシャフトのシールアセンブリ10を示す。シールアセンブリ10は、動的な流体のシールを必要とする数多くの応用分野に適する。この応用には、たとえばクランク軸のシールのような産業上および自動車の応用用途を含む。シールアセンブリ10は、環状で剛体の金属の外ケース12と、環状の摩耗スリーブ14とを含む。外ケース12は、ハウジング13に固定されるように構成される。摩耗スリーブ14は、シャフト15に固定されるように構成される。外ケース12は、外ケース12から半径方向に内側へ延在する主シールリップ16を有する。主シールリップ16は、摩耗スリーブ14と係合してシールすることにより、シールアセンブリ10の油側Oからシールアセンブリ10の大気側Aに向かって外側に潤滑剤、すなわちオイルが漏れることを抑制する。シールアセンブリ10は、多孔質で環状の第1のフィルタ18と、多孔質で環状の第2のフィルタ22とをさらに含む。第1のフィルタ18は、外ケース12の環状でトロイダル形状をしたポケット20に設けられる。第2のフィルタ22は、外ケース12と摩耗スリーブ14との間に設けられる。第1および第2のフィルタ18,22は、互いに協調して、潤滑材を保持するための主シールリップ16を大気側Aの汚染物質から保護するとともに、シールアセンブリ10の油側Oからの潤滑材の流出を抑制する。その結果、第1および第2のフィルタ18,22は、シールアセンブリ10の耐用年数を延ばす。さらに、油側Oから大気側Aにオイルが漏れて地表を見苦しく汚すことを抑制する。
【0010】
外ケース12は、外リム24とも言われる、軸方向に延在した最も外側の円筒状の外壁を有する。外ケース12は、一般に、中心軸25と、軸方向に延在する円筒状の内リム26とに平行に延在する。内リム26は、環状のポケット20によって、平行あるいは実質的に平行に外リム24から半径方向に内側へ間隔を空けて配置される。したがって、内リム26は、半径方向の並びについて、外リム24の少なくとも一部分の下側に配置されるように構成される。外リム24は、半径方向に延在する第1のレッグ28によって内リム26に接続される。内リム26は、ポケット20を形成するために、外リム24と反対向きに折り曲げられて設けられる。ポケット20は、大気側Aでは開状態であり、油側Oでは閉状態である。そのため、外リム24の一部と、第1のレッグ28と、内リム26とは、環状の、通常はU字型の突起部29を形成する。突起部29はアセンブリ10の油側Oへと延在する。内リム26は第2のレッグ30に軸方向に延在する。第2のレッグ30は、内リム26から自由端32に向かって、第1のレッグ28と平行あるいは実質的に平行に半径方向に内側へ延在する。さらに、外ケース12は、外リム24から半径方向に内側へ延在する環状のリップ34を有する。リップ34は、第2のフィルタ22の最も外側の部分に対して半径方向に内側へ延在する。
【0011】
潤滑材を保持するための主シール部材36は、主シールリップ16を与え、外ケース12に取り付けられる。ここでは、シール部材36は、第2のレッグ30の油側に取り付けられて示される。この実施の形態におけるシール部材36は環状のディスクまたはウエハとして提供される。ディスクまたはウエハは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)由来の材料を用いて製造される。この材料には一般的なフィラーなどが含まれる。しかしながら、本発明においては、たとえばエラストマのような他のシール材料も考えられる。シール部材36は、第2のレッグ30の全長に沿って延在し、そこにオーバーモールド成型されたゴム材料38によって固定されるように示される。ゴム材料38は、突起部29の全体についてオーバーモールド成型するように示される。ゴム材料38の半径方向についての最も外側の部分である表面40は、シールアセンブリの外径の少なくとも一部を形成し、ハウジング13の開口部の中にその外径が固定およびシールされた状態で圧入されることを容易にする。シール部材36は、
図1Aに示されるように、摩耗スリーブ14に取り付けられていない、すなわち摩耗スリーブ14から分離された自由な状態のときには、第2のレッグ30の自由端32から実質的に半径方向に内側へ延在する。そこで、摩耗スリーブ14の組立において、シールリップ34は、摩耗スリーブ14に接してシールする。摩耗スリーブ14と接するシールリップ16の少なくとも一部は、好ましくは、1個あるいは複数のらせん状の溝あるいはスリットが入った流体力学的な機構42を有するものとして示される。これらの溝あるいはスリットは、回転する摩耗スリーブ14と連携して、流体力学的なポンプ作用を生成する。これにより、シールの保護された油側Oからリップ16の下を通って流れ出ようとする、たとえば油のような潤滑材を油側に戻す。図示するように、シールリップ16は曲げられて、軸方向について油側Oに向かって摩耗スリーブ14の滑り面44の上になるように置かれる。これに代えて、公知の技術によってシール部材36をケース12の第2のレッグ30に付着あるいは接着させることもできる。
【0012】
摩耗スリーブ14は、軸方向に延在する円筒状の壁46を有する。壁46は、シャフト15に固定するために構成された内面48と、シールリップ16と接することによりシールされるための滑り面44を与える外面50とを有する。環状のフランジ52は、スリーブの大気側の端54から、滑り面44から半径方向に外側へ延在する。一方で、滑り面44は、円筒状の油側の自由端56に軸方向に延在する。そのため、摩耗スリーブ14は通常、軸方向の断面がL字型である。
【0013】
多孔質の第1のフィルタ18は、外ケース12の環状のポケット20に取り付ける、あるいは入れることにより、固定されずに配置される。フィルタ18がポケット20に取り付けられると、ポケットの体積がフィルタ18によって満たされるあるいは実質的に満たされる。そのため、第1のフィルタ18は、自由な状態では通常ポケット20と同程度の寸法を有する。しかし、ポケット20に取り付けられると、第1のフィルタ18は、第1のレッグ28の接する箇所と、第2のレッグ30の油側の同一平面あるいは実質的に同一平面との間で軸方向に延在する。第1のフィルタ18は、たとえばポリウレタン/ポリエステルの発泡体などの合成材料で製造されたようなオープンセルスポンジを有することが好ましい。しかし、これは一例であってこれに限定されるものではない。第1のフィルタ18の孔は、空気については第1のフィルタを自由に通過させる一方で、空気に含まれるデブリを捕捉して除去することを支援する。
【0014】
多孔質の第2のフィルタ22は、摩耗スリーブ14の外ケース12への組立において、外リム24に接する、あるいは実質的に接する箇所と、摩耗スリーブ14の外壁46にわずかな隙間を空けて近接する箇所との間で半径方向に延在する。その結果、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14との間には、小さな環状のギャップ55が延在している。ギャップ55は、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14との間の隙間がごくわずかになるように最小限にすることが好ましい。これにより、第2のフィルタ22が汚染物質の侵入の障壁として機能すると同時に、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14との間の摩擦力が最小限になる。さらに、第2のフィルタ22は、外ケース12の第2のレッグ30に接する箇所と、摩耗スリーブ14のフランジ52に近接する箇所との間で軸方向に延在する。ここでは、一例として、第2のフィルタ22はフランジ52に接するものとして示される。第2のフィルタ22の軸方向の圧縮量は、使用中に相対的に回転するフランジ52と第2のフィルタ22との間に生じる動摩擦の量が最小となるように制御される。当然ながら、
図1Bの別の実施の形態で示されるように、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14の円筒状の表面との間のギャップ55と同様に、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14のフランジ52との間の摩擦力を最小にするために平面のギャップ55′を設けることもできる。
【0015】
第2のフィルタ22は、第1のフィルタ18と分離した材料として構成されるにしても、第1のフィルタ18と類似した材料で構成されることが好ましい。ここで類似の材料とは、たとえばポリウレタン/ポリエステルの発泡体などの合成材料で製造されたようなオープンセルスポンジである。しかし、これは一例であってこれに限定されるものではない。第2のフィルタ22の孔は、自由に空気を通過させる一方で、空気に含まれるデブリを捕捉して除去することを支援する。大気側Aからのデブリの侵入の障壁および油側Oからの潤滑材の流出の障壁の構築を促進するために、第2のフィルタ22は、第1のフィルタ18とともに、外ケース12と摩耗スリーブ14とによって内部に定められる領域のすべてを占有する、あるいは実質的に占有する。ただし、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14との間にはわずかな
ギャップ55が生じる。第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14のフランジ52との間にはわずかな
ギャップ55′が生じることがある。
図1に図示された実施の形態によれば、第2のフィルタ22の幅は、第2のレッグ30とフランジ52との間の組立幅よりもわずかに大きい。したがって、第2のフィルタ22は、第2のレッグ30とフランジ52との間で軸方向にわずかに圧縮される。なお、組立に先立って、第2のフィルタ22と摩耗スリーブ14との間の相対的な回転運動を実現させるために、第2のフィルタ22は外ケース12に固定される。第2のフィルタ22は、外ケース12に任意の適切な手段によって固定される。たとえば、第2のフィルタ22は、接着結合部57において第2のレッグ30の油側に直接接着される。これにより、第2のフィルタ22は、デブリの侵入および潤滑材の流出に対する障壁を与える。
【0016】
図2および
図2Aに、この発明の他の局面に従って構成されたラジアルシャフトのシールアセンブリ110を示す。同様の構成を特定するためには、以上において使用された参照符号に100を加えた参照符号が使用される。シールアセンブリ110は、上述のシールアセンブリ10と実質的に同様である。シールアセンブリは、ハウジング113に固定されるように構成された外ケース112と、シャフト115に固定されるように構成された摩耗スリーブ114とを含む。ケース112と摩耗スリーブ114とは上述の説明と同様に成型されるため詳細な説明を繰り返さない。さらに、シールアセンブリ110は第1のフィルタ118と第2のフィルタ122とを含む。これらのフィルタは、上述の第1および第2のフィルタ18,22と同様に構成され組み立てられる。しかしながらアセンブリは、それらに加えて、主シールリップ116と、補助シールリップ58とも呼ばれる第2のシールリップとを含む。主シールリップ116および補助シールリップ58によって、上述のアセンブリ10と比べて最も顕著な相違点が生じる。
【0017】
シールアセンブリは、上述と同様にオーバーモールド成型されたゴム材料138を含む。しかしながら、オーバーモールド成型されたゴム材料138は、第2のレッグ130の油側に直接接着されて、そこから半径方向に内側へ延在する。これにより、くびれ、あるいは厚みを減少させた屈曲したヒンジ領域60と、平面状あるいは実質的に平面状であるシールリップ取付領域62とが形成される。これらの領域は、
図2Aに示されるように、主シールリップ116を取り付けるために構成される。主シールリップ116は、上述のとおり、PTFEウエハあるいはその他の適切なシール用エラストマのシール材料として提供されてもよい。さらに、必要に応じて、ゴム材料138自身が主シールリップ116を与えるように構成されてもよい。それに加えて、ゴム材料138は、主シールリップ116と補助シールリップ58とが類似しない材料で構成されるように、主シールリップ116の大気側に補助シールリップ58を形成する。その結果、組立において、補助シールリップ58は、軸方向について主シールリップ116と第2のフィルタ122との間に位置する。さらに、環状のボイド64が、第2のフィルタ122と主シールリップ116との間に形成される。ボイド64には、汚染物質の侵入および潤滑材の流出の防止をさらに支援するために、環状のボイド64を実質的に満たすグリースパック66を組み込むことができる。
【0018】
シールアセンブリ110のそれ以外の構成は、上述のアセンブリ10に関する構成と概ね同等である。
【0019】
上記の教示を踏まえると、本発明の多くの変形例および変更が可能であることは明らかである。したがって、添付された特許請求の範囲の範囲内で、本発明は具体的に記載された以外にも実施されてもよいことが理解されるべきである。