特許第5727606号(P5727606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727606
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】光学材料用重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20150514BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20150514BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20150514BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20150514BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08K5/07
   C08J7/00 ZCFF
   G02B1/04
   G02C7/02
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-521452(P2013-521452)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2012003990
(87)【国際公開番号】WO2012176439
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2013年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-139244(P2011-139244)
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】河戸 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】小島 甲也
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/078129(WO,A1)
【文献】 特開2010−185070(JP,A)
【文献】 特開平09−059341(JP,A)
【文献】 特開平03−084021(JP,A)
【文献】 特表2008−503635(JP,A)
【文献】 特開2012−046711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 − 18/87
C08K 5/07
G02B 1/04
G02C 7/02
C07C 49/00 − 49/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン、2−アダマンタノン、カンファー、4、4'−ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオンより選ばれる一種以上のケトン化合物と、一種以上のイソシアネート化合物と、一種以上のチオール化合物とを含有する、光学材料用重合性組成物。
【請求項2】
前記ケトン化合物が、前記イソシアネート化合物および前記チオール化合物の合計100重量部に対し、1〜50重量部含まれる、請求項に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物が、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートより選ばれる一種以上の化合物であり、
前記チオール化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)より選ばれる一種以上の化合物である、請求項1または2に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物を加熱硬化させて得られるチオウレタン樹脂からなる成形材料。
【請求項5】
請求項に記載の成形材料からなる光学材料。
【請求項6】
請求項に記載の光学材料からなるプラスチックレンズ。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物を注型重合する工程を含む、光学材料の製造方法。
【請求項8】
前記注型重合により得られた成形体を染色する工程をさらに含む、請求項に記載の光学材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオウレタン樹脂を与える光学材料用重合性組成物及びそれより得られる光学材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ、軽量で割れ難く、染色が可能なため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。これまでに様々なレンズ用樹脂が開発され使用されており、その中でも代表的な例として、イソシアネート化合物とチオール化合物を含む重合性組成物から得られるチオウレタン樹脂が挙げられる(特許文献1〜4を参照)。
【0003】
近年、眼鏡レンズにおいてはファッション性が求められるようになり、染色レンズの需要が増加している。樹脂の染色性が優れると、染色温度を下げることができるため樹脂に対する負荷を低減することができ、また短時間で染色できるため生産性の向上にも繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−199016号公報
【特許文献2】特開昭63−046213号公報
【特許文献3】特開平08−003267号公報
【特許文献4】特開平09−110955号公報
【特許文献5】国際公開第2005/087829号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/109765号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2007/020817号パンフレット
【発明の概要】
【0005】
染色性を向上することができるチオウレタン重合性組成物として、アルコール成分が添加された重合性組成物が提案されている(特許文献5〜7を参照)。しかしながら、得られる樹脂の染色性は向上するものの、染色条件によっては、一部に斑状あるいは筋状など不均一に染色ムラが観察され、均一に染色されない場合があった。
【0006】
本発明の課題は、樹脂の染色ムラを生じさせずに染色性を向上することができる重合性組成物を提供することにある。
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、イソシアネート化合物とチオール化合物を含む重合性組成物にケトン化合物を添加することで、樹脂の透明性、耐熱性に実用上支障なく、上記課題を改善することができる重合性組成物を見出し、本発明を完成するに至った。また本発明の重合性組成物を用いると、樹脂化後の成型モールドからの離型性が向上し、さらに、得られるプラスチックレンズの機械物性が改善され、すなわちこれらの物性にバランスよく優れることを新たに見出すに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下に示される。
[1]4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン、2−アダマンタノン、カンファー、4、4'−ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオンより選ばれる一種以上のケトン化合物と、一種以上のイソシアネート化合物と、一種以上のチオール化合物とを含有する、光学材料用重合性組成物。
【0012】
]前記ケトン化合物が、前記イソシアネート化合物および前記チオール化合物の合計100重量部に対し、1〜50重量部含まれる、[]に記載の光学材料用重合性組成物。
【0013】
]前記イソシアネート化合物が、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートより選ばれる一種以上の化合物であり、
前記チオール化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)より選ばれる一種以上の化合物である、[1]または]に記載の光学材料用重合性組成物。
][1]から[]のいずれか一つに記載の光学材料用重合性組成物を加熱硬化させて得られるチオウレタン樹脂からなる成形材料。
][]に記載の成形材料からなる光学材料。
][]に記載の光学材料からなるプラスチックレンズ。
][1]から[]のいずれか一つに記載の光学材料用重合性組成物を注型重合する工程を含むことを特徴とする、光学材料の製造方法。
]前記注型重合により得られた成形体を染色する工程をさらに含む、[]に記載の光学材料の製造方法。
【0014】
本発明の光学材料用重合性組成物は染色性に優れるため、染色ムラの発生が抑制され、均一に染色された樹脂または光学材料を提供することができる。さらに、本発明の光学材料用重合性組成物から得られる光学材料は、屈折率等の光学特性、離型性、透明性、耐熱性に優れ、これらの特性のバランスにも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の重合性組成物は、カルボニル基を1個以上有する、ケトン化合物と、一種以上のイソシアネート化合物と、一種以上のチオール化合物と、を含有している。
【0017】
以下、本発明の重合性組成物について、具体例を用いて説明するが、本発明は以下の例示化合物に限定されるものではない。また例示化合物を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
本発明におけるケトン化合物は、カルボニル基を1個以上有する化合物であって、−C(=O)−で表される2価の官能基はいずれも炭素原子と結合している。例えば、直鎖状脂肪族ケトン化合物、分岐状脂肪族ケトン化合物、環構造にカルボニル基を持たない脂環族ケトン化合物、環構造にカルボニル基を持つ脂環族ケトン化合物等が挙げられる。本発明においては、ケトン化合物として、炭素原子、水素原子および酸素原子のみから構成されるものを用いることが好ましい。
具体的には、一般式(1)で表されるケトン化合物を用いることができる。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(1)のR、R、Rとしては、炭素数1から10の直鎖状脂肪族炭化水素から誘導される有機残基、分岐状脂肪族炭化水素から誘導される有機残基、環状脂肪族炭化水素から誘導される有機残基等が挙げられる。R、R、Rは結合して環を構成してもよい。nは0または1の整数を示す。
【0020】
直鎖状脂肪族炭化水素から誘導される有機残基としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等から誘導される有機残基が挙げられる。
【0021】
分岐状脂肪族炭化水素から誘導される有機残基としては、例えば、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、3−エチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2−メチルへプタン、3−メチルへプタン、4−メチルへプタン、3−エチルへプタン、4−エチルへプタン、4−プロピルへプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、3−エチルオクタン、4−エチルオクタン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等から誘導される有機残基が挙げられる。
【0022】
環状脂肪族炭化水素から誘導される有機残基としては、例えば、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロへキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5,5−トリメチルシクロへキセン、ノルボルナン、2,3−ジメチルノルボルナン、2,5−ジメチルノルボルナン、2,6−ジメチルノルボルナン、1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等から誘導される有機残基が挙げられる。
【0023】
直鎖状脂肪族ケトン化合物としては、例えば、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、4−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−デカノン、2,5−ヘキサンジオン、2,6−ヘプタンジオン、2,5−オクタンジオン、2,6−オクタンジオン、2,7−オクタンジオン、3,6−オクタンジオン、2,5−ノナンジオン、2,8−ノナンジオン、3,7−ノナンジオン、2,5−デカンジオン、3,7−デカンジオン等が挙げられる。
【0024】
分岐状脂肪族ケトン化合物としては、例えば、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、3−メチル−2−ヘキサノン、4−メチル−2−ヘキサノン、2−メチル−3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、3−メチル−2−へプタノン、4−メチル−2−へプタノン、2−メチル−3−へプタノン、4−メチル−3−へプタノン、5−メチル−3−へプタノン、6−メチル−3−へプタノン、2−メチル−4−へプタノン、3−メチル−4−へプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、3−エチル−4−へプタノン、3−メチル−2−オクタノン、3−メチル−4−オクタノン、ホロン等が挙げられる。
【0025】
環構造にカルボニル基を持たない脂環族ケトン化合物としては、例えば、1−シクロヘキシルエタノン、1−シクロヘキシルプロパノン、1−シクロヘキシル−2−メチルプロパン−1−オン、ジシクロヘキシルメタノン、1−シクロペンチルエタノン、1−シクロペンチルプロパノン、1−シクロペンチル−2−メチルプロパン−1−オン、ジシクロペンチルメタノン等が挙げられる。
【0026】
環構造にカルボニル基を持つ脂環族ケトン化合物としては、例えば、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、1,3−シクロペンタンジオン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、1,3−シクロヘキサンジオン、1,4−シクロヘキサンジオン、イソホロン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン、2−アダマンタノン、カンファー、4、4'−ビシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0027】
本発明におけるケトン化合物としては、分岐状脂肪族ケトン化合物、環構造にカルボニル基を持つ脂環族ケトン化合物が好ましい。
また、上記の例示化合物のうち、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2,5−ヘキサンジオン、ホロン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン、2−アダマンタノン、カンファー、4、4'−ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオンが好ましく、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン、2−アダマンタノン、カンファー、4、4'−ビシクロシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオンがより好ましい。
【0028】
本発明において、ケトン化合物は、イソシアネート化合物およびチオール化合物の合計100重量部に対し、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部含まれる。
【0029】
本発明におけるイソシアネート化合物とは、分子内に少なくとも1つ以上のイソシアナト基を有する、脂肪族または芳香族化合物である。分子内に硫黄原子等を含んでいてもよい。二量体、三量体、プレポリマーを含んでいてもよい。
【0030】
本発明におけるイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、含硫脂肪族イソシアネート化合物、含硫芳香族イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0031】
脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル等が挙げられる。
【0032】
脂環族イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)プロパン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等が挙げられる。
【0033】
芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
含硫脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン等が挙げられる。
【0035】
含硫芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、ビス(3−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(3−イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(3−イソシアナトメチルベンジル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルベンジル)スルフィド、ビス(3−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−イソシアナトメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0036】
これら例示化合物のうち、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物が好ましく、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0037】
本発明におけるチオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、エステル結合を含む脂肪族チオール化合物、芳香族チオール化合物等が挙げられる。
【0038】
脂肪族チオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン等が挙げられる。
【0039】
エステル結合を含む脂肪族チオール化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコール(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコール(3−メルカプトプロピオネート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールジ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール(3−メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(2−メルカプトアセテート)、グリセリントリス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−シクロヘキサンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−シクロヘキサンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィド(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィド(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィド(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィド(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)等が挙げられる。
【0040】
芳香族チオール化合物としては、例えば、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,2'−ジメルカプトビフェニル、4,4'−ジメルカプトビフェニル等が挙げられる。
【0041】
これら例示化合物のうち、脂肪族チオール化合物、エステル結合を含む脂肪族チオール化合物が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)がより好ましい。
【0042】
また、本発明の重合性組成物には、得られる樹脂の光学物性、耐衝撃性、比重等の諸物性の調節及び、モノマーの取扱い性の調整を目的に、樹脂改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。
【0043】
樹脂改質剤としては、例えば、エピスルフィド化合物、アルコール化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0044】
チオール化合物のメルカプト基に対する、ケトン化合物のカルボニル基のモル比率は、0.5%から50%の範囲が好ましく、0.5%から30%の範囲がより好ましい。ケトン化合物の使用量は、使用するモノマー、樹脂改質剤及び、触媒、内部離型剤、UV吸収剤等の添加剤の種類と使用量、成形物の形状により適宜決められる。
【0045】
ケトン化合物の添加方法としては、ケトン化合物を、イソシアネート化合物、あるいはチオール化合物、あるいは樹脂改質剤にそれぞれ単独に添加する方法、またイソシアネート化合物とチオール化合物の混合物、あるいはイソシアネート化合物と樹脂改質剤の混合物、あるいはチオール化合物と樹脂改質剤の混合物に添加する方法及び、イソシアネート化合物、チオール化合物、樹脂改質剤の混合物に添加する方法等が挙げられる。使用するイソシアネート化合物、チオール化合物、樹脂改質剤の種類と使用量により調製手順は異なるため、一概に限定されるものではなく、ケトン化合物の溶解性、操作性、安全性、便宜性等を考慮して、適宜選ばれる。またケトン化合物を上記化合物と混合する際、必要に応じて加熱してもよい。加熱温度は混合物の安定性、安全性を考慮して決定される。
【0046】
本発明において、イソシアネート化合物におけるイソシアナト基に対する、チオール化合物におけるメルカプト基のモル比率は0.8〜1.2の範囲内であり、好ましくは0.85〜1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲内である。上記範囲内で、光学材料、特に眼鏡用プラスチックレンズ材料として好適に使用される樹脂を得ることができる。
【0047】
使用するモノマーと、触媒、内部離型剤、その他添加剤を混合して重合性組成物を調製する場合の温度は通常25℃以下で行われる。重合性組成物のポットライフの観点から、さらに低温にすると好ましい場合がある。ただし、触媒、内部離型剤、添加剤のモノマーへの溶解性が良好でない場合は、あらかじめ加温して、モノマー、樹脂改質剤に溶解させることも可能である。
【0048】
本発明において、チオウレタン樹脂の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法として注型重合が挙げられる。はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に重合性組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0049】
重合条件については、重合性組成物、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、−50〜150℃の温度で1〜50時間かけて行われる。場合によっては、10〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1〜25時間で硬化させることが好ましい。
【0050】
本発明のチオウレタン樹脂は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50〜150℃の間で行われるが、90〜140℃で行うことが好ましく、100〜130℃で行うことがより好ましい。
【0051】
本発明において、チオウレタン樹脂の成形する際には、目的に応じて公知の成形法と同様に、内部離型剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
【0052】
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルを用いることができる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
なお、本発明のチオウレタン樹脂は成型モールドからの離型性が優れるため、添加する内部離型剤の量を少なくすることができる。
【0053】
本発明のチオウレタン樹脂は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形状の成形体として得ることができる。本発明のチオウレタン樹脂は、高い屈折率及び高い透明性を備え、プラスチックレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、発光ダイオード等の光学用樹脂としての各種用途に使用することが可能である。特に、プラスチックレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード等の光学材料、光学素子として好適である。つまり、本発明の重合性組成物は、光学材料用重合性組成物として好適に用いることができる。
【0054】
本発明のチオウレタン樹脂を用いたプラスチックレンズは必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。コーティング層としては、プライマー層、ハードコート層、反射防止膜層、防曇コート膜層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0055】
これらのコーティング層はそれぞれ、紫外線からレンズや目を守る目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0056】
プライマー層は通常、後述するハードコート層と光学レンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られた光学レンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0057】
プライマー組成物は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成させることができる。塗布法を用いる場合、レンズへスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布された後、固化させることによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0058】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含むハードコート組成物が使用される。
【0059】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0060】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0061】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系および有機系があり、無機系の場合、SiO、TiO等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ−ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0062】
反射防止層は単層および多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折胃率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。
【0063】
反射防止膜層の上には、必要に応じて防曇コート膜層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇コート層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇コート処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇コート、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0064】
本発明のチオウレタン樹脂を用いたプラスチックレンズはファッション性やフォトクロミック性の付与などを目的として、目的に応じた色素を用い、染色して使用してもよい。レンズの染色は公知の染色方法で実施可能であるが、通常、以下に示す方法で実施される。
【0065】
一般的には、使用する色素を溶解または均一に分散させた染色液中に所定の光学面に仕上げられたレンズ生地を浸漬(染色工程)した後、必要に応じてレンズを加熱して色素を固定化(染色後アニール工程)する方法である。染色工程に用いられる色素は公知の色素であれば特に限定されないが、通常は油溶染料もしくは分散染料が使用される。染色工程で使用される溶剤は用いる色素が溶解可能もしくは均一に分散可能なものであれば特に限定されない。この染色工程では、必要に応じて染色液に色素を分散させるための界面活性剤や、染着を促進するキャリアを添加してもよい。染色工程は、色素および必要に応じて添加される界面活性剤を水又は水と有機溶媒との混合物中に分散させて染色浴を調製し、この染色浴中に光学レンズを浸漬し、所定温度で所定時間染色を行う。染色温度および時間は、所望の着色濃度により変動するが、通常、120℃以下で数分から数十時間程度でよく、染色浴の染料濃度は0.01〜10重量%で実施される。また、染色が困難な場合は加圧下で行ってもよい。必要に応じて実施される染色後アニール工程は、染色されたレンズ生地に加熱処理を行う工程である。加熱処理は、染色工程で染色されたレンズ生地の表面に残る水を溶剤等で除去したり、溶媒を風乾したりした後に、例えば大気雰囲気の赤外線加熱炉、あるいは抵抗加熱炉等の炉中に所定時間滞留させる。染色後アニール工程は、染色されたレンズ生地の色抜けを防止する(色抜け防止処理)と共に、染色時にレンズ生地の内部に浸透した水分の除去が行われる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。樹脂の性能試験において、屈折率、アッベ数、比重、離型性、透明性、耐熱性、染色性、染色均一性は、以下の方法により評価した。
屈折率(ne)、アッベ数(νe):プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
比重:アルキメデス法により測定した。
【0067】
離型性:成型モールドから成形体を離型する際、全く離型しなかったものあるいは、成形体の一部が欠けたり、成型モールドが割れたりしたものを「×」(離型性悪い)、そのようなことが全くなかったものを「○」(離型性良好)とした。
【0068】
透明性:得られた樹脂を暗所にてプロジェクターに照射して、成形体の曇り、不透明物質、テープからの粘着成分の溶出の有無を目視にて判断した。成形体の曇り、不透明物質、テープからの溶出が確認されないものを「○」(透明性あり)、確認されたものを「×」(透明性なし)とした。
【0069】
耐熱性:TMAペネートレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/min)でのガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度が90℃以上のものを「○」(耐熱性あり)、90℃以下のものを「×」(耐熱性なし)とした。
【0070】
染色性:純水2986gに、「FSP Red E−A」(双葉産業社製)1.0g、「FSP Yellow P−E」(双葉産業社製)1.0g、「FSP Blue AUL−S」(双葉産業社製)2.0g、「ニッカサンソルト#7000」(日華化学社製)4.0g、「DK−CN」(大和化学工業社製)4.0gを添加し、染料分散液を調整した。これを90℃に加熱した後に、厚さ9mmの成形体片を90℃にて5分間浸漬、染色した。染色した後の成形体片の波長565nmにおける透過率(%T)を測定した。染色後の透過率が40%以下のものを「○」(染色性良好)、60%以上のものを「×」(悪い)とした。
【0071】
染色均一性:中心厚1mm、径80mmの成形体を上記染色方法で染色し、目視にて外観確認を行った。均一に染色されているものを「○」(染色ムラなし)、一部に斑状、筋状等、不均一に染色ムラが観察されたものを「×」(染色ムラあり)とした。
【0072】
剛性:島津製作所製オートグラフ(型式AGS−J)を用いて、クロスヘッド等速条件(1.2mm/min)にて三点曲げ試験を実施した。得られた値をもとに下記数式により算出された値が大きいほど剛性が優れていると判断した。
(L3×F)/(4bh3×s)
F:最大点応力(N/mm2)、s:ストローク(mm)、L:支点間距離(mm)、b:試験片幅(mm)、h:試験片厚さ(mm)。
【0073】
[実施例1]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物43.3g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)51.0g、シクロヘキサノン5.7g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)43、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は38%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は2340N/mmであった。比較例1と比較すると、ケトン化合物を添加することで数値が15%向上することを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0074】
[実施例2]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物43.6g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)51.4g、メチルイソブチルケトン5.0g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)43、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は40%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0075】
[実施例3]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物43.2g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)51.0g、イソホロン5.8g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)41、比重1.28、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は38%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0076】
[実施例4]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物42.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)49.5g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン8.6g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.57、アッベ数(νe)43、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は31%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0077】
[実施例5]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物40.5g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)47.7g、2−アダマンタノン11.8g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)43、比重1.28、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は31%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0078】
[実施例6]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物39.3g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)46.3g、カンファー14.5g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)44、比重1.25、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は33%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0079】
[実施例7]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物41.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)48.3g、4,4'−ビシクロヘキサノン10.7g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)43、比重1.28、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は30%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0080】
[実施例8]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物42.7g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)50.3g、1,4−シクロヘキサンジオン7.0g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.57、アッベ数(νe)43、比重1.30、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は33%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0081】
[実施例9]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物25.5g、m−キシリレンジイソシアネート16.5g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)30.1g、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンとの混合物16.1g、カンファー11.8g、ジメチルチンジクロリド0.02g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.59、アッベ数(νe)39、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は40%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は2300N/mmであった。比較例2と比較すると、ケトン化合物を添加することで数値が9%向上することを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0082】
[実施例10]
ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン50.8g、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン33.7g、カンファー15.4g、ジブチルチンジクロリド0.3g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.58、アッベ数(νe)41、比重1.19、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は40%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は1780N/mmであった。比較例3と比較すると、ケトン化合物を添加することで数値が11%向上することを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0083】
[実施例11]
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物45.1g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)20.8g、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン27.0g、カンファー7.1g、ジメチルチンジクロリド0.05g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.59、アッベ数(νe)40、比重1.26、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は39%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は1750N/mmであった。比較例4と比較すると、ケトン化合物を添加することで数値が11%向上することを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0084】
[実施例12]
イソホロンジイソシアネート38.7g、ヘキサメチレンジイソシアナート0.6g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)43.4g、カンファー17.3g、ジメチルチンジクロリド0.2g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.54、アッベ数(νe)44、比重1.20、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は37%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は2270N/mmであった。比較例7と比較すると、ケトン化合物を添加することで数値が14%向上することを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0085】
[実施例13]
ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン45.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)41.9g、カンファー13.1g、ジメチルチンジクロリド0.25g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.55、アッベ数(νe)44、比重1.20、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は30%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は1800N/mmであった。比較例8と比較すると、ケトン化合物を添加することで数値が30%向上することを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0086】
[実施例14]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物43.8g、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)45.9g、カンファー10.3g、ジメチルチンジクロリド0.1g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.005gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)43、比重1.30、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は38%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0087】
[実施例15]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物42.4g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)49.2g、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)1.0g、カンファー7.5g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)42、比重1.28、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は29%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0088】
[実施例16]
2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物36.7g、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンと4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアンと2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンを主成分とする混合物43.3g、カンファー20.0g、ジブチルチンジクロリド0.01g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.10gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.66、アッベ数(νe)27、比重1.32、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は32%Tと染色性は良好で、染色ムラなく、均一に染色されていることを確認した。評価結果は[表1]に示した。
【0089】
[比較例1]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物45.9g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)54.1g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.57、アッベ数(νe)42、比重1.31、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色した。染色ムラなく、均一に染色されているものの、染色後の565nmの透過率は60%Tであった。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は2030N/mmであることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0090】
[比較例2]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物28.9g、m−キシリレンジイソシアネート18.8g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)34.1g、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンとの混合物18.2g、ジメチルチンジクロリド0.02g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.60、アッベ数(νe)38、比重1.33、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色した。染色ムラなく、均一に染色されているものの、染色後の565nmの透過率は68%Tであった。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は2110N/mmであることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0091】
[比較例3]
ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン60.1g、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン39.9g、ジブチルチンジクロリド0.3g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.12gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.60、アッベ数(νe)39、比重1.23、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色した。染色ムラなく、均一に染色されているものの、染色後の565nmの透過率は61%Tであった。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は1600N/mmであることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0092】
[比較例4]
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物48.6g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)22.3g、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン29.1g、ジメチルチンジクロリド0.05g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.60、アッベ数(νe)40、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色した。染色ムラなく、均一に染色されているものの、染色後の565nmの透過率は60%Tであった。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は1580N/mmであることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0093】
[比較例5]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物58.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)28.8g、2−メルカプトエタノール13.2g、ジメチルチンジクロリド0.05g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.12gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.57、アッベ数(νe)43、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は37%Tと染色性は良好であったものの、斑状に染色ムラがあり、染色状態は不均一であることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0094】
[比較例6]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物57.4g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)35.1g、1,4−ブタンジオール7.5g、ジブチルチンジクロリド0.05g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.25gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.60、アッベ数(νe)41、比重1.28、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成形体を染色し、染色後の565nmの透過率は37%Tと染色性は良好であったものの、斑状に染色ムラがあり、染色状態は不均一であることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0095】
[比較例7]
イソホロンジイソシアネート46.8g、ヘキサメチレンジイソシアナート0.7g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)52.5g、ジメチルチンジクロリド0.2g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.55、アッベ数(νe)42、比重1.24、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。しかし得られた成形体を染色したところ、染色後の565nmの透過率は77%Tと染色性は悪く、染色ムラもあることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は2000N/mmであることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0096】
[比較例8]
ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン51.8g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)48.2g、ジメチルチンジクロリド0.25g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)43、比重1.24、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。しかし得られた成形体を染色したところ、染色後の565nmの透過率は73%Tと染色性は悪く、染色ムラもあることを確認した。また得られた成形体で三点曲げ試験を実施し、剛性は1390N/mmであることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0097】
[比較例9]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物44.3g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)52.4g、アセトフェノン3.3g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.57、アッベ数(νe)41、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。しかし得られた成形体を染色したところ、染色後の565nmの透過率は61%Tと染色性は悪く、染色ムラもあることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0098】
[比較例10]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物41.2g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)48.8g、チオカンファー10.1g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.57、アッベ数(νe)42、比重1.29、耐熱性も90℃以上あったが、着色が酷く、光学材料用透明樹脂としては不適であった。評価結果は[表2]に示した。
【0099】
[比較例11]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物43.7g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)51.8g、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド4.6g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.08gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)42、比重1.29、耐熱性も90℃以上あり、光学材料用透明樹脂として好適であった。しかし得られた成形体を染色したところ、染色後の565nmの透過率は55%Tであったが、染色ムラがあることを確認した。評価結果は[表2]に示した。
【0100】
[比較例12]
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物41.1g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)48.7g、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド10.2g、ジメチルチンジクロリド0.03g、紫外線吸収剤(共同薬品社製、商品名バイオソーブ583)1.5g、内部離型剤(三井化学社製、商品名MR用内部離型剤)0.1gを混合溶解し、均一溶液とした。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。モールド型からの樹脂から成る成形体の離型性は良好であった。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.56、アッベ数(νe)42、比重1.29、耐熱性も90℃以上あったが、着色が酷く、光学材料用透明樹脂としては不適であった。評価結果は[表2]に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
i−1 : 2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物
i−2 : m−キシリレンジイソシアネート
i−3 : ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン
i−4 : 1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと 1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物
i−5 : イソホロンジイソシアネート
i−6 : ヘキサメチレンジイソシアネート
i−7 : 2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物
【0104】
t−1 : ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
t−2 : 5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンとの混合物
t−3 : 4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン
t−4 : ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)
t−5 : エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)
t−6 : 1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンと4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアンと2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンを主成分とする混合物
【0105】
k−1 :シクロヘキサノン
k−2 :メチルイソブチルケトン
k−3 :イソホロン
k−4 :トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン
k−5 :2−アダマンタノン
k−6 :カンファー
k−7 :4,4'−ビシクロヘキサノン
k−8 :1,4−シクロヘキサンジオン
k−9 :アセトフェノン
k−10 :チオカンファー
【0106】
a−1 :2−メルカプトエタノール
a−2 :1,4−ブタンジオール
d−1 :シクロヘキサンカルボキシアルデヒド
d−2 :5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド
【0107】
以上の結果より、本発明の重合性組成物は、比較例に比べて、成形体の染色ムラを生じさせずに染色性が向上するとともに、機械強度が改善された成形体を得られることがわかる。また成型モールドからの離型性が向上するため、添加する内部離型剤の量を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の重合性組成物により、染色ムラの発生が抑制され、均一に染色された樹脂または光学材料が得られ、さらに機械物性にも優れた光学材料が得られる。またさらに、本発明の重合性組成物から得られる光学材料は、屈折率等の光学特性、離型性、透明性、耐熱性に優れ、これらの特性のバランスにも優れる。
このような重合性組成物は、高い屈折率および高い透明性が要求される光学材料用樹脂として、特に眼鏡用プラスチックレンズに好適に使用することができる。
【0109】
この出願は、2011年6月23日に出願された日本出願特願2011−139244号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0110】
本発明は以下の内容を含む。
[a] カルボニル基を1個以上有する、脂肪族ケトン化合物と、一種以上のイソシアネート化合物と、一種以上のチオール化合物とを含有する、重合性組成物。
[b] 前記脂肪族ケトン化合物が、一般式(1)で表されることを特徴とする、[a]に記載の重合性組成物。
【0111】
【化3】
【0112】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数1から10の直鎖状、分岐状、または環状の脂肪族炭化水素基を示す。R、R、Rは結合して環を構成してもよい。nは0または1の整数を示す。)
[c] 前記脂肪族ケトン化合物が、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン、2−アダマンタノン、カンファー、4、4'−ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオンより選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする、[a]または[b]に記載の重合性組成物。
【0113】
[d] 前記脂肪族ケトン化合物が、5員環または6員環構造を含むことを特徴とする、[a]または[b]に記載の重合性組成物。
[e] 前記脂肪族ケトン化合物が、環構造にカルボニル基を有することを特徴とする、[d]に記載の重合性組成物。
【0114】
[f] 前記イソシアネート化合物が、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネートより選ばれる一種以上の化合物であり、
前記チオール化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンより選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする、[a]から[e]のいずれかに記載の重合性組成物。
【0115】
[g] [a]から[f]のいずれかに記載の重合性組成物を加熱硬化させて得られるチオウレタン樹脂からなる成形材料。
[h] [g]に記載の成形材料からなる光学材料。
[i] [h]に記載の光学材料からなるプラスチックレンズ。
[j] [a]から[f]のいずれかに記載の重合性組成物を注型重合する工程を含むことを特徴とする、光学材料の製造方法。
[k] 前記注型重合により得られた成形体を染色する工程をさらに含む、[j]に記載の光学材料の製造方法。