【文献】
Cancer Biotherapy and Radiopharmaceuticals,2009年,Vol.24, No.2,pp.155-160
【文献】
A Non-Internalizing Anti-CD40 Antibody, CHIR-12.12, Blocks CD40L-Induced Cytokine Production and Mediates Greater ADCC Than Rituximab in Primary CLL Cells. ,Blood (ASH Annual Meeting Abstracts) [online], <URL: http://abstracts.hematologylibrary.org/cgi/content/abstract/106/11/2964>, [retrieved on 2014-08-07],2005年,#2964
【文献】
A Novel Fc-Engineered Antibody to CD33 with Enhanced ADCC Activity for Treatment of AML,54th ASH Annual Meeting and Exposition, Abstracts, Program, and Pesonal Scheduler[online], <URL: https://ash.confex.com/ash/2012/webprogram/Paper46506.html>, [retrieved on 2014-08-06],#1363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の詳細な説明
CD33結合因子
本明細書で用いられる“結合因子”という用語は、標的抗原と特異的に結合するタンパク質又はペプチドを意味する。結合因子は、例えば抗体、そのような抗体の誘導体、又は標的抗原と特異的に結合する他の薬剤であり得る。結合因子はまたFv領域又はその部分を含むタンパク質であり得る(その部分とは、例えば標的抗原と特異的に結合する抗体のV
H又はV
L又はCDRである)。本明細書の好ましい実施態様では、結合因子は抗体である。
本明細書で用いられる“CD33結合因子”という用語は、CD33(典型的にはヒトCD33の細胞外ドメインの一部分)と特異的に結合する結合因子を指す。
本明細書で用いられる“抗体”という用語は(a)免疫グロブリンポリペプチド及び免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的に活性な部分(すなわち、特異的標的抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む、免疫グロブリンファミリーのポリペプチド又はその部分)、又は(b)標的抗原と免疫特異的に結合する、そのような免疫グロブリンポリペプチド又はフラグメントの保存的に置換された誘導体を指す。抗体は例えば以下に一般的に記載されている:Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)。“抗体”という用語は、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一特異的抗体、マルチ特異的抗体(例えば二特異的抗体)、及び所望の生物学的活性(例えば抗原結合活性)を示す抗体フラグメントを指す。抗体は、任意のタイプ又はクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、AgA1及びIgA2)であるが、好ましくはIgGクラス、より好ましくはIgG1であり得る。
【0008】
“完全な”抗体は、抗原結合可変領域の他に、抗体クラスについて適切な軽鎖定常ドメイン及び重鎖定常ドメインを含むものである。定常ドメインは、本来の配列の定常ドメイン(例えばヒトの本来の配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変種であり得る。
“抗体フラグメント”は抗体の一部分を含み、抗原結合若しくは可変領域又はその部分が含まれる。抗体フラグメントの例にはFab、Fab’、F(ab’)
2及びFvフラグメント及びV
L抗原結合フラグメント、ジアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、scFv、scFv-Fc、SMTP及び、抗体フラグメントから形成されるマルチ特異的抗体が含まれる。
“重鎖可変領域”又は“V
H”は、CDR1、CDR2及びCDR3並びに周囲のフレームワーク領域を含む重鎖の部分を意味する。
“軽鎖可変領域”又は“V
L”は、CDR4、CDR5及びCDR6並びに周囲のフレームワーク領域を含む軽鎖の部分を意味する。
“CDR”は、抗体又は抗体フラグメントの相補性/結合特異性を決定する、重鎖及び軽鎖の超可変領域を意味する。本出願のCDRの順番は純粋に数字的なものである。
【0009】
本明細書の“エピトープ”は抗体又は抗体フラグメントによって認識される抗原の一部分を意味する。特にこの用語は抗体によって認識され得るCD33の一部分を指す。
本明細書で用いられる“mAb”はモノクローナル抗体を指す。
抗体は、抗体のFc領域(本来の配列のFc領域又はアミノ酸配列変種のFc領域)に起因させ得る生物学的活性に該当する、1つ以上の“エフェクター機能”を有することができる。抗体のエフェクター機能の例には、Ciq結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター;BCR)のダウンレギュレーションなどが含まれる。
“単鎖Fv”又は“scFv”抗体フラグメントは抗体のV
H及びV
Lドメインを含み、これらドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。Fvポリペプチドは典型的にはさらにV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーを含み、前記リンカーはscFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする。例えば以下を参照されたい:Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore, eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)。
【0010】
“〜に対する”、“〜と結合する”又は問題の抗原(すなわち標的抗原)と“特異的に結合する”結合因子(例えば抗体)は、当該結合因子が当該抗原を発現する細胞を標的とする場合に当該結合因子が有用であるように十分な親和性で抗原と結合できる結合因子である。典型的には、結合因子は少なくとも1x10
7 M
-1の親和性で結合し、予め定めた抗原又は近縁抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)と結合するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で予め定めた抗原と結合する。
本明細書で用いられる“抗体誘導体”は、異種分子の共有結合によって(例えば異種ポリペプチドの結合によって)、又はグリコシル化、脱グリコシル化、アセチル化若しくはリン酸化、又は通常は抗体と関係しない改変によって改変された、上記で規定された抗体を指す。いくつかの実施態様では、異種分子は治療薬ではない。いくつかの実施態様では、異種分子はそれ自体で細胞増殖抑制又は細胞傷害性作用を示さない。
本明細書で用いられる全ての用語及び工程のためのさらに総合的な参考文献は以下である:Sambrook at al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd edition (January 15, 2001)。
CD33結合因子は、ある標的細胞集団と密接に関係するレセプター、CD33と特異的に結合する。CD33は、造血細胞系列の細胞(骨髄性前駆細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞及びマスト細胞を含む)で発現されるシアロ接着ファミリーのメンバーである。CD33はまた、骨髄増殖性又はマスト細胞増殖性疾患(急性骨髄性白血病及び脊髄形成性症候群を含む)と密接に関係する腫瘍細胞及び白血病幹細胞で発現される。CD33を標的とする抗体及びそれらの使用はこれまでに一般的に記載されている(例えば以下を参照されたい:Pierelli et al., 1993, Br. J. Haematol. 84:24-30;Matutes et al., 1985, Hemaiol. Oncol. 3: 179- 186;Taussig et al., 2005, Blood 106:4086- 4092;Florian et al., 2006, Leuk. & Lymph. 47:207-222)。
【0011】
いくつかの実施態様では、CD33結合因子は抗体(例えばモノクローナル抗体)である。有用なモノクローナル抗体は、CD33(例えばヒトCD33の細胞外ドメイン)に対する均質な抗体集団であり得る。モノクローナル抗体(mAb)は、当業界で公知の任意の技術を用いることによって調製できる。これらには、最初KohlerとMilstein(1975, Nature 256:495- 497)が記載したハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72)、及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA及びIgDを含む任意の免疫グロブリンクラス及びその任意のサブクラスであり得る。モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマはin vitro又はin vivoで培養することができる。
有用なモノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、及び前記のいずれかの機能的に活性な抗体フラグメントが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
有用なCD33抗体には、当業界で公知の種々のメカニズム、例えば抗体依存細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)によって治療効果を達成できる抗体が含まれる。例えば、抗体は、免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞、単球及びマクロファージ)との相互作用によってADCCを媒介することができる。
【0012】
組換え抗体(例えばキメラ及びヒト化モノクローナル抗体)はヒト及び非ヒト部分を含み、標準的組換え技術を用いて作製できる(例えば以下を参照されたい:米国特許4,816,567号(Cabilly et al.)及び米国特許4,816,397号(Boss et al.)(前記両文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる))。“ヒト化抗体”は、非ヒト種に由来する1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する 非ヒト種由来抗体分子である。(例えば以下を参照されたい:米国特許5,585,089号(Queen)(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる))。そのようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当業界で公知の組換えDNA技術、例えば以下に記載された方法を用いて作製することができる:国際公開公報WO 87/02671;欧州特許公開公報0184187号;欧州特許公開公報0173494号;国際公開公報WO 86/01533;米国特許4,816,567号;欧州特許公開公報012023号;Berter et al., 1988, Science 240: 1041-1043;Liu et al., 1987, Proc. Natl. Acad Set. USA 84:3439-3443;Liu et al., 1987, J. Immunol. 139:3521-3526;Sun el al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimura et al., 1987, Cancer. Res. 47:999-1005;Wood et al. 1985, Nature 314:446-449;Shaw et al, 1988, J. Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559;Morrison, 1985, Science 229: 1202-1207;Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214;米国特許5,225,539号;Jones et al., 1986, Nature 321:552-525;Verhoeyan et al., 1988, Science 239:1534;及びBeidler et al., 1988, J. Immunol. 141:4053-4060(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0013】
ヒト化モノクローナル抗体は当業界で公知の多数の技術のいずれかによって作製できる(例えば以下を参照されたい:Teng el al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 80: 7308-7312;Kozbor et al, 1983, Immunology Today 4:72-79;Olsson at al., 1982, Meth. Enzymol. 92:3-16;並びに米国特許5,939,598号及び5,770,429号)。
完全なヒト抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できないがヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて作製できる。このトランスジェニックマウスを、選択した抗原(例えばCD33ポリペプチドの全部又は一部分)を用いて通常の態様で免疫する。当該抗原に対するモノクローナル抗体は通常のハイブリドーマ技術を用いて入手できる。トランスジェニックマウスによって保持されるヒト免疫グロブリントランスジーンはB細胞の分化中に再編成され、続いてクラススイッチング及び体細胞変異を受ける。したがって、そのような技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を作製することが可能である。ヒト抗体を作製するこの技術の概要については例えば以下を参照されたい:Lonberg and Huszar, 1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を作製するこの技術の詳細な考察及びそのような抗体を作製するためのプロトコルについては、例えば以下を参照されたい:米国特許5,625,126号、5,633,425号、5,569,825号、5,661,016号及び5,545,806号。他のヒト抗体は、市場で(例えばMedarex, Princeton, NJ)入手できる(前記はマウスを免疫することによって得られる)。
【0014】
選択したエピトープを認識する完全にヒトの抗体はまた、“先導選別(guided selection)”と称される技術を用いて作製できる。このアプローチでは、選択した非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を用いて、同じエピトープを認識する完全にヒトの抗体の選別を先導する(例えば以下を参照されたい:Jespers el al, 1994, Biotechnology 12:899-903)。ヒト抗体はまた、当業界で公知の多様な技術(ファージディスプレーライブラリーを含む)を用いて作製できる(例えば以下を参照されたい:Hoogenboom and Winter, 1991, J. MoI. Biol 227:381;Marks et al, 1991, J MoI Biol 222:581;Quan and Carter, 2002, The rise of monoclonal antibodies as therapeutics, In Anti-IgE and Allergic Disease, Jardieu and Fick Jr., eds., Marcel Dekker, New York, NY, Chapter 20, pp. 427-469)。
有用な抗体フラグメントには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):F(ab’)
2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント、Fv、単鎖抗体(SCA)(例えば以下に記載されている:米国特許4,946,778号;Bird, 1988, Science 242:423-42;Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;及びWard et al, 1989, Nature 334: 544-54)、scFv、scFv-Fc、FvdsFv、ミニボディ、ジアボディ、トリアボディ、テトラボディ、SMIP(例えば米国特許出願公開公報2005-0238646号を参照されたい)、及び1つ以上のCDRを含み当該抗体と同じ特性を有する任意の他の分子。
【0015】
他の実施態様では、抗体は、別のタンパク質と結合した抗体(又はその機能的に活性なフラグメント)の融合タンパク質である。例えば、抗体又は抗体フラグメントは、そのN-末端又はC-末端、で共有結合(例えばペプチド結合)を介して、抗体又は抗体フラグメントではない別のタンパク質(又はその部分、典型的には当該タンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)のアミノ酸配列と融合させることができる。いくつかの実施態様では、抗体又はそのフラグメントは、可変ドメイン又は定常ドメインのC-末端で他のタンパク質と共有結合により連結できる。
抗体は、例えば任意のタイプの分子の共有結合によって改変できるが、ただしそのような共有結合がその抗原結合免疫特異性を許容する場合に限られる。例えば、抗体の誘導体は、例えばグリコシル化、脱グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による脱確認化、タンパク分解切断、別のタンパク質との結合などによってさらに改変されてあるものでもよい。多数の化学的改変のいずれも公知の技術(特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、チュニカマイシン存在下における代謝的合成などが含まれるが、ただしこれらに限定されない)によって実施できる。さらにまた、誘導体は1つ以上の非天然のアミノ酸を含むことができる。
【0016】
具体的な実施態様では、抗体の結合親和性及び/又は生物学的特性を改善することが所望され得る(例えば米国特許公開公報2006-0003412及び2006-0008882号を参照されたい)。抗体のアミノ酸配列変種は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによって、又はペプチド合成によって調製される。そのような改変には、例えば抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換が含まれる。欠失、挿入及び/又は置換の任意の組合せを実施して最終構築物が得られるが、ただし最終構築物が所望の特徴を保有することを条件とする。アミノ酸の変化はまた、抗体の翻訳後プロセスの変更、例えばグリコシル化部位の数又は位置の変化を生じ得る。
変異導入に好ましい位置に存在する一定の残基又は抗体の領域を同定する有用な方法は、“アラニンスキャンニング変異導入”と称される(Cunningham and Wells(Science 244: 1081-1085, 1989)によって記載された)。ここでは、一残基又は標的残基群が同定され(例えば荷電残基、例えばArg、His、Lys及びGlu)、抗原とアミノ酸の相互作用に影響を与えるべく、中性又は陰性荷電アミノ酸(典型的にはアラニンまたはポリアラニン)によって置換される。続いて、置換部位に更なる又は他の変種を導入することによって、置換に対して機能的感受性を示すそれらアミノ酸の位置を詳細に調べる。このようにして、アミノ酸配列の多様性を導入するための位置は予め決定されるが、変異それ自体の性質を予め決定する必要はない。例えば、ある部位の変異の性能を解析するために、アラニンスキャンニング又はランダム変異導入を標的コドン又は領域で実施し、発現させた抗体変種を所望の活性についてスクリーニングする。
【0017】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1残基から100以上の範囲の残基を含むアミノ及び/又はカルボキシル末端融合の他に、1又は数アミノ酸残基の配列内挿入が含まれ得る。末端挿入の例には、N-末端メチオニル残基を有する抗体又は細胞傷害性ポリペプチドと融合させた抗体が含まれる。
抗体の別のタイプは抗体のアミノ酸置換変種である。そのような変種は、抗体分子中に異なる残基で置換された少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換による変異導入のために最大の関心が寄せられる部位には超可変領域が含まれるが、フレームワーク領域の変更もまた意図される。
抗体の生物学的特性における実質的な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造(例えばシート又はヘリックス構造)、(b)分子の標的部位の疎水性、又は(c)側鎖の大きさの維持において、それらの影響が顕著に相違する置換を選択することによって達成できる。天然に存在する残基は以下の一般的な側鎖の特性を基準にしたグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gin、His、Lys、Arg;
(5)鎖の向きに影響を及ぼす残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらクラスの1つのメンバーを別のクラスのものと交換することを必要とするであろう。
【0018】
エフェクター機能に関して、例えば抗体の抗体依存細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)強化するために、抗体を改変することが所望される。特にADCC活性は、抗体の定常領域にアミノ酸変異を導入することによって強化できる(Lazar et al., PNAS 103, 11, 4005-4010, 2006)。前記は、抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成できる(例えば米国特許出願公開公報2006-0160996を参照されたい)。或いは、又は前記に加えて、システイン残基をFc領域に導入し、それによって鎖間のジスルフィド結合をこの領域で形成させることができる。このようにして生成されたホモダイマー抗体は、内在化能力の改善及び/又はCDC及びADCCの増加を示すことができる(例えば以下を参照されたい:Caron et al., 1992, J Exp. Med 176:1191-1195;及びShopes, 1992, J. Immunol. 148:2918-2922)。抗腫瘍活性が強化されたホモダイマー抗体はまた、Wolffら(1993, Cancer Research 53:2560-2565)が記載したように、異種二官能性架橋を用いて調製できる。或いは、二重Fc領域を有し、それによって補体による溶解及びADCC能力が強化される抗体を操作することができる(例えば以下を参照されたい:Stevenson et al.. 1989, Anti-Cancer Drug Design 3:219-230)。
【0019】
多様なFc領域の改変が当業界では学術文献及び特許文献の両方で、例えば以下で提唱されている:EP 0307434、WO 9304173、WO 9734631、WO 9744362、WO 9805787、WO 9943713、WO 9951642、WO 9958572、WO 02060919、WO03074679、WO 2004016750、WO 2004029207、WO 2004063351、WO 2004074455、WO 2004035752、WO 2004099249、WO 2005077981、WO 2005092925、WO 2006019447、WO 2006031994、WO 2006047350、WO 2006053301、WO 2006088494及びWO 2007041635。
好ましい実施態様では、本発明の抗体は332位及び/又は239位及び/又は236位にアミノ酸置換を有するFc変種である。好ましい実施態様では、本発明の抗体は以下の群から選択されるFCドメイン内変異を有する:
i)332位に単一置換、好ましくはI332E;
ii)239位及び332位の置換の組合せ、好ましくはS239D/I332E;
iii)236位及び332位の置換の組合せ、好ましくはG236A/I332E;
iv)236位、239位及び332位の置換の組合せ、好ましくはG236A/S239D/I332E。
【0020】
この関係では、Kabat EU番号付与インデックスにしたがえば、332位及び/又は239位及び/又は236位のアミノ酸から選択される1つ以上の位置にFcドメイン内変異を導入するのが特に好ましい。特に好ましいものは、239及び332位の置換、特にS239D/I332Eである。
本発明の抗体のFc変種は、それらを含むアミノ酸改変にしたがって規定される。したがって、例えばI332Eは、親Fcポリペプチドに対して置換I332Eを有するFc変種である。同様に、S239D/I332Eは置換S239D及びI332Eを有するFc変種を規定し、S239D/I332E/G236Aは、親Fcポリペプチドに対して置換S239D、I332E及びG236Aを有するFc変種を規定する。
抗体の血清半減期を延長するために、例えば米国特許5,739,277号に記載されたように、サルベージレセプター結合エピトープを抗体(特に抗体フラグメント)に取り込ませることができる。本明細書で用いられるように“サルベージレセプター結合エピトープ”という用語は、IgG分子(例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3又はIgG
4)のFc領域のエピトープ(IgG分子のin vivo血清半減期の延長に必要である)を指す。
【0021】
抗体はそれらの定常領域の保存された位置でグリコシル化できる(例えば以下を参照されたい:Jefferis and Lund, 1997, Chem. Immunol. 65:11 1-128;Wright and Morrison, 1997, TibTECH 15:26-32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能に(例えば以下を参照されたい:Boyd et al., 1996, MoI. Immunol. 32: 1311 -1318;Wittwe and Howard, 1990, Biochem. 29: 4175-4180)、及び糖タンパク質の部分間の分子内相互作用に影響を及ぼす(前記相互作用は糖タンパク質の構造及び提示される三次元表面に影響を及ぼすことができる)(例えば以下を参照されたい:Jefferis and Lund(上掲書);Wyss and Wagner, 1996, Current Opin. Biotech. 7:409-416)。オリゴ糖はまた、与えられた糖タンパク質を、特異的な認識構造を基にして一定の分子へ向かわせるために役立ち得る。例えば、ガラクトシル化IgGでは、オリゴ糖成分はC
H2間の隙間から“飛び出し(flip out)”、末端のN-アセチルグルコサミン残基がマンノース結合タンパク質と結合するために利用可能になることが報告された(例えば以下を参照されたい:Malhotra et al. 1995, Nature Med. 1:237-243)。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から生成されたCAMPATH-1H(ヒトリンパ球のCDw52抗原を認識する組換えヒト化ネズミモノクローナルIgG1抗体)からオリゴ糖をグリコペプチダーゼにより除去することによって、補体媒介溶解(CMCL又はCDC)の完全な低下がもたらされ(Boyd et al., 1996, MoI. Immunol. 32:131, 1-1318)、一方、ノイラミニダーゼによるシアル酸残基の選択的除去はCMCLの低下を生じなかった。抗体のグリコシル化はまた、ADCCに影響を及ぼすことが報告された。特に、β(1.4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)(二分GIcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼ)のテトラサイクリン調節発現を示すCHO細胞は、ADCC活性を改善することが報告された(例えば以下を参照されたい:Umana et al., 1999, Nature Biotech. 17: 176-180)。
【0022】
抗体のグリコシル化は典型的にはN-結合又はO-結合である。N-結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物成分の結合を指す。トリペプチド配列、アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物成分のアスパラギン側鎖への酵素的結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチドのどちらかの存在は潜在的なグリコシル化部位を創出する。O-結合グリコシル化は、糖(N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロース)の1つのヒドロキシルアミノ酸(もっとも一般的にはセリン又はスレオニン、ただし5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた利用されることがある)への結合を指す。
抗体のグリコシル化変種は抗体のグリコシル化パターンが変更されている変種である。変更は、抗体内で見出される1つ以上の炭水化物成分の欠失、抗体への1つ以上の炭水化物の付加、グリコシル化組成(すなわちグリコシル化パターン)の変化、グリコシル化の程度などを意味する。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、便利には、抗体が1つ以上の上記記載のトリペプチド配列を含むようにアミノ酸配列を変更することによって達成される(N-結合グリコシル化部位のため)。変更はまた、本来の抗体の配列への1つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加又は前記による置換によって実施できる(O-結合グリコシル化部位のため)。同様に、グリコシル化部位の除去は、抗体の天然のグリコシル化部位内のアミノ酸の変更によって達成できる。
【0023】
アミノ酸配列は通常基礎になる核酸配列を変更することによって変更することができる。これらの方法には、天然の供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変種の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介(又は位置特異的)変異導入、PCR変異導入、又は以前に調製した抗体の変種又は非変種型のカセット変異導入による調製が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
抗体のグリコシル化(グリコシル化パターンを含む)はまた、アミノ酸配列又は基礎になる核酸配列を変更することなく変化させることができる。グリコシル化は、抗体発現に用いられる宿主細胞に大きく依存する。潜在的治療薬として、組換え糖タンパク質(例えば抗体)の発現に用いられる細胞タイプはほとんど本来の細胞ではないので、抗体の顕著なグリコシル化パターンの多様性が予想され得る(例えば以下を参照されたい:Hse et al., 1997, Biol. Chem. 272:9062-9070)。宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え製造時のグリコシル化に影響を及ぼす因子には、増殖態様、培地の処方、培養密度、酸素付加、pH、精製方式などが含まれる。特定の宿主生物で達成される、グリコシル化パターンを変更する多様な方法が提唱されている。前記は、オリゴ糖生成に必要な一定の酵素を導入するか又は過剰発現させる工程を含む(例えば米国特許5,047,335号、5,510,261号及び5,278,299号を参照されたい)。グリコシル化(又はある種のタイプのグリコシル化)は、例えばエンドグリコシダーゼH(Endo H)を用いて、糖タンパク質から酵素により除去できる。さらにまた、組換え宿主細胞を遺伝的に操作してもよい(例えばある種のタイプの多糖類のプロセッシングを不完全にすることができる)。これらの技術及び類似の技術は当業界で周知である。
【0024】
抗体のグリコシル化構造は、炭水化物分析の通常の技術によって容易に分析できる。前記技術には、レクチンクロマトグラフィー、NMR、質量分析法、HPLC、GPC、単糖類組成解析、連続酵素消化、及びHPAEC-PADが含まれる。HPAEC-PADは高pH陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、荷電によりオリゴ糖を分離する。分析目的でオリゴ糖を遊離させる方法は周知であり、酵素的処理(一般的にはペプチド-N-グリコシダーゼF/エンド-β-ガラクトシダーゼを用いて実施される)、主としてO-結合構造を遊離させるために激甚なアルカリ性環境を用いる削除、並びにN-結合及びO-結合オリゴ糖の両方を遊離させるために無水ヒドラジンを用いる化学的方法が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
抗体はまた、Fcレセプターと相互作用するアミノ酸残基に改変(例えば置換、欠失又は付加)を有することができる。特に、抗体は、抗FcドメインとFcRnレセプターとの相互作用で必要とされると認識されたアミノ酸残基に改変を有することができる(例えば国際公開公報WO97/34631を参照されたい)。
【0025】
そのもっとも広い特徴で、本発明は、ヒトCD33と結合し、さらに以下のa)又はb)によって規定されるCD33結合因子に関する:
a)CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びにCDR4、CDR5及びCDR6を含む軽鎖可変領域を有し、ここでCDR1は配列番号:1−14から選択されるアミノ酸配列を有し、CDR2は配列番号:15−28から選択されるアミノ酸配列を有し、CDR3は配列番号:29−42から選択されるアミノ酸配列を有し、CDR4は配列番号:43−56から選択されるアミノ酸配列を有し、CDR5は配列番号:57−70から選択されるアミノ酸配列を有し、CDR6は配列番号:71−84から選択されるアミノ酸配列を有するか、又は
b)ヒトCD33のアミノ酸配列内のエピトープFFHPIPYYDKNSPVHGYW(配列番号:141)を認識する。
本発明はさらに、CD33結合因子の内在化動態が、インキュベーションから4時間で、抗体の最初の量の少なくとも30%がHL60細胞の細胞表面にとどまるようなものである、CD33結合因子を提供する。
【0026】
本発明のCD33結合因子はリンツズマブとは異なるエピトープと結合することが見出された(本明細書の実施例4を参照されたい)。両エピトープ(配列番号:141及び配列番号:142)は重なり合っていない。CD33の細胞外ドメイン上の異なるエピトープ(前記は本発明のCD33結合因子及びリンツズマブによって認識される)が、本発明のCD33結合因子及びリンツズマブの内在化態様及びADCC性能が異なる理由であると考えられる(本明細書の実施例2及び3を参照されたい)。
好ましい実施態様では、インキュベーションから4時間で、CD33結合因子の最初の量の少なくとも40%が細胞表面にとどまる。
好ましい実施態様では、重鎖可変領域は配列番号:85−98から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号:99−112から選択されるアミノ酸配列を含む。
好ましい実施態様では、CD33結合因子は、配列番号:113−126から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号:127−140から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を有する。
好ましい実施態様では、CD33結合因子は、ヒトCD33及びカニクイザルCD33の両方に対し10nM以下のK
Dで親和性を有する。
好ましい実施態様では、CD33結合因子はヒト化される。
好ましい実施態様では、CD33結合因子は完全にヒトの因子である。
好ましい実施態様では、CD33結合因子はさらにエフェクター機能を含む。
好ましい実施態様では、エフェクター機能はF
cドメインによって媒介される。
好ましい実施態様では、CD33結合因子はF
cドメインの機能を調節する1つ以上の変異をF
cドメインに含む。
好ましい実施態様では、F
cドメインの機能の調節は、少なくとも10%、好ましくは50%又は100%のADCCの増加である。
特に好ましい本発明のCD33結合因子を表1に列挙する:
【0028】
癌の治療
いくつかの刊行物が、AML及びCML初代細胞の細胞表面マーカーとしてCD33を記載している(CD33は70%から100%の患者の悪性細胞で発現される)(Scheinberg et al., 1989; Hauswirt et al., 2007;Plesa et al., 2007; Webber et al., 2008)。CD33は、悪性骨髄性芽細胞(前記細胞は、白血病患者の末梢血及び骨髄の悪性細胞の大半を占める)及び白血病幹細胞で発現される。後者の細胞は骨髄で比較的少数のより未分化の細胞であり、それらの自己再生能力及び白血病性クローンの階層構造の維持を特徴とする。抗体を用いてCD33を標的とする臨床におけるフィージビリティは、ミロターグ(商標)(Gemtuzumab ozogamizin) (他の治療選択肢がない再発AML患者の治療として承認された、抗体-カリケアマイシン複合物)によって示された。CD33に対するまた別のアプローチは、リンツズマブ(SGN-33, HuM195)の開発である。リンツズマブは、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、フェースI臨床試験で初期有効性の徴候を示した(Raza et al., 2009)。総合すれば、AML及び他のCD33陽性悪性疾患の治療に対するCD33照準の妥当性及びフィージビリティを強調する多量のデータ(前臨床及び臨床データ)が存在する。
急性骨髄性白血病(AML)は骨髄系列の白血球細胞の悪性疾患である。この造血性新形成は血液及び骨髄の疾患であり、治療しない場合典型的には数週間から数カ月以内に死亡する。AMLの概算有病率は米国で30000症例、ヨーロッパ連合で47000である(Mattson-Jack(2010)によって確認された10年有病率データ)。AMLは成人の急性白血病のもっとも一般的な形態(約90%)であり、約33%の新規白血病症例を含む。AMLと診断された患者の中央値年齢は67歳である。AMLは米国では癌死の約1.2%を占める。
【0029】
AMLは非特異的症状、例えば体重減少、疲労、発熱及び寝汗を引き起こす。AMLは、血液検査、骨髄試験、並びにAMLサブタイプ及び治療の決定のための検査室試験によって診断される。
AMLの治療法は患者の年齢及び活動状態に大いに左右される。集中的な化学療法の導入(並びにその後の強化及び維持)に耐えることができる患者は、細胞傷害性薬剤の組合せで強烈に処置されるであろう。これらの患者は約75%の完全な応答を達成する蓋然性を有する。この患者集団では、治療の目標は治癒である。それでも、完全応答の達成から1年以内に前記患者の約半数でAML再発が発生する。長期治癒率は30%の範囲である。
しかしながら、診断時の年齢が高いか又は共存症が存在するときは、一時的な治療目標に到達する集中的導入療法の実施は許容されない。したがって、緩解率はAMLの高齢患者で顕著に低下する。AMLの高齢患者の中央値生存は6ヶ月未満である。
ある特徴では、CD33結合因子は、哺乳動物の(好ましくはヒトの)患者で例えば癌の進行を遅らせるか、及び/又は癌関連悪液質を軽減させるか、又は血液学的悪性疾患(例えば白血病)の再発を予防若しくは遅延させることによって癌治療に有用である。CD33結合因子は単独投与するか、又は別の治療薬と同時投与できる。いくつかの実施態様では、CD33結合因子は、標準的化学療法薬と同時投与される。CD33結合因子は、非複合体形成型で(すなわち細胞毒素と複合体を形成しない)又は複合体として投与できる。
【0030】
このサブセクションでは、“患者”とは、癌治療を受けているか又は癌を有していると診断されたヒトまたは他の哺乳動物である。
いくつかの実施態様では、CD33結合因子は、その必要がある患者に有効投薬量のCD33結合因子を投与することによって、患者で癌の進行を遅らせるか、及び/又は癌関連悪液質を軽減させるために有用である。特定のメカニズムに拘束されないが、CD33結合因子は、骨髄又は単球系列のエフェクター細胞又は付属細胞(例えば単球、マクロファージ、樹状細胞及び好中球)と結合し、それによってエフェクター又は付属細胞及び/又は腫瘍細胞の多様なサイトカイン、ケモカイン及び増殖因子の生成を阻害又は低下させる。これらのサイトカイン、ケモカイン及び増殖因子(腫瘍細胞の増殖及び分裂を促進し、及び/又は癌性悪液質に寄与し得る)には、インターロイキン-1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、血管内皮増殖因子(VEGF)、白血病抑制因子(LIF)、単球化学誘引タンパク質-1(MCP-1)、RANTES、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)、IP-10及び/又はマクロファージ炎症タンパク質1α(MIPα)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施態様では、患者への有効投薬量のCD33結合因子の投与は、少なくとも1つのサイトカイン、ケモカイン及び増殖因子のレベルを低下させる。当該サイトカイン、ケモカイン及び増殖因子は腫瘍細胞の増殖及び分裂を促進し、非悪性エフェクター細胞(例えば腫瘍付随マクロファージ(TAMS))の腫瘍部位周辺への遊走を促進し、及び/又は癌悪液質に寄与し得る。具体的な実施態様では、サイトカイン、ケモカイン又は増殖因子は、例えばインターロイキン-1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、血管内皮増殖因子(VEGF)、白血病抑制因子(LIF)、単球化学誘引タンパク質-1(MCP-1)、RANTES、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)、IP-10及び/又はマクロファージ炎症タンパク質1α(MIPα)である。
別の実施態様では、CD33と特異的に結合することができるCD33結合因子の有効なレジメンを患者に提供することによって、癌の進行を遅らせる方法が提供される。CD33結合因子の投与の結果として、癌の進行は、例えば腫瘍細胞の増殖又は分裂の低下、転移の減少、少なくとも1つのサイトカイン、ケモカイン又は増殖因子のレベルの低下、腫瘍細胞周辺の非悪性エフェクター細胞の減少などによって遅くなる。
【0032】
別の実施態様では、CD33と特異的に結合することができるCD33結合因子の有効なレジメンを患者に提供することによって、患者の腫瘍負荷を軽減する方法が提供される。CD33結合因子の投与の結果として、患者の腫瘍負荷は、例えば腫瘍のサイズ又は量の低下、少なくとも1つのサイトカイン、ケモカイン又は増殖因子のレベルの低下、腫瘍細胞周辺の非悪性エフェクター細胞の減少、腫瘍内の非悪性エフェクター細胞(例えばTAMS又はマクロファージ)の数の減少などによって停止又は軽減される。
別の実施態様では、CD33と特異的に結合することができるCD33結合因子の有効なレジメンを患者に提供することによって、患者で腫瘍負荷を軽減するか、又は癌の進行を遅らせる方法が提供される。CD33結合因子の投与の結果として、患者の腫瘍負荷は、例えば免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞又はマクロファージ又は単球)を補給することによって停止又は軽減される。当該免疫エフェクター細胞は、免疫媒介メカニズムによって腫瘍細胞を破壊できる。
【0033】
抗体依存細胞性細胞傷害(ADCC)は、モノクローナル抗体の抗腫瘍活性に寄与し得る免疫エフェクター細胞媒介メカニズムである(Weiner GJ. Monoclonal antibody mechanisms of action in cancer. Immunol Res. 2007,39(1-3):271-8)。抗腫瘍有効性に対するADCCの関連性は、前臨床モデル(例えばマウス腫瘍モデル)で示された(例えば、Clynes RA, Towers TL, Presta LG, Ravetch JV.Inhibitory Fc receptors modulate in vivo cytoxicity against tumor targets. Nat Med. 2000 Apr;6(4):443-6)。臨床試験のデータは、治療薬抗体の臨床有効性に対するADCCの関連性を支持している(例えば、Weng WK, Levy R Two immunoglobulin G fragment C receptor polymorphisms independently predict response to rituximab in patients with follicular lymphoma. J Clin Oncol. 2003 Nov 1;21(21):3940-7. Epub 2003 Sep 15)。モノクローナル抗体と免疫細胞上のFcレセプターとの相互作用はADCCに寄与する。抗体のFcは、Fcレセプターに対する親和性の強化を示すために改変できる(Presta LG Engineering of therapeutic antibodies to minimize immunogenicity and optimize function. Adv Drug Deliv Rev. 2006 Aug 7;58(5-6):640-56. Epub 2006 May 23)。Fcレセプターに対するそのような親和性強化は、患者における抗腫瘍有効性の増加をもたらし得るADCC活性の増加を生じる。
【0034】
本セクションに記載する多様な実施態様では、CD33結合因子はCD33陽性癌(すなわち、それらの細胞表面にCD33過剰発現するか、又はCD33抗体による治療方法のために許容できると考えられるレベルでCD33を発現する癌細胞を含む癌)の治療に用いることができる。CD33結合因子はまた、同じタイプの正常組織と比較して非悪性エフェクター細胞上でCD33を過剰発現しない癌の治療に用いることができる。例えば、前記癌は非血液学的悪性疾患又は血液学的悪性疾患であり得る。具体的な例では、当該血液学的悪性疾患はCD33陽性であり、例えば急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、赤血球性白血病、急性巨核芽球性白血病、組織球性リンパ腫、骨髄性肉腫、マスト細胞増殖性異常又は脊髄形成異常症候群(MDS)であり得る。
本セクションに記載する多様な実施態様では、CD33結合因子は複合体を形成しない抗CD33抗体であり得る。例えば、抗体は、完全にヒト抗体、ヒト化又はキメラ抗体(例えばキメラ又はヒト化M195抗体)であり得る。抗体はまた別の抗体、例えばCD33との特異的結合についてM195抗体と競合する抗体であり得る。抗体はまたM195抗体と同じエピトープ又は異なるエピトープと結合できる。
【0035】
他の実施態様では、CD33結合因子は細胞毒素と結合させることができる(すなわち複合体を形成できる)。細胞毒素は、例えばペプチド毒素、例えばサポリン、リシン、クロロトキシン、シュードモナス外毒素、シュードモナス内毒素又はジフテリア毒素であり得る。細胞毒素はまた、化学物質性(すなわち非ペプチド系)毒素、例えばカリケミシン、ドキソルビシン、カンプトテシン、ダウノルビシン又は他のDNA結合剤であり得る。細胞毒素はまたアウリスタチン、メイタンシノイド、ドラスタチン、又は他の微小管遮断剤であり得る。
抗CD33抗体であるCD33結合因子は、0.1mg/kg以下から約25mg/kg、好ましくは1.0mg/kgから約10mg/kgの用量で患者の静脈内又は皮下に投与できる。抗CD33抗体フラグメント又は他のCD33結合タンパク質であるCD33結合因子は、完全な抗体の0.1mg/kgから約25mg/kg、1.0mg/kgから約10mg/kgの用量と等価の投薬量で投与できる。CD33結合因子は、例えば毎日、毎週、2週間、3週間(すなわち3週間毎)又は毎月又は前記の組合せのスケジュールで患者の静脈内又は皮下に投与できる。CD33結合因子は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2カ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5カ月、少なくとも6ヶ月、又は必要な場合それより長い期間投与できる。いくつかの実施態様では、CD33結合因子の治療期(上記)の後に維持期が続き、維持期ではCD33結合因子の1回分用量は治療期中よりも少ない頻度で投与される。例えば、維持用量は、1−6ヶ月の間毎週、2週間毎、3週間毎又は毎月投与できる。維持期の投薬量は治療期の投薬量と同じでもよい。
【0036】
緩解時の血液学的悪性疾患の治療
別の特徴では、患者で血液学的悪性疾患の再発を予防するか又は遅延させる方法が提供され、前記方法は、血液学的悪性疾患が緩解している患者に有効投薬量のCD33結合因子を投与し、潜在的な血液学的悪性疾患(例えば白血病)の再発の予防又は遅延をもたらすことによる。CD33結合因子は、血液学的悪性疾患(すなわち白血病細胞)の表面のCD33及び/又は非悪性エフェクター細胞に特異的に結合する。
本開示では、“患者”は典型的には血液学的悪性疾患の治療を受けているか、又は血液学的悪性疾患を有すると診断されたヒトである。いくつかの実施態様では、血液学的悪性疾患はCD33陽性血液学的悪性疾患である。血液学的悪性疾患には、白血病(例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄原性白血病(AML)、慢性骨髄原性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、毛様細胞白血病)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。関連する血液の異常には、脊髄形成異常症候群(MDS)、骨髄線維症、骨髄増殖性疾患(例えば真性赤血球増加症(PV、PCV又はPRV)、本態性血小板増加症(ET))及び軽鎖疾患によるアミロイドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0037】
“CD33陽性血液学的悪性疾患”という用語は、悪性疾患細胞の表面でのCD33の発現を特徴とする血液学的悪性疾患を指す。CD33陽性血液学的悪性疾患には、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、血小板白血病、脊髄形成異常症候群、骨髄増殖性異常、難治性貧血、前白血病症候群、リンパ性白血病、又は未分化白血病が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
いくつかの実施態様では、前記方法は、CD33陽性血液学的悪性疾患が緩解中の患者にCD33結合因子の有効レジメンを提供する工程を含み、それによって当該血液学的悪性疾患の再発を予防又は遅延させる。いくつかの実施態様では、患者は検出可能な血液学的悪性疾患細胞を欠いている。本明細書で用いられるように、“検出可能細胞の欠如”は標準的診断方法又は予後によって決定される。AMLが緩解した患者は、典型的には異常な臨床徴候の消散、正常な血球数への復帰及び骨髄における正常な造血作用(5%未満の芽細胞、1000‐1500を超える好中球数、100,000を超える血小板数及び白血病性クローンの消失(例えば以下を参照されたい:The Merck Manual, Sec. 11, Ch. 138 (17th ed. 1997): Estey, 2001, Cancer 92(5): 1059-1073))を示す。
CD33結合因子は、例えばCD33と特異的に結合する抗体であり、血液学的悪性疾患は急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、類胸腺細胞性白血病、脊髄形成異常症候群、骨髄増殖性異常、難治性貧血、前白血病症候群、リンパ性白血病、又は未分化白血病であり得る。
【0038】
いくつかの実施態様では、血液学的悪性疾患が緩解している患者はこれまで骨髄移植を受けていない。他の実施態様では、血液学的悪性疾患が緩解している患者はこれまで骨髄移植を受けている。骨髄移植は自己骨髄移植又は他者骨髄移植であり得る。
以下の癌タイプは本発明の抗体による治療に特に適切である:
以下を含む(ただしこれらに限定されない)血液の癌:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ芽球性B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性骨髄芽球性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性単芽球性白血病、急性赤白血病性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ球性白血病、急性未分化白血病、慢性骨髄球性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、毛様細胞白血病、多発性ミエローマ。
CD33結合因子による治療に適切な急性及び慢性白血病には以下が含まれる:リンパ芽球性、骨髄原性、リンパ球性、骨髄球性白血病及び血小板性白血病。さらにまた、脊髄形成異常症候群、骨髄増殖性異常、難治性貧血、前白血病症候群、リンパ性白血病、又は未分化白血病がCD33結合因子によって治療され得る。
【0039】
他の活性物質との組合せ
治療されるべき疾患に応じて、本発明のCD33結合因子は、それ自体で、或いは1つ以上の追加の治療薬(特にDNA損傷、DNA脱メチル化又は微小管結合因子剤から選択される)又は治療的に活性を有する化合物(脈管形成、シグナルトランスダクション経路又は癌細胞の有糸分裂チェックポイントを阻害するか又は免疫調節機能を有する(IMID))と一緒に用いることができる。
追加の治療薬は、同時に(場合によって同じ医薬調製物の成分として)、又はCD33結合因子の投与前若しくは投与後に投与することができる。
ある種の実施態様では、追加の治療薬は、EGFRファミリー、VEGF、IGF-1R、インスリンレセプター、AuroraA、AuroraB、PLK及びPI3キナーゼ、FGFR、PDGFR、Raf、KSP又はPDK1の阻害剤の群から選択される1つ以上の阻害剤であり得るが、ただしこれらに限定されない。
追加の治療薬のさらに別の例は、CDK、Akt、Src、Bcr-Abl、cKit、cMet/HGF、Her2、Her3、c-Myc、Flt3、HSP90の阻害剤、ヘッジホッグアンタゴニスト、JAK/STAT、Mek、mTor、NFkappaB、プロテアソーム、Rhoの阻害剤、Wntシグナリング若しくは切痕(Notch)シグナリングの阻害剤、又はユビキチン化経路阻害剤である。
【0040】
追加の治療薬のさらに別の例は、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼIIの阻害剤、マルチチロシンキナーゼ阻害剤、CXCR4アンタゴニスト、IL3RA阻害剤、RARアンタゴニスト、KIR阻害剤、免疫治療ワクチン、TUB阻害剤、Hsp70誘発剤、IAPファミリー阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、TNF阻害剤、ErbB1レセプターチロシンキナーゼ阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、JAK2阻害剤、RR阻害剤、アポトーシス誘発剤、HGPRTアーゼ阻害剤、ヒスタミンH2レセプターアンタゴニスト及びCD25レセプターアゴニストである。
オーロラ阻害剤の例は、PHA-739358、AZD-1152、AT-9283、CYC-116、R-763、VX-667、MLN-8045、PF-3814735、SNS-314、VX-689、GSK-1070916、TTP-607、PHA-680626、MLN-8237、BI847325及びENMD-2076であるが、ただしこれらに限定されない。
PLK阻害剤の例はGSK-461364、BI2536及びBI6727である。
raf阻害剤の例は、BAY-73-4506(VEGFR阻害剤でもある)、PLX-4032、RAF-265(VEGFR阻害剤でもある)、ソラフェニブ(sorafenib)(VEGFR阻害剤でもある)、XL-281、ネババー(Nevavar)(VEGFRの阻害剤でもある)及びPLX4032である。
【0041】
KSP阻害剤の例は、イスピネシブ(ispinesib)、ARRY-520、AZD-4877、CK-1122697、GSK-246053A、GSK-923295、MK-0731、SB-743921、LY-2523355及びEMD-534085である。
Src及び/又はbcr-abl阻害剤の例は、ダサチニブ(dasatinib)、AZD-0530、ボスチニブ(bosutinib)、XL-228(IGF-1R阻害剤でもある)、ニロチニブ(nilotinib)(PDGFR及びcKit阻害剤でもある)、イマチニブ(cKit阻害剤でもある)、NS-187、KX2-391、AP-24534(EGFR、FGFR、Tie2、Flt3阻害剤でもある)、KM-80及びLS-104(Flt3、Jak2阻害剤でもある)である。
PDK1阻害剤の例はAR-12である。
Rho阻害剤の例はBA-210である。
PI3 キナーゼの例は、PX-866、PX-867、BEZ-235(mTor阻害剤でもある)、XL-147及びXL-765(mTor阻害剤でもある)、BGT-226、CDC-0941である。
cMet又はHGF阻害剤の例は、XL-184(VEGFR、cKit、Flt3阻害剤でもある)、PF-2341066、MK-2461、XL-880(阻害剤でもある)、MGCD-265(VEGFR、Ron、Tie2阻害剤でもある)、SU-11274、PHA-665752、AMG-102、AV-299、ARQ-197、MetMAb、CGEN-241、BMS-777607、JNJ-38877605、PF-4217903、SGX-126、CEP-17940、AMG-458、INCB-028060及びE-7050である。
【0042】
c-Myc阻害剤の例はCX-3543である。
Flt3阻害剤の例は、AC-220(cKit及びPDGFR阻害剤でもある)、KW-2449、LS-104(bcr-abl及びJak2阻害剤でもある)、MC-2002、SB-1317、レスタウルチニブ(lestaurtinib)(VEGFR、PDGFR、PKC阻害剤でもある)、TG-101348(JAK2阻害剤でもある)、XL-999(cKit、FGFR、PDGFR及びVEGFR阻害剤でもある)、スニチニブ(sunitinib)(PDGFR、VEGFR及びcKit阻害剤でもある)、及びタンズチニブ(tandutinib)(PDGFR及びcKit阻害剤でもある)である。
HSP90阻害剤の例は、タネスピマイシン(tanespimycin)、アルベスピマイシン(alvespimycin)、IPI-504、STA-9090、MEDI-561、AUY-922、CNF-2024及びSNX-5422である。
JAK/STAT阻害剤の例は、CYT-997(微小管とも相互作用する)、TG-101348(Flt3阻害剤でもある)、及びXL-019.である。
Mek阻害剤の例は、ARRY-142886、AS-703026、PD-325901、AZD-8330、ARRY-704、RDEA-119、及びXL-518である。
mTor阻害剤の例は、テムシロリムス(temsirolimus)、デフォロリムス(deforolimus)(VEGF阻害剤でもある)、エベロリムス(everolimus)(VEGF阻害剤でもある)、XL-765(PI3キナーゼ阻害剤でもある)及びBEZ-235(PI3キナーゼ阻害剤でもある)である。
【0043】
Akt阻害剤の例は、ペリフォシン(perifosine)、GSK-690693、RX-0201及びトリシリビン(triciribine)である。
cKit阻害剤の例は、マスチニブ(masitinib)、OSI-930(VEGFR阻害剤でもある)、AC-220(Flt3及びPDGFR阻害剤でもある)、タンズチニブ(Flt3及びPDGFR阻害剤でもある)、アキシチニブ(axitinib)(VEGFR及びPDGFR阻害剤でもある)、スニチニブ(Flt3、PDGFR及びEGFR阻害剤でもある)、及びXL-820(VEGFR及びPDGFR阻害剤でもある)、イマチニブ(bcr-abl阻害剤でもある)、ニロチニブ(nilotinib)(bcr-abl及びPDGFR阻害剤でもある)である。
ヘッジホッグアンタゴニストの例は、IPI-609、CUR-61414、GDC-0449、IPI-926及びXL-139である。
CDK阻害剤の例は、セリシクリブ(seliciclib)、AT-7519、P-276、ZK-CDK(VEGFR2及びDGFRもまた阻害する)、PD-332991、R-547、SNS-032、PHA-690509、PHA-848125及びSCH-727965である。
プロテアーゼ阻害剤の例は、ボルテゾミブ(bortezomib)、カルフィルゾミブ(carfilzomib)、及びNPI-0052(NFkappaB阻害剤でもある)である。
プロテアソーム阻害剤/NFkappaB経路阻害剤の例は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、NPI-0052、CEP-18770、MLN-2238、PR-047、PR-957、AVE-8680及びSPC-839である。
ユビキチン化経路の阻害剤の例はHBX-41108である。
脱メチル化剤の例は5-アザシチジン及びデシタビンである。
【0044】
抗脈管形成剤の例は、FGFR、PDGFR及びVEGF(R)の阻害剤、並びにサリドマイドであり、例えば以下から選択される(ただしこれらに限定されない):ベバシズマブ、モテサニブ、CDP-791、SU-14813、テラチニブ、KRN-951、ZK-CDK(CDK阻害剤でもある)、ABT-869、BMS-690514、RAF-265、IMC-KDR、IMC-18F1、IMiD、サリドマイド、CC-4047、レナリドマイド(lenalidomide)、ENMD-0995、IMC-D11、Ki-23057、ブリバニブ(brivanib)、セディラニブ(cediranib)、1B3、CP-868596、IMC-3G3、R-1530(Flt3阻害剤でもある)、スニチニブ(cKit及びFlt3阻害剤でもある)、アキシチニブ(cKit阻害剤でもある)、レスタウルチニブ(Flt3及びPKC阻害剤でもある)、バタラニブ(Flt3及びcKit阻害剤でもある)、パゾパニブ(pazopanib)、PF-337210、アフリバーセプト(aflibercept)、E-7080、CHIR-258、ソラフェニブトシレート(Raf阻害剤でもある)、バンデタニブ、CP-547632、OSI-930、AEE-788(EGFR及びHer2阻害剤でもある)、BAY-57-9352(Raf阻害剤でもある)、BAY-73-4506(Raf阻害剤でもある)、XL-880(cMet阻害剤でもある)、XL-647(EGFR及びEphB4阻害剤でもある)、XL-820(cKit阻害剤でもある)、ニロチニブ(cKit及びbrc-abl阻害剤でもある)、CYT-116、PTC-299、BMS-584622、CEP-11981、ドビチニブ(dovitinib)、CY-2401401、ENMD-2976及びBIBF1120。
【0045】
追加の治療薬はまたEGFR阻害剤から選択でき、前記は小分子EGFR阻害剤又は抗EGFR抗体であり得る。抗EGFR抗体の例(ただしこれらに限定されない)はセツキシマブ、パニツムマブ(panitumumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ザルツズマブ(zalutumumab)であり、小分子EGFR阻害剤の例はゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、バンデタニブ(vandetanib)(VEGFR阻害剤でもある)及びアファチニブ(afatinib)(Her2阻害剤でもある)である。EGFR調節物質の別の例はEGF融合毒素である。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なさらに別のEGFR及び/又はHer阻害剤は、ラパチニブ(lapatinib)、トラスツズマブ(trastuzumab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、XL-647、ネラチニブ(neratinib)、BMS-599626 ARRY-334543、AV-412、mAB-806、BMS-690514、JNJ-26483327、AEE-788(VEGFR阻害剤でもある)、AZD-8931、ARRY-380 ARRY-333786、IMC-11F8、Zemab、TAK-285、AZD-4769及びアファチニブ(Her2及びEGFR阻害剤でもある)である。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なDNAポリメラーゼ阻害剤はAra-C/シタラビン、クロラール(Clolar)/クロファラビン(clofarabine)である。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はビダザ(Vidaza)/アザシチジンである。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なアポトーシス誘発剤はトリセノックス(Trisenox)/三酸化砒素である。
【0046】
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なトポイソメラーゼII阻害剤は、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン及びミトキサントロンである。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なRARアンタゴニストはベサノイド(Vesanoid)/トレチノイン(tretinoin)である。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なHGPRTアーゼ阻害剤はメルカプト/メルカプトプリンである。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なヒスタミンH2レセプターアンタゴニストはセプレン(Ceplene)/二塩酸ヒスタミンである。
本発明のCD33結合因子との組合せに有用なCD25レセプターアゴニストはIL-2である。
追加の薬剤はまたIGF-1R及びインスリンレセプター経路を標的とする薬剤から選択できる。そのような薬剤には、IGF-1Rと結合する抗体(例えばCP-751871、AMG-479、IMC-A12、MK-0646、AVE-1642、R-1507、BIIB-022、SCH-717454、rhu Mab IGFR)及びIGF-1Rのキナーゼドメインを標的とする新規な化学物質(例えばOSI-906又はBMS-554417、XL-228、BMS-754807)が含まれる。
本発明のCD33結合因子と治療において有利に組合せることができる他の薬剤はCD20を標的とする分子であり、CD20特異的抗体、例えばリツキシマブ、LY-2469298、オクレリズマブ(ocrelizumab)、MEDI-552、IMMU-106、GA-101(= R7159)、XmAb-0367、オファツムマブ(ofatumumab)、放射能標識CD20抗体、例えばトシツムマブ(tositumumab)及びイブリツマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan)、又は他のCD20指向タンパク質、例えばSMIP Tru015、PRO-131921、FBT-A05、ベルツズマブ(veltuzumab)、R-7159が含まれる。
【0047】
CD33結合因子は、白血球で発現される他の表面抗原の阻害剤、特に抗体又は抗体様分子と組み合わせることができる。前記分子は例えば、抗CD2(シプリツマブ(siplizumab))、抗CD4(ザノリマブ(zanolimumab))、抗CD19(MT-103、MDX-1342、SAR-3419、XmAb-5574)、抗CD22(エプラツズマブ(epratuzumab))、抗CD23(ルミリキシマブ(lumiliximab))、抗CD30(イラツムマブ(iratumumab))、抗CD32B(MGA-321)、抗CD38(HuMax-CD38)、抗CD40(SGN40)、抗CD52(アレムツズマブ)、抗CD80(ガリキシマブ(galiximab)である。
CD33結合因子と組み合わされる他の薬剤は、免疫毒素、例えばBL-22(抗CD22免疫毒素)、イノツズマブオゾガミシン(inotuzumab ozogamicin)(抗CD23-カリケミシン複合物)、RFT5.dgA(抗CD25-リシン毒素A鎖)、SGN-35(抗CD30-アウリスタチンE複合物、及びゲンツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin )(抗CD33-カリケミシン複合物)、MDX-1411(抗CD70複合物)、又は放射能標識抗体、例えば
90Y-エプラツズマブ(epratuzumab)(抗CD22放射性免疫複合物)である。
さらにまた、CD33結合因子は、免疫調節物質、アポトーシスを誘発するか又はシグナルトランスダクション経路を改変する薬剤、例えば抗体と組み合わせることができる。前記は例えば、TRAILレセプター調節物質、マパツムマブ(mapatumumab)(TRAIL-1レセプターアゴニスト)、レキサツムマブ(lexatumumab)(TRAIL-2レセプターアゴニスト)、チガツズマブ(tigatuzumab)、アポマブ(Apomab)、AMG-951及びAMG-655;抗HLA-DR抗体(例えば1D09C3)、抗CD74、破骨細胞分化因子リガンド阻害剤(例えばデノスマブ(denosumab))、BAFFアンタゴニスト(例えばAMG-623a)又はToll様レセプターのアゴニスト(例えばTLR-4又はTLR-9)である。
【0048】
本発明のCD33結合因子と組み合わせて用いることができる他の薬剤は以下から選択される(ただしこれらに限定されない):ホルモン、ホルモンアナローグ及び抗ホルモン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、フルベストラント、酢酸メゲストロール、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、フィナステリド、酢酸ブセレリン、フルドロコーチゾン、フルオキシメステロン、メドロキシプロジェステロン、カプロン酸ヒドロキシプロジェステロン、ジエチルスチルベストロール、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン/等価物、オクテロチド、アルゾキシフェン、パシレオチド、バプレオチド、アドレノコルチコステロイド/アンタゴニスト、プレドニゾン、デキサメタゾン、アイノグルテチミド);アロマターゼ阻害剤(例えばアナトロゾール、レトロゾール、リアロゾール、エクセメスタン、アタメスタン、フォルメスタン)、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、アバレリクス、セトロレリクス、デスロレリン、ヒストレリン、トリプトレリン);抗代謝薬、例えばアンチフォレート(例えばメトトレキセート、トリメトトレキセート、ペメトレキシド)、ピリミジンアナローグ(例えば5-フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、デシタビン、ネララビン、5-アザシチジン及びゲムタシタビン)、プリン及びアデノシンアナローグ、例えばメルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、クラドリビン及びペントスタチン、シタラビン、フルダラビン、クロファラビン;抗腫瘍抗生物質、例えば、アントラサイクリン、例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン及びイダルビシン、マイトマイシン-C、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、スプリカマイシン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、ミトキサントロンイダルビシン、ピキサトロン、ストレプトゾシン、アフィジコリン;白金誘導体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ロバプラチン、サトラプラチン;アルキル化剤、例えばエストラムスチン、セムスチン、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イフォスファミド、ヒドロキシウレア、テモゾロミド、ニトロソウレア、例えばカルムスチン及びロムスチン、チオテパ;抗有糸分裂剤、例えばビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンフルニン及びビンクリスチン、並びにタキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセル及びそれらの処方物、ラロタキセル、シモタキセル、及びエポシロン、例えばイキサベピロン、パツピロン、ZK-EPO;トポイソメラーゼ阻害剤、例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシド及びエトポフォス、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、バノキサントロン、カンポテシン、並びに雑多な化学療法剤、例えばレチン酸誘導体、アミフォスチン、アナグレリド、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン-2、プロカルバジン、N-メチルヒドラジン、ミトタン、及びポルフィマー、ベキサロテン、セロコキシブ、エチレンメラミン/メチル-メラミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミド、ヘキサメチルメラミン及び酵素、L-アスパラギナーゼ、L-アラギナーゼ及びメトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、RSU1069、EO9、RB6145、SR4233、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン、5-ヨードデオキシウリジン、ブロモデオキシシチジン、エリスロヒドロキシノニル-アデニン、アントラセネジオン、GRN-163L(競合性テロメラーゼテンプレートアンタゴニスト)、SDX-101(PPARアゴニスト)、タラボスタット、フォロデシン(PNP阻害剤)、アタシセプト(可溶性レセプター照準TNFファミリーメンバーBLyS及びAPRIL)、TNF-アルファ中和剤(Enbrel、Humira、Remicade)、XL-844(CHK1/2阻害剤)、VNP-40101M(DNAアルキル化剤)、SPC-2996(アンチセンスbcl2阻害剤)、オバトクラックス(bcl2阻害剤)、エンザスタウリン(PKCベータ調節物質)、ボリニスタット(HDAC阻害剤)、ロミデプシン(HDAC阻害剤)、AT-101(Bcl-2/Bcl-xL阻害剤)、プリチデプシン(多作用性デプシペプチド)、SL-11047(ポリアミン代謝調節物質)。
本発明のCD33結合因子はまた以下を含む他の治療方法と組み合わせて用いることができる:外科手術、幹細胞移植、放射線療法、内分泌療法、生物学的応答改変物質、過温及び寒冷療法、並びに任意の副作用軽減薬(例えば制吐薬)、G-CSF、GM-CSF、光感作剤、例えばヘマトポルフィリン誘導体、ホトフィリン、ベンゾポルフィリン誘導体、Npe6、錫ポリフィリン、フェオボリド-a、バクテリオクロロフィル-a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン。
【0049】
医薬組成物及び投与方法
CD33結合因子は、当該組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態であり得る。例えば、組成物は固体又は液体形であり得る。好ましい適用態様は、輸液又は注射(静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内)による非経口投与であるが、他の適用態様(例えば吸入、経皮、鼻内、頬側及び腫瘍内投与)も可能である。非経口投与には、皮下注射、静脈内、筋肉内、基質内注射又は輸液技術が含まれる。ある特徴では、組成物は非経口的に投与される。さらに別の特徴では、組成物は静脈内に投与される。
医薬組成物は、患者への当該組成物の投与中に化合物の生体利用を可能にするように処方することができる。組成物は1つ以上の投薬ユニットの形態をとることができ、ここでは例えばエーロゾル形の化合物の容器は複数の投薬ユニットを保持することができる。
医薬組成物の調製に用いられる物質は、用いられる量で非毒性であり得る。医薬組成物中の活性成分の最適投薬量は多様な因子に左右されることは当業者には明白であろう。関連する因子には、患者のタイプ(例えばヒト)、化合物の具体的形状、投与態様及び用いられる組成物が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0050】
医薬的に許容できる担体又はビヒクルは粒状でもよく、したがって組成物は例えば粉末形状であり得る。担体は、組成物が例えば注射可能な液体であるように液体でもよい。組成物は例えば非経口的注射のために液状形でもよい。注射による投与のための組成物では、1つ以上の界面活性剤、保存料、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定化剤及び等張剤もまた含むことができる。
液体組成物はまた、それらが溶液であれ懸濁液であれ又は他の類似の形状であれ、1つ以上の以下のものを含むことができる:無菌的希釈剤、例えば注射用の水、食塩水溶液、好ましくは生理学的食塩水、リンゲル溶液、等張な塩化ナトリウム、不揮発性油、例えば合成モノ-又はジ-グリセリド(前記は溶媒又は懸濁媒体として供することができる)、ポリエチレングリコール、グリセリン、シクロデキストリン、プロピレングリコール又は他の溶媒;安定化剤、例えばアミノ酸;界面活性剤、例えばポリソルベート;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩;及び張度調節用薬剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。非経口組成物は、アンプル、使い捨て注射筒又はマルチ用量バイアル(ガラス、プラスチック又は他の素材で製造される)に封入できる。生理学的食塩水は例示的アジュバントである。注射可能組成物は好ましくは無菌的である。
【0051】
CD33結合因子はまた、乾燥させるか(凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、臨界近辺又は臨界超過気体による乾燥、真空乾燥、空気乾燥)、沈殿させるか、又は結晶化させるか、マイクロカプセルに封入することができる。前記は、例えばコアセルベーション技術によって又は界面重合によって、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン及びポリ-(メチルメタクリレート)を、コロイド薬剤デリバリー系(例えばリポソーム、アルブミン微小球、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)で、マクロエマルジョンで用いて調製するか、又は例えばpcmc(タンパク質被覆微小結晶(
protein
coated
micro
crystal))技術によって担体若しくは表面に沈殿させるか又は固定させることができる。そのような技術は以下に開示されている:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, Hendrickson R. Ed。
【0052】
具体的な異常又は症状の治療で有効な組成物の量は当該異常又は症状に左右され、標準的な臨床技術によって決定できる。さらにまた、in vitro又はin vivoアッセイを場合によって利用して、最適投薬範囲の認定に役立てることができる。組成物で用いられるべき厳密な用量もまた投与ルート及び疾患又は異常の重篤性に左右され、担当医の判定及び各患者の周囲状況にしたがって決定されるべきである。
組成物は、適切な投薬量が得られるように医薬又は薬剤の有効量を含む。典型的には、この量は組成物の重量で少なくとも約0.01%の医薬又は薬剤である。経口投与を意図するときは、この量は組成物の重量で約0.1%から約80%の範囲で変動し得る。ある特徴では、経口組成物は、組成物の重量で約4%から約50%の化合物を含むことができる。さらに別の特徴では、本組成物は、非経口投薬ユニットが重量で約0.01%から約2%の化合物を含むように調製される。
静脈内投与のためには、組成物は患者の体重1kgにつき約1から約50mgの医薬又は薬剤を含むことができる。ある特徴では、組成物は、患者の体重1kgにつき約1、1.5又は2.5から約50mgの医薬又は薬剤を含むことができる。別の特徴では、投与される量は、約1、1.5又は2.5から約25mg/kg体重の医薬又は薬剤の範囲にあるであろう。
いくつかの実施態様では、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kgにつき0.1mgから約50mg未満である。(mg/mm
2への変換のために、BSA 1.8m
2及び体重80kgを用いることができる。)
【0053】
本明細書で考察するように、CD33結合因子は、例えば毎日、毎週、2週間毎、3週間毎又は毎月患者に投与するスケジュールで患者の静脈内又は皮下に投与することができる。例えば、CD33結合因子は毎週、2から10週間の期間、典型的には3−6週間の期間投与することができる。いくつかの実施態様では、CD33結合因子の投薬レジメンは、投薬サイクル中の抗体の血中濃度を少なくとも5μg/mL又は少なくとも10μg/mLで維持する。CD33結合因子は、例えば1−8周期又はそれより多い周期で投与できる。いくつかの実施態様では、CD33結合因子は長期的に対象者に投与される。
例示すれば、本発明は、癌(例えば骨髄性白血病)を0.1mg/kgから50mg/kg(例えば約1.5−8又は2.5−8mg/kg)の本発明の抗CD33抗体を毎週投与することによって治療する方法を含む。この治療は、通常約1−3ヶ月、典型的には約2ヶ月継続させることができる。ある実施態様では、投与スケジュールは芽細胞の減少が認識されるまで維持される。例えば、投与は約6ヶ月まで継続できる。この治療の後により頻度の少ない投与スケジュールを伴うことができ、前記は例えば2週間毎(又は1ヶ月に2回)の投与を含む。この投与スケジュールを1、2、3、4、5、6ヶ月又はそれより長く維持して、芽細胞の減少及び/又は緩解を持続させることができる。
【0054】
いくつかの実施態様では、輸液反応を最小限にするために、予防薬をCD33結合因子とともに投与することができる。適切な予防薬には、例えばメチルプレドニソロン、ジフェニルドラミン、アセトアミノフェン、又は他の適切な薬剤が含まれる。予防薬は、CD33結合因子の前又はほぼ同じときに投与できる。
医薬又は薬剤又は組成物は、任意の便利なルート、例えば輸液又はボーラス注射によって、又は上皮基底層若しくは粘膜基底層(例えば口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜など)からの吸収によって投与できる。投与は全身的でも局所的でもよい。多様なデリバリー系(例えばリポソーム、ミクロ粒子、ミクロカプセル、カプセルなどに被包化)が公知であり、化合物の投与に用いることができる。ある種の実施態様では、2つ以上の医薬又は薬剤又は組成物が患者に投与される。
1つ以上の医薬又は薬剤又は組成物は、当該医薬又は薬剤にとって適切なように、治療を必要とする領域に局所的に投与することが所望され得る。これは、例えば手術中の局所輸液;局部適用、例えば手術後の創傷包帯剤と組み合わせて;注射によって;カテーテルによって;座薬によって;又はインプラントによって達成できる(ただし前記に限定されない)。インプラントは、多孔性、無孔性、又はゼラチン様物質(膜(例えばシアラスチック膜)又は繊維を含む)である。ある実施態様では、投与は、癌の部位(又は以前の癌の部位)、腫瘍又は新形成若しくは前新形成組織の直接注射によって実施できる。
【0055】
医薬又は薬剤又は組成物は、制御放出系(例えばポンプ又は多様なポリマー物質)でデリバーできる。さらに別の実施態様では、制御放出系は、医薬又は薬剤又は組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって全身的用量の一部分のみを必要とする(例えば以下を参照されたい:Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp. 115-138, 1984)。Langerの概論(1990, Science 249: 1527-1533)で考察されている他の制御放出系を用いてもよい。
医薬又は薬剤は、動物(特にヒト)への静脈内投与に適した医薬組成物として、当該医薬又は薬剤に適切なように日常的な方法にしたがって処方される。典型的には、静脈内投与用担体又はビヒクルは無菌的で等張な緩衝水溶液である。必要な場合には、組成物はまた可溶化剤を含むことができる。静脈内投与用組成物は、注射部位の痛みの緩和のために場合によって局所麻酔剤(例えばリグノカイン)を含むことができる。一般的には、これら成分は別々に又はユニット投薬形中に一緒に混合して、例えば活性薬剤量を記した密閉容器(例えばアンプル又はサシェ)中の凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。医薬又は薬剤が輸液により投与される場合は、前記は、例えば無菌的な医薬等級の水又は食塩水を含む輸液ボトルを用いて懸濁することができる。医薬又は薬剤が注射によって投与される場合は、成分を投与前に混合できるように注射用滅菌水又は食塩水のアンプルを提供できる。
【0056】
治療薬剤の組成物はまた、許容される投薬形にしたがって、例えば錠剤、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁物、顆粒、散剤、乳濁液、カプセル、シロップ又はエリキシルとして投与できる。経口投与組成物は、1つ以上の随意の薬剤(例えば甘味料、例えばフラクトース、アスパルテーム又はサッカリン;香料、例えばペパーミント、冬緑油、又はチェリー;着色剤;及び保存料)を含み、医薬的に美味な調製物を提供できる。さらにまた、錠剤またはピル形の場合、組成物を被覆して胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせ、それによって長期間にわたる持続作用を提供できる。浸透圧活性を有する駆動性化合物を取り巻く選択的透過性膜もまた経口投与薬又は薬剤に適切である。これら後者のプラットフォームでは、カプセルを取り巻く環境に由来する液体は駆動化合物によって吸収され、前記は膨潤して薬剤又は薬剤組成物を隙間から放出する。これらのデリバリープラットフォームは、即時放出処方物の有スパイクプロフィルとは対照的に、本質的に零次反応型のデリバリープロフィルを提供できる。時間遅延物質、例えば一ステアリン酸グリセロール又はステアリン酸グリセロールもまた用いることができる。
【0057】
組成物は、個体又は液体の投薬ユニットの物理的形状を改変する多様な物質を含むことができる。例えば、組成物は活性成分の周囲のコーティングシェルを形成する物質を含むことができる。コーティングシェルを形成する物質は典型的には不活性で、例えば砂糖、シェラック及び他の腸溶皮物質から選択できる。或いは、活性成分はゼラチンカプセルに入れてもよい。
組成物は、その必要がある患者に、担当医が決定する頻度で又は期間で投与することができる。組成物は、1日、2日、3日、5日、7日、10日、14日、21日、28日、1カ月、2カ月又はそれより長い期間投与できる。組成物は、1日〜2ヶ月間、又はそれより長い任意の期間投与できることは理解されよう。
【0058】
抗体の作製
抗体は、抗体の合成に有用な任意の方法を用いて、特に、例えば組換え発現又は化学合成によって作製できる。
抗体又はそのフラグメント若しくは誘導体の組換え発現は、典型的には抗体をコードする核酸の構築を必要とする。抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、抗体又はそのポリペプチドをコードする核酸は化学的に合成したオリゴヌクレオチドからアッセンブリングすることができる(例えば以下に記載されている:Kutmeier at al., 1994, BioTechniques 17: 242)。前記は、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップオリゴヌクレオチドの合成、これらオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、及びその後の連結オリゴヌクレオチドの、例えばPCRによる増幅を必要とする。
或いは、抗体又はそのポリペプチドをコードする核酸分子を適切な供給源から生成することができる。具体的な抗体をコードする核酸を含むクローンは利用できないが当該抗体の配列は公知である場合、当該抗体をコードする核酸は、適切な供給源(例えば抗体cDNAライブラリー又は免疫グロブリンを発現する任意の組織若しくは細胞から作製されるcDNA)から、例えば当該配列の3’及び5’末端とハイブリダイズできる合成プライマーを用いるPCR増幅によって、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いるクローニングによって入手できる。
【0059】
特定の抗原を特異的に認識する抗体(又は、そのような免疫グロブリンをコードする核酸をクローニングするためのcDNAライブラリーの供給源)が市場で入手できない場合、特定の抗原に特異的な抗体は、当業界で公知の任意の方法によって、例えば患者(又は適切な動物モデル(例えばウサギ又はマウス)を免疫してポリクローナル抗体を作製することによって、又はより好ましくは、文献に記載されたように(Kohler and Milstein, 1975, Nature 256:495-497;Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72;Cole et al., 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)モノクローナル抗体を作製することによって作製することができる。或いは、抗体の少なくともFab部分をコードするクローンは、Fab発現ライブラリーを特異的抗原と結合するFabフラグメントについてスクリーニングすることによって(例えばHuseら(1989, Science 246, 1275-1281)が記載したように)、又は抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって(例えば以下を参照されたい:Clackson et al, 1991, Nature 352:624;Hane et al, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937)入手できる。
【0060】
抗体の少なくとも可変ドメインをコードする核酸配列を入手したら、前記を当該抗体の定常領域をコードする配列を含むベクターに導入できる(例えば以下を参照されたい:国際出願公開公報WO 86/05807, WO 89/01036;及び米国特許5,122,464号)。完全な抗体分子の発現を可能にする完全な軽鎖又は重鎖を含むベクターが利用可能である。続いて、抗体をコードする核酸を用いて、鎖内のジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域のシステイン残基を、スルフヒドリル基を含まないアミノ酸残基で置換(又は欠失)するために必要な置換又は欠失を導入することができる。そのような改変は、ヌクレオチド配列で特異的な変異又は欠失を導入するために当業界で公知の任意の方法によって実施できる。前記方法は、例えば化学的変異導入及びin vitro部位指定変異導入であるが、ただしこれらに限定されない(例えば以下を参照されたい:Hutchinson et al, 1978, J. Biol. Chem. 253:6551)。
さらにまた、“キメラ抗体”の作製のために複数の技術が開発されている(例えば以下を参照されたい:Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 851-855; Neuberger et al., 1984, Nature 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature 314:452-454)。キメラ抗体は種々の部分が異なる動物種から誘導される分子で、例えば、ネズミモノクローナル抗体から誘導された可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体(例えばヒト化抗体)である。
【0061】
抗体をコードする核酸配列が得られたら、当業界で公知の技術を用い組換えDNA技術によって抗体産生ベクターを作製することができる。当業者に公知の方法を用いて、抗体コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えばin vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組み換えが含まれる。例えば以下に記載された技術を参照されたい:Sambrook et al., 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual. 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY;Sambrook et al., 2001; Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Publish., Cold Spring Harbor, N.Y.;Ausubel et al., eds., 1993-2006, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY。
抗体のヌクレオチド配列を含む発現ベクター又は抗体のヌクレオチド配列は、通常の技術(例えばエレクトロポレーション、リポソーム処理、リン酸カルシウム沈殿又は形質導入)によって宿主細胞に移転させ、続いて得られた細胞を通常の技術により培養して抗体を製造することができる。具体的な実施態様では、抗体の発現は構成的、誘導性又は組織特異的プロモーターによって調節される。
組換え抗体の発現に用いられる宿主細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌(Escherichia coli))又は好ましくは真核細胞(特に組換え免疫グロブリン分子の発現のため)であり得る。特に、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要な中間的初期遺伝子プロモーターを含むベクターと連携させた哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が、免疫グロブリンのための効率的な発現系である(例えば以下を参照されたい:Foecking et al., 1986, Gene 45:101; Cockett el al., 1990, BioTechnology 8:2)。CHO細胞株は例えばDG44又はCHO-Sであり得る。別の例では、抗体はCHEF系を用いて発現できる(例えば米国特許5,888,809号を参照されたい)。
【0062】
多様な他の宿主-発現系を用いて抗体を発現させることができる。そのような宿主-発現系は、それによって抗体のコード配列が生成され続いて前記を精製することができるビヒクルであるが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換するか又は前記配列をトランスフェクトしたときは、in situで抗体免疫グロブリン分子を発現する細胞でもある。これらの系には、免疫グロブリンコード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した微生物、例えば細菌(例えば大腸菌及び枯草菌(B. subtilis));抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母菌(例えばサッカロミセス・ピキア(Saccharomyces pichia));免疫グロブリンコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)及びタバコモザイクウイルス(TMV))を感染させた、又は組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換させた植物細胞系;又は哺乳動物細胞のゲノム(例えばメタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)から誘導したプロモーターを含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、CHO-S、BH、293、293T又は3T3細胞)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0063】
細菌系では、多数の発現ベクターが発現される抗体の使用目的に応じて有利に選択できる。例えば、大量のそのようなタンパク質を製造しなければならないときは、容易に精製される高レベルの融合タンパク生成物の発現を指令するベクターが所望されよう。そのようなベクターには、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al, 1983, EMBO J. 2:1791-94)(前記ベクターでは、融合タンパク質が生成されるように、抗体コード配列は個々にlacZコード領域とインフレームでベクターに連結される);pINベクター(Inouye and Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109; Van Heeke and Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509);及び類似のものが含まれるが、ただしこれらに限定されない。pGEXベクターもまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドの発現に用いることができる。一般的には、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズとの吸着及び結合とそれに続く遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングした標的遺伝子生成物をGST成分から遊離させることができるように、トロンビン又はXa因子のプロテアーゼ切断部位を含むように設計されている。
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)又はドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)由来の類似ウイルスをベクターとして用い、外来遺伝子を発現させることができる。このウイルスはスポドピエラ・フルギペンタ(Spodopiera frugipenta)細胞で増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)で個々にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。
【0064】
哺乳動物の宿主細胞では、多数のウイルスベースの発現系を用いることができる。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合には、問題の抗体コード配列は、アデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーター及び三分割リーダー配列に連結することができる。続いてこのキメラ遺伝子をin vitro又はin vivo組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。このウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1又はE3)への挿入は、生存能力を有し感染細胞で免疫グロブリン分子を発現できる組換えウイルスを生じる(例えば以下を参照されたい:Logan and Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359)。特異的な開始シグナルもまた、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のために要求され得る。それらシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。さらにまた、開始コドンは所望のコード配列のリーディングフレームと作動可能な関係を有し、完全な挿入物の翻訳が担保される。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは多様な起源(天然および合成の両方)であり得る。発現効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むことによって強化できる(例えば以下を参照されたい:Bittner et al., 1987, Methods in Enzymol. 153:51-544)。
【0065】
さらにまた、宿主細胞は、挿入配列の発現を調節するために、又は所望の特殊な態様で遺伝子生成物を改変又はプロセッシングするために選択することができる。タンパク生成物のそのような改変(例えばグリコシル化)及びプロセッシング(例えば切断)はタンパク質の機能に重要である。種々の細胞が、タンパク質及び遺伝子生成物の翻訳後処理及び改変のために特徴的で特異的なメカニズムを有している。発現された外来タンパク質の正確な改変及びプロセッシングを担保するために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。この目的のために、一次転写物の適切なプロセッシング、グリコシル化、及び遺伝子生成物のリン酸化のための細胞性機構を保有する真核細胞性宿主細胞を用いることができる。そのような哺乳動物宿主細胞には、CHO(例えばDG44又はCHO-S)、VERY、BH、HeIa、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、CRL7030及びHs578Bstが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
組換えタンパク質の長期的な高収量生産のためには安定的な発現が好ましい。例えば、抗体を安定的に発現する細胞株を操作することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを用いるのではなく、適切な発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選別マーカーによって制御されたDNAを用いて宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入に続いて、操作細胞を高栄養培地で1−2日間増殖させ、続いて選別培地に切り替えることができる。組換えプラスミドの選別可能マーカーは選別に対する耐性を付与し、細胞がそれらの染色体にプラスミドを安定的に組み込んで増殖し増殖中心を形成することを可能にする(続いてこの増殖中心をクローニングしさらに細胞株へと増殖させることができる)。この方法を有利に用いて、抗体を発現する細胞株を操作することができる。そのような操作細胞株は、当該抗体と直接的に又は間接的に相互作用する腫瘍抗原のスクリーニング及び評価で特に有用であり得る。
【0066】
多数の選別系を用いることができる。例えば、単純疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ(例えば以下を参照されたい:Wigler el al., 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(例えば以下を参照されたい:Szybalska and Szybalski, 1992, Proc. Natl Acad. Sci. USA 48:202)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(例えば以下を参照されたい:Lowy et al., 1980, Cell 22:817)遺伝子を、それぞれtk
-、hgprt
-又はaprt
-細胞で用いることができる。さらにまた、抗代謝薬耐性を以下の遺伝子の選別の基礎として用いることができる:DHFR、前記はメトトレキセートに対する耐性を付与する(例えば以下を参照されたい:Wigler el al., 1980, Proc. Natl. Acad Sci. USA 77:3567-70;O'Hare et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527-31);gpt、前記はミコフェノール酸に対する耐性を付与する(例えば以下を参照されたい:Mulligan and Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072-76);neo、前記はアミノグリコシドG-418に対する耐性を付与する(例えば以下を参照されたい:Clinical Pharmacy 12:488-505;Wu and Wu, 1991, Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Arm. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596;Mulligan, 1993, Science 260:926-932;Morgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191-217;及びMay, 1993, TIB TECH 11(5): 155- 215);及びhygro、前記はヒグロマイシンに対する耐性を付与する(例えば以下を参照されたい:Santerre et al., 1984, Gene 30:147-50)。利用可能な組換えDNA技術の当業界で一般的に公知の方法は以下に記載されている:Ausubel et al. eds., 1993-2006, Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley & Sons, NY;Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression. A laboratory Manual, Stockton Press, NY;及び in Chapters 12 and 13, Dracopoli et al., eds., 1994, Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY;及びColberre-Garapin et al, 1981, 7. MoI. Biol. 150:1-14。
【0067】
抗体の発現レベルはベクター増幅によって増加させることができる(概論については以下を参照されたい:Bebbington and Hentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Vol. 3., Academic Press, New York, 1987)。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養中に存在する阻害物質のレベルの増加はマーカー遺伝子のコピー数の増加をもたらすであろう。増幅領域は抗体のヌクレオチド配列と結合しているので、抗体の産生もまた増加するであろう(例えば以下を参照されたい:Crouse et al., 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257-66)。
宿主細胞を2つの発現ベクターで同時にトランスフェクトすることができる(第一のベクターは重鎖由来ポリペプチドをコードし、第二のベクターは軽鎖由来ポリペプチドをコードする)。2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同じ又は異なる選別マーカーを含むことができる。或いは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする1つのベクターを用いてもよい。そのような状況では、軽鎖は典型的には重鎖の前に配置され、過剰な非毒性重鎖を回避する(例えば以下を参照されたい:Proudfoot, 1986, Nature 322:562-65;Kohler, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197-9)。重鎖及び軽鎖のコード配列はcDNA又はゲノムDNAを含むことができる。
いったん抗体が組換え発現されたら、抗体精製について任意の適切な方法を用いて、例えばクロマトグラフィー(例えばイオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、特にプロテインAの後の特異的抗原に対する親和性クロマトグラフィー)、遠心分離、種々の可溶性、又はタンパク質精製のための任意の他の標準的技術によって前記抗体を精製できる。
本発明のモノクローナル抗体の作製のために用いられる全ての工程についての包括的な参考文献は以下である:Yokoyama et al., “Production of Monoclonal Antibodies”, Current Protocols in Immunology, Unit 2.5, 2006。
【実施例1】
【0068】
CD33に対する親和性
CD33結合因子は、ヒトCD33及びカニクイザルCD33(それぞれ細胞株HL60及びHEK293-カニクイザルCD33上に存在する)の両方に対し10nM以下のK
Dで親和性を有する。
ヒト及びカニクイザルCD33に対する14のCD33結合因子(表1にNo.1−14としてそれぞれ列挙した完全にヒトのモノクローナル抗体)を、CD33発現細胞(AML由来HL60細胞株、組換えHEK293-カニクイザルCD33細胞株)で文献(Brockhoff et al., Cytometry. 1994 Sep 1;17(1):75-83)の記載にしたがいFACSスキャチャード解析によって測定した。簡単に記せば、CD33結合因子の希釈物を96ウェルプレートで第一のウェルの100−400nM(80μL)から始め、続いて11回の希釈工程(1:2、40+40μL)を実施して調製した。50μLのCD33結合因子の希釈物をFACSチューブに加え、150μLの細胞(0.8x10
6/mL=1.2x10
5細胞/チューブ)を各FACSチューブに加える。細胞を穏やかに混合し、氷上で1時間インキュベートした。その後、50μLのFITC結合二次抗体(濃度15μg/mL;抗ヒトIgGマウスmAb)を添加して混合し、さらに氷上で30分インキュベートした。その後0.02%の酸を含む4mLのPBS(pH7.2)を添加し、細胞を沈殿させ、さらに300μLのPBS(pH7.2)に再懸濁して、BD FACS Cantoを用いてFACS解析に付した。全ての実験工程を水を含む氷上で実施し、全てのCD33結合因子希釈物をPBS/0.5%BSA+0.02%酸で作製した。FACSの目盛修正は、量子FITC MESF(Premix)ビーズ(Bangs Laboratories)を用いて実施した。同じFACSパラメーターを用いて全サンプルを測定した。遊離IgGに対する結合IgGの比は種々のCD33結合因子濃度でのMFI値から計算し、スキャチャードブロットとして示した。得られたデータ点から回帰線を作成した(この線の勾配は結合定数の負の値と一致する)。結果は表2に示す。
【0069】
表2
【実施例2】
【0070】
内在化の動態
抗体の内在化は、抗体とのインキュベーション後の標的細胞の細胞表面における抗体/抗原複合物の量の減少を指す。内在化試験はCD33発現HL60細胞株を用いて実施した。細胞を固定量のCD33結合因子(表1にNo.1−14として列挙した完全にヒトのモノクローナル抗体の10μg/mL)と表示の時間(0、1、4、24時間)37℃でインキュベートし、抗体/抗原複合物を内在化させた。表示の時点で、インキュベーション混合物に酸を添加し、更なる内在化を防止した。その後、固定量のCD33結合因子を添加して細胞表面の全てのCD33抗原部位を飽和させた。細胞表面に結合したCD33結合因子の全量を、FITC結合抗ヒトIgG二次抗体を用いFACS解析によって決定した。0時間の時点を用いて表面のCD33抗体/抗原複合物の開始レベルを決定し、このレベルを100%と規定した。結果は表3に列挙し、さらに
図1−3に示す。
【0071】
表3
【0072】
リンツズマブを参照抗体として加えた。リンツズマブ/CD33複合物は、リンツズマブとの結合に際して迅速に内在化し、これは発表されたデータと一致した。4時間のインキュベーション後に、CD33/リンツズマブの複合体の開始量の20%のみが細胞表面に残留した。予期に反して、本発明の14のCD33結合因子の全てについて、リンツズマブと比較して内在化が減速されていることが明らかになった。
【実施例3】
【0073】
ADCC活性
内在化速度の低下は、in vitroでのADCC活性の増加に換言される。CD33結合因子(表1にNo.1−14として列挙した完全にヒトのモノクローナル抗体)のADCC活性に対する内在化減速の影響を評価するために、標的細胞(HL60)をCD33結合因子と0、1、4及び24時間インキュベートした。続いて、エフェクター細胞としてIL-2刺激PBMCを、及び標的細胞として抗体被覆HL60細胞を用いてADCCアッセイを実施した。全ての実験について、30μg/mLのmAb濃度を用いた。CD33結合因子の存在下でエフェクター細胞と標的細胞との同時培養を、96ウェル丸底マイクロタイタープレートで、4組ずつ又は3組ずつでウェル当たり200μLの最終体積のアッセイ媒体(1:1比の10%ヒト血清及びRPMI中の1%BSAから成る)中で実施した。第一のエフェクター細胞(新鮮な単離PBMC/RPMI中に10%のヒト血清100μL/ウェル)をプレートし、続いて標的細胞及びCD33結合因子溶液(RPMI中に1%BSAの50μLで希釈)をプレートした。コントロールとして、エフェクター細胞をアッセイ媒体単独で培養し(エフェクター細胞コントロール)、さらに標的細胞をアッセイ媒体単独(自発的溶解)又は1%トリトンX-100補充アッセイ媒体(最大溶解)のどちらかで培養した。同時培養は37℃で3時間湿潤CO
2インキュベーターで実施した。インキュベーション終了時に、室温での遠心分離(200xg、すなわち1000rpm、10分)によって細胞を培養液から除去した。無細胞上清(100μL/ウェル)を96ウェルの平底プレートの対応するウェルに移した。これら上清のLDH活性を決定するために、100μLの反応混合物(11.25mLの色素溶液と新しく混合した250mLの触媒)を各ウェルに添加し、暗所にて30分室温でインキュベートした。続いて吸収を下記のように測定する。細胞傷害検出キット(LDH; Roche 11 644 793 001)を用いてADCC活性を測定した。細胞傷害性の検出は、形質膜損傷細胞から放出されるLDH酵素活性の測定を基準にする。培養上清に放出されるLDHは、キットのテトラゾリウム塩をホルマザンに還元する。ホルマザン色素の吸収極大は、ELISAプレートリーダーで650nmの参照波長に対して490nmで測定される。パーセント細胞媒介細胞傷害を決定するために、4組ずつ又は3組ずつの平均吸収を計算し、バックグラウンドを差し引いた。これら修正値を以下の等式に代用してADCC(%)を算出した:
(エフェクター/標的細胞混合物−エフェクター細胞コントロール−自発放出)/
(最大放出−自発放出)
0時点のADCC活性(無抗体下の標的細胞の前インキュベーション)を100%のADCC活性と規定した。抗体との前インキュベーションの種々の時点におけるADCC活性を0時点に対して算出し、相対的細胞傷害性(%)として示した。
リンツズマブと比較してCD33結合因子の内在化減速は、リンツズマブと比較してADCC活性の増加をもたらした。結論すれば、内在化の減速はADCC活性の増加をもたらす。記載したCD33結合因子の内在化は当該CD33結合因子のADCC活性と反比例し、このことはそのようなCD33結合因子の臨床活性に関する利点を示す。これらの結果は、この実験における内在化動態として
図4に、ADCC活性として
図5に示す。
【実施例4】
【0074】
エピトープマッピング
リンツズマブのエピトープと比較して本明細書に記載したCD33結合因子の結合エピトープを水素交換質量分析法(HXMS)によって決定した。
この方法によって、CD33タンパク質のアミド骨格水素のD
2O交換の感受性が決定された。本実験は、CD33タンパク質単独及びCD33結合因子/リンツズマブ(本実施例の以下の部分では“抗体/複数抗体”と称する)添加CD33タンパク質を用いて実施した。このようにして、抗体の結合により交換に対して顕著な防御を示すCD33タンパク質の領域が同定された。本方法による解明は、ペプシン消化によって生成されるペプチドによって決定される。例えば得られたアミノ酸配列は抗体の実際のエピトープより大きい可能性がある。これらのCD33由来ペプチドは、標準的な厳密な質量分析及びHPLC MS/MS技術を利用した非交換サンプルによる追加のコントロール実験によって同定された。
タンパク質+抗体サンプルについては、CD33タンパク質及び抗体を15分間室温でインキュベートした。抗体/CD33の最終モル比は2:1であった。LEAPロボット系(交換プレートは25℃にサンプル/クェンチプレートは4℃に維持)を用いて、8μLのサンプルを80μLの交換緩衝液(D
2O中の10mM NaH
2PO
4(pH7)又はH
2O中の10mM NaH
2PO
4(pH7))に添加し、混合して種々の時間25℃で交換を進行させた(15、60、120、240及び600秒)。続いて、この溶液の80μLを80μLのクェンチ緩衝液(1M尿素、0.1M TCEP-HCl)に4℃で移し混合した。続いて前記溶液の90μLを10μLのペプシンに4℃で移し混合した。2分後、この溶液の60μLをMichrom C18トラップカートリッジに注入した。前記カートリッジをH
2O+0.1%TFAで2分間100μL/分で洗浄した。続いてバルブを切り替え、カートリッジをPhenomenex Jupiter C5カラム(1.0x50mm、5μm、300A)に溶出させた。移動相Aは水/アセトニトリル/TFA(99/0.95/0.05)、移動相Bはアセトニトリル/水/TFA(95/4.95/0.05)であった。流速は100μL/分であった。勾配は以下のとおりであった:0分(0%B)、6分(40%B)、7分(40%B)、8分(90%B)、10分(90%B)、11分(0%B)。LEAP系は移動相を4℃で前冷却し、さらにまたトラップカラム及び分析カラムを4℃で維持する。MS実験(D
2O緩衝液との交換を定量するために用いられた)については、14分間300−2000のシングルスキャン方法を分解能60,000で用いた。MS/MS実験(H
2O交換緩衝液によるペプチド同定のために用いられた)については、7スキャンの方法を14分間用いた。第一のスキャンは、分解能30,000で300−2000の全範囲スキャンとした。その後のスキャンは、#1スキャンのもっとも強い6つのイオンのCIDスキャンとした。単離幅は1.5amu、衝突エネルギーは35V、活性化時間は30msecであった。ペプシンペプチドは、フラグメント化データ及びプロテオームディスカバラー(Proteome Discoverer、Thermo)プログラムを用いて同定した。同定ペプチドは、所内プログラム(交換ペプチドの平均質量を算出する)を用いて解析した。
全CD33結合因子が、アミノ酸配列FFHPIPYYDKNSPVHGYW(配列番号:141)を有する同一のペプチドフラグメントを防御した(表4)。本明細書に記載のCD33結合因子によって防御されるCD33の配列は、リンツズマブの結合によって防御されるCD33のペプチド配列(MDPNFWLQVQE、配列番号:142)とは異なりさらにオーバーラップしていない。SIGLEC-5a(CD33と相同なSIGLECファミリーのメンバー)の結晶構造を用いたin silicoモデリングは、タンパク質の近位ドメインに存在する全抗体の結合エピトープを明らかにした(このモデリングでは、リンツズマブの結合エピトープは本明細書に記載のCD33結合因子の結合エピトープとは異なっている)。結論すれば、本特許出願で開示したCD33結合因子は、リンツズマブとは異なるエピトープと結合する。
【0075】
表4