(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の光学ガラスは、酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でSiO
2成分を0.5〜40.0%、B
2O
3成分を5.0〜50.0%、La
2O
3成分を5.0〜56.0%、及びZnO成分を0.5〜20.0%含有する。La
2O
3成分を加えることによって、ガラスの屈折率が高められて分散が抑えられる。また、SiO
2成分、B
2O
3成分、La
2O
3成分、及びZnO成分を併用し、B
2O
3成分、SiO
2成分、B
2O
3成分、La
2O
3成分、及びZnO成分の含有率を上記範囲内に抑えることによって、ガラス転移点(Tg)と結晶化開始温度(Tx)との差ΔTが大きくなる。このため、屈折率(n
d)が1.65以上1.77以下の範囲内にあり、アッベ数(ν
d)が45以上60以下の範囲内にありながら、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高い光学ガラスを得ることができる。
【0028】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0029】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有率は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0030】
<必須成分、任意成分について>
SiO
2成分は、ガラス内部で網目構造を形成し、安定なガラス形成を促して、光学ガラスとして好ましくないガラスを作製する際の失透(結晶物の発生)や脈理(ガラス内部の不均一性)を抑制する成分である。特に、SiO
2成分の含有率を0.5%以上にすることで、ガラスの耐失透性を高めることができる。一方、SiO
2成分の含有率を40.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSiO
2成分の含有率は、好ましくは0.5%、より好ましくは1.0%、最も好ましくは1.5%を下限とし、好ましくは40.0%、より好ましくは38.0%、最も好ましくは35.0%を上限とする。SiO
2成分は、原料として例えばSiO
2、K
2SiF
6、Na
2SiF
6等を用いてガラス内に含有することができる。
【0031】
B
2O
3成分は、ガラス内部で網目構造を形成し、安定なガラス形成を促す成分である。特に、B
2O
3成分の含有率を5.0%以上にすることで、ガラスの溶融性を改善することにより安定なガラスを得易くすることができる。一方、B
2O
3成分の含有率を50.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するB
2O
3成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは10.0%を下限とし、好ましくは50.0%、より好ましくは48.0%、最も好ましくは45.0%を上限とする。B
2O
3成分は、原料として例えばH
3BO
3、Na
2B
4O
7、Na
2B
4O
7・10H
2O、BPO
4等を用いてガラス内に含有することができる。
【0032】
La
2O
3成分は、ガラスの屈折率を高めて分散を小さくする成分である。特に、La
2O
3成分の含有率を5.0%以上にすることで、所望の高屈折率及び低分散を得易くすることができる。一方、La
2O
3成分の含有率を56.0%以下にすることで、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性をより高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLa
2O
3成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは10.0%を下限とし、好ましくは56.0%、より好ましくは53.0%、最も好ましくは50.0%を上限とする。La
2O
3成分は、原料として例えばLa
2O
3、La(NO
3)
3・XH
2O(Xは任意の整数)等を用いてガラス内に含有することができる。
【0033】
ZnO成分は、ガラスの溶融性を改善して安定なガラスを形成し易くする成分である。特に、ZnO成分の含有率を0.5%以上にすることで、安定なガラス成形を容易にすることができる。一方、ZnO成分の含有率を20.0%以下にすることで、溶融時の失透発生を抑制することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZnO成分の含有率は、好ましくは0.5%、より好ましくは0.8%、最も好ましくは1.0%を下限とし、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。ZnO成分は、原料として例えばZnO、ZnF
2等を用いてガラス内に含有することができる。
【0034】
MgO成分は、ガラスの屈折率を調整する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、MgO成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラスの溶融時の失透発生を抑制することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するMgO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは13.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。MgO成分は、原料として例えばMgCO
3、MgF
2等を用いてガラス内に含有することができる。
【0035】
CaO成分は、ガラスの屈折率及び分散を調整する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、CaO成分の含有率を20.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスの化学的耐久性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するCaO成分の含有率は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。CaO成分は、原料として例えばCaCO
3、CaF
2等を用いてガラス内に含有することができる。
【0036】
SrO成分は、ガラスの屈折率及び分散を調整する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、SrO成分の含有率を25.0%以下にすることで、失透発生を抑制することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSrO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは23.0%、最も好ましくは21.0%を上限とする。SrO成分は、原料として例えばSr(NO
3)
2、SrF
2等を用いてガラス内に含有することができる。
【0037】
BaO成分は、ガラスの屈折率を高めて分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、BaO成分の含有率を35.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するBaO成分の含有率は、好ましくは35.0%、より好ましくは34.5%、最も好ましくは34.1%を上限とする。BaO成分は、原料として例えばBaCO
3、Ba(NO
3)
2等を用いてガラス内に含有することができる。
【0038】
本発明の光学ガラスでは、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有率の質量和が、1.5%以上38.0%以下であることが好ましい。この質量和を1.5%以上にすることで、ガラスの安定性を高めて溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性を高めることができる。また、この質量和を38.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分の含有率の質量和は、好ましくは1.5%、より好ましくは1.8%、最も好ましくは2.0%を下限とし、好ましくは38.0%、より好ましくは37.0%、最も好ましくは36.0%を上限とする。
【0039】
また、本発明の光学ガラスでは、SiO
2成分の含有量に対するRO成分の含有量の質量比が0.60以上1.68以下であることが好ましい。この質量比を0.60以上にすることで、ガラスの安定性を高めて溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性を高めることができる。また、この質量比を1.68以下にすることで、ガラスの網目構造を形成し易くしてガラス化を容易にすることができる。従って、酸化物換算組成のSiO
2の含有量に対するRO成分の含有量の質量比は、好ましくは0.60、より好ましくは0.61、最も好ましくは0.62を下限とし、好ましくは1.68、より好ましくは1.66、最も好ましくは1.65を上限とする。
【0040】
TiO
2成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を大きくして、化学的耐久性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、TiO
2成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の低分散を得易くし、ガラスへの着色を低減し、特に可視短波長(500nm以下)における透過率を悪化し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO
2成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。TiO
2成分は、原料として例えばTiO
2等を用いてガラス内に含有することができる。
【0041】
Nb
2O
5成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの化学的耐久性を向上する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Nb
2O
5成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の低分散を得易くし、ガラスの安定した成形を容易にすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNb
2O
5成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Nb
2O
5成分は、原料として例えばNb
2O
5等を用いてガラス内に含有することができる。
【0042】
ZrO
2成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの化学的耐久性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、ZrO
2成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの製造時における高温での溶解を回避し、ガラス製造時のエネルギー損失を低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZrO
2成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは9.0%、最も好ましくは8.5%を上限とする。ZrO
2成分は、原料として例えばZrO
2、ZrF
4等を用いてガラス内に含有することができる。
【0043】
本発明の光学ガラスでは、TiO
2成分、Nb
2O
5成分、及びZrO
2成分の含有率の質量和が、2.8%以上17.0%以下であることが好ましい。この質量和を2.8%以上にすることで、高屈折率を有し、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高いガラスを得易くすることができる。また、この質量和を17.0%以下にすることで、所望のガラスの低分散を得易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO
2成分、Nb
2O
5成分、及びZrO
2成分の含有率の質量和は、好ましくは2.8%、より好ましくは3.0%、最も好ましくは3.2%を下限とし、好ましくは17.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは12.0%を上限とする。
【0044】
Gd
2O
3成分は、ガラスの屈折率を高めて分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Gd
2O
3成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減し、ガラスを作製する際にガラスを失透し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するGd
2O
3成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Gd
2O
3成分は、原料として例えばGd
2O
3、GdF
3等を用いてガラス内に含有することができる。
【0045】
Y
2O
3成分は、ガラスの屈折率を高めて分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Y
2O
3成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減し、ガラスを作製する際にガラスを失透し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するY
2O
3成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Y
2O
3成分は、原料として例えばY
2O
3、YF
3等を用いてガラス内に含有することができる。
【0046】
Yb
2O
3成分は、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Yb
2O
3成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するYb
2O
3成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Yb
2O
3成分は、原料として例えばYb
2O
3等を用いてガラス内に含有することができる。
【0047】
Lu
2O
3成分は、ガラスの屈折率を高めて分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Lu
2O
3成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLu
2O
3成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Lu
2O
3成分は、原料として例えばLu
2O
3等を用いてガラス内に含有することができる。
【0048】
本発明の光学ガラスでは、La
2O
3成分、Gd
2O
3成分、Y
2O
3成分、Yb
2O
3成分、及びLu
2O
3成分の含有率の質量和が、5.0%以上56.0%以下であることが好ましい。この質量和を5.0%以上にすることで、所望の高屈折率及び低分散を得易くすることができる。また、この質量和を56.0%以下にすることで、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性をより高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLa
2O
3成分、Gd
2O
3成分、Y
2O
3成分、Yb
2O
3成分、及びLu
2O
3成分の含有率の質量和は、好ましくは5.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは10.0%を下限とし、好ましくは56.0%、より好ましくは54.0%、最も好ましくは53.0%を上限とする。
【0049】
また、本発明の光学ガラスでは、La
2O
3成分の含有量に対する質量和(La
2O
3+Gd
2O
3+Y
2O
3+Yb
2O
3+Lu
2O
3)の質量比が、1.00以上1.20以下であることが好ましい。この質量比を1.20以下にすることで、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性をより高めることができる。従って、この質量比は、好ましくは1.20、より好ましくは1.17、最も好ましくは1.15を上限とする。
【0050】
Al
2O
3成分は、光学ガラスの化学的耐久性を高め、溶融ガラスからガラスを作製したときの耐失透性を向上する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Al
2O
3成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑制することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するAl
2O
3成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.0%、最も好ましくは3.5%を上限とする。Al
2O
3成分は、原料として例えばAl
2O
3、Al(OH)
3、AlF
3等を用いてガラス内に含有することができる。
【0051】
本発明の光学ガラスでは、SiO
2成分、B
2O
3成分、La
2O
3成分、ZnO成分、MgO成分、CaO成分、SrO成分、BaO成分、TiO
2成分、Nb
2O
5成分、ZrO
2成分、Y
2O
3成分、及びAl
2O
3成分の含有率の質量和が90.0%以上であることが好ましい。この質量和を90.0%以上にすることで、ガラスの安定性を高め、成形時の耐失透性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するこの質量和は、好ましくは90.0%、より好ましくは95.0%、最も好ましくは98.0%を下限とする。
【0052】
Li
2O成分は、ガラスの溶融性を改善する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Li
2O成分の含有率を20.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くして、ガラスの安定性を高めて失透等を生じ難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLi
2O成分の含有率は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。Li
2O成分は、原料として例えばLi
2CO
3、LiNO
3、LiF等を用いてガラス内に含有することができる。
【0053】
Na
2O成分は、ガラスの溶融性を改善する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Na
2O成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くして、ガラスの安定性を高めて失透等を生じ難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNa
2O成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは23.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。Na
2O成分は、原料として例えばNa
2CO
3、NaNO
3、NaF、Na
2SiF
6等を用いてガラス内に含有することができる。
【0054】
K
2O成分は、ガラスの溶融性を改善する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、K
2O成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くして、ガラスの安定性を高めて失透等を生じ難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するK
2O成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは23.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。K
2O成分は、原料として例えばK
2CO
3、KNO
3、KF、KHF
2、K
2SiF
6等を用いてガラス内に含有することができる。
【0055】
Ta
2O
5成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスを安定化する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Ta
2O
5成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減するとともに、高温での溶解を回避してガラス製造時のエネルギー損失を低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTa
2O
5成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Ta
2O
5成分は、原料として例えばTa
2O
5等を用いてガラス内に含有することができる。
【0056】
WO
3成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を大きくして、ガラスの化学的耐久性を向上する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、WO
3成分の含有率を10.0%以下にすることで、特に可視短波長(500nm以下)における透過率を悪化し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するWO
3成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。WO
3成分は、原料として例えばWO
3等を用いてガラス内に含有することができる。
【0057】
Sb
2O
3成分は、溶融ガラスを脱泡する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Sb
2O
3成分の含有率を1.0%以下にすることで、可視短波長における透過率を悪化し難くし、ガラス溶融時における過度の発泡を生じ難くし、Sb
2O
3成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb
2O
3成分の含有率は、好ましくは1.0%、より好ましくは0.8%、最も好ましくは0.5%を上限とする。Sb
2O
3成分は、原料として例えばSb
2O
3、Sb
2O
5、Na
2H
2Sb
2O
7・5H
2O等を用いてガラス内に含有することができる。
【0058】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0059】
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、GeO
2成分はガラスの分散を高めてしまうため、実質的に含まないことが好ましい。
【0060】
また、Tiを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0061】
さらに、PbO等の鉛化合物及びAs
2O
3等のヒ素化合物、並びに、Th、Cd、Tl、Os、Be、Seの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、光学ガラスに環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、この光学ガラスを製造し、加工し、及び廃棄することができる。
【0062】
本発明のガラス組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため直接的にモル%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分のモル%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。
SiO
2成分 1.0〜60.0mol%及び
B
2O
3成分 7.0〜75.0mol%及び
La
2O
3成分 2.0〜20.0mol%及び
ZnO成分 1.0〜25.0mol%、
並びに
MgO成分 0〜45.0mol%及び/又は
CaO成分 0〜30.0mol%及び/又は
SrO成分 0〜30.0mol%及び/又は
BaO成分 0〜25.0mol%及び/又は
TiO
2成分 0〜12.0mol%及び/又は
Nb
2O
5成分 0〜7.0mol%及び/又は
ZrO
2成分 0〜12.0mol%及び/又は
Gd
2O
3成分 0〜5.0mol%及び/又は
Y
2O
3成分 0〜5.0mol%及び/又は
Yb
2O
3成分 0〜5.0mol%及び/又は
Lu
2O
3成分 0〜5.0mol%及び/又は
Al
2O
3成分 0〜5.0mol%及び/又は
Li
2O成分 0〜60.0mol%及び/又は
Na
2O成分 0〜45.0mol%及び/又は
K
2O成分 0〜30.0mol%及び/又は
Ta
2O
5成分 0〜3.0mol%及び/又は
WO
3成分 0〜5.0mol%及び/又は
Sb
2O
3成分 0〜0.3mol%
【0063】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有率の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1300〜1400℃の温度範囲で3〜4時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
【0064】
[物性]
本発明の光学ガラスは、所望の屈折率(n
d)を有するとともに、低い分散(高いアッベ数)を有する必要がある。特に、本発明の光学ガラスの屈折率(n
d)は、好ましくは1.65、より好ましくは1.66、最も好ましくは1.67を下限とし、好ましくは1.77、より好ましくは1.76、最も好ましくは1.75を上限とする。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν
d)は、好ましくは45、より好ましくは48、最も好ましくは50を下限とし、好ましくは60、より好ましくは57、最も好ましくは55を上限とする。これらにより、光学設計の自由度が広がり、更に素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。
【0065】
また、本発明の光学ガラスは、ガラス材料を加熱軟化して成形(リヒートプレス成形)を行う際の耐失透性が高いことや、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高いことが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスのガラス転移点(Tg)と結晶化開始温度(Tx)との差ΔTは、好ましくは100℃、より好ましくは110℃、最も好ましくは118℃を下限とする。また、本発明の光学ガラスに対して示差熱分析(DTA)を行った融液から降温する際の結晶化による発熱ピーク温度は、好ましくは750℃、より好ましくは730℃、最も好ましくは700℃を上限とする。これらにより、ガラスの熱的安定性が高められてガラス成分の結晶核の生成が低減されるとともに、より低い温度で溶融ガラスを流出してガラスを形成してもガラス成分の結晶の成長が低減されるため、失透によるガラスの光学特性への影響を低減することができる。
【0066】
[光学素子及び光学機器]
このように、本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも特に、本発明の光学ガラスからリヒートプレス成形や精密プレス成形等の手段を用いて、レンズやプリズム等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに、高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現することができる。