(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727744
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】車両のドアインサイドハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/12 20140101AFI20150514BHJP
【FI】
E05B85/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-221106(P2010-221106)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-77460(P2012-77460A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宣明
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4084231(JP,B2)
【文献】
特開2005−163291(JP,A)
【文献】
特開2003−193708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ハンドルが連結されるハンドルベースと、
ハンドルベースに着脱可能に連結され、装着状態においてハンドルベースのドアパネルへの連結部を隠すカバー体とを有し、
前記ハンドルベースと装着位置のカバー体との間には、適宜の揺動中心周りの揺動スペースが設けられるとともに、
カバー体は、側縁部に形成される係止部とハンドルベースの被係止部との弾性的な係止により揺動が規制されて装着位置に保持され、
かつ、係止部と被係止部との間には、カバー体への揺動操作力の付与によりいずれか一方に係止解除方向の分力を発生させる斜面部が形成され、
カバー体は、一端縁部への押し込み操作により係止部の係止を解除して装着姿勢からの離脱が可能な車両のドアインサイドハンドル装置。
【請求項2】
前記カバー体は、前記操作ハンドルを収容する適宜深さの枠部を備えるハンドルベースの底壁部に装着される請求項1記載の車両のドアインサイドハンドル装置。
【請求項3】
前記カバー体は、一側縁がハンドルベースに当接して一方の揺動終端が決定されるとともに、他側縁に形成された係止部により当接離脱方向の揺動が規制されて装着位置に保持される請求項1または2記載の車両のドアインサイドハンドル装置。
【請求項4】
前記係止部は、カバー体の裏面方向に突設される請求項1、2または3記載の車両のドアインサイドハンドル装置。
【請求項5】
前記操作ハンドルは前記カバー体の側縁に沿って配置されるとともに、
装着姿勢からの離脱操作時におけるカバー体の押し込み操作側辺縁が初期回転位置における操作ハンドルにより覆われる位置に配置される請求項4記載の車両のドアインサイドハンドル装置。
【請求項6】
ハンドルベースに連結される操作ハンドルを備えたドアインサイドハンドル装置のドア体への装着部におけるハンドルベース、あるいはドアトリム等の内装面形成部材に開設された前記ハンドルベースへの連結部を内装面形成部材に装着されるカバー体により覆い隠したドアインサイドハンドル装置の固定構造であって、
前記内装面形成部材と装着位置のカバー体との間には、適宜の揺動中心周りの揺動スペースが設けられるとともに、
カバー体は、側縁部に形成される係止部と内装面形成部材の被係止部との弾性的な係止により揺動が規制されて装着位置に保持され、
かつ、係止部と被係止部との間には、カバー体への揺動操作力の付与によりいずれか一方に係止解除方向の分力を発生させる斜面部が形成され、
カバー体は、一端縁部への押し込み操作により係止部の係止を解除して装着姿勢からの離脱が可能なドアインサイドハンドル装置の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のドアインサイドハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のインナーパネルへの固定部をカバー体により覆って外部への露出を防止した車両のドアインサイドハンドルとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例においてドアインサイドハンドルは、操作ハンドルを軸支したハンドルベースと、ハンドルベースに連結され、ハンドルベースのドアパネルへの固定部を覆うカバー体とを有して形成される。ハンドルベースへのカバー体の装着は、一側縁に形成される解除操作用係止脚をハンドルベースに弾発係止して行われ、脱離操作は、ハンドルベースの壁面とカバー体の表面に現れる隙間から工具等を挿入して解除操作用係止脚の係止を解除して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4084231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、カバー体の脱離は工具等の要するために、作業性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、カバー体の脱離操作性を良好にした車両のドアインサイドハンドル装置の提供を目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、カバー体の脱離操作性を良好にしたドアインサイドハンドル装置の固定構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ドアインサイドハンドル装置は、操作ハンドル1を支持するハンドルベース2と、ハンドルベース2に対して着脱自在に装着されてハンドルベース2のドアパネルへの固定部を覆うカバー体3とを有する。カバー体3とハンドルベース2との間には、カバー体3の装着位置において揺動スペース8が設定されおり、側縁部に形成される係止部4とハンドルベース2の被係止部5とを、いずれか一方、あるいは双方の弾性変形を伴って相互に係止させることによって揺動動作が禁止され、装着状態を維持する。
【0009】
係止部4と被係止部5との間には、カバー体3への揺動操作力の付与により係止部4、または被係止部5に係止解除方向の分力を発生させる斜面部6が形成されており、カバー体3の一側縁部にハンドルベース2内方への押し込み力を与えることにより、係止部4、あるいは被係止部5に係止解除方向の分力が発生する。
【0010】
したがってこの発明において、斜面部6による分力の大きさと、係止部4、および被係止部5における係止力を適宜に設定すると、カバー体3の側縁部に押し込み操作力を与えるだけでカバー体3を脱離させることが可能になるために、特別の工具等が不要になり、脱離操作性が向上する。
【0011】
カバー体3は、装着状態においてハンドルベース2を概ね全体にわたって覆い、インサイドハンドル装置の意匠的外形を決定するエスカッションとして形成したり、あるいは、操作ハンドル1を収容する枠部7を意匠的外形面として備えるハンドルベース2の底壁部に装着されて固定部近傍のみを覆うように構成することもできる。
【0012】
カバー体3の装着姿勢における揺動中心は、カバー体3、あるいはハンドルベース2に形成された突条のように、揺動中心を形成するために特別に設定された部分によるものに加え、特別な部分を形成することなく、接触状態等から結果的に構成されるものであってもよい。
【0013】
係止部4は、揺動中心軸に沿う辺縁部のほか、揺動中心軸に交差する辺縁部に設けることも可能であり、さらに、揺動の規制は、係止部4と被係止部5との係止のみにより行われるものであっても、側縁部をハンドルベース2との当接縁として一方の揺動終端が決定されたものであってもよい。
【0014】
また、係止部4をカバー体3の裏面方向に突設して配置すると、係止部4と被係止部5との係止部位が表面に現れることがないために、見栄えが向上する。
【0015】
さらに、
装着姿勢からの離脱操作時におけるカバー体3の押し込み操作側辺縁を、初期回転位置における操作ハンドル1により覆われる位置に配置すると、押し込み操作辺縁を過って押し込んでカバー体3が脱離する機会を減少させることができる。
【0016】
また、カバー体3はハンドルベース2に加え、ドアトリム21等、操作ハンドル1の装着位置におけるドア体の内装、すなわち、外観意匠面を形成するために使用される内装面形成部材20に装着することが可能であり、この場合、
ハンドルベース2に連結される操作ハンドル1を備えたドアインサイドハンドル装置のドア体への装着部におけるハンドルベース2、あるいはドアトリム21等の内装面形成部材20に開設された前記ハンドルベース2への連結部を内装面形成部材20に装着されるカバー体3により覆い隠したドアインサイドハンドル装置の固定構造であって、
前記内装面形成部材20と装着位置のカバー体3との間には、適宜の揺動中心周りの揺動スペース8が設けられるとともに、
カバー体3は、側縁部に形成される係止部4と内装面形成部材20の被係止部5との弾性的な係止により揺動が規制されて装着位置に保持され、
かつ、係止部4と被係止部5との間には、カバー体3への揺動操作力の付与によりいずれか一方に係止解除方向の分力を発生させる斜面部6が形成され、
カバー体3は、一端縁部への押し込み操作により係止部4の係止を解除して装着姿勢からの離脱が可能なドアインサイドハンドル装置の固定構造が構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カバー体の脱離操作に工具等を要しないために、脱離操作性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】インサイドハンドル装置を示す正面図である。
【
図2】
図1の断面図で、(a)は2A-2A線断面図、(b)は2B-2B線断面図である。
【
図4】カバー体を示す図で、(a)は裏面図、(b)は(a)の4B方向矢視図、(c)は(a)の4C-4C線断面図である。
【
図5】
図3の5A-5A線断面図で、(a)は装着操作を示す図、(b)は装着完了状態を示す図、(c)はカバー体の側縁を押し下げた状態を示す図、(d)はカバー体の係止を解除した状態を示す図である。
【
図6】ドアトリムにカバー体を装着したインサイドハンドル装置の固定構造を示す図で、(a)は
図2(a)に対応する図、(b)は
図5(b)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1以下に示すように、インサイドハンドル装置は、ハンドルベース2に操作ハンドル1とロックレバー9とを連結して形成される。操作ハンドル1は、ハンドル回転中心軸(C1)周りに
図2(a)において実線で示す初期回転位置と鎖線で示す操作回転位置との間で回転可能であり、ケーブル装置10を介してロック装置11に連結される。
【0020】
上記ケーブル装置10は、ハンドルベース2に一端が連結されるアウターケース10a内にインナーケーブル10bを摺動自在に挿通させて形成され、操作ハンドル1を操作回転位置まで回転操作すると、操作力が操作ハンドル1に連結されたインナーケーブル10bを介してロック装置11に伝達され、ロック状態が解除される。
【0021】
また、ロックレバー9は、
図2(b)に示すように、レバー回転中心軸(C2)周りに回転操作可能であり、図示のロック回転位置から所定角度時計回りに回転操作すると、該ロックレバー9に連結されたケーブル装置12を介して上記ドアロック装置11のキャンセル部11aが操作され、以後、操作ハンドル1によるドアロック装置11への操作が規制される。
【0022】
図2、3に示すように、インサイドハンドル装置のドアパネル(図示せず)への固定はハンドルベース2をドアパネルに固定して行われ、ハンドルベース2には、固定に使用する止着子13を挿通するための貫通孔14が設けられる。
【0023】
上記止着子13の頭部を覆い隠すために、ハンドルベース2にはカバー体3が装着される。ハンドルベース2は、上述した操作ハンドル1とロックレバー9とを包囲する枠部7を有しており、カバー体3が装着状態において、操作ハンドル1とロックレバー9の回転基端を除く底壁面を形成する。
【0024】
図3に示すように、ハンドルベース2には、カバー体3を係止するための被係止部5、および係止開口と、カバー体3を支承するための支承平面2aと、操作ハンドル1のハンドル回転中心に直交する突条15とが設けられる。
【0025】
後述するように、突条15はカバー体3の揺動中心とカバー体3の揺動スペース8とを提供するもので、上記支承平面2aは、カバー体3の揺動動作に対する干渉部とならないために、突条15を挟んで被係止部5が設けられる領域にのみ配置される。
【0026】
図4に示すように、カバー体3は板状に形成され、操作ハンドル1に沿った一方の辺縁部には2個の係止用突部16が、これに対向する辺縁部に1個の爪状の係止部4が設けられる。カバー体3のハンドルベース2への装着は、係止用突部16をハンドルベース2の枠部7下端に開設された係止開口17の上縁に係止させた状態で係止部4が形成される側の辺縁部を
図5(a)において矢印aで示すように押し込んで行われる。
【0027】
押し込み操作に際し、ハンドルベース2の枠部7の内壁面は、カバー体3の周縁をガイドして係止部4を被係止部5に導き、被係止部5に導かれた係止部4は一旦弾性変形して被係止部5の周縁部をかわした後、被係止部5に対峙したときに原形に復帰し、係止状態に移行する。
【0028】
係止部4の係止が完了した装着状態において、カバー体3は、
図1に示すように、上述した止着子13の頭部を覆い隠して外部への露出を防ぐ。
【0029】
この状態からのインサイドハンドル装置の取り外しは、一旦カバー体3を取り外して行われ、取り外しを容易にするために、ハンドルベース2に上述した突条15が設けられる。
図5(b)に示すように、突条15は、カバー体3が装着された状態で、該カバー体3の裏面に当接する高さ寸法に形成されており、係止部4の係止が解除した際のカバー体3の揺動スペース8を提供する。
【0030】
さらに、カバー体3の係止部4には、
図5(b)に示すように、カバー体3の押し込み操作時に被係止部5に当接して係止部4に内方(対向縁)に向かう反力を発生させる装着用斜面4aが設けられるとともに、係止部4と被係止部5には、
図5(b)における反時計回りの揺動力を付加した際に係止部4に係止離脱方向の分力を発生させるための斜面部6が設けられる。
【0031】
したがってこの実施の形態において、装着状態のカバー体3の係止用突部16が配置される側の辺縁に押し込み操作力を付与すると、カバー体3には、突条15との接触部を揺動中心とする反時計回りの揺動力が発生する。上述したように、この揺動力によって係止部4の斜面部6には、係止解除方向の分力が発生し、やがて、
図5(c)に示すように、係止部4は弾性的に撓んで被係止部5との係止が解除され、
図5(d)に示すように、カバー体3をハンドルベース2から離脱させることができる。
【0032】
カバー体3装着解除のために要する押し込み操作力は、斜面部6の傾斜角度、係止部4の剛性、突条15と押し込み操作側端縁までの間隔を考慮して適宜決定され、不用意な操作で簡単に係止部4の係止が解除されることがない程度の大きさに設定される。
【0033】
また、
図1、
図3に示すように、カバー
体3の離脱に伴う押し込み操作側端縁は、操作ハンドル1に覆われ、通常状態では外部に露出しない側に設定され、悪戯等によるカバー
体3の離脱操作が可及的に防がれる。
【0034】
なお、以上において、ハンドルベース2を操作ハンドル1の装着部位においてパネル体の外観面を提供するための内装面形成部材20とし、ハンドルベース2をドアパネルに固定するための止着子13の頭部を内装面形成部材20に装着されるカバー体3により覆い隠したインサイドハンドル装置の固定構造が示されているが、ドアトリム21が内装面形成部材20である場合には、
図6に示すように、ドアトリム21にカバー体が装着されて、インサイドハンドル装置の固定構造が構成される。
【0035】
すなわち、
図6に示す固定構造において、ハンドルベース2はドアトリム21により覆われており、操作ハンドル1の装着部位における意匠面がドアトリム21により構成される。インサイドハンドル装置の固定は、ドアトリム21とハンドルベース2とを止着子13を使用してパネルに共締めして行われ、内装面形成部材20としてのドアトリム21に、被係止部5、係止開口17、および突条15等が形成され、カバー体3がドアトリム21に連結される。
【0036】
また、この固定構造においては、単一の止着子13により、ドアトリム21とハンドルベース2がパネルに止着されるが、別々の止着子により、ドアトリム21とハンドルベース、ハンドルベース2とパネルとをそれぞれ止着することもできる。
【0037】
なお、
図6において、
図1以下の実施の形態と実質的に同一の構成要素は図中に同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0038】
1 操作ハンドル
2 ハンドルベース
3 カバー体
4 係止部
5 被係止部
6 斜面部
7 枠部
8 揺動スペース
20 内装面形成部材
21 ドアトリム