(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727763
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】受電側コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
H01R13/52 D
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-267304(P2010-267304)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-119143(P2012-119143A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】森 茂生
(72)【発明者】
【氏名】大村 剛紀
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−124774(JP,U)
【文献】
特開平09−161882(JP,A)
【文献】
特開2001−307836(JP,A)
【文献】
特開平07−029631(JP,A)
【文献】
実開平03−048322(JP,U)
【文献】
実開昭64−055570(JP,U)
【文献】
特許第2752032(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置に接続された給電側コネクタが嵌合接続可能に電気自動車の車体に取り付けられる受電側コネクタであって、
前記給電側コネクタの筒状のハウジング前側筒部が内周に嵌合する外筒壁部と、該外筒壁部の一端側を閉塞する奥壁部とを備えた有底筒状構造に形成されて、他端側の開口を上方又は斜め上方に向けて前記車体に取り付けられるハウジング本体と、
前記外筒壁部の内側の前記奥壁部に一体形成されて、前記ハウジング前側筒部内の装置側電源用端子に接続される車体側電源用端子を収容保持した電源用端子収容筒部と、
前記外筒壁部の内側の前記奥壁部に一体形成されて、前記ハウジング前側筒部内の装置側信号用端子に接続される車体側信号用端子を収容保持した信号用端子収容筒部と、
前記外筒壁部の内側の前記奥壁部上で、前記車体に取り付けられた状態で最下端となる位置に貫通形成された本体排水口と、
を備え、
更に、前記奥壁部に、前記信号用端子収容筒部に侵入した水を外部に排水する信号端子用排水口を備え、前記奥壁部の外部となるコネクタ背面から前記信号端子用排水口への被水を防止する保護壁を備え、
前記保護壁は、前記信号端子用排水口の開口縁から所定距離隔てた周囲から立設した周壁と、前記信号端子用排出口に対向した対向壁とにより構成され、かつ前記周壁の一部が開口した形状であることを特徴とする受電側コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車におけるバッテリの充電に使用される給電コネクタとして、車体に取り付けられる受電側コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図12及び
図13は、電気自動車におけるバッテリの充電に使用される給電コネクタの従来例を示したものである。
【0003】
この給電コネクタ1は、下記特許文献1に開示されたもので、不図示の給電装置に接続された給電側コネクタ3と、該給電側コネクタ3が嵌合接続可能に不図示の電気自動車の車体に取り付けられる受電側コネクタ5と、を備える。
【0004】
受電側コネクタ5は、ハウジング本体11と、開閉キャップ21と、電源用端子収容筒部23と、信号用端子収容筒部25と、を備えている。
【0005】
ハウジング本体11は、給電側コネクタ3の筒状のハウジング前側筒部3aが内周に嵌合する外筒壁部12と、該外筒壁部12の一端側を閉塞する奥壁部13とを備えた有底筒状構造に形成されている。また、外筒壁部12の外周には、車体への取付け部となるフランジ部14が、一体形成されている。
【0006】
ハウジング本体11は、外筒壁部12の他端側の開口12aを上方又は斜め上方に向けて前記車体に取り付けられる。
【0007】
開閉キャップ21は、外筒壁部12の開口12aを開閉可能に覆う略円形の蓋体である。この開閉キャップ21は、
図12に示すように、外周の一側に係止部21aが設けられ、更に、係止部21aと対向する外周の他側は、不図示のヒンジ機構により外筒壁部12に回動可能に連結されている。
【0008】
開閉キャップ21は、前記ヒンジ機構による回動により、開口12aを開閉可能になっている。開閉キャップ21は、
図13に示すように開口12aを閉じた状態では、外筒壁部12の外周に一体形成されたキャップ係止片27が係止部21aに係合することで、開口12aを閉じた状態に固定される。
【0009】
電源用端子収容筒部23は、外筒壁部12の内側の奥壁部13に固定されている。本実施形態の場合、電源用端子収容筒部23は、奥壁部13の中心を挟む左右2箇所に設けられている。また、電源用端子収容筒部23は、
図13に示すように、車体側電源用端子28を収容保持する。この車体側電源用端子28は、ハウジング前側筒部3a内の第1端子収容筒部31に収容保持された不図示の装置側電源用端子に接続される端子金具である。
【0010】
信号用端子収容筒部25は、外筒壁部12の内側の奥壁部13に固定されている。本実施形態の場合、信号用端子収容筒部25は、奥壁部13の中心を挟む上下2箇所に設けられている。また、信号用端子収容筒部25は、不図示の車体側信号用端子を収容保持する。前記車体側信号用端子は、ハウジング前側筒部3a内の第2端子収容筒部32に収容保持された不図示の装置側信号用端子に接続される端子金具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2752032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1に示した給電コネクタ1は、受電側コネクタ5に対する給電側コネクタ3の着脱操作を、屋根等を備えた施設内で実施することを前提として設計しているため、受電側コネクタ5には、雨水等の侵入した際に、侵入した水を排出する機構等が設けられていない。
【0013】
そのため、屋根等の無い環境で、受電側コネクタ5に対する給電側コネクタ3の着脱操作が実施され、その際、雨水が受電側コネクタ5の外筒壁部12内に侵入すると、侵入した雨水が受電側コネクタ5内に溜まってしまって、受電側コネクタ5に給電側コネクタ3を接続した際に、例えば電流のリークの発生などの不都合を招くおそれがあった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、内部に侵入した雨滴等の異物が内部に蓄積することがなく、異物の蓄積によって給電側コネクタとの接続に支障が生じることのない受電側コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)給電装置に接続された給電側コネクタが嵌合接続可能に電気自動車の車体に取り付けられる受電側コネクタであって、
前記給電側コネクタの筒状のハウジング前側筒部が内周に嵌合する外筒壁部と、該外筒壁部の一端側を閉塞する奥壁部とを備えた有底筒状構造に形成されて、他端側の開口を上方又は斜め上方に向けて前記車体に取り付けられるハウジング本体と、
前記外筒壁部の内側の前記奥壁部に一体形成されて、前記ハウジング前側筒部内の装置側電源用端子に接続される車体側電源用端子を収容保持した電源用端子収容筒部と、
前記外筒壁部の内側の前記奥壁部に一体形成されて、前記ハウジング前側筒部内の装置側信号用端子に接続される車体側信号用端子を収容保持した信号用端子収容筒部と、
前記外筒壁部の内側の前記奥壁部上で、前記車体に取り付けられた状態で最下端となる位置に貫通形成された本体排水口と、
を備え、
更に、前記奥壁部に、前記信号用端子収容筒部に侵入した水を外部に排水する信号端子用排水口を備え、前記奥壁部の外部となるコネクタ背面から前記信号端子用排水口への被水を防止する保護壁を備え、
前記保護壁は、前記信号端子用排水口の開口縁から所定距離隔てた周囲から立設した周壁と、前記信号端子用排出口に対向した対向壁とにより構成され、かつ前記周壁の一部が開口した形状であることを特徴とする受電側コネクタ。
【0018】
上記(1)の構成によれば、受電側コネクタに対する給電側コネクタの接続操作が屋外等で実施され、雨滴等の異物が外筒壁部の内側に侵入した際には、侵入した異物は、本体排水口より速やかに外部に排出される。
【0019】
従って、内部に侵入した雨滴等の異物が外筒壁部の内部に蓄積することがなく、異物の蓄積によって給電側コネクタとの接続に支障が生じることがない受電側コネクタを提供することができる。
【0020】
また、上記(1)の構成によれば、信号用端子収容筒部に侵入した水は信号端子用排水口から外部に速やかに排出することができる。
【0021】
即ち、信号用端子収容筒部には侵入した水が溜まることがなく、受電側コネクタに給電側コネクタを接続した際に、例えば電流のリークの発生などの不都合を確実に防止することができる。
【0022】
また、上記(1)の構成によれば、車両走行時等に車体下方から跳ね上がった水等が信号端子用排水口へ侵入することを、保護壁が防止する。従って、跳ね上げの水等で、信号用端子収容筒部内が汚損することを防止することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による受電側コネクタによれば、受電側コネクタに対する給電側コネクタの接続操作が屋外等で実施され、雨滴等の異物が外筒壁部の内側に侵入した際には、侵入した異物は、本体排水口より速やかに外部に排出される。
【0024】
従って、内部に侵入した雨滴等の異物が外筒壁部の内部に蓄積することがなく、異物の蓄積によって給電側コネクタとの接続に支障が生じることがない受電側コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る受電側コネクタの一実施形態の背面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示した受電側コネクタの正面図である。
【
図3】
図1に示した受電側コネクタの背面図である。
【
図6】一実施形態の受電側コネクタの奥壁部からコネクタ背面に突出する電源用端子収容筒部と信号用端子収容筒部の状態を示す拡大斜視図である。
【
図7】一実施形態の受電側コネクタの奥壁部に形成された信号端子用排水口の位置を示す拡大正面図である。
【
図9】一実施形態の受電側コネクタの奥壁部に形成された信号端子用排水口の位置を示す拡大背面図である。
【
図11】一実施形態の受電側コネクタに装備された信号端子用排水口への被水を防止する保護壁の説明図である。
【
図12】従来の給電コネクタの受電側コネクタと給電側コネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る受電側コネクタ5の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1〜
図5は本発明に係る受電側コネクタの一実施形態を示したもので、
図1は本発明に係る受電側コネクタの一実施形態の背面側から見た斜視図、
図2は
図1に示した受電側コネクタの正面図、
図3は
図1に示した受電側コネクタの背面図、
図4は
図2のA−A断面図、
図5は
図2のB−B断面図である。
【0028】
この一実施形態の受電側コネクタ51は、
図12の受電側コネクタ5に相当するもので、給電装置に接続された給電側コネクタが嵌合接続可能に電気自動車の車体に取り付けられる。
【0029】
受電側コネクタ51は、ハウジング本体61と、開閉キャップ71と、電源用端子収容筒部81と、信号用端子収容筒部91と、本体排水口101と、信号端子用排水口111と、を備えている。
【0030】
ハウジング本体61は、
図12に示した給電側コネクタ3の筒状のハウジング前側筒部3aが内周に嵌合する外筒壁部62と、該外筒壁部62の一端側(奥側)を閉塞する奥壁部63とを備えた有底筒状構造に形成されている。また、外筒壁部62の外周には、車体への取付け部となるフランジ部64が、一体形成されている。
【0031】
上記ハウジング本体61は、外筒壁部62の他端側の開口62aを上方又は斜め上方に向けて前記車体に取り付けられる。
【0032】
開閉キャップ71は、外筒壁部62の開口62aを開閉可能に覆う略円形の蓋体である。この開閉キャップ71は、
図1に示すように、外周の一側がヒンジ機構73により外筒壁部62に回動可能に連結されている。
図1の矢印Rは、ヒンジ機構73による開閉キャップ71の回動方向を示している。また、ヒンジ機構73に対向する位置となる開閉キャップ71の外周の他側には、
図2に示すように、係止部74が設けられている。
【0033】
開閉キャップ71は、ヒンジ機構73による回動により、開口62aを開閉可能になっている。開閉キャップ71は、開口62aを閉じた状態では、外筒壁部62の外周に一体形成されたキャップ係止片65が係止部74に係合することで、開口62aを閉じた状態に固定される。
【0034】
電源用端子収容筒部81は、外筒壁部62の内側の奥壁部63に固定されている。本実施形態の場合、電源用端子収容筒部81は、
図2に示すように奥壁部63の中心Oを挟む左右2箇所に設けられている。また、電源用端子収容筒部81は、
図4及び
図6に示すように、車体側電源用端子83を収容保持する。この車体側電源用端子83は、
図12に示したハウジング前側筒部3a内の第1端子収容筒部31に収容保持された不図示の装置側電源用端子に接続される端子金具である。
【0035】
信号用端子収容筒部91は、外筒壁部62の内側の奥壁部63に固定されている。本実施形態の場合、信号用端子収容筒部91は、
図2に示すように、奥壁部63の中心Oを挟む上下2箇所に設けられている。また、それぞれの信号用端子収容筒部91は、
図2に示すように、その内部に、4本の端子保持筒部93を有している。4本の端子保持筒部93の基端は、
図6に示すように、奥壁部63の背面から突出している。これらの各端子保持筒部93は、
図5に示すように、車体側信号用端子95を収容保持する。車体側信号用端子95は、
図12に示したハウジング前側筒部3a内の第2端子収容筒部32に収容保持された不図示の装置側信号用端子に接続される端子金具である。車体側信号用端子95の基端には、
図5に示すように、車載のバッテリへの給電部に接続される信号用電線96が接続されている。
【0036】
本体排水口101は、
図2及び
図5に示すように、外筒壁部62の内側の奥壁部63上で、車体に取り付けられた状態で最下端となる位置に貫通形成されている。そして、本実施形態の場合は、本体排水口101には、
図5に示すように、配水管(グロメット)103が接続されている。
【0037】
配水管103は、奥壁部63の背部から所定の長さに渡って延出している。また、配水管103は、
図5に示すように、途中に曲がり部103aが形成されている。曲がり部103aを装備していることにより、車体下部で跳ね上がった水が配水管103の端部開口103bに飛び込んでも、本体排水口101には到達し難く、車体下部で跳ね上がった水が本体排水口101からハウジング本体61内に侵入することを防止することができる。
【0038】
信号端子用排水口111は、信号用端子収容筒部91に侵入した水を外部に排水する開口部である。また、信号端子用排水口111は、
図6〜
図10に示すように、各信号用端子収容筒部91毎に、信号用端子収容筒部91の内周縁に隣接する2箇所で、奥壁部63を貫通して設けられている。
【0039】
更に、本実施形態では、
図11に示すように、奥壁部63の外部となるコネクタ背面から信号端子用排水口111への被水を防止する保護壁113を備えている。
【0040】
以上に説明した一実施形態の受電側コネクタ51では、受電側コネクタ51に対する給電側コネクタの接続操作が屋外等で実施され、雨滴等の異物が開口62aから外筒壁部62の内側に侵入した際には、侵入した異物は、本体排水口101より速やかに外部に排出される。
【0041】
従って、内部に侵入した雨滴等の異物が外筒壁部62の内部に蓄積することがなく、異物の蓄積によって給電側コネクタとの接続に支障が生じることがない。
【0042】
また、以上に説明した一実施形態の受電側コネクタ51では、信号用端子収容筒部91に侵入した水は信号端子用排水口111から外部に速やかに排出することができる。
【0043】
即ち、信号用端子収容筒部91には、侵入した水が溜まることがなく、受電側コネクタ51に給電側コネクタ3を接続した際に、例えば電流のリークの発生などの不都合を確実に防止することができる。
【0044】
なお、上記実施形態では示していないが、電源用端子収容筒部81にも、該電源用端子収容筒部81に侵入した水を排出する電源端子用排水口が設けられる。そのため、電源用端子収容筒部81に侵入した水は電源端子用排水口から外部に速やかに排出することができる。従って、電源用端子収容筒部81にも、侵入した水が溜まることがなく、受電側コネクタ51に給電側コネクタ3を接続した際に、例えば電流のリークの発生などの不都合を確実に防止することができる。
【0045】
また、以上に説明した一実施形態の受電側コネクタ51では、車両走行時等に車体下方から跳ね上がった水等が信号端子用排水口111へ侵入することを、保護壁113が防止する。従って、跳ね上げの水等で、信号用端子収容筒部91内が汚損することを防止することもできる。
【0046】
なお、上記実施形態では示していないが、電源用端子収容筒部81の排水用に装備される電源端子用排水口にも、奥壁部63の外部となるコネクタ背面から電源端子用排水口への被水を防止する保護壁が設けられる。
【0047】
従って、車両走行時等に車体下方から跳ね上がった水等が電源端子用排水口へ侵入することを、保護壁が防止する。そのため、跳ね上げの水等で、電源用端子収容筒部81内が汚損することを防止することもできる。
【0048】
なお、本発明の受電側コネクタは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、信号端子用排水口111を装備する位置は、上記実施形態に示した位置に限らない。また、車両走行時等に車体下方から跳ね上がった水等が信号端子用排水口へ侵入することを防止するための保護壁の形状等も、上記実施形態に示した形状に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
51 受電側コネクタ
61 ハウジング本体
62 外筒壁部
63 奥壁部
81 電源用端子収容筒部
91 信号用端子収容筒部
101 本体排水口
111 信号端子用排水口
113 保護壁