特許第5727774号(P5727774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727774
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】自動車のシート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20150514BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B60N2/06
   B60N2/42
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-274213(P2010-274213)
(22)【出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2012-121468(P2012-121468A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391032451
【氏名又は名称】富士シート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】辻本 尚之
(72)【発明者】
【氏名】上西 甲朗
(72)【発明者】
【氏名】西村 成生
(72)【発明者】
【氏名】駒井 哲朗
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−058527(JP,A)
【文献】 特開2006−193010(JP,A)
【文献】 特開2009−241919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに固定されたシートレールと、該シートレールに車両前後方向に移動可能に支持されたスライドレールと、該スライドレールに固定されたサイドパネル及び該サイドパネルの前部に配設されたフロントパネルを有するシートフレームとを備えた自動車のシート装置であって、
前記サイドパネルは、前記スライドレールの上壁部に固定された底板部から上方に屈曲して延び、シートベルトアンカが固定された縦板部を有し、該縦板部は前記スライドレールの車幅方向外縁に略一致した位置に配設されており、
前記スライドレールにはブラケットが設けられ、該ブラケットは、前記スライドレールに固定された固定部に続いて上方に屈曲して延びる縦壁と、該縦壁の上端から車幅方向内側に屈曲し、前記フロントパネルの下方に位置する庇部とを有し、前記縦壁は前記スライドレールの車幅方向内縁に略一致する位置に配設されている
ことを特徴とする自動車のシート装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のシート装置において、
前記スライドレールを前記シートレールの前後方向所望位置にロック,アンロックするシートロックプレートを有するシートロック機構を備え、
前記シートロックプレートは、前記ブラケットの庇部の下方に位置している
ことを特徴とする自動車のシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアに固定されたシートレールと、該シートレールに車両前後方向に移動可能に支持されたスライドレールと、該スライドレールに固定されたシートフレームとを備えた自動車のシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシート装置では、車両前面衝突時に、シートベルトにより拘束された乗員が慣性力によって車両前方に移動することにより、シートフレームのフロントパネルが下方に沈み込むように変形する場合がある。このフロントパネルの変形によって、シートが車幅方向外側に倒れるように変形する場合があり、この変形に伴って車両外側に位置するシートレールが回転してしまい、場合によってはシートが車両外側に崩壊するおそれがある。
【0003】
このようなフロントパネルの沈み込みによる変形を抑制するために、例えば、特許文献1には、門形をなすよう形成されたストラットパイプの左,右端部を左,右のスライドレールに結合し、中央部をフロントパネルの下面に車幅方向に渡って結合してシートフレーム全体を補強するようにした構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−104107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来構造のように、門形のストラットパイプにより補強する構造とした場合、フロントパネルの変形は抑制できるものの、シートフレーム全体に渡る大掛かりな補強となり、シート装置全体の重量,コストが嵩むという問題が生じる。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、重量,コストの上昇を抑えつつ、車両衝突時のフロントパネルの変形によるシートレールの車外側への倒れ込みを防止できる自動車のシート装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フロアに固定されたシートレールと、該シートレールに車両前後方向に移動可能に支持されたスライドレールと、該スライドレールに固定されたサイドパネル及び該サイドパネルの前部に配設されたフロントパネルを有するシートフレームとを備えた自動車のシート装置であって、
前記サイドパネルは、前記スライドレールの上壁部に固定された底板部から上方に屈曲して延び、シートベルトアンカが固定された縦板部を有し、該縦板部は前記スライドレールの車幅方向外縁に略一致した位置に配設されており、前記スライドレールにはブラケットが設けられ、該ブラケットは、前記スライドレールに固定された固定部に続いて上方に屈曲して延びる縦壁と、該縦壁の上端から車幅方向内側に屈曲し、前記フロントパネルの下方に位置する庇部とを有し、前記縦壁は前記スライドレールの車幅方向内縁に略一致する位置に配設されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車のシート装置において、前記スライドレールを前記シートレールの前後方向所望位置にロック,アンロックするシートロックプレートを有するシートロック機構を備え、前記シートロックプレートは、前記ブラケットの庇部の下方に位置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るシート装置によれば、スライドレールに固定された固定部と、該固定部に続いて上方に延びる縦壁と、該縦壁の上端から車幅方向内側に屈曲して延びる庇部とを有するブラケットを設け、前記縦壁をスライドレールの車幅方向中心より車内側に位置するよう配置し、前記庇部をフロントパネルの下方に位置するよう配置した。
【0010】
このように構成したので、車両衝突時の乗員からの入力によってフロントパネルがある程度沈み込むように変形すると、該フロントパネルが庇部に当接し、変形量が抑制される。そして前記縦壁がスライドレールの車幅方向中心より車内側に位置していることから、庇部に作用する荷重が縦壁を介してスライドレール、ひいてはシートレールを車内側に回転させるように作用することとなり、この車内側への回転力が、シートレールに加わる車外側への回転力を抑制する。これにより、シートレールの車外側への倒れを防止することができ、ひいてはシートが崩壊するといった問題を回避でき、車両衝突時の乗員の保護性能を高めることができる。
【0011】
本発明では、フロントパネルが変形した際に当接する程度の大きさのブラケットをシートレールに設けるだけの構造で済み、従来の門形のストラットパイプでシートフレーム全体を補強する場合に比べてシート装置全体の重量,コストを低減でき、ひいてはシート装置の軽量化,低コスト化に貢献できる。
【0012】
請求項2の発明では、前記スライドレールをロックするシートロックプレートを、庇部の下方に位置させたので、フロントパネルの変形によってシートロックプレートがロック解除方向に回動するのを防止することができ、車両衝突時の乗員の保護性能をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1による自動車のシート装置の側面図である。
図2】前記シート装置の正面図である。
図3】前記シート装置の断面図(図1のIII-III線断面図)である。
図4】前記シート装置の断面図(図1のIV-IV線断面図)である。
図5】前記シート装置の断面図(図1のV-V線断面図)である。
図6】前記シート装置の断面図(図5のVI-VI線断面図)である。
図7】前記シート装置の変形モードを示す模式図である。
図8】前記シート装置の変形モードを示す模式図である。
図9】一般的なシート装置の変形モードを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による自動車のシート装置を説明するための図である。なお、本実施例の説明のなかで前後,左右という場合は、特記なき限り、シートに着座した状態で車両進行方向に見たときの前後,左右を意味する。
【0016】
図において、1は自動車のシート装置を示している。このシート装置1は、フロアパネル2上に起立するよう固定された前,後脚部3a,3bを有する左,右一対のシートレール3,3と、該左,右のシートレール3に車両前後方向に移動可能に支持されたスライドレール5,5と、該左,右のスライドレール5に取り付けられたシートフレーム6とを備えている。
【0017】
このシートフレーム6は、前後方向に延びる左,右一対のサイドフレーム7,7と、該左,右のサイドフレーム7の前端部間を覆うように結合されたフロントパネル8と、前記左,右のサイドフレーム7の車外側に結合されたサイドパネル9,9とを有する。
【0018】
前記左,右のサイドフレーム7の後端部にはシートバックフレーム10が前後方向に回動可能に連結されている。前記シートフレーム6及びシートバックフレーム10には、乗員が着座するシートクッション,シートバック(不図示)が配設されている。
【0019】
前記左,右のサイドパネル9は、前記スライドレール5の前後方向略全長に渡る長さを有し、該スライドレール5の上壁部5aに複数本のボルト13により固定された底板部9aと、該底板部9aの車外側縁に続いて上方に屈曲して延びる縦板部9bと、該縦板部9bの前,後端部に続いて上方に突出して延び、前記サイドフレーム7にボルト締め固定された前,後取付け部9c,9dとを有する。
【0020】
前記シートフレーム6の車幅方向内側に配設されたサイドパネル9の後取付け部9dには、シートベルトアンカ14が取り付けられている(図1の二点鎖線参照)。このシートベルトアンカ14には、例えば、図7(a)に示すように、シートベルト装置のバックル15aが取り付けられており、該バックル15aにウェビング15bが接続されたタングプレート15cを装着することにより、シートに着座した乗員の肩部及び腰部が拘束される。
【0021】
前記スライドレール5には、該スライドレール5をシートレール3に対して車両前後方向の所望位置にロックするシートロック機構が配設されている。
【0022】
このシートロック機構は、前記シートレール3に前後方向に所定間隔をあけて形成された多数のロック孔3cと、前記スライドレール5に回動ピン16により前記何れかのロック孔3cに係合するロック位置と該係合を解除するアンロック位置との間で回動可能に支持された係合部材17と、該係合部材17をアンロック位置に押し下げるシートロックプレート18と、該シートロックプレート18に連結された操作レバー19と、前記シートロックプレート18を待機位置に付勢するばね部材20とを備えている。
【0023】
このシートロックプレート18は、前後方向に延びるプレート本体18aと、該プレート本体18aの前部に車幅方向外方に延びるよう形成された揺動片18bと、後端部に形成された押圧部18cとを有する。
【0024】
また前記シートロックプレート18は、後述する、前記プレート本体18aの外縁に続いて上方に屈曲して延びる縦壁部18dと、該縦壁部18dに続いて前方に斜め上向きに突出する係合片18eを有する。
【0025】
シートの前後位置を調整するには、操作レバー19を上方に回動させる。すると、シートロックプレート18が係合部材17を押し下げ、該係合部材17がアンロック位置に回動する。この状態でシートを前後移動させて位置調整を行い、この後操作レバー19を元に戻すことにより係合部材17が何れかのロック孔3cに係合し、スライドレール5を移動不能にロックする。
【0026】
前記シート装置1の車幅方向外側に位置するスライドレール5には、ブラケット23が、前記サイドパネル9の車幅方向内側に位置するよう配置されている。
【0027】
このブラケット23は、前記フロントパネル8の前後方向後半部8′に対応する前後長さを有し、前記シートベルトアンカ14の反対側のスライドレール5に配設されている。
【0028】
前記ブラケット23は、前記スライドレール5の上壁部5aに、前記サイドパネル9の底板部9aとともに前記ボルト13により共締め固定された固定部23aと、該固定部23aの車幅方向内縁に続いて上方に屈曲して延びる縦壁23bと、該縦壁23bの上縁に続いて車幅方向内側に屈曲して延びる庇部23cとを有する。
【0029】
前記ブラケット23の固定部23aには、山形状をなす屈曲部23dが形成されている。この屈曲部23dとサイドパネル9の底板部9aとで三角形状をなす軸孔25が形成され、該軸孔25内に前記シートロックプレート18の揺動片18bが軸支されている。これによりシートロックプレート18は、揺動片18bを中心に前後に揺動可能に支持されている。
【0030】
前記縦壁23bの前部には、前記ばね部材20を係止する係止孔23eが形成されている。
【0031】
また前記縦壁23bの後部には、係合孔23fが形成されている。該係合孔23f内には、前記シートロックプレート18の係合片18eが上下揺動可能に係合しており、これにより前記シートロックプレート18の上,下揺動位置が規制されている。
【0032】
そして前記ブラケット23の縦壁23bは、前記スライドレール5の車幅方向中心線Cより車内側に位置するよう配置されている(図2図3図5参照)。詳細には、スライドレール5の上壁部5aの内縁より若干車内側に位置するよう配置されている。
【0033】
前記庇部23cは、前記フロントパネル8の下方に位置するよう配置されている。詳細には、フロントパネル8の車幅方向側部に形成された段落ち部8aに対向するよう形成されている(図3参照)。
【0034】
また前記庇部23cの下方には、前記シートロックプレート18の縦壁部18d及び係合片18eが位置するよう配置されている。
【0035】
本実施例のシート装置によれば、車幅方向外側に位置するスライドレール5にブラケット23を配設し、該ブラケット23をスライドレール5の上壁部5aに固定された固定部23aと、該固定部23aの内縁に続いて上方に延びる縦壁23bと、該縦壁23bの上端から車幅方向内側に屈曲して延びる庇部23cとを有するものとし、前記縦壁23bをスライドレール5の車幅方向中心線Cより車内側に位置するよう配置し、前記庇部23cをフロントパネル8の下方に位置するよう配置した。
【0036】
このように構成したので、図7図8に示すように、車両衝突時には、シートベルトにより拘束された乗員の慣性力によりフロントパネル8が沈み込むように変形するとともに、シートベルトの引っ張り力によりシートを車外側に倒す力が作用し、シートレール3に車外側への回転力f2が作用する。本実施例では、乗員からの入力によってフロントパネル8が沈み込むように変形すると庇部23cに当接し、該庇部23cが前記入力を支えるとともに、庇部23cを介して縦壁23bからシートレール3を車内側に倒すように回転させる力f1が加わることとなる。このブラケット23に加わる車内側への回転力f1により、シートレール3に加わる車外側への回転力f2が軽減されることとなる(図8(b)参照)。
【0037】
これにより、シートレール3の車外側への倒れを防止することができ、ひいてはシートが崩壊するといった問題を回避でき、車両衝突時の乗員の保護性能を高めることができる。例えば、図9に示すように、従来の一般的なシート装置では、車両衝突時に、フロントパネル30が沈み込むように変形すると、該フロントパネル30の変形によって、シートが車幅方向外側に倒れるように変形する場合があり、この変形に伴って車両外側に位置するシートレール31が回転してしまう傾向がある。本実施例では、このようなシートレールの倒れ込みを防止できる。
【0038】
本実施例では、前記フロントパネル8の後半部8′で、かつ車外側部分8aが当接する程度の大きさのブラケット23を設けるだけの構造で済み、従来の門形のストラットパイプでシートフレーム全体を補強する場合に比べてシート装置全体の重量,コストを低減でき、ひいてはシート装置の軽量化,低コスト化に貢献できる。
【0039】
本実施例では、前記スライドレール5をロックするシートロックプレート18を、前記庇部23cの下方に位置させたので、ブラケット23によりシートロックプレート18の上方を覆うことができ、前記フロントパネル8の変形によってシートロックプレート18がロック解除方向に回動するのを防止することができ、車両衝突時の乗員の保護性能をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 シート装置
2 フロアパネル
3 シートレール
5 スライドレール
6 シートフレーム
8 フロントパネル
9 サイドパネル
18 シートロックプレート
23 ブラケット
23a 固定部
23b 縦壁
23c 庇部
C スライドレールの中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9