(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接地電位部から絶縁した直流電源の電力を、該直流電源の正端子側及び負端子側の主回路配線上に設けた三相インバータ回路により直流−交流変換して三相交流電動機に供給する非接地電源の絶縁状態を、前記主回路配線と接地電位部との間に予定時間接続したコンデンサの充電電圧に基づき求めた前記主回路配線の地絡抵抗の値を用いて検出する方法であって、
放電された状態で前記主回路配線の一方と接地電位部との間に前記予定時間接続したコンデンサの充電電圧と、放電された状態で前記主回路配線の他方と接地電位部との間に前記予定時間接続した前記コンデンサの充電電圧とに基づいて、前記三相インバータ回路の一次側を含む前記非接地電源の直流回路部分における絶縁状態の検出を行うか、前記三相インバータ回路の二次側を含む前記非接地電源の交流回路部分における絶縁状態の検出を行うかを判定し、
前記交流回路部分における絶縁状態の検出を行うと判定した場合に、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたか否かを判定し、
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたと判定した場合に、前記直流回路部分における充電状態の検出を行うと判定した場合と同じ求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにした、
ことを特徴とする非接地電源の絶縁状態検出方法。
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチングデューティー比に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにしたことを特徴とする請求項1記載の非接地電源の絶縁状態検出方法。
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチング周波数に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の非接地電源の絶縁状態検出方法。
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと判定した場合に、前記接地電位部と前記直流電源の正端子及び負端子との間にそれぞれ接続した正負のYコンデンサの容量に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の非接地電源の絶縁状態検出方法。
接地電位部から絶縁した直流電源の電力を、該直流電源の正端子側及び負端子側の主回路配線上に設けた三相インバータ回路により直流−交流変換して三相交流電動機に供給する非接地電源の絶縁状態を、前記主回路配線と接地電位部との間に予定時間接続したコンデンサの充電電圧に基づき求めた前記主回路配線の地絡抵抗の値を用いて検出する装置であって、
放電された前記コンデンサを前記主回路配線の一方と接地電位部との間に予定時間接続して充電させる第1スイッチング手段と、
放電された前記コンデンサを前記主回路配線の他方と接地電位部との間に前記予定時間接続して充電させる第2スイッチング手段と、
前記コンデンサの充電電圧を計測する計測手段と、
前記第1スイッチング手段により充電された前記コンデンサを前記計測手段に接続して該コンデンサの充電電圧を計測させる第3スイッチング手段と、
前記第2スイッチング手段により充電された前記コンデンサを前記計測手段に接続して該コンデンサの充電電圧を計測させる第4スイッチング手段と、
前記第3スイッチング手段により前記計測手段に計測させた前記コンデンサの充電電圧と、前記第4スイッチング手段により前記計測手段に計測させた前記コンデンサの充電電圧とに基づいて、前記三相インバータ回路の一次側を含む前記非接地電源の直流回路部分における絶縁状態の検出を行うか、前記三相インバータ回路の二次側を含む前記非接地電源の交流回路部分における絶縁状態の検出を行うかを判定する第1判定手段と、
前記交流回路部分における絶縁状態の検出を行うと前記第1判定手段が判定した場合に、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたか否かを判定する第2判定手段と、
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたと前記第2判定手段が判定した場合に、前記直流回路部分における充電状態の検出を行うと前記第1判定手段が判定した場合と同じ求め方で、前記地絡抵抗の値を求める地絡抵抗値割出手段と、
を備えることを特徴とする非接地電源の絶縁状態検出装置。
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと前記第2判定手段が判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチングデューティー比に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求める補正地絡抵抗割出手段をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の非接地電源の絶縁状態検出装置。
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと前記第2判定手段が判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチング周波数に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求める補正地絡抵抗割出手段をさらに備えることを特徴とする請求項5又は6記載の非接地電源の絶縁状態検出装置。
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと前記第2判定手段が判定した場合に、前記接地電位部と前記直流電源の正端子及び負端子との間にそれぞれ接続した正負のYコンデンサの容量に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求める補正地絡抵抗割出手段をさらに備えることを特徴とする請求項5、6又は7記載の非接地電源の絶縁状態検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インバータ回路のONデューティー期間は、コントローラの制御による交流電動機の出力変化等の事情で変わることがある。ONデューティー期間が変わると、絶縁状態に変化が無くても、一定時間の間に充電回路により充電されるフライングキャパシタの充電電圧が変わる。そのため、ONデューティー期間が変わる前と同じ求め方で充電電圧から地絡抵抗の値を求めると、絶縁状態に変化が無くても地絡抵抗の値が変わってしまう。
【0006】
そこで、地絡判断を行う装置側でインバータ回路のONデューティー期間の変化を演算処理により検出し、その結果に応じて地絡抵抗を求め方を変更することが考えられる。しかし、ONデューティー期間の変化のペースに装置の処理能力が追いつかないと、ONデューティー期間の変化にリアルタイムに追従して装置が地絡抵抗の求め方を変更できない可能性がある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、インバータ回路のONデューティー期間が変わる可能性があっても、精度のよい地絡抵抗の値に基づく交流回路部分の絶縁状態検出を可能にすることができる非接地電源の絶縁状態検出方法と、この方法を実施する際に用いて好適な非接地電源の絶縁状態検出装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法は、
接地電位部から絶縁した直流電源の電力を、該直流電源の正端子側及び負端子側の主回路配線上に設けた三相インバータ回路により直流−交流変換して三相交流電動機に供給する非接地電源の絶縁状態を、前記主回路配線と接地電位部との間に予定時間接続したコンデンサの充電電圧に基づき求めた前記主回路配線の地絡抵抗の値を用いて検出する方法であって、
放電された状態で前記主回路配線の一方と接地電位部との間に前記予定時間接続したコンデンサの充電電圧と、放電された状態で前記主回路配線の他方と接地電位部との間に前記予定時間接続した前記コンデンサの充電電圧とに基づいて、前記三相インバータ回路の一次側を含む前記非接地電源の直流回路部分における絶縁状態の検出を行うか、前記三相インバータ回路の二次側を含む前記非接地電源の交流回路部分における絶縁状態の検出を行うかを判定し、
前記交流回路部分における絶縁状態の検出を行うと判定した場合に、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたか否かを判定し、
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたと判定した場合に、前記直流回路部分における充電状態の検出を行うと判定した場合と同じ求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにした、
ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、請求項5に記載した本発明の絶縁状態検出装置は、
接地電位部から絶縁した直流電源の電力を、該直流電源の正端子側及び負端子側の主回路配線上に設けた三相インバータ回路により直流−交流変換して三相交流電動機に供給する非接地電源の絶縁状態を、前記主回路配線と接地電位部との間に予定時間接続したコンデンサの充電電圧に基づき求めた前記主回路配線の地絡抵抗の値を用いて検出する装置であって、
放電された前記コンデンサを前記主回路配線の一方と接地電位部との間に予定時間接続して充電させる第1スイッチング手段と、
放電された前記コンデンサを前記主回路配線の他方と接地電位部との間に前記予定時間接続して充電させる第2スイッチング手段と、
前記コンデンサの充電電圧を計測する計測手段と、
前記第1スイッチング手段により充電された前記コンデンサを前記計測手段に接続して該コンデンサの充電電圧を計測させる第3スイッチング手段と、
前記第2スイッチング手段により充電された前記コンデンサを前記計測手段に接続して該コンデンサの充電電圧を計測させる第4スイッチング手段と、
前記第3スイッチング手段により前記計測手段に計測させた前記コンデンサの充電電圧と、前記第4スイッチング手段により前記計測手段に計測させた前記コンデンサの充電電圧とに基づいて、前記三相インバータ回路の一次側を含む前記非接地電源の直流回路部分における絶縁状態の検出を行うか、前記三相インバータ回路の二次側を含む前記非接地電源の交流回路部分における絶縁状態の検出を行うかを判定する第1判定手段と、
前記交流回路部分における絶縁状態の検出を行うと前記第1判定手段が判定した場合に、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたか否かを判定する第2判定手段と、
前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されたと前記第2判定手段が判定した場合に、前記直流回路部分における充電状態の検出を行うと前記第1判定手段が判定した場合と同じ求め方で、前記地絡抵抗の値を求める地絡抵抗値割出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法と、請求項5に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置とによれば、主回路配線の一方と接地電位部との間に予定時間接続したコンデンサの充電電圧と、同じく主回路配線の他方と接地電位部との間に予定時間接続したコンデンサの充電電圧とに基づいて、三相インバータ回路の二次側を含む非接地電源の交流回路部分における絶縁状態の検出を行うと判定した場合、予定時間中にコンデンサが連続充電されていれば、三相インバータ回路の一次側を含む非接地電源の直流回路部分における充電状態の検出を行うと判定した場合と同じ求め方で、地絡抵抗の値を求めることになる。
【0011】
したがって、非接地電源の交流回路部分における絶縁状態の検出を行う場合であっても、予定時間中にコンデンサが連続充電されていれば、三相インバータ回路のONデューティー期間を認識することなく、あるいは、認識したONデューティー期間の変化に追従する処理を行うことなく、交流地絡による地絡抵抗の値を精度よく求めることができる。よって、精度のよい交流地絡による地絡抵抗の値に基づく、非接地電源の交流回路部分の絶縁状態検出を、可能にすることができる。
【0012】
また、請求項2に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法は、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法において、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチングデューティー比に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにしたことを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項6に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置は、請求項5に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置において、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと前記第2判定手段が判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチングデューティー比に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求める補正地絡抵抗割出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法によれば、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法において、また、請求項6に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置によれば、請求項5に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置において、いずれも、三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチングデューティー比に応じた補正を行う前の段階まで、ONデューティー期間の変化に追従する処理を行わずに済むようにして、処理の負担を軽減することができる。
【0015】
また、請求項3に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法は、請求項1又は2に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法において、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチング周波数に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにしたことを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項7に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置は、請求項5又は6に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置において、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと前記第2判定手段が判定した場合に、前記三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチング周波数に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求める補正地絡抵抗割出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法によれば、請求項1又は2に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法において、また、請求項7に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置によれば、請求項5又は6に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置において、いずれも、三相インバータ回路の直流−交流変換時のスイッチング周波数に応じた補正を行う前の段階まで、ONデューティー期間の変化に追従する処理を行わずに済むようにして、処理の負担を軽減することができる。
【0018】
また、請求項4に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法は、請求項1、2又は3に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法において、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと判定した場合に、前記接地電位部と前記直流電源の正端子及び負端子との間にそれぞれ接続した正負のYコンデンサの容量に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求めるようにしたことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項8に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置は、請求項5、6又は7に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置において、前記予定時間中に前記コンデンサが連続充電されなかったと前記第2判定手段が判定した場合に、前記接地電位部と前記直流電源の正端子及び負端子との間にそれぞれ接続した正負のYコンデンサの容量に応じて補正した求め方で、前記地絡抵抗の値を求める補正地絡抵抗割出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法において、また、請求項8に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置によれば、請求項5、6又は7に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出装置において、いずれも、接地電位部と直流電源の正端子及び負端子との間にそれぞれ接続した正負のYコンデンサの容量に応じた補正を行う前の段階まで、ONデューティー期間の変化に追従する処理を行わずに済むようにして、処理の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非接地電源の絶縁状態検出方法及び非接地電源の絶縁状態検出装置によれば、インバータ回路のONデューティー期間が変わる可能性があっても、精度のよい地絡抵抗の値に基づく交流回路部分の絶縁状態検出を可能にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は本発明に係る非接地電源の絶縁状態検出方法を適用した本発明の一実施形態に係る地絡検出ユニットで地絡検出を行う昇圧電源回路の回路図である。
図1中引用符号1で示す昇圧電源回路は、車両(図示せず)の車体等の接地電位部から絶縁された直流電源Bと、直流電源Bの正端子側の主回路配線1p及び負端子側の主回路配線1nが一次側に接続された三相インバータ回路3と、三相インバータ回路3の二次側に接続された車両推進用等の三相交流電動機5を有している。
【0025】
この昇圧電源回路1では、三相インバータ回路3の上アームQ1及び下アームQ2の各相に対応する半導体スイッチ(例えばIGBTやパワーMOSFET等)が、不図示の車両推進系コントローラの制御により指定されたスイッチングデューティー比でオンオフを繰り返すことで、直流電源Bの直流電力が直流−交流変換により昇圧されて交流電力とされる。そして、この交流電力が三相交流電動機5のU,V,Wの各相に供給される。
【0026】
なお、
図1中引用符号RLpは一次側の正側の地絡抵抗、RLnは一次側の負側の地絡抵抗であり、それぞれ、正端子側の主回路配線1pや負端子側の主回路配線1nのうち一次側の主回路配線部分(請求項中の非接地電源の直流回路部分に相当)に地絡(直列地絡)が発生した場合の仮想抵抗である。また、
図1中引用符号RLは二次側の地絡抵抗であり、正端子側の主回路配線1pや負端子側の主回路配線1nのうち二次側の主回路配線部分(請求項中の非接地電源の交流回路部分に相当)に地絡(交流地絡)が発生した場合の仮想抵抗である。
【0027】
なお、
図1には、昇圧電源回路1の地絡や絶縁状態を検出する地絡検出ユニット11(請求項中の非接地電源の絶縁状態検出装置に相当)の一部が示されている。この地絡検出ユニット11は、
図2の回路図に示すように、フライングキャパシタC1(請求項中のコンデンサに相当)と、フライングキャパシタC1を直流電源Bの正極及び負極にそれぞれ選択的に接続するスイッチS1,S2と、フライングキャパシタC1をマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略記する。)15及び接地電位部に選択的に接続するスイッチS3,S4とを有している。
【0028】
また、地絡検出ユニット11は、フライングキャパシタC1の一端(
図1、
図2中上方の極)を放電のために接地電位部に選択的に接続する(選択的に接地させる)スイッチS5を有している。
【0029】
マイコン15は直流電源Bよりも低い低圧系の電源(図示せず)によって動作するもので、直流電源Bはマイコン15の接地電位からも絶縁されている。各スイッチS1〜S5は、例えば光MOSFETで構成されており、直流電源Bから絶縁してマイコン15によりオンオフ制御できるようになっている。
【0030】
マイコン15とスイッチS3との接続点は、抵抗R3を介して接地されており、スイッチS4,S5と接地電位部との間には、抵抗R4,R5がそれぞれ接続されている。フライングキャパシタC1の一端(
図1、
図2中上方の極)側のスイッチS1,S3は直列接続されており、両者の接続点とフライングキャパシタC1の一端との間には、電流方向切替回路が接続されている。
【0031】
電流方向切替回路は並列回路であり、その一方は、スイッチS1,S3からフライングキャパシタC1の一端に向けて順方向となるダイオードD0と抵抗R1の直列回路で構成され、他方は、フライングキャパシタC1の一端からスイッチS1,S3に向けて順方向となるダイオードD1と抵抗R6の直列回路で構成されている。
【0032】
そして、上述したスイッチS5は、フライングキャパシタC1の一端(
図1、
図2中上方の極)に直接接続されておらず、ダイオードD1を介して接続されている(ダイオードD1のカソードに接続されている)。
【0033】
なお、必要に応じて、直流電源Bの正極及び負極間に並列に接続した直列抵抗列のうち一部の抵抗の両端にスイッチS1,S2を接続するようにし、直流電源Bの電圧を分圧した電圧がフライングキャパシタC1に充電されるようにしてもよい。
【0034】
そして、本実施形態では、マイコン15とスイッチS1〜S5とによって、請求項中の第1乃至第4スイッチング手段が構成されている。
【0035】
上述した地絡検出ユニット11では、地絡や絶縁状態を検出する際に、まず、マイコン15の制御により、予め決定しておいた予定時間に亘って、スイッチS1,S2をオンさせると共にスイッチS3〜S5をオフさせる。ここで、予定時間とは、フライングキャパシタC1が完全に充電されるのに要する時間よりも短い時間である。
【0036】
これにより、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、スイッチS1、ダイオードD0、抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端(
図1、
図2中上方の極)、他端(
図1、
図2中下方の極)、スイッチS2、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。そして、この充電回路において、フライングキャパシタC1を直流電源Bの電圧に応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0037】
続いて、マイコン15の制御により、スイッチS1,S2,S5をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせる。これにより、フライングキャパシタC1が、抵抗R6、抵抗R3、及び、抵抗R4の直列回路と並列接続される。そして、フライングキャパシタC1の充電電圧を抵抗R6,R3,R4で分圧したうちの抵抗R3の両端電圧の差に相当する電位が、マイコン15の第1A/D変換ポートA/D1に入力されて計測される。この計測値と、抵抗R6,R3,R4の分圧比とから、フライングキャパシタC1の充電電圧をマイコン15で計測させる。
【0038】
そして、マイコン15の制御により、フライングキャパシタC1を完全に放電させるのに十分な時間に亘って、スイッチS5をオンさせると共に他のスイッチS1〜S4をオフさせて、フライングキャパシタC1の一端(正極)を、ダイオードD1、スイッチS5、及び、抵抗R5を介して接地させて、放電回路を形成する。そして、この放電回路により、フライングキャパシタC1を放電させる。
【0039】
次に、マイコン15の制御により、上述した予定時間に亘って、スイッチS1,S4をオンさせると共にスイッチS2,S3,S5をオフさせる。これにより、直流地絡に関して、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、スイッチS1、ダイオードD0、抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端、他端、スイッチS4、抵抗R4、(接地電位部、)一次側の負側の地絡抵抗RLn、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。
【0040】
また、交流地絡に関して、
図1に示すように、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、スイッチS1、(
図1中不図示のダイオードD0、)抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端、他端、スイッチS4、(
図1中不図示の抵抗R4、接地電位部、)二次側の地絡抵抗RL(
図1ではU相に地絡が発生した場合を例示している)、三相インバータ回路3の下アームQ2のON状態の半導体スイッチ、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。
【0041】
そして、この充電回路において、フライングキャパシタC1を、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0042】
このように、マイコン15がスイッチS1,S4をオンさせると共にスイッチS2,S3,S5をオフさせる状態が、請求項中の第1スイッチング手段により請求項中のコンデンサが予定時間に亘って充電される状態に相当する。
【0043】
続いて、
図1に示すマイコン15の制御により、スイッチS1,S2,S5をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせて、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧の計測の際と同じ計測回路を形成する。そして、この計測回路を用いて、フライングキャパシタC1の充電電圧をマイコン15で計測させる。
【0044】
したがって、本実施形態では、マイコン15が請求項中の計測手段に相当している。また、マイコン15がスイッチS1,S2,S5をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせて、フライングキャパシタC1の充電電圧を計測する状態が、請求項中の第3スイッチング手段により請求項中のコンデンサの充電電圧を計測手段に計測させる状態に相当する。
【0045】
そして、マイコン15の制御により、フライングキャパシタC1を完全に放電させるのに十分な時間に亘って、スイッチS5をオンさせると共に他のスイッチS1〜S4をオフさせて、フライングキャパシタC1の一端(正極)を、ダイオードD1、スイッチS5、及び、抵抗R5を介して接地させて、放電回路を形成する。そして、この放電回路により、フライングキャパシタC1を放電させる。
【0046】
次に、マイコン15の制御により、上述した予定時間に亘って、スイッチS2,S3をオンさせると共にスイッチS1,S4,S5をオフさせる。これにより、直流地絡に関して、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、正側の地絡抵抗RLp、(接地電位部、)抵抗R3、スイッチS3、ダイオードD0、抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端、他端、スイッチS2、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。
【0047】
また、交流地絡に関して、
図1に示す直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、三相インバータ回路3の上アームQ1のON状態の半導体スイッチ、二次側の地絡抵抗RL(
図1ではU相に地絡が発生した場合を例示している)、(接地電位部、
図1中不図示の抵抗R3、)スイッチS3、(
図1中不図示のダイオードD0、)抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端、他端、スイッチS2、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。
【0048】
そして、この充電回路において、フライングキャパシタC1を、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0049】
このように、マイコン15がスイッチS2,S3をオンさせると共にスイッチS1,S4,S5をオフさせる状態が、請求項中の第2スイッチング手段により請求項中のコンデンサが予定時間に亘って充電される状態に相当する。
【0050】
続いて、マイコン15の制御により、スイッチS1,S2,S5をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせて、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧の計測の際や、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧の計測の際と同じ計測回路を形成する。そして、この計測回路を用いて、フライングキャパシタC1の充電電圧をマイコン15で計測させる。
【0051】
このように、マイコン15がスイッチS1,S2,S5をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせて、フライングキャパシタC1の充電電圧を計測する状態が、請求項中の第4スイッチング手段により請求項中のコンデンサの充電電圧を計測手段に計測させる状態に相当する。
【0052】
そして、
図1に示すマイコン15の制御により、フライングキャパシタC1を完全に放電させるのに十分な時間に亘って、スイッチS5をオンさせると共に他のスイッチS1〜S4をオフさせて、フライングキャパシタC1の一端(正極)を、ダイオードD1、スイッチS5、及び、抵抗R5を介して接地させて、放電回路を形成する。そして、この放電回路により、フライングキャパシタC1を放電させる。
【0053】
以上のようにして計測した、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧、及び、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧を用いて、所定の計測理論式の計算を行うことで、マイコン15は、一次側の正側の地絡抵抗RLpや一次側の負側の地絡抵抗RLnの値、あるいは、二次側の地絡抵抗RLを求め、これに基づいた直流電源Bの地絡や絶縁状態を検出することができる。マイコン15による各地絡抵抗RLp,RLn,RLの求め方については後述する。
【0054】
なお、本実施形態のマイコン15は、上述した不図示の車両推進系コントローラから、昇圧電源回路1の三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比を示すデータを、交流地絡による地絡抵抗RLを求めるのに利用する情報として周期的に受け取る。
【0055】
ところで、一次側の正側の地絡抵抗RLpや一次側の負側の地絡抵抗RLnに応じた充電電圧でフライングキャパシタC1が充電される場合と、二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧でフライングキャパシタC1が充電される場合とでは、フライングキャパシタC1の充電電荷の増加のイメージが異なる。これを示すのが
図3のグラフである。
【0056】
図3に示すように、一次側の正側の地絡抵抗RLpや一次側の負側の地絡抵抗RLnに応じた充電電圧でフライングキャパシタC1が充電される場合は、フライングキャパシタC1は予定時間の全長に亘って連続充電される。したがって、フライングキャパシタC1の充電電荷の増加イメージは、
図3の最上段のように連続的に増加するイメージとなる。
【0057】
一方、二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧でフライングキャパシタC1が充電される場合は、フライングキャパシタC1が三相インバータ回路の上アームQ1又は下アームQ2のONデューティー期間において断続充電される。したがって、フライングキャパシタC1の充電電荷の増加イメージは、
図3の3段目及び最下段にそれぞれ示す三相インバータ回路の下アームQ2や上アームQ1のONデューティー期間に同期した、2段目のように段階的に増加するイメージとなる。
【0058】
この結果、充電回路が形成される時間長が共に予定時間で等しいにも拘わらず、フライングキャパシタC1に充電される電荷量は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧でフライングキャパシタC1が充電される場合の方が少なくなる。
【0059】
そのため、フライングキャパシタC1が断続的に充電されるような交流地絡が生じる場合に、マイコン15が、直流地絡の場合に用いる所定の計測理論式によって地絡抵抗の値を求める訳には行かない。
【0060】
ところで、三相交流電動機5に三相インバータ回路3が供給する三相交流電流を、例えば
図4の波形図に示す50%のデューティー比にする場合、図中のA〜Fの各時点における三相インバータ回路3の上アームQ1や下アームQ2の各半導体スイッチのオンオフ状態は、
図5(a)〜(f)の各回路図に示すようになる。なお、番号に括弧が付いているスイッチは、OFF状態であることを示す。そして、スイッチのオンオフ状態の変化を下アームQ2の各スイッチ4〜6についてチャートで示すと、
図6に示すようになる。
【0061】
例えば、
図6の上段に示す、三相交流電動機5のU相に対応する4番のスイッチについて見ると、4番のスイッチがOFFとなるF〜A〜Bの期間では、5番か6番のスイッチが必ずONとなっている。
【0062】
このように、三相インバータ回路3の上アームQ1や下アームQ2のスイッチングのデューティー比が100/3(%)を超えると、あるスイッチがOFFである間に他のスイッチがONとなる期間が発生する。
【0063】
例えば
図1に示すように、三相交流電動機5のU相において交流地絡が発生した場合、交流地絡に対応する地絡抵抗RLを含むフライングキャパシタC1の充電回路は、本来は、U相に対応する4番のスイッチがONである期間にしか形成されないはずである。しかし、三相インバータ回路3の上アームQ1や下アームQ2のスイッチングのデューティー比が100/3(%)を超えると、例えば
図7の回路図に示すような、ON状態の他のスイッチ(
図7の場合はV相に対応する5番のスイッチ)を迂回して、フライングキャパシタC1の充電回路が形成される。
【0064】
したがって、昇圧電源回路1に交流地絡が発生した場合、三相インバータ回路3のスイッチングのデューティー比が100/3(%)を超えていると、フライングキャパシタC1は上述したような断続充電とはならない。そして、
図1のマイコン15によるスイッチS1〜S5のオンオフ制御で、地絡抵抗RLを含むフライングキャパシタC1の充電回路が形成される予定時間の全長に亘って、フライングキャパシタC1が連続充電される。
【0065】
なお、交流地絡の発生時に、地絡抵抗RLを含むフライングキャパシタC1の充電回路が形成される予定時間の全長に亘って、フライングキャパシタC1が連続充電される場合は、この他にも想定される。
図8に示すように、
図1の昇圧電源回路1における直流電源Bの正負の各極と接地電位部との間に、コモンモードノイズ対策用のYコンデンサY+,Y−を介設した場合が、その一例である。
【0066】
上述したYコンデンサY+,Y−は、充電された電荷をフライングキャパシタC1の充電時に放電する。このため、交流地絡の発生時に地絡抵抗RLを含むフライングキャパシタC1の充電回路が断続的に形成される場合、充電回路が形成されない期間にも、三相インバータ回路3の一次側には、YコンデンサY+,Y−の放電電荷をフライングキャパシタC1に充電する充電回路が形成される。よって、フライングキャパシタC1が結果的に、予定時間の期間中に連続充電状態となる可能性がある。
【0067】
そこで、本実施形態の地絡検出ユニット11では、交流地絡の発生時に、二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧でフライングキャパシタC1を充電させる充電回路が形成される予定時間の間、フライングキャパシタC1が連続充電状態にあるか否かによって、マイコン15が二次側の地絡抵抗RLの求め方を選ぶようにしている。
【0068】
次に、地絡検出ユニット11のマイコン15が、内蔵するROMに格納されたプログラムにしたがって行う、直流地絡や交流地絡による地絡抵抗RLp,RLn,RLを求める処理について、
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
図9に示すように、まず、マイコン15は、フライングキャパシタC1の充電電圧の計測を行う(ステップS1)。このステップS1の計測では、マイコン15は、フライングキャパシタC1の3種類の充電電圧を計測する。1種類目の充電電圧は、フライングキャパシタC1を直流電源Bの電圧に応じた電荷量で充電させた際の充電電圧である。2種類目の充電電圧は、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量で充電させた際の充電電圧である。3種類目は、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量で充電させた際の充電電圧である。いずれの充電電圧も、フライングキャパシタC1を十分放電させた後に予定時間に亘って充電させた場合の充電電圧である。
【0070】
次に、マイコン15は、直流地絡と交流地絡のどちらの発生を検出するかを判定する(ステップS3)。このステップS3の判定は、ステップS1でマイコン15が計測した、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧と、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧とが、一致する(所定の誤差範囲内で相違する場合を含む)か、一致しないかによって行う。そして、マイコン15は、両者が一致しない場合は直流地絡の発生を検出すると判定し、両者が一致する場合は交流地絡の発生を検出すると判定する。
【0071】
ステップS3において直流地絡の発生を検出すると判定した場合にマイコン15は、後述するステップS9に処理を移行する。一方、ステップS3において交流地絡の発生を検出すると判定した場合にマイコン15は、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比が、所定のしきい値以上であるか否かを確認する(ステップS5)。
【0072】
ここで、スイッチングデューティー比は、不図示の車両推進系コントローラから周期的に受け取っている最新のデータによって示される値を用いる。また、所定のしきい値とは、三相インバータ回路3の上アームQ1や下アームQ2の3つの半導体スイッチのいずれかが常にONとなる100/3(%)に設定することもできる。
【0073】
即ち、所定のしきい値を100/3(%)に設定するということは、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量や、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量で、フライングキャパシタC1を充電する予定時間の期間中に、フライングキャパシタC1が連続充電状態となっているか否かを、所定のしきい値を用いて判定することを意味している。
【0074】
但し、100/3(%)未満のスイッチングデューティー比であっても、予定時間の期間中にフライングキャパシタC1が実質的に連続充電状態となる場合がある。それが、例えば先に説明した、予定時間の期間中にYコンデンサY+,Y−(
図8参照)が充電電荷を放電することで、フライングキャパシタC1が連続充電状態となる場合である。したがって、そのようにして連続充電状態が確保される最低のスイッチングデューティー比の値を、所定のしきい値としてもよい。この所定のしきい値は、マイコン15が内蔵する不揮発性のRAMに記憶させておくことができる。
【0075】
そして、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比が、所定のしきい値以上である場合は(ステップS5でYES)、マイコン15は、ステップS9に処理を移行する。一方、所定のしきい値以上でない場合は(ステップS5でNO)、マイコン15は、交流地絡断続充電時処理を実行する(ステップS7)。
【0076】
ステップS7の交流地絡断続充電時処理において、マイコン15は、以下の3通りの処理のいずれかを行う。1つ目の処理は、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比と、ステップS1で計測したフライングキャパシタC1の3種類の充電電圧とを用いて、交流地絡による地絡抵抗RLを求める処理である。
【0077】
この処理では、まず、ステップS1で計測した直流電源Bの電圧に応じた電荷量で充電させた際のフライングキャパシタC1の充電電圧(=V0)から、直流電源Bの電圧(=VB)を、換算式を用いて算出する。この換算式は、例えば、特許第3962990号公報に記載された式を用いることができる。この式を本実施形態に適用した場合、換算式は、
V0=VB{1−e
(−T/C*R1) }・・・(式1)
となる。ここで、Tは予定時間、CはフライングキャパシタC1の静電容量、R1は地絡検出ユニット11の抵抗R1の抵抗値である。
【0078】
次に、ステップS1で計測した、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧(=VCn)と、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧(=VCp)と、直流電源Bの電圧VBと、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比とから、交流地絡による地絡抵抗RLを、換算式を用いて算出する。
【0079】
なお、ステップS7の交流地絡断続充電時処理は、ステップS3において交流地絡の発生を検出すると判定した場合に行う処理であるので、ステップS1で計測した、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧と、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧とは、いずれも、二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧であることになる。この点を前提にして、交流地絡による地絡抵抗RLを求める上述の換算式は、例えば、特許第3224977号公報に記載された式を用いることができる。
【0080】
この式は、一次側の負側の地絡抵抗RLnに応じた充電電圧(=VCn)や一次側の正側の地絡抵抗RLpに応じた充電電圧(=VCp)と、直流電源Bの電圧VBとの関係を示す式をベースとする。この関係式を本実施形態に適用した場合、関係式は、
VCp=VCn=VB{1−e
(−A*T/C*(R1+RL) }
となる。ここで、Aは三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比である。
【0081】
上式を整理すると、
RL=−R1−A*T/{C*ln(1−VCp/VB)}・・・(式2)
=−R1−A*T/{C*ln(1−VCn/VB)}・・・(式3)
となる。
【0082】
したがって、本実施形態の場合は、ステップS1で一次側の正側の地絡抵抗RLpに応じた充電電圧又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧として計測した充電電圧を、上記の式2のVCpとして代入し、また、ステップS1で一次側の負側の地絡抵抗RLnに応じた充電電圧又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧として計測した充電電圧を、上記の式3のVCnとして代入することで、交流地絡による地絡抵抗RLを求めることができる。
【0083】
以上が、ステップS7の交流地絡断続充電時処理においてマイコン15が行うことができる1つ目の処理である。
【0084】
2つ目の処理は、ステップS1で計測したフライングキャパシタC1の3種類の充電電圧を用いて、交流地絡による地絡抵抗RLを求める処理である。上述した1つ目の処理では、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aを考慮した式2,3によって、交流地絡による地絡抵抗RLを直接求めるようにしている。これに対して、2つ目の処理は、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aを考慮しない式によって、地絡抵抗を一旦求め、求めた地絡抵抗を三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aに応じて補正することで、交流地絡による地絡抵抗RLを間接的に求めるようにしている。
【0085】
この処理では、まず、交流地絡による地絡抵抗RLに応じた電荷量でフライングキャパシタC1を充電する予定時間の期間中に、フライングキャパシタC1が連続充電状態であった場合を仮定して、その場合の仮の地絡抵抗RL’を求める。そして、求めた仮の地絡抵抗RL’を、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aによって補正することで、交流地絡による真の地絡抵抗RLを求める。
【0086】
この場合、仮の地絡抵抗RL’は、予定時間の期間中にフライングキャパシタC1が連続充電状態であったものと仮定するので、直流地絡による正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLnと同じ換算式で求めることができる。地絡抵抗RLp,RLnの換算式は、例えば、特許第3962990号公報に記載された式を用いることができる。
【0087】
この式は、一次側の正側の地絡抵抗RLpと、この地絡抵抗RLpに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧(=VCp)と、直流電源Bの電圧VBとの関係を示す式や、一次側の負側の地絡抵抗RLnと、この地絡抵抗RLnに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧(=VCn)と、直流電源Bの電圧VBとの関係を示す式である。これらの式を本実施形態に適用した場合、各式は、
RLp=−R1−{T/C*ln[1−(VCp/VB)]}・・・(式4)
RLn=−R1−{T/C*ln[1−(VCn/VB)]}・・・(式5)
となる。
【0088】
ここで、直流電源Bの電圧VBは、上述した式1によって求めることができる。したがって、本実施形態の場合は、ステップS1で一次側の正側の地絡抵抗RLpに応じた充電電圧又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧として計測した充電電圧を、上記の式4のVCpとして代入し、また、ステップS1で一次側の負側の地絡抵抗RLnに応じた充電電圧又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧として計測した充電電圧を、上記の式5のVCnとして代入することで、仮の地絡抵抗RL’と等しい直流地絡による正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLnを求める。そして、求めた仮の地絡抵抗RL’を、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aに応じた適切な補正式によって補正することで、真の交流地絡による地絡抵抗RLを求めることができる。
【0089】
以上が、ステップS7の交流地絡断続充電時処理においてマイコン15が行うことができる2つ目の処理である。この2つ目の処理は、仮の地絡抵抗RL’を求めるまでは、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aを考慮せずにマイコン15が処理を進めることができる。そのため、スイッチングデューティー比Aが変化しても、1つ目の処理に比べて、その変化に追従した処理を行う規模を小さくし、スイッチングデューティー比Aの変化にリアルタイムに追従して交流地絡による地絡抵抗RLを正確に求める処理を、マイコン15が実現しやすいようにすることができる。
【0090】
3つ目の処理は、交流地絡による地絡抵抗RLを求めない処理である。この処理は、例えば、不図示の車両推進系コントローラから三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aを示すデータを取得できない場合等に、採用することができる。
【0091】
以上に説明した3通りの処理のいずれかを、ステップS7の交流地絡断続充電時処理として実行した後、マイコン15は、後述するステップS11に処理を移行する。
【0092】
次に、ステップS9の処理について説明する。このステップS9は、ステップS3において、直流地絡の発生を検出すると判定した場合と、ステップS3において、交流地絡の発生を検出すると判定し、且つ、ステップS5において、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aが所定のしきい値以上であると判定した場合とに行う処理である。
【0093】
即ち、ステップS9の処理は、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量や、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた電荷量で、フライングキャパシタC1を充電する予定時間の期間中に、フライングキャパシタC1が連続充電状態となっている場合の、直流地絡による正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLn、あるいは、交流地絡による地絡抵抗RLを求める処理である。
【0094】
このステップS9では、直流地絡による正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLnを、上述した式4,5を用いて求めることができる。即ち、ステップS1で一次側の正側の地絡抵抗RLpに応じた充電電圧又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧として計測した充電電圧を、上記の式4のVCpとして代入し、また、ステップS1で一次側の負側の地絡抵抗RLnに応じた充電電圧又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧として計測した充電電圧を、上記の式5のVCnとして代入することで、直流地絡による正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLnを求めることができる。
【0095】
また、交流地絡の発生時にも、予定時間の期間中にフライングキャパシタC1が連続充電状態となっているので、上述の式4,5を用いて正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLnとして求めた値を、交流地絡による地絡抵抗RLの値とすることができる。
【0096】
以上に説明したステップS9の処理を実行した後、マイコン15は、ステップS11に処理を移行する。
【0097】
ステップS11では、ステップS7やステップS9で求めた地絡抵抗RLp,RLn,RLの値から、しきい値判定を行う等して、昇圧電源回路1の絶縁状態の良否を判定する。ステップS11の処理を実行した後、マイコン15は、一連の処理を終了する。
【0098】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図9のフローチャートにおけるステップS3が、請求項中の第1判定手段に対応する処理となっており、
図9中のステップS5が、請求項中の第2判定手段に対応する処理となっている。また、本実施形態では、
図9中のステップS7の3通りの処理のうち2つ目の処理が、請求項中の補正地絡抵抗割出手段に対応する処理となっており、
図9中のステップS9が、請求項中の地絡抵抗値割出手段に対応する処理となっている。
【0099】
このように、本実施形態の地絡検出ユニット11によれば、昇圧電源回路1の三相インバータ回路3の二次側において交流地絡が発生した場合、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中にフライングキャパシタC1が連続充電状態となる場合は、直流地絡による正側の地絡抵抗RLpや負側の地絡抵抗RLnの求め方と同じ求め方で交流地絡による地絡抵抗RLを求めるようにした。
【0100】
このため、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aが変化する場合であっても、少なくとも、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中にフライングキャパシタC1が連続充電状態となる場合の地絡抵抗RLは、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aのデータを用いずに、交流地絡による地絡抵抗RLの値を精度よく求めることができる。よって、精度のよい交流地絡による地絡抵抗RLの値に基づく、三相インバータ回路3の二次側、つまり、昇圧電源回路1の交流回路部分の絶縁状態検出を、可能にすることができる。
【0101】
なお、上述した実施形態では、
図9のフローチャートにおけるステップS5において、マイコン15が、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aに関する所定のしきい値を用いて、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中にフライングキャパシタC1が連続充電状態であるか否かを判定するものとした。
【0102】
しかし、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチングデューティー比Aに関する所定のしきい値に代えて、他のファクタに関する所定のしきい値を用いるようにしてもよい。
【0103】
例えば、
図10のフローチャートに示すように、ステップS3において交流地絡の発生を検出すると判定した場合に、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチング周波数がスイッチング周波数に関する所定のしきい値以上であるか否かを、マイコン15が確認する(ステップS5−1)ようにしてもよい。
【0104】
即ち、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチング周波数が高いと、半導体スイッチの前の周期におけるスイッチオフから次の周期におけるスイッチオンまでの間隔が、スイッチングデューティー比Aの大小に拘わらず短くなる。そうすると、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中におけるフライングキャパシタC1の間欠充電間隔が短くなり、フライングキャパシタC1が連続充電に近い状態となる可能性がある。
【0105】
反対に、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチング周波数が低いと、半導体スイッチの前の周期におけるスイッチオフから次の周期におけるスイッチオンまでの間隔が、スイッチングデューティー比Aの大小に拘わらず長くなる。そうすると、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中におけるフライングキャパシタC1の間欠充電間隔が長くなり、フライングキャパシタC1が連続充電とはほど遠い状態となる。
【0106】
そこで、マイコン15は、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチング周波数が、適切な値に設定したスイッチング周波数に関する所定のしきい値以上であれば(ステップS5−1でYES)、フライングキャパシタC1が連続充電状態にあるものとして、ステップS9に処理を移行することになる。反対に、三相インバータ回路3の各半導体スイッチのスイッチング周波数が所定のしきい値未満であれば(ステップS5−1でNO)、マイコン15は、フライングキャパシタC1が間欠充電状態にあるものとして、ステップS7に処理を移行することになる。
【0107】
また、例えば、
図11のフローチャートに示すように、ステップS3において交流地絡の発生を検出すると判定した場合に、正負のYコンデンサY+,Y−の容量がYコンデンサの容量に関する所定のしきい値以上であるか否かを、マイコン15が確認する(ステップS5−2)ようにしてもよい。
【0108】
即ち、YコンデンサY+,Y−の容量が高いと、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中に、フライングキャパシタC1が本来充電されない期間において、YコンデンサY+,Y−が放電する電荷によって充電されて、フライングキャパシタC1が実質的に連続充電状態となる可能性がある。
【0109】
そこで、マイコン15は、YコンデンサY+,Y−の容量が、適切な値に設定したYコンデンサの容量に関する所定のしきい値以上であれば(ステップS5−2でYES)、フライングキャパシタC1が連続充電状態にあるものとして、ステップS9に処理を移行することになる。反対に、YコンデンサY+,Y−の容量が所定のしきい値未満であれば(ステップS5−2でNO)、マイコン15は、フライングキャパシタC1が間欠充電状態にあるものとして、ステップS7に処理を移行することになる。
【0110】
また、
図9のステップS5、
図10のステップS5−1、
図11のステップS5−2を全て行い、いずれかのステップで対応するしきい値以上となった場合に、フライングキャパシタC1が連続充電状態であるものとして、
図9(乃至
図11)のステップS9に処理を移行するように構成してもよい。その場合、
図9のステップS5、
図10のステップS5−1、
図11のステップS5−2の全てで対応するしきい値未満となったならば、フライングキャパシタC1が間欠充電状態であるものとして、
図9(乃至
図11)のステップS7に処理を移行することになる。
【0111】
さらに、例えば
図7に示すように、電流センサ7を用いてフライングキャパシタC1の充電電流を計測し、その計測結果の経時変化から、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中にフライングキャパシタC1が連続充電状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0112】
その場合には、
図12のフローチャートに示すように、マイコン15は、
図9のフローチャートにおけるステップS5の処理に代えて、ステップS5aにおいて、電流センサ7の計測結果の経時変化から、交流地絡による地絡抵抗RLを含む充電回路の形成中にフライングキャパシタC1が連続充電状態であるか否かを、直接判定する処理を行うことになる。そして、連続充電状態である場合は(ステップS5aでYES)、マイコン15は、ステップS9に処理を移行し、連続充電状態でない場合は(ステップS5aでNO)、マイコン15は、ステップS7に処理を移行することになる。このように構成しても、上述した実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0113】
また、上述した実施形態では、
図9乃至
図12のフローチャートにおけるステップS3において、マイコン15が、ステップS1で計測した、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧と、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧とが一致するか否かによって、直流地絡と交流地絡のどちらの発生を検出するかを判定するものとした。
【0114】
しかし、ステップS1で計測した、一次側の負側の地絡抵抗RLn又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧と、一次側の正側の地絡抵抗RLp又は二次側の地絡抵抗RLに応じた充電電圧とを用いる限り、両充電電圧の一致又は不一致以外の方法で判定するようにしてもよい。