【実施例】
【0092】
実施例1
ヒトNRG-2 cDNAのクローニング
NRG-2αをコードする全長cDNAが小脳から同定された。NRG-2コード配列の様々な領域に対する多数のプローブが、クローニング、マッピングおよび配列解析のためにげっ歯類およびヒト配列データに基づいて設計された。ライブラリーをスクリーニングするに先立ち、プローブの特異性が3'RACE(cDNA末端の迅速増幅)法を用いてヒト小脳RNAを解析することにより確認された。2個のヒト小脳γt10 cDNAライブラリー(クロンテックラボラトリーズ(Clontech Laboratoris)、Palo Alto、CA;カタログ番号HL1128a)由来の約400,000個のcDNAが、NRG-2のEGFLドメイン由来のオリゴヌクレオチドプローブ
を用いてスクリーニングされた。25個のハイブリダイゼーションシグナルが検出された;これらのシグナルに相当する20個のファージクローンがクローニングされ、ハイブリダイゼーション検討、物理的マッピング、およびDNA配列決定によりさらに解析された。これらの解析の結果は、同定されたヒトNRG-2クローンの中の多数の構造変異体(アイソフォーム)の存在と一致した。クローンに関する予備的な構造情報が、ファージプラークへのフィルターハイブリダイゼーションおよびcDNA挿入物の制限エンドヌクレアーゼ解析により取得された。内部プライマーを用いてのPCR検討は、対で、または隣接配列とともに組み合わせて、物理的マッピングデータを取得するために使用された(表1参照)。
【0093】
使用されたプライマーは以下のとおりである。
【0094】
最初に、0.8kbから3.3kbの範囲の挿入物サイズ(平均サイズは約1.7kb)が解析された。NRG-2転写物は、これらのポリペプチドの構造多様性の多くを示すEGFLドメインおよび細胞質配列を含み、この特異的内部領域はPCR解析により次にクローンをマッピングするための対象となった。この解析は4個の産物群を生じ、各群に多数のクローンが同定された。したがって4個の群(A〜D)がヒト小脳におけるNRG-2遺伝子産物内のこの領域における構造多様性の程度を表す可能性が高い。4個のクローン(群A)はこの実験では産物を生じなかった。この結果は、これらのクローンが(細胞質ドメイン中の)下流プライマー配列を欠くことを示したハイブリダイゼーション実験のデータと一致した。三番目の実験においては、クローンの方向が決定され、EGFLドメインからクローンの末端への距離が、EGFLドメイン中のプライマーを、ファージアーム中の隣接配列由来のプライマーと組み合わせて使用することにより推定された。これらの研究は、したがって、NRG-2のcDNAを群に分離することを可能にし、ヒトNRG-2の分泌可能なアイソフォームをコードする潜在的な全長cDNAを同定することを容易にした。
【0095】
(表1) ヒトNRG-2小脳cDNAクローンのマッピング
cDNAクローンのPCR解析:産物は6%ポリアクリルアミドゲル中でサイズ決定された;表は塩基対でサイズを示す。
1、EGFLドメイン由来の上流プライマー1471;細胞質ドメイン中の下流プライマー1531
2、λgt10中の隣接配列由来のプライマー1527、1528
3、λgt10中の隣接配列由来の上流プライマー1527;EGFLドメイン由来の下流プライマー1494
4、EGFLドメイン由来の上流プライマー1471;λgt10中の隣接配列由来の下流プライマー1528
【0096】
実施例2
ヒトNRG-2のDNAの配列解析
異なる構造のより完全な像を取得するために、サイクル塩基配列決定プロトコールおよび上述のPCR解析に使用されたものと同一のプライマーを用いて、代表的クローンに関してDNA配列決定を実施した。EGFLドメイン周辺の配列コンティグ(群B〜D由来の)を互いに、ならびにラットおよびヒトNRG-2配列と比較することにより、いくつかの結論を得た。第一に、群BのクローンはNRG-2βのcDNA構造と一致した。これらの配列は、EGFLドメインを膜貫通および細胞質ドメインに連結し、したがって膜付着NRG-2タンパク質をコードした。第二に、群C構造の全ては、αおよびβの両方の配列を含み、NRG-2αのcDNA構造にマッチした。したがって、群Cクローンは分泌型NRG-2タンパク質をコードすると考えられる。クローン14はこの構造の全長の最良の候補であるように思われた。群Dには、αおよびβの両方の配列が存在したが、それらは隣接していなかった。これらの2個の既知のコンティグ配列の間に介在する450bpの配列が発見され、標準スプライス部位ドナー(GT)およびアクセプター(AG)配列が、αおよびβ配列として同定されたその領域に近接した。したがってこの構造は恐らくNRG-2遺伝子の部分的にスプライシングされた転写物を表すと思われる。
【0097】
この情報から、分泌可能型のNRG-2は群Aおよび群Cのクローンにおいて見出される可能性が最も高いように思われた。クローン14は群Cの適切な代表として使用した。2個の群Aのクローンは平行して進めた:クローン13は比較的大きな挿入物サイズのために選択され、クローン15はハイブリダイゼーション実験において検出されたEGFLドメインの5'の配列の存在のために調査された。クローン13、14および15の配列が完了した時、それらのいずれも単独では全長ヒトNRG-2αをコードしないことが明らかとなった。しかしながら、これらクローンの構造における十分な重複から、各々の部分が共にスプライシングされ、NRG-2αをコードする1つの全長クローンを生成することが明らかとなった。
図1はこれら配列の構造の説明図を示す;NRG-2遺伝子のコードセグメントは影付き囲みにおいて示されており、記載されたNRG-2αおよびNRG-2βアイソフォームに存在するコード配列(実線)が上に記載されている;NRG-2のアイソフォームは、GGF-2様、免疫グロブリン様(Ig)、EGF様(EGFL)、α、β、膜貫通(M)および細胞質(cyto)ドメインを含む;終止コドンは(*)により示される;および推定イントロン配列が点線により示される。αコードセグメント内に存在する特有のBsrGI部位(B)が、クローン15の5'配列をクローン14の3'配列に連結することにより、全長ヒトNRG-2αのcDNAを構築するために使用され、最終構築物の配列が決定された。NRG-2αのcDNAの主要なオープンリーディングフレーム(
図6、配列番号:1)は331個のアミノ酸のタンパク質をコードする(
図7、配列番号:2)。
【0098】
実施例3
ヒトNRG-2βのcDNAのクローニングおよび構築
ヒトNRG-2βのcDNAは、部分的にはヒトNRG-2αのcDNA(ベクターならびにαおよびβアイソフォームの両方に存在するヒトNRG-2のN末端をコードする5'の869bpの配列)から、および部分的にはヒトNRG-2βをコードする部分的ヒトcDNA(2個の3'断片であり、一方がβ配列、および他方が終止コドンを含む)を含むファージクローン(例えば、ファージクローン11は、マッピング研究においてβ配列を含むことが示された。例えば、表1、実施例1および実施例2を参照)から構築される。
【0099】
ヒトNRG-2αのcDNA(実施例2)を、5500bpのベクターおよびcDNAを含む1555bpの挿入物を生成するために、酵素NotIおよびXbaI(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、Beverly、MA)を用いて消化することができる。両方の断片が、QIAEX IIアガロースゲル抽出キットおよびプロトコール(キアゲン社(Qiagen Inc.)、Valencia、CA)を用いてTAE緩衝液中1%アガロースゲルから回収される。この挿入物断片(1555bp)は、5'の869bp断片および約700bpの3'断片を生成するためにDrdI(ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA)を用いてさらに消化される。869bpのNotI-DrdI断片がQIAEX IIアガロースゲル抽出キットおよびプロトコール(キアゲン社、Valencia、CA)を用いてTAE緩衝液中2%アガロースゲルから回収される。この869bp断片は開始メチオニンを含み、ヒトNRG-2βのN末端部分をコードする。それは、下記のようにヒトNRG-2βの配列を有するcDNAに由来する2個の付加的断片とともに、5500bpのベクターにライゲーションされる。
【0100】
ヒトNRG-2αおよびヒトNRG-2β配列の間の主要な差異は、単一のDrdIおよびBsrDI部位の間に存在する。αアイソフォームは、βアイソフォーム配列にスプライシングされる77bpのコードセグメントを含む。ヒトNRG-2βをコードする配列を取得するために、ヒトNRG-2α配列に相当するものよりも77bp短い、113bpのDrdI-BsrDI断片が以下のようにファージクローン11から生成される。DrdIおよびBsrDI部位に隣接するプライマー
が、Taqポリメラーゼの供給者(パーキンエルマー/ロシュ(Perkin Elmer/Roche)、Branchburg、NJ)により推奨される方法に従って、ファージクローンDNA11鋳型を増幅するために使用される。PCR産物をエタノールで沈殿し、その後113bpの断片を生産するためにDrdIおよびBsrDIを用いて連続的に消化する。同様に、3'断片はまた、プライマー1550および1546を用いてファージクローン11鋳型のPCR増幅により得られる。プライマー1550
はBsrDI部位を交差するように配置され、標的配列
へ変異させ、したがってリシンコドンをTAA終止コドンに変換するであろう単一Tの挿入を含む。プライマー1546はファージ右アームのクローニング部位に標的化され、XbaI部位を含む。BsrDIおよびXbaIを用いての産物の消化は、ヒトNRG-2βのcDNAの3'末端となる425bp断片を生成する。113bpおよび425bp断片は両方とも2%アガロースゲルから回収される。
【0101】
断片の回収は、既知の長さおよび量の二重鎖のDNAマーカーに対して相対的に電気泳動により定量される(例えば、ファージラムダHindIII消化;ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA);pGEMマーカー、プロメガ(Promega)、Madison、WI)、その後各精製断片がモル等量物に変換される。精製ベクター(100ng)および3個の断片が、供給者により提供される指示書に従い、等モル比で相互にライゲーションされる(T4 DNAリガーゼ、ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA)。ライゲーションは、供給者により提供される指示書に従い、大腸菌XL1 Blue(ストラタジーン社、LaJolla、CA)などのコンピテント細菌細胞を形質転換するために使用される。ベクターを含むコロニーは50μg/mlアンピシリンの耐性を基礎として選択され、ヒトNRG-2βのcDNAの構造は、PCR増幅およびプラスミドDNAのDNA配列決定により解析される。ヒトNRG-2βのcDNAの主要なオープンリーディングフレーム(
図8、配列番号:3)は298アミノ酸のタンパク質をコードする(
図9、配列番号:4)。
【0102】
実施例4
ヒトNRG-2の発現
哺乳類細胞においてヒトNRG-2を一過性または安定に発現するためのベクターを構築した。pRc/CMV2ベクター(インビトロジェン(Invitrogen) V750-20;
図2参照)をヒトNRG-2を発現するために使用した。この5.5kbのベクターは、一過性および安定トランスフェクションの両方における高レベルの構成的発現を誘導するために、CMVプロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位を利用している。ネオマイシン選択(G418)を安定形質転換体を選択するために使用することができる。ヒトNRG-2αのcDNA配列(配列番号:1)はHindIIIおよびXbaI部位を用いてポリリンカーに定方向性にクローニングされた。最終構築物のcDNA挿入物は両方の鎖に関して配列決定された。ヒトNRG-2発現ベクターはその後、組換えヒトタンパク質の信頼性の高い起源を提供するためにCHO細胞において発現された。
【0103】
ヒトNRG-2αおよびβの両方のcDNAが、一過性にCHO/S細胞にトランスフェクションされた(ライフテクノロジーズ社(Life Technologies Inc.)、Rockville、MD)。トランスフェクションされた遺伝子の異種発現は、CHO/S細胞系の適切な機能を保証するために実施された。疑似トランスフェクションは平行して実施された。トランスフェクションは、製造元(ライフテクノロジーズ社、Rockville、MD)により提供されるプロトコールにしたがって、リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)2000法により100mmディッシュ(三つ組)で実施された。細胞溶解物および馴化培地(conditioned medium)試料がトランスフェクションの3日後または4日後に回収された。溶解物を調製するために、細胞単層をPBSで洗浄し、ディッシュからこすり落とし、150μlの0.25Mトリス塩酸、pH8中で3回の凍結融解により溶解した。細胞破壊片を沈殿させて、上清を回収した。馴化培地試料を回収し、その後直接解析するか、または、セントリコン10(Centricon-10)ユニット(Ambion)を用いて濃縮し、10mMトリス塩酸、pH7.4と緩衝液を交換した。生物学的に活性のある組換えヒトNRG-2遺伝子産物の分泌は、CHO/S細胞の一過性トランスフェクションに続くシュワン細胞の増殖刺激および細胞溶解物と比較して馴化培地におけるNRG-2生物活性の検出により証明された(Marchionniら、Nature 362:312〜8、1993)。
【0104】
組換えヒトNRG-2(rhNRG-2)タンパク質は、トランスフェクションされた細胞の馴化培地において効率的に発現され(
図3Aおよび
図3B)、これらのタンパク質が哺乳類細胞から分泌されうることを示している。
図3Aにおいては、rhNRG-2αをトランスフェクションされた細胞由来の細胞溶解物ではなく(および疑似トランスフェクションされた細胞由来の細胞溶解物でなく)、馴化培地が、約56kDに泳動される特異的な免疫反応性バンドを発現した。
図3Bにおいては、αおよびβアイソフォームの両方がトランスフェクションされたCHO/S細胞の馴化培地に分泌された(予想されたように、より小さなrhNRG-2βタンパク質(298アミノ酸)が、rhNRG-2αタンパク質(331アミノ酸)よりも早く泳動される(約47kD)ことに留意されたい)。
【0105】
一過性トランスフェクションにおいて発現構築物の生物活性を確認した後に、rhNRG-2βを発現する安定CHO/S細胞株が生成された。pRc/CMV2ベクターはネオマイシン耐性遺伝子を含み、そのため安定的に形質転換された細胞が、有効な濃度のG418を含む培地において選択可能となる。レシピエントCHO/S細胞のトランスフェクションに続いて、選択培地中で11日間生存したよく単離されたコロニーが、コロニーリングを用いて選択された。rhNRG-2βおよびG418耐性の最高レベルの発現を示す細胞株はさらなる評価のために持続された。細胞株の3つの有用な特性は、持続した生存性、無血清(または低血清)培地への適合、および組換えタンパク質の発現レベルである。したがって、いくつかの株は平行して増殖され、無血清増殖条件への適合、およびウエスタンブロットによるrhNRG-2βの発現に関して試験された。ウエスタンブロット解析は、2%ウシ胎児血清を添加されたダルベッコ(Dulbecco)の修飾必須培地が、これらの実験においてrhNRG-2βの最適発現を提供したことを示した。生物活性は先行する候補株由来の発現された物質に関してアッセイされた。2個の単離物が、限界希釈によりクローニングされ、単一の単離された細胞株がさらなる研究のために使用された。
【0106】
NRG-2タンパク質を発現する安定CHO/S細胞株を生成することに加えて、rhNRG-2β発現構築物およびトランスフェクションされたジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子の統合コピーの共増幅に頼る戦略が開発された。哺乳類発現ベクターが、各々CMVおよびSV40プロモーター調節下となる、pcDNA3.1(インビトロジェン)およびpMACSK
k.II(ミルテニバイオテク社(Miletenyi Biotec Ltd.))中に構築された。これらのベクターはdhfr発現ベクターとともにCHO-dhfr細胞に共トランスフェクションされ、G418耐性の30コロニーが選択され、増殖され、ウエスタンブロット(
図10)およびRT/PCRにより発現レベルが解析された。
図10、レーン1はrhNRG-2β対照試料を示し、レーン2はCHO SD(US)rhNRG-2βの48時間の上清を示し、レーン3〜5は24〜72時間のクローンT3B2を示し、レーン6〜8は24〜72時間のクローンT3B1を示し、レーン9は分子量マーカー(インビトロジェン、カタログ番号LC5925)を示し、レーン10〜12は24〜72時間のクローンT3A6を示し、およびレーン13〜15は24〜72時間のクローンT3A5を示す。T3B2、T3B1、T3A5クローンは希釈クローニングおよび増幅/選択のために選択された。遺伝子共増幅はメトトレキセート濃度の段階的な増加により誘導され、クローンは分泌rhNRG-2βの生産の増加に関してモニターされる。
【0107】
実施例5
発現されたNRG-2タンパク質を検出するための抗血清の生成および試験
発現されたNRG-2タンパク質を特異的に検出するポリクローナル抗血清が以下のように生成された。発現および精製試料中のNRG-2レベルをモニターするために使用されるウサギポリクローナル抗血清を生成するために、推定ヒトおよびラットNRG-2配列から、ペプチドが設計された。
【0108】
使用されたペプチドは以下の通りである。
【0109】
推定ラットおよびヒトNRG-2配列において同一であるIgドメイン配列由来の、これらのペプチドの1つ(K71984M)は、トランスフェクションされたCHO細胞由来の馴化培地における組換えラットNRG-2βをウエスタンブロットするのに有用な血清が生産され(
図3参照)、rhGGF2には交差反応を生じなかった。これらのNRG-2抗血清は、固相化ペプチドに対して精製された。
図3CはラットNRG-2βを発現するCHO細胞由来の馴化培地のウエスタンブロット解析を示す。レーンは、rrNRG-2βを発現するCHO細胞由来の15倍濃縮の馴化培地の20μl(左)または10ngのrhGGF2(右)のいずれかを含む。抗NRG-2血清は1μg/mlで使用され、特異的に46kDのrrNRG-2βを検出したが、80kDに泳動されるrhGGF2は検出されなかった。
【0110】
さらに、発現プラスミドrhNRG-2αおよびrhNRG-2βおよびペプチドK71984Mに対して作製されたウサギポリクローナル抗体を用いた、一過性にトランスフェクションされた単層CHO/S細胞由来の培養培地の解析により、rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの両方が発現され、各々約55kDおよび47kDに泳動されることが示された(
図5)。
【0111】
実施例6
発現されたrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの生物活性の評価のための生物学的試験
生物学的に活性のあるrhNRG-2αの検出のための生物学的試験が開発された。ニューレグリンシグナル伝達はEGF受容体ファミリーに属するerbB受容体チロシンキナーゼを介して生じる。NRGリガンド結合および受容体活性化は、リン酸化チロシン残基に対して作製された抗血清を用いて、処理された細胞溶解物をウエスタンブロッティングすることにより検出されうる。このアッセイ法は、シュワン細胞、希突起膠細胞前駆細胞、骨格筋の筋管、心筋細胞、ならびに乳房および前立腺アデノカルシノーマ由来のヒト腫瘍細胞株を含むが、それらに制限されない様々な細胞型において、NRG-2タンパク質およびerbB受容体の相互作用を検討するために使用される。生物学的に活性のあるNRG-2(例えば、組換えラットNRG-2βを発現するCHO細胞由来の馴化培地)を、ヒト乳房アデノカルシノーマ細胞株MCF-7に関してこのアッセイ法を用いて検出することができる。受容体リン酸化チロシンのウエスタンブロットによる、MCF-7細胞に対してラットNRG-2β(rrNRG-2β)およびrhGGF2を試験する実験の結果は
図4Aに示されている。MCF-7細胞は24ウェルプレート中で培養され(2x10
5細胞/ウェル)、10ng/mlのrhGGF2またはrhNRG-2βを発現するCHO細胞により馴化された培地の様々な希釈において15分間処理された。処理後その培地は除去され、細胞は一度洗浄され、その後培養物は溶解され、試料はウエスタンブロットにより解析された(Canollら、Neuron 17:229〜243、1996)。リン酸化されたErbB受容体はRC20Bリン酸化チロシン抗体を用いて検出される(トランスダクションラボラトリーズ(Transduction Laboratories)、Lexington、KY)。この解析の陽性対照試料はEGFを用いて処理されたA431細胞の溶解液である(最も左のレーン、
図4A)。rhGGF2またはrrNRG-2βのいずれも増殖培地に添加されないとき、チロシンに関してリン酸化された検出可能なタンパク質は存在しなかった。しかしながら、様々な濃度のNRG-2βの添加は、185kdのリン酸化に関して用量依存性の増加を示した。このバンドは、rhGGF2(10ng/ml)処理の応答に対してもリン酸化されるErbB2およびErbB3受容体の予測位置と一致した。したがって、この生物学的試験は、発現および精製されたrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの生物活性を立証するための信頼できる方法を提供する。精製された組換えタンパク質に適用された場合に、このアッセイ法は、DNA合成アッセイ法に匹敵するデータを提供する用量反応性曲線においてNRG-2の生物活性の定量化を可能にする。CHO/S細胞一過性トランスフェクション由来の馴化培地または精製された組換えNRG-2タンパク質を処理されたMCF-7細胞に関する受容体チロシンキナーゼ生物学的試験もまた
図4Bに示されている。
【0112】
実施例7
rhNRG-2αまたはβのミリグラム量での精製
(rhNRG-2αを発現する)生産細胞株から回収された馴化培地は酢酸を用いてpH6.0に調整され、酢酸ナトリウム(pH6.0)を用いて平衡化されたS-セファロースカラムに直接添加される。結合物質を酢酸緩衝液中で1M NaClを用いて溶出し、硫酸アンモニウム緩衝液中で平衡化し、同一緩衝液中で疎水性相互作用カラム(ブチルセファロースFF)に通過させる。結合物質は低塩(800mM硫酸アンモニウム)緩衝液を用いて溶出され、rhNRG-2αのピークが回収される。回収された物質は緩衝液交換され、アミコンらせんカートリッジ(Amicon spiral cartridge)を用いて製剤緩衝液中(100mMアルギニン、100mM硫酸ナトリウム、20mM酢酸ナトリウム、1%マンニトール、pH6〜7)中で1mg/mlに濃縮される。選択的な、最終精製段階はセファクリル(Sephacryl)200HRカラムであり、溶出されたrhNRG-2αピークは製剤緩衝液中で製剤化された。別の方法では、ヘパリン親和性、銅キレートおよびC4-逆相クロマトグラフィーによる精製工程に従う(Higashiyamaら、J. Biochem. 122:675〜680、1997)。
【0113】
クロマトグラフィーカラム由来のタンパク質分画は、分泌されたrhNRG-2αまたはβのピークを同定するために、ウエスタンブロッティングによりモニターされる(例えば、
図3A〜C参照)。ピーク分画および最終調製物が、MCF-7細胞に関する受容体リン酸化により解析される(
図4A〜B参照)。純度は、ゲル電気泳動により(クーマシーブルー染色)および解析HPLC(0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配において泳動されるVydac C8カラム)により評価される。タンパク質濃度は、標準として使用されるウシ血清アルブミンを用いたビシンコニン酸(BCA)アッセイ法(ピアス(Pierce))により決定される。
【0114】
精製の別の一般的な計画には、陽イオン交換に基づく従来のクロマトグラフィーによる捕捉、続いて1つまたは複数の段階(例えば、カルボキシメチルセファロースクロマトグラフィー、後に、逆相HPLCを利用することによる)を介した汚染タンパク質からの分離を含む。
【0115】
簡単には、様々な大きさのカルボキシメチルセファロース(ファストフロー)カラムが、200mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて平衡化され、その後馴化培地試料が添加され、カラムが約3容量の200mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて洗浄された(吸光度がベースラインに達するまで)。結合タンパク質が500mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて溶出された。この溶出には、3カラム容量の高塩洗浄(1M NaCl、10mMトリスpH7.4)が続いた。分画は回収され、ウエスタンブロットおよび金またはクーマシーブルー染色タンパク質ゲル(4〜20%アクリルアミドトリスグリシンSDS)により解析された。カラム規模および捕捉され添加されたタンパク質の量に依存して、rhNRG-2βは、カラムからの0.5M NaCl中で溶出されたタンパク質の10〜70%を表した。カラムが過剰に添加されていない場合には、フロースルー中、または0.2M NaClもしくは1M NaCl分画中においては、検出可能なrhNRG-2βは検出されなかった。回収における有意な改善が、プロテアーゼ阻害剤を含めること、およびカラムを冷却中で泳動することにより獲得された(90%超)。捕捉クロマトグラフィーの規模は、10mlカラムから始まり、40ml、100mlおよび200mlカラムを通して増加された。全体的な結果は、回収および精製の両方の観点から一致しており、この段階の規模が、利用可能な開始物質の容量に適合するために調節されることが可能であることを示している。
【0116】
精製法は、バイオキャッド(Biocad)環流クロマトグラフィーワークステーション上で実施されるC4カラム(Vydac 214 TP 1010、1cm x 25cmカラム)を用いた逆相HPLCを用いてさらに開発された。一連の試験的運転は、10mMトリスHCl、pH7.4、0.5M NaCl中にrhNRG-2βを含むいくつかのカルボキシメチルセファロースカラム由来のプールされた分画に対して実施された。カラムは1ml/分の流速で実施され、0.2%TFA中で平衡化された。試料を注入後、0.2%TFA中の10分間のカラム洗浄が、30分の、90%アセトニトリル、0.2%TFAまでの線形傾斜を用いて行われ、90%アセトニトリル、0.2%TFAの最終の10分間の洗浄段階を本方法を完了するために使用した。分画はウエスタンブロットにより解析された。非常に純粋なrhNRG-2βを含む分画のみが最終プールに含まれた。
図11に示されている、ゲルのクーマシーブルー染色により評価されるように、rhNRG-2βの調製物は約92%の純度であった。しかしながら、HPLCクロマトグラフに渡り検出された免疫反応性の約60〜70%は、rhNRG-2βプールには含まれなかった。したがって、90%精製は2段階で達成されたが、rhNRG-2βのより完全な回収を可能にするために第3の段階を実施してもよい。この3番目の段階はヘパリンセファロースおよび/または逆相HPLC段階の数個の修飾(例えば、溶媒の変動)を含んでもよい。
【0117】
金染色は、タンパク質調製物における汚染タンパク質を検出するための別の感度の高い方法を提供し、この染色は容易にナノグラム量のタンパク質を検出する。精製段階を可視化するために、およびさらなる解析のために、精製の異なる段階に由来するrhNRG-2β試料の純度が比較された(
図12)。試料は還元状態中で4%〜20%SDS PAGE(Novex、カタログ番号EC6025)上で泳動された。ゲルはPVDF膜上に転写され、金染色(Gold Stain)(アマシャム(Amersham)、カタログ番号RPN490)を用いて総タンパク質に関して染色された。レーン中の過剰添加を防止するために、開始物質(無血清馴化培地)は精製試料の相対量の1%において添加された。この解析からの中心的な観察は、2段階において非常に有意な精製が達成されたことであった。
【0118】
MCF-7細胞株(ヒト乳房アデノカルシノーマ)に関して実施されたチロシンリン酸化アッセイ法が、精製されたNRG-2試料の生物活性を測定するために使用された。簡単には、培養は37℃15分間、試験試料(0.1%FCSを含む培地中の精製試料の希釈物)を投与され、その後培地が吸引除去され、DTTおよび1mMのオルトバナジウム酸ナトリウムを含む50μlの2x試料緩衝液が添加された。試料はその後、電気泳動およびウエスタンブロッティング用に調製された。対照試料と上皮細胞成長因子で処理されたA431細胞由来の溶解物とは納入業者(トランスダクションラボラトリーズ、Lexington、KY)により提供された。rhNRG-2β生産をモニターすることに加えて、50%アセトニトリル(AN)またはPBSなどの精製処理に適合可能な賦形剤中に希釈されているrhNRG-2βのHPLC精製試料の活性が試験された(
図13)。この実験において使用された濃度においては、ANはNRGシグナル伝達を劇的には妨害しなかった。
【0119】
実施例8
希突起膠細胞前駆細胞におけるNRG-2活性
rhGGF2を比較に用いて、培養された希突起膠細胞前駆細胞の増殖および生存に対するrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの効果の評価を実施する。希突起膠細胞前駆細胞は、McCarthyおよびDeVellis(J. Cell Biol. 85:890〜902、1980)の方法にしたがって2日齢ラットから生成され、細胞は、0.5%FBSを含むN2合成培地(DM+)中で、1〜3日間、希突起膠細胞系列中の細胞を濃縮するために培養される。培養物の純度は、星状膠細胞マーカーのGFAPに対する抗体;小グリア細胞マーカーであるOX42モノクロナール(ハーランバイオプロダクトフォーサイエンス(Harlan Bioproducts for Science));O-2A前駆細胞のマーカーである、抗A2B5モノクロナール(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim));早期および成熟希突起膠細胞を各々認識するO4およびO1(Sommerら、Dev. Biol 83:311〜327、1980);RPTP-β(J. Schlessinger、NYU Med Ctrからの寄贈)および希突起膠細胞系列の早期の細胞を選好的に認識するネスチン抗体(発生研究ハイブリドーマバンク(Developmental Studies Hybridoma Bank))(Canollら、Neuron 17:229〜243、1996;Galloら、J. Neurosci. 15:394〜406、1995)の一連の抗体を用いて免疫蛍光解析により確立される。
【0120】
rhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2に反応してDNAを合成する細胞の割合(%)を決定するために、培養は16時間行われ、最後の4時間は10μMブロモデオキシウリジン(BrdU;シグマ(Sigma))存在下で処理される。BrdU標識された細胞はフルオレセイン結合抗BrdU免疫検出キット(ベーリンガーマンハイム)を用いて検出される。全細胞に対するBrdU+細胞の比に相当する標識指数は、BrdU標識された核およびヘキスト染色された核の個々の視野の顕微鏡写真から決定される。分化の特定の段階における標識指数を決定するために、BrdU染色を、O4、O1およびGFAP免疫蛍光解析と組み合わせる。
【0121】
細胞生存に対するNRG-2の効果を評価するために、B104馴化培地中で増殖する細胞を、3日間DM+培地に変更する。それらはその後、12時間または24時間の間、rhGGF2、rhNRG-2αまたはrhNRG-2βの存在または非存在において、N2培地またはDMEMのいずれかに転換され、製造者の指示書にしたがって、15分間Live/Dead染色キット(モリキュラープローブ社(Molecular Probes, Inc.))を用いて染色される。細胞死を定量化する形態学的基準、すなわち、位相差顕微鏡下でのピクノチック(Pyknotic)細胞のモニター段階およびMTTアッセイ法(シグマ)は、別々の実験で使用される。
【0122】
実施例9
嗅球鞘性細胞に対するNRG-2の活性
ラット嗅球は例外的なCNS組織である。脳の他の領域とは異なって、成長軸索は嗅球に進入することが可能であり、成体期間を通じてこのCNS環境内において伸長することが可能である。嗅球鞘性細胞(OBEC)として知られる、嗅覚系のグリア細胞は、CNS神経再生において重要な役割を有する可能性がある(Liら、J. Neurosci. 18:10514〜10524、1998)。OBECは、星状膠細胞およびシュワン細胞の両方の特性を有する異常なグリア細胞であり、脊髄再生を支援するために有用な細胞でありうる。OBECは、機能的NRG受容体、erbB2およびerbB4を発現する(Pollockら、Eur. J. Neurosci. 11:769〜780、1999)。さらに、高レベルのNRG-2ポリペプチドが嗅球において発現されている。したがって、これらのOBECは、NRG-1をNRG-2遺伝子産物の生物活性と比較する理想的な候補である。
【0123】
OBECは、O4抗体(Barnett、「動物細胞の培養(Culture of Animal Cells)」、I. R. Freshney、第3版、pp337〜341、Wiley-Liss、New York、NY、1993;Barnettら、Dev Biol. 155:337〜350、1993)を用いて蛍光細胞分析分離装置により生後7日のラットから精製される。分別後、細胞懸濁物は、カバースリップ上にプレーティングされ、成長因子またはACMのいずれかの処理前に、(細胞生存を促進するために)10%星状膠細胞馴化培地(ACM)を含むDMEM-BS中で37℃にて一晩インキュベーションされる。分裂活性は、分裂細胞へのBrdUの取り込みにより測定され、細胞生存およびアポトーシスアッセイ法は記載されるように実施される(Pollockら、Eur. J. Neurosci. 11:769〜780、1999)。
【0124】
実施例10
中脳ドーパミン作動性ニューロンに対するNRG-2の活性
NRG受容体erbB4は、ラット、マウスおよびサルの中脳ドーパミン作動性ニューロンで発現している。組換えヒトNRGタンパク質の線条体への送達はパーキンソン病の治療において有用である。例示的タンパク質、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を用いた研究では、NRGに対するドーパミン作動性黒質線条体系の応答をさらに研究するために実施される。2個のNRGタンパク質が、ドーパミン作動性ニューロン(例えば、胎児げっ歯類およびヒト神経芽細胞腫細胞株、例えば、SKNNCに由来する)に対する生存促進活性(すなわち、酸化ストレスを誘導する試薬により誘導される細胞死からの保護)に関してインビトロにおいて比較される。様々な濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2で前処理された細胞は、酸化ストレスを誘導するために1μMのメタジオンまたは100mMのジエチルジチオカルバメートで24時間処理され、標準的方法により細胞死が定量化される。ドーパミン放出のインビボモデルならびにラットにおけるドーパミン作動性機能の電気化学的および行動評価もまた使用可能である。
【0125】
NRGタンパク質は、インビトロにおけるラットドーパミン作動性ニューロンに対する生存促進活性に関して試験された。具体的には、6ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を用いて培養中で投与されたドーパミン作動性ニューロンに関してNRGランパク質が神経保護的であるかが決定された。rhNRG-2βまたはrhGGF2で前処理された細胞および未処理対照培養物を50μMの6-OHDAで24時間暴露し、その後、培養物をチロシン水酸化酵素(TH)で染色し、光学顕微鏡下で試験した(
図14)。
図14は、インビトロ7日目(DIV)の、チロシン水酸化酵素(TH)で免疫染色された初代間脳培養物を示す。上部のパネルは、DIV 0から開始し、DIV 3で終了するまで毎日100ngのrhNRG-2βで処理された培養物を示す。DIV 4において、培養物は50μMの6-OHDAで処理された。下パネルは前処理を受けなかったが、DIV 4において50μMの6-OHDAで処理された培養物を示す。両方の培養物はDIV 7においてTH免疫反応性に関して解析された。目盛り棒は50マイクロンに等しく、上部および下部パネルの両方に適用される。類似の染色パターンが各培養物の全体に渡り観察された。TH陽性ニューロンの密度、数、および神経突起の長さは、前処理を受けなかった培養物における6-OHDA処理により減少した。対照的に、rhNRG-2βで前処理された培養物は、rhGGF2に関して観察された結果と同等の正常な形態学的発生を示す。この結果はいくつかの培養実験において繰り返された。結果は、rhNRG-2βは、例えばパーキンソン病の動物モデルにおいて試験可能であるインビボの好ましい効果を有することを示す。
【0126】
実施例11
小脳における神経発生および移動
NRG-1、NRG-2およびerbB4受容体のアイソフォームは小脳において高レベルで発現している(Chenら、J Comp Neurol 349:389〜400、1994;Changら、Nature 387:509〜512、1997;Laiら、Neuron 6:691〜704、1991)。RhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を小脳における移動およびニューロン形成の細胞培養アッセイ法において評価することが可能である。RhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2はグリア細胞基質上の小脳顆粒ニューロンの移動速度に対する効果に関して比較される。接着している移動中のニューロンとともに無傷なベルグマングリアを含む、生後5日のラット小脳のインプリント培養物を記載のように作製する(Antonら、J. Neurosci. 16:2283〜2293、1996)。ニューロン移動を、ツァイスW63対物レンズを備えたツァイスアキシオバート135(Zeiss Axiovert135)顕微鏡を用いてモニターし、映像を光学ディスクに記録する。ニューロン移動の速度およびパターン、ニューロン-グリア相互作用、および形態の変化を、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2に対する応答においてモニターする。
【0127】
小脳顆粒ニューロン形成に対する効果が、生後のラット小脳顆粒ニューロンの解離培養において研究される。分裂中の神経前駆細胞は、パーコール(Percoll)密度勾配遠心分離により生後5日の小脳から精製され、解離細胞培養中に設置される。培養物はその後10μM BrdUrd(分裂細胞を標識化するために)、様々な濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を用いて処理される。培養において2〜7日の付加的な日数の後で、ニューロンおよびグリア細胞系列への分化が、GFAP(グリア)およびTUJ1(ニューロン)などの細胞型特異的マーカーを用いての免疫染色によりアッセイされる。各培養条件において、細胞の総数、BrdU標識された細胞、および各マーカーを用いて同定される細胞が列挙される。これらの成長因子に暴露されて以来、特定の細胞系列に入った細胞が、BrdUおよびマーカーの一つで標識されたものとして同定される。各マーカーで標識されるBrdU標識された細胞の割合(%)は、したがって、各成長因子のニューロンおよびグリアの形成および生存に与える効果の尺度を提供する。様々な時間点での細胞の総数、および異なる条件下でのアポトーシス細胞の数の解析は、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2の、神経前駆細胞、またはそのニューロンもしくはグリア誘導体の選択的生存に与える任意の潜在的な効果を評価するために使用される。
【0128】
NRG-1、NRG-2およびerbB4受容体のアイソフォームは、小脳において高レベルで発現し、したがって小脳の神経細胞に関するインビトロ研究はこれらの研究において重要な構成要素となる。rhNRG-2βおよびrhGGF2の両者は、小脳における移動およびニューロン形成の細胞培養アッセイ法において評価された。それらに接着している移動中のニューロンとともに無傷なベルグマングリアを含む生後5日のラット小脳のインプリント培養が作製され、解析された。ニューロン移動は、ツァイスW63対物レンズを備えたツァイスアキシオバート135顕微鏡を用いてモニターされ、映像は光学ディスクに記録された。ニューロン移動の速度およびパターン、ニューロン-グリア相互作用、および形態の変化が、rhnrg-2βおよびrhGGF2に対する応答においてモニターされた(
図16A〜B)。小脳顆粒ニューロンのニューロン移動速度が、rhNRG-2β(100ng/ml)、rhGGF2(50ng/ml)、または未添加の対照培地への暴露の前後で測定された。
図16Aは、成長因子(ここに示されているのはrhGGF2)の添加の前(黒矢印の左のパネル)および後(黒矢印の右のパネル)にモニターされた、グリア細胞突起上を移動するニューロンを示す。各パネル間で経過している時間は1時間である。
図16Bは、rhGGF2への暴露がニューロンの移動速度を45±2.1%促進したことを示す。対照的に、対照培地またはrhNRG-2βのいずれも移動速度を変更しなかった。星印は有意性、P<0.05を示す。示されているデータは平均±標準誤差(各群に関してn>16)である。したがって、rhGGF2により促進されるニューロン移動速度における観察された増加とは対照的に、rhNRG-2βは明らかな効果を有さなかった。しかし、小脳神経前駆細胞を解離培養において調べた場合に、rhNRG-2βは外部顆粒層(EGL)ニューロンの増殖および/または生存を促進した(
図15A〜B)。外部顆粒層(EGL)細胞は解離され、神経基本(NB)/N2培地または100ng/mlのrhNRG-2βを添加したNB/N2培地中で5日間培養される。10μMのBrdUは最初から全ての培養に添加された。細胞はその後固定され、ポリクローナルニューロン特異的抗体(Tuj-1;バブコ(Babco))および抗BrdUモノクロナール抗体を用いてプローブ検索された。Tuj-1のみ(すなわち、ニューロン;星印[A])、BrdU+Tuj-1(すなわち、培養において分裂中の神経芽細胞から生成されるニューロン;矢印[A])およびBrdUのみ(すなわち、非神経細胞;矢頭[A])で標識された細胞が計数された。対照と比較して、rhNRG-2βを含む培地において培養される時、より多くのニューロン(矢印[A])が核においてBrdU(オレンジ)を取り入れたことが見出された。BrdU免疫反応性が、Cy3(赤)に結合された抗マウスを用いて検出された。Tuj-1免疫反応性はFITCに結合された抗ウサギを用いて検出された。Tuj-1およびBrdU陽性細胞の数が計数された。rhNRG-2β群由来の細胞の計数は、BrdU陽性ニューロンの数における基礎的な変化の倍率を取得するために、対照群由来のものに対して正規化された。この結果は、rhNRG-2βがEGL細胞増殖、または新規に生成された小脳顆粒ニューロンの選択的生存を促進することを示唆する。これらのデータはしたがって、erbB4を発現するニューロン集団に、より一般的に適用可能な、神経細胞への生物活性を例示する。
【0129】
実施例12
心室筋細胞に対するNRG-2の活性
発生中および生後の心筋におけるNRGリガンドおよび受容体の役割を検査するために、NRG-2タンパク質について、単離された新生児および成体ラットの心筋細胞の増殖、生存および成長を促進する可能性が研究された。ニューレグリン、erbB2、erbB3およびerbB4に対する全部で3個の既知の受容体は、E14の発生中の心臓において発現され、その後erbB3発現は急速に減少し、一方erbB2およびerbB4発現は心室筋細胞において成体期まで持続する。rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの心筋細胞に対するインビトロ活性はrhGGF2と比較して評価される。具体的には、その2個の成長因子が、下記のように心筋細胞生存、肥大および収縮性タンパク質の発現に対する効果に関して比較される。新生児ラット心室筋細胞(NRVM)初代培養を以前に記載されているように調製する(Springhornら、J. Biol. Chem. 267:14360〜14365、1992)。筋細胞を選択的に濃縮するために、解離された細胞を500rpmで5分間、2回遠心分離し、75分間2回、前プレーティングし、最終的には7%FBSを添加したDME培地中で低密度(0.7〜1x10
4細胞/cm
2)にてプレーティングする。シトシンアラビノシド(AraC;10M;シグマ)を、非筋細胞の増殖を防止するために最初の24〜48時間の間添加する。他に述べられなければ、全ての実験は、無血清培地、DMEプラスITS(シグマ)に変えた後、36〜48時間実施される。この方法を用いて、95%超の筋細胞を有する初代培養は、自発収縮を顕微鏡観察することにより、およびモノクロナール抗心ミオシン重鎖抗体(抗MHC;バイオジェネシス(Biogenesis)、Sandown、NH)を用いた免疫蛍光染色により評価されるように、型どおりに取得される。
【0130】
成体ラット心室筋細胞(ARVM)初代培養の単離および調製は以前に記載された技術を用いて実施される(Bergerら、Am. J. Physiol. 266:H341〜H349、1994)。棒型心筋細胞は、ラミニン(10 ( g/ml)で前コーティングされたディッシュ上で60分間、培養液中にプレーティングされる、続いて緩く付着している細胞を除去するために培地が1回交換される。非筋細胞による、ARVM初代培養の汚染は、血液血球計算器を用いて決定され、典型的には5%未満である。全てのARVM初代培養は、2mg/mlのBSA、2mMのL-カルニチン、5mMのクレアチン、5mMのタウリン、0.1 ( Mのインスリン、および10nMのトリヨードチロニンを添加した100IU/mlのペニシリンおよび100 ( g/mlのストレプトマイシンを有するDMEから構成される「ACCITT」(Ellingsenら、Am. J. Physiol. 265:H747〜H754、1993)と名付けられた合成培地中で維持されている。筋細胞の生存および/またはアポトーシスを検査するために設計された実験プロトコールにおいては、インスリンが合成培地から除去され、したがって「ACCTT」と名付けられる。
【0131】
タンパク質合成速度の尺度([
3H]ロイシン取り込み)が、心筋細胞肥大に対する成長因子の効果をモニターするために使用される。これらの実験に関しては、10 ( Mシトシンアラビノシドが培養培地に添加される。細胞は無血清培地中で36から48時間増殖され、その後、異なる用量のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いて刺激される。40時間後、[
3H]ロイシン(5 ( Ci/ml)が8時間添加され、細胞はPBSを用いて洗浄され、10%TCAを用いて回収される。TCA沈殿可能な放射活性はシンチレーション計数により決定される。
【0132】
免疫細胞化学を、rhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いての筋細胞表現型における変化を検査するために使用される。例えば、成長因子処理に続いて、細胞を4%(w/v)パラホルムアルデヒド中で室温30分間固定し、PBSで洗浄し、0.1%トライトン-Xを用いて15分間透過性化し、その後1%FBSを用いてさらに15分間インキュベーションし、抗ミオシン重鎖(1:300)を用いたインキュベーションが続き、TRITC結合(NRVM)またはFITC結合(ARVM)二次抗体で可視化した。ARVMはKr/Arレーザーを有するMRC600共焦点顕微鏡を用いて検査される。
【0133】
rhGGF2と比較して、rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの心筋細胞に対するインビトロ活性を評価した。(タンパク質合成を測定することによりモニターされるように)細胞肥大に関する研究、ならびにp42/44 MAPKおよびAktを含むシグナル伝達経路の活性化が実施された(
図17および
図18)。1日齢新生児ラット心室から単離された新生児ラット心室筋細胞は、約80,000細胞/ウェルで10%FCS中に、24時間、24ウェル組織培養プレート中にプレーティングされ、その後血清を一晩除去した。細胞を、
3H-ロイシン存在下で24時間、組換えニューレグリンで処理した。細胞タンパク質を5%TCAを用いて沈殿し、0.4N NaOHを用いて溶解した。
3H-ロイシン取り込みはシンチレーション計数器を用いて測定され、未処理細胞における平均計数により分割された、同一に処理された4ウェルの平均として提示された。新生児ラット心室筋細胞は、約2〜300万細胞/プレートで10%FCS中に、p100s中に24時間プレーティングされ、その後血清を24時間除去した。細胞を、組換えニューレグリンで10分間処理し、その後プロテアーゼおよびフォスファターゼ阻害剤(ニューイングランドバイオラボ)を含む緩衝液で溶解した。70μgのタンパク質を表す試料を10%ゲル(バイオラッド)上で泳動し、ニューイングランドバイオラボのリン酸化特異的抗体を用いてリン酸化ErkまたはAtkを検出するために、PVDF膜上に転写した。rhGGF2およびrhNRG-2βの両方は、検査された全ての濃度において約40%タンパク質合成を増加させた。しかしながら、rhNRG-2αは試験された濃度では、タンパク質合成に対する効果を有さなかった。示されているブロット(
図17)は2個の別個の実験の代表である。
【0134】
これらの結果は、NRG2シグナル伝達が、心筋小柱形成の間および形成後の両方において、心筋細胞の増殖、生存および成長を促進するように作用する可能性があることを示している。さらに、生後および成体の心臓におけるNRG受容体の持続は、生理学的ストレスまたは傷害に対する心筋の適応においてニューグレリンに関して持続性の役割を示唆する。
【0135】
実施例13
細胞生存アッセイ法およびアポトーシスの検出
細胞生存度は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT、シグマ)細胞呼吸アッセイ法により決定される。無血清培地中で2日後の初代培養NRVMを、異なる濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いて、4または6日のいずれかの間刺激する。ARVMを、ACCTT培地、または異なる濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βもしくはrhGGF2を添加したACCTT培地中で6日間維持する。MTTはその後細胞とともに37℃3時間インキュベーションされる。生存細胞はテトラゾリウム環を、ジメチルスルホキシドを用いた細胞溶解の後、570nmの光学的密度を読み取ることにより定量化可能な濃青色のホルマザン結晶に変換する。
【0136】
アポトーシスは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を介するdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイ法を用いて、新生児および成体の筋細胞において検出される。フルオレセイン結合dUTPを用いたDNAの3'末端標識は、製造元の指示書にしたがって、インサイチュー細胞死検出キット(ベーリンガーマンハイム)を用いて実施される。細胞は上述のように、抗MHC抗体を用いて対比染色され、核はまた、ヘキスト33258(10 ( M、シグマ)を用いて5分間染色される。500超の筋細胞が各カバースリップにおいて計数され、TUNEL陽性筋細胞の割合(%)が計算される。
【0137】
他の態様
本明細書において言及される全ての刊行物および特許出願は、各々の独立した刊行物または特許出願があたかも具体的におよび個別に参照として組み入れられるように指示されているのと同様に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0138】
本発明は、その特定の態様に関連して記載されているが、さらなる修飾が可能であることが理解されると思われ、本出願は、一般的には本発明の原則に従って、且つ本発明が関連する技術分野内の既知のまたは習慣的な実施内にある、本発明の開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変動、使用または適応を含むことを意図し、本明細書において以前に開示された重要な特徴に適用されてもよく、添付の特許請求の範囲にしたがうものである。