(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属イオンがナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである請求項1〜3のいずれかに記載のスチールコード被覆、スチールコード隣接ストリップ又はタイガム用ゴム組成物。
前記ゴム成分100質量部に対して、下記式(II)で表される化合物を0.1〜5.0質量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載のスチールコード被覆、スチールコード隣接ストリップ又はタイガム用ゴム組成物。
XO3S−S−(CH2)q−S−SO3X (II)
(式中、qは3〜10の整数を表す。Xは、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトを表す。)
レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の架橋樹脂と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも一種のメチレン供与体とを含有し、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記架橋樹脂の合計含有量が0.5〜10質量部、前記メチレン供与体の合計含有量が0.5〜10質量部である請求項1〜6のいずれかに記載のスチールコード被覆、スチールコード隣接ストリップ又はタイガム用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のゴム組成物は、イソプレン系ゴムと、特定のカーボンブラックと、有機酸コバルトと、式(I)で表される化合物とを含有する。式(I)で表される化合物は、末端の窒素官能基がカーボンブラック表面に存在するカルボキシル基などの官能基と反応することでカーボンブラックと結合することができ、また、炭素−炭素二重結合の部分がポリマーラジカルとの反応や硫黄架橋を伴う反応によりポリマーと結合することができる。そのため、カーボンブラックの分散性を向上させ、かつその良好な分散状態を使用中も維持することができる。更に、ポリマーが式(I)で表される化合物を介してカーボンブラックを拘束しているため、発熱性を抑えることができる。これらの作用を有する式(I)で表される化合物を、特定のカーボンブラックと、有機酸コバルトとともに、イソプレン系ゴムを含むゴム組成物に配合することで、該ゴム組成物の低燃費性を改善し、更に、良好な耐久性及びスチールコード接着性も得られる。なお、式(I)で表される化合物を配合すると、加硫速度が若干早くなる傾向があるが、スチールコード接着性に対する影響は軽微である。
【0020】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含有する。イソプレン系ゴムは、混練り中にポリマー鎖が切断されてラジカルが発生する。この発生したラジカルを式(I)で表される化合物が捕捉することにより、ポリマー鎖と式(I)で表される化合物とが結合することができる。
【0021】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、高純度天然ゴム(HPNR)などが挙げられ、NRを好適に使用できる。
【0022】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、60質量%以上、好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。60質量%未満であると、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。
【0023】
本発明のゴム組成物は、イソプレン系ゴム以外に他のゴム成分を使用してもよい。他のゴム成分としては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのジエン系ゴムが挙げられ、好ましくはBRである。
【0024】
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できるが、高いE
*が発現できる点、及び、押出し加工性に優れる点から、シンジオタクチック結晶含有ブタジエンゴム(SPB含有BR)を用いることが好ましい。
【0025】
本発明のゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
【0026】
本発明のゴム組成物は、特定の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックを含有する。
【0027】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、20m
2/g以上、好ましくは60m
2/g以上、より好ましくは65m
2/g以上である。20m
2/g未満では、充分な耐久性(Hs、破断伸び及び耐亀裂成長性)を確保できないおそれがある。カーボンブラックのN
2SAは、130m
2/g以下、好ましくは120m
2/g以下、より好ましくは115m
2/g以下である。130m
2/gを超えると、カーボンブラック由来の発熱が大きくなること、及び、式(I)で表される化合物との反応が進行しにくくなることにより、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。
【0028】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは60cm
3/100g以上、より好ましくは70cm
3/100g以上である。60cm
3/100g未満では、充分な耐久性(Hs、破断伸び及び耐亀裂成長性)を確保できないおそれがある。カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは140cm
3/100g以下である。140cm
3/100gを超えると、充分な低燃費性及び破断伸びを確保できないおそれがある。
【0029】
カーボンブラックのpHは、好ましくは7.9以下、より好ましくは7.8以下、更に好ましくは7.7以下、特に好ましくは7.6以下である。7.9を超えると、カーボンブラックの酸性官能基量が少ないため、式(I)で表される化合物との反応性(相互作用)が小さくなり、低燃費性などを充分に改善できないおそれがある。カーボンブラックのpHは、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上である。3.0未満であると、ゴム組成物のpHが低くなることにより、加硫剤の活性が低下し、架橋効率が低下する傾向がある。
【0030】
カーボンブラックの揮発分は、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。0.8質量%未満では、式(I)で表される化合物との反応性(相互作用)が小さくなり、低燃費性などを充分に改善できないおそれがある。カーボンブラックの揮発分は、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。3.5質量%を超えると、加硫工程で揮発分の大部分を揮発させ、ポロシティーが発生しなくなるまで加硫し続けることが必要となるため、加硫時間が長くなり、生産効率が悪化する傾向がある。
【0031】
なお、本明細書において、カーボンブラックのDBP吸油量、pH、揮発分はJIS K6221(1982)に、カーボンブラックのN
2SAはJIS K6217(2001)に記載の方法で測定される値である。
【0032】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、15質量部以上、好ましくは50質量部以上である。15質量部未満であると、充分なHsを確保できないおそれがある。カーボンブラックの含有量は、70質量部以下、好ましくは60質量部以下である。70質量部を超えると、ゴムが硬くなり過ぎて破断伸びが低下し、かえって耐久性が低下するおそれがある。また、低燃費性が悪化するおそれもある。
【0033】
本発明のゴム組成物は、下記式(I)で表される化合物を含有する。
【化5】
(式中、R
1、R
2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基又は炭素数1〜20のアルキニル基である。M
r+は金属イオンを示し、rはその価数を表す。)
【0034】
R
1、R
2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを挙げることができる。
R
1、R
2のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基などを挙げることができる。
R
1、R
2のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基などを挙げることができる。
【0035】
R
1、R
2としては、好ましくは、水素原子、アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基であり、更に好ましくは、水素原子である。すなわち、上記式(I)で表される化合物は、下記式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物であることが好ましく、下記式(I−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化6】
【化7】
【化8】
【0036】
上記式(I)、(I−1)、(I−2)、(I−3)において、金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンが挙げられ、ナトリウムイオンであることが好ましい。
【0037】
式(I)で表される化合物の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.1質量部未満であると、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。式(I)で表される化合物の含有量は、20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。20質量部を超えると、充分な加工性を確保できないおそれがある。
【0038】
本発明のゴム組成物は、加硫助剤及びスチールコード接着促進剤として、有機酸コバルトを含有する。有機酸コバルトとしては、例えば、ステアリン酸コバルト、ホウ素ネオデカン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルトなどが挙げられ、粘度低減効果を有するという点ではステアリン酸コバルトが好ましく、酸化劣化後の破断伸び及び湿熱劣化後のスチールコード接着性が良好であるという点ではホウ素ネオデカン酸コバルトが好ましい。
【0039】
有機酸コバルトの含有量は、ゴム成分100重量部に対して、コバルトに換算して0.05質量部以上、好ましくは0.08質量部以上である。0.05質量部未満では、スチールコード接着性を充分に確保できないおそれがある。有機酸コバルトの含有量は、コバルトに換算して0.20質量部以下、好ましくは0.17質量部以下である。0.20質量部を超えると、酸化劣化後の破断伸びが低下する傾向がある。
【0040】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含有することが好ましい。硫黄としては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0041】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2.5質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上である。2.5質量部未満であると、スチールコード接着性を充分に確保できないおそれがある。また、ゴム組成物が充分に加硫されず、必要とする耐久性が得られないおそれもある。硫黄の含有量は、6.0質量部以下である。6.0質量部を超えると、酸化劣化による硬化が促進され、破断伸び、耐久性が低下するおそれがある。
なお、硫黄の含有量は、可溶性硫黄及び不溶性硫黄由来の硫黄分の総量であり、フレキシス社製のDURALINK HTSなどの硫黄含有カップリング剤由来の硫黄分は含まない。これは、スチールコード被覆、スチールコード隣接ストリップ又はタイガム用ゴム組成物においては、加硫剤として比較的多量の硫黄が配合されることにより、硫黄含有カップリング剤由来の硫黄分はゴム組成物中に放出されないためである。
【0042】
本発明のゴム組成物は、架橋剤として、下記式(II)で表される化合物及び/又はその水和物を使用することが好ましい。これにより、スチールコード接着性を向上できる。
XO
3S−S−(CH
2)
q−S−SO
3X (II)
(式中、qは3〜10の整数を表す。Xは、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトを表す。)
【0043】
式(II)中、qは、好ましくは3〜6の整数である。また、Xは、好ましくはカリウム、ナトリウムである。また、式(II)で表される化合物の水和物としては、例えば、ナトリウム塩一水和物、ナトリウム塩二水和物などが挙げられ、好ましくは、1,6−ヘキサメチレン−ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物である。
【0044】
式(II)で表される化合物及びその水和物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0045】
本発明のゴム組成物は、レゾルシノール樹脂(縮合物)、変性レゾルシノール樹脂(縮合物)、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の架橋樹脂を含むことが好ましい。これにより、スチールコード接着性を向上できる。
【0046】
レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール樹脂の末端のメチル基を水酸基に変性したもの、クレゾール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性フェノール樹脂としては、フェノール樹脂をカシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミン等を用いて変性した樹脂が挙げられる。
【0047】
上記架橋樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
【0048】
本発明のゴム組成物は、上記架橋樹脂とともに、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種のメチレン供与体を含むことが好ましい。上記メチレン供与体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜4質量部である。
【0049】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有することが好ましい。これにより、スチールコード接着性を向上できる。シリカとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0050】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは80m
2/g以上である。50m
2/g未満では、充分な破断伸びが得られないおそれがある。シリカのN
2SAは、好ましくは250m
2/g以下、より好ましくは200m
2/g以下である。250m
2/gを超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0051】
シリカの含有量は、良好なスチールコード接着性及び破断伸びが得られるという点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3〜55質量部、より好ましくは5〜20質量部、更に好ましくは5〜15質量部である。
【0052】
本発明のゴム組成物は、粘着加工助剤として、C5系石油樹脂を使用することが好ましい。C5系石油樹脂は、C5(炭素数5)系石油炭化水素を重合して得られる。C5系石油炭化水素とは、ナフサの熱分解により得られるC5留分(炭素数5の留分)のことをいい、具体的には、イソプレン、1,3−ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレンなどのジオレフィン類や2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、シクロペンテンなどのモノオレフィン類が挙げられる。C5系石油樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0〜2質量部である。
【0053】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、老化防止剤、オイル、ワックス、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0054】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であり、0質量部であってもよい。3質量部を超えると、スチールコード接着性が低下し、また、式(I)で表される化合物とカーボンブラック表面の官能基との反応が阻害されるおそれがある。
【0055】
加硫促進剤としては特に限定されず、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)を筆頭にタイヤ工業において一般的なものを使用できるが、環境負荷が小さいという点から、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンイミド(TBSI)、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BEHZ)、N,N−ジ(2−メチルヘキシル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BMHZ)、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(ETZ)が好ましく、TBSIがより好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0056】
本発明のゴム組成物を製造する方法としては、公知の方法、例えば、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0057】
本発明のゴム組成物は、タイヤのスチールコード被覆、スチールコード隣接ストリップ又はタイガムに用いることができる。なかでも、スチールコード被覆用ゴム(特にブレーカー被覆用ゴム)に好適に使用できる。
なお、スチールコード隣接ストリップとは、例えば、ブレーカーエッジストリップ、ブレーカー/プライ間ストリップ、ブレーカークッション上ストリップ(ファーストブレーカー下ストリップ)と呼ばれる部材であり、具体的には、後述する
図1〜3に示される部材である。
タイガムとは、ケースコードとインナーライナーの間に配置される部材であり、具体的には、特開2010−095705号公報の
図1などに示される部材である。
【0058】
以下、
図1〜3を用いてスチールコード隣接ストリップについて説明する。
図1〜3は、空気入りタイヤの部分断面図の一例であり、
図1では、ブレーカー12の端部近傍において、ブレーカー12の内側層44と外側層46の間にブレーカーエッジストリップ16が設けられ、カーカスプライ28とブレーカークッション上ストリップ(ファーストブレーカー下ストリップ)31との間でブレーカー/プライ間ストリップ層(BPストリップ層)30に隣接してブレーカークッション32が設けられた例が示されている。
図2では、ブレーカー12の端部近傍において、ブレーカー12の外側層46の端部を覆うようにブレーカーエッジストリップ16Aが設けられ、ブレーカー12の内側層44の端部を覆うようにブレーカーエッジストリップ16Bが設けられ、カーカスプライ28とブレーカー12の内側層44及びブレーカーエッジストリップ16Bとの間でブレーカー/プライ間ストリップ層(BPストリップ層)30に隣接してブレーカークッション32が設けられた例が示されている。また、
図3では、ブレーカー12の端部近傍において、ブレーカー12の外側層46とバンド15の間に、ブレーカーエッジストリップ16Aが設けられ、ブレーカー12の内側層44と外側層46の間に、ブレーカーエッジストリップ16Bが設けられ、カーカスプライ28とブレーカークッション上ストリップ(ファーストブレーカー下ストリップ)31との間でブレーカー/プライ間ストリップ層(BPストリップ層)30に隣接してブレーカークッション32が設けられた例が示されている。
【0059】
また、
図1〜3では、スチールコード隣接ストリップとして、ブレーカー12の内側層44とカーカスプライ28の間にブレーカー/プライ間ストリップ層(BPストリップ層)30が設けられた例が示されている。また、
図1、3では、スチールコード隣接ストリップとして、ブレーカー12の内側層44とブレーカークッション32の間にブレーカークッション上ストリップ(ファーストブレーカー下ストリップ)31が設けられた例が示されている。
【0060】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でケース(カーカス)などのスチールコード被覆部材やタイガムの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを製造できる。
【0061】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤなどに使用でき、なかでも、破断伸びを最大限に確保するため、天然ゴムの含有量を100質量%としたオールスチールタイヤに好適に使用できる。
【実施例】
【0062】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0063】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:TSR20
IR:IR2200
BR:宇部興産(株)製のVCR617(SPB含有BR、SPBの含有量:17質量%)
化合物I:住友化学(株)製の(2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウム(下記式で表される化合物)
【化9】
S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸:住友化学(株)製のS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(下記式で表される化合物)
【化10】
カーボンブラック1:コロンビアカーボン社製のStatex N550(N
2SA:40m
2/g、DBP吸油量:115cm
3/100g、pH:6.8、揮発分:1.8質量%)
カーボンブラック2:コロンビアカーボン社製のStatex N219(N
2SA:110m
2/g、DBP吸油量:78cm
3/100g、pH:7.6、揮発分:1.7質量%)
カーボンブラック3:コロンビアカーボン社製のStatex N326(N
2SA:78m
2/g、DBP吸油量:74cm
3/100g、pH:7.6、揮発分:1.1質量%)
カーボンブラック4:コロンビアカーボン社製のStatex N351H(N
2SA:67m
2/g、DBP吸油量:137cm
3/100g、pH:7.8、揮発分:1.7質量%)
カーボンブラック5:コロンビアカーボン社製のStatex N220(N
2SA:114m
2/g、DBP吸油量:114cm
3/100g、pH:7.5、揮発分:1.8質量%)
シリカ:エボニックデグッサ社製のVN3(N
2SA:175m
2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75
C5系石油樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(軟化点:102℃)
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C
老化防止剤TMQ:大内新興化学工業(株)製のノクラック224
ステアリン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のcost−F(コバルト含有量:9.5質量%、ステアリン酸含有量:90.5質量%)
ホウ素ネオデカン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のDicnate NBC−II(ホウ素3ネオデカン酸コバルト、コバルト含有量:22.0質量%)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
20%オイル含有不溶性硫黄:四国化成(株)製のミュークロンOT−20
加硫促進剤TBSI:フレキシス(株)製のサントキュアーTBSI(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンイミド)
架橋樹脂1:田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシノール樹脂(変性レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物))
架橋樹脂2:住友ベークライト(株)製のPRX−11061(高純度クレゾール樹脂)
架橋樹脂3:住友ベークライト(株)製のPR12686(カシューオイル変性フェノール樹脂)
メチレン供与体:住友化学(株)製のスミカノール507A(変性エーテル化メチロールメラミン樹脂(HMMPMEの部分縮合物)を65質量%、他にシリカとオイルを35質量%含有)
HTS:フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6−ヘキサメチレン−ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)
【0064】
(実施例及び比較例)
(ベース練り工程1)
(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーに、ゴム成分と、化合物Iと、30質量部程度のカーボンブラックとを投入して2分間混練りした後、残りのフィラーと、有機酸コバルト、硫黄、加硫促進剤及びHTS以外の薬品及びオイルとを投入して更に3分間混練りし、150℃で排出することで、マスターバッチを得た。
(ベース練り工程2)
得られたマスターバッチに有機酸コバルトを添加し、上記バンバリーミキサーで3分間混練りし、130℃で排出することで、混練り物を得た。
(仕上げ練り工程)
得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及びHTSを添加し、オープンロールで2分間混練りし、105℃で排出することで、未加硫ゴム組成物を得た。
(加硫工程)
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0065】
得られた未加硫ゴム組成物及び加硫ゴム組成物を使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1及び2に示す。
【0066】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物の複素弾性率E
*(MPa)及び損失正接tanδを測定した。E
*が大きいほど剛性が高く、操縦安定性に優れることを示し、tanδが小さいほど発熱しにくく、低燃費性に優れることを示す。
【0067】
(引張試験)
上記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)(新品時)を測定した。また、上記加硫ゴム組成物を空気雰囲気のオーブンに入れ、80℃で168時間を酸化劣化させた後、同様の方法で破断伸びEB(%)(酸化劣化後)を測定した。EBが大きいほど、破断伸び(耐久性)に優れることを示す。
【0068】
(接着試験)
上記加硫ゴム組成物について、剥離試験用サンプルを用いて接着試験を行い、剥離後のゴム被覆率(スチールコードとゴム間を剥離したときの剥離面のゴムの覆われている割合)を測定し、5点満点で表示した。また、上記加硫ゴム組成物を温度80℃、湿度95%の条件下で150時間、湿熱劣化させた後、同様の方法で剥離後のゴム被覆率を測定した。5点は全面が覆われ、0点は全く覆われていない状態を示す。評点の大きいほどスチールコード接着性が良好である。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1及び2より、イソプレン系ゴムと、特定のカーボンブラックと、有機酸コバルトと、式(I)で表される化合物とを所定量含有する実施例は、低燃費性、耐久性及びスチールコード接着性がバランス良く改善された。また、操縦安定性も良好であった。