特許第5727998号(P5727998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727998
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】改善された測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/12 20100101AFI20150514BHJP
   G01S 19/05 20100101ALI20150514BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20150514BHJP
【FI】
   G01S19/12
   G01S19/05
   H04W64/00 120
   H04W64/00 140
   H04W64/00 160
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-505851(P2012-505851)
(86)(22)【出願日】2009年4月20日
(65)【公表番号】特表2012-524259(P2012-524259A)
(43)【公表日】2012年10月11日
(86)【国際出願番号】SE2009050402
(87)【国際公開番号】WO2010123418
(87)【国際公開日】20101028
【審査請求日】2012年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ウィグレン, トルビョルン
(72)【発明者】
【氏名】シ, リアン
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/086784(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/137417(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/069712(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/089182(WO,A1)
【文献】 特表2006−504110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00〜19/55、
5/00〜5/14
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラ通信システムにおいて、位置決定用の支援データを提供するための、改善されたクラスタ化を行う方法であって、
複数のポイントを含む複数のクラスタを提供するステップ(S10)であって、前記複数のポイントが、高精度基準測定の結果であり、前記複数のクラスタのそれぞれに含まれる前記複数のポイントが、同一かつ固有のフィンガープリント・タグを有する、前記提供するステップと、
予め定められた閾値より少ない数のポイントを含む対象クラスタを特定するステップ(S20)と、
増加した数の高精度基準測定値を有する統合されたクラスタを提供するために、前記対象クラスタを、前記提供された複数のクラスタのうちで、前記対象クラスタと同一のタグ階層レベルの少なくとも1つの選択された隣接クラスタと統合するステップ(S30)と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記統合するステップは、
前記対象クラスタのタグを、前記少なくとも1つの隣接クラスタのタグも含むように変換するために、前記対象クラスタのタグに含まれる成分を削除するステップと、
前記対象クラスタと前記少なくとも1つのクラスタとを、前記変換されたタグでタグ付けされた、前記統合されたクラスタに統合するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のクラスタに含まれるセルIDを、当該複数のクラスタの地理的位置に基づいて順序付けることによって、前記少なくとも1つの選択された隣接クラスタを選択するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のクラスタの全てについての重心を計算し、かつ、前記対象クラスタから予め定められた地理的距離の範囲内に重心を有するクラスタを検索することによって、前記少なくとも1つの選択された隣接クラスタを選択するステップを更に含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記高精度基準測定値は、GSM構成の基準測定値(A−GPS)を含み、
前記タグは、CGI、TA、及びRSSのうちの1つ、またはCGI、TA、及びRSSの任意のサブセットを含む
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記高精度基準測定値は、WCDMA構成の基準測定値(A−GPS)を含み、
前記タグは、セルID、RTT、プリコーディング・インデックス、及びパスロスのうちの1つ、またはセルID、RTT、プリコーディング・インデックス、及びパスロスの任意のサブセットを含む
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記高精度基準測定値は、LTE構成の基準測定値(A−GPS、OTDOA)を含み、
前記タグは、セルID、信号強度、及びプリコーディング・インデックスのうちの1つ、またはセルID、信号強度、及びプリコーディング・インデックスの任意のサブセットを含む
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
セルラ通信システムにおいて、位置決定用の支援データを提供するための、改善されたクラスタ化を行う装置(1)であって、
複数のポイントを含む複数のクラスタを提供するクラスタ化ユニット(2)であって、前記複数のポイントが、高精度基準測定の結果であり、前記複数のクラスタのそれぞれに含まれる前記複数のポイントが、同一かつ固有のフィンガープリント・タグを有する、前記クラスタ化ユニット(2)と、
予め定められた閾値より少ない数のポイントを含む対象クラスタを特定する特定器(3)と、
増加した数の高精度基準測定値を有する統合されたクラスタを提供するために、前記対象クラスタを、前記提供された複数のクラスタのうちで、前記対象クラスタと同一のタグ階層レベルの少なくとも1つの選択された隣接クラスタと統合する結合器(4)と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項に記載の装置を備えることを特徴とする、通信システムにおけるノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として通信システムに関するものであり、具体的には、そのようなシステムにおける改善された測位に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本開示では、高精度測位という用語は、北米E−911緊急測位の要求条件を満たしうる測位法を表すために用いられる。当該要求条件を満たす方法では、
・(端末ベースにおいて)50メートル(67%)及び150m(95%)、
または、
・(ネットワークベースの)100m(67%)及び300m(95%)、
のいずれかの測位精度を得ることができる。
【0003】
周知の1つの測位法は、いわゆるアシスト型GPS(A−GPS)測位法である。A−GPSは、全地球測位システム(GPS)を改善したものである。図1には、A−GPS測位システムの一例を示しており、ここではWCDMAシステムを示している。当該システムでは、無線ネットワーク制御装置(RNC)は、(WCDMAではユーザ装置(UE)と称される)端末に対する支援データを、収集し、改良し、分配するノードとして動作する。コアネットワーク(CN)は、RANAPインタフェースを介して、UEによる測位をリクエスト(要求)する。これに応じて、RNCは、様々な種類のA−GPS技術を使用しうるものの、これらの技術の全ては、セルラ通信システム内のノードによって処理される支援データを基礎としている。RNCは、UEにおいて実行すべき測位用の測定(positioning measurements)を命令し、当該測定は、当該端末内の専用のA−GPS受信機ハードウェアを用いて実行される。当該受信機は、宇宙船(SV:space vehicle)として同様に示されている人工衛星からのGPS送信を検出する。
【0004】
それに応じて、例えばセルラ通信システムにアタッチされているGPS基準受信機(reference receivers)は支援データを収集し、当該支援データは、当該セルラ通信システムに接続された端末内のGPS受信機に送信された場合に当該GPS端末受信機の性能を改善する(非特許文献8)。典型的には、A−GPSの精度は、微分演算なしでも10メートル程にまで良好となりうる。当該精度は、密集した市街地及び屋内では劣化し、多くの場合、その感度はGPS衛星からの非常に弱い信号の検出に十分なほど高くはない。
【0005】
典型的には、端末の位置についてのおおよその初期推定値を、当該初期推定値についての対応する不確定性とともに得るために、追加的な支援データがセルラ通信システムから直接収集される。この位置は、多くの場合、セル識別子(セルID)測位ステップを用いて与えられ、即ち、端末の位置はセルの粒度(cell granularity)で決定される。あるいは、より精度の高い位置を、往復遅延時間(RTT)測位とソフト(ソフタ)ハンドオーバ・マップとの少なくともいずれかによって得ることが可能である。GPS時間も、セルラシステムが可能にする程度の良好な精度で推定される。
【0006】
A−GPSを利用した近年の発展には、いわゆる適応拡張セル識別子(AECID)測位がある(非特許文献1〜6)。図2には、AECID測位法の基本的な実装例のブロック図を示している。
【0007】
AECID測位アルゴリズムは、ポリゴン・フォーマットと、タグ付けされた複数の高精度位置測定値を含むクラスタからポリゴンを計算するためのアルゴリズムとに基づいている(非特許文献7)。WCDMAでは、高精度測定値は、例えばA−GPS測位ステップによって提供される。AECIDアルゴリズムの主なステップは、以下の概略的なフローに従っている(WCDMAでは、特にステップ1a〜1cとステップ5ai〜5aiiiとが重要である)。
【0008】
1.少なくとも以下のうちの1つによって高精度位置測定値(例えば、A−GPS測定値)にタグ付け(tagging)を行う。
a.検出されたセルのセルID
b.補助(auxiliary)接続情報(例えば、RAB、時間)
c.量子化された補助測定値(例えば、パスロス、信号強度、RTT、プリコーディング・インデックス(複数入力・複数出力(MIMO)構成では、これらは角度情報を有する)、または雑音上昇)
2.高精度測定値クラスタ内で同一のタグを有する全ての高精度測定値を収集する。
3.当該クラスタ化された高精度位置測定値のうちの予め指定された割合を内部に含む(タグ付けされた)ポリゴンを計算することによって、既知の信頼度(非特許文献7)値を有するポリゴンを提供する。注意:当該信頼度は、報告された領域にUEが実際に位置している確率である。
4.当該タグ付けされたポリゴンを、複数のポリゴンを含むデータベース内に格納する。
5.AECID測位が実行される際には、以下のステップが実行される。
a.少なくとも以下のうちの1つを決定する。
i.検出されたセルのセルID
ii.補助接続情報
iii.量子化された補助測定値
b.ステップa.によって定義されたタグを形成する。
c.当該タグに対応するポリゴンを検索する。
d.当該ポリゴンを、RANAPまたはPCAPを介して報告する。
【0009】
上述のAECID法によって信頼性のある測位(例えば、計算されたポリゴンの精度)を提供するためには、各クラスタにおいて、または、タグごとに、十分な数の高精度測定値を集める必要がある。測定値の数が不十分であると、測位に失敗するか、または、測位の精度が低下する結果となりうる。これにより、精密な(accurate)測位が実行可能となる前の待ち時間が増加することになる。したがって、高精度測定値の数が所定の閾値を下回る場合に、当該待ち時間を低減し、精密な測位を提供する方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】T. Wigren, “Adaptive enhanced cell identity positioning(適応拡張セル識別子測位)”, PCT/SE2005/001485, 2005年10月7日.
【非特許文献2】T. Wigren, “Path loss polygon positioning(パスロス・ポリゴンによる測位)”, PCT/SE2006/000132, 2006年1月30日.
【非特許文献3】T. Wigren, “Method and arrangement in a telecommunication system(通信システムにおける方法及び装置)”, PCT/SE2006/050068, 2006年4月10日.
【非特許文献4】T. Wigren, “Extended clustering for improved positioning(改善された測位のための拡張クラスタ化)”, PCT/SE2006/050440, 2006年10月30日.
【非特許文献5】T. Wigren, “Method and arrangement for enhanced cell identification and cell positioning(拡張セル識別及びセル測位のための方法及び装置)”, PCT/SE2006/050535, 2006年12月4日.
【非特許文献6】T. Wigren, “Adaptive polygon computation and shape conversion for RTT positioning(RTT測位のための適応ポリゴン計算及び形状変換)”, PCT/SE2007/050189, 2007年3月27日.
【非特許文献7】3GPP, TS 23.032, “Universal Geographical Area Description (GAD).
【非特許文献8】A. Kangas and T. Wigren, “Location coverage and sensitivity with A-GPS”, URSI EMP-S, ピサ, イタリア, 2004年5月.
【発明の概要】
【0011】
本発明は、通信システムにおける改善された測位に関するものである。
【0012】
基本的には、セルラ通信システムにおいて、位置決定用の支援データを提供するための、改善されたクラスタ化を行う方法において、複数のポイントを含む複数のクラスタを提供し(S10)、当該複数のポイントが、高精度基準測定の結果であり、当該複数のクラスタのそれぞれに含まれる当該複数のポイントが、同一かつ固有のフィンガープリント・タグを有し、予め定められた閾値より少ない数のポイントを含む対象クラスタを特定するステップ(S20)。最後に、増加した数の高精度基準測定値を有する統合されたクラスタを提供するために、当該対象クラスタを、提供された複数のクラスタのうちの、少なくとも1つの選択された隣接クラスタと統合する(S30)。
【0013】
本発明の利点には、以下のものが含まれる。
‐AECID測位法についての、高精度測定値の収集時間の減少/タグ付けされたポリゴンのアダプテーション・レートの増加。これは、より早い時間における、特定のタグについてのポリゴンの計算に、より多くのポイントが利用可能となるためである。その理由は、上記のクラスタが最小の数の高精度基準測定値に達した際に、ポリゴンの計算が実行可能になることである。
‐端末が基地局から遠く離れた位置にある状況における、特定のタグについての計算されたポリゴンの精度の改善。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、添付の図面とともに以下の説明を参照することによって、その更なる目的及び利点とともに最もよく理解されうる。
【0015】
図1】既知のA−GPSシステムの一例を示す図である。
図2】本発明が実施されうる測位法の一例を示す図である。
図3】タグ付けの原理を示す図である。
図4】本発明に係る方法の一実施形態を示す図である。
図5】本発明が実施されうるシステムの一例を示す図である。
図6】本発明の更なる例を示す図である。
図7】本発明に係る装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
略語
AECID 適応拡張セル識別子(Adaptive Enhanced Cell IDentity)
A−GPS アシスト型GPS(Assisted GPS)
LTE ロング・ターム・エボリューション(Long Term Evolution)
RTT 往復遅延時間(Round Trip Time)
TA タイミング・アドバンス(Timing Advance)
【0017】
本発明は、通信システム、特に、LTE、WCDMA及びGSMのうちの少なくとも1つにおける携帯端末の測位に関するものである。現在のシステムについての周辺の課題及び機能の更なる理解を可能にするために、既知の方法についてのより詳細な説明を以下で提供する。
【0018】
AECIDアルゴリズムについてのこれまでに開示されたタグ付けの原理を説明するために、既知の(GSM用の)システムについて説明する。
【0019】
GSMシステムに適用される場合、タグは以下のものから成る。
・サービングセル及び隣接セルのセル・グローバル識別子(CGI:Cell Global Identities)
・サービングセルのタイミング・アドバンス(TA)
・サービングセル及び隣接セルからの受信信号強度(RSS:Received Signal Strength)。この測定値は量子化される。
【0020】
LTEシステムに適用される場合、到来時間差観測法では、高精度基準測定値の生成にA−GPSを拡大することができる。LTEシステムのタグには、以下のものが利用されうる。
・サービングセル及び他のセルのセルID
・サービングセルのタイミング・アドバンス(TA)
・サービングセル及び他のセルの信号強度
・サービングセルのプリコーディング・インデックス(この情報は角度情報を有する。)
【0021】
例えば、WCDMAでは、他の量(例えば、セルID、往復遅延時間(RTT)、アクティブセットに含まれるセルID、及び検出された基地局についてのパスロス)が使用されるであろう。GSMでは、TA値の範囲は0から63である。1つのTAアーク(arc)は、厚さ約1100メートルである。隣接するTAアークは、互いに重なり合う。
【0022】
GSMでは、最大で6個の隣接セルから報告されうる。これら全ての隣接セルがTAGに含まれている場合には、より良好な精度が達成できるものの、より高精度な基準測定値が必要とされる。妥協案として、より高い信号強度のセルが選択されうる。隣接セルの最大数は設定変更可能であってもよい。例えば、その数が3の場合、最も高い信号強度の最大3個のセルが、ポリゴンの計算中に、及びAECID測位中にも、TAGに含められる。
【0023】
GSMにおける信号強度の範囲は0から63である。AECIDにおける使用のために、信号強度はより少数の値に量子化される。量子化方式は、以下の表のように記述されうる。
【0024】
AECIDのための測定値の収集中における初期には、測定値はほとんど利用可能ではないため、信号強度を2つの値のみに量子化することが妥当である。以下の表は、量子化方式の一例を与える。
【0025】
タグとタグ付けされたAECIDポリゴンとは、階層に編成される。当該階層に含まれる各層について、十分な数の高精度基準測定値が存在する場合にAECIDポリゴンが計算される。このことは、高精度(A−GPS)基準測定値が十分な数だけ存在しない場合には、当該アルゴリズムが次に高いレベルに進むことを意味する。GSM制御プレーンでは、各層のTAGは以下となる。
【0026】
上述のタグ付けシステムは、一例としてのみ機能し、測定値についてのタグの体系化(systematizing)の他の方法が、本開示に関連して実行可能である。図3には、GSMタグ付け階層を図示している。
【0027】
本開示によって対処される第1の主な課題は、タグ付けされた各地理的クラスタ(非特許文献1〜6)内の、高精度(A−GPS)基準測定値または測位測定値(緯度ポイント、経度ポイント)の数が、セルラネットワークのフィンガープリントされた地理的領域のそれぞれについての拡張(extension)を記述するために用いるポリゴンの計算に、十分な数ではない可能性があることである。本発明は、同一のタグ階層レベルにおいて隣接するクラスタを統合することで、クラスタに含まれる高精度測定値の数を増加させる方法を提供することによって、これを解決する。
【0028】
図4を参照すると、セルラ通信システムにおいて位置決定用の支援データ(assisting data)を提供するための、改善したクラスタ化(clustering)を行う方法の基本的な実施形態は、以下の基本的なステップを含む。
最初は、複数のポイントを含む複数のクラスタを提供するステップ(S10)であり、当該複数のポイントは、高精度基準測定の結果であり、当該クラスタのそれぞれに含まれる複数のポイントは、同一かつ固有の無線フィンガープリント・タグ(fingerprinting tag)を有する。高精度測定値の収集については詳細には記述していないが、本発明の分野では周知である。典型的には、格好のA−GPSまたはOTDOA高精度測定値が用いられ、LTEにおけるOTDA測定値は、屋内におけるAECID測位を支援するために用いられる。
次に、対象クラスタを特定するステップ(S20)であり、当該対象クラスタは、予め定められた閾値より少ない数のポイントを含む。即ち、ある時点において、特定のクラスタに含まれる高精度測定値の数が予め定められた数に達していないと、ポリゴン計算の精度が低くなる可能性がある。
最後に、増加した数の高精度基準測定値を有する統合されたクラスタを提供するために、対象クラスタを、提供された複数のクラスタのうちの、少なくとも1つの隣接するクラスタとを統合(merging)または結合(combining)するステップ(S30)であり、これにより、タグ付けされたポリゴンを、改善した精度で計算することが可能になる。
【0029】
その結果、開示した発明によって、タグ付けされたクラスタの拡張を地理的に記述するポリゴンの計算のために使用されるタグ付けされた各クラスタに含まれる、高精度基準位置測定値の数を増加させることが可能である。本発明の実施形態によれば、この増加は少なくとも異なる2つの以下の方法によって達成されうる。
a.タグに含まれる複数の成分(components)が、地理的に重なり合う無線特性を表す場合に、当該複数の成分の削除。[当該重なり合いが、複数の高精度測定値を、複数のクラスタへより細かく分割し、それにより、当該複数のクラスタがより少数の高精度測定値を含むことに起因した課題。]
b.地理的に完全には重なり合わない複数のタグの集合(unions)を使用すること。
【0030】
本開示によって対処されるさらなる課題は、タグ付けのために使用される、GSM及びLTEにおけるタイミング・アドバンス(TA)の測定値と、WCDMAにおける往復遅延時間(RTT)(非特許文献6)の測定値とが、水平方向に(laterally)非常に広く、かつ、(基地局に対して)径方向(radial direction)に狭い、複数の湾曲した領域を生成する傾向にある、という事実に起因している。そのようなクラスタを記述するポリゴンを計算するために使用可能なポリゴン・コーナー・ポイント(非特許文献7)が、典型的には最大で15個のみ存在するため、その結果、精度が低下し、AECIDフィンガープリント測位アルゴリズムの適用性が減少する。したがって、この課題は、ポリゴンの計算の不具合を避けるためには、そのようなアークについての水平方向の幅と径方向の厚みとの比率が、あまりに大きくなりすぎることは許容できないということである。
本発明は、RTTタグ成分及びTAタグ成分によって考慮に入れられる、隣接する複数のクラスタが、当該複数のクラスタの地理的な拡張を記述するポリゴンの計算の際に統合されるように、タグの集合を使用することによって、その課題を軽減する。その結果として、タグの集合を使用することによって、径方向の狭さが減少した、即ち、地理的にさらに拡張された、統合されたクラスタがもたらされる。
【0031】
上述のソリューションに関連する課題は、複数のクラスタが統合されていることを示す情報を、クラスタ・データベースに導入する必要性であると考えられうる。そして、十分な数の高精度(A−GPS)基準測定値が収集されている場合には、未統合のクラスタに戻ることが可能であると考えられる。代替案は、タグ付けされた複数のクラスタを含むデータベースにおける元のクラスタのみを保持することによって、及び、元のタグがポリゴンに変換された場合に、各クラスタのための元のタグを保持することによって、ポリゴンの計算のために一時的な複数のクラスタを作成することである。ここで、当該ポリゴンは、上述の原理のいずれかに従って統合することによって得られる、一時的なクラスタからさらに計算される。
【0032】
対処すべき最後の課題は、統合されるべきタグ及びその基礎となる領域を決定することである。この課題は、セル及び基地局の列挙(enumeration)に依存するため、明らかに自明なものではない。
【0033】
要するに、本発明を用いて対処される課題は、全て、フィンガープリント測位のための現時点で既知の機能が、クラスタまたはタグ付けされたクラスタについての高精度測定値のポイントが少なすぎる状況のための機能を欠いているという事実に関連している。課題には、以下のものが含まれる。
【0034】
1.複数の高精度(A−GPS)基準測定値を含むタグ付けされたクラスタから、AECIDポリゴンを計算するために必要となる高精度(A−GPS)基準測定値の数が、十分ではない可能性がある。測定値についての不十分な数は、測位の失敗につながるか、次に高いタグ階層レベルにおいて著しく減少した精度の測位につながる。
2.所与のタグ階層レベルにおいて、十分な数の高精度(A−GPS)測定値が収集される前の待ち時間が、あまりに長くなりすぎる可能性がある。当該待ち時間は、元のタグ階層レベルにおける精度よりも著しく劣化した、関連する精度を有する、次に高いタグ階層レベルにおいてのみ、より少ない。
3.タイミング・アドバンス(TA)及び往復遅延時間(RTT)の測定値が、AECID法を用いたフィンガープリントのために使用される場合に生じる、クラスタの水平方向の幅と径方向の厚みとの比率が、基地局から遠く離れていると非常に大きくなり、AECID測位法(非特許文献1〜6)の、縮小ポリゴン・アルゴリズムによって計算されるポリゴンの精度を劣化させる事実となる。
【0035】
さらに、本発明の実施形態は、RTTタグ成分及びTAタグ成分によって考慮に入れられる隣接する複数のクラスタが、当該複数のクラスタの地理的な拡張を記述するポリゴンを計算する際に統合されるように、タグの集合を使用することを可能にする。タグの集合を使用することによって、径方向の狭さが減少した、即ち、地理的にさらに拡張されたクラスタがもたらされる。
【0036】
最後に、複数の高精度基準測定値を含む、収集されたクラスタを修正または変更することなく、上述の実施形態を実現し、当該技術では、タグ統合が適用された後においても、元のタグを保持する。
【0037】
図5を参照しながら、本発明のタグ統合の種々の実施形態を、GSMについての一例との関連で説明する。当該通信システムの例において、4つの基地局BS0、BS1、BS2、BS3が、(タグ統合の説明を目的として)基地局BS0のセル内において解析される無線信号を送信する。当該セルは、セル・ポリゴンによって表されている。したがって、CGIレベルのタグは、当該セルに対応するであろう。図5は、さらに、基地局BS1、BS2及びBS3のそれぞれについて、高い信号強度と低い信号強度との境界を表示している。図5においてわかるように、これらの境界は、異なるタグを有する複数の領域a〜fを生成し、タグ成分1、2及び3は、タグの対応する信号強度成分が高い領域、即ち、当該成分が発信基地局に対応する領域を示している。
【0038】
本発明に係るタグ統合の方法についての第1の実施形態に従って、領域cの高精度(A−GPS)基準測定値の数が、当該領域を記述するポリゴンの計算には少なすぎる状況について検討する。言い換えれば、領域cの高精度基準測定値の数が、予め定められた数には達しておらず、それにより、領域cの測定値を、タグ統合の対象となるクラスタにする。その場合、Tagcは、第3の成分の削除によって圧縮され、即ち、
Tagc:={0, 1}
となる。
【0039】
なお、タグ付けされた複数のクラスタを含むデータベースは修正されず、当該タグ付けは、ポリゴンの計算用の、当該複数のクラスタを含むデータベースからの抽出中にのみ変更される。第3の成分の削除によって、Tagcの成分は、ここでTagbの成分と一致する。その結果、当該タグの変更の効果は、それ以前のTagcに含まれるクラスタ・ポイントが、Tagbのクラスタポイントに統合されるということである。そのように統合されたクラスタに含まれるポイントの数をここで総合すると、その数は、b∪c、即ち、領域b及びcの集合を記述するポリゴンの計算のためには十分に大きいと考えられる。この領域はcよりも大きく、そのため精度が減少する。しかし、これは、高精度測定値の数が、領域cの生成のために単純に十分ではないという事実の結果ではない。なお、計算したポリゴンをデータベースに格納する際に、元のタグTagcは、計算したポリゴンにタグ付けするために使用される。
【0040】
図5の例を同様に参照して、第2の実施形態によれば、隣接する複数のクラスタの統合を、タグの集合を使用することによって提供可能であり、これは、2つ以上の領域を結合する場合に有用である。例えば、Tagcによってタグ付けされたポリゴンにおいて十分な量の高精度基準測定値を有するために、領域b、c及びdを統合することを決定した状況について検討する。この状況において、当該タグは、ポリゴンを計算する際に、
Tagc={0, 1}∪{0, 1, 2}∪{0, 2}
と表される必要がある。
【0041】
TAまたはRTTについてのタグまたはクラスタの統合に関する特定のケースについて、図6には、GSMとの関連で、隣接する複数のタイミング・アドバンス・タグの統合が実行される、非常に単純な例を示している。WCDMAシステムでは、同様の統合が適用されうる。同図はTA測定値に関するものであるが、RTT測定値にも同様に適用可能である。
【0042】
タグの統合のための一実施形態に従って、タグTagTA,a及びTagTA,bの集合が、領域aについての幅と厚みとの比率を減少させるために使用される。このため、領域aについてのポリゴンを計算する際には、タグ
TagTA,a={N}∪{N+1}
が使用される。同様の手順が、基地局から十分に遠く離れた全てのTA領域について使用される。当該基地局からさらに離れて、2つを上回る数のタグが統合されうる。この状況では、隣接タグまたは隣接クラスタは、発信基地局との関係で径方向に隣接している。
【0043】
上述の実施形態の効果をさらに強化するためには、タグ付けされた複数のクラスタのいずれを統合するかを選択する効率的な方法が提供されることが望ましい。
【0044】
最上位の階層レベルにおけるタグについては、上記の統合は、タグ統合の対象となるタグ(即ち、対象クラスタまたは対象タグ)のセルに、地理的に最も近接したセルに対応するタグを用いて実行される必要がある。実際にはこれは、
・複数のセルIDの地理的な近さに従った、当該複数のセルIDの(事前の)順序付け
・タグ統合の対象となるセルに最も近接したセル及びタグの検索がその後に続く、全てのクラスタのうち、最上位のタグ階層レベルに対応するクラスタについての重心の(事前の)計算
によって得ることができる。
【0045】
より下位の階層レベルにおけるタグについては、簡易なアプローチは、より高いレベルにおいて一致するタグを検索し、それにより、統合のための最良の候補を検索することである。また、この検索は、最上位のレベルについての原理に基づきうる。即ち、
・複数のクラスタの地理的な近さに従った、当該複数のクラスタの(事前の)順序付け
・タグ統合の対象となるセルに最も近接したセル及びタグの検索がその後に続く、全てのクラスタのうち、最上位のタグ階層レベルに対応するクラスタについての重心の(事前の)計算
である。
【0046】
これらは例示のみであり、当業者にとってはこれらの概念を一般化することは自明であることを強調しておく。
【0047】
要するに、本発明に係る、タグ統合を用いる改善されたAECID測位アルゴリズムは、例としてWCDMAを用いて以下のようにまとめることができる。
【0048】
1.少なくとも以下のうちの1つによって高精度位置測定値にタグ付けを行う。
a.検出されたセルのセルID
b.補助接続情報(例えば、RAB、時間)
c.量子化された補助測定値(例えば、パスロス、信号強度、RTT、または雑音上昇)
2.高精度測定値クラスタ内で同一のタグを有する全ての高精度測定値を収集する。
3.本発明に係るタグ統合を行う。
4.当該クラスタ化された高精度位置測定値のうちの予め指定された割合を内部に含む(タグ付けされた)ポリゴンを計算することによって、既知の信頼度(非特許文献7)値を有するポリゴンを提供する。注意:当該信頼度は、報告された領域にUEが実際に位置している確率である。
5.当該タグ付けされたポリゴンを、複数のポリゴンを含むデータベース内に格納する。
6.AECID測位が実行される際には、以下のステップが実行される。
a.少なくとも以下のうちの1つを決定する。
1.検出されたセルのセルID
2.補助接続情報(例えば、RAB、時間)
3.量子化された補助測定値(例えば、パスロス、信号強度、RTT、または雑音上昇)
b.ステップa.によって定義されたタグを形成する。
c.当該タグに対応するポリゴンを検索する。
d.当該ポリゴンを、RANAPまたはPCAPを介して報告する。
【0049】
図7を参照しながら、本発明に係る方法を実行するように構成された装置について説明する。当該装置が、現実のハードウェアデバイスとして、または複数のハードウェアデバイスに拡散された機能性を有するソフトウェアデバイスとして実装されうることは明らかである。簡略化のため、当該装置は、物理エンティティとして説明されているが、システム内の異なる複数のノードに位置付けられた複数のサブデバイスに、等価かつ良好に分割されうる。当該装置は、システム内の無線ネットワーク制御装置の一部として、または、携帯端末の測位に関与する何らかの他のノードの中に、位置付けられる可能性がある。
【0050】
図7を参照した基本的な実施形態によれば、セルラ通信システムにおいて、位置決定用の支援データを提供するための、改善されたクラスタ化を行う装置1は、以下のエンティティ、ユニットまたは機能を含む。装置1は、高精度基準測定の結果である、複数のポイントを含む複数のクラスタを提供するクラスタ化ユニット2を含む。各クラスタに含まれる各ポイントは、同一かつ固有のフィンガープリント・タグを有する。さらに、当該装置は、予め定められた閾値より少ない数のポイントを含む対象クラスタを特定するように構成された特定ユニット3を含む。言い換えれば、特定器3は、有意義なポリゴンを計算するのを可能にするには少なすぎる数のポイントを含む可能性があるクラスタを見つける。最後に、装置1は、増加した数の高精度基準測定値を有する統合されたクラスタを提供するために、特定された対象クラスタを、提供された複数のクラスタのうちの、少なくとも1つの選択された隣接クラスタと統合する結合器または統合ユニット4を含む。
【0051】
本発明の利点には、以下のものが含まれる。
1.AECID測位法についての、高精度測定値の収集時間の減少/タグ付けされたポリゴンのアダプテーション・レートの増加。これは、所与の期間の後に、特定のタグについてのポリゴンの計算に、より多くのポイントが利用可能となるためである。
2.端末が基地局から遠く離れた位置にある状況で、RTTタグ付け及びTAタグ付けが利用される場合に、特定のタグについての計算されたポリゴンの精度の改善。
3.AECID測位フィンガープリント・アルゴリズムの使用が、高精度測定値の収集及びクラスタ化の両方に関して、タグ付けの構成、データベースを用いた位置決定、及び報告の影響を受けないという事実。タグの一時的な統合によって影響を受けるのは、タグ付けされたポリゴンの計算のみである。
【0052】
上述の実施形態は、本発明についての少数の説明例として理解されるべきである。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、当該実施形態に対して種々の変更、組み合わせ、及び変更がなされうることを理解するであろう。特に、技術的に可能な場合には、種々の実施形態における種々の部分ソリューションを、他の構成と組み合わせることが可能である。しかし、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7